JP4006098B2 - 水田群の水管理システム,水田群の水管理方法,および,水田群の水管理を行うためのプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な媒体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の水田から構成された水田地域において、収量の最大化を図るべく、水田からの地下浸透量を適正浸透量に保つように、給排水バルブ操作、揚水ポンプ操作その他の水管理作業を行うための水管理方法に係り、特に(ほぼ)同一土壌・土層、同一気候を有する水田地域に対して好適な、複数水田の水管理方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、給排水パイプライン、給排水路の整備された水田地域では、稲の生育段階に応じた好ましい水位管理を行うため、各水田に1つの水位計を設置しておき、水位計測値が所定の目標水位に近づくように給排水バルブの操作を行っている。例えば、特開平9−65776によれば、気象観測データ、気象予報データ、稲の生育データとに基づいて、目標水位テーブル及び該目標水位に対応した水位許容範囲テーブルを予め用意しておき、水位センサを介して水田の水位を検知しながら、該水田水位が目標水位に対して上記水位許容範囲内となるように、灌水装置の操作を行っている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術によれば、田植えから落水までの間、稲の生育段階に応じた適切な水田水位となるように、水田水位を自動的に変化させながら灌水を行うことができ、農家の人の灌水作業の省力化を図ることができる。また水位管理には、長年の経験が必要であったが、経験の少ない人でも適切な水田水位となるように水田の灌水を行うことができる。
【0004】
ところで、「新編灌漑排水上巻(養賢堂)」によれば、水田水の地下浸透は、水に含まれる各種養分・酸素の根への供給、及び土壌の酸化促進等の役割を持ち、適正浸透量と呼ばれる水稲生育に好ましい浸透量が存在する。実際、ある地方の浸透量と水稲収量との関係の調査結果によれば、最低収量は減水深(蒸発散量+浸透量)の増加とともに減少するが、最高収量は、減水深が20〜30mm/dayのときピークを持ち、それより多くても少なくても減少することが示されている。
【0005】
但し、適正浸透量は水稲生育期間中一定ではなく、時期及び各種条件によって変化する性質を持つ。生育初期から最高分けつ中子期までは、土壌中の養分濃度も高く、土壌の還元による障害も少ないため、浸透量の増加は肥料分の流亡につながり、浸透は水稲収量に対してマイナスに働く。中干し後になると、夏期の高温のために有機物の分解が進み、土壌は著しい還元状態となり、各種の有害物質を生じるため、適度の透水と間断灌漑による土壌の酸化が必要となる。
【0006】
即ち、植付より中干しまでは浸透を抑え、中干し後から落水までは透水と間断灌漑を行う、といったように、稲の生育段階に応じて適切な浸透量となるように目標浸透量管理を行うことが、高収量を得るために必要不可欠となる。
【0007】
しかるに、従来技術では、浅水、深水、間断潅漑等のように水位を制御量とした目標水位管理を行っているのみで、水田からの浸透量を全く考慮してしない。浸透量は水田水位のみならず地下水位等にも影響されるため、偶然に水田浸透量が適正浸透量になる可能性はありうるが、従来技術では適正浸透量となるよう水田浸透量を能動的に操作できず、積極的な高収量化を図ることができない。
【0008】
浸透量を制御量とした適正浸透量管理を行うためには、水田の浸透量推定を行い、推定浸透量が適正浸透量になるよう水位管理(給排水バルブ制御)を行うことか必要不可欠となる。しかるに、現在の技術レベルでは、浸透量を精度よく推定することは容易ではない。例えば、浸透量推定のためによく用いられている方法として、水田において成り立つ水収支式:水田貯留変化量=給水量−排水量+雨量−蒸発散量−浸透量、に対して、水田貯留変化量、給水量、排水量、雨量を測定し、蒸発散量を何らかの方法により推定することにより、残された浸透量を算出する方法がある。
【0009】
しかしながら実際は、上記蒸発散量の推定が容易でないため、上記水収支式に基づく方法は有効とは言えない。傾度法、熱収支法等を用いれば蒸発散量推定可能であるが、特殊な測定器を必要とするので一般水田の水管理に用いることは現実的ではない。夜間は蒸発散量が0になることを利用すれば、上記方法でも浸透量の推定は可能となるが、昼間の浸透量推定には利用できず一般的ではない。
【0010】
また、仮に水田の浸透量を推定できたとしても、推定浸透量が適正浸透量になるように水管理を行うことは容易ではない。浸透量は水田水位のみならず、地下水位、土壌・土層の状態等にも大きく左右されるため、適正浸透量を実現するための水田水位を決定することが困難なためである。
【0011】
本発明の目的は、水稲収量に大きな影響を及ぼす物理量として浸透量に着目し、水田群の水位トレンド、給排水・雨量情報のみから、水田の土壌・土層、地下水位等の状態に依存することなく水田の浸透量を推定し、各水田の浸透量が稲の生育に応じた適正浸透量となるよう水田水位を適切に管理することができる、水田水管理の技術を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的達成のため、次の手段を設ける。
(手段1)
複数区画からなる水田に対する水管理を行う水田群の水管理システムにおいて、上記水田の存在する水田地域の雨量を把握する手段と、上記各水田の水位を計測する水位計と、各水田に給水および排水を行う給排水装置と、各水田の浸透量の目標値およびその許容範囲を決定する目標浸透量決定手段と、上記把握された雨量および各水田の水位に基づいて、所定アルゴリズムに従って各水田の浸透量を推定する浸透量推定手段と、上記推定された浸透量の目標値の許容範囲に収まるように前記給排水装置を動作させる制御手段とを有することを特徴とする。
【0013】
(手段2)
複数区画からなる水田に対する水管理を行う水田群の水管理システムにおいて、上記水田の存在する水田地域の雨量を把握する手段と、上記各水田の水位を計測する水位計と、各水田に給水および排水を行う給排水装置と、各水田の浸透量の目標値およびその許容範囲を決定する目標浸透量決定手段と、上記把握された雨量および各水田の水位に基づいて、所定アルゴリズムに従って各水田の浸透量を推定する浸透量推定手段と、上記推定された浸透量の目標値の許容範囲に収まるように各水田の目標水位及びその許容範囲を決定する目標水位決定手段とを有することを特徴とする。
【0014】
(手段3)
本発明の水田の水管理システムでは、手段1、2における所定のアルゴリズムは、各水田に対して成り立つ水収支式において、蒸発散量、及び地下水位、透水係数等の浸透に影響を及ぼす物理量が上記各式とも共通の値を取ると仮定して、上記水収支式を連立して解くことにより各水田の浸透量を算出すること、を特徴とする。
【0015】
(手段4)
本発明の水田の水管理システムでは、手段1、2における所定の目標量及びその許容範囲は、稲の生育段階又は日付と、該当希稲種の目標浸透量及びその許容範囲との対応関係を記録したテーブルに基づいて決定すること、を特徴とする。
【0016】
(手段5)
本発明の水田の水管理システムでは、水田地域の気温、水温、湿度、日射豊、日照時間等の気象情報を把握するための手段を有し、手段1、2における所定の目標量及びその許容範囲は、稲の生育段階又は日付と、該当稲種の目標浸透量及びその許容範囲との対応関係を記録したテーブルに基づいて決定し、上記目標浸透量又はその許容範囲は、上記把握された気象情報に基づいて所定量だけ修正すること、を特徴とする。
【0017】
(手段6)
本発明の水田の水管理システムでは、手段2における目標水位決定手段は、各水田に対して成り立つ水収支式において、蒸発散量、及び地下水位、透水係数等の浸透に影響を及ぼす物理量が上記各式とも共通の値を取ると仮定し、上記水収支式を連立して解くことにより上記物理量の値を算出し、上記算出された物理量の値及び前記決定された浸透量の目標値及び浸透量の上下限値を上記各水田ごとの水収支式に代入して解くことにより、前記各水田の目標水位及びその許容範囲を決定すること、を特徴とする。
【0018】
(手段7)
本発明の水田の水管理システムでは、複数区画からなる水田地域において、上記水田地域の雨量を把握するための手段と、上記各水田の水位を計測するための水位計と、上記把握された雨量及び各水田の水位に基づいて、所定のアルゴリズムに従って各水田の水収支に関連する物理量を推定する物理量推定手段と、を有することを特徴とする。
【0019】
(手段8)
本発明の水田の水管理システムでは、手段7における水収支に関連する物理量は、浸透量、地下水位、透水係数、その他浸透に影響を及ぼす物理量、蒸発散量、給水量、排水量のいずれかであること、を特徴とする。
【0020】
(手段9)
本発明の水田の水管理システムでは、手段7における所定のアルゴリズムは、各水田に対して成り立つ水収支式において、蒸発散量、及び地下水位、透水係数等の浸透に影響を及ぼす物理量が上記各式とも共通の値を取ると仮定して、上記水収支式を連立立して解くことにより各水田の任意の期間中の水の移動に関連する物理量を算出すること、を特徴とする。
【0021】
(手段10)
本発明の水田の水管理システムでは、複数区画からなる水田地域において、上記水田地域の雨量を把握するための手段と、上記各水田の水位を計測するための水位計と、各水田に給水又は排水を行うための給排水装置と、各水田の水位変化量の目標値及びその許容範囲を決定する目標水位変化量決定手段と、上記把握された雨量及び各水田の水位に基づいて、所定のアルゴリズムに従って降雨の影響又は給排水の影響又は蒸発散の影響を取り除いた各水田の水位変化量を推定する水位変化量推定手段と、上記推定された水位変化量が上記水位変化量の目標値の許容範囲内に収まるように各水田の給排水装置を動作させる制御手段と、を有することを特徴とする。
【0022】
(手段11)
本発明の水田の水管理システムでは、複数区画からなる水田地域において、上記水田地域の雨量を把握するための手段と、上記客水田の水位を計測するための水位計と、各水田に給水又は排水を行うための給排水装置と、各水田の水位変化量の目標位及びその許容範囲を決定する目標水位変化量決定手段と、上記把握された雨量及び各水田の水位に基づいて、所定のアルゴリズムに従って降雨の影響又は給排水の影響又は蒸発散の影響を取り除いた各水田の水位変化量を推定する水位変化量推定手段と、上記推定された水位変化量が上記水位変化量の目標値の許容範囲内に収まるように各水田の目標水位及びその許容範囲を決定する目標水位決定手段と、を有することを特徴とする。
【0023】
(手段12)
本発明の複数区画からなる水田地域における水田の水管理を行うためのコンピュータ読み取り可能な媒体では、上記水画地域の雨量を把握する機能と、上記客水田に設置された水位計からの水位計測値を把握する機能と、各水田の浸透量の目標値及びその許容範囲を決定する目標浸透量決定機能と、上記把握された雨量及び各水田の水位に基づいて、所定のアルゴリズムに従って各水田の浸透量を推定する浸透量推定技能と、上記推定された浸透量が上記浸透量の目標値の許容範囲内に収まるように各水田に設置された給排水装置を動作させる制御機能と、を実行させるためのプログラムを記録したことを特徴とする。
【0024】
(手段13)
本発明の複数区画からなる水田地域における水田の水管理を行うためのコンピュータ読み取り可能な媒体では、上記水田地域の雨量を把握する機能と、上記客水田に設置された水位計からの水位計測値を把握する機能と、各水田の浸透量の目標値及びその許容範囲を決定する目標浸透量決定機能と、上記把握された雨量及び各水田の水位に基づいて、所定のアルゴリズムに従って各水田の浸透量を推定する浸透量推定機能と、上記推定された浸透量が上記浸透量の目標値の許容範囲内に収まるように各水田の目標水位及びその許容範囲を決定する目標水位決定機能と、を実行させるためのプログラムを記録したことを特徴とする。
【0025】
(手段14)
本発明の複数区画からなる水田地域における水田の水管理を行うためのコンピュータ読み取り可能な媒体では、手段12、13における所定のアルゴリズムは、各水田に対して成り立つ水収支式において、蒸発散量、及び地下水位、透水係数等の浸透に影響を及ぼす物理量が上記各式とも共通の値を取ると仮定して、上記水収支式を連立して解くことにより各水田の浸透量を算出すること、を特徴とする。
【0026】
(手段15)
本発明の複数区画からなる水田地域における水田の水管理を行うためのコンピュータ読み取り可能な媒体では、手段12、13における所定の目標量及びその許容範囲は、稲の生育段階又は日付と、該当稲種の目標浸透量及びその許容範囲との対応関係を記録したテーブルに基づいて決定すること、を特徴とするとする。
【0027】
(手段16)
本発明の複数区画からなる水田地域における水田の水管理を行うためのコンピュータ読み取り可能な媒体では、上記水田地域の気温、水温、湿度、日射量、日照時間等の気象情報を把握する機能を実行させるためのプログラムを記録し、手段12、13における所定の目標量及びその許容範囲は、稲の生育段階又は日付と、該当稲種の目標浸透量及びその許容範囲との対応関係を記録したテーブルに基づいて決定し、上記目標浸透量又はその許容範囲は、上記把握された気象情報に基づいて所定量だけ修正すること、を特徴とする。
【0028】
(手段17)
本発明の複数区画からなる水田地域における水田の水管理を行うためのコンピュータ読み取り可能な媒体では、手段13における目標水位決定機能は、各水田に対して成り立つ水収支式において、蒸発散量、及び地下水位、透水係数等の浸透に影響饗を及ぼす物理量が上記各式とも共通の値を取ると仮定し、上記水収支式を連立して解くことにより上記物理量の値を算出し、上記算出された物理量の値及び前記決定された浸透量の目標値及び浸透量の上下限値を上記各水田ごとの水収支式に代入して解くことにより、前記各水田の目標水位及びその許容範囲を決定すること、を特徴とする。
【0029】
(手段18)
本発明の複数区画からなる水田地域における水田の水管理を行うためのコンピュータ読み取り可能な媒体では、上記水田地域の雨量を把握する機能と、上記各水田に設置された水位計からの水位計測値を把握する機能と、上記把握された雨量及び各水田の水位に基づいて、所定のアルゴリズムに従って各水田の水収支に関連する物理量を推定する物理量推定機能と、を実行させるためのプログラムを記録したことを特徴とする。
【0030】
(手段19)
本発明の複数区画からなる水田地域における水田の水管理を行うためのコンピュータ読み取り可能な媒体では、手段18における水収支に関連する物理量は、浸透量、地下水位、透水係数、その他浸透に影響を及ぼす物理量、蒸発散量、給水量、排水量のいずれかであることを特徴とするコンピュータ読み取り可能な媒体。
【0031】
(手段20)
本発明の複数区画からなる水田地域における水田の水管理を行うためのコンピュータ読み取り可能な媒体では、手段18における所定のアルゴリズムは、各水田に対して成り立つ水収支式において、蒸発散量、及び地下水位、透水係数等の浸透に影響を及ぼす物理量が上記各式とも共通の値を取ると仮定して、上記水収支式を連立して解くことにより各水田の任意の期間中の水の移動に関連する物理量を算出すること、を特徴とする。
【0032】
(手段21)
本発明の複数区画からなる水田地域における水田の水管理を行うためのコンピュータ読み取り可能な媒体では、上記水田地域の雨量を把握する機能と、上記各水田に設置された水位計からの水位計測値を把握する機能と、各水田の水位変化量の目標値及びその許容範囲を決定する目標水位変化量決定機能と、上記把握された雨量及び各水田の水位に基づいて、所定のアルゴリズムに従って降雨の影響又は給排水の影響又は蒸発散の影響を取り除いた各水田の水位変化量を推定する水位変化量推定機能と、上記推定された水位変化量が上記水位変化量の目標値の許容範囲内に収まるように各水田に設置された給排水装置を動作させる制御機能と、を実行させるためのプログラムを記録したことを特徴とする。
【0033】
(手段22)
本発明の複数区画からなる水田地域における水田の水管理を行うためのコンピュータ読み取り可能な媒体では、上記水田地域の雨量を把握する機能と、上記各水田に設置された水位計からの水位計測値を把握する機能と、各水田の水位変化量の目標値及びその許容範囲を決定する目標水位変化量決定機能と、上記把握された雨量及び各水田の水位に基づいて、所定のアルゴリズムに従って降雨の影響又は給排水の影響又は蒸発散の影響を取り除いた各水田の水位変化量を推定する水位変化量推定機能と、上記推定された水位変化量が上記水位変化量の目標値の許容範囲内に収まるように各水田の目標水位及びその許容範囲を決定する目標水位決定機能と、を実行させるためのプログラムを記録したことを特徴とする。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図面に示す実施形態によって詳細に説明する。
図1は、水田群における各水田の水位を管理する水管理システムの、実施形態を示すシステム構成図である。本実施形態の水管理システムは、水位計1−j(j=1、…、30)、給水バルブ2−j、排水バルブ3−j、コンピュータ104、データ伝送路105、気象情報提供システム106、気象ロボット107、給水パイプライン108、排水パイプライン109から構成される。
【0035】
水管理の対象となる水田地域は、農水省が推進している大区画水田モデル地区と同様に、30枚の1ha規模の水田4−jによって構成される。各水田4−j内には、水位計1−j、給水バルブ2−j、排水バルブ3−jが1つづつ設置されており、所定計測周期ごとに各水田4−jの水位、給水量、排水量をデータ伝送路105を介してコンピュータ104に送信している。ここで、データ伝送路105は、無線又は有線のどちらでも構わない。上記水田地域には、気象ロボット107が設置されており、上記水位計測周期と同じタイミングで、上記水田地域における気温、湿度、日照時間、日射量、風向・風速、雨量を、データ伝送路105を介してコンピュータ104に送信している。
【0036】
更に、上記気象データ(気温、湿度、日照時間、日射量、風向・風速、雨量)の所定周期、所定時刻先までの予報値を、日本気象協会、又は民間団体の保有する気象情報提供システム106から、所定タイミングごとに、データ伝送路105を介してコンピュータ104に送信している。
【0037】
コンピュータ104は、図2に示すように、CPU221、RAM222、ハードディスク装置223、フロッピーディスク装置224、MOディスク装置225、DVD装置226、CD−ROM装置227、RAMカード装置228、入力装置229、表示装置230によって構成される。CPU221は、水管理システム全体の動作を制御して、水稲収量に大きな影響を及ぼす物理量である浸透量を制御量として、給水バルブ2−j、排水バルブ3−jの操作を行い、各水田4−jの水管理を行う中央処理装置である。RAM222は、各種処理プログラムや各種データをロードする記憶装置である。
【0038】
ハードディスク装置223は、各種処理プログラム201〜205、及び各種データベース211、212を磁気ディスクに格納する記憶装置である。フロッピーディスク装置224は、各種処理プログラム201〜205、及び各種データベース211、212が記録されたフロッピーディスクの読み書きを行う装置である。MOディスク装置225は、各種処理プログラム201〜205、及び各種データベース211、212が記録されたMOディスク(光磁気ディスク)の読み書きを行う装置である。
【0039】
DVD装置226は、各種処理プログラム201〜205、及び各種データベース211、212が記録されたDVD(デジタルビデオディスク)の読み書きを行う装置である。CD−ROM装置227は、各種処理プログラム201〜205、及び各種データベース211、212が記録されたCD−ROM(コンパクトディスク)の読み書きを行う装置である。RAMカード装置227は、各種処理プログラム201〜205、及び各種データベース211、212が記録されたRAMカードの読み書きを行う装置である。
【0040】
入力装置229は、水田浸透量推定プログラム203実行に必要となる各水田4−jの物理形状データや、稲の生育段階推定処理プログラム201実行に必要となる各水田4−jの稲の品種や田植え日等を入力するための装置である。表示装置230は、各種処理プログラム201〜205によって算出された各水田4−jの目標浸透量、水田浸透量、目標水位、バルブ開閉状態/及び稲の生育段階等、並びに気象情報提供システム106から送信された上記水田地域の気象データ(気温、湿度、日照時間、日射量、風向・風速、雨量)の予報値、並びに気象ロボット107、水位計1−j、給水バルブ2−j、排水バルブ3−jから送信された各水田4−jの水位、給水量、及び排水量等の表示を行う装置である。
【0041】
ここで、上記各種処理プログラム201〜205、及び各種データベース211、212は上記記憶媒体のいずれに記録していてもかまわないため、以下、記録媒体の読み書きを行う装置がハードディスク装置223のみの場合を例にとって説明する。コンピュータ104では、各水田4−jの浸透量が稲の生育に応じた適正浸透量となるように、水田水位の管理を行う。上記水田水位管理は、ハードディスク装置223に記憶された各種処理プログラム201〜205、及び各種データベース211、212をRAM222にロード・記憶し、CPU221によって、各種処理プログラム201〜205に対応する以下の処理:
(1)各水田4−jの現在の稲の生育段階を推定する処理
(2)各水田4−jの上記生育段階に応じた適切な目標浸透量を決定する処理
(3)各水田4−jの浸透量を推定する処理
(4)各水田4−jの上記目標浸透量に対応、する目標水田水位を決定する処理
(5)各水田4−jの水位を上記目標水田水位の所定の近傍内に収めるよう、給水バルブ2−j、排水バルブ3−jの自動制御を行う処理
を順次実行していくことにより実現される。
【0042】
以下、CPU221において実行される上記処理(1)〜(5)の実行方法について説明する。はじめに、生育段階推定処理プログラム201によって実現される、各水田4−jの現在の稲の生育段階を推定する処理(1)について、図2、図3を用いて説明する。コンピュータ104では、気象ロボット107より計測された気温日照時間のデータを、所定周期ごとに受信している。処理プログラム201では、1日1回日没後、上記所定周期ごとの気温、日照時間データから当日の昼間時の平均気温、日照時間を算出する。例えば、昼間時の平均気温は、昼間時における上記所定周期ごとの気温の平均を取ることにより算出できる。また、昼間時の日照時間は、昼間時における上記所定周期ごとの日照時間を積算することにより算出できる。
【0043】
生育モデルデータベース211では、稲の品種別の生育段階推定モデルを配慮している。上記生育段階推定モデルとしては、国内において広く用いられているDVIモデルを採用する。DVIモデルによれば、田植え後i日目の生育値DVIは、出芽日からその日までの生育速度DVRを積算して、
【0044】
【数1】
【0045】
と記述される。ここで、図3に示すように、生育速度DVRは気温が高いほど、また短日条件ほど大きくなることが知られている。
【0046】
処理プログラム201では、入力装置229より入力された各水田4−jの稲の品種に基づいて、上記データベース211から対応する生育段階推定モデルを選択する。更に、入力装置229より入力された各水田4−jの稲の田植え日、及び処理プログラム201にて上記算出した田植え日から当日までの昼間時における平均気温、日照時間を(数1)に代入することにより、各水田4−jの当日までの稲の生育段階(DVI値)を算出する。上述のように処理プログラム201において、自動的に稲の生育段階を算出してもよいが、もちろん農家において稲の生育状態を観察し、生育段階(DVI値)を処理201に代わって入力装置229からコンピュータ104に入力してもよい。上述のようにして、CPU221において、処理プログラム201により、各水田4−jの当日までの稲の生育段階の推定が行われる。
【0047】
次に、目標浸透量決定処理理プログラム202によって実現される、現在の稲の生育段階に応じた適切な目標浸透量を決定する処理(2)について、図2、図4を用いて説明する。目標浸透量データベース212では、稲の生育段階(DVI値)に対応した、稲の品種別・地方別の、田植え日から収穫までの、目標浸透量テーブル、及び当該目標浸透量データに対する許容範囲テーブルを記憶している。
【0048】
図4に、目標浸透量テーブル、及び許容範囲テーブルの一例を示す。田植え直後では、土壌の養分濃度も高く、土壌の還元障害も少ないため、浸透量を低めに抑え、養分の流亡を防ぐ。有効分けつ期では地温上昇のため浸透を増やし、無効分けつ期では、分けつを抑制するため浸透を減らし、中干しを行う。
【0049】
幼穂形成期、穂ばらみ期を通して豊熟期の前半までは、夏期の高温のために有機物の分解が盛んで土壌は著しい還元状態となり、各種の有害物質を生じるため、適度の浸透と土壌の酸化を目的とした間断灌漑を行う。収穫期では、出穂25〜30日後を目安に落水を行い、浸透を0にし、土壌を固め刈り取りに備える。
【0050】
上記目標浸透量テーブル、及び許容範囲テーブルは、過去の稲の生育データや水位・浸透量データ、気象データ等に基づいて、稲の生育段階(DVI値)から目標浸透量、及び許容範囲が特定できるよう「低温時には目標浸透量を所定量だけ増加させる」といったノウハウを組み込んでおく。また、上記テーブルは固定ではなく、農家のオリジナリティを組み込めるよう、いつでも変更可能なフレキシブルなテーブルとする。
【0051】
処理プログラム202では、処理プログラム201の実行周期と同じタイミングで、以下の処理を行う。処理プログラム202では、入力装置229より入力された各水田4−jの稲の品種・地方に基づいて、上記データベース212から対応する目標浸透量テーブル、及び許容範囲テーブルを選択する。更に、上記処理プログラム201より算出された各水田4−jの稲の生育段階と、上記選択された各水田4−jの目標浸透量テーブル、及び許容範囲テーブルとを比較して、各水田4−jの適切な目標浸透量、及び許容範囲を決定する。決定された目標浸透量、及び許容範囲は、処理プログラム202の今回実行時から次回実行時まで有効とする。
【0052】
また、コンピュータ104では、気象情報提供システム106より、所定周期、所定時刻先までの気象予報データを、所定タイミングごとに受信している。上記目標浸透量テーブルに、例えば上記の「低温時には目標浸透量を所定量だけ増加させる」といったノウハウが対応している場合は、処理プログラム202では、決定された目標浸透量の有効期間(当日の所定時刻〜次の日の該所定時刻)における気温予報データを考慮し、決定された目標浸透量の修正を行う。上述のようにして、CPU221において、処理プログラム202により、各水田4−jの目標浸透量、及びその許容範囲の決定が行われる。
【0053】
次に、水田浸透量推定処理プログラム203によって実現される、各水田4−jの浸透量を推定する処理(3)について、図2、図5を用いて説明する。コンピュータ104では、水位計1−j、給水バルブ2−j、排水バルブ3−jより計測された各水田4−jの水位、給水量、排水量、及び気象ロボット107より計測された当該水田地域の雨量を、所定周期ごとに受信している。処理プログラム203では、1日1回乃至数回(例えば3時間ごと)、上記受信データを用いて、各水田4−jの現在の浸透量の推定を行う。土壌中の浸透量は、Darcyの法則「浸透速度は動水勾配に正比例する」に支配され、水田4−jにおける浸透量(浸透速度)Vjは、閉鎖浸透時(負圧の土層が存在しない浸透状態)、
【0054】
【数2】
【0055】
として記述できる。ここで、土壌条件の違いにより、浸透には閉鎖浸透と開放浸透の2つの状態が存在しうるが、開放浸透時でも(数2)と同様の式が成り立ち、開放浸透時に成り立つ式の方が未知変数も少なく単純であるため、より複雑な閉鎖浸透時に的を絞って説明を進める。
【0056】
ここで、各水田4−jの水の移動に関連する物理量を図5に示す記号で表すことにする。通常、同一水田地域内の各水田においては、ほぼ同一の土壌・土層を有しており、またほほ同一の地下水位を有していることから、上記(数2)における合成透水係数K、全土層厚L、地下水位H(t)は各水田4−jにおいて共通であると仮定できる。また同一水田地域内の各水田においては、ほほ同一の気候、気温、湿度、日射、風速等)条件下にあることから、各水田4−jの(単位面積当りの)蒸発散量Eは共通であると仮定できる。上述のことから、現在までの所定期間△T(前回浸透量推定実行時〜今回浸透量推定実行時)中の各水田4−jにおける水収支式は、
【0057】
【数3】
【0058】
として記述できる。
【0059】
連立方程式(数3)において、未知変数は、K、L、H(t)、H(t−△T)、E(t)の5個であり、その他の変数は、コンピュータ104が計測している物理量から一意かつ容易に算出できる。従って、未知変数の個数と同じ5枚以上の水田があれば連立方程式(数3)は求解可能となり、本実施形態では水管理の対象水田を30枚としているため十分求解可能となる。
【0060】
処理プログラム203では、所定周期ごとに計測している各種物理量から、連立方程式(数3)を構築し、適当な求解手法に基づいて連立方程式(数3)の求解を行い、各水田4−jの浸透量を推定する。但し、浸透量推定期間△T中の水田水位、及び給排水量が完全に一致する水田が複数枚存在する場合は、該水田に対応する(数3)の方程式が一致してしまい、連立方程式(数3)が不定になり求解できない。
【0061】
この場合、処理203プログラムでは、上記水田に対して、後述する目標水田水位の許容範囲内に水田水位が収まるよう給水又は排水を行い、連立方程式(数3)が不定になるのを防止する。上述のようにして、CPU221において、処理プログラム203により、各水田4−jの浸透量の推定が行われる。
【0062】
ところで、処理プログラム203では、各水田4−jの給水量及び排水量を計測するものと仮定しているが、以下の方法を用いることにより上記給排水量は計測不要となり、更に上記給排水量は推定可能とさえなる。即ち、連立方程式(数3)を構成する水収支式を、給排水を行っていない水田に対応する水収支式(給排水量の項=0)に限定して該連立方程式(数3)の求解を行い、各水田4−jの浸透量、合成透水係数K、全土層厚L、地下水位(t)、蒸発散量Eを推定する。上記推定値を、給排水を行った水田に対応する水収支式(数3)に代入することにより、給排水量の値が推定可能となる。なお、給排水を行っていない水田の存在は、各水田4−jへの給排水の順序を適当に割り振ることにより容易に実現可能となる。
【0063】
ここで、本発明の大きな特徴である、上述の水田群の浸透量推定方法の基本的考え方について説明しておく。従来、1水田における水収支式に基づいて浸透量を推定することは、方程式の個数より未知数(蒸発散量、地下水位、透水係数)の個数の方が多いため、求解不可能であった。しかしながら本発明では、対象水田を、同一地域内に存在する複数枚の水田までに拡大することにより、その求解を可能にしている。即ち、対象水田を複数枚に増加させることで上記方程式の個数を増加させ、更に、対象水田か何一地域内に存在することから、各水田は同一土壌条件下、同一気象条件下にあると仮定し、上記未知変数(蒸発散量、地下水位、透水係数)は共通の値をとるとして、対象水田の増加に伴う未知変数の増加を防止している。これにより、方程式の個数が未知数の個数を上回るようになり、その求解を可能としている。
【0064】
次に、目標水位決定処理プログラム204によって実現される、各水田4−jの目標浸透量に対応する目標水田水位を決定する処理(4)について、図2、図5を用いて説明する。処理プログラム204では、処理プログラム203の実行周期(浸透量推定周期)と同じタイミングで、処理プログラム202にて算出した各水田4−jの目標浸透量、及び許容範囲に対応する、各水田4−jの目標水位、及び許容範囲を決定する。処理プログラム203の実行結果から、図5に示す当該水田地域の土層の合成透水係数K、全土層厚L、地下水位H(t)は全て算出されているため、上記値を(数2)に代入すれば、(数2)は水田水位と水田浸透量との1対1の関係を示す式となる。従って、上記各水田4−jにおける3つの浸透量(目標浸透量、上限浸透量、下限浸透量)を上記関係式に代入することにより、各水田4−jの目標水位、及び許容範囲を決定する。決定された目標水位、及び許容範囲は、処理204の今回実行時から次回実行時まで有効とする。上述のようにして、CPU221において、処理プログラム204により、各水田4−jの目標未位、及びその許容範囲の決定が行われる。
【0065】
次に、給排水バルブ制御処理プログラム205によって実現される、各水田4−jの水位を上記目標水田水位の所定の近傍内に収めるよう、給水バルブ2−j、排水バルブ3−jの自動制御を行う処理(5)について、図2、図6を用いて説明する。コンピュータ104では、水位計1−jより計測された各水田4−jの水位を、所定周期ごとに受信している。処理プログラム205では、上記受信データを用いて、上記水位計測周期と同じタイミングで、各給水バルブ2−j、排水バルブ3−jの開閉状態を決定し、各バルブに対して開閉信号の送信を行う。
【0066】
図6は、処理プログラム205が実行するバルブ制御処理の概要を示すフローチャートである。はじめに、各水位計1−jより計測した最新の水田水位を読み込み(ステップ601)、また各水田4−jの目標水位、及びその許容範囲を、処理プログラム204において決定された最新値に更新する(ステップ602)。
【0067】
次に処理プログラム205では、各水田4−jの水位が目標水位の所定の近傍I内(目標水位±許容範囲)に存在するように、以下に示す給排水バルブの開放/閉鎖条件に基づいて、給水バルブ2−j、排水バルブ3−jの操作を行う。
【0068】
・給水バルブ開放条件(閉鎖から開放に移行する条件):水田水位<目標水位−許容範囲
・給水バルブ閉鎖条件(開放から閉鎖に移行する条件):水田水位>目標水位
・排水バルブ開放条件:水田水位>目標水位+許容範囲
・排水バルブ閉鎖条件:水田水位<目標水位
即ち、水田水位が近傍Iの下限値(目標水位−許容範囲)を下回っていればデータ伝送路105を介して、給水バルブ2−jに開放信号を送信し、給水を実行させる(ステップ603、604)。給水バルブ2−jでは、コンピュータ104からのバルブ開放信号を受信し、バルブを開けて給水パイプライン108から水田4−j内に水を供給する。これにより水田4−jの水位が漸次上昇し、水田水位が目標水位を上回るようになればデータ伝送路105を介して、給水バルブ2−jに閉鎖信号を送信し、給水を停止させる(ステップ605、606)。これにより水田4−jの水位は目標水位付近で停止することになる。
【0069】
逆に、水田水位が近傍Iの上限値(目標水位+許容範囲)を上回っていればデータ伝送路105を介して、排水バルブ3−jに開放信号を送信し、排水を実行させる(ステップ607、608)。排水バルブ3−jでは、コンピュータ104からのバルブ開放信号を受信し、バルブを開けて水田4−jから排水パイプライン109内に水を排水する。これにより水田4−jの水位が漸次下降し、水田水位が目標水位を下回るようになれば、データ伝送路105を介して、排水バルブ3−jに閉鎖信号を送信し、排水を停止させる(ステップ609、610)。これにより水田4−jの水位は目標水位付近で停止することになる。上述のようにして、CPU221において、処理プログラム205により、水田水位が目標水位の所定の近傍I内に存在するように、給水バルブ2−j、及び排水バルブ3−jの自動制御が行われる。
【0070】
上述のように、本発明の実施形態によれば、水稲収量に大きな影響を及ぼす物理量として浸透量に着目し、同一地域内の水田群では、各水田とも同一土壌下、同一気候条件下にあるという物理現象を利用して、水田群の水位トレンド、給排水、雨量情報から、水田の土壌・土層、地下水位等の状態に依存することなく水田の浸透量を推定し、各水田の浸透量が稲の生育に応じた適正浸透量なるよう水田水位を適切に管理することが可能である。
【0071】
以上説明したように本発明の実施の形態によれば各水田において成り立つ水収支式に基づいて、地下水位、透水係数、蒸発散量等を計測不要な未知変数として浸透量推定計算を行っているため、水田の土壌・土質、地下水位、蒸発散量を把握するための特殊な計器を用いることなく、また昼夜の別に限定されることなく、各水田の現在の浸透量を推定できる。
【0072】
また、稲の生育段階推定結果と、稲の生育段階に対応した目標浸透量テーブルに基づいて、各水田の適正浸透量の目標値を決定し、上記現推定浸透量との比較を行っているため、各水田において現在の稲の生育に応じた適正浸透が行われているか否かを判断できる。
【0073】
適正浸透が行われていない水田に対しては、上記浸透量推定計算において、浸透に影響を及ぼす物理量(地下水位、透水係数)をも同時に把握しているため、適正浸透量を実現するのに過不足ない目標水田水位を算出でき、更に水田水位が上記目標水田水位に等しくなるよう給排水バルブの操作を行っているため、各水田の浸透量が適正浸透量になるような水管理を行うことができる。
【0074】
且つ、上記浸透量推定周期、即ち水管理周期を任意の周期(例えば3時間程度の短期間)に設定できるため、各水田の浸透量を稲の生育期間中常に適正浸透量に維持することができ、より緻密な水管理を行うことができる。
【0075】
即ち、上述の効果を総合すれば、本発明によれば、稲の植付から刈り取りまでの全生育期間に対して、各水田の浸透量を、現在の稲の生育に応じた適正浸透量に絶え間なく維持することができるため、水稲収量の最大化を図ることができる。
【0076】
また、水田の土壌・土層の状態に応じて水田からの浸透特性は大きく違ってくるため、全国には漏水田や排水不良田など様々な水田が存在するが、本発明では、上記浸透量推定計算において、土壌・土層の状態を表すパラメータである透水係数をオンライン推定し、該透水係数に基づいて、水田の適正浸透量管理を行っているため、任意の水田地域に対して適用可能な、汎用性の高い水管理システムを構築できる。
【0077】
【発明の効果】
以上の構成により、本発明においては、特殊な計器を用いなくとも、各水田の水の浸透量を把握することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の水管理システムの実施形態を示すシステム構成図である。
【図2】コンピュータ内部のハード構成図及び各種処理プログラムのブロック図である。
【図3】平均気温、日照時間と稲の生育速度との関係を示す説明図である。
【図4】稲の生育段階に応じた目標水深テーブルの一例を示す説明図である。
【図5】1つの水田における水収支の関係を示す説明図である。
【図6】給排水バルブ制御の概要を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1−j…水位計、2−j…給水バルブ、3−j…排水バルブ、4−j…水田、104…コンピュータ、105…データ伝送路、106…気象情報提供システム、107…気象ロボット、108…給水パイプライン、109…排水パイプライン。
Claims (6)
- 請求項1に記載の水田群の水管理システムであって,
前記給水装置および排水装置の各々は,前記各水田への給水量および排水量を測定する手段を備え,
前記推定手段は,前記測定した給水量および排水量に基づき,前記目標水位を求める
ことを特徴とする水田群の水管理システム。 - 請求項1または2に記載の水田群の水管理システムであって,
さらに,
前記各水田における稲の生育段階または日付と適正浸透量の目標値との対応関係を記憶する手段と,
前記記憶された対応関係と,前記各水田の稲の生育段階または日付と,から,各水田の前記目標浸透量を決定する手段と,を備える
ことを特徴とする水田群の水管理システム。 - 請求項1ないし3いずれか一に記載の水田群の水管理システムであって,
前記制御手段は,前記推定手段により前記目標水位が求まらなかった場合に,前記各水田の水位が異なるように前記給水装置または排水装置を動作させ,
前記推定手段は,前記各水田の水位が異なっているときの水位測定値hj(t)に基づき,前記目標水位を求める
ことを特徴とする水田群の水管理システム。 - 各々が,水位を測定する水位計と,給水装置と,排水装置と,を備える複数の水田を有する水田地域において,コンピュータによる前記各水田の浸透量を制御する水田群の水管理方法であって,
当該水田地域について測定された雨量を取得する工程と,
予め求めた各水田の目標浸透量を満たす,目標水位を求める推定工程と,
前記水位計により測定した水位が前記目標水位となるように,前記各水田の給水装置または排水装置を動作させる制御工程と,を備え,
前記推定工程は,浸透量の推定式
ことを特徴とする水田群の水管理方法。 - 各々が,水位を測定する水位計と,給水装置と,排水装置と,を備える複数の水田を有する水田地域において,コンピュータに前記各水田の浸透量を制御させる,水田群の水管理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な媒体であって,
前記プログラムは,前記コンピュータに,
当該水田地域について測定された雨量を取得する工程と,
予め求めた各水田の目標浸透量を満たす,目標水位を求める推定工程と,
前記水位計により測定した水位が前記目標水位となるように,前記各水田の給水装置または排水装置を動作させる制御工程と,を行わせるものであり,
前記推定工程は,浸透量の推定式
ことを特徴とする水田群の水管理プログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な媒体。
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