JP4005788B2 - 冷媒輸送用チューブの接続構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は冷媒輸送用チューブおよびその接続構造に関する。さらに詳しくは、自動車用エアコンなどの冷媒輸送用の配管に好適な冷媒輸送用チューブおよびその接続構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
現在、カーエアコンなどの自動車用冷媒輸送用の冷媒はHFC134aが主流となっており、その配管には、主にゴムまたは樹脂あるいはゴムと樹脂の複合ホースが用いられている。しかしながらHFC134aは地球温暖化防止の観点から、CO2を冷媒とするシステムに変えることが検討されている。しかし、CO2を冷媒とした場合は高温高圧となり、ゴムおよび樹脂など高分子の内管からなるホースではCO2が透過しやすくなるという問題を有している。そこで、金属のラミネートフィルムを巻き付ける方法(特開平11−264488号公報参照)および金属蛇腹管を用いる方法(コルゲート加工による螺旋状の突起が形成されるパイプ)(特開平8−145259号公報参照)などが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前記ラミネートフィルムを巻き付ける方法(特開平11−264488号公報参照)は、フィルムのオーバーラップ部からの冷媒モレが発生し、通常の金属蛇腹管を用いる方法(特開平8−145259号公報参照)では、補強糸の固定部の径がコルゲート部の外径よりも小さいため、コルゲート部端末で補強糸乱れが生じ、また、コルゲート部端末部分が長手方向に固定されるため、加圧による歪が集中しやすくなり、高圧の繰り返し加圧によりコルゲート部端末部分にクラックが発生する惧れがある。
【0004】
さらに、冷凍サイクルにおいて、冷媒の渦(流れ)による笛吹き音が発生するとともに、圧力損失が大きいという問題がある。
【0005】
本発明は、叙上の事情に鑑み、製造コストを低減し、冷却性能を維持することができ、しかも可撓性を保ちながら充分な加圧耐久性が得られ、ならびに圧力損失の低下および笛吹き音の解消を図ることができる冷媒輸送用チューブおよびその接続構造を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
発明の冷媒輸送用チューブの接続構造は、金属製のパイプ部の端面から所定の距離の部位を除きコルゲート加工することにより、該パイプ部の軸方向に環状の突条が独立して成形されたコルゲート部を有しているとともに、該コルゲート部の外周に柔軟性を有する補強部が設けられてなる冷媒輸送用チューブとニップルとの接続構造であって、
(a)前記ニップルの端部が前記チューブのコルゲート部側から該チューブの端部の内面に挿入されており、
(b)前記チューブの端部外側にコルゲート部の外径と等しい外径の金属製の補強リングが設けられており、
(c)前記ニップル、チューブの端部、コルゲート部の端縁部および補強リングがロウ付けにより固着されており、
(d)前記補強リングと補強部の外側に前記コルゲート部における突条の外周側の一部を覆うように嵌着されてなる金属製の締結カラーが設けられており、
(e)前記締結カラーが加圧により該補強部の端部を前記補強リングに固着してなることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の冷媒輸送用チューブの接続構造は、金属製のパイプ部の端面から所定の距離の部位を除きコルゲート加工することにより、該パイプ部の軸方向に環状の突条が独立して成形されたコルゲート部を有しているとともに、該コルゲート部の外周に柔軟性を有する補強部が設けられてなる冷媒輸送用チューブとニップルとの接続構造であって、
(a)前記ニップルの端部が前記チューブのコルゲート部側から該チューブの端部の外面に挿入されており、
(b)前記ニップルのコルゲート部側の端部がコルゲート部の外径と等しい外径となっており、
(c)前記ニップル、チューブの端部およびコルゲート部の端縁部がロウ付けにより固着されており、
(d)前記ニップルのコルゲート部側の端部と補強部の外側に前記コルゲート部における突条の外周側の一部を覆うように嵌着されてなる金属製の締結カラーが設けられており、
(e)前記締結カラーが加圧により該補強部の端部を前記ニップルのコルゲート部側の端部に固着して
なることを特徴とする。
【0014】
なお、本明細書においてコルゲート加工とは、パイプの少なくとも一部を波形に加工し、環状の突条を独立して成形する加工法を意味する広い概念であり、たとえば内圧成形、プレス成形または転造成形などの加工法が含まれる。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の冷媒輸送用チューブ(以下、チューブという)およびその接続構造の一実施の形態を図面を参照しながら説明する。
【0016】
実施の形態1
図1に示されるチューブ1は、金属製のパイプ部2の端面3から所定の距離の部位を除きコルゲート加工することにより、該パイプ部2の軸方向に環状の突条4が独立して連続的に成形されたコルゲート部5を有するとともに、該コルゲート部5の外周に柔軟性を有する補強部6が設けられている。
【0017】
前記パイプ部2は、コルゲート部5を安価に加工がしやすく、しかも冷媒輸送時の使用圧力1〜15MPa程度に耐え得る材料からなるのが好ましく、たとえば銅、ステンレスおよびアルミニウムのうちのいずれか一種からなる金属製のパイプを用いるのが好ましい。
【0018】
前記コルゲート部5における突条4の厚さは、本発明においては、とくに限定されるものではないが、通常20〜1000μmの範囲であり、とりわけ50〜400μmであるのが、耐圧性と可撓性のバランスの点で好ましい。
【0019】
また、コルゲート部5は、前記金属製のパイプに、内圧成形、プレス成形または転造成形などのコルゲート加工を施すことにより、突条4が形成されている。とくに、内圧成形はパイプを切削することなく、ほぼ同一の肉厚で成形できるとともに、強度の低下も少ない点で好ましい。
【0020】
前記コルゲート部5における突条4は、つぎのような寸法で成形される。図1に示されるように、たとえば相手部材が、直径6.35mm、肉厚0.15mm(150μm)のパイプまたは直管である場合、これに対応する突条4は、山径aが9.0〜9.5mm程度、谷径bが6.0〜6.5mm程度、谷部(内面側の突条)4aのピッチP1が2.0〜4.0mm程度、山部(外面側の突条)4bのピッチP2が2.0〜4.0mm程度にされる。
【0021】
前記コルゲート部5における突条4の数は、可撓性を有する山数に適宜することができる。
【0022】
前記補強部6は、コルゲート部5の耐圧性を補うために用いられるが、コルゲート部5の可撓性を損なわない程度の柔軟性を有する材料が用いられる。とくに、コルゲート部5における突条4の外周面に容易に取り付けられるように、繊維から構成されるのが好ましい。かかる繊維としては、耐圧性および加圧繰り返し時のコルゲート部との耐摩耗性の点より、ポリエステル繊維、ビニロン繊維、綿、ナイロン繊維、アラミド繊維またはポリパラフェニレンベンゾビスオキサゾールの液晶紡糸繊維(PBO繊維)などを用いるのが好ましい。
【0023】
また、補強部6として、たとえば図2(a)〜(c)に示されるように、前記繊維からなる、500〜6000デニール程度太さの糸を編組したものを用いるのが好ましい。なお、図2(a)は糸を交差して編み上げたブレード式補強部6aであり、図2(b)は糸を交差させずに螺旋状に編み上げたスパイラル式補強部6bであり、図2(c)はニット編み上げ式補強部6cである。
【0024】
さらに、該補強部6cの外側に耐食性および耐摩耗性の目的でゴムまたはエラストマーによる外皮材を設けるのが好ましい。
【0025】
前記のごとく構成されたチューブ1は、後述する接続方法により、その両端にそれぞれ相手部材である、ステンレスなどからなる直管のニップルが連結される。
【0026】
つぎに本実施の形態1におけるチューブとニップルとの接続構造を説明する。
【0027】
まず、ニップル7の端部を、拡管または絞りを加えることにより、適宜の外径になるように成形する。
【0028】
ついで前記チューブ1の直線部2aに金属製の補強リング8を嵌着させたのち、前記適宜の外径に形成されたニップル3の端部(段差部)を該チューブ1の直線部2a内に挿入する。なお、この補強リング8はニップル3の端部を該チューブ1の直線部2a内に挿入したのちに嵌着させることもできる。また、補強リング8の外径はコルゲート部5の外径と等しくされている。
【0029】
そして、前記ニップル3、チューブ1および補強リング8をロウ付けにより固着する。この固着に際し、補強リング8とチューブ1のコルゲート部5のロウ付けは、チューブ1の耐久性を確保するために端縁部Aの部分とする必要がある。また、チューブ1の直線部2aから外部へ冷媒が洩れるのを防止するために、少なくとも直線部2aに沿う部分Bにロウ付けする必要がある。なお、固着状態をより強固にするためにロウ付け部を増やしてもよい。また、前記ロウ付けの代わりに溶接を施すことにより、前記ニップル7とチューブ1の端縁部Aとを固着することもできる。
【0030】
ついで補強部6をコルゲート部5の外周に設けるとともに、金属製の締結カラー9を前記コルゲート部5における突条4の外周側の一部を覆うように嵌着したのち、該締結カラー9にかしめなどの加圧を加えて該補強部6の端部を前記補強リング8に固着する。なお、該補強リング8の外周側に補強部6の繊維(補強糸)の滑りを防止するために、たとえば凹凸の滑り止め部10を設けるのが好ましい。
【0031】
前記締結カラー9の長さは、本実施の形態1では、補強リング8の端面から3山まで延長された長さにされているが、本発明においては、これに限定されるものではなく、たとえば1〜10山以内に適宜することができる。
【0032】
実施の形態2
つぎに図3に基づいて本実施の形態2におけるチューブとニップルとの接続構造を説明する。
【0033】
まず、ニップル11の端部を、拡管または絞りを加えることにより、適宜の内径になるように成形するとともに、コルゲート部5側の端部外径をコルゲート部5の外径とほぼ等しい外径に成形する。
【0034】
ついで前記チューブ1の直線部2aに前記適宜の内径に形成されたニップル11の端部を該チューブ1の直線部2aの外側に挿入する。
【0035】
そして、前記ニップル11およびチューブ1をロウ付けにより固着する。この固着に際し、ニップル11とチューブ1のコルゲート部5のロウ付けは、チューブ1の耐久性を確保するために端縁部Aの部分とする必要がある。また、チューブ1の直線部2aから外部へ冷媒が洩れるのを防止するために、少なくとも直線部2aに沿う部分Bにロウ付けする必要がある。なお、固着状態をより強固にするためにロウ付け部を増やしてもよい。また、前記ロウ付けの代わりに溶接を施すことにより、前記ニップル11とチューブ1の端縁部Aとを固着することもできる。
【0036】
ついで補強部6をコルゲート部5の外周に設けるとともに、金属製の締結カラー9を前記コルゲート部5における突条4の外周側の一部を覆うように嵌着したのち、該締結カラー9にかしめなどの加圧を加えて該補強部6の端部を前記ニップル11のコルゲート部5側の端部に固着する。なお、該ニップル11のコルゲート部5側の端部の外周側に補強部6の繊維(補強糸)の滑りを防止するために、たとえば凹凸の滑り止め部10を設けるのが好ましい。
【0037】
前記締結カラー9の長さは、本実施の形態2では、ニップル11の端面から3山まで延長された長さにされているが、本発明においては、これに限定されるものではなく、たとえば1〜10山以内に適宜することができる。
【0038】
【実施例】
つぎに本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はかかる実施例のみに限定されるものではない。
【0039】
実施例1、2
つぎに本実施の形態1、2におけるチューブの接続構造の加圧繰り返し疲労性評価を行なった。このときの補強部としては、アラミド繊維をブレード式に編み組んだものを用いた。また、図4〜6に示されるように、同様に均一な突条21を連続して成形したチューブ22にニップル23をロウ付けしたのち、補強部24を締結リング25で固着した接続構造(比較例1)、連続して突条31を成形したチューブ32に補強リング33を嵌着したのち、ニップル34にロウ付けし、ついで突条31の外周側に補強部35の端部のみを固着する締結カラー36を固着した接続構造(比較例2)および連続して突条41を成形したチューブ42に補強リング43を嵌着したのち、該突条41の3山の内側に沿って延びるニップル44にロウ付けし、ついで突条41の外周側に補強部45の端部のみを固着する締結カラー46を固着した接続構造(比較例3)を用意した。チューブの試験方法はJIS B 8364−1994に準じた。ただし、循環する試験油および雰囲気温度は150℃、最大衝撃圧力は15MPaとした。さらに、冷凍サイクル実機での冷媒の流れによる笛吹き音と圧力損失を測定した。その結果を表1に示す。
【0040】
【表1】
Figure 0004005788
【0041】
試験結果から、比較例1は補強リングを有していないため、補強部の大きなカール部で糸が乱れることから、耐久回数(耐圧性能)が最も低下していることがわかる。比較例2では、補強リングを有することから、比較例1より耐久回数がかなり向上した。しかし、加圧繰り返しコルゲート部における第1突起31aには、内圧による歪が生じ応力が集中するため、25万回までであった。比較例3では、比較例2のニップルを延長させた構造であるが、比較例2と同様に加圧繰り返しコルゲート部における第1突起41aには、内圧による歪が生じ応力が集中するため、耐久回数は低下した。これら比較例1〜3に対して、本実施例1、2では、比較例2の締結カラーを突条の上まで延長させることにより、内圧による歪(応力集中)を抑えることができ、耐久回数を大幅に向上させることができることがわかる。
【0042】
つぎに笛吹き音と圧力損失の評価では、比較例1〜3および実施例1ともに笛吹き音が発生し、圧力損失も6%であり、冷凍サイクルに対し満足できるレベルに至らなかったが、実施例2では、耐久性の向上、笛吹き音の解消および圧力損失の低下に大きな効果が得られた。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したとおり、本発明によれば、高温高圧のCO2冷媒のカーエアコンに使用しても冷媒の透過による洩れがなく、しかもコルゲート部と柔軟性を有する補強部とを組み合せることにより、可撓性を損なうことなく、耐圧性能を向上させることができるため、冷媒輸送時の使用圧力にも充分耐え得ることができる。
【0044】
さらに、ニップルの端部をチューブのコルゲート部側から該チューブの端部の外面に挿入させる接続構造とすることにより、圧力損失を低下させるとともに、笛吹き音を解消させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のチューブおよび接続構造の実施の形態1を示す一部切欠き断面図である。
【図2】図1の補強部の編み方を示す説明図であり、図2(a)はブレード式補強部であり、図2(b)はスパイラル式補強部であり、図2(c)はニット編み上げ式補強部を示す。
【図3】本発明のチューブおよび接続構造の実施の形態2を示す一部切欠き断面図である。
【図4】比較例1のチューブと接続構造を示す一部切欠き断面図である。
【図5】比較例2のチューブと接続構造を示す一部切欠き断面図である。
【図6】比較例3のチューブと接続構造を示す一部切欠き断面図である。
【符号の説明】
1、11 チューブ
2 パイプ部
2a 直線部
3 端面
4 突条
5 コルゲート部
6 補強部
7 ニップル
8 補強リング
9 締結カラー
10 滑り止め部

Claims (2)

  1. 金属製のパイプ部の端面から所定の距離の部位を除きコルゲート加工することにより、該パイプ部の軸方向に環状の突条が独立して成形されたコルゲート部を有しているとともに、該コルゲート部の外周に柔軟性を有する補強部が設けられてなる冷媒輸送用チューブとニップルとの接続構造であって、
    (a)前記ニップルの端部が前記チューブのコルゲート部側から該チューブの端部の内面に挿入されており、
    (b)前記チューブの端部外側にコルゲート部の外径と等しい外径の金属製の補強リングが設けられており、
    (c)前記ニップル、チューブの端部、コルゲート部の端縁部および補強リングがロウ付けにより固着されており、
    (d)前記補強リングと補強部の外側に前記コルゲート部における突条の外周側の一部を覆うように嵌着されてなる金属製の締結カラーが設けられており、
    (e)前記締結カラーが加圧により該補強部の端部を前記補強リングに固着してなる冷媒輸送用チューブの接続構造。
  2. 金属製のパイプ部の端面から所定の距離の部位を除きコルゲート加工することにより、該パイプ部の軸方向に環状の突条が独立して成形されたコルゲート部を有しているとともに、該コルゲート部の外周に柔軟性を有する補強部が設けられてなる冷媒輸送用チューブとニップルとの接続構造であって、
    (a)前記ニップルの端部が前記チューブのコルゲート部側から該チューブの端部の外面に挿入されており、
    (b)前記ニップルのコルゲート部側の端部がコルゲート部の外径と等しい外径となっており、
    (c)前記ニップル、チューブの端部およびコルゲート部の端縁部がロウ付けにより固着されており、
    (d)前記ニップルのコルゲート部側の端部と補強部の外側に前記コルゲート部における突条の外周側の一部を覆うように嵌着されてなる金属製の締結カラーが設けられており、
    (e)前記締結カラーが加圧により該補強部の端部を前記ニップルのコルゲート部側の端部に固着して
    なる冷媒輸送用チューブの接続構造。
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