JP4004585B2 - 新規コンドロイチン硫酸分解酵素 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規なコンドロイチン硫酸分解酵素、当該酵素の結晶、当該酵素を認識する抗体、当該酵素の製造方法、当該酵素を用いた不飽和型グリコサミノグリカン二糖の製造方法およびグリコサミノグリカンの分析方法、当該酵素と担体とからなる組成物、ならびに、当該組成物からなる椎間板ヘルニア治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
コンドロイチン硫酸分解酵素(以下、コンドロイチナーゼともいう)は、グリコサミノグリカンの一種であるコンドロイチン硫酸を分解する能力を有する酵素の総称であり、ある種の微生物が産生することが知られている。
【0003】
特にプロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)が産生するコンドロイチナーゼは、従来からコンドロイチナーゼABC(Chondoroitinase ABC)[EC 4.2.2.4]として広く知られており、この酵素は、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、コンドロイチンおよびヒアルロン酸に作用し、不飽和二糖を生成することが報告されている。しかしながら、このコンドロイチナーゼABCを極めて高純度に精製すると(以下、この極めて高純度に精製されたコンドロイチナーゼABCを「精製コンドロイチナーゼABC」ともいう)、この精製コンドロイチナーゼABCはグリコサミノグリカンを完全に不飽和二糖にまでは分解せず、最終分解物として不飽和二糖と不飽和オリゴ糖との混合物を生成することが判明した(特開平6−153947号)。この精製コンドロイチナーゼABCは、反応初期に少量の大きな不飽和オリゴ糖を生成することが特開平6−153947号公報に開示されている。
【0004】
プロテウス・ブルガリスが産生する酵素に関しては、WO95/29256号公報及びWO95/29232号公報等に「コンドロイチナーゼ I(chondroitinase I)」および「コンドロイチナーゼ II(chondroitinase II)」として2種類開示されている。これらの公報には、(1)コンドロイチナーゼ Iは、コンドロイチン硫酸およびコンドロイチン硫酸プロテオグリカンのコンドロイチン硫酸鎖には作用するがコンドロイチン硫酸四糖には作用しないこと、(2)コンドロイチナーゼIIは、コンドロイチン硫酸四糖には作用するがコンドロイチン硫酸およびコンドロイチン硫酸プロテオグリカンのコンドロイチン硫酸鎖には作用しないことが開示されている。
【0005】
しかし、コンドロイチン硫酸、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンのコンドロイチン硫酸鎖およびコンドロイチン硫酸四糖のいずれにも作用するコンドロイチン硫酸分解酵素については従来知られていなかった。
【0006】
また現在、種々のグリコサミノグリカン分解酵素が知られているが、グリコサミノグリカンや、プロテオグリカンのグリコサミノグリカン鎖にエキソ型に作用し、非還元末端側から順次、不飽和二糖を遊離させる酵素は知られていなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
コンドロイチン硫酸およびコンドロイチン硫酸プロテオグリカンのコンドロイチン硫酸鎖(高分子量のコンドロイチン硫酸)から、コンドロイチン硫酸四糖(低分子量のコンドロイチン硫酸)に至るまで、種々の分子サイズのコンドロイチン硫酸に対して幅広い基質特異性を有し、かつエキソ型の分解様式を有するコンドロイチン硫酸分解酵素が得られれば、コンドロイチン硫酸二糖の製造や、コンドロイチン硫酸の分析、特に糖鎖配列解析等に極めて有用であることが期待される。さらに、現在椎間板ヘルニア等の治療薬としての利用が期待されている精製コンドロイチナーゼABCと同様に、医薬品としての利用も期待される。
【0008】
すなわち本発明が解決すべき課題は、新規なコンドロイチン硫酸分解酵素、特に種々の分子サイズのコンドロイチン硫酸に作用するエキソ型のコンドロイチン硫酸分解酵素を提供し、さらに当該酵素の結晶、当該酵素を認識する抗体、当該酵素の製造方法、当該酵素を用いた不飽和型グリコサミノグリカン二糖の製造方法、グリコサミノグリカンの分析方法、当該酵素を含有する組成物、当該組成物からなる椎間板ヘルニア治療剤を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者は上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、精製コンドロイチナーゼABCがエンド型酵素であり、不飽和四糖に精製コンドロイチナ−ゼABCを作用させても、不飽和二糖に分解されないことを確認し、このことから、プロテウス・ブルガリスは精製コンドロイチナーゼABC以外に、不飽和オリゴ糖を不飽和型グリコサミノグリカン二糖にまで分解可能なコンドロイチン硫酸分解酵素も産生しているという示唆を得て、プロテウス・ブルガリスから、種々の分子サイズのコンドロイチン硫酸や、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンのコンドロイチン硫酸鎖に作用して、不飽和二糖を生成するエキソ型の新規なコンドロイチン硫酸分解酵素の分離を試み、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、下記の理化学的性質を有するコンドロイチン硫酸分解酵素(以下、「本発明酵素」ともいう)を提供する。
▲1▼作用:
(1)グリコサミノグリカンのN−アセチルヘキソサミニド結合を分解し、完全に分解すると実質的に不飽和型グリコサミノグリカン二糖のみを生成する。
(2)エキソ型酵素である。
▲2▼基質特異性:
コンドロイチン、コンドロイチン 4−硫酸、コンドロイチン 6−硫酸、コンドロイチン硫酸D、コンドロイチン硫酸E、デルマタン硫酸、コンドロイチン 6−硫酸六糖、コンドロイチン 6−硫酸四糖、およびコンドロイチン硫酸プロテオグリカンのコンドロイチン硫酸鎖部分のいずれにも作用する。
ケラタン硫酸、ヘパリンおよびヘパラン硫酸には作用しない。
▲3▼分子量:還元条件下におけるドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動において、約105kDa。
▲4▼アミノ酸組成:
前記酵素の酸加水分解物のアミノ酸分析によりシスチンが検出される。
【0011】
好ましくは、上記の理化学的性質に加え、下記の理化学的性質を有するコンドロイチン硫酸分解酵素を提供する。
▲1▼N末端アミノ酸:
N末端アミノ酸はロイシンである。
▲2▼等電点:
pH約8.45(等電点電気泳動法)
▲3▼至適温度:
40℃付近(基質:コンドロイチン6−硫酸、緩衝液:トリス−塩酸(Tris-HCl)緩衝液、pH:8.0)
▲4▼至適反応pH:
pH8付近(基質:コンドロイチン6−硫酸、緩衝液:Tris-HCl緩衝液、温度:37℃)
また本発明は、上記のコンドロイチン硫酸分解酵素の結晶であって、板状結晶であることを特徴とするコンドロイチン硫酸分解酵素の結晶(以下、「本発明結晶」ともいう)を提供する。
【0012】
さらに本発明は、上記のコンドロイチン硫酸分解酵素を選択的に認識する抗体(以下、「本発明抗体」ともいう)を提供する。
さらに本発明は、コンドロイチン硫酸分解酵素産生能を有する細胞を培養し、該細胞の培養物から上記のコンドロイチン硫酸分解酵素を採取することを特徴とする、上記のコンドロイチン硫酸分解酵素の製造方法(以下、「本発明酵素製造方法」ともいう)を提供する。
【0013】
さらに本発明は、上記のコンドロイチン硫酸分解酵素の基質となりうるグリコサミノグリカンを、上記のコンドロイチン硫酸分解酵素で分解するステップと、この分解生成物から不飽和型グリコサミノグリカン二糖を分画するステップとを少なくとも含むことを特徴とする、不飽和型グリコサミノグリカン二糖の製造方法(以下、「本発明不飽和二糖製造方法」ともいう)を提供する。
【0014】
さらに本発明は、上記のコンドロイチン硫酸分解酵素の基質となりうるグリコサミノグリカンを、上記のコンドロイチン硫酸分解酵素で分解するステップと、この分解生成物を分析するステップとを少なくとも含むことを特徴とする、グリコサミノグリカンの分析方法(以下、「本発明分析方法」ともいう)を提供する。
【0015】
さらに本発明は、上記のコンドロイチン硫酸分解酵素と、上記のコンドロイチン硫酸分解酵素活性に影響を与えない担体とからなる、コンドロイチン硫酸分解酵素含有組成物(以下、「本発明組成物」ともいう)を提供する。
【0016】
さらに本発明は、上記組成物からなる椎間板ヘルニア治療剤(以下、「本発明治療剤」ともいう)を提供する。
なお、本明細書において「不飽和型」とは、糖鎖の非還元末端糖に二重結合等の不飽和結合を有している糖鎖を意味する。
【0017】
また、本明細書において「飽和型」とは、糖鎖の非還元末端糖に二重結合等の不飽和結合を有していない糖鎖を意味する。
本明細書において「グリコサミノグリカン」の用語には、通常の意味で用いるグリコサミノグリカン(多糖)に加え、このグリコサミノグリカンの低分子化物(例えばグリコサミノグリカンオリゴ糖)も包含される。グリコサミノグリカンオリゴ糖としては、例えばグリコサミノグリカン八糖、グリコサミノグリカン六糖、グリコサミノグリカン四糖等が例示される。
【0018】
同様に、本明細書において「コンドロイチン硫酸」の用語には、コンドロイチン 4−硫酸(コンドロイチン硫酸Aとも称される)、コンドロイチン 6−硫酸(コンドロイチン硫酸Cとも称される)、コンドロイチン硫酸D、コンドロイチン硫酸E、コンドロイチン硫酸K等、通常コンドロイチン硫酸として分類されるものや、デルマタン硫酸(以前は「コンドロイチン硫酸B」とも称されていた)、およびこれらの低分子化物(例えばコンドロイチン硫酸オリゴ糖)も包含される。コンドロイチン硫酸オリゴ糖としては、例えばコンドロイチン硫酸八糖、コンドロイチン硫酸六糖、コンドロイチン硫酸四糖等が例示される。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について説明する。
<1>本発明酵素
本発明のコンドロイチン硫酸分解酵素は、高分子から低分子に至るまでの幅広い分子サイズのコンドロイチン硫酸や、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンのコンドロイチン硫酸鎖に作用して、不飽和二糖を生成する、エキソ型の新規なコンドロイチン硫酸分解酵素であり、下記の理化学的性質を有する。
【0020】
▲1▼作用:
(1)グリコサミノグリカンのN−アセチルヘキソサミニド結合を分解し、完全に分解すると実質的に不飽和型グリコサミノグリカン二糖のみを生成する。すなわち、本発明酵素の基質となるグリコサミノグリカンに本発明酵素を作用させて完全に分解すると、生成物は実質的に不飽和型グリコサミノグリカン二糖のみからなる。この点は、例えば特開平6−153947号に開示されている精製コンドロイチナーゼABC(不飽和二糖と不飽和オリゴ糖とを生成する)とは明確に異なる点である。
【0021】
なお本発明酵素の基質となるグリコサミノグリカンに本発明酵素を作用させ、グリコサミノグリカンが完全に分解される前に酵素反応を停止させると、限定的に低分子化されたグリコサミノグリカンと、不飽和型グリコサミノグリカン二糖とから実質的になる混合物が得られる。
【0022】
(2)エキソ型酵素である。具体的には、グリコサミノグリカンの非還元末端から順次、グリコサミノグリカン二糖を切り出すエキソ型のリアーゼである。この点は、エンド型酵素である精製コンドロイチナーゼABC(特開平6−153947号)とは明確に異なる点である。
【0023】
なお、本発明酵素のように、グリコサミノグリカンを非還元末端側からエキソ型で脱離的に分解する酵素(エキソリアーゼ)は従来知られておらず、本発明酵素によって初めて見い出されたものであり、本発明酵素の重要な特徴である。
【0024】
▲2▼基質特異性:
コンドロイチン、コンドロイチン 4−硫酸、コンドロイチン 6−硫酸、コンドロイチン硫酸D、コンドロイチン硫酸E、デルマタン硫酸、コンドロイチン 6−硫酸六糖、コンドロイチン 6−硫酸四糖、およびコンドロイチン硫酸プロテオグリカンのコンドロイチン硫酸鎖部分のいずれにも作用する。また、ヒアルロン酸にも作用することが確認されている。
【0025】
ケラタン硫酸、ヘパリンおよびヘパラン硫酸には作用しない。
この点は、コンドロイチン硫酸四糖には作用しない精製コンドロイチナーゼABC(特開平6−153947号)およびコンドロイチナーゼ I(WO95/29256号)とは明確に異なる点である。またコンドロイチン 6−硫酸およびコンドロイチン硫酸プロテオグリカンのコンドロイチン硫酸鎖には作用しないコンドロイチナーゼ II(WO95/29256号およびWO95/29232号)とも明確に異なる。このように本発明酵素は、これら公知の酵素とは基質特異性の面において明確に区別される。なお、基質のうち糖残基数を示していない多糖は、一般に、十数糖以上の多糖である。
【0026】
▲3▼分子量:還元条件下におけるドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動において、約105kDa。
【0027】
▲4▼アミノ酸組成:
本発明酵素の酸加水分解物のアミノ酸分析によりシスチンが検出される。酸加水分解物のアミノ酸分析の場合、検出されるシスチンが、システイン残基由来なのか、シスチン由来なのかを区別することができない。すなわちこのアミノ酸分析によりシスチンが検出される原因としては、(1)本発明酵素にシステイン残基が存在し、本発明酵素の酸加水分解中にシステイン残基が酸化されてシスチンが生じた可能性、(2)本発明酵素にシスチンが存在している可能性、(3)本発明酵素にシステイン残基とシスチンの両方が存在している可能性の3つが考えられる。このことから、本発明酵素には少なくともシステイン残基および/またはシスチンが存在することが示される。
【0028】
精製コンドロイチナーゼABC(特開平6−153947号)にはシステイン残基およびシスチンのいずれもが含まれないことが本発明者により確認されており、またコンドロイチナーゼ IおよびII(WO95/29256号)にもシステイン残基およびシスチンのいずれもが含まれないことから、本発明酵素はこれら公知の酵素とは構造面においても明確に区別される。
【0029】
システイン残基は、そのSH基が活性中心の一要素として寄与したり、酸化してシスチンを形成することにより立体構造の維持に関与したりする残基であり、この残基の有無は酵素の特性に大きく影響すると考えられる。またシスチンは、酵素の高次構造保持に重要な役割を果たすものであり、システイン残基と同様に酵素の特性に大きく影響すると考えられる。
【0030】
本発明酵素は、好ましくは、上記の理化学的性質に加え下記の理化学的性質を有するコンドロイチン硫酸分解酵素である。
▲1▼N末端アミノ酸:
N末端アミノ酸はロイシンである。
▲2▼等電点:
pH約8.45(等電点電気泳動法)
▲3▼至適温度:
40℃付近(基質:コンドロイチン 6−硫酸、緩衝液:Tris-HCl緩衝液、pH:8.0)
▲4▼至適反応pH:
pH8付近(基質:コンドロイチン 6−硫酸、緩衝液:Tris-HCl緩衝液、温度:37℃)
【0031】
本発明酵素は、より好ましくは、上記の理化学的性質に加え、下記の理化学的性質を有するコンドロイチン硫酸分解酵素である。
▲1▼アミノ酸組成:
Asx 125 Met 25
Thr 75 Ile 50
Ser 58 Leu 106
Glx 125 Tyr 41
Pro 41 Phe 38
Gly 61 Lys 62
Ala 86 His 29
1/2Cys 2 Arg 35
Val 41 Trp 測定せず
(組成は1000アミノ酸残基あたりの数値で示した。数値は実測値であり、補正等は行っていない。アミノ酸組成の測定方法は実施例中で詳述する)
【0032】
▲2▼温度安定性:
(1)37℃で30分間インキュベートすることにより、約10%失活する(酵素濃度:0.1mg/ml、緩衝液:Tris-HCl緩衝液、pH:8.0、基質:コンドロイチン 6−硫酸四糖)
(2)40℃で30分間インキュベートすることにより、約23%失活する(酵素濃度:0.1mg/ml、緩衝液:Tris-HCl緩衝液、pH:8.0、基質:コンドロイチン 6−硫酸四糖)
(3)100℃で1分間インキュベートすることにより、約100%失活する(酵素濃度:0.1mg/ml、緩衝液:Tris-HCl緩衝液、pH:8.0、基質:コンドロイチン 6−硫酸四糖)
【0033】
▲3▼pH安定性:
pH約4.5〜約8.5の範囲で2時間インキュベートしても、約70%以上の酵素活性が保持される(酵素濃度:0.5mg/ml、緩衝液:リン酸緩衝液、温度:37℃、基質:コンドロイチン 6−硫酸四糖)
【0034】
▲4▼阻害:
1mMのZn2+によって酵素活性がほぼ完全に阻害される。
1mMのNi2+によって酵素活性が50%以上阻害される。
【0035】
▲5▼ミカエリス定数(Km):
約80μM(基質:コンドロイチン 6−硫酸)
約33μM(基質:コンドロイチン 6−硫酸四糖)
(ヘキスロン酸残基をベースにしたモル濃度でKm値を表記した)
【0036】
▲6▼比活性:
約40単位/mg(基質:コンドロイチン 6−硫酸、反応温度;37℃、pH:8.0)
約150単位/mg(基質:コンドロイチン 6−硫酸六糖、反応温度;37℃、pH:8.0)
約200単位/mg以上(基質;コンドロイチン 6−硫酸四糖、反応温度;37℃、pH:8.0)
【0037】
なお本明細書において酵素「1単位」とは、1分間に1μmol基質を分解する酵素量、すなわち、基質から1分間に1μmolの不飽和型コンドロイチン硫酸二糖を遊離する酵素量である。
【0038】
▲7▼結晶化した場合の結晶形:
板状結晶(ポリエチレングリコールを用いて結晶化)
【0039】
本発明酵素は、上記の理化学的性質を有する限りにおいてその由来は特に限定されるものではなく、細胞(例えば微生物細胞)等の天然物由来のものや、遺伝子工学的手法により製造されたものなどを利用することができる。天然物由来の酵素として細胞由来の酵素を用いる場合、プロテウス属に属する微生物細胞由来の酵素であることが好ましく、プロテウス・ブルガリス由来の酵素であることがより好ましい。プロテウス・ブルガリスとしてより具体的には、プロテウス・ブルガリス NCTC 4636株(ATCC 6896株またはIFO 3988株に同じ)が例示され、かつ好ましい。なお細胞を用いた本発明酵素の製造方法は、後述の「<4>本発明酵素製造方法」で詳しく説明する。
【0040】
また、本発明酵素の遺伝子を公知の方法に従ってクローニングし、適当な宿主に導入して、発現させることにより本発明酵素を得ることができる。例えば、本発明酵素の特異的なグリコサミノグリカン分解活性を指標に用い、プロテウス・ブルガリスのDNAライブラリーからこの酵素をコードするDNAを単離し、これを遺伝子組換え技術によりベクターに入れ、宿主細胞に導入し、そこで発現させることにより本発明酵素を得ることができる。また、クローニングを、本発明酵素に特異的な抗体を作成しこれを用いて行うこともできる(本発明酵素に特異的な抗体の作製方法については、後述の「<3>本発明抗体」で詳しく説明する)。
あるいは、本発明酵素のN末端側のアミノ酸配列を決定し、この配列から推定されるヌクレオチド配列を有するDNAをプローブとしてクローニングを行うことができる。発現した酵素は、「<4>本発明酵素製造方法」に記載の抽出・精製方法を用いて回収できる。
【0041】
<2>本発明結晶
本発明結晶は、本発明コンドロイチン硫酸分解酵素の結晶であって、板状結晶であることを特徴とする。本発明結晶の具体的形状の一例を、図2のBに示す。本発明結晶の製造方法は特に限定されないが、本発明酵素の精製酵素溶液(後述の「<4>本発明酵素製造方法」で詳述)を、両末端が水酸基である構造を有するポリエーテルと混合接触させて結晶化することにより製造することが好ましい。両末端が水酸基である構造を有するポリエーテルとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が例示されるが、ポリエチレングリコールが好ましく、分子量4,000〜6,000程度のポリエチレングリコールがより好ましい。例えば本発明酵素の精製酵素溶液に、ポリエチレングリコール4000溶液を、わずかに濁りが生じる程度まで添加し、室温〜4℃程度で結晶が生成するまで放置することにより、本発明結晶を製造することができる。
【0042】
<3>本発明抗体
本発明抗体は、本発明酵素を選択的に認識する抗体である。本発明抗体は、本発明酵素を抗原として用い、常法に従って、例えば以下のように作製することが可能である。
【0043】
抗原として用いる本発明酵素の製造方法は、後述の「<4>本発明酵素製造方法」で詳しく述べる。
ポリクローナルな本発明抗体は、例えばウサギ、マウス、ラット、モルモット、ヤギ、ヒツジ等の被免疫動物を上記の抗原で免疫し、これらの動物から血清を採取することによって得ることができる。被免疫動物を免疫する際に、補助剤(アジュバント)を併用することは抗体産生細胞を賦活するので望ましい。得られた抗血清から、常法によってイムノグロブリン分画を精製してもよい。
【0044】
モノクローナルな本発明抗体は、例えば次のようにして得られる。すなわち、上記抗原をウサギ、マウス、ラット、モルモット、ヤギ、ヒツジ等の被免疫動物の腹腔内、皮下あるいは足蹠(footpad)に投与した後に脾臓または膝窩リンパ節を摘出し、これらから採取した細胞と腫瘍細胞株であるミエローマ細胞とを細胞融合させてハイブリドーマを樹立し、得られたハイブリドーマを連続増殖させ、さらに得られたハイブリドーマから上記抗原に対する特異抗体を継続的に産生する細胞株を選別する。こうして選別された株を好適な培地で培養することによって、培地中にモノクローナルな本発明抗体が得られる。あるいは、マウスの腹腔などの生体内にて前記ハイブリドーマを培養することによって、モノクローナルな本発明抗体を大量に製造することもできる。
【0045】
細胞融合に用いる細胞としては、脾細胞以外にリンパ節細胞および末梢血中のリンパ細胞等を用いることができる。また、ミエローマ細胞株は、異種細胞種由来のものに比べ、同種細胞株由来のものが望ましく、安定な抗体産生ハイブリドーマを得ることができる。
【0046】
得られたポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体の精製法としては、硫酸ナトリウム、硫酸アンモニウム等による塩析、低温アルコール、ポリエチレングリコール等による選択的沈殿分別法、DEAE(ジエチルアミノエチル)−誘導体、CM(カルボキシメチル)−誘導体等のイオン交換体を用いたイオン交換クロマトグラフィー、プロテインA、プロテインG等を用いたアフィニティークロマトグラフィー、ハイドロキシアパタイトクロマトグラフィー、抗原を固定化した担体を用いた免疫吸着クロマトグラフィー、ゲル濾過法、電気泳動法、超遠心法等を挙げることができる。
【0047】
なお本発明抗体は、フラグメント化したものであってもよい。ただしフラグメント化した抗体に抗原結合部位(Fab)が保存されていることが、抗原と抗体の結合の点から必要である。フラグメント化した本発明抗体として具体的には、例えば抗原結合部位を分解しないプロテアーゼ(例えばプラスミン、ペプシン、パパイン等)で本発明抗体を処理して得られるFabを含むフラグメントが挙げられる。
【0048】
また、本発明抗体をコードする遺伝子の塩基配列もしくは抗体のアミノ酸配列が決定されれば、遺伝子工学的にFabを含むフラグメントやキメラ抗体(例えば本発明抗体のFab部分を含むキメラ抗体等)を作製することができる。
【0049】
なお本明細書中では、これら本発明抗体のFab部分を含むフラグメントやキメラ抗体も、「本発明抗体」という用語に包含される。
本発明抗体は、標識物質に結合することによって標識化されていてもよい。抗体の標識に用いることができる標識物質としては、酵素(ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、ルシフェラーゼ、アセチルコリンエステラーゼ等)、アイソトープ(125I、131I、3H等)、蛍光色素(ルミノール、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、ウンベリフェロン、7−アミノ−4−メチルクマリン−3−酢酸等)、化学発光物質、ハプテン、ビオチン、アビジン(例えば、ストレプトアビジン等)が挙げられるが、タンパク質の標識に通常使用可能なものであれば、特に限定されない。なお、ここで標識物質とは、ビオチンのようにそれ自体を直接検出せず、その物質と特異的結合能を有する物質(例えばアビジン)に検出可能な標識を結合したものを組み合わせて用いる方法に使用する物質も包含する。また金属コロイドやラテックス等も、濁度法や比濁法など光学的手法により検出することが可能であることから、標識物質に包含される。
【0050】
本発明抗体が本発明酵素を選択的に認識することは、抗原として本発明酵素および本発明酵素以外の物質を用い、通常の免疫学的測定法によって確認することができる。免疫学的測定法として具体的には、オクタロニー拡散法、イムノブロッティング法(例えば、ウエスタンブロッティング法等)、標識化免疫測定法(例えば、EIA法、酵素結合イムノソルベントアッセイ法(ELISA法)、ラジオイムノアッセイ法、蛍光イムノアッセイ法等)、フローサイトメトリーによる方法などが挙げられる。これらの方法は、公知の方法[入江 實編、「続ラジオイムノアッセイ」、(株)講談社、1979年5月1日発行、石川栄治ら編、「酵素免疫測定法」、第2版、(株)医学書院、1982年12月15日発行、Method in Enzymology, Vol.92 (1983), Immunochemical Techniques, Part E: Monoclonal Antibodies and General Immunoassay Methods, アカデミックプレス社発行 参照]に準じて実施することができる。
【0051】
<4>本発明酵素製造方法
本発明酵素製造方法は、コンドロイチン硫酸分解酵素産生能を有する細胞を培養し、該細胞の培養物から本発明酵素を採取することを特徴とする。
【0052】
コンドロイチン硫酸分解酵素産生能を有する細胞は、本発明酵素を産生する細胞であれば特に限定されないが、プロテウス属に属する微生物細胞が好ましく、プロテウス・ブルガリスがより好ましく、プロテウス・ブルガリス NCTC 4636株(ATCC 6896株、IFO 3988株に同じ)が特に好ましい。なお、コンドロイチン硫酸分解酵素産生能を有する細胞としては、本発明酵素の遺伝子を公知の方法に従ってクローニングし、当該遺伝子を適当な宿主細胞に導入して得られる形質転換細胞を用いることもできる。
【0053】
またコンドロイチン硫酸分解酵素産生能を有する細胞を、細胞が死滅せず、かつ本発明酵素発現能が消失しない程度の物理的刺激(例えばX線、γ線、紫外線等の照射処理)、化学的刺激(例えばエチルメタンスルホネート、ニトロソグアニジン等のアルキル化剤による処理)、形質転換、形質導入、接合、遺伝子操作等の通常用いられる細胞変異処理方法によって処理して、本発明酵素の産生能を高めた細胞を用いてもよい。
【0054】
コンドロイチン硫酸分解酵素産生能を有する細胞の培養は、細胞の種類や特性に応じた通常の細胞培養方法に従って行うことができる。用いる培地や培養条件等は、当業者が適宜決定できる事項であり、特に限定されない。
【0055】
例えば、コンドロイチン硫酸分解酵素産生能を有する細胞としてプロテウス・ブルガリスを用いる場合には、以下のように培養することができる。
培養方法としては、液体培地による振盪または撹拌培養法が好ましい。
【0056】
培養に用いる培地は、プロテウス・ブルガリスが栄養源として利用できる培地成分を含むものであればよい。例えば炭素源として、グルコース、マンノース、澱粉、糖蜜、液化澱粉、グリセリン等を用いることができる。窒素源としては、例えば肉エキス、酵母エキス、ペプトン、カゼイン加水分解物、ゼラチン、コーンミール、大豆粉、リン酸アンモニウム、硫酸アンモニウム、尿素等を用いることができる。また、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、塩化カリウム、炭酸カルシウム、塩化マンガン、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム等の各種無機塩類も必要に応じて添加することができる。
【0057】
さらに、コンドロイチン硫酸分解酵素の誘導物質として、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、ヒアルロン酸、コンドロイチンなどを単独あるいは2種類以上組み合わせて培地に添加することにより、コンドロイチン硫酸分解酵素の産生能を高めることもできる。このような培地成分は、適宜組み合わせてもよく、また培養途中で添加してもよい。
【0058】
培養温度は37℃前後が好ましく、培養時間は10〜30時間が好ましい。
以上述べた培養条件は、使用する細胞の特性に応じて、適宜最適な条件を選択することができる。
【0059】
上記のように細胞を培養し、得られた培養物から、遠心分離法やろ過法等の一般的な細胞の採取方法によって細胞を分取する。
本発明酵素は、例えばこのような細胞から、通常の酵素の抽出、精製方法によって得ることができる。
【0060】
本発明酵素の抽出方法として具体的には、ホモジナイズ、ガラスビーズミル法、音波処理、浸透ショック法、凍結融解法等の細胞破砕による抽出、界面活性剤抽出、またはこれらの組合わせ等の処理操作が挙げられる。
【0061】
例えばプロテウス・ブルガリスから本発明酵素を抽出する場合には、界面活性剤を用いることが好ましい。抽出に用いる界面活性剤としては、非イオン性界面活性剤が好ましく、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンp−t−オクチルフェニルエーテル、ポリソルベート等が好ましい。これらのうち、特に好ましい界面活性剤として、ポリオキシエチレンラウリルエーテル(polyoxyethylene lauryl ether;POELEともいう。例えば Nikkol BL-9EX(商品名)等)などのポリオキシエチレンアルキルエーテル類を挙げることができる。これらの界面活性剤を用いてプロテウス・ブルガリスから酵素を抽出すると、酵素の抽出効率を高めることができるばかりでなく、他の抽出方法と比較して、酵素以外の夾雑蛋白や核酸あるいはプロテアーゼの混入の少ない酵素抽出液を得ることができる。
【0062】
より具体的には、プロテウス・ブルガリスの湿細胞(菌体)に、前記界面活性剤を2〜10%程度含む緩衝液を加えて細胞懸濁液とし、15〜45℃程度、好ましくは37℃前後で約0.5〜10時間加温し、その後懸濁液を冷却し、遠心分離等の分離手段で細胞残渣と上清液(抽出液)とに分離することにより抽出を行うことができる。
【0063】
抽出液からの本発明酵素の精製方法として具体的には、例えば硫酸アンモニウム(硫安)や硫酸ナトリウム等による塩析、遠心分離、透析、限外濾過法、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィー、ゲル濾過法、ゲル浸透クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、電気泳動法、ザイモグラフィー(Anal. Biochem. 225, 333-340 (1995))等や、これらの組合わせ等の処理操作が挙げられる。
【0064】
なお、これらの中でも、イオン交換クロマトグラフィーを用いることが好ましく、陽イオン交換クロマトグラフィーを用いることがより好ましい。
陽イオン交換クロマトグラフィーの担体としては、交換基としてカルボキシメチル基を有する担体(市販品としてはCMセファデックス、CMセファロース(いずれも商品名、ファルマシア社製)、CMセルロファイン(商品名、生化学工業株式会社販売)、CMトヨパール(商品名、東ソー株式会社製)等)や、交換基としてスルホアルキル基を有する担体(市販品としては、Sセファロース、SPセファデックス、モノS(いずれも商品名、ファルマシア社製)、SPセルロファイン(商品名、生化学工業株式会販売)、SPトヨパール(商品名、東ソー株式会社製)等)が例示される。この中でも、交換基としてカルボキシメチル基を有する担体を用いることが好ましい。
【0065】
中性付近のpHの緩衝液と、塩を含有する緩衝液とを用い、前記の陽イオン交換担体を用いたイオン交換クロマトグラフィーを行うことによって、本発明酵素を精製することができる。こうしたクロマトグラフィーで本発明酵素の溶出される画分を集め、脱塩することにより、本発明酵素の精製酵素溶液が得られる。この精製酵素溶液を用いて、本発明結晶を製造することができる(上記「<2>本発明結晶」を参照)。また、この精製酵素溶液を凍結乾燥することによって、精製された本発明酵素の凍結乾燥品を得ることもできる。
最も簡便かつ好ましい本発明酵素製造方法としては、以下の方法が例示できる。プロテウス・ブルガリスの湿菌体に、3〜10%程度のポリオキシエチレンラウリルエーテル(POELE)を含む中性付近pHの緩衝液(約20mMリン酸緩衝液が好ましい)を3〜5倍量程度加え、よく撹拌して懸濁し、この懸濁液を約30〜40℃下で0.5〜3時間程度加温する。このとき、菌体が沈澱しないように時々または連続的に懸濁液を撹拌する。その後、懸濁液に中性付近pHの緩衝液(約10〜50mMリン酸緩衝液が好ましい)を加えて約2〜4倍量に希釈し、この液を低温下で遠心分離して清浄な上清液を分取する。この上清液を、必要に応じて水で希釈してイオン強度を下げ、カルボキシメチル基を有する担体を詰めたカラムに通し、本発明酵素をカラムの担体に吸着させる。このカラムを水や中性付近pHの緩衝液(約40mMリン酸緩衝液が好ましい)で洗浄した後、塩化ナトリウムを含む中性付近pHの緩衝液(約40mMリン酸緩衝液が好ましい)を用いた塩濃度の直線濃度勾配により本発明酵素を溶出する。この直線濃度勾配の際の緩衝液のpHは6〜7の範囲が好ましい。このクロマトグラフィーでは、まず従来から知られているコンドロイチナーゼABC(特開平6−153947号;前述の「精製コンドロイチナーゼABC」に相当)が溶出されてくる。この公知のコンドロイチナーゼABCの溶出が完了した後、遅れて本発明酵素が溶出される。この画分を集め、分子量約30kDaカットの限外ろ過装置や透析膜等を用いて脱塩し、本発明酵素の精製酵素溶液を得ることができる。さらに一般的な凍結乾燥機で凍結乾燥することによって、本発明酵素の凍結乾燥品を得ることもできる。
【0066】
このような方法により、プロテウス属に属する微生物細胞(好ましくはプロテウス・ブルガリス)から、公知のコンドロイチナーゼABC(特開平6−153947)と本発明酵素とを分別することもできる。すなわち本発明には、プロテウス属に属する微生物細胞を界面活性剤(好ましくはポリオキシエチレンラウリルエーテル)で処理して酵素を抽出し、この抽出液をイオン交換クロマトグラフィーに付して、公知のコンドロイチナーゼABC(特開平6−153947)と本発明酵素とを分別する方法も包含する。
【0067】
<5>本発明不飽和二糖製造方法
本発明不飽和二糖製造方法は、本発明酵素の基質となりうるグリコサミノグリカンを本発明酵素で分解するステップと、この分解生成物から不飽和型グリコサミノグリカン二糖を分画するステップとを少なくとも含むことを特徴とする。
【0068】
本発明酵素の基質となりうるグリコサミノグリカンは、本発明酵素が作用しうるグリコサミノグリカンである限りにおいて特に限定されないが、コンドロイチン、コンドロイチン 4−硫酸、コンドロイチン 6−硫酸、コンドロイチン硫酸D、コンドロイチン硫酸E、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン(コンドロイチン硫酸鎖部分)、ヒアルロン酸、およびこれらのオリゴ糖(例えばコンドロイチン 6−硫酸八糖、コンドロイチン 6−硫酸六糖、コンドロイチン 6−硫酸四糖など)が例示される。
【0069】
本発明不飽和二糖製造方法により得られる不飽和型グリコサミノグリカン二糖の組成は、原料となるグリコサミノグリカンの二糖組成を反映するので、所望の不飽和型グリコサミノグリカン二糖に応じて原料となるグリコサミノグリカンを当業者が適宜選択することができる。原料となるグリコサミノグリカンを本発明酵素で完全に分解することにより、実質的にそれぞれのグリコサミノグリカン由来の不飽和型グリコサミノグリカン二糖のみを製造することができる。
【0070】
例えば、コンドロイチンを原料にするとΔDi−0S(2-acetamido-2-deoxy-3-O-(β-D-gluco-4-enopyranosyluronic acid)-D-galactose)を得ることができ、コンドロイチン 4−硫酸を原料にするとΔDi−4S(2-acetamido-2-deoxy-3-O-(β-D-gluco-4-enopyranosyluronic acid)-4-O-sulfo-D-galactose)を得ることができ、コンドロイチン 6−硫酸を原料にするとΔDi−6S(2-acetamido-2-deoxy-3-O-(β-D-gluco-4-enopyranosyluronic acid)-6-O-sulfo-D-galactose)を得ることができ、コンドロイチン硫酸Dを原料にするとΔDi−diSD(2-acetamido-2-deoxy-3-O-(2-O-sulfo-β-D-gluco-4-enopyranosyluronic acid)-6-O-sulfo-D-galactose)を得ることができ、コンドロイチン硫酸Eを原料にするとΔDi−diSE(2-acetamido-2-deoxy-3-O-(β-D-gluco-4-enopyranosyluronic acid)-4,6-bis-O-sulfo-D-galactose)を得ることができ、デルマタン硫酸を原料にするとΔDi−diSB(2-acetamido-2-deoxy-3-O-(2-O-sulfo-β-D-gluco-4-enopyranosyluronic acid)-4-O-sulfo-D-galactose)を得ることができ、ヒアルロン酸を原料にするとΔDi−HA(2-acetamido-2-deoxy-3-O-(β-D-gluco-4-enopyranosyluronic acid)-D-glucose)を得ることができる。
【0071】
また、上記のグリコサミノグリカンから飽和型グリコサミノグリカンオリゴ糖を調製し(例えばコンドロイチン、コンドロイチン 4−硫酸、コンドロイチン 6−硫酸またはヒアルロン酸に、ウシやヒツジ由来のヒアルロニダーゼを十分に作用させることにより、飽和型グリコサミノグリカン四糖や飽和型グリコサミノグリカン六糖を調製することができる)、これに本発明酵素を作用させることによって、飽和型グリコサミノグリカン二糖と不飽和型グリコサミノグリカン二糖との混合物を得ることができる。この混合物を後述の分画方法により、飽和型グリコサミノグリカン二糖と不飽和型グリコサミノグリカン二糖とに分離することができる。すなわち本発明には、飽和型グリコサミノグリカンオリゴ糖(好ましくは飽和型グリコサミノグリカン四糖または六糖)を本発明酵素で分解するステップと、この分解生成物から飽和型グリコサミノグリカン二糖と不飽和型グリコサミノグリカン二糖とを分画するステップとを少なくとも含むことを特徴とする、飽和型および/または不飽和型グリコサミノグリカン二糖の製造方法も包含される。
【0072】
また、上記のグリコサミノグリカンに本発明酵素を作用させ、本発明酵素が完全に上記のグリコサミノグリカンを分解しきる前に本発明酵素の作用を除去することにより、低分子化したグリコサミノグリカンと不飽和型グリコサミノグリカン二糖とから実質的になる混合物を得ることもできる。本発明酵素の作用の除去方法としては、酵素を失活させる方法、酵素活性を阻害する方法、酵素と基質とを分離する方法等が例示される。本発明酵素の失活および酵素活性阻害の具体的方法は、本発明酵素の理化学的性質を参照することにより、当業者であれば容易に理解されることである。本発明酵素の作用を除去するタイミングは、グリコサミノグリカンが所望の分子サイズまで低分子化された時である。このタイミングは、酵素反応の温度およびpH、本発明酵素の濃度、基質として用いるグリコサミノグリカンの種類、濃度および分子サイズ、所望のグリコサミノグリカンの分子サイズ等により異なるが、予備実験等により当業者が適宜決定できる事項である。
【0073】
低分子化したグリコサミノグリカンと不飽和型グリコサミノグリカン二糖との混合物を、後述の分画方法により、低分子化したグリコサミノグリカンと不飽和型グリコサミノグリカン二糖とに分離することができる。すなわち本発明には、本発明酵素の基質となりうるグリコサミノグリカンを本発明酵素で分解するステップと、この分解生成物から低分子化したグリコサミノグリカンと不飽和型グリコサミノグリカン二糖とを分画するステップとを少なくとも含むことを特徴とする、低分子化グリコサミノグリカンおよび/または不飽和型グリコサミノグリカン二糖の製造方法も包含される。この方法で用いる本発明酵素は、エキソ型の分解様式を有することから、所望の分子サイズの低分子化グリコサミノグリカンを製造することができ、また分子サイズの微調整も可能である。
【0074】
これらの方法において、本発明酵素による分解のステップは、本発明酵素の活性が保持されている条件下で行う限りにおいて特に限定されないが、本発明酵素の至適温度、至適反応pHで行うことが好ましく、該pH下で緩衝作用を有する緩衝液中で行うことが好ましい。
【0075】
少量生産であれば、グリコサミノグリカン溶液中に本発明酵素を存在させて作用させればよいが、大量生産する場合、適当な固相(ビーズ等)に本発明酵素を結合(吸着)させたり、ゲルに本発明酵素を包括させたりした固定化酵素や、限外濾過膜、透析膜等を用いる膜型のリアクター等を用いて連続的に酵素を作用させることもできる。
【0076】
上記のグリコサミノグリカンを本発明酵素で分解することにより生じる分解生成物から、不飽和型グリコサミノグリカン二糖を分画するステップにおいては、通常の糖鎖の分離、精製の手法を用いることができる。分画方法としては、例えば、限外濾過法、透析、吸着クロマトグラフィー、陰イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、ゲル濾過法、ゲル浸透クロマトグラフィー等、あるいはこれらの組み合わせ等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
なお分画した不飽和型グリコサミノグリカン二糖を、二糖分析におけるHPLC(後述の「<6>本発明分析方法」参照)と同様の手法により厳密に分画し、同定することにより、高純度のΔDi−0S、ΔDi−4S、ΔDi−6S、ΔDi−diSD、ΔDi−diSE、ΔDi−diSB、ΔDi−HA等を得ることができる。
【0078】
上記のような分画方法により、不飽和型グリコサミノグリカン二糖(必要に応じ、飽和型グリコサミノグリカン二糖や、低分子化されたグリコサミノグリカン)の精製画分が得られる。必要に応じてこの画分を脱塩し、凍結乾燥することによって凍結乾燥品を得ることもできる。
【0079】
<6>本発明分析方法
本発明分析方法は、本発明酵素の基質となりうるグリコサミノグリカンを、本発明酵素で分解するステップと、この分解生成物を分析するステップとを少なくとも含むことを特徴とする。
【0080】
本発明酵素の基質となりうるグリコサミノグリカン、および当該グリコサミノグリカンを本発明酵素により分解するステップについての説明は、前記「<5>本発明不飽和二糖製造方法」と同様である。
【0081】
上記グリコサミノグリカンを本発明酵素で分解することにより生じる分解生成物には、不飽和型グリコサミノグリカン二糖が含有されている。分解生成物中の不飽和型グリコサミノグリカン二糖の組成は、本発明酵素により分解されたグリコサミノグリカンの二糖単位の組成を反映しているので、分解生成物、特に分解生成物中の不飽和型グリコサミノグリカン二糖を、切断部位の還元末端側の糖残基に不飽和が本発明酵素により生じることを考慮して、分析することにより、グリコサミノグリカンの分析を行うことができる。
【0082】
分解生成物中の不飽和型グリコサミノグリカン二糖の分析は、糖鎖工学分野で通常用いられる方法により行うことができる。例えば高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いた二糖分析や、不飽和型グリコサミノグリカン二糖に対する抗体を用いた分析等が挙げられ、特にHPLCを用いた二糖分析が好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0083】
特にHPLCを用いた二糖分析方法は、当業者にとって周知慣用の方法であり、硫酸基の結合数や結合位置等が異なる種々の不飽和型グリコサミノグリカン二糖の混合物をHPLCに付し、不飽和型グリコサミノグリカン二糖を溶出させ、その溶出位置を標準不飽和二糖の溶出位置と比較することにより行うことができる。HPLCの溶出位置は、通常、不飽和型グリコサミノグリカン二糖(当該二糖中のΔ4−ヘキスロン酸(Δ4-hexuronate)残基)に特徴的な紫外部(例えば波長232nm)の吸収によりモニターできる。各不飽和型グリコサミノグリカン二糖が由来する二糖単位の、グリコサミノグリカン中での含量は、その溶出パターンの積分値(面積)を、濃度既知の標準不飽和二糖の溶出パターンの積分値(面積)と比較することにより求めることができる。近接する溶出位置をもつΔDi−UA2S(2-acetamido-2-deoxy-3-O-(2-O-sulfo-β-D-gluco-4-enopyranosyluronic acid)-D-galactose)、ΔDi−4SおよびΔDi−6Sの区別、並びにΔDi−diSBとΔDi−diSEの厳密な区別は、特異的なスルファターゼ(例えばコンドロ−6−スルファターゼ等)による消化により行うことができる。例えば不飽和型グリコサミノグリカン二糖をコンドロ−6−スルファターゼにより処理した結果、HPLCの溶出位置がΔDi−4Sの位置にシフトした分がΔDi−diSEであると同定される。また、溶出位置が近接する不飽和型グリコサミノグリカン二糖同士の分離が可能なHPLCカラム(例えば、ゾルバックス SAX(Zorbax SAX)カラム;Rockland Technologies社製等)を用いて、これら不飽和型グリコサミノグリカン二糖を厳密に区別することも可能である。
【0084】
また、本発明分析方法で用いる本発明酵素が、上記グリコサミノグリカンの非還元末端側から、順次、グリコサミノグリカン二糖を切り出すように作用するエキソ型酵素であることから、本発明分析方法により、グリコサミノグリカンの二糖単位の配列を決定することもできる。
【0085】
また本発明分析方法により、グリコサミノグリカンの側鎖分析を行うこともできる。
【0086】
<7>本発明組成物
本発明組成物は、本発明酵素と、本発明酵素活性に影響を与えない担体とからなる。本発明酵素は、上記の本発明結晶の形態であってもよい。
【0087】
本発明組成物において用いる本発明酵素および本発明結晶については、前記「<1>本発明酵素」、「<2>本発明結晶」および「<4>本発明酵素製造方法」で詳述した。
【0088】
本発明組成物において用いることができる担体は、本発明酵素活性に影響を与えない限りにおいて特に限定されない。本発明酵素活性に影響を与える物質としては、例えばZn2+、Ni2+を生じる物質が挙げられる。例えば本発明組成物の溶液中にZn2+やNi2+が1mM程度存在すると、本発明酵素の活性は少なくとも50%以上阻害されるため、このようなイオンを生じる物質は本発明組成物中の担体として用いないことが好ましい。また、一般的に酵素を失活させる可能性がある物質(例えば有機溶媒等)も、本発明組成物中の担体として用いないことが好ましい。
【0089】
本発明組成物中の担体として用いることができる物質は、例えばアルブミン(例えばウシ血清アルブミン等)、グリセリン、pH調節剤(例えば中性付近pHの緩衝剤)、医薬分野において通常用いられる担体(詳細は後述の「<8>本発明治療剤」参照)のうち本発明酵素活性に影響を与えない担体等、またはこれらの組み合わせ等が例示される。本発明組成物は、試薬組成物および医薬組成物等として用いることができるが、医薬組成物として用いる場合の担体は、本発明酵素活性に影響を与えないものであると同時に、投与対象動物(ヒト等)に対して悪影響(例えば抗原性や毒性等)を及ぼすものであってはならない。本発明組成物に用いる担体は、上記のような条件や、本発明組成物の提供形態、使用目的、使用方法等を考慮の上、当業者が適宜決定することができる。また本発明組成物中の、本発明酵素と、本発明酵素活性に影響を与えない担体との混合比も特に限定されず、当業者が適宜決定することができる。
【0090】
なお本発明組成物は、溶液状態、凍結状態、乾燥状態(例えば凍結乾燥状態等)のいずれの形態であってもよい。
【0091】
<8>本発明治療剤
本発明治療剤は、本発明組成物からなる椎間板ヘルニア治療剤である。
本発明治療剤において用いる本発明酵素および本発明結晶については、前記「<1>本発明酵素」、「<2>本発明結晶」および「<4>本発明酵素製造方法」で詳述した。本発明酵素の精製酵素溶液や本発明結晶は、高純度に精製されたものであり、本発明酵素以外のタンパク質を実質的に含有しない。しかし医薬としてヒト等の動物に投与することを考慮すると、本発明酵素の精製酵素溶液または本発明結晶を含む画分からさらに医薬品として好ましくない物質を除去することが好ましい。
【0092】
例えば本発明酵素を含む画分からの微生物の除去は、本発明酵素の精製酵素溶液を親水性の孔径0.22μmの濾過滅菌用濾過膜を通し、濾液を無菌条件下で採取することによって行うことができる。
【0093】
また、本発明酵素を含む画分からの発熱物質(エンドトキシン)の除去は、例えば、Qセファロース(ファルマシア社製)などの陰イオン交換担体を本発明酵素の精製酵素溶液と接触させることにより行うことができる。エンドトキシンは当該担体に吸着され、本発明酵素は当該担体に吸着されないため、容易にエンドトキシン除去を行うことができる。また同様に、本発明酵素の精製酵素溶液を活性炭に接触させ、エンドトキシンを吸着させることにより除去することもできる。
【0094】
本発明治療剤において用いることができる担体は、前記「<7>本発明組成物」と同様に本発明酵素活性に影響を与えないものであると同時に、投与対象動物(ヒト等)に対して悪影響(例えば抗原性や毒性等)を及ぼすものであってはならない。具体的には医薬分野において通常用いられる担体、例えば慣用の賦形剤、結合剤、滑沢剤、着色剤、崩壊剤、緩衝剤、等張化剤、保存剤、無痛化剤等を例示することができ、これらのうち本発明酵素活性に影響を与えない担体を適宜選択して用いることができる。なおこれらの担体は、医薬として使用できる程度の純度であり、医薬として混入が許されない物質を実質的に含まないものが好ましい。
【0095】
なお、本発明治療剤に用いる担体としてより具体的には、例えばデキストラン類、サッカロース、ラクトース、マルトース、キシロース、トレハロース、マンニトール、キシリトール、ソルビトール、イノシトール、血清アルブミン、ゼラチン、クレアチニン、ポリエチレングリコール、非イオン性界面活性剤(ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(ポリソルベート)、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ショ糖脂肪酸エステルあるいはポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどが挙げられる。ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルとしては、ポリオキシエチレンソルビタン(重合度約20)のモノラウレート、モノパルミテート、モノオレエート、モノステアレートまたはトリオレエート等を挙げることができる。市販品としては、ポリソルベート80(Tween 80) (ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(20 E.O.))、ポリソルベート60(ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(20 E.O.))、ポリソルべート40(ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート (20 E.O.)) 、Tween 21, 81, 65, 85等を例示することができる。ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油としては、市販品のHCO−10、HCO−50、HCO−60(いずれも商品名)等を例示することができる。またショ糖脂肪酸エステルとしては、市販品のDKエステルF−160(商品名)等を例示することができる。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールとしては、市販品のプルロニックF−68(商品名)等を例示できる。
【0096】
また、緩衝剤としては生理学上許容されるものであればよく、特に限定されないが、塩酸、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、リン酸、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、アミノ酢酸、安息香酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸、酢酸ナトリウム、酒石酸、酒石酸ナトリウム、乳酸、乳酸ナトリウム、エタノールアミン、アルギニンまたはエチレンジアミンの一種以上を含有する緩衝剤等が例示される。
【0097】
これらのほかに等張化のために必要な成分(塩化ナトリウムなどの塩類;糖類など)や、保存剤あるいは無痛化剤等を含有していてもよい。
本発明治療剤においては、これら担体を適宜組合わせて用いることができる。
【0098】
本発明治療剤中の、本発明酵素と、担体との混合比は特に限定されず、当業者が適宜決定することができる。
本発明治療剤は、本発明酵素を有効成分とする椎間板ヘルニア治療剤として使用することができ、ヘルニア症患者の椎間板腔に注入し、ヘルニアを溶解して治療する椎間板溶解療法に用いることができる。そのため本発明治療剤は主に注射用製剤として提供される。
【0099】
なお本発明治療剤は、溶液状態、凍結状態、乾燥状態(例えば凍結乾燥状態等)のいずれの形態であってもよく、本発明治療剤の形態に応じて適宜、アンプル、バイアル、注射用シリンジ等の適当な容器に充填・密封し、そのまま流通させ、あるいは保存し、注射剤として投与に供することができる。
【0100】
ヘルニア症患者への投与量は、患者の症状、年令等によって個別に設定されるべきものであり特に限定されないが、本発明酵素の量として通常1回5〜100単位程度を注入する。
【0101】
【実施例】
次に、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、この実施例は本発明の一例を示すものであり、これに限定されるものではない。
1.材料等
以下のグリコサミノグリカンは、生化学工業株式会社製のものを用いた;ヒアルロン酸(ヒト臍帯由来)、コンドロイチン(コンドロイチン 4−硫酸の脱硫酸化により製造)、コンドロイチン 4−硫酸(クジラ軟骨由来;75% 4-硫酸、20% 6-硫酸)、コンドロイチン 6−硫酸(サメ軟骨由来;分子量20,000〜80,000、15% 4-硫酸、75% 6-硫酸、10% 2,6-二硫酸)、コンドロイチン硫酸D(サメ軟骨由来;20% 2,6-二硫酸、25% 4-硫酸、45% 6-硫酸)、コンドロイチン硫酸E(イカ軟骨由来;60% 4,6-二硫酸、25% 4-硫酸、10% 6-硫酸)、デルマタン硫酸(ブタ皮由来;90% 4-硫酸、2% 6-硫酸、7% 2,4-二硫酸)、ケラタン硫酸(ウシ角膜由来)、ヘパラン硫酸(ウシ腎臓由来)。コンドロイチン硫酸四糖および六糖は、Rodenらの方法(Methods Enzymol. 28, 638-676(1972))に従い、コンドロイチン6−硫酸をウシ睾丸由来のヒアルロニダーゼで消化した後、セルロファイン(Cellulofine) GCL-90sfゲル(生化学工業株式会社販売)を用いたクロマトグラフィーを行うことにより調製した。コンドロイチン硫酸プロテオグリカンは、Oegemaらの方法(J. Biol. Chem. 250, 6156-6159(1975))によってウシ鼻軟骨より調製した。ヘパラン硫酸(ブタ小腸由来)およびウシ血清アルブミンはシグマ社より入手した。CM−セファロース FF(CM-Sepharose FF)はファルマシアバイオテク社(Pharmacia Biotech Inc.)より入手した。
【0102】
2.酵素活性測定方法
酵素活性は、基本的にYamagataらの方法(J. Biol. Chem. 243, 1523-1535(1968))に従い、232nmにおける吸光度の増加より測定した。酵素反応液は、酵素、150μgの基質、10μmol 酢酸ナトリウム、5μgのカゼインを含む250μlの40mM Tris-HCl,pH8.0とした。コントロールの酵素反応液は、上記酵素反応液の酵素の代わりに熱不活化した酵素を使用した。37℃で20分間インキュベートした後、沸騰したウオーターバス中で1分間加熱することにより酵素反応を停止させた。その後酵素反応液を10倍量の50mM HClで希釈し、コントロールの酵素反応液に対する232nmのUV吸収(A232)を測定した。酵素反応によるA232の増加量を測定し、分子吸光係数を5,500として計算し、1分間に1μmolの不飽和型グリコサミノグリカン二糖(当該二糖中のΔ4−ヘキスロン酸(Δ4-hexuronate)残基)を産生する酵素量を「1単位」として求めた。
【0103】
3.タンパク質濃度測定方法
タンパク質濃度は、ウシ血清アルブミンをスタンダードとして、ローリー法(J. Biol. Chem. 193, 265-275(1951))により決定した。
【0104】
【実施例1】
本発明酵素および本発明結晶の製造
(製造例1)
プロテウス・ブルガリス(Proteus vulgaris)NCTC 4636株は、公知の方法(J. Biol. Chem. 243, 1523-1535(1968))に従い、ペプトン、肉抽出物、酵母抽出物、NaClおよび誘導物質(コンドロイチン 6−硫酸;濃度5g/L)を含む培地を用いて、30℃で培養した。
【0105】
対数増殖の終了時期の細胞を、遠心分離(4℃下、16,000 x g で30分)により回収した。20Lの培養物から約150g(湿重量)の細胞が得られた。この細胞100gを、5%(w/v)POELE(Nikkol BL-9EX(商品名))を含む20mM リン酸緩衝液,pH7.0、400mLに懸濁させ、35℃で2時間、緩やかに攪拌し、酵素の抽出を行った。この懸濁液を、等量の20mM リン酸緩衝液,pH7.0で希釈し、4℃下、16,000 x gで45分間遠心分離した。上清液(酵素抽出液)に冷精製水を添加してPOELEを終濃度1.5%(w/v)となるように調整し、この溶液を10mM リン酸緩衝液, pH7.0で平衡化したCM-セファロース FFカラム(3 x 15cm)にアプライして、酵素を吸着させた。このカラムを100mLの0.5%(w/v)POELE水溶液、100mLの40mM リン酸緩衝液,pH6.2の順で洗浄した。このカラムを40mM リン酸緩衝液, pH6.2中のNaClの直線濃度勾配(0〜0.2M)による溶出に付した。直線濃度勾配による全溶出量は320mLであった。なお流速は1.6mL/分で行った。溶出液を5mLずつ分画し、それぞれの画分の酵素活性(基質としてコンドロイチン 6−硫酸およびコンドロイチン硫酸四糖を使用)、およびタンパク質濃度を測定した。CM-セファロース FFカラムの溶出パターンを図1に示す。
【0106】
図1中で「I」で示される画分(特開平6−153947号に記載されている公知の酵素と同一であることが、本発明者により確認された)がまず溶出され、次いで図1中「II」で示される画分(本発明酵素)が溶出された。以下、図1中「I」で示される画分(公知の酵素)を「酵素 I」、図1中「II」で示される画分(本発明酵素)を「酵素 II」ということもある。
【0107】
酵素 Iおよび酵素IIのそれぞれについて、溶出ピークの主要部分を含む画分をプールし冷精製水に対して透析し、脱塩した。
脱塩後の溶液に、30%(w/v)ポリエチレングリコール 4000を含む10mM リン酸緩衝液,pH7.0を、わずかに濁りが生じるまで加え、その後、結晶が生じるまで低温室に放置した。生じた結晶の顕微鏡像を図2に示す。図2中のAは酵素 Iの結晶を、Bは酵素IIの結晶をそれぞれ示す。
【0108】
図2より、酵素 Iは針状もしくは柱状結晶であり、酵素IIは板状結晶であることがわかる。このことから、酵素IIは、酵素 Iとは結晶学的にも明確に区別できることが判明した。
【0109】
表1に、酵素抽出液、CM−セファロース溶出画分および結晶(結晶化を2回繰り返したもの)におけるタンパク質量と酵素活性(基質としてコンドロイチン 6−硫酸およびコンドロイチン硫酸四糖を使用)を示す。なお表1中、NDは検出限界以下であったことを示す。
【0110】
【表1】
【0111】
表1より、酵素 Iはコンドロイチン 6−硫酸には作用するがコンドロイチン硫酸四糖には作用せず、酵素IIはコンドロイチン 6−硫酸およびコンドロイチン硫酸四糖のいずれにも作用することが示された。このことから、酵素IIは酵素Iとは基質特異性の点で明確に区別できることが判明した。
【0112】
また、結晶化を繰り返しても酵素活性の有意な減少は見られなかった。このことから酵素 Iおよび酵素IIは、高度に精製されていることが示唆された。
【0113】
(製造例2)
プロテウス・ブルガリス NCTC 4636株を、上記製造例1と同様に培養し、細胞7.5Kg(湿重量)を得た。この細胞に、6.6%(w/v)POELE(Nikkol BL-9EX(商品名))を含む20mM リン酸緩衝液,pH7.0、約22.5Lに懸濁させ、35±3℃で2時間、緩やかに攪拌し、酵素の抽出を行った。この懸濁液を、5〜15℃に冷却した約30Lの20mM リン酸緩衝液,pH7.0で希釈し、シャープレス型遠心機で遠心分離した。上清液(酵素抽出液)に冷精製水を約30L添加し、この溶液を10mM リン酸緩衝液, pH7.0で平衡化したCM-セファロースカラム(5L)にアプライして、酵素を吸着させた。このカラムを3Lの精製水で、10Lの40mM リン酸緩衝液,pH6.2の順で洗浄した。このカラムを40mM リン酸緩衝液, pH6.2中のNaClの直線濃度勾配(0〜0.25M)による溶出に付した。直線濃度勾配による全溶出量は20Lであった。
【0114】
このクロマトグラフィーでは、まず酵素 Iが塩濃度約0.05Mから約0.09Mの間に溶出された。次に塩濃度約0.11Mから約0.13Mの間に酵素IIが溶出された。酵素IIの溶出画分の前後をカットし、ピーク部分を集めて、酵素IIの溶出画分約0.8Lを得た。この画分の280nmにおける吸光度は約2.02であった。この画分を精製水に対して透析した後、凍結乾燥して白色の綿状の酵素IIの凍結乾燥品約1.2gを得た。こうして得られた酵素IIの比活性を、酵素活性測定方法に従って測定したところ、約202単位/mgであった。
【0115】
製造例2の結果から、本発明酵素製造方法は、工業的規模での大量製造にも適用可能であることが示唆された。
【0116】
【実施例2】
酵素II(本発明酵素)の理化学的性質
前記「実施例1」中の「製造例1」で製造した酵素 Iおよび酵素IIを用い、理化学的性質を調べた。
(A)作用:後述の実施例4で述べる。
(B)基質特異性:
コンドロイチン、コンドロイチン 4−硫酸、コンドロイチン 6−硫酸、コンドロイチン硫酸D、コンドロイチン硫酸E、デルマタン硫酸、コンドロイチン硫酸六糖、コンドロイチン硫酸四糖、コンドロイチン硫酸プロテオグリカン、ヒアルロン酸、ケラタン硫酸、ヘパリンおよびヘパラン硫酸を基質として、酵素Iおよび酵素IIの酵素活性を測定した。結果を表2に示す。なお表2中、NRは酵素が作用しなかったことを示す。
【0117】
【表2】
【0118】
なお酵素活性測定方法において、緩衝液として40mM 酢酸緩衝液,pH6.0を用いると、ヒアルロン酸に対する比活性が酵素 Iでは18、酵素IIでは9に上昇した。
表2より、酵素 Iはコンドロイチン硫酸四糖には作用せず、酵素IIはコンドロイチン硫酸四糖にも作用することが示された。このことから酵素IIは、酵素Iとは基質特異性の点で明確に区別できることが確認された。またこの結果から、酵素IIは、コンドロイチン硫酸四糖には作用しない公知のコンドロイチナーゼ I(WO95/29256号)とも明確に区別され、またコンドロイチン 6−硫酸およびコンドロイチン硫酸プロテオグリカンのコンドロイチン硫酸鎖部分には作用しない公知のコンドロイチナーゼ II(WO95/29256号およびWO95/29232号)とも明確に区別されることが示された。
【0119】
このように酵素IIは、これら公知の酵素とは基質特異性の面において明確に異なることが示された。
また酵素IIは、種々の分子サイズのコンドロイチン硫酸に対して幅広い基質特異性を有していることが示された。
【0120】
(C)分子量:
酵素 Iおよび酵素IIの分子量を推定するため、ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を行った。
【0121】
SDS-PAGEは、10%(w/v) ポリアクリルアミドゲルを用い、還元条件下で行った。電気泳動の前に、試料(酵素 Iおよび酵素II)をサンプルバッファー(1.2%(w/v)ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1.0%(w/v)ジチオスレイトール、50mM Tris-HCl,pH6.8および10%(w/v)グリセロールを含む)で希釈し、100℃で2分間処理した。またSDS-PAGEの分子量マーカーとして、ミオシン(分子量212,000)、α2−マクログロブリン(分子量170,000)、β−ガラクトシダーゼ(分子量116,000)、トランスフェリン(分子量76,000)、およびグルタミン酸デヒドロゲナーゼ(分子量53,000)を使用した。電気泳動後、ゲル中のタンパク質をクマシー・ブリリアント・ブルー染色により検出した。
【0122】
その結果、酵素 Iは100kDa付近に、酵素IIは105kDa付近にいずれも単一のバンドが検出された。このことから、いずれの酵素ともタンパク質として均一に精製されていることが示唆された。
【0123】
また酵素 Iおよび酵素IIともに、HPLCによるゲル濾過で単一ピークを示したことから、いずれの酵素もタンパク質として均一に精製されていることがさらに示唆された。
【0124】
(D)アミノ酸組成:
アミノ酸組成の分析は、Hitachi L-8500アミノ酸分析機を用いて行った。試料(酵素 Iおよび酵素II)は窒素減圧下、6M HClの気体で110℃、24時間加水分解して分析を行った。分析チャートを図3に、アミノ酸組成分析結果を表3に示す。
なお表3において、アミノ酸組成は1000アミノ酸残基あたりの数値で示した。数値は実測値であり、補正等は行っていない。
【0125】
【表3】
【0126】
表3から、酵素 Iはシステイン残基およびその酸化形態のシスチンのいずれをも含有せず、酵素IIはシステイン残基および/またはシスチンを含有することが示された。このことから酵素 Iと酵素IIとは構造(アミノ酸残基)の点からも明確に区別されることが示された。また公知のコンドロイチナーゼ IおよびII(WO95/29256号)には、いずれもシステイン残基およびシスチンが含まれないことから、酵素IIはこれら公知の酵素とも構造面において明確に区別されることが示された。
【0127】
さらに、酵素 Iおよび酵素IIのN末端アミノ酸残基を、Tosoh phenylthiohydantoin-derivative analytical HPLCシステムを用いたエドマン分解法により決定した。その結果、酵素 IのN末端アミノ酸残基はアラニン残基であり、酵素IIのN末端アミノ酸残基はロイシン残基であった。
【0128】
(E)等電点:
酵素IIの等電点(pI)を等電点電気泳動(IEF)pH3-9により決定した。その結果、pI=8.45付近に単一のバンドが検出された。このことから、酵素IIは、タンパク質として均一に精製されていることが示唆された。
【0129】
(F)至適温度:
酵素活性測定方法における基質としてコンドロイチン 6−硫酸、緩衝液としてTris-HCl緩衝液、pH8.0を用い、種々の温度における酵素活性を測定した結果、酵素IIの至適温度は40℃付近であった。
【0130】
(G)至適反応pH:
酵素活性測定方法における基質としてコンドロイチン 6−硫酸、緩衝液としてTris-HCl緩衝液を用い、37℃の条件下で、種々のpHにおける酵素活性を測定した結果、酵素 Iおよび酵素IIともに至適反応pHはpH8付近であった。
【0131】
酵素IIについては、さらに基質としてコンドロイチン硫酸四糖を用い、同様に種々のpHにおける酵素活性を調べた。これらの結果を図4に示す。
【0132】
(H)温度安定性:
濃度 0.1mg/mLの酵素IIを、Tris-HCl緩衝液、pH8.0中、種々の温度で一定時間インキュベートした後、酵素活性測定方法における基質としてコンドロイチン硫酸四糖を用いて酵素活性を測定した。結果を以下に示す。
(1)37℃で30分間インキュベートすることにより、約10%失活した。
(2)40℃で30分間インキュベートすることにより、約23%失活した。
(3)100℃で1分間インキュベートすることにより、約100%失活した。
【0133】
(I)pH安定性:
濃度 0.5mg/mLの酵素IIを、37℃で一定時間、種々のpHのリン酸緩衝液中でインキュベートした後、 酵素活性測定方法における基質としてコンドロイチン硫酸四糖を用いて酵素活性を測定した。結果を以下に示す。
【0134】
pH約4.5〜8.5の範囲で2時間インキュベートしても、約70%以上の活性が保持されていた。
【0135】
(J)阻害:
1mMの金属塩(ZnCl2およびNiCl2)およびキレート剤(エチレンジアミン四酢酸)を用いた実験の結果、酵素IIは、1mMのZn2+によって酵素活性がほぼ完全に阻害されることが示された。また酵素IIは、1mMのNi2+によって酵素活性が50%以上阻害されることが示された。
【0136】
(K)ミカエリス定数(Km):
種々の濃度の基質を用いて酵素IIの反応初速度を調べ、Lineweaver-Burkプロットを作成し、ミカエリス定数(Km)を求めた。結果を以下に示す。なおKm値は、ヘキスロン酸残基をベースにしたモル濃度として表記した。
約80μM(基質:コンドロイチン 6−硫酸)
約33μM(基質:コンドロイチン 6−硫酸四糖)
【0137】
(L)比活性:
種々の基質を用い、酵素IIの比活性を求めた。結果を以下に示す。
約40単位/mg(基質:コンドロイチン 6−硫酸、反応温度:37℃、pH:8.0)
約150単位/mg(基質:コンドロイチン 6−硫酸六糖、反応温度:37℃、pH:8.0)
約200単位/mg以上(基質:コンドロイチン 6−硫酸四糖、反応温度;37℃、pH:8.0)
【0138】
(M)結晶化した場合の結晶形:
前記「実施例1」中の「製造例1」および図2のBからも分かるように、酵素IIをポリエチレングリコールを用いて結晶化させると、板状結晶を生じた。
【0139】
【実施例3】
酵素II(本発明酵素)に対する抗体の作製、および酵素IIの免疫化学的解析
(1)酵素 Iおよび酵素IIに対する抗体の作製
前記「実施例1」中の「製造例1」で製造した酵素 Iおよび酵素IIを1mgづつ、それぞれ完全フロイントアジュバント(complete Freund's adjuvant;ヤトロン社製)と混合し、乳化させた。これを白色ウサギ(18週齢、オス)に1週間の間隔で3回皮下注射することにより免疫し、1週間飼育した後に全血を採取し、血清を分離して酵素 Iおよび酵素IIに対する抗血清を得た。これらの抗血清に硫酸アンモニウムを添加し、20〜50%飽和の範囲で生じた沈殿を回収し、50mM リン酸ナトリウム緩衝液,pH7.2に溶解した。これを2Lの50mM リン酸ナトリウム緩衝液,pH7.2に対して、3回緩衝液を交換しながら20時間透析し、酵素 Iに対する抗体(抗酵素 I抗体)および酵素II(本発明酵素)に対する抗体(抗酵素II抗体)を得た。
【0140】
(2)酵素IIの免疫化学的解析
上記(1)で作製した抗酵素 I抗体および抗酵素II抗体と、酵素 Iおよび酵素IIを用い、オクタロニー拡散法(Ark. Kemi Mineral. Geol. 26, 1-9(1948))により免疫沈降反応を調べた。その結果、酵素IIと抗酵素II抗体では、抗原−抗体反応の結果、明瞭な沈降線を示した。しかし、酵素IIと抗酵素 I抗体とでは沈降線は全く認められなかった。一方、酵素Iと抗酵素 I抗体では明瞭な沈降線が認められたが、酵素 Iと抗酵素II抗体とは全く反応せず、沈降線は認められなかった。この結果から、酵素 Iと酵素IIは免疫化学的に全く異なる抗原性を有する酵素であることが確認された。また、抗酵素 I抗体は酵素 Iを、抗酵素II抗体は酵素IIをそれぞれ選択的に認識する抗体であることが確認された。
【0141】
【実施例4】
酵素II(本発明酵素)の理化学的性質(作用)、およびグリコサミノグリカンの分解生成物の分析
実施例4において、酵素反応は以下の通り行った。50mM酢酸ナトリウムを含む50mM Tris-HCl緩衝液,pH8.0の1mLあたり10mgの基質を含有するように反応液を調製し、これを37℃のウオーターバス中で10分間平衡化した後、1mgの基質に対し0.015単位の酵素を添加し、37℃でインキュベーションを行った。一定時間後に酵素反応液の一部を取り出し、沸騰したウオーターバス中で1分間加熱した後、必要に応じて以下の項目について分析を行った。
【0142】
(a)加熱後の酵素反応液を等量の0.4M NaClで希釈し、30℃下でウベローデ(Ubbelohde)型自動粘度計 VMC-052(Rigosha製)を用いて粘度を測定した。この粘度の変化は、グリコサミノグリカン鎖の平均長の変化の指標となる。
【0143】
(b)加熱後の酵素反応液を50倍量の50mM HClで希釈し、A232の測定に用いた。このA232の変化は、酵素により分解された部分の数の変化の指標となる。
(c)加熱後の酵素反応液を40倍量の0.2M NaClで希釈し、ゲル浸透高速液体クロマトグラフィー(HPLC)にアプライした。カラムは、TSKgel G3000PWXL及びTSKgel G2500PWXL(いずれも東ソー製)を、この順番に連結させた連結カラムを用いた。HPLCは35℃下で、0.2M NaClを用い、流速0.5ml/分で行った。溶出液を東ソー UV(232nm)モニター UV8010および東ソー 示差屈折計 RI8010を用い、この順番でモニターすることにより、それぞれA232(不飽和型グリコサミノグリカンオリゴ糖)およびグリコサミノグリカンのサイズ分布を調べた。
【0144】
(1)酵素IIの分解様式の解析
基質としてコンドロイチン 6−硫酸またはデルマタン硫酸を用い、酵素 Iおよび酵素IIについてそれぞれ上記(a)および(b)の分析を行った。なお上記(a)の粘度は、酵素反応時間が0の時のそれぞれの基質の粘度(コンドロイチン 6−硫酸は0.85、デルマタン硫酸は0.22)を100%として算出した。結果を図5に示す。なお図5中のaおよびcは酵素 I、bおよびdは酵素IIについての結果である。また図5中のaおよびbは基質としてコンドロイチン 6−硫酸を、cおよびdは基質としてデルマタン硫酸を用いた時の結果である。
【0145】
図5中のaからは、A232(すなわち酵素 Iにより分解された部分の数)の増加に比して、粘度(すなわちグリコサミノグリカンの平均長)が急激に減少していることが読み取れる。これに対し図5中のbからは、粘度の減少は緩やかで、この粘度の減少はA232の増加とほぼ比例していることが読み取れる。また図5中のcおよびdも、それぞれ図5中のaおよびbと同様に読み取れる。また基質としてコンドロイチン 4−硫酸を用いた場合も、同様の結果が得られた。これらのことから、酵素 Iはエンド型の酵素であり、酵素IIはエキソ型酵素であることが示された。このことから、酵素IIは酵素Iとは作用の面においても全く異なる酵素であることが示された。
【0146】
また、酵素IIをコンドロイチン硫酸プロテオグリカン(コンドロイチン硫酸鎖部分の還元末端は全てコア蛋白質に結合している)に作用させると、遊離のコンドロイチン硫酸とほぼ同じ初速度でコンドロイチン硫酸鎖部分に作用して、不飽和型グリコサミノグリカン二糖を生じる(表2参照)ことから、酵素IIは、グリコサミノグリカンの非還元末端から順次、グリコサミノグリカン二糖を切り出すエキソ型のリアーゼであることが示された。
【0147】
(2)酵素IIによるグリコサミノグリカンの分解生成物
基質としてコンドロイチン 6−硫酸、デルマタン硫酸またはコンドロイチン硫酸六糖を用い、酵素 Iおよび酵素IIについてそれぞれ上記(c)の分析を行った。
【0148】
基質としてコンドロイチン 6−硫酸またはデルマタン硫酸を用いたものについては、酵素反応時間0分、20分、60分および5時間(基質を完全に分解するのに十分な時間である)のものについて分析した。また基質としてコンドロイチン硫酸六糖を用いたものについては、酵素反応時間0分および5時間(基質を完全に分解するのに十分な時間である)のものについて分析した。
【0149】
基質としてコンドロイチン 6−硫酸を用いた時の結果を図6に、デルマタン硫酸を用いたときの結果を図7に、コンドロイチン硫酸六糖を用いた時の結果を図8にそれぞれ示す。
【0150】
図6および図7中、a〜dおよびa'〜d'は酵素 I、e〜hおよびe'〜h'は酵素IIについての結果である。また、図6および図7中、a〜hは相対屈折率(グリコサミノグリカンのサイズ分布)、a'〜h'はA232(不飽和型グリコサミノグリカンオリゴ糖)を調べた結果である。また図6および図7中、a-a'とe-e'、b-b'とf-f'、c-c'とg-g'、d-d'とh-h'はそれぞれ酵素反応時間0分、20分、60分、5時間についての結果である。また図中の左側の点線(保持時間30.3分)は四糖の溶出位置を、右側の点線(保持時間32.4分)は二糖の溶出位置をそれぞれ示す。
【0151】
また図8中、a〜bおよびa'〜b'は酵素 I、c〜dおよびc'〜d'は酵素IIについての結果である。また、図8中、a〜dは相対屈折率(グリコサミノグリカンのサイズ分布)、a'〜d'はA232(不飽和型グリコサミノグリカンオリゴ糖)を調べた結果である。また図8中、a-a'とc-c'、b-b'とd-d'はそれぞれ酵素反応時間0分、5時間についての結果である。また図中の左側の点線(保持時間30.3分)は四糖の溶出位置を、右側の点線(保持時間32.4分)は二糖の溶出位置をそれぞれ示す。
【0152】
図6および図7の結果から、酵素 Iをコンドロイチン 6−硫酸およびデルマタン硫酸に作用させた場合、酵素反応時間の経過とともにこれらグリコサミノグリカンのサイズは顕著に減少し(このことから酵素 Iがエンド型酵素であることが示唆される)、最終的には不飽和型グリコサミノグリカン四糖および二糖の混合物が得られることが示された。
【0153】
これに対し、酵素IIをコンドロイチン 6−硫酸およびデルマタン硫酸に作用させた場合、酵素反応時間の経過に伴うこれらグリコサミノグリカンのサイズの減少はあまり見られず(このことから酵素IIがエキソ型酵素であることが示唆される)、酵素反応時間の経過とともに実質的に不飽和型グリコサミノグリカン二糖のみが生成されていき、最終的には実質的に不飽和型グリコサミノグリカン二糖のみが得られることが示された。基質としてコンドロイチン 4−硫酸を用いた場合も、同様の結果が得られた。
【0154】
図8の結果から、酵素 Iをコンドロイチン硫酸六糖に作用させた場合、最終的には不飽和型グリコサミノグリカン四糖および飽和型グリコサミノグリカン二糖の混合物が得られることが示された。
【0155】
これに対し、酵素IIをコンドロイチン硫酸六糖に作用させた場合、最終的には実質的に不飽和型グリコサミノグリカン二糖のみが得られることが示された。
以上の結果から、酵素 IはグリコサミノグリカンのN−アセチルヘキソサミニド結合を分解し、グリコサミノグリカン四糖およびグリコサミノグリカン二糖の混合物を生成することが示された。
【0156】
これに対し、酵素IIはグリコサミノグリカンのN−アセチルヘキソサミニド結合を分解し、完全に分解すると実質的に不飽和型グリコサミノグリカン二糖のみを生成することが示された。このことから、酵素 IIは酵素 Iとはその酵素反応生成物の点からも明確に区別できることが示された。
【0157】
(3)酵素IIを用いた不飽和型グリコサミノグリカン二糖の製造
ウシの軟骨から調製したコンドロイチン硫酸10gを1Lの25mM リン酸ナトリウム緩衝液,pH7.6に溶解し、100単位の酵素IIを加え、37℃に調整した恒温水槽で15時間インキュベートした。この液を分子量1万カットの限外濾過膜で濾過し、この膜を通過した液を集めた。この液を凍結乾燥し、約10gのウシ軟骨由来の不飽和型グリコサミノグリカン二糖を得た。この不飽和型グリコサミノグリカン二糖には若干の緩衝液由来のリン酸塩が混在していたので、この凍結乾燥品の5gを精製水に溶かし、セルロファインGCL−50m(生化学工業株式会社販売)を詰めたカラムに通して脱塩を行い、不飽和型グリコサミノグリカン二糖の溶出された画分を集め、凍結乾燥を行って約4.2gの塩を含まない凍結乾燥粉末を得た。この凍結乾燥品をTSKgel-G2500XLのカラムを用いたゲル浸透クロマトグラフィーを行った結果、不飽和型グリコサミノグリカン二糖が溶出される位置にのみピークが認められた。
【0158】
【発明の効果】
本発明酵素は、高分子から四糖に至るまでの種々のサイズのグリコサミノグリカン、特にコンドロイチン硫酸に作用し、完全に分解すると実質的に不飽和型グリコサミノグリカン二糖のみを生成するエキソ型の新規なコンドロイチン硫酸分解酵素であり、医薬品、試薬、本発明抗体の作製のための抗原等として有用である。特に本発明酵素は、グリコサミノグリカンの非還元末端側から二糖づつ分解する作用を有するため、糖鎖分析用試薬として極めて有用である。
【0159】
本発明結晶も本発明酵素と同様に医薬品、試薬として極めて有用である。
本発明抗体は本発明酵素の特異的な検出に用いることができる。特に医薬品として動物に投与された本発明酵素の追跡や、天然物中の本発明酵素の探索等に有用である。また本発明抗体を不溶性担体に結合させて本発明酵素のアフィニティー精製に用いることもできる。
【0160】
本発明酵素製造方法は、本発明酵素を効率よく大量に製造できる方法であり、工業的規模で実施できるため極めて有用な方法である。
本発明不飽和二糖製造方法は、本発明酵素を用いて不飽和型グリコサミノグリカン二糖を効率よく大量に製造できる方法であり、不飽和型グリコサミノグリカン二糖は糖鎖分析用試薬として極めて有用である。
【0161】
本発明分析方法は、本発明酵素の特性を生かした分析方法であり、糖鎖分析方法として極めて有用である。特にグリコサミノグリカンの二糖単位の配列決定に利用することができる点は、従来の酵素にはない極めて有用な点である。
【0162】
本発明組成物は、本発明酵素を含有する医薬組成物や試薬組成物として利用することができ、有用である。
本発明治療剤は、本発明酵素を含有する椎間板ヘルニア治療剤として利用することができ、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 プロテウス・ブルガリス細胞からの酵素抽出液のCM-セファロース FFカラムクロマトグラフィーの溶出パターンを示す。
●はコンドロイチン 6−硫酸を基質としたときの酵素活性を示す。
○はコンドロイチン硫酸四糖を基質としたときの酵素活性を示す。
×はタンパク質濃度を示す。
【図2】 酵素 Iおよび酵素II(本発明酵素)をポリエチレングリコールにより結晶化したときの結晶の顕微鏡写真である(結晶構造)。
Aは酵素 Iの結晶、Bは酵素II(本発明酵素)の結晶をそれぞれ示す。
【図3】 アミノ酸組成の分析チャートを示す。
【図4】 酵素 Iおよび酵素II(本発明酵素)の種々のpHにおける酵素活性を示す。
○はコンドロイチン 6−硫酸を基質としたときの酵素 Iの酵素活性を示す。
●はコンドロイチン 6−硫酸を基質としたときの酵素IIの酵素活性を示す。
×はコンドロイチン硫酸四糖を基質としたときの酵素IIの酵素活性を示す。
【図5】 酵素 Iおよび酵素II(本発明酵素)を、コンドロイチン 6−硫酸およびデルマタン硫酸に作用させたときの粘度の変化(○)、およびA232の変化(●)を示す。
【図6】 酵素 Iおよび酵素II(本発明酵素)をコンドロイチン 6−硫酸に種々の時間作用させて得られる反応生成物の、ゲル浸透高速液体クロマトグラフィーによる溶出パターンを示す。a〜hは相対屈折率を、a'〜h'はA232を示す。
【図7】 酵素 Iおよび酵素II(本発明酵素)をデルマタン硫酸に種々の時間作用させて得られる反応生成物の、ゲル浸透高速液体クロマトグラフィーによる溶出パターンを示す。a〜hは相対屈折率を、a'〜h'はA232を示す。
【図8】 酵素 Iおよび酵素II(本発明酵素)をコンドロイチン硫酸六糖に作用させて得られる反応生成物の、ゲル浸透高速液体クロマトグラフィーによる溶出パターンを示す。a〜dは相対屈折率を、a'〜d'はA232を示す。
Claims (10)
- 下記の理化学的性質を有するコンドロイチン硫酸分解酵素。
<1>作用:
(1)グリコサミノグリカンのN−アセチルヘキソサミニド結合を分解し、完全に分解すると不飽和型グリコサミノグリカン二糖のみを生成する。
(2)エキソ型酵素である。
<2>基質特異性:
コンドロイチン、コンドロイチン 4−硫酸、コンドロイチン 6−硫酸、コンドロイチン硫酸D、コンドロイチン硫酸E、デルマタン硫酸、コンドロイチン6−硫酸六糖、コンドロイチン 6−硫酸四糖、およびコンドロイチン硫酸プロテオグリカンのコンドロイチン硫酸鎖部分のいずれにも作用する。ケラタン硫酸、ヘパリンおよびヘパラン硫酸には作用しない。
<3>分子量:
還元条件下におけるドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動において、約105kDa。
<4>アミノ酸組成:
前記酵素の酸加水分解物のアミノ酸分析によりシスチンが検出される。
<5>N末端アミノ酸:
N末端アミノ酸はロイシンである。
<6>等電点:
pH約8.45(等電点電気泳動法)
<7>至適温度:
40℃付近(基質:コンドロイチン6−硫酸、緩衝液:トリス−塩酸緩衝液、pH:8.0)
<8>至適反応pH:
pH8付近(基質:コンドロイチン6−硫酸、緩衝液:トリス−塩酸緩衝液、温度:37℃)
<9>由来:
プロテウス・ブルガリス由来である。 - 請求項1に記載のコンドロイチン硫酸分解酵素の結晶であって、板状結晶であることを特徴とするコンドロイチン硫酸分解酵素の結晶。
- 両末端が水酸基である構造を有するポリエーテルを用いて結晶化されたことを特徴とする請求項2に記載のコンドロイチン硫酸分解酵素の結晶。
- 請求項1に記載のコンドロイチン硫酸分解酵素を選択的に認識する抗体。
- コンドロイチン硫酸分解酵素産生能を有する細胞であるプロテウス・ブルガリスを培養し、該細胞の培養物から請求項1に記載のコンドロイチン硫酸分解酵素を採取することを特徴とする、請求項1に記載のコンドロイチン硫酸分解酵素の製造方法。
- 請求項1に記載のコンドロイチン硫酸分解酵素の基質となりうるグリコサミノグリカンを、請求項1に記載のコンドロイチン硫酸分解酵素で分解するステップと、この分解生成物から不飽和型グリコサミノグリカン二糖を分画するステップとを少なくとも含むことを特徴とする、不飽和型グリコサミノグリカン二糖の製造方法。
- 請求項1に記載のコンドロイチン硫酸分解酵素の基質となりうるグリコサミノグリカンを、請求項1に記載のコンドロイチン硫酸分解酵素で分解するステップと、この分解生成物を分析するステップとを少なくとも含むことを特徴とする、グリコサミノグリカンの分 析方法。
- 分解生成物を液体クロマトグラフィーによって分析することを特徴とする、請求項7に記載のグリコサミノグリカンの分析方法。
- 請求項1に記載のコンドロイチン硫酸分解酵素と、前記コンドロイチン硫酸分解酵素の活性に影響を与えない医薬分野において通常用いられる担体とからなる、コンドロイチン硫酸分解酵素含有試薬組成物。
- 前記コンドロイチン硫酸分解酵素が請求項2または3に記載の結晶の形態である請求項9に記載の試薬組成物。
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