JP4004072B2 - 鋳型rnaに優先的に機能するrna依存性rnaポリメラーゼ及び該rna依存性rnaポリメラーゼを用いるプロモーターの支配下でのrnaの転写方法 - Google Patents
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Description
本発明の方法は、特に微生物学及びウイルス学の分野において、より一般的には医学的診断の分野において、生物学的試料中に存在する微量のRNAの増幅を行うものであり、しかも試料中のRNAの検出及び/又は定量、あるいは増幅生成物の配列決定を可能にするものである。また、本発明の方法はRNAプローブの合成に利用される。
微生物学及びウイルス学においては、探索される微生物は生存可能な細菌(従ってDNAよりもRNAを含む)であるか又はHIVウイルス及びHCVウイルスのようなRNAを有するウイルスである場合が多いことが知られている。また、種々の病理学においては、遺伝子の発現の変化(変異)、従ってメッセンジャーRNAの合成における変化(変異)を監視することが都合がよい場合が多いことが知られている。
従って、標的RNAの簡単で効率的な増幅方法を利用できることが重要である。
標的RNAを周期的に増幅することが可能なPCR法はただ一つの酵素だけを利用するが、温度サイクル、一般的には異なる3種類の温度において行うことを必要とする。PCR法は、RNA依存性DNAポリメラーゼの追加の酵素活性を増大させることにより標的RNAの増幅に適応させ得るが、これもまたこの方法をより一層複雑にする。
NASBA/TMAと呼ばれる増幅方法は等温法であるという利点を示すが、2種類又は3種類の酵素によって保持される3種類の酵素活性(RNA依存性DNAポリメラーゼ、リボヌクレオアーゼH及びDAN依存性RNAポリメラーゼ)を使用することを必要とする。
従って、簡単でしかも自動化可能なRNA増幅方法、特に一つの酵素だけしか使用しない等温法を利用できることが望まれる。
従って、公知の増幅法に起因する不都合を回避するために、RNA増幅方法にRNA依存性RNAポリメラーゼの活性を使用することが必要である。
あいにく、天然産RNA依存性RNAポリメラーゼ(RNAd RNApと略記する)は、RNAの鋳型に関して特有の要求が存在ししかもタンパク質性補因子(これは補助タンパク質性因子又は共同タンパク質性因子とも呼ばれる)の存在を必要とするという理由から、かかる使用には適していないことが知られている。
ある種の公知のDNA依存性RNAポリメラーゼが二本鎖DNAプロモーターの存在下で一本鎖RNAを転写できることは既に見出されている。さらに、突然変異によって形質転換されるある種の酵素が転写生成物を合成でき、鋳型がDNAからなる場合よりも鋳型がDNAからなる場合の方が収率が高い。
本願明細書において、“転写”という用語は、適当な反応溶媒中、RNAポリメラーゼの触媒活性を発揮させることができる条件で、鋳型ポリヌクレオチド及びリボヌクレオシド三リン酸の存在下でRNAの複数の鎖の合成を意味する。転写は鋳型の相補的及び逆平行コピーの合成によって行われる。コピーされる鋳型の鎖は転写鎖又は鋳型鎖と呼ばれる。RNAの合成は5′−3′の方向に進行する。
ある種のRNAポリメラーゼはプロモーターの支配下で機能することが知られている。プロモーターはRNAポリメラーゼに認められている二本鎖のヌクレオチド配列であり、転写の開始に必要である。
鋳型鎖がプロモーターに結合された場合には、鋳型鎖に対する最初のヌクレオチドの転写は、該ヌクレオチドの3′末端によってプロモーターの鎖のうちの一つの5′末端に結合され、+1によって示されることが想起される。鋳型鎖に結合されるプロモーターの鎖はアンチセンス鎖と呼ばれる。アンチセンス鎖の相補鎖であり且つアンチセンス鎖にハイブリッド形成するプロモーターのもう一方の鎖は、センス鎖と呼ばれる。プロモーターのそばに位置する連続する複数のヌクレオチドは、+1のヌクレオチドに対して、+1から数えて−1、−2、−3などの番号が付けられる。
従って、−1の位置はプロモーターのアンチセンス鎖の5′末端に対応し、しかもセンス鎖の3′末端に対応する。しかしながら、研究者の中には、プロモータの配列の定義の中に、転写開始領域に対応するヌクレオチド配列(特に、一般に共通配列を定義することができる+1〜+6の配列)を含み入れる人もいる。
鋳型鎖については、ヌクレオチドの位置が+1から始まり、従って3′−5′の方向で連続する+2、+3などの番号が付けられる。
以下では、一般に、いわゆるプロモータについて、センス鎖及びアンチセンス鎖を用い(負の番号づけがなされた位置),センス鎖の3′末端に結合されたあらゆる鎖について非鋳型鎖を用い、アンチセンス鎖の5′末端に結合されたあらゆる鎖について又は非鋳型鎖にハイブリッド形成されたあらゆる鎖について鋳型鎖を用いる。一定の与えられたポリヌクレオチド鎖において、5′末端の側にある領域を「上流側領域」と呼び、3′末端の側にある領域を「下流側領域」と呼ぶ。しかしながら、特定の鎖を考慮に入れることなく、プロモータに依存しない形での転写の分野においては、従来、位置+1との関係においてプロモータの側にある領域を「上流側」領域と呼び(負の数で示される位置)、コピーされた鋳型の側にある領域を「下流側」領域と呼び(正の数で示される位置)、かくしてこのとき下流側方向が鋳型鎖上の3′−5′の方向及び新規合成されたRNA鎖上で5′−3′の方向に対応するようになっている。
鋳型鎖は、必ずしもプロモータのアンチセンス鎖の5′末端に結合されていない。しかし、この場合、この鎖は、それ自体自らの5′末端によりプロモータのセンス鎖の3′末端に結合された相補的かつ逆平行鎖(非鋳型鎖)に対しハイブリッド形成されなければならない;ZHOU W.及びDOETSCH P.W.の論文、Biochemistry 33, 14926〜14934(1994)及びZHOU W.らの論文、Cell 82, 577-586(1995)が参照される。この場合、転写は鋳型鎖又は非鋳型鎖上にハイブリッド形成された鋳型鎖の一部分の3′末端に対応する+1から+24に至る可能性のあるあらゆる位置で開始することができる。
細菌、真核生物又はミトコンドリアのRNAポリメラーゼに比べて、ファージRNAポリメラーゼは極めて単純な酵素である。これらの中で最も良く知られているのは、バクテリオファージT7、T3及びSP6のRNAポリメラーゼである。バクテリオファージのRNAポリメラーゼはすでにクローニングされている;特に米国特許第4,952,496号明細書が参照される。これらの酵素は、互いの間で高い相同性をもち、唯一のサブユニットによって形成されている。ファージT T7、T3及びSP6のRNAポリメラーゼの特異的天然プロモータは周知である。バクテリオファージT7の全ゲノムの配列決定(Dunnらの論文、J. Mol. Biol., 166, 477-535(1983))によって、このファージのDNA上の17のプロモータの存在を明確に示すことができた。これら17の配列を比較すると、転写の開始部位(位置+1)との関係における−17及び+6の位置の間にある23個の隣接ヌクレオチドが強力に保存されていることがわかる。これらのヌクレオチドは、特にインビトロで最も効果のあるクラスIIIと呼ばれる5つのプロモータにおいて同一でさえある。同様にして、T3 RNAポリメラーゼに特異的な数多くのプロモータ配列が、特に−17と+6の位置の間で同様に非常に重要な相同性を示す。なお、ファージSP6のRNAポリメラーゼのための異なる複数のプロモータ配列が明らかにされ、同様に強い相同性を呈する;Brown J. E.らの論文、Nucleic Acids Res., 14, 3521-3526(1986)が参照される。
従って、上述のさまざまなファージRNAポリメラーゼが、位置−17から位置+6までの、特に位置−17から位置−1までのコンセンサス配列を呈するプロモータを認識するRNAポリメラーゼのグループの一部を成すと考えることが可能である。
本発明の方法は、本願明細書に記述されている、プロモータの支配下でRNAを転写する能力をもつRNAポリメラーゼが、大きな配列特異性なくRNAを転写することができるため、任意のRNA配列の転写を可能にする。しかしながら、転写開始の配列、特に位置+1から位置+6までのいくつかの配列が、DNA転写の場合に一定の与えられたファージRNAポリメラーゼで期待される長さの写しを得る上で、他の配列よりも有利であることがわかっている。例えばMilligan, J. F.らの論文、Nucleic Acids Research 15, 8783-8798(1987)が参照される。本願明細書に記載のRNA転写能力をもつRNAポリメラーゼも同様に、転写の開始領域の配列に応じて可変的な収率で機能することができる。一定の与えられたRNAポリメラーゼに最も適合する配列は、場合によっては、上述の論文中でMilliganらによって報告されたものと同様の単純な日常的実験によって決定することができる。その上、以下で見ていくように、本発明の転写方法は、場合によっては、転写すべきRNAの有利な領域において転写を開始させること、又は一定の与えられたRNAポリメラーゼにとって対象配列をもつ転写の開始領域をすでに含有するプロモータ反応剤を提供することを可能にする。
従って、本発明は、RNAの標的配列を含んでいるRNA試料中の該標的配列をプロモーターの支配下で転写することによるRNAの標的配列の増幅方法であって、
前記のRNA試料を、
− 前記の標的配列を含んでいるRNAとハイブリッド形成できる反応剤と、
− RNA依存性RNAポリメラーゼ活性を含む酵素系と
に、前記の標的配列を含んでいるRNAが前記反応剤とハイブリッド形成することを可能にする条件及び前記のRNA依存性RNAポリメラーゼ活性が機能することを可能にする条件下で接触させること;
前記の反応剤が(i)第一のヌクレオチド鎖と、(ii)第一のヌクレオチド鎖にハイブリッド形成した状態の第二のヌクレオチド鎖とを有するものであり、
(i) 第一のヌクレオチド鎖は、a)前記のRNAポリメラーゼ活性のためのプロモーターのセンス鎖の役割を果たし得る第一のヌクレオチドセグメントと、b)前記の第一のヌクレオチドセグメントの下流側にあるヌクレオチドセグメントであって前記RNAの領域とハイブリッド形成することができる配列を含んでいる第二のヌクレオチドセグメントとを有するものであり、且つ
(ii) 第二のヌクレオチド鎖は、前記の第一のヌクレオチドセグメントとハイブリッド形成してこれらが一緒になって機能的二本鎖プロモーターを形成することができる第三のヌクレオチドセグメントを有するものであること;及び
前記のRNAポリメラーゼ活性が前記のRNA鎖を、該RNA鎖にハイブリッド形成した前記反応剤の存在下、共同タンパク質性因子の不存在下及びリガーゼの活性の不存在下で転写することができるものであること;
を特徴とするRNAの標的配列の増幅方法を目的とする。
ヌクレオチド鎖のハイブリッド形成を可能にする一般的条件は知られており、特殊な条件は一定の与えられた配列の鎖について日常的実験によって容易に決定することができる。リボヌクレオチド三リン酸の存在下でRNAポリメラーゼ活性を機能させることのできる条件も同様に、場合によって以下の実験の部で提供されている指針を用いて、実験により容易に決定することもできる。
第一のセグメントの3′末端は、利用された転写系内の位置−1に対応する。第一のセグメントは、ハイブリッド形成された状態で、RNAポリメラーゼのためのプロモータの役目を果たすことができるような充分な数のヌクレオチドを含有している。具体的形態に従えば、第一のセグメントは少なくとも9個のヌクレオチドを含んでいる。
フランス特許第2,714,062号明細書では、ファージRNAポリメラーゼのためのプロモータのセンス鎖の−12から−4の領域内で選択された6〜9個の連続的ヌクレオチドの短かい配列が、DNA標的配列の転写において機能的プロモータの役目を果たす能力をもつことが示されている。
本発明の方法において利用される反応剤は、さらに、以下の特徴のうちの少なくとも1つを示し得る:
− 前記の第三のヌクレオチドセグメントがその上流末端に前記の第一のヌクレオチド鎖の第二のヌクレオチドセグメントよりも短い第四のヌクレオチドセグメントを並置するものであること;
− 前記の第四のヌクレオチドセグメントが前記の第二のヌクレオチドセグメントと向かい合った部分とハイブリッド形成することができるものであること;
− 前記の第一のヌクレオチドセグメント及び第三のヌクレオチドセグメントがDNAによって構成されるものであること;
− 前記の第四のヌクレオチドセグメントがDNAによって構成されるものであること。
前記の第三のヌクレオチドセグメントは、第一のヌクレオチドセグメントと同じ長さを有することができる。前記の第三のヌクレオチドセグメントは、第一のヌクレオチドセグメントよりも短かくてもよいし又は長くてもよいが、その端部5′は、それが第一のヌクレオチドセグメント上でハイブリッド形成される場合、−1の位置に対応しなければならない(すなわち、鋳型鎖がプロモータに結合されている場合、転写開始位置の直前の位置である)。
反応剤の第二のヌクレオチド鎖が第四のヌクレオチドセグメントを有していない場合には、この反応剤は、特にその3′末端領域又は3′末端の近隣領域が既知の配列をもつRNAを転写するために利用でき、この場合、第一のヌクレオチド鎖の第二のヌクレオチドセグメントは、前記RNAがその3′末端付近で前記第二のヌクレオチドセグメントの配列の少なくとも一部分とハイブリッド形成できるような形で構築される。第二のヌクレオチドセグメントに対しハイブリッド形成される転写すべきRNAの一部分の3′末端は、第三のヌクレオチドセグメントの5′末端に隣接していてよく、そうでなければ、xが0又は1〜24の整数を表わすものとして(第二のセグメント上で計数された)x個のヌクレオチドだけ、そこから離れていてもよい。当然のことながら、第二のセグメントの長さ(ヌクレオチドの数で表わした)は、第二のセグメントの下流側領域上でのハイブリダイゼーションによる転写すべきRNA鋳型の固定を確保することができるように、xより大きいものである。
例えば1〜18個のヌクレオチド、特に1〜12個のヌクレオチドを含む第四のヌクレオチドセグメントは、好ましくは一定の与えられたRNAポリメラーゼについての転写の開始に有利に作用するように選択された配列を有する(特に、下記の実験の部が参照される)。第四のヌクレオチドセグメントは、特にDNAで実施され得る。その配列は、それに面し且つそれがそのときハイブリッド形成される第二のヌクレオチドセグメントの上流側領域と相補的であってもよい。この場合、第二のセグメントの5′領域の配列の選択は、第四のセグメントの配列の選択に従うことになる。転写の開始に有利に作用するためのその適正な位置づけはいずれにせよ第二のセグメントに対するそのハイブリッド形成によって確保されることから、第四のセグメントを第三のセグメントに結合させる必要はない。しかしながら、特定の実施形態においては、第四のセグメントは第三のセグメントに結合されている。
前述のものと同様に、第二のセグメント上にハイブリッド形成された標的RNAの一部分の3′末端は、以上で定義された通りのxに等しい数のヌクレオチドだけ第四のセグメントの5′末端から離れていてよい。
明白な理由で、第二のセグメントは、存在する場合の第四のセグメントのヌクレオチドの数と、転写すべきRNAの前記領域とハイブリッド形成する能力をもつ第二のセグメントの前記配列のヌクレオチドの数の和に少なくとも等しい数のヌクレオチドを含有する。
本発明の転写方法は、ウイルス又はファージの野生型のRNAポリメラーゼを用いて、特にT7 RNAポリメラーゼ,T3 RNAポリメラーゼ及びSP6 RNAポリメラーゼを含めた上述のRNAポリメラーゼのグループの中で選択された1つのRNAポリメラーゼを用いて利用可能である。
実際、DNA依存性であるものとして知られているこれらのRNAポリメラーゼが同様に、場合によって(例えば上述の第四のセグメントにより)転写の開始に有利に作用する配列を選択することによりRNA鋳型を転写する能力をも有することが発見された。
RNA依存性RNAポリメラーゼのこの活性の発見により、初めて、会合されたタンパク質因子の不在下で、位置+1からプロモータに依存した形でRNAを転写する能力をもつRNAポリメラーゼを入手することが可能となる。
同様に、以下でさらに詳しく説明する突然変異を受けたRNAポリメラーゼを用いて、本発明の方法を使用することもできる。突然変異を受けたこれらのRNAポリメラーゼの利点は、そのうちのいくつかが、鋳型をRNAで構成されている場合の方が匹敵するDNAで構成されている(すなわち、それぞれリボヌクレオチドA、C、Gの代りにデオキシリボヌクレオチドA、C、Gを含み、リボヌクレオチドUの代りに、デオキシリボヌクレオチドTを含む)場合に比べより優れた収率で転写を行なう能力を有するという点にある。
本発明は同様にT7 RNA、SP6 RNAポリメラーゼ及び前記の突然変異を受けたRNAポリメラーゼの中からRNAポリメラーゼが選択されている、RNA標的配列を含む鋳型鎖の転写方法における、補助タンパク質性因子の不在下でプロモータの支配下でRNA鋳型を転写することのできるRNAポリメラーゼの利用にも関与する。鋳型鎖はRNAで構成されていてもよいし、又は転写開始領域においてDNAにより、そして次のRNAにより構成されていてよい。
本発明は同様に、前記鋳型鎖が少なくとも標的の末端5′と位置+5の間のRNAで構成されている、RNA標的配列を含む鋳型鎖の転写方法における、補助的タンパク質因子の不在下でプロモータに依存した形でRNA鋳型を転写することのできるRNAポリメラーゼの使用に関する。従って、鋳型鎖は+1〜+5の位置のうちの1つからRNAで構成され、位置+1から位置+2、+3又は+4までのDNAで構成されうる。以下で言及するS. Learyらの論文は、+1から+6までの位置についてはDNAで、又位置7以降はRNAで構成された鋳型のT3 RNAポリメラーゼを用いた転写について記述している。
本発明は同様に、DNA依存性RNAポリメラーゼの修飾によって得られ、RNA鋳型の相補的RNA鎖を合成する能力をもつRNA依存性RNAポリメラーゼ(RNAdRNAp)にも関する。これらは、例えば、RNAの配列決定、RNAプローブの合成及び、特にRNAの検出及び定量化を可能にする増幅技術において利用可能である。
既知の天然RNAdRNApは、それらの特異的鋳型RNAに対する強い識別能力を獲得していることから、複数の利用分野においてポリメラーゼとして役立つよう適合されてはいない。その上、これらの酵素は充分に特定されていない。大方の場合、これらは、ウイルス因子及び細胞因子の両方で構成された高分子複合体を形成する。一般に膜に会合させられているこれらの複合体は、精製が困難であり、分離中は不安定である〔B. N. Fields, D. M. Knipe著、Virology.第1巻及び第2巻Raven Press、New York(1990年);G. P. Pfeiter, R. Drouin, G. P. Holmquistの論文、Mutat. Res. Fundam. Mol. Mech. Mutagen. 288, 39(1993)〕。
クローニングされ、配列決定され、発現されたRNAdRNApはほとんど無い。酵素Qβレプリカーゼは、最も良く特定されたものである。この酵素は、4つのサブユニットで構成され、そのうち3つは宿主の因子である〔M. Kajitani, A. Ishihamaの論文、Nucleic Acids Res., 19, 1063(1991)〕。酵素Qβは既に単離されており:これは優れたプロセス性を示し、循環反応を実現する能力をもつ〔(P. M. Lizardi, C. E. Guerra, H. Lomeli, I. Tussic-Luna, F. R. Kramerの論文、Bio/Technology 6, 1197(1988))。しかしながら、この酵素は、鋳型として、強く構造化されたRNA分子の限定された1つのクラスしか認識しないことから、その利用分野がきわめて制限された状態にとどまっている〔V.D. Axelrod, F. Brown, C.Priano, D.R Minsの論文、Virology 184, 595(1991)〕。
もう1つのRNAdRNApが部分的に特定されている。これは、Saccharomyces CerevisiaeウイルスL-Aの酵素である。クローニングされたこのポリメラーゼは、ウイルス粒子の集合に必要なものである。これは、まず最初に、プラス鎖RNAに固定し、次に粒子のタンパク質の集合を誘発する〔T. Fujimura, R.Esteban, L.M. Esteban, R.B. Wicknerの論文、Cell, 62, 819(1990)〕。ウイルス粒子と会合するものとして少なくとも3つの因子が知られている。これらの因子は、RNAの複製、転写及び粒子の付着状態維持にとって必要なものである〔T. Fujimura, R.B. Wicknerの論文、Molec. Cell. Biol., 7, 420(1987)〕。インビトロでの研究により、無傷のウイルス粒子がマイナス鎖の合成(複製)に必要であることが示され〔T. Fujimura, R.B. Wicknerの論文、Cell, 55, 663(1988)〕またプラス鎖の合成(転写)に必要であることが示されている〔T. Fujimura, R. B. Wicknerの論文、J. Biol. Chem. 264, 10872(1989)〕。かくして、この系は、その複雑性のため、インビトロでの転写系に容易に適合できないものとなっている。その上、Qβ系と全く同様に、この系は、鋳型としてL-A及びMウイルスRNAのみを受入れる非常に識別性の高いものである〔T.Fujimura, R. B. Wicknerの論文、Cell 55, 663(1988)〕。
鋳型の広い受容範囲が示されたRNAdRNApは、ポリオウイルスの酵素である〔J. Plotch, O. Palant, Y.Gluzmanの論文、J. Virol., 63, 216(1989)〕。しかしながら、この酵素系については複数の問題が存在する。すなわち、プライミング(amorcage)は、同定されていない宿主の因子か又はオリゴヌクレオチド ポリ(U)の添加に依存している。しかながら、オリゴヌクレオチド ポリ(U)によるプライミングは、鋳型に対し選択的でないことから、異なるサイズの数多くの産物、特に鋳型の長さの2倍の長さをもつ産物が合成される。その上、プラス及びマイナス鎖の連続的合成は実証されていない〔S. J. Plotch, O. Palant, Y. Gluzmanの論文、J. Virol., 63, 216(1989);T. D. Hey, O. C. Richards, E. Ehrenfeldの論文、J. Virol., 61, 802(1987);J. M. Lubinski, L. J. Ransone, A. Dasguptaの論文、J. Virol., 61, 2997(1987)〕。
DNAdRNApの中では、バクテリオファージT3及びT7の酵素が、特定の条件下で鋳型としてRNAを利用する能力をもつ。例えば、T3 DNAdRNApは+1から+6までの開始配列を含めたT3プロモータのアンチセンス鎖に連結された場合、1本鎖RNA鋳型を転写することができる〔S. Leary, H. J. Baum, Z. G. Loewyの論文、Gene 106, 93(1991)〕。同様に、T7 RNAポリメラーゼは、プロモータ配列の不在下でRNA鋳型を転写することができるということも知られている〔M. Chamberlin., J. Ringの論文、J. Biol. Chem., 248, 2235(1973)〕。その上、T7 RNAポリメラーゼが、プラス及びマイナスのRNAコピーを同時に生成する特異的な2つの小さなRNA鋳型、RNA「X」及び「Y」を効果的に転写できるということも示された。コンセンサスプロモータ配列の不在下で得られるこの複製は、特異的な第二の構造の存在により左右されると思われる〔M. M. Konarska, P. A. Sharpの論文、Cell 57, 423(1989), M. M. Konarska, P. A. Sharpの論文、Cell 63, 609(1990)〕。反対に、RNA「X」及び「Y」はT3 RNAポリメラーゼによっては複製されず、この酵素が高度に構造化されたRNAを複製する能力をもつのか又、この酵素の配列の特異性がそのRNA「X」及び「Y」の認識を妨げているのかについてはわかっていない。プロモータの不在下では、T7 DNAdRNApが、アンチセンスに重複する2つのRNA鎖の伸長を実施できることを示された(C. Cazenave及びO. C. Ulhlenbeckの論文、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91, 6972(1994))。同様に、野生型T7 DNAdRNApがプロモータの不在下で1本鎖DNA鋳型上でRNAプライマーの伸長を実施する能力をもつことも示された。(S. S. Daube及びP. H. von Hippelの論文、Biochemistry 33, 340(1994))。
最も良く特徴づけされているバクテリオファージの酵素は、98kDaの単量体酵素であるT7 RNAポリメラーゼである(B.A. Moffatt, J.J. Dunn, F.W. Studierの論文、J, Mol. Biol., 173, 265(1994))。この単量体ポリメラーゼは、RNAポリメラーゼの基本的特性の全て、すなわちプロモータの認識、転写の開始、伸長及び終結を有している(M. Chamberlin, T. Ryan, The Enzymes XV, 87(1982))。その上、触媒活性は、わずかな要素すなわち鋳型、リボヌクレオチド三リン酸及び二価のMg2+イオンしか必要とせず、その他のRNAポリメラーゼと異なり、転写を開始又は終結するのにいかなくタンパク質補助因子も必要としない(M. Chamberlin, T. Ryan, The Enzymes XV, 87(1982))。
T7 RNAポリメラーゼの遺伝子の突然変異誘発は、ポリメラーゼ機能に関与する領域又は残基を同定し定義づけることを可能にする。突然変異誘発の1つの戦略は、T7 RNAポリメラーゼとその近いこと、つまりそのアミノ酸配列が82%同一であるT3 RNAポリメラーゼの間で、要素を交換することから成るものであった。(K. E. Joho, L. B. Gross, N. J. McGraw, C. Raskin, W. T. McAllisterの論文、J. Mol, Biol., 215, 31(1990))。この方法はプロモータの認識に関与するポリメラーゼの要素の同定を導いた。例えば、酵素T3(又はT7)内での唯一のアミノ酸の置換により、突然変異を受けた酵素が非相同性のプロモータT7(又はT3)を特異的に認識できるようになる、ということが立証された(C.A. Raskin, G.Diaz, K. Joho, W.T. McAllisterの論文、J. Mol. Biol., 228, 506(1992))。同じ要領で、それぞれのプロモータ配列内の相互置換が、突然変異を受けたプロモータに対し、非相同酵素により認識される能力を付加する(C.A. Raskin, G.Diaz, K. Joho, W.T. McAllisterの論文、J. Mol. Biol., 228, 506(1992))。
T7 RNAポリメラーゼは結晶化され、3.3Åの分解能でその構造が決定された(R. Sousa, Y.J. Chung, J. P. Rose, R.-C. Wangの論文、Nature 364, 593(1993))。配列アラインメントのこの構造研究(K.E. joho, L.B Gross, N.J. McGraw C. Raskin, W.T. McAllisterの論文、J. Mol. Biol., 215, 31(1990);S. Mungal, B.M. Steinberg, L.B. Taichmanの論文、J. Virol, 66, 3220(1992), W.T. McAllister, C.A. Raskinの論文、Molec. Microbiol., 10, 1(1993))。及び突然変異誘発研究(D.Patra, E.M. Lafer, R.Sousaの論文、J.Mol. Biol. 224, 307(1992);L.Gross, W-J. Chen, W.T. McAllisterの論文、J. Mol. Biol. 228, (1992))から、酵素T7の機能的要素を構造的要素に相関することが可能であった。T7 RNAポリメラーゼを、2つの機能的ドメインすなわちプロモーター認識ドメインと触媒ドメインに分割することができる(R. Sousa, Y.J. Chung, J.P. Rose, B.-C. Wangの論文、Nature 364, 593(1993), W.T. McAllisterの論文、Cell. Molec. Biol. Res. 39, 385(1993))。
T7 RNAポリメラーゼのアスパラギン748は、プロモータの特異性の原因であることが立証された相互作用である、プロモータ配列内のヌクレオチド−10及び−11と相互作用するものとして示されてきた(C.A. Raskin, G. Diaz, K.Joho, W.T. McAllisterの論文、J. Mol. Biol., 228, 506(1922))。T7ポリメラーゼとそのプロモータの間のシグマタイプの相互作用がバクテリファージの系の中に存在しうる可能性が言及されてきた。実際、シグマの領域2.4すなわち「プリブナウボックス」(E. coliのシグマ転写因子70により認識されるTATAATG配列)と相互作用するシグマ領域に対応するシグマタイプの配列(C.Waldburger, T.Gardella, R.Wong, M.M. Susskindの論文、J. Mol. Biol., 215, 267(1990);D.A. Siegele, J.C. Hu, W.A. Walter, C.A. Grossの論文、J. Mol. Biol., 206, 591(1989))が、アミノ酸137及び157の間のT7 RNAポリメラーゼのN末端領域内に存在する(L.Gross, W J. Chen, W.T. McAllisterの論文、J. Mol. Biol., 228, (1992)。一方、いかなる機能も割当てられ得なかったものの、領域230〜250は、E.coliのリプレッサーλと配列相同性を示す(McGraw, N.J., Bailey, J.N., Cleaves, G.R., Dembinski, D.R., Gocke, C.R., Joliffa, J.K., MacWright, R.S.及びMcAnister, W.T. の論文、Nucleic Acids Res., 13, 6753(1985))。
触媒ドメインは一次構造上に分散した複数の領域の近接化の結果としてのポケット(poche)から成る(R.Sousa, Y.J. Chung, J.R. Rose, B.-C. Wangの論文、Nature 364, 593(1993),W.T. McAllister, C.A. Ruskinの論文、Molec. Microbiol., 10, 1(1993);D.Morasの論文、Nature 364, 572(1993))。このポケットは特に複数の保存されたパターンを含有し、そのうちパターンA及びCは、ポリメラーゼにおいて最も良く保存されている(Poch,O., Sauvaget, I., Delarue, M. and Tordo, N.の論文、EMBO J. 8, 3867(1989);Dalarue, M., Poch, O., Tordo, N.及びMoras, D.の論文、Protein Engineering 3, 461(1990);W.T. McAllister, C.A. Raskinの論文、Molec. Microbiol. 10, 1(1993))。第三のパターンであるパターンBは、DNA依存性RNA及びDNAポリメラーゼで保存され、一方(配列についても見かけの構造についても)異なったものであるパターンB′は、RNA依存性RNA及びDNAポリメラーゼにおいて保存している。(Poch, O., Sauvaget, I., Delarue, M.及びTordo, N.の論文、EMBO J., 8, 3867(1989);Delarue, M., Poch, O., Tordo, N. and Moras, D.の論文、Protein Engineering 3, 461(1990);L.A. Kohlstaedt, J. Wang, J.M. Friedman, P.A. Rice, T.A. Steitzの論文、Science 256, 1783(1992);W.T. McAllister, C.A. Raskinの論文、Molec. Microbiol., 10, 1(1993))。
本発明の態様の1つは、突然変異を受けたいくつかのDNA依存性RNAポリメラーゼが、2本鎖(bicatenaire)DNAプロモータの存在下で1本鎖又は2本鎖RNAを転写する能力をもつという発見に基づいている。さらに、これらの突然変異体酵素は、2本鎖DNAプロモータの存在下で1本鎖又は2本鎖DNAを転写する能力をほとんど、又は全くもたない。従ってこれらの酵素は、好ましくは又は厳密にRNA依存性をもつ。これらの利用は、RNAを選択的に転写したい場合、特に出発生体標本が、増幅すべきRNAの配列と同一の又は類似の配列をもつDNAを含んでいる又は含む危険性がある場合に、特に有利である。
従って、本発明は、プロモーターの支配下で鋳型ポリヌクレオチドに含まれるいずれかの配列の関心の対象となるポリヌクレオチド標的を転写することができ、それと同時に前記の鋳型ヌクレオチドの存在下で且つ共同タンパク質因子の不存在下で前記配列の相補的RNA配列を有する転写生成物を合成できるRNAポリメラーゼであって、前記の転写生成物を前記の鎖の標的配列がRNAから構成される場合の収率が前記の鎖の標的配列がDNAから構成される場合の収率よりも高い収率で転写できるRNAポリメラーゼを目的とする。
本発明は特に、RNA鋳型の転写生成物の収率に対するDNA鋳型の転写生成物の収率の%で表わした比率が、95%未満、特に85%未満、さらには70%未満であるような前記のRNAポリメラーゼに関する。
本発明は特に、鋳型DNAの転写生成物の収率に対する鋳型RNAの転写生成物の収率の比が2よりも大きい、特に10よりも大きいものであることを特徴とするRNAポリメラーゼを目的とする。
転写の「収率」というのは、もともと存在するポリヌクレオチド鋳型の量に対する転写生成物の量のモル比である。この収率は、反応培地の中にポリヌクレオチド鋳型を規定量導入することにより、実験で容易に決定することができる。DNA鋳型及びRNA鋳型で得られる収率を比較するためには、当然のことながら、鋳型の天然の条件以外の条件が匹敵したものであることが必要である。
本発明のRNAポリメラーゼは、任意の配列のポリリボヌクレオチド鋳型を転写することができ、この点でQβレプリカーーゼと異なっている。これは好ましくは又は排他的にRNA鋳型を転写し、この点で既知のファージのDNA依存性RNAポリメラーゼと異なっている。
本発明のRNAポリメラーゼは、既知の天然のRNAdRNApと異なり、特に会合されたタンパク質性補因子なしで機能することのできるRNAポリメラーゼである。しかしながら、これは、多量体、特に2量体の形を呈することもできる。
従って、本発明の突然変異を受けたRNAポリメラーゼは、一般に最初、それ自体タンパク質性補因子なしで機能することのできるRNAポリメラーゼから得られる。
本発明のRNAポリメラーゼは、特にウイルス又はファージのDNA依存性RNAポリメラーゼ、特にE.coliのファージのDNAポリメラーゼから突然変異により誘導されるRNAポリメラーゼでありうる。E.coliのファージとしては、特にT3、T7及びSP6を挙げることができる。
本発明に従ったRNAポリメラーゼは、T7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼ及びSP6 RNAポリメラーゼからなる群のDNA依存性RNAポリメラーゼの野生型RNAポリメラーゼと50%を上回る、特に80%を上回るタンパク質配列相同性を有することができる。
上述のDNA依存性RNAポリメラーゼの一群は既知のものである:例えば、R. Sousa, TIBS 21, 186-190(1996)及びこの論文中に引用された参考文献が参照される。
本発明のポリメラーゼとしては、特に、T7 RNAポリメラーゼのアミノ酸配列625〜652に対応する領域内に少なくとも1つの突然変異を含むもの、そして特に、前記領域内に少なくとも1つの突然変異を有する点を除いて、野生型DNA依存性RNAポリメラーゼの組成を有するポリメラーゼが挙げられる。ここで「突然変異」というのは、1つのアミノ酸の置換、欠失又は挿入を意味する。
例えば、T7 RNAポリメラーゼのアミノ酸配列の627、628、631、632及び639の位置のうちの1つに対応する位置で少なくとも1つの突然変異を有するRNAポリメラーゼが挙げられる;特に、前記突然変異には、野生型のRNAポリメラーゼのアルギニン、リシン、セリン及びチロシンの中から選ばれたアミノ酸残基の、もう1つのアミノ酸残基による置換が含まれる可能性がある。置換されるアミノ酸は、例えばアルギニン又はリシンである。置換アミノ酸は特に、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、トレオニン又はセリンの中から選択することができる。「アミノ酸」という表現はここでは、言語の誤用で、ペプチド結合に関与するアミノ酸残基を指している。
以上では、T7 RNAポリメラーゼのペプチド配列について言及した。ここで採用されたアミノ酸残基の番号付けは、Dunn, J.J. et Studier, F.W.Jの論文、Mol. Biol., 148 (4),303-330(1981)並びにStahl, S.J.及びZinn, K.の論文、J. Mol. Biol. 148 (4), 481-485(1981)に記述されているものである。
本発明は同様に、以下のものにも関する:
− 前述のとおりのRNAポリメラーゼについてコードする遺伝子:かかる遺伝子は、例えば、実験の部で以下に記述するものと類似の方法に従って得ることができる;
− 宿主細胞内で前記RNAポリメラーゼを発現する能力をもつ、上述の遺伝子が中に挿入される発現ベクター;このベタクーは、それ自体既知の要領で得ることができる;
− かかるベクターを含む宿主細胞。
前記のRNAポリメラーゼは、a)野生型のRNAポリメラーゼをコードする遺伝子を公知の方法で製造し、b)得られた遺伝子に少なくとも突然変異を行わせ、c)得られた突然変異遺伝子を発現ベクターに挿入し、d)前記発現ベクターを宿主細胞中で発現させて突然変異RNAポリメラーゼを得、次いでe)得られた突然変異RNAポリメラーゼの中から少なくとも前記のRNAポリメラーゼの性質を示すRNAポリメラーゼを選別することにより製造することができる。
以下では、出発物質としてT7 RNAポリメラーゼを利用する場合の、本発明の方法の特定の実施形態についてさらに詳しく記述する。
異なるカセットの集合から結果として得られる、T7 DNAdRNApのモジュラー遺伝子を調製した(例1及び図1を参照のこと)。
このように規定されたモジュラー遺伝子(gene modulaire)は、クローニングベクター内でユニークな制限部位により縁取られた10個のカセットを含有することによって特徴づけされる。
特に、ユニークな制限部位により縁取られたこれらのカセットは、その各々が1つの対象領域特にプロモータの認識に関与する領域(E. coliの因子σとの相同性を示す領域;E. Coliのレプレッサλとの相同性を示す領域;プロモータ特異性を付与する領域)及び触媒部位に関与する領域(パターンA;パターンB;パターンC)を含むことによって特徴づけられる。
パターンA、B及びCの定義づけについては、例えば、R. Sousa, TIBS 21, 186−190(1996)を参照のこと。
T7 DNAdRNApの遺伝子から誘導されたこれらのカセットは、特に沈黙状態で導かれた突然変異誘発により制限部位を導入することを可能にしたPCR,及びクローニングベクター内でのサブクローニングといった従来の分子生物学技術を用いて得られた(F. M. Ausubel, R.Brent, R.E.Kingston, D.D.Moore, J. G. Seidman, et al., Current Protocols in Molecular Biology(分子生物学における現行プロトコル)(Current Protocols, 1993)。
このようにして得られたモジュラー遺伝子は、カセットを縁取る制限部位の存在によって特徴づけられ、これらの制限部位は、部位NcoI(−2、+4),BclI(218、223),HindIII(539、544)、SacI(776、781)、PstI(1587、1592),BglII(1811、1816),NdeI(1865、1870)、XhoI(1951、1956)、ClaI(2305、2310)、SalI(2497、2502)、XbaI(2660、2665)である;核酸における位置1は、開始コドンATGのアデニンに対応し、位置2652は、終結コドンTAAに対応する。部位NdelI(2501、2509)は破壊された。これらの制限部位を誘発する全ての突然変異は、グリシンによる位置+2におけるアスパラギンの置換を誘発する部位NcoIを生成する突然変異を除いて、沈黙状態にある。アミノ酸における位置1は、第一のメチオニンに対応し、位置883は、末端カルボキシアラニンに対応する。
制限部位NcoI、EcoRI、XbaIを含むアダプターによりポリリンカーが置換されたpGEM−1から誘導されたクローニングベクターpGNEX内でクローニングされたモジュラー遺伝子は、後の突然変異誘発の基本的支持体を構成する。これは、対象領域を含む各カセットがクローニングベクター内でユニークな制限部位により縁どられているという事実によって可能となっている。
先に定義づけしたモジュラー遺伝子の単数又は複数のカセット内にPCR技術を用いて非沈黙突然変異を導入することで、モジュラー遺伝子から発現されたT7に比べ1個以上のアミノ酸が異なっているアミノ酸配列を呈するポリメラーゼについてコードする遺伝子が導かれた。特に、例えば位置627のアルギニン(R)に代わるアラニン(A)及び/又は位置628のセリン(S)に代わるアラニン(A)及び/又は位置631のリシン(K)に代わるアラニン(A)及び又は位置632のアルギニン(R)に代わるアラニン(A)及び/又は位置639のチロシン(Y)に代わるアラニン(A)を伴う、野生型酵素のパターンB内で修飾された少なくとも1つのアミノ酸についてコードする突然変異体遺伝子を調製した。
同様に、パターンBを含むその領域625VTRSVTKRSVMTLAYGSKEFGFRQQVLD652が全体的又は部分的に、或る種のRNA依存性ポリメラーゼ内に存在する相同な領域B′特にC型肝炎ウイルスのポリメラーゼの領域(NCGYRRCRASGVLTTSCGNTLTCYI)及び酵母のインテグラーゼ32領域(HNTTLGIPQGSVVSPILCNIFLDKL)によって置換されたポリメラーゼについてコードする突然変異体遺伝子も得た。
前述の遺伝子は、特にレプレッサーlacIqを含むpMal−c(Biolabs)のフラグメントSspI及び高レベルの発現を達成することを可能にするミニシストロンならびにクローニングされた遺伝子の終端末端に融合されたポリ−ヒスチジン尾部についてコードする配列を含むpMH(V.Cheynet, B. Verrier, F. Mallet, Protein expression and purification(タンパク質の発現及び精製)4,367(1993)のフラグメントSspIの連結の結果として得られたベクターpMRの中でクローニングされた(実施例1、図2)。細菌菌株BL21内の組換え型タンパク質T7 RNApの発現は、細菌の全タンパク質の最高30%を占めている。強い食塩濃度を含むデオキシコール酸塩緩衝液中で可溶化されたタンパク質は、ポリヒスチジン尾部を提示するタンパク質のイオンでのキレート化による特異的精製を可能にするTALONカラム(Clontech)上に沈殿させられる。かくして、(i)クーマシーブルーでの染色(実施例1、図3),(ii)抗T7RNApモルモットポリクローナル抗体(bio Merieux)及び抗MRGSHHHHHHマウスモノクローナル抗体(Quiagen)でのウエスタンプロットによる分析、(iii)基本的にHe et al.の方法(B. A. He, M. Rong, D. L. Lyakhov, H. Gartenstein, G. Diaz, et al., Protein Expr Purif 9, 142(1997)に従って決定されるような、エンドヌクレアーゼ、1本鎖及び2本鎖エキソヌクレアーゼ、リボヌクレアーゼ活性の不在、によって示されるように、95%を上回る純度で20mlの培養について、130〜2200μgのポリメラーゼが得られる。この結果は、宿主−ベクターpMR−BL21対及びMRGSHHHHHSVLE尾部に関する精製方法の性能を反映している。
本発明は同様に、任意の配列をもつ対象ポリヌクレオチドセグメントを転写する方法における、前述の通りのRNAポリメラーゼの利用において、このRNAタイプのセグメントがこのポリヌクレオチド鋳型の存在下で前記対象ポリヌクレオチドセグメントの配列に相補的なRNA配列を含む転写生成物を合成するべく、このポリヌクレオチド鋳型の中に含まれているような利用をも目的とする。
1つの特殊な実施形態に従うと、前記利用は、前記ポリヌクレオチド鋳型が、前記対象ポリヌクレオチドセグメントの上流側で、前記RNAポリメラーゼにより認識されるプロモータを含んで成ること、及び前記転写生成物が、前記プロモータのための転写開始部位で始まる鋳型の配列と相補的なRNAであることを特徴とする。
本発明のRNAポリメラーゼは、特に、(i)等温的なRNA標的の増幅、(ii)RNAの直接的配列付け及び(iii)特定の対象RANの合成(例えばプローブ、リボザイムなど)を実施するために利用することができる。その上、本発明のRNAポリメラーゼは新たに合成された鎖内に修飾済み塩基を取り込む能力をもち、このため、特に該鎖の定量化又は利用が容易になっている。
本発明は同様に、特に1つのプロモータに依存した形でRNA鋳型からRNAを合成する方法におけるかくして発現され精製されたこれらの組換え型酵素の利用にも関する。
かくして精製された酵素は、異なる鋳型(一方では実施例2、図4,他方では実施例3、図6)特に1本鎖RNAを有する鋳型上で、プロモータ依存性の状況下で評価された。本発明に従って得られた突然変異を受けたポリメラーゼが、特に1本鎖RNA鋳型上で正しい大きさの特異的転写物を生成する能力をもつことが示された。実施例2においては、同一に産生された野生型酵素がこの現象を実現できないように思われることが示されている。しかしながら、実施例3は野生型が実際、RNA鋳型を転写する特性を有することを示している。見かけ上一致していないこれらの結果は、これら2つの例において実験条件が異なっていることによって説明がつく。実際、実施例2では、転写物の存在は、放射性リンで標識されたUTPの取込み技術によって立証されているのに対し、実施例3において利用されている技術は、グループ2の鋳型についてのノーザンブロット法であり、この後者の場合、ノーザンブロット技術による転写物の検出は、放射性リンの取込みによる検出に比べ10倍の感度をもつ。従って、以下の実施例2は、本発明に従って得られた突然変異を受けたポリメラーゼが1本鎖RNA鋳型上で正しい大きさの特異的転写物を生成する能力を有することを示し、実施例3は、実際、対応する野生型ポリメラーゼが、その配列とは無関係にRNA鋳型上で正しい大きさの特異的転写物を生成する能力をもつことを示している。
その上、このような突然変異を受けたポリメラーゼは、野生型ポリメラーゼとは異なり、1本鎖又は2本鎖のDNA鋳型上では正しい大きさの特異的転写物を生成することができない。反応培地内に存在するMg2+イオンをMn2+イオンにより置換した場合、突然変異を受けた酵素は、1本鎖RNA鋳型上で、これらの条件下では正しい大きさの特異的転写物を生成しないが、それでも不稔性の産物を大量に生成することができる。このような突然変異を受けたポリメラーゼはさらにRNA/RNAハイブリッドを移動させる能力も有している。
添付の図面中、
− 図1は、T7 RNAポリメラーゼのモジュラー遺伝子の構築のための、以下の例1で詳述される増幅戦略を例示している。
− 図2は、このモジュラー遺伝子を含む発現ベクターpMRの構造を例示している。
− 図3は、以下の実施例1に詳述されているような、このベクタを用いて発現されたタンパク質の電気泳動プロフィールを表わしている。
− 図4は、以下の例2の転写試験において利用される鋳型系を概略的に表わしている。
− 図5は、以下の実施例2で得られた転写生成物の電気泳動プロフィールを表わす。
− 図6は、以下の実施例3の転写試験で利用される鋳型系を概略的に表わしている。
以下の実施例が本発明を例示する。
実施例
実施例1:モジュラー形態でのT7 RNAポリメラーゼの遺伝子の構築:T7 RNAポリメラーゼの発現及び精製
T7 RNAポリメラーゼの遺伝子は、その他のポリメラーゼとの相同性領域ならびにT7RNAポリメラーゼのいくつかのドメインに結びつけられた機能を考慮に入れて、モジュラー形態で構築された。この遺伝子を10個の領域又はカセットに分割した(図1−A)。なお各々の領域は、クローニングベクタ内のユニークな制限部位によって限定されている。6つのカセットは、それらがそれぞれE.Coliのシグマ因子の一部分との類似性をもつドメイン、E.Coliのラムダレプレッサとの相同性をもつドメイン、ファージポリメラーゼのプロモーターの特異性に関与するドメイン、鋳型依存性ポリメラーゼ内で保存されたパターンA及びC及びDNA依存性ポリメラーゼにおいて保存されたパターンBを含有するという点で特徴的である。各々の領域は、以下のように定義づけされるプライマを利用して野生型遺伝子(遺伝子1)からPCR(F. M. Ausubel, R. Brent, R. E. Kingston, D. D. Moore, J. G. Seidman, et al, Current Protocols in Molecular Biology(Current Protocols, 1993)により増幅され(図1a−B1);(i)これらのプライマは、カセットを限定する制限部位の導入を可能にする沈黙突然変異を含む;(ii)1つの領域の位置3′にあるプライマ及び隣接する領域の位置5′にあるプライマは部分的に重複している。隣接している増幅産物を混合し、外部プライマを利用して再増幅させる(図1a−B1)。生成された5つのフラグメントをPCRIIベクター(Invitrogen)の中でクローニングさせる(図1−B2)。クローニングされた5つのFRGから、クローニングベクターpGNEXの中での連続的なサブクローニングにより、5′末端から3′末端に向かって再構築する(図1−B3)。このベクターは、制限部位NcoI−EcoRI−XbaIを含むアダプタによりポリリンカが置換されているプラスミドpGEM−1(Promega)から誘導される。かくして得られたT7 RNAポリメラーゼのモジュラー遺伝子(T7 RNApol)は、新たに導入された11の部位を含めた、pGNEX内の17のクローニングユニーク部位を含んでいる(図1−c)。この遺伝子を次に、発現ベクターpMR中でサブクローニングさせる(図2)。pMHベクターから誘導されたこのベクター(V. Choynet, B. Verrier, F. Mallet, Protein expression and purification 4,367(1993))は、IPTG(イソプロピル-β-D−チオガラクトピラノシド)により調節される強いtacプロモータ、翻訳の開始のために効果的な状況を構成する2つのリボソーム結合部位にとり囲まれた短かいミニシストロン及び、金属イオンに対するアフィニティークロマトグラフィによるその精製を可能にする発現されたタンパク質の終端N末端に融合されたポリヒスチジン尾部を含有する。発現のより優れた制御を可能にするレプレッサlacIqについてコードする遺伝子もpMR中に存在する。この発現ベクタを、E.Coli BL21菌株中で従来の方法(F. M. Ausubel, R.Brent, R.E.Kingston, D.D.Moore, J. G. Seidman, et al., Current Protocols in Molecular Biology(Current Protocols, 1993))に従って形質転換させる。30mlの培地を接種するために、予備培養を利用する。タンパク質の発現は、培養の600nmでの光学密度が0.6に達した時点で直ちに37℃で4時間、IPTGにより誘発させる。かくして発現されたT7 RNApolは、全細菌タンパク質の30%を占める(図3)。これを次に、洗剤の存在下で溶解(音波処理)により細菌から抽出する。可溶性抽出分画から、T7RNApolをCo2+イオンに対するアフィニティークロマトグラフィにより精製し、イミダゾール勾配により溶出させる。SDS−PAGEゲル上でこれを分解し、クーマシーブルーでの染色により視覚化する(図3)。分解産物の不在を、モルモットの体内で産生された抗T7RNApolポリクローナル抗体及び市販の抗MRGSH6モノクローナル抗体(Qiagen)を用いたウェスタンブロット法により確認する。エンドヌクレアーゼ、エキソヌクレアーゼ及びRNアーゼの寄生活性の不在を、He et al, Protein Expr, Purif 9,142(1997)により記述されたプロトコルに従って確認する。20mlの培養から、95%以上の純度をもつ700〜800μgの酵素を再現可能な形で得る。精製収率は75%である。
制限部位が導入されたのと同じ要領で、連続的PCR(F. M. Ausubel, R.Brent, R.E. Kingston, D.D.Moore, J. G. Seidman, et al., Current Protocols in Molecular Biology(Current Protocols, 1993))(又は2重PCR)により、点突然変異を作り出す:すなわち内部プライマは導入すべき突然変異を含んでいる;外部プライマは、突然変異すべき領域をとり囲み、モジュラー遺伝子内でこの領域を限定する制限部位を含有する。このようにして突然変異されたこのカセットは次に、モジュラー遺伝子内でクローニングされる。同様に、合成オリゴ−ヌクレオチドが、完全なカセットに置換することもできる。
実施例1で引用した図の説明
図1: この図は、T7RNAポリメラーゼのモジュラー遺伝子の構築のための増幅戦略を例示する。(A):対象領域との関係におけるT7RNAポリメラーゼの遺伝子の分割(垂直矢印)。1〜6という番号が付された領域は次の通りである:1. E. Coliのシグマ因子の一部分との相同性;2. E. Coliのラムダレプレッサとの相同性;3.パターンA;4.パターンB;5.ファージポリメラーゼのプロモータの特異性;6.パターンC。(B):(1)制限部位(●)<特殊な記号あり>の作製のための沈黙突然変異を含むプライマの位置;Nc, NcoI : Bc, BclT ; H, HindIII ; 標的配列, SacI ; P, PstI ; Bg, BglII ; Nd, Ndel ; Xo, XhoI ; C, ClaI ; Sl, SalI ; Xb, XbaI.重複するPCRによる拡張は、3つの制御部位(F1〜F5)を含む5つのフラングメントを導く。Sub-cloningというのはサブクローニングのことを意味する。(2)このように生成された各々のフラグメント(F1〜F5)は、ベクターpCRII.E.EcoRI内でクローニングされる。(3)各段階で2つのフラグメントに共通の制限部位及びベクタpCRII及びクローニングベクターpGNEXの制限部位EcoRIを利用することによる、5′末端から3′末端に向かうモジュラー遺伝子の再構築;最後のサブクローニングのためには、最後のフラグメント及びベクターpGNEXに共通の制限部位XbaIが利用される。(C)T7RNAポリメラーゼのモジュラー遺伝子の構造及び、すでに存在した(下)及び突然変異誘発によって作り出された(上)ベクターpGNEX内のユニーク制御部位の位置。
図2:この図は、T7RNAポリメラーゼのモジュラー遺伝子を含む発現ベクターpMRの構造を例示する。Ptac:プロモータtac(黒色ボックス);RBS1−MC−RBS2,2つのリボソーム結合部位に囲まれたミニシストロン(白色矢印);(His)6T7RNA Pcas,T7RNAポリメラーゼのモジュラー遺伝子(灰色矢印);rrnBT1T2,強い転写ターミネータ(点線の入ったボックス);bla,アンピシリン耐性遺伝子(黒色矢印);pMB1 ori/M132ori−,複製起点(細長い白色ボックス);lacIq,レプレッサlacIqについてコードする遺伝子(斜線矢印);突然変異誘発により導入された新しい部位(下線付き)を含むいくつかの制限部位が示されている。
図3:この図は、T7RNAポリメラーゼの発現及び精製の分析を可能にする、得られた電気泳動プロフィールを示す。細菌溶解産物は、IPTGの存在下(+)又は不在下(−)でのT7RNAポリメラーゼの発現を制御するため30mlの培地中で採取された1mlから調製される。T7RNAポリメラーゼは、同じ培養20mlから抽出される。可溶性分画は、精製カラム上に投入され(トラックL)、T7RNAポリメラーゼは、イミダゾール勾配により溶出される(トラックE)。M,分子量マーカー、タンパク質は、クーマシーブルーでの染色により10%のSDS−PAGEゲル上で視覚化されている。矢印は、T7RNAポリメラーゼの位置を示す。
実施例2:プロモーターに依存した形での突然変異を受けたT7RNAポリメラーゼR627AによるRNA及びDNA鋳型の転写
この例で利用された鋳型系は、図4に概略的に示されている。1本鎖DNA転写系は、位置−17〜+1で、(その3′末端で遮断された)5′TAATACGACTCACTATAG3′という配列の非鋳型プロモータ鎖(b)にハイブリッド形成された3′ATTATGCTGAGTGATATCCCAACCGGCGTCACAAGTGAGTACCAATACCG5′という配列50塩基の鋳型鎖(a)を含む。2本鎖DNA転写系は、5′TAATACGACTCACTATAGGGTTGGCCGCAGTGTTCACTCATGGTTATGGC3′という配列の非鋳型鎖(C)にハイブリッド形成された鋳型鎖(a)を含む。
1本鎖RNA転写系は、非鋳型プロモータ鎖(b)ハイブリッド形成された3′ATTATGCTGAGTGATATCCCAACCGGCGUCACAAGUGAGUACCAAUACCG5′という配列の、位置+1〜+33のRNA及び位置−17〜−1のDNAのハイブリッド鎖で形成されている。3つの系上で予想される完全な写しは33塩基である。
反応は、J.F. Milligan, D.R.Groobe, G.W. Witherell, O.C.Uhlenbeck, Nucleic Acids Res. 25, 8783(1987)によって記述されたものから誘導した20μlの緩衝液すなわちTris-HC140mM,pH8.1,スペルミジン1mM,PEG8%(q/V),トリトン0.01%(V/V),BSA5μg/100μl,1μl(40u)のブタRNA guard(Phamacia Bioteck),UTP12.5μM,32PUTP 0.5μCi(Amersham, 10mCi/ml 400Ci/mmol),0.4mMの3つのリボヌクレオシド三リン酸A、G、C、Mg(OAc)26mMの中で行なう。鋳型濃度は、20μlの反応中各鎖の1011のコピーに定められる。野生型T7RNAポリメラーゼを0.5μM(100ng/20μl)で、突然変異を受けたT7RNAポリメラーゼR627Aを3.65μM(730ng/20μl)で利用する。酵素を添加する前に、反応を65℃で5分間、加熱ブロック中で変性させ、次に漸進的に37℃まで戻す。反応を、ポリメラーゼの添加により開始させ、37℃で一時間インキュベートし、その後同体積の2倍のホルムアミドブルー(ホルムアミド90%,EDTA25mM,キシレンシアノール0.02%,ブロモフェノールブルー0.02%)を添加することにより停止させ、95℃で5分間変性させる。20μlの各反応を変性ゲル(20%アクリルアミド、尿素7M,TBE/X)上で沈殿させ、遊走の後、ゲルをBiomax MRフィルム(Kodak)上で−70℃でオートラジオグラフィに付す。結果(電気泳動プロフィール)、特に1本鎖RNA(ウェル1及び4)、2本鎖DNA(ウェル2及び5)及び1本鎖DNA(ウェル3及び6)鋳型上での突然変異を受けたT7RNAポリメラーゼR627A(ウェル1〜3)及び野生型T7RNAポリメラーゼ(ウェル4〜6)で得られる転写の結果は、図5に示されている。32塩基の完全な写しの検出により検出される1本鎖RNA上の転写は、突然変異を受けたT7RNAポリメラーゼR627A(ウェル1)を利用することによって可能であるが、反対に不稔的写しを数多く産生する野生型酵素(ウェル4)では不可能である。ただし、以下の例3で得られる異なる結果を参照のこと。突然変異を受けたT7RNAポリメラーゼR627Aは、予想された写しよりも小さいサイズの過半数の写しの存在及び少量の不稔的産物の存在により特徴づけられる2本鎖DNA上(ウェル2)の残留転写活性を呈する。1本鎖DNA上(ウェル3)では、この異常なサイズの写しは消滅し、一方不稔的産物の量は増大する。反対に野生型酵素は、DNA鋳型の存在下で特異的写しの獲一得を可能にする(ウェル5及び6)。なおここでこの酵素は、1本鎖DNA鋳型(ウェル6)上よりも2本鎖DNA鋳型(ウェル5)上でより優れた転写活性を呈する;これら2つの鋳型について、野生型酵素は、数多くの不稔的写しの合成を誘発する。これらの結果は、アラニンによるアルギニン627の置換が突然変異体酵素に対し、RNA鋳型からRNAを合成する可能性を付与し、DNA鋳型からRNAを合成する能力の喪失を誘発することを示している。
実施例3
Arnaud N. et al., Gene, 199, 149−156(1997)により記述された方法に従ってアフィニティクロマトグラフィにより、例1の場合と同様に得られたT7RNAポリメラーゼを精製する。
精製されたT7RNAポリメラーゼは、約200U/μgの特異的活性を有する。
転写のために利用される鋳型の配列は、以下の表1に記されている。
以下で記述する試験においては、表1の配列1,2及び3の鋳型は、それぞれグループ1,グループ2及びグループ3の鋳型と呼ばれる。
利用されるプローブの配列は、表1に表わされている(配列番号4及び5)。
配列番号4は、グループ1及び3の鋳型で得られた転写生成物の3′末端を認識し、配列番号5は、グループ2の鋳型の転写生成物の3′末端を認識する。
プローブは、T4ポリヌクレオチドキナーゼによりγ32PATPで、又はターミナルトランスフェラーゼデオキシヌクレオチドによりα32PddATPで標識づけされる。
転写試験
反応を、40m/Mのトリス−HCl,1mMのスペルミジン,50μg/mlのウシ血清アルブミン、0.01%(v/v)のトリトン×100,80mg/mlのPEG8000,1μlのRNA guard(Phamacia),6mMの酢酸マグネシウム、鋳型又は非鋳型鎖の1011のコピー、転写に必要なヌクレオシド三リン酸及び指示通り標識されたヌクレオシド三リン酸を含む20μLの体積中で行なわせる。標識されたヌクレオシド三リン酸がα32P ATPである場合、0.4mMのUTP,CTP及びGTP,12.5μMATP及び0.5μCiα32P ATP(New England Nuclear Dupont, 800Ci/mmol)という濃度を利用する。標識されたヌクレオシド三リン酸がα32P UTPである場合、0.4mMのATP,CTP及びGTP,12.5μMのATP及び0.5μCiのα32P UTP(Amersham,400Ci/mmol)という濃度を利用する。標識づけされたヌクレオシド三リン酸がγ32P GTPである場合、0.4mMのATP,UTP,CTP及びGTP及び20μCiのγ32P GTP(Amersham,5000Ci/mmol)という濃度を利用する。
試料を70℃で5分間加熱し、次に37℃までゆっくりと冷却して、鋳型及び非鋳型鎖のハイブリダイゼーションを可能にする。その後260ngのT7RNAポリメラーゼを添加し、37℃で1時間インキュベートさせる。同体積の2倍緩衝液(90%ホルムアミド,25mM EDTA,0.02%キシレンシアノール、0.02%ブロモフェノールブルー)を添加することによって反応を停止させる。転写生成物を、95℃で5分間の加熱後に、20%のポリアクリルイミドの変性ゲル上で電気泳動により分析し、オートラジオグラフィにて検査する。
ノーザンブロット分析のためには、同条件下で、ただし標識されたヌクレオチド無しで反応を行なう。20%のポリアクリルアミドの変性ゲル上での遊走の後、標本をナイロン膜(Appligene)上に移し、適切な標識されたブローブにより転写生成物を検出し、オートラジオグラフィで検査する。
短い合成鋳型の定義
T7RNAポリメラーゼが転写反応内でRNA鋳型を利用できるか否かを確認するため、2重連環DNAプロモータを含む3つのタイプの短合成鋳型を定義づけした。
第一のタイプの鋳型(RNA+18)は、いわゆるプロセッシブ段階中に、RNA鋳型を転写するT7RNAポリメラーゼの能力について研究する目的で定義づけされた。この第一のタイプの鋳型は、転写開始部位の下流側18塩基のところに転移が位置づけされているDNA−RNAキメラ配列をその下流側に伴う2本鎖プロモータを含んでいる。
第二のタイプの鋳型(RNA+1)は、転写開始段階中にRNA鋳型を転写するT7RNAポリメラーゼの能力について研究する目的で定義づけされた。この第二のタイプの鋳型は、2本鎖プロモータとそれに続くRNA配列を含む。
比較に役立つ第三のタイプの鋳型(DNA)はDNA配列を下流側に伴う2本鎖プロモータを含む。
非鋳型鎖の影響を研究するためには、DNA、RNA+18及びRNA+1の鋳型はそれぞれ1本鎖(m)であってもよいし又は2本鎖ヘテロ2本鎖(bhe)であってもよいし、あるいは2本鎖ホモ2本鎖(bho)であってもよい。この2本鎖ホモ2本鎖鋳型RNA+18は、位置+18から出発してRNA−RNA2本鎖を形成する。同様にして、前記の2本鎖ホモ2本鎖RNA+1は、転写開始部位から出発してRNA−RNA2本鎖を形成する。
ここで、表1においてはA,T,C,Gという文字で、異なるヌクレオチドを表わしたということを指摘しておきたい。鋳型又は鋳型の一部分がDNAである場合、これらの文字はデオキシリボヌクレオチドを表わす。鋳型又はその一部分がRNAでできている場合、これらの文字はリボヌクレオチドを表わし、このとき記号Uに代わって記号Tが利用されることを理解すべきである。
上述の異なる転写系は、添付の図6に概略的に表わされており、この図では各々の2重連環系について、上部鎖は非鋳型鎖であり下部鎖は鋳型鎖である。DNA2本鎖プロモータ領域は、太線で表わされている。DNA鎖は、細線で表わされ、RNA鎖は破線で表わされている。+1という表示は、転写開始部位に対応している。表示+18は、転写開始部位の下流側の18番目の塩基に対応する。これらの異なる転写系の呼称中、mという文字は1本鎖を意味し、bという文字は2本鎖を意味し、bheは2本鎖ヘテロ2本鎖を意味し、bhoは2本鎖ホモ2本鎖を意味する。
図6の転写系は、各々の鋳型と共に、又は場合に応じて表1の鋳型のいくつかと共に利用された。配列番号1を利用するグループ1の鋳型は、それ自体下流側に26塩基の配列を伴うコンセンサス+1〜+6開始領域(Dunn et Studier, J. Mol. Biol., 166,477−535,1983)を後に伴う2本鎖DNAプロモータ配列に対応する。
グループ2の鋳型は、転写の早過ぎる終結を可能にしうることから有利でない1つの配列を後に伴う2本鎖DNAプロモータ配列に対応する(Martin et al., Biochemistry, 27,3966−3974,1988)。
グループ3の鋳型は、グループ1のものと同じ下流側配列を後に伴うグループ2と同じ有利でない開始配列に対応する。
結果
結果は、添付の表2にまとめられている。
RNA+18鋳型上のDNA−RNA転移は、DNA対照との関係における+18の位置の前後での早すぎる終結の増加が無いことによって示されるように、伸長複合体を効率良く経由していることがわかる。
T7RNAポリメラーゼは、異なるRNA鋳型上で転写を開始する能力をもち、これらの鋳型を完全に転写することができる。全ての鋳型グループについて予想されたサイズをもつ写しが検出されたことは、対照DNA鋳型上でもみられるように包括的効率が塩基の組成によって左右されるのに対しRNA鋳型の利用が配列に依存していないことを示している。
上述の例2に言及されている異なる結果は、ノーザンブロット技術による検出が、このケースにおいて、当該明細書で上述したとおり、例2で利用された検出技術よりも40倍も感度の高いものであるという事実に由来するものである。
T7RNAポリメラーゼは、RNA−RNA 2重鎖を転写する能力をもつ。RNA+1ホモ2本鎖鋳型では不稔的転写生成物の数のいかなる増大も観察されない。
ホモ又はヘテロ2本鎖の2本鎖鋳型の転写は、全体として類似している。グループ2のRNA+18鋳型の場合には、テヘロ2本鎖系を用いた場合よりもホモ2本鎖系を用いた場合の方が予想される大きさの転写物がより多く得られる。
非鋳型の存在は、転写の効率に影響を及ぼす。実際、一方では正しい大きさの転写物の数の増加によって示され、他方では開始が完全な転写物の合成に結びつけられる場合が多いという事実によって示されるように、転写の効率は1本鎖鋳型に関して増大する。しかしながら、グループ2の鋳型の場合には、1本鎖系はより良い結果を示していない。
かくして、T7RNAポリメラーゼは、DNA2本鎖プロモーターの存在下でRNA鋳型に関して転写活性を有する。観察された転写効率は、DNA鋳型に関する場合に比べて10〜100分の1にしか過ぎない。
Claims (16)
- RNAの標的配列を含んでいるRNA試料中の該標的配列をプロモーターの支配下で転写することによるRNAの標的配列の増幅方法であって、
前記のRNA試料を、
前記の標的配列を含んでいるRNAとハイブリッド形成できる反応剤と、
RNA依存性RNAポリメラーゼ活性を含む酵素系と
に、前記の標的配列を含んでいるRNAが前記反応剤とハイブリッド形成することを可能にする条件及び前記のRNA依存性RNAポリメラーゼ活性が機能することを可能にする条件下で接触させること;
前記の反応剤が(i)第一のヌクレオチド鎖と、(ii)第一のヌクレオチド鎖にハイブリッド形成した状態の第二のヌクレオチド鎖とを有するものであり、
(i) 第一のヌクレオチド鎖は、a)前記のRNAポリメラーゼ活性のためのプロモーターのセンス鎖の役割を果たし得る第一のヌクレオチドセグメントと、b)前記の第一のヌクレオチドセグメントの下流側にあるヌクレオチドセグメントであって前記RNAの領域とハイブリッド形成することができる配列を含んでいる第二のヌクレオチドセグメントとを有するものであり、且つ
(ii) 第二のヌクレオチド鎖は、前記の第一のヌクレオチドセグメントとハイブリッド形成してこれらが一緒になって機能的二本鎖プロモーターを形成することができる第三のヌクレオチドセグメントを有するものであること;及び
前記のRNAポリメラーゼ活性が前記のRNA鎖を、該RNA鎖にハイブリッド形成した前記反応剤の存在下、共同タンパク質性因子の不存在下及びリガーゼの活性の不存在下で転写することができるものであること;
を特徴とするRNAの標的配列の増幅方法。 - 前記の第三ヌクレオチドセグメントがその上流末端に前記の第一のヌクレオチド鎖の第二のヌクレオチドセグメントよりも短い第四のヌクレオチドセグメントを並置するものである請求項1記載の方法。
- 前記の第四のヌクレオチドセグメントが前記の第二のヌクレオチドセグメントと向かい合った部分とハイブリッド形成することができるものである請求項1記載の方法。
- 前記の第一のヌクレオチド鎖の第二のヌクレオチドセグメントが、存在する場合には前記の第四のヌクレオチドセグメントのヌクレオチドの個数と、前記RNAの領域とハイブリッド形成することができる前記の第二のヌクレオチドセグメントの配列のヌクレオチドの個数との合計数と少なくとも同じ個数のヌクレオチドを有するものである請求項2〜3のいずれか1項に記載の方法。
- 前記のRNAポリメラーゼがT7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼ及びT6 RNAポリメラーゼからなる群のRNAポリメラーゼの中から選択されるものである請求項1記載の方法。
- 前記のRNAポリメラーゼがT7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼ及びSP6 RNAポリメラーゼからなる群のRNAポリメラーゼの中から選択されるRNAポリメラーゼの突然変異によって誘導されるものである請求項1記載の方法。
- 前記のRNAポリメラーゼがT7 RNAポリメラーゼのアミノ酸配列625〜652に対応する領域に少なくとも一つの突然変異を有するものである請求項6記載の方法。
- 前記のRNAポリメラーゼがポリヌクレオチドの標的配列を転写でき、該配列がRNAから構成される場合の収率が該配列がDNAから構成される場合の収率よりも高い収率で転写できるものである請求項7記載の方法。
- 前記の酵素系がRNAポリメラーゼ活性のみを含有するものである前記請求項のいずれか1項に記載の方法。
- プロモーターの支配下で鋳型ポリヌクレオチドに含まれるいずれかの配列の関心の対象となるポリヌクレオチド標的を、前記の鋳型ヌクレオチドの存在下で且つ共同タンパク質因子の不存在下で前記配列に相補的なRNA配列を含有する転写生成物を合成することによって転写することができるRNAポリメラーゼであって、前記の転写生成物を、前記の鋳型の標的配列がRNAから構成される場合の収率が前記の鋳型の標的配列がDNAから構成される場合の収率よりも高い収率で合成できるものであり、アミノ酸配列625〜652に対応する領域に少なくとも一つの突然変異を有するT7 RNAポリメラーゼである請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法に使用できるRNAポリメラーゼ。
- 位置627、628、631、632及び639の一つに対応する位置に少なくとも一つの突然変異を有することを特徴とする請求項10に記載のRNAポリメラーゼ。
- 前記の突然変異が、野生型のRNAポリメラーゼのアルギニン、リシン、セリン及びチロシンの中から選択されるアミノ酸残基を別のアミノ酸残基で置換したものであることを特徴とする請求項10又は11のいずれか1項に記載のRNAポリメラーゼ。
- 前記の置換されたアミノ酸がアルギニン又はリシンであること及び/又は前記の別のアミノ酸残基がアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、グリシン、トレオニン又はセリンの残基であることを特徴とする請求項12に記載のRNAポリメラーゼ。
- 前記突然変異が位置627のアルギニン(R)の代わりにアラニン(A)及び/又は位置628のセリン(S)の代わりにアラニン(A)及び/又は位置631のリシン(K)の代わりにアラニン(A)及び/又は位置632のアルギニン(R)の代わりにアラニン(A)及び/又は位置639のチロシン(Y)の代わりにアラニン(A)の中から選択されるものであることを特徴とする請求項10〜13のいずれか1項に記載のRNAポリメラーゼ。
- プロモーターの支配下に補助タンパク質性因子の不存在下でRNA標的配列を含んでいる鋳型RNAを、RNAポリメラーゼの存在下で転写し、前記のRNAポリメラーゼが請求項10〜14に記載のT7 RNAポリメラーゼから選択されるものである請求項1に記載の方法。
- プロモーターの支配下に補助タンパク質性因子の不存在下でRNA標的配列を含んでいる鋳型RNAを、RNAポリメラーゼの存在下で転写し、前記鋳型鎖が該標的配列の+5の位置と5′末端の間が少なくともRNAから構成されるものであり、前記のRNAポリメラーゼが請求項10〜14のいずれか1項に記載のものである請求項1に記載の方法。
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