最初に、本発明に係るプリンタの一例として、インクジェットプリンタの概略構成及び制御方法について説明する。
図13は、インクジェットプリンタの概略構成を示したブロック図である。
図13に示したインクジェットプリンタは、紙送りを行う紙送りモータ(以下、PFモータともいう。)1と、紙送りモータ1を駆動する紙送りモータドライバ2と、印刷紙50にインクを吐出するヘッド9が固定され、印刷紙50に対し平行方向かつ紙送り方向に対し垂直方向に駆動されるキャリッジ3と、キャリッジ3を駆動するキャリッジモータ(以下、CRモータともいう。)4と、キャリッジモータ4を駆動するCRモータドライバ5と、CRモータドライバ5にモータ駆動指令値を払い出すDCユニット6と、ヘッド9の目詰まり防止のためのインクの吸い出しを制御するポンプモータ7と、ポンプモータ7を駆動するポンプモータドライバ8と、ヘッド9を駆動制御するヘッドドライバ10と、キャリッジ3に固定されたリニア式エンコーダ11と、所定の間隔にスリットが形成されたリニア式エンコーダ11用符号板12と、PFモータ1用のロータリ式エンコーダ13と、印刷処理されている紙の終端位置を検出する紙検出センサ15と、プリンタ全体の制御を行うCPU16と、CPU16に対して周期的に割込み信号を発生するタイマIC17と、ホストコンピュータ18との間でデータの送受信を行うインタフェース部(以下、IFともいう。)19と、ホストコンピュータ18からIF19を介して送られてくる印字情報に基づいて印字解像度やヘッド9の駆動波形等を制御するASIC20と、ASIC20及びCPU16の作業領域やプログラム格納領域として用いられるPROM21,RAM22及びEEPROM23と、印刷紙50を支持するプラテン25と、PFモータ1によって駆動されて印刷紙50を搬送する搬送ローラ27と、CRモータ4の回転軸に取付けられたプーリ30と、プーリ30によって駆動されるタイミングベルト31とから構成されている。
DCユニット6は、CPU16から送られてくる制御指令、エンコーダ11,13の出力に基づいて紙送りモータドライバ2及びCRモータドライバ5を駆動制御する。また、紙送りモータ1及びCRモータ4はいずれもDCモータで構成されている。
図14は、インクジェットプリンタのキャリッジ3周辺の構成を示した斜視図である。
図14に示すように、キャリッジ3は、タイミングベルト31によりプーリ30を介してキャリッジモータ4に接続され、ガイド部材32に案内されてプラテン25に平行に移動するように駆動される。キャリッジ3の印刷紙に対向する面には、ブラックインクを吐出するノズル列及びカラーインクを吐出するノズル列を有する記録ヘッド9が設けられ、各ノズルはインクカートリッジ34からインクの供給を受けて印刷紙にインク滴を吐出して文字や画像を印刷する。
また、キャリッジ3の非印字領域には、非印字時に記録ヘッド9のノズル開口を封止するためのキャッピング装置35と、図13に示したポンプモータ7を有するポンプユニット36とが設けられている。キャリッジ3が印字領域から非印字領域に移動すると、図示しないレバーにキャリッジ3が当接して、キャッピング装置35が上方に移動し、ヘッド9を封止する。
ヘッド9のノズル開口列に目詰まりが生じた場合や、カートリッジ34の交換等を行ってヘッド9から強制的にインクを吐出する場合は、ヘッド9を封止した状態でポンプユニット36を作動させ、ポンプユニット36からの負圧により、ノズル開口列からインクを吸い出す。これにより、ノズル開口列の近傍に付着している塵埃や紙粉が洗浄され、さらにはヘッド9内の気泡がインクとともにキャップ37に排出される。
図15は、キャリッジ3に取付けられたリニア式エンコーダ11の構成を模式的に示した説明図である。
図15に示したエンコーダ11は、発光ダイオード11aと、コリメータレンズ11bと、検出処理部11cとを備えている。検出処理部11cは、複数(4個)のフォトダイオード11dと、信号処理回路11eと、2個のコンパレータ11fA,11fBとを有している。
発光ダイオード11aの両端に抵抗を介して電圧VCCが印加されると、発光ダイオード11aから光が発せられる。この光はコリメータレンズ11bにより平行光に集光されて符号板12を通過する。符号板12には、所定の間隔(例えば1/180インチ(1インチ=2.54cm))毎にスリットが設けられている。
符号板12を通過した平行光は、図示しない固定スリットを通って各フォトダイオード11dに入射し、電気信号に変換される。4個のフォトダイオード11dから出力される電気信号は信号処理回路11eにおいて信号処理され、信号処理回路11eから出力される信号はコンパレータ11fA,11fBにおいて比較され、比較結果がパルスとして出力される。コンパレータ11fA,11fBから出力されるパルスENC−A,ENC−Bがエンコーダ11の出力となる。
図16は、CRモータ正転時及び逆転時におけるエンコーダ11の2つの出力信号の波形を示したタイミングチャートである。
図16(a),(b)に示すように、CRモータ正転時及び逆転時のいずれの場合も、パルスENC−AとパルスENC−Bとは位相が90度だけ異なっている。CRモータ4が正転しているとき、即ち、キャリッジ3が主走査方向に移動しているときは、図16(a)に示すように、パルスENC−AはパルスENC−Bよりも90度だけ位相が進み、CRモータ4が逆転しているときは、図16(b)に示すように、パルスENC−AはパルスENC−Bよりも90度だけ位相が遅れるようにエンコーダ4は構成されている。そして、上記パルスの1周期Tは符号板12のスリット間隔(例えば1/180インチ)に対応し、キャリッジ3が上記スリット間隔を移動する時間に等しい。
一方、PFモータ1用のロータリ式エンコーダ13は符号板がPFモータ1の回転に応じて回転する回転円板である以外は、リニア式エンコーダ11と同様の構成となっており、2つの出力パルスENC−A,ENC−Bを出力する。インクジェットプリンタにおいては、PFモータ1用のロータリ式エンコーダ13の符号板に設けられている複数のスリットのスリット間隔は1/180インチであり、PFモータ1が上記1スリット間隔だけ回転すると、1/1440インチだけ紙送りされるような構成となっている。
図17は、給紙及び紙検出に関連する部分を示した透視図である。
図17を参照して、図13に示した紙検出センサ15の位置について説明する。図17において、プリンタ60の給紙挿入口61に挿入された印刷紙50は、給紙モータ63により駆動される給紙ローラ64によってプリンタ60内に送り込まれる。プリンタ60内に送り込まれた印刷紙50の先端が例えば光学式の紙検出センサ15により検出される。紙検出センサ15によって先端が検出された紙50は、PFモータ1により駆動される紙送りローラ65及び従動ローラ66によって紙送りが行われる。
続いてキャリッジガイド部材32に沿って移動するキャリッジ3に固定された記録ヘッド(図示せず)からインクが滴下されることにより印字が行われる。所定の位置まで紙送りが行われると、現在、印字されている印刷紙50の終端が紙検出センサ15によって検出される。印字が終了した印刷紙50は、PFモータ1により駆動される歯車67A,67Bを介して歯車67Cにより駆動される排紙ローラ68及び従動ローラ69によって排紙口62から外部に排出される。尚、紙送りローラ65の回転軸には、ロータリ式エンコーダ13が連結されている。
図18は、プリンタの紙送りに関連する部分を詳細に示した透視図である。
図17に示したプリンタの部分のうち紙送りに関連する部分について、図17及び図18を参照して、より詳細に説明する。
プリンタ60の給紙挿入口61から挿入され、給紙ローラ64によってプリンタ60内に送り込まれた印刷紙50の先端が紙検出センサ15により検出されると、PFモータ1により小歯車87を介して駆動される大歯車67aの回転軸であるスマップ(Smap)軸83の周囲に設けられた紙送りローラ65と、給紙側から送られてきた印刷紙50を垂直方向下向きに押圧するホルダ89の紙送り方向排紙側先端部に設けられた従動ローラ66とにより、印刷紙50の紙送りが行われる。
PFモータ1はプリンタ60内のフレーム86にねじ85により固定されており、大歯車67a周囲の所定箇所にはロータリ式エンコーダ13が配設され、かつ、大歯車67aの回転軸であるスマップ軸83にはロータリ式エンコーダ用符号板14が連結されている。
紙送りローラ65と従動ローラ66とにより紙送りが行われた印刷紙50は、印刷紙50を支持するプラテン84上を通過し、小歯車87,大歯車67a,中間歯車67b,小歯車88及び排紙歯車67cを介してPFモータ1により駆動される排紙ローラ68と、従動ローラであるギザローラ69とにより挟持されて紙送りが行われ、排紙口62から外部に排出される。
印刷紙50がプラテン84上に支持されている間に、キャリッジ3がプラテン84上の空間をガイド部材32に沿って左右に移動し、キャリッジ3に固定された記録ヘッド(図示せず)からインクが吐出されて印刷が行われる。
次に、上述したインクジェットプリンタのCRモータ4を制御する従来のDCモータ制御装置であるDCユニット6の構成、及び、DCユニット6による制御方法について説明する。
図19は、従来のDCモータ制御装置であるDCユニット6の構成を示したブロック図であり、図20は、DCユニット6により制御されるCRモータ4のモータ電流及びモータ速度を示したグラフである。
図19に示したDCユニット6は、位置演算部6aと、減算器6bと、目標速度演算部6cと、速度演算部6dと、減算器6eと、比例要素6fと、積分要素6gと、微分要素6hと、加算器6iと、D/Aコンバータ6jと、タイマ6kと、加速制御部6mとから構成されている。
位置演算部6aは、エンコーダ11の出力パルスENC−A,ENC−Bの各々の立ち上がりエッジ、立ち下がりエッジを検出し、検出されたエッジの個数を計数し、この計数値に基づいて、キャリッジ3の位置を演算する。この計数はCRモータ4が正転しているときは1個のエッジが検出されると「+1」を加算し、逆転しているときは、1個のエッジが検出されると「−1」を加算する。パルスENC−A及びENC−Bの各々の周期は符号板12のスリット間隔に等しく、かつ、パルスENC−AとパルスENC−Bとは位相が90度だけ異なっている。このため、上記計数のカウント値「1」は符号板12のスリット間隔の1/4に対応する。これにより上記計数値にスリット間隔の1/4を乗算すれば、計数値が「0」に対応するキャリッジ3の位置からの移動量を求めることができる。このときエンコーダ11の解像度は符号板12のスリットの間隔の1/4となる。上記スリットの間隔を1/180インチとすれば解像度は1/720インチとなる。
減算器6bは、CPU16から送られてくる目標位置と、位置演算部6aによって求められたキャリッジ3の実際の位置との位置偏差を演算する。
目標速度演算部6cは、減算器6bの出力である位置偏差に基づいてキャリッジ3の目標速度を演算する。この演算は位置偏差にゲインKPを乗算することにより行われる。このゲインKPは位置偏差に応じて決定される。尚、このゲインKP の値は図示しないテーブルに格納されていてもよい。
速度演算部6dは、エンコーダ11の出力パルスENC−A,ENC−Bに基づいてキャリッジ3の速度を演算する。この速度は次のようにして求められる。まず、エンコーダ11の出力パルスENC−A,ENC−Bの各々の立ち上がりエッジ、立ち下がりエッジを検出し、符号板12のスリット間隔の1/4に対応するエッジ間の時間間隔を、タイマカウンタによってカウントする。このカウント値をTとし、符号板12のスリット間隔をλとすればキャリッジの速度はλ/(4T)として求められる。尚、ここでは、速度の演算は、出力パルスENC−Aの1周期、例えば立ち上がりエッジから次の立ち上がりエッジまでをタイマカウンタによって計測することにより求めている。
減算器6eは、目標速度と、速度演算部6dによって演算されたキャリッジ3の実際の速度との速度偏差を演算する。
比例要素6fは、上記速度偏差に定数Gpを乗算し、乗算結果を出力する。積分要素6gは、速度偏差に定数Giを乗じたものを積算する。微分要素6hは、現在の速度偏差と、1つ前の速度偏差との差に定数Gdを乗算し、乗算結果を出力する。比例要素6f、積分要素6g及び微分要素6hの演算は、エンコーダ11の出力パルスENC−Aの1周期ごとに、例えば出力パルスENC−Aの立ち上がりエッジに同期して行う。
比例要素6f、積分要素6g及び微分要素6hの出力は、加算器6iにおいて加算される。そして加算結果、即ちCRモータ4の駆動電流が、D/Aコンバータ6jに送られてアナログ電流に変換される。このアナログ電圧に基づいて、ドライバ5によりCRモータ4が駆動される。
また、タイマ6k及び加速制御部6mは、加速制御に用いられ、比例要素6f、積分要素6g及び微分要素6hを使用するPID制御は、加速途中の定速及び減速制御に用いられる。
タイマ6kは、CPU16から送られてくるクロック信号に基づいて所定時間ごとにタイマ割込み信号を発生する。
加速制御部6mは、上記タイマ割込信号を受ける度ごとに所定の電流値(例えば20mA)を目標電流値に積算し、積算結果、即ち加速時におけるDCモータ4の目標電流値が、D/Aコンバータ6jに送られる。PID制御の場合と同様に、上記目標電流値はD/Aコンバータ6jによってアナログ電流に変換され、このアナログ電流に基づいて、ドライバ5によりCRモータ4が駆動される。
ドライバ5は、例えば4個のトランジスタを備えており、D/Aコンバータ6jの出力に基づいて上記トランジスタを各々ON又はOFFさせることにより(a)CRモータ4を正転又は逆転させる運転モード、(b)回生ブレーキ運転モード(ショートブレーキ運転モード、即ち、CRモータの停止を維持するモード)、(c)CRモータを停止させようとするモード、を行わせることが可能な構成となっている。
次に、図20(a),(b)を参照してDCユニット6の動作、即ち、従来のDCモータ制御方法について説明する。
CRモータ4が停止しているときに、CPU16からDCユニット6へ、CRモータ4を起動させる起動指令信号が送られると、加速制御部6mから起動初期電流値I0がD/Aコンバータ6jに送られる。この起動初期電流値I0は、起動指令信号とともにCPU16から加速制御部6mに送られてくる。そしてこの電流値I0は、D/Aコンバータ6jによってアナログ電圧に変換されてドライバ5に送られ、ドライバ5によってCRモータ4が起動開始する(図20(a),(b)参照)。起動指令信号を受信した後、所定の時間ごとにタイマ6kからタイマ割込信号が発生される。加速制御部6mは、タイマ割込信号を受信する度ごとに、起動初期電流値I0に所定の電流値(例えば20mA)を積算し、積算した電流値をD/Aコンバータ6jに送る。すると、この積算した電流値は、D/Aコンバータ6jによってアナログ電流に変換されてドライバ5に送られる。そして、CRモータ4に供給される電流の値が上記積算した電流値となるように、ドライバ5によってCRモータが駆動されCRモータ4の速度は上昇する(図20(b)参照)。このためCRモータ4に供給される電流値は、図20(a)に示すように階段状になる。尚、このときPID制御系も動作しているが、D/Aコンバータ6jは加速制御部6mの出力を選択して取込む。
加速制御部6mの電流値の積算処理は、積算した電流値が一定の電流値ISとなるまで行われる。時刻t1において積算した電流値が所定値IS となると、加速制御部6mは積算処理を停止し、D/Aコンバータ6jに一定の電流値ISを供給する。これによりCRモータ4に供給される電流の値が電流値ISとなるようにドライバ5によって駆動される(図20(a)参照)。
そして、CRモータ4の速度がオーバーシュートするのを防止するために、CRモータ4が所定の速度V1になると(時刻t2参照)、CRモータ4に供給される電流を減小させるように加速制御部6mが制御する。このときCRモータ4の速度は更に上昇するが、CRモータ4の速度が所定の速度Vcに達すると(図20(b)の時刻t3参照)、D/Aコンバータ6jが、PID制御系の出力、即ち加算器6iの出力を選択し、PID制御が行われる。
即ち、目標位置と、エンコーダ11の出力から得られる実際の位置との位置偏差に基づいて目標速度が演算され、この目標速度と、エンコーダ11の出力から得られる実際の速度との速度偏差に基づいて、比例要素6f、積分要素6g及び微分要素6hが動作し、各々比例、積分、及び微分演算が行われ、これらの演算結果の和に基づいて、CRモータ4の制御が行われる。尚、上記比例、積分及び微分演算は、例えばエンコーダ11の出力パルスENC−Aの立ち上がりエッジに同期して行われる。これによりDCモータ4の速度は所望の速度Veとなるように制御される。尚、所定の速度Vcは、所望の速度Veの70〜80%の値であることが好ましい。
時刻t4からDCモータ4は、所望の速度となるからキャリッジ3も所望の一定の速度Veとなり、印字処理を行うことが可能となる。
印字処理が終了し、キャリッジ3が目標位置に近づくと(図20(b)の時刻t5参照)、位置偏差が小さくなるから目標速度も小さくなり、このため速度偏差、即ち減算器6eの出力が負になり、DCモータ4の減速が行われ、時刻t6に停止する。
以上、DCモータがCRモータ4である場合の駆動制御の内容について説明したが、DCモータが紙送りモータ(PFモータ)1又は給紙モータである場合においても、駆動制御の内容はほぼ同様のものとなる。
また、駆動制御の内容については、モータへの通電方式を電流制御によるものを例として説明したが、モータへの通電方式はPWM制御(電圧制御)によるものであってもよい。
この場合、図19のD/Aコンバータ6jはPWM信号生成部となり、ドライバ5はPWM信号によってモータへの通電をON/OFFにより制御する。PWM信号は、一定周期の中でのON/OFFの比率を示す信号である。即ち、100%のときはドライバの印加電圧がそのままモータに供給され、50%のときはドライバの印加電圧の半分の電圧が等価的にモータに供給される。
電流値制御による説明の中で用いた電流値は、PWM制御においては、PWM信号によりON/OFFの比率で表される。
図21は、カッターが装着された場合におけるプリンタ本体及びカッターの概略構成を模式的に示した説明図である。
図21に示すプリンタ本体の構成は、ロール紙90の使用を前提としたものになっているため、給紙ローラ64と紙送りローラ65及びその従動ローラ66との間に、ロール紙用紙送りローラ91及びその従動ローラ92が配設されている。その他のプリンタ本体の構成は、前述の図17及び図18に図示して説明したプリンタの構成と同様である。
一方、カッターの構成は、支持部材96に軸支された円形刃97がカッター用プラテン95上に配設されており、円形刃97の給紙側にはカッター用紙送りローラ93及びその従動ローラ94、円形刃97の排紙側にはカッター用排紙ローラ98及びその従動ローラ99がそれぞれ配設されている。尚、機種によっては、カッター用紙送りローラ93及びその従動ローラ94とカッター用排紙ローラ98及びその従動ローラ99との間に、印刷紙切断の際に印刷紙を挟持し固定するための印刷紙挟持機構が備えられているものもある。
ロール紙90から引き出された帯状印刷紙90aは、各ローラによって順次紙送りされ、ヘッド9により印刷が行われる。その後、帯状印刷紙90aはさらに各ローラによって順次紙送りされ、帯状印刷紙90aの印刷済み部分における画像と画像との境界線がカッターの円形刃97の真下に来たときに紙送り動作を一時停止させ、帯状印刷紙90aを印刷画像ごとに切り離す。このように、帯状印刷紙90aの印刷済み部分における画像と画像とを、それらの境界線において切り離すために、プリンタ本体側においては紙送り量がカウントされている。切り離された一画像分の印刷紙は、カッター用排紙ローラ98及びその従動ローラ99により紙送りされ、カッターの排紙口から排紙される。
図22は、カッターの円形刃97周辺部を拡大表示した斜視図である。
円形刃97を軸支する支持部材96は、タイミングベルト110に固着されており、このタイミングベルト110に噛み合わされたプーリ111を回転駆動することにより、支持部材96及び円形刃97を駆動して印刷紙カット動作を行い、帯状印刷紙90aを切断面90xに沿って切断することができる。プーリ111及びタイミングベルト110の駆動のために専用のモータを設けてもよいが、1個又は複数個の歯車を介して、プーリ111及びタイミングベルト110をプリンタ本体のCRモータにより駆動してもよい。
印刷紙を挟持し固定するための印刷紙挟持機構が備えられている場合には、印刷紙切断の際に、印刷紙下方に設けられた印刷紙押圧部材により、印刷紙上方に設けられた印刷紙固定部材に印刷紙を押圧して挟持し固定するとよい。この動作が、図22中の破線矢印により示されている。
図21及び図22に示したカッターは、プリンタ本体に内蔵させてもよいが、プリンタ本体とは別個の筐体に内蔵して、そのカッター内蔵筐体をプリンタ本体に装着して使用するようにしてもよい。
図23は、カッターを専用の筐体に内蔵させ、そのカッター内蔵筐体をプリンタ本体に装着して使用する場合におけるカッター内蔵筐体及びプリンタ本体の外観を示した斜視図である。
カッターは、例えば、図23(a)に示すような筐体200に内蔵させることができ、カッターを使用する際には、図23(b)に示すように、このカッター内蔵筐体200をプリンタ本体60に装着する。また、ロール紙から引き出されて画像印刷が行われた印刷済み帯状印刷紙のカット動作を実行する際には、図23(c)に示すような紙受け用バスケット201をカッター内蔵筐体200の排紙口に装着して、切り離された印刷紙を収容するようにするとよい。
ところで、前述のように、カッターが内蔵又は装着されたプリンタにおいては、印刷のスループット低下を防止するため、印刷済み帯状印刷紙のカット動作と後続の画像印刷動作とを並行して行っている。しかし、カッターのカット動作によって印刷紙の姿勢が微妙に変化したり、印刷紙の位置が微妙にずれたりするために、後続の画像印刷動作のタイミングと印刷済み帯状印刷紙のカット動作のタイミングとが重なった場合、白抜けや黒すじが発生する等、後続の画像印刷の品質低下を招くことがある。
そこで、カッターの印刷紙カット動作中も、印刷紙の姿勢を一定に維持し、画像印刷の品質低下を未然に防止すべく、カッターの印刷紙カット動作によって発生する印刷紙の姿勢変化を相殺する補正電流値を、カット動作中に紙送りモータに通電させる、印刷紙の姿勢変化の補正制御装置及び補正制御方法が既に提案されている(特願2002−23574号)。
上記補正制御装置及び補正制御方法は、本発明に係るプリンタにおけるプリンタ制御方法及びプリンタ制御装置の前提となる発明であるので、本発明に係るプリンタにおけるプリンタ制御方法及びプリンタ制御装置の説明に先立って、上記補正制御装置及び補正制御方法の内容について説明する。
図24は、印刷紙の姿勢変化の補正制御装置の構成を示すブロック図である。
印刷紙の姿勢変化の補正制御装置は、カッターの印刷紙カット動作により発生する印刷紙の姿勢変化を相殺する補正電流値ΔIを、印刷紙の種類及びサイズごとに格納したテーブルを記憶した記憶手段であるEEPROM23と、印刷紙の種類及びサイズの設定に対応する補正電流値ΔIを読出して出力すると共に、カッターがカット動作を行う際にカット動作通知を出力する中央演算処理装置(CPU)16と、印刷紙の種類及びサイズの設定に対応する補正電流値ΔIの紙送りモータへの通電を指令する補正電流値通電指令を、カット動作通知が入力されたときに出力するカット動作補正制御部100とを備えている。
図25は、印刷紙の姿勢変化の補正制御装置の動作、即ち、印刷紙の姿勢変化の補正制御方法の手順の概略を示すフローチャートである。
印刷後にカットをする必要のある印刷紙を使用して印刷が開始されると、カッターによるカット動作が開始されるかどうかが監視され始め(ステップS11)、カット動作が開始されないときはそのまま監視が継続される一方、カット動作が開始されるときは、カット動作によって発生する印刷紙の姿勢変化を相殺する制御の指令を行う(ステップS12)。即ち、カット動作によって発生する印刷紙の姿勢変化を相殺する補正電流値を、カット動作中に紙送りモータに通電させる制御の指令を行う。その制御指令に応じて、カット動作の際に(ステップS13)、カット動作によって発生する印刷紙の姿勢変化を相殺する補正電流値を紙送りモータに通電させる制御が行われる。
図26は、印刷紙の姿勢変化の補正制御装置及び補正制御方法を実施するための準備段階で行うべき作業の手順を示すフローチャートである。
印刷紙の姿勢変化の補正制御装置及び補正制御方法を実施するためには、カット動作によって発生する印刷紙の姿勢変化を相殺する補正電流値ΔIを、印刷紙の種類及びサイズごとに、実験、シミュレーション等により予め求めておく必要がある。
先ず、印刷紙の種類及びサイズごとに、カット動作時の印刷紙の姿勢変化によるずれ量ΔXを求める(ステップS21)。
ずれ量ΔXが求まったら、そのずれ量ΔXを相殺して、印刷紙の姿勢をカット動作開始の際の状態に保持するための補正電流値ΔIを、印刷紙の種類及びサイズごとに求める(ステップS22)。
最後に、印刷紙の種類及びサイズに対応した補正電流値ΔIのテーブルを作成し、メモリに書き込む(ステップS23)。尚、図24に示すように、本補正制御装置においては、メモリとしてEEPROM23を使用している。
図27は、印刷紙の種類及びサイズに対応した補正電流値ΔIのテーブルの一例を示す表である。
例えば、印刷紙の種類がX、Y、Zの3種類、サイズがそれぞれ1,2,3の3種類あったとすると、印刷紙の種類及びサイズの組合せは合計9種類となり、それぞれに対応して求められた補正電流値ΔI1X,ΔI1Y,...ΔI3Y,ΔI3Zが、図27の表に示すように、メモリ上のテーブルに書き込まれる。
図28は、印刷紙の姿勢変化の補正制御装置の動作、即ち、印刷紙の姿勢変化の補正制御方法の手順を示すフローチャートである。図24及び図28を参照して、印刷紙の姿勢変化の補正制御装置の動作、即ち、印刷紙の姿勢変化の補正制御方法の手順について、具体的に説明する。
印刷開始前に、先ず、印刷に使用する印刷紙の種類及びサイズの設定が行われる(ステップS31)。印刷紙の種類及びサイズの設定はCPU16に読み込まれ、CPU16は、印刷紙の種類及びサイズの設定に応じて、対応する補正電流値ΔIをEEPROM23から読出し、カット動作補正制御部100に出力する。カット動作補正制御部100は、入力された補正電流値ΔIを記憶しておく。尚、CPU16による補正電流値ΔIの読出し及び出力は、印刷紙の種類及びサイズの設定が行われてから、カッターがカット動作を開始するまでの任意のタイミングで行ってよい。
印刷紙の種類及びサイズの設定が行われ、印刷が開始された後、カッターによる印刷紙のカット動作が実行されるかどうかを監視する(ステップS32)。CPU16は、隣接する印刷画像の境界線がカッターの位置に到達するために必要な紙送り量と実際の紙送り量とを比較し、両者が一致したときにカット動作指令を行う。そこで、CPU16は、この紙送り量の比較によってカット動作実行の監視も行うものとし、カット動作指令を行う際には、同時に、カット動作通知を出力することとする。CPU16は、カット動作が実行されない場合はそのまま監視を継続するが、カット動作が実行される場合は、カット動作通知をカット動作補正制御部100に対して出力する。
カット動作補正制御部100は、カット動作通知が入力されると、記憶しておいた補正電流値ΔI、即ち、印刷紙の種類及びサイズに対応する補正電流値ΔIをカット動作中に紙送りモータに通電することを指令する。この指令に応じて、カット動作中に、補正電流値ΔIが紙送りモータに通電される(ステップS33)。カッターの印刷紙カット動作により発生する印刷紙の姿勢変化は、この補正電流値ΔIの通電によって相殺される。
紙送りモータへの補正電流値ΔIの通電は、カット動作終了まで行われる(ステップS34)。但し、厳密にカット動作終了時点まで通電を継続する必要は必ずしもなく、後述するように、適宜、種々の通電パターンを採用することができる。
カット動作が終了したときは、一連のカット動作補正制御も終了するが、さらに印刷が継続されて再度カット動作が行われる可能性のあるときは、ステップS32に戻って一連のカット動作補正制御を繰り返す。
図29は、補正電流値ΔIの通電パターンの例を示したグラフである。
通電パターンC0のように、カット動作開始時刻(t=0)からカット動作終了時刻teまで補正電流値ΔIを通電し続けてもよいし、パルス状の通電パターンC1のように、カット動作開始時刻から所定時刻t1(t1<te)まで補正電流値ΔIを通電してもよい。また、通電パターンC2のように、カット動作開始時刻からカット動作終了時刻teまでの期間に補正電流値をΔIから0まで線形的に減少させてもよいし、あるいは、通電パターンC3のように、カット動作開始時刻からカット動作終了時刻teまでの期間に補正電流値をΔIから0まで指数関数的に減少させてもよい。電流値の減少パターンは、必ずしも線形的又は指数関数的減少パターンでなくてもよく、適宜、任意の減少パターンを採用することができる。
以上のように、先に提案された印刷紙の姿勢変化の補正制御装置及び補正制御方法においては、印刷紙の種類及びサイズに応じて予め設定された補正電流値ΔIを、カッターによる印刷紙のカット動作中に紙送りモータに通電して、動作により発生する印刷紙の姿勢変化を相殺するようにしたので、印刷済み帯状印刷紙のカット動作と後続の画像印刷動作とを並行して行っても、後続の画像印刷の品質低下を未然に防止することができる。
尚、上記印刷紙の姿勢変化の補正制御装置及び補正制御方法の説明においては、駆動制御の内容については、モータへの通電方式を電流制御によるものを例として説明したが、モータへの通電方式はPWM制御(電圧制御)によるものであってもよい。
ところで、上述の印刷紙の姿勢変化の補正制御装置及び補正制御方法においては、カッターの印刷紙カット動作により発生する印刷紙の姿勢変化を相殺する補正指令値(補正電流値)ΔIの値は、印刷紙の種類及びサイズに応じて予め設定され、メモリ上のテーブルに記憶されている。
しかし、プリンタの紙送り機構の摩耗等の経時的変化や、温度、湿度等の周辺環境の変化により、補正指令値ΔIの最適値は変動することがあり得ると考えられる。
従って、補正指令値ΔIの最適値が変動したにも拘わらず、予め設定された一定の補正指令値ΔIを用いて印刷紙の姿勢変化の補正制御を行っていたのでは、印刷品質の低下を十分に防止できない場合もあり得る。
以下に説明する本発明は、カッターの印刷紙カット動作により発生する印刷紙の姿勢変化又は位置ずれを相殺する補正指令値を、容易かつ的確に最適化するプリンタ制御方法及びプリンタ制御装置を提供することにより、印刷品質の低下を常に確実かつ未然に防止することを可能とする。
具体的には、本発明に係るプリンタは、カッターによる印刷紙カット動作の前後に補正指令値判定パターンをそれぞれ印刷し、両補正指令値判定パターンの相対関係から補正指令値の適否を判定して、補正指令値の最適化を図る点に特徴を有するものである。
図1は、本発明に係るプリンタにおけるプリンタ制御方法の手順を示したフローチャート、図2は、本発明に係るプリンタにおけるプリンタ制御方法の手順の一部を模式的に表した説明図である。
図1及び図2を参照して、本発明に係るプリンタにおけるプリンタ制御方法の手順について説明する。尚、本実施の形態においては、補正指令値の適否を判定するための補正指令値判定パターンとして、印刷紙の紙送り方向に平行な縦罫線パターンを採用している。
先ず最初に、通常の印刷を行う際に印刷紙を一定位置に保持するための保持指令値I0の紙送りモータへの通電を指令すると共に(ステップS1)、紙送り方向に平行な罫線パターンを印刷紙に印刷する(ステップS2)。この様子が図2(a)に示されている。尚、図2においては、印刷紙の一部のみを示している。また、この罫線パターンの印刷の際、紙送り方向に平行な罫線パターンのみからなる比較対照用罫線パターンを別個に印刷しておくとよい。ここで、印刷紙は、帯状印刷紙を巻回したロール紙等、印刷後にカットをする必要のある印刷紙を使用する。
上記罫線の印刷後、カッターの印刷紙カット動作により発生する印刷紙の姿勢変化を相殺する補正指令値I1+ΔI1の紙送りモータへの通電を指令すると共に(ステップS3)、印刷紙の先端部をカッターによりカットする(ステップS4)。補正指令値I1+ΔI1の主要項I1は、印刷紙の種類及びサイズに応じて予め設定された標準補正指令値であり、部分項ΔI1は補正指令値を調整して最適化するための調整値である。調整値ΔI1は任意に設定することができるが、例えば、標準補正指令値I1の数%程度の値とし、後述するように、本発明に係るプリンタにおけるプリンタ制御方法の手順のなかで変更され調整されながら用いられる値である。
カッターによるカット動作の際における紙送りモータへの通電の補正指令値I1+ΔI1が最適値より小さいか又は大きければ、図2(b)に示すように、印刷紙は、カッターによるカット動作に引きずられて、紙送り方向に対し左右いずれかに傾くはずである。
そこで、カッターによるカット動作終了後、紙送り動作は行わず、そのままの状態で印刷紙を一定位置に保持するための保持指令値I0の紙送りモータへの通電を指令すると共に(ステップS5)、紙送り方向に平行な罫線パターンを印刷紙に再度印刷する(ステップS6)。このとき、印刷紙が紙送り方向に対し左右いずれかに傾いていれば、図2(c)に示すように、後から印刷した罫線パターンが、先に印刷した罫線パターンと平行になるか又はちょうど重なり合うことはなく、先に印刷した罫線パターンに対して印刷紙の傾きの角度と同じ角をなすはずである。但し、罫線パターンを構成する罫線の長さと、後から印刷した罫線パターンが先に印刷した罫線パターンに対してなす角とによって、両罫線が交差する場合としない場合とがあり得る。
一方、カッターによるカット動作の際における紙送りモータへの通電の補正指令値I1+ΔI1が最適値であって、カッターによるカット動作に起因する印刷紙の姿勢変化が相殺され、印刷紙がカット動作前と同様の状態に保持されていれば、後から印刷した罫線パターンと先に印刷した罫線パターンとは、相互に平行になるか又はちょうど重なり合った状態で印刷されるはずである。
要するに、本発明に係るプリンタにおけるプリンタ制御方法は、補正指令値I1+ΔI1の調整値ΔI1を少しずつ変化させていきながら、カット動作の前後に印刷した罫線パターンが相互に平行になるか又はちょうど重なり合った状態で印刷される補正指令値I1+ΔI1を見出すことにより、補正指令値I1+ΔI1を最適化するものである。
そのため、本発明に係るプリンタにおけるプリンタ制御方法においては、補正指令値I1+ΔI1の調整値ΔI1を複数のN個の値に順次変更して各補正指令値I1+ΔI1を用いながら、N個の罫線パターンの印刷を行う。
ステップS6における罫線パターンの印刷後、N個の罫線パターンの印刷が行われたかどうかを判断し(ステップS7)、まだN個の罫線パターンの印刷が行われていないときは、補正指令値I1+ΔI1の調整値ΔI1を未使用の値に変更すると共に所定量の紙送りを行い(ステップS8)、再度、ステップS1からステップS6までの手順を繰り返す。ここで紙送りを行うのは、後続のカット動作を可能とするためである。
一方、既にN個の罫線パターンの印刷が行われているときは、紙送りを行って、印刷された総ての罫線パターンを含む印刷紙の領域をカット動作により切り離し、かつ、印刷されたN個の罫線パターンのなかから、カット動作の前後に印刷した罫線パターンがちょうど重なって印刷されているか又は平行に印刷されている状態に最も近いものをユーザに選択させ、この選択に基づき、最も最適値に近い補正指令値I1+ΔI1を採用する(ステップS9)。換言すると、カット動作の前に印刷した罫線パターンとカット動作後に印刷した罫線パターンとがなす角が最も小さく、可能な限り零に近いものをユーザに選択させ、この選択に基づき、最も最適値に近い補正指令値I1+ΔI1を採用する。比較対照用罫線パターンを別個に印刷した場合には、印刷されたN個の罫線パターンのなかから比較対照用罫線パターンに最も近いものを選択させるとよい。
図3は、印刷する罫線パターンの個数Nを3個とした場合における本発明に係るプリンタにおけるプリンタ制御方法の手順の概要を模式的に表した説明図である。
最初にパターン0として比較対照用罫線パターンを印刷すると共に、パターン1のカット動作前の罫線パターンを印刷する。その後は、上述のように、カット動作、カット動作後の罫線パターンの印刷、所定量の紙送り動作を行う。パターン2,パターン3についても同様に各手順を行うが、最後のパターン、ここではパターン3の印刷後の紙送り量は、印刷された総ての罫線パターンを含む印刷紙の領域を切り離すことが可能な量とし、その紙送り動作後に、印刷された総ての罫線パターンを含む印刷紙の領域をカット動作により切り離す。
ユーザは、切り離された印刷紙に印刷された罫線パターンを観察し、比較対照用罫線パターン0に最も近い罫線パターンを選択することにより、最も最適値に近い補正指令値I1+ΔI1を選択して採用する。この罫線パターンの選択、即ち、補正指令値I1+ΔI1の選択は、プリンタに接続されたホストコンピュータの操作により行ってもよいし、プリンタ本体の入力部の操作により行ってもよい。
比較対照用罫線パターン0に最も近い罫線パターンは、1個ではなく2個選択してもよい。例えば、図3に示される罫線パターン1,2のように、カット動作後に印刷された罫線パターンが、カット動作前に印刷された罫線パターンに対して互いに逆方向に傾いている場合、比較対照用罫線パターン0に最も近い罫線パターンとして、罫線パターン1及び2の2個の罫線パターンを選択できるようにしてもよい。その場合、罫線パターン1及び2を印刷した際における補正指令値I1+ΔI1の平均値を補正指令値I1+ΔI1の最適値として採用するとよい。
図4は、印刷する罫線パターンの個数Nを5個とした場合における補正指令値I1+ΔI1の調整値ΔI1の設定例を示した説明図である。
図4に示すように、5個の罫線パターン1,2,3,4,5の補正指令値I1+ΔI1の調整値ΔI1をそれぞれΔI11,ΔI12,ΔI13,ΔI14,ΔI15とすると、例えば、標準補正指令値I1の数%程度の所定値IXを設定し、各罫線パターンにおける調整値をそれぞれΔI11=−2IX,ΔI12=−IX,ΔI13=0,ΔI14=IX,ΔI15=2IXとすることができる。
図5は、印刷する罫線パターンの個数Nを5個とした場合において最適な罫線パターンを1個選択させるときの画面表示例を示した説明図である。
例えば、図4に示すように、5個の罫線パターン1,2,3,4,5を比較対照用罫線パターン0と共に印刷した場合、図5に示すように、プリンタに接続されたホストコンピュータの表示画面又はプリンタ本体の表示部の表示に従って、5個の罫線パターン1,2,3,4,5のうち最も比較対照用罫線パターン0に近いものを1個選択させ、その選択をホストコンピュータの操作又はプリンタ本体の入力部の操作により入力させるとよい。その選択の入力に従って、最も最適値に近い補正指令値I1+ΔI1が選択され採用される。
あるいは、ここで選択した補正指令値I1+ΔI1を基準として、以下のように、より高精度な最適化をさらに行ってもよい。
例えば、第1回目の最適化において罫線パターンm(m=1,2,3,4,5)が選択され、その罫線パターンを印刷した際における補正指令値がI1+ΔI1mであったとする。
そこで、補正指令値I1+ΔI1の調整値ΔI1の中心値をΔI1mとし、新たな罫線パターン1’,2’,3’,4’,5’の補正指令値I1+ΔI1の調整値ΔI1をそれぞれΔI11’=I1m−2IX/4,ΔI12’=I1m−IX/4,ΔI13’=I1m,ΔI14’=I1m+IX/4,ΔI15’=I1m+2IX/4として、図1のフローチャートに示した手順を実行し、5個の罫線パターン1’,2’,3’,4’,5’を比較対照用罫線パターン0と共に印刷する。
そして、第1回目と同様に第2回目も、プリンタに接続されたホストコンピュータの表示画面又はプリンタ本体の表示部の表示に従って、新たな5個の罫線パターン1’,2’,3’,4’,5’のうち最も比較対照用罫線パターン0に近いものを1個選択させ、その選択をホストコンピュータの操作又はプリンタ本体の入力部の操作により入力させるとよい。そして、その選択の入力に従って、最も最適値に近い補正指令値I1+ΔI1が、より高精度に選択され採用される。
図6は、印刷する罫線パターンの個数Nを5個とした場合において最適な罫線パターンを2個選択させるときの画面表示例を示した説明図である。
例えば、図4に示すように、5個の罫線パターン1,2,3,4,5を比較対照用罫線パターン0と共に印刷した場合、図5に示すように、プリンタに接続されたホストコンピュータの表示画面又はプリンタ本体の表示部の表示に従って、5個の罫線パターン1,2,3,4,5のうち最も比較対照用罫線パターン0に近いものを2個選択させ、その選択をホストコンピュータの操作又はプリンタ本体の入力部の操作により入力させてもよい。
最も比較対照用罫線パターン0に近い罫線パターンを2個選択させたときは、それら2個の罫線パターンを印刷した際における補正指令値I1+ΔI1の平均値を補正指令値I1+ΔI1の最適値として採用するとよい。
あるいは、それら2個の罫線パターンを印刷した際における補正指令値I1+ΔI1の平均値を基準として、以下のように、より高精度な最適化をさらに行ってもよい。
図7は、印刷する罫線パターンの個数Nを5個とした場合において最適な罫線パターンを2個選択させた結果に基づきより高精度な再度の最適化を行うときの画面表示例を示した説明図である。
図4に示した例のように、印刷する罫線パターンの個数Nを5個とした場合において、最適な罫線パターンを2個選択させたとき、上述のように、それら2個の罫線パターンを印刷した際における補正指令値I1+ΔI1の平均値を補正指令値I1+ΔI1の最適値として直ちに採用するという方法もある。
しかし一方、その補正指令値I1+ΔI1の平均値を補正指令値I1+ΔI1の最適値として直ちに採用せず、その補正指令値I1+ΔI1の平均値を新たな基準として用いることにより、さらに高精度な再度の最適化を行うこともできる。
例えば、第1回目の最適化において罫線パターンk(k=1,2,3,4)と罫線パターン(k+1)とが選択され、それらの罫線パターンを印刷した際における補正指令値がそれぞれI1+ΔI1k,I1+ΔI1(k+1)であったとすると、それらの補正指令値の平均値はI1+(ΔI1k+ΔI1(k+1))/2となる。
そこで、補正指令値I1+ΔI1の調整値ΔI1の中心値をIY=(ΔI1k+ΔI1(k+1))/2とし、新たな罫線パターン1’,2’,3’,4’,5’の補正指令値I1+ΔI1の調整値ΔI1をそれぞれΔI11’=IY−2IX/4,ΔI12’=IY−IX/4,ΔI13’=IY,ΔI14’=IY+IX/4,ΔI15’=IY+2IX/4として、図1のフローチャートに示した手順を実行し、5個の罫線パターン1’,2’,3’,4’,5’を比較対照用罫線パターン0と共に印刷する。
図8は、印刷する罫線パターンの個数Nを5個とした場合において、より高精度な再度の最適化のために最適な罫線パターンを1個選択させるときの画面表示例を示した説明図である。
上述のように、補正指令値I1+ΔI1の調整値ΔI1をそれぞれΔI11’=IY−2IX/4,ΔI12’=IY−IX/4,ΔI13’=IY,ΔI14’=IY+IX/4,ΔI15’=IY+2IX/4として新たな罫線パターン1’,2’,3’,4’,5’を比較対照用罫線パターン0と共に印刷した場合、図5の例と同様、図8に示すように、プリンタに接続されたホストコンピュータの表示画面又はプリンタ本体の表示部の表示に従って、新たな5個の罫線パターン1’,2’,3’,4’,5’のうち最も比較対照用罫線パターン0に近いものを1個選択させ、その選択をホストコンピュータの操作又はプリンタ本体の入力部の操作により入力させるとよい。そして、その選択の入力に従って、最も最適値に近い補正指令値I1+ΔI1が、より高精度に選択され採用される。
ところで、上述の本発明に係るプリンタにおけるプリンタ制御方法の実施の形態においては、補正指令値判定パターンを縦罫線パターンとしているが、補正指令値の適否を判定することができるのであれば、任意の形態の補正指令値判定パターンを採用することができる。例えば、以下に説明するように、補正指令値判定パターンとして、ドットパターン、横罫線パターン等を採用してもよい。
図9は、補正指令値判定パターンとしてドットパターンを採用した場合におけるパターン印刷の状態を模式的に説明した説明図である。
図9に示すように、補正指令値の最適化を図るための補正指令値判定パターンとしてドットパターンを印刷してもよい。図9においては、カッターによるカット動作前に印刷したドットパターンを○印、カット動作後に印刷したドットパターンを×印により示しているが、実際には、カット動作前後に印刷するいずれのドットパターンのドットも同一の大きさのドットとしてよい。
補正指令値が最適値であって、カッターのカット動作による印刷紙の姿勢変化がほぼ完全に相殺される場合は、図9(a)に示すように、カット動作前後のドットパターンのドットが、パターン印刷の範囲内に相補的に均一な密度で分散して印刷される。
一方、補正指令値が最適値ではなく、カッターのカット動作による印刷紙の姿勢変化が十分に相殺されない場合には、図9(b)に示すように、カット動作後のドットパターンがカット動作前のドットパターンに対してずれて、全体として不均一な密度で分散して印刷され、ざらついた印象のパターン画像となるので、補正指令値が最適値からずれていることを判定することができる。
尚、カット動作前後に印刷するドットパターンのドットを相互に異なった色により印刷すると、ドットパターンのドットが均一な密度で印刷されているか、ずれていてざらつきがあるかをより容易に判定することができる。
図10は、補正指令値判定パターンとして横罫線パターンを採用した場合におけるパターン印刷の状態を模式的に説明した説明図である。
印刷紙の紙送り方向を二次元平面上の縦方向とすると、カッターのカット動作による印刷紙の姿勢変化は、横方向又は斜め方向に生ずることが多いが、縦方向、即ち、給紙方向及び排紙方向を含む紙送り方向と同一方向に印刷紙の位置ずれが生ずる場合もあり得る。
そのような場合には、図10に示すように、補正指令値の最適化を図るための補正指令値判定パターンとして横罫線パターンを印刷すると、補正指令値の適否を判定することが容易である。
補正指令値判定パターンとして横罫線パターンを採用する場合、カッターのカット動作前に所定間隔ごとの横罫線パターンを印刷しておき、カット動作後に同一間隔ごとの横罫線パターンをさらに印刷する。
補正指令値が最適値であって、カッターのカット動作による印刷紙の位置ずれがほぼ完全に相殺される場合は、図10(a)に示すように、カット動作の前後に印刷した横罫線パターンが互いに重なり合い、所定間隔ごとの横罫線パターンが形成される。
一方、補正指令値が最適値ではなく、カッターのカット動作による印刷紙の位置ずれが十分に相殺されない場合には、図10(b)に示すように、カット動作後の横罫線パターンがカット動作前の横罫線パターンに対して排紙側又は給紙側にずれて印刷されるので、補正指令値が最適値からずれていることを判定することができる。尚、図10においては、カット動作前に印刷紙した横罫線パターンが実線、カット動作後に印刷紙した横罫線パターンが破線により示されている。
以上のように、本発明に係るプリンタにおけるプリンタ制御方法によれば、カッターの印刷紙カット動作により発生する印刷紙の姿勢変化を相殺する補正指令値を、容易かつ的確に最適化することが可能となるので、プリンタの紙送り機構の摩耗等の経時的変化や、温度、湿度等の周辺環境の変化により補正指令値ΔIの最適値が変動しても、適宜、補正指令値の最適化を実行することにより、カッターの印刷紙カット動作によって発生する印刷紙の姿勢変化に起因する印刷品質の低下を常に確実かつ未然に防止することができる。
尚、本発明に係るプリンタにおけるプリンタ制御方法による補正指令値の最適化は、印刷紙の種類及びサイズごとに行われるものとするとよい。
本発明に係るプリンタにおけるプリンタ制御装置は、図24に示した印刷紙の姿勢変化の補正制御装置と同様のハードウェア構成により実現することができる。本発明に係るプリンタにおけるプリンタ制御装置は、上述の本発明に係るプリンタにおけるプリンタ制御方法の手順に従って動作するものであり、各動作は、補正指令値最適化制御部としてのCPU16によって制御される。印刷紙の種類及びサイズごとに最適化した補正指令値は、例えばEEPROM23等のメモリに更新保存するとよい。
印刷紙切断の際に印刷紙を挟持し固定するための印刷紙挟持機構がプリンタ本体又はカッター内蔵筐体に備えられている場合であっても、印刷紙挟持機構の印刷紙を固定する力が十分でない場合には、本発明に係るプリンタにおけるプリンタ制御方法及びプリンタ制御装置の構成を適用することができる。
一方、プリンタ本体又はカッター内蔵筐体に印刷紙挟持機構が備えられており、かつ、印刷紙の姿勢変化又は位置ずれの補正制御が行われない場合には、印刷紙挟持機構の印刷紙挟持力について、本発明に係るプリンタにおけるプリンタ制御方法及びプリンタ制御装置と同様の原理による最適化を行ってもよい。
本発明に係るプリンタにおけるコンピュータプログラムは、上記本発明に係るプリンタにおけるプリンタ制御方法をコンピュータシステムにおいて実行するコンピュータプログラムである。
図11は、本発明に係るプリンタにおけるプリンタ制御方法を実行するコンピュータプログラムが記録された記録媒体及びその記録媒体が使用されるコンピュータシステムの外観構成を示した説明図、図12は、図11に示したコンピュータシステムの構成を示すブロック図である。
図11に示したコンピュータシステム70は、ミニタワー型等の筐体に収納されたコンピュータ本体71と、CRT(Cathode Ray Tube:陰極線管)、プラズマディスプレイ、液晶表示装置等の表示装置72と、記録出力装置としてのプリンタ73と、入力装置としてのキーボード74a及びマウス74bと、フレキシブルディスクドライブ装置76と、CD−ROMドライブ装置77とから構成されている。図12は、このコンピュータシステム70の構成をブロック図として表示したものであり、コンピュータ本体71が収納された筐体内には、RAM(Random Access Memory)等の内部メモリ75と、ハードディスクドライブユニット78等の外部メモリがさらに設けられている。本発明に係るプリンタにおけるプリンタ制御方法を実行するコンピュータプログラムが記録された記録媒体は、このコンピュータシステム70で使用される。記録媒体としては、例えば、フレキシブルディスク81,CD−ROM(Read Only Memory)82が用いられるが、その他、MO(Magneto Optical)ディスク、DVD(Digital Versatile Disk)、その他の光学的記録ディスク、カードメモリ、磁気テープ等を用いてもよい。