JP4003469B2 - 導電性を有するプラスチック成形体、およびそれからなる表示素子用電極 - Google Patents

導電性を有するプラスチック成形体、およびそれからなる表示素子用電極 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高屈折率、低分散などの光学的特性に優れかつ透明性、導電性、耐衝撃性、耐薬品性、耐熱性、難燃性などに優れ、各種表示素子用電極に適したプラスチック成形体に関する。
【0002】
【従来の技術】
各種表示素子用の基材として、ガラス基材の代替として透明プラスチック材料の使用が検討されている。特開昭59−204545号公報に開示されている技術は、0.1〜0.4mm厚さの熱可塑性樹脂基材〔例えば、PES(ポリエーテルスルホン)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PC(ポリカーボネート)、PET(ポリエチレンテレフタレート)〕上にSiOXのアンダーコート膜とITO透明導電膜が形成された構成となっている。しかしながら、PESは基材厚が厚くなると黄色度が増加し、PMMAおよびPETは耐熱性に問題があり、PCは複屈折率性の問題点がある。また、この技術では透明プラスチック材料と無機薄膜との線膨張率差でクラックが生じ易くITO透明導電膜を厚く形成できなく導電性に問題がある。これらの問題を解消する目的で例えば特開平5−86221号公報などに開示されている技術は、ガラス転移温度が130℃以上の透明架橋樹脂上に有機ケイ素化合物、微粒子状無機物を主成分としてなる透明被膜、透明導電膜が形成された構成となっている。確かにこの技術は、ITO透明導電膜を厚く形成できクラックが生じ難く良好な表示素子用基材である。しかしながら、前述の透明架橋樹脂の製造法はガラスモールド内にモノマーを注型するキャスト重合方が用いられる。この方法では均一な透明架橋樹脂を得るために長時間の重合プロセス、応力歪を緩和するためのアニーリングプロセスなど製造コストが高くなるという問題があった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記欠点を解決するため鋭意検討を重ね、プラスチック成形体本来の物性を維持しつつ、高い屈折率、低分散性、透明性、耐衝撃性、耐薬性、耐熱性、難燃性などに優れた導電性を有する、特に各種表示素子用電極基材として好適である、プラスチック成形品を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は以下の構成からなる。すなわち、
(1)ガラス転移温度が130℃以上のリン原子を含有してなる熱可塑性樹脂であり、カーボネート残基、下記一般式(I)で示されるホスホン酸残基および下記一般式( II )で示される2価フェノール残基を含み、カーボネート残基とホスホン酸残基のモル分率が式(1)を満足する熱可塑性樹脂からなる成形体の少なくとも一面に下記AおよびB被膜がこの順に2層以上積層されてなる構造を有することを特徴とする導電性を有するプラスチック成形体、
A 微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜、
B 少なくとも一層の導電性を有する被膜
一般式(I)
【0005】
【化3】
Figure 0004003469
【0006】
一般式(II)
【0007】
【化4】
Figure 0004003469
【0008】
[一般式(I)中、R1炭素数2以上の有機基、X1は酸素、硫黄あるいはセレンを表し、熱可塑性樹脂中にR1あるいはX1の異なるホスホン酸残基を2種以上含んでもよい。一般式(II)中、R2は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の脂肪族基、芳香族基から選ばれる炭化水素基、ニトロ基からなる群から選ばれ、p、qはp+q=0〜8の整数、Y1は単結合、エーテル基、チオエーテル基、アルキレン基、アルキリデン基、シクロアルキレン基、ハロ置換アルキレン基、ハロ置換アルキリデン基、フェニルアルキリデン基、カルボニル基、スルホン基、脂肪族ホスフィンオキシド基、芳香族ホスフィンオキシド基、アルキルシラン基、ジアルキルシラン基、フルオレン基からなる群から選ばれる。樹脂組成物中にR2あるいはY1の異なる2価フェノール残基を2種以上含んでもよい。]
1>(a)/{(a)+(b)}≧0.5 (1)
[式(1)中、(a)はホスホン酸残基のモル数、(b)はカーボネート残基のモル数を示す。]
(2)被膜A中に微粒子状無機物を1重量%以上80重量%以下含有してなる前記(1)項に記載の導電性を有するプラスチック成形体、
(3)一般式(I)中のR がフェニル、ハロ置換フェニル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、n−プロピル、イソプロピル、シクロヘキシル、ビニル、アリル、ベンジル、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、ハロ置換アルキル、アルキルサルファイドから選ばれる前記(1)項または(2)項に記載の導電性を有するプラスチック成型体。
(4)前記(1)〜(3)項いずれかに記載の導電性を有するプラスチック成形体からなる表示素子用電極、である。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明に用いる熱可塑性樹脂は、一般には鎖状の高分子であり、温度を上げると軟化し、流動性を示すようになり熱と圧力で望みの形に成形することが可能な樹脂である。本発明においては、その化学構造としてはリン原子を含有すれば特に制限はないが、以下の特徴を具備するものを選択的に用いることにより、本発明の効果が秦される。すなわち、本発明に用いる熱可塑性樹脂のガラス転移温度として、130℃以上の樹脂を用いる点である。130℃未満では導電性を有する被膜の被膜形成、導電性を有する被膜の耐熱性、導電性および耐久性などに問題が生じる。ここで、ガラス転移温度とは、高分子が非晶性のガラス状態からゴム状態へ変わる温度を示すが、転移領域においては弾性率、膨張率、熱含量、屈折率、誘電率などの諸特性が変化する。これらの特性の変化からガラス転移温度の測定が可能であり、具体的には示差走査熱量分析(DSC)などによる公知の手法により評価できる(例えばJIS K7121)。示差走査熱量分析によるガラス転移温度の測定の場合、熱可塑性樹脂自体あるいはそれを加熱処理したものを評価することによりガラス転移温度を求めることができるが、微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜が十分に薄い場合は、熱可塑性樹脂に微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜を設けた成形体のガラス転移温度を熱可塑性樹脂のガラス転移温度とみなすことも可能である。また、本発明に用いる熱可塑性樹脂からなる成形体の透明性は全光線透過率を指標として表した場合、60%以上が好ましく、より好ましくは80%以上である。さらに、光学等方性が要求される用途、例えば、液晶ディスプレイ用基板、光ディスク用基板などに適用する場合には複屈折は30nm以下が好ましく、より好ましくは15nm以下である。
【0010】
ガラス転移温度が130℃以上の熱可塑性樹脂からなる成形体の成分としては、例えばポリメタクリル酸、ポリカルボキシフェニルメタクリルアミドなどのポリメタクリル酸系樹脂やポリ(ビフェニル)スチレンなどのポリスチレン系樹脂などに代表されるポリオレフィン系樹脂、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンオキシド)に代表されるポリエーテル系樹脂、ポリ(オキシカルボニルオキシ−1,4−フェニレンイソプロピリデン−1,4−フェニレン)に代表されるポリカーボネート系樹脂、ポリ(オキシ−2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブチレンオキシテレフタロイル)に代表されるポリエステル系樹脂、ポリ(オキシ−1,4−フェニレンスルホニル−1,4−フェニレン)、ポリ(オキシ−1,4−フェニレンイソプロピリデン−1,4−フェニレンオキシ−1,4−フェニレンスルホニル−1,4−フェニレン)などに代表されるポリスルホン系樹脂、ポリ(イミノイソフタロイルイミノ−4,4’−ビフェニレン)に代表されるポリアミド系樹脂、ポリ(チオ−1,4−フェニレンスルホニル−1,4−フェニレンに代表されるポリスルフィド系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリフォスファゼン系樹脂などが挙げられる。
【0011】
このように本発明に用いる熱可塑性樹脂からなる成形体は、前記の選択基準にて選択すれば良いのであるが、かかる特性を満足する熱可塑性樹脂からなる成形体として、本発明においては、特定のホスホン酸構造をポリマーの主鎖に導入することによって、容易に前記の特徴を具備する熱可塑性樹脂からなる成形体を得ることができる。
【0012】
このような特定のホスホン酸構造を含有する熱可塑性樹脂からなる成形体としては、次のようなポリマーが挙げられる。すなわち、カーボネート残基、下記一般式(I)で示されるホスホン残基および下記一般式(II)で示される2価フェノール残基からなり、ホスホン酸残基とカーボーネート残基のモル分率が式(1)を満足する熱可塑性樹脂からなる成形体である。
一般式(I)
【0013】
【化5】
Figure 0004003469
【0014】
一般式(II)
【0015】
【化6】
Figure 0004003469
【0016】
[一般式(I)中、R1炭素数2以上の有機基、X1は酸素、硫黄あるいはセレンを表し、熱可塑性樹脂中にR1あるいはX1の異なるホスホン酸残基を2種以上含んでもよい。一般式(II)中、R2は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の脂肪族基、芳香族基から選ばれる炭化水素基、ニトロ基からなる群から選ばれ、p、qはp+q=0〜8の整数、Y1は単結合、エーテル基、チオエーテル基、アルキレン基、アルキリデン基、シクロアルキレン基、ハロ置換アルキレン基、ハロ置換アルキリデン基、フェニルアルキリデン基、カルボニル基、スルホン基、脂肪族ホスフィンオキシド基、芳香族ホスフィンオキシド基、アルキルシラン基、ジアルキルシラン基、フルオレン基からなる群から選ばれる。樹脂組成物中にR2あるいはY1の異なる2価フェノール残基を2種以上含んでもよい。]
1>(a)/{(a)+(b)}≧0.5 (1)
[式(1)中、(a)はホスホン酸残基のモル数、(b)はカーボネート残基のモル数を示す。]
前記一般式(I)で表される化合物のリン原子上の置換基R1の具体例としては、フェニル、ハロ置換フェニル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、エチル、イソプロピル、シクロヘキシル、ビニル、アリル、ベンジル、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、ハロ置換アルキル、アルキルサルファイド基等が挙げられる。またこれら構造式(I)で表されるホスホン酸残基を構成するホスホン酸を具体的に例示するとエチルホスホン酸、n−プロピルホスホン酸、イソプロピルホスホン酸、n−ブチルホスホン酸、イソブチルホスホン酸、t−ブチルホスホン酸、n−ペンチルホスホン酸、ネオペンチルホスホン酸、シクロヘキシルホスホン酸、ベンジルホスホン酸2−クロロエチルホスホン酸、1,2−ジクロロエチルホスホン酸、2−ブロモエチルホスホン酸、1,2−ジブロモエチルホスホン酸、3−クロロプロピルホスホン酸、2,3−ジクロロプロピルホスホン酸3−ブロモプロピルホスホン酸、2,3−ジブロモプロピルホスホン酸、2−クロロ−1−メチルエチルホスホン酸、1,2−ジクロロ−1−メチルエチルホスホン酸、2−ブロモ−1−メチルエチルホスホン酸、1,2−ジブロモ−1−メチルエチルホスホン酸、4−クロロブチルホスホン酸、3,4−ジクロロブチルホスホン酸、4−ブロモブチルホスホン酸、3,4−ジブロモブチルホスホン酸、3−クロロ−1−メチルプロピルホスホン酸、2,3−ジクロロ−1−メチルプロピルホスホン酸、3−ブロモ−1−メチルプロピルホスホン酸1−クロロメチルプロピルホスホン酸、1−クロロ−1−クロロメチルプロピルホスホン酸、1−ブロモメチルプロピルホスホン酸、1−ブロモ−1−ブロモメチルプロピルホスホン酸、5−クロロペンチルホスホン酸、4,5−ジクロロペンチルホスホン酸、5−ブロモペンチルホスホン酸、4,5−ジブロモペンチルホスホン酸2−ヒドロキシエチルホスホン酸、3−ヒドロキシプロピルホスホン酸、4−ヒドロキシブチルホスホン酸、5−ヒドロキシペンチルホスホン酸2−アミノエチルホスホン酸、3−アミノプロピルホスホン酸、4−アミノブチルホスホン酸、5−アミノペンチルホスホン酸、メチルチオメチルホスホン酸、メチルチオエチルホスホン酸、メチルチオプロピルホスホン酸、メチルチオブチルホスホン酸、エチルチオメチルホスホン酸、エチルチオエチルホスホン酸、エチルチオプロピルホスホン酸、プロピルチオメチルホスホン酸、プロピルチオエチルホスホン酸、ブチルチオメチルホスホン酸、フェニルホスホン酸、4−クロロフェニルホスホン酸、3,4−ジクロロフェニルホスホン酸、3,5−ジクロロフェニルホスホン酸、4−ブロモフェニルホスホン酸、3,4−ブロモフェニルホスホン酸、3,5−ブロモフェニルホスホン酸、4−メトキシフェニルホスホン酸、3,4−ジメトキシフェニルホスホン酸、1−ナフチルホスホン酸、2−ナフチルホスホン酸、5,6,7,8−テトラヒドロ−2−ナフチルホスホン酸、5,6,7,8−テトラヒドロ−1−ナフチルホスホン酸、ベンジルホスホン酸、4−ブロモフェニルメチルホスホン酸、3,4−ジブロモフェニルメチルホスホン酸、3,5−ジブロモフェニルメチルホスホン酸、2−フェニルエチルホスホン酸、2−(4−ブロモフェニル)エチルホスホン酸、2−(3,4−ジブロモフェニル)エチルホスホン酸、2−(3,5−ジブロモフェニル)エチルホスホン酸、3−フェニルプロピルホスホン酸、3−(4−ブロモフェニル)プロピルホスホン酸、3−(3,4−ジブロモフェニル)プロピルホスホン酸、3−(3,5−ジブロモフェニル)プロピルホスホン酸、4−フェニルブチルホスホン酸、4−(4−ブロモフェニル)ブチルホスホン酸、4−(3,4−ジブロモフェニル)ブチルホスホン酸、4−(3,5−ジブロモフェニル)ブチルホスホン酸、2−ピリジルホスホン酸、3−ピリジルホスホン酸、4−ピリジルホスホン酸、1−ピロリジノメチルホスホン酸、1−ピロリジノエチルホスホン酸、1−ピロリジノプロピルホスホン酸、1−ピロリジノブチルホスホン酸、ピロール−1−ホスホン酸、ピロール−2−ホスホン酸、ピロール−3−ホスホン酸、チオフェン−2−ホスホン酸、チオフェン−3−ホスホン酸、ジチアン−2−ホスホン酸、トリチアン−2−ホスホン酸、フラン−2−ホスホン酸、フラン−3−ホスホン酸、ビニルホスホン酸、アリルホスホン酸などが挙げられ、またこれらのリン原子に2重結合で結合している酸素原子が硫黄原子に置換されたチオホスホン酸も同様に挙げられる。これらは1種類でも、複数種併用することもできる。また、これらホスホン酸はその酸塩化物、エステル、アミドなどのホスホン酸誘導体であってもよい。またこれらホスホン酸残基については、それぞれ対応する3価のリン官能基であるホスホナイト残基に一部置き換えてもよい。これにより樹脂の耐酸化性を付与することができるが、光学特性等の特性安定性を考慮すると、その置換比率は50%以下が好ましく、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは10%以下である。
【0017】
また、一般式(II)で表される2価フェノール残基を構成する2価フェノールを具体的に例示すると、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−メチル−2−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロオクタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロデカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロドデカン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−エチルヘキサン、2,2−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4’−ビフェノール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(3−アリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−イソプロピル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−secブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビスフェノールフローレン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン、4,4’−〔1,4−フェニレン−ビス(2−プロピリデン)〕−ビス(2−メチルフェノール)、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシフェニルエーテル、1,1−ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2,4’−メチレンビスフェノール、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチル−ブタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ノナン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、テルペンジフェノール、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)−2−メチルプロパン、2,2−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3,5−ジsecブチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(3−シクロヘキシル−4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチルフェニル)エタン、1,1−ビス(3−ノニル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチル−6−メチルフェニル)メタン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ブチルエステル、1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−5−フルオロフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、1,1−ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−1−(p−フルオロフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(p−フルオロフェニル)メタン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3−ニトロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラtert−ブチル−4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、3,3’−ジフルオロ−4,4’−ビフェノール、3,3’,5,5’−テトラフルオロ−4,4’−ビフェノール、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)チオエーテル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)チオエーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)チオエーテル、1,1−ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ドデカン、1,1−ビス(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチルフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸メチルエステル、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン酸エチルエステル、イサチンビスフェノール、イサチンビスクレゾール、2,2’,3,3’,5,5’−ヘキサメチル−4,4’−ビフェノール、ビス(2−ヒドロキシフェニル)メタン、2,4’−メチレンビスフェノール、1,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2−(4−ヒドロキシフェニル)−2−(2−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(2−ヒドロキシ−3−アリルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)−2−メチルプロパン、1,1−ビス(2−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)エタン、ビス(2−ヒドロキシ−5−フェニルフェニル)メタン、1,1−ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、2,2−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、2,2−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)ペンタデカン、1,2−ビス(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(2−ヒドロキシ−3,5−ジtert−ブチルフェニル)メタン、2,2−ビス(3−スチリル−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−(p−ニトロフェニル)エタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン、ビス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、2,2−ビス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3’,5,5’−テトラtert−ブチル−2,2’−ビフェノール、2,2’−ジアリル−4,4’−ビフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5,5−テトラメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,4−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチル−5−エチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロペンタン、1,1−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジフェニル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3−フェニル−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、1,1−ビス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、1,1−ビス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチル−シクロヘキサン、α、α−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン等が挙げられ、これらは1種類でも、複数種併用することもできる。
【0018】
このような2価フェノールは得られる熱可塑性樹脂からなる成形体の性能に応じて適宜選択して用いることができる。また、ジヒドロキシベンゼンを本発明の効果が損なわれない範囲で用いることができ、これらジヒドロキシベンゼンとしては、レゾルシノール、ハイドロキノン、1,2−ジヒドロキシベンゼン等が挙げられ、これらは1種類でも、複数種併用することもできる。
【0019】
また、本発明に用いられる熱可塑性樹脂は必ずしも直鎖状である必要はなく、得られる熱可塑性樹脂からなる成形体の性能に応じて多価フェノールを共重合することができる。
【0020】
このような多価フェノールを具体的に例示すると、トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、4,4’−〔1−〔4−〔1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル〕フェニル〕エチリデン〕ビスフェノール、2,3,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、4−〔ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、4−〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、4−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、2,6−ビス〔(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)メチル〕−4−メチルフェノール、4−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、2−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕−フェノール、4−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−メチルフェニル−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、4−〔(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、4−〔1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチル−エチル〕−1,3−ジヒドロキシベンゼン、4−〔(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,4−ビス〔1−ビス(3,4−ジヒドロキシフェニル)−1−メチル−エチル〕ベンゼン、1,4−ビス〔1−ビス(2,3,4−トリヒドロキシフェニル)−1−メチル−エチル〕ベンゼン、2,4−ビス〔(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,3−ジヒドロキシベンゼン、2−〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェイル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェイル)メチル〕フェノール、2−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシフェイル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4−〔ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−エトキシフェノール、2−〔ビス(2,3−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、3−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、2−〔ビス(2−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2−ヒドロキシ−3,6−ジメチルフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、3,6−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、4,6−〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、2−〔ビス(2,3,6−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、2−〔ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、3−〔ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2,3,5−トリメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕−1,2−ジヒドロキシベンゼン、3−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕フェノール、4−〔ビス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−シクロヘキシルフェニル)メチル〕−2−メトキシフェノール、2,4,6−〔トリス(4−ヒドロキシフェニルメチル)−1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,1,2,2−テトラ(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,2,2−テトラ(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,4−〔〔ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕〕ベンゼン、1,4−ジ〔ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕ベンゼン、1,4−ジ〔ビス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メチル〕ベンゼン、4−〔1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エチル〕アニリン、(2,4−ジヒドロキシフェニル)(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、2−〔ビス(4−ヒドロキシフェニル)メチル〕フェノール、1,3,3−トリ(4−ヒドロキシフェニル)ブタン等が挙げられ、これらは1種類でも、複数種併用することもできる。
【0021】
また、本発明に用いられる熱可塑性樹脂からなる成形体には、本発明の目的を損なわない範囲で、他の成分を共重合せしめたり、他の高分子をブレンドしたりすることができる。このような成分の例としては、共重合可能なモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステル系モノマー、芳香族ビニルモノマー、脂環族ビニルモノマー、ヘテロ環ビニルモノマーなどが挙げられる。また、ブレンド可能な高分子の例としては、前述のモノマーなどから得られる高分子などが挙げられる。特に、本発明の実施態様には非晶性の高分子が透明性の点で有用である。また、その特性を損なわない範囲で、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、チオエーテル系、リン系の各種抗酸化剤を添加することができる。
【0022】
本発明に用いられる好ましい態様である熱可塑性樹脂の製造方法としては、酸ハライドと2価のフェノールを有機溶剤中で反応させる溶液重合法(A. Conix, Ind. Eng. Chem. 51, 147 (1959)、特公昭37−5599号公報)、酸ハライドと2価のフェノールを塩化マグネシウム等の触媒存在下で加熱する溶融重合法、2価の酸と2価のフェノールをジアリルカーボネートの存在下で加熱する溶融重合法(特公昭38−26299号公報)、水と相溶しない有機溶剤に溶解せしめた2価の酸ハライドとアルカリ水溶液に溶解せしめた2価のフェノールとを混合する界面重合法(W. M. Eareckson, J. Poly. Sci. XL 399 (1959)、特公昭40−1959号公報)等が挙げられるが、特に溶液重合法が好適に採用される。溶液重合法について一例を説明すると、ホスホン酸残基の前駆体分子であるホスホン酸誘導体と、2価フェノールをトリエチルアミンなどの塩基存在下混合して反応させ、続いてカーボネート残基の前駆体分子、たとえばトリホスゲンなどを添加して縮合重合することによって本発明の樹脂を得ることができる。このとき、ホスホン酸誘導体とトリホスゲンを同時に添加し反応させるのではなく、トリホスゲンをホスホン酸誘導体添加後に添加することによって、より高分子量体を得ることができる。ホスホン酸誘導体あるいはカーボネート誘導体としてはそれらのハロゲン化物、酸無水物、エステル等が用いられるが特に限定されない。
【0023】
また、本発明に用いられる好ましい態様である熱可塑性樹脂ポリマーの分子量を調節する方法としては、重合時に一官能の物質を添加して行うことができる。ここで言う分子量調節剤として用いられる一官能物質としては、フェノール、クレゾール、p−tert−ブチルフェノール等の一価フェノール類、安息香酸クロライド、メタンスルホニルクロライド、フェニルクロロホルメート等の一価酸クロライド類が挙げられる。本発明の熱可塑性樹脂からなる成形体は、好ましくはフィルムおよびシートとして用いることができる。前記フィルムおよびシートなどの成形体を得る方法は、公知の方法が採用でき特に限定されないが、例えば射出成形法、プレス成形法、圧縮成形法、トランファ成形法、積層成形法、押出成形法などが挙げられる。特に光学等方性が要求される用途においては、ポリマーを溶媒に溶解させた後に支持体上に製膜する溶液製膜方法が好ましい態様である。
【0024】
本発明のプラスチック成形体は、前述のガラス転移温度が130℃以上のリン原子を含有してなる熱可塑性樹脂からなる成形体の少なくとも一面に微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜を設けてなるものであるが耐すり傷性の向上、屈折率の調節、機械的強度の向上、熱的特性の向上、導電性の向上などを目的に微粒子状無機物が必須成分である。
【0025】
かかる微粒子状無機物とは被膜状態で透明性を損なわないものであれば特に限定されないが、作業性の向上、透明性の付与の点から特に好ましい例としてはコロイド状に分散したゾルが挙げられる。さらに具体的な代表例としては、フッ化マグネシウムゾル、シリカゾル、酸化チタンゾル、酸化セリウムゾル、ジルコニアゾル、酸化アンチモンゾル、アルミナゾル、インジウム−スズ酸化物(ITO、Indiumu Tin Oxide)ゾル、酸化スズゾルなどが挙げられる。
【0026】
微粒子状無機物の配合量は、配合効果をより顕著に表すためには微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜中に1重量%以上、80重量%以下であることが好ましい。すなわち、1重量%未満では明らかな配合の効果が認められず、また80重量%を超えると熱可塑性樹脂からなる成形体との密着性不良、被膜に自体にクラックが発生するなどの問題を生じる場合がある。
【0027】
微粒子状無機物の粒子径は、特に限定されないが、通常は1〜200nm、好ましくは5〜100nmのものが使用される。平均粒子径が200nmを超えるものを使用した場合は、生成する被膜の透明性が悪く、濁りが大きくなる傾向がある。また、1nm未満のものを使用した場合は、分散状態の安定性が悪く再現性が乏しくなる傾向がある。さらに、微粒子状無機物の分散性を向上させるために各種の界面活性剤やアミンを配合しても何ら問題はない。さらには、2種以上の微粒子状無機物を併用して用いることも何ら問題はない。
【0028】
本発明における微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜に用いる有機物ポリマーは被膜とした後外部刺激により架橋するものであれば特に限定されないが、例えばその具体例としては、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、セルロース類、ポリビニルアルコール系樹脂、尿素樹脂、ナイロン樹脂、ポリカーボネート系樹脂などが挙げられる。また、これらの有機物ポリマー成分はそれぞれ単独での使用あるいは2種以上併用することが可能で有り、さらに有機物ポリマーのは各種硬化剤、架橋剤などを用いて3次元架橋を行うものであっても良い。
【0029】
特に耐すり傷性が重要な用途には、硬化可能な被膜であることが好ましく、例えばアクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリウレタン系樹脂、メラミン系樹脂などの単独系ないしは複合系が好ましく使用される。特に、酸素ガスバリア性が重要な用途にはポリビニルアルコール系樹脂、ポリハロゲン化ビニリデン系樹脂などが好ましく使用される。また、少なくとも一層の導電性を有する被膜との密着性が重要な用途には、エポキシ系樹脂が好ましく用いられる。かかるエポキシ系樹脂の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールA型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビスフェノールZ型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂などが挙げられる。これらは、1種または2種以上を併用することも可能である。前記エポキシ樹脂の中でも、透明性、熱可塑性樹脂からなる成形体への塗布性、微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜に積層された少なくとも一層の導電性を有する被膜、反射防止膜、ガスバリア性膜などの機能性膜の耐久性向上の点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂がより好ましく用いられる。
【0030】
これらの微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜は、要求される機能によって1層の被膜であっても良いし2層以上積層されていても何ら問題はない。また、微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜は積層される順序も特に限定されるものでない。本発明の微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜の硬化法は、特に限定されないが加熱乾燥、紫外線照射、電子線照射などの公知の方法が適用可能である。また、これらの方法を併用することも可能である。中でも耐すり傷性、耐薬品性、光学特性などの諸特性を考慮した場合では、シリコーン系樹脂を使用することが好ましく、より好ましくは下記一般式(III)で示される有機ケイ素化合物ないしはその加水分解物からなる群から選ばれる少なくても1種の有機ケイ素化合物および/またはその加水分解物が用いられる。
一般式(III)
【0031】
【化7】
Figure 0004003469
【0032】
(ここで、R3は炭素数1〜10の有機基であり、R4は炭素数1〜6の炭化水素基またはハロゲン化炭化水素基、Zは加水分解性基であり、cおよびdは0または1で同時に0にはならない。)
一般式(III)で示される有機ケイ素化合物の具体的な代表例としては、メチルシリケート、エチルシリケート、n−プロピルシリケート、iso−プロピルシリケート、n−ブチルシリケート、sec−ブチルシリケートおよびt−ブチルシリケートなどのテトラアルコキシシラン類、およびその加水分解物、さらにはメチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシエトキシシラン、メチルトリアセトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリアセトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリエトキシシラン、γ−クロロプロピルトリアセトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、β−シアノエチルトリエトキシシラン、メチルトリフェノキシシラン、クロロメチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシエチルトリエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリフェノキシシラン、α−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、α−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、β−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリメトキシシラン、δ−グリシドキシブチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリフェノキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリメトキシシラン、γ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピルトリエトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリメトキシシラン、δ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチルトリエトキシシランなどのトリアルコキシシラン、トリアシルオキシシラン、またはトリフェノキシシラン類またはその加水分解物およびジメチルジメトキシシラン、フェニルメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルメチルジエトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルメチルジエトキシシラン、ジメチルジアセトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、α−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、β−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジプロポキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジブトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルメトキシエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジフェノキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルエチルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルビニルジエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルフェニルジエトキシシラン、などのジアルコキシシラン、ジフェノキシシランまたはジアシルオキシシラン類またはその加水分解物がその例である。
【0033】
以上の一般式(III)で表される有機ケイ素化合物として、特に染色性付与の目的にはエポキシ基、グリシドキシ基を含む有機ケイ素化合物の使用が好適である。また、低屈折率化をはかるためには、フルオロアルキル基、メチル基などを含む有機ケイ素化合物の使用が好ましい。さらに高屈折率化をはかるためには、フェニル基、スチリル基などを含む有機ケイ素化合物の使用が好ましい。さらには硬化速度、加水分解の容易さなどの点からZとしては、炭素数1〜4のアルコキシ基またはアルコキシアルコキシ基が好ましく用いられる。
【0034】
これらの有機ケイ素化合物の中で硬化温度を下げ、硬化をより進行させるためには加水分解により被膜を得ることが好ましい。加水分解は純水または塩酸、酢酸あるいは硫酸などの酸性水溶液を配合し撹拌することによって製造される。また、純水あるいは酸性水溶液の配合量を調節することによって加水分解の度合いをコントロールすることも容易に可能である。加水分解に際しては、一般式(III)のZと等モル以上、3倍モル以下の純水または酸性水溶液の配合が硬化促進の点で好ましい。加水分解に際しては、アルコールなどが生成してくるため無溶媒で加水分解することが可能であるが、加水分解をさらに均一に行う目的で有機ケイ素化合物と溶媒を混合した後に加水分解を行うことも可能である。また目的に応じて加水分解後のアルコールなどを加熱および/または減圧下で適当量除去して使用することも可能であるし、その後に適当な溶媒を配合することも可能である。
【0035】
これらの溶媒としてはアルコール、エステル、エーテル、ケトン、ハロゲン化炭化水素あるいはトルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素、N,N−ジメチルホルムアミドなどの溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、必要に応じて2種以上の混合溶媒として使用することも可能である。また目的に応じて加水分解反応を促進し、さらに予備縮合などの反応を進めるために室温以上に加熱することも可能であるし、予備縮合を抑えるために加水分解温度を室温以下に下げて行うことも可能である。
【0036】
これらの微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜を形成せしめるためのコーティング組成物中には、塗布時におけるフローを向上させる目的で各種の界面活性剤を使用することも可能であり、特にジメチルポリシロキサンとアルキレンオキシドとのブロックまたはグラフト共重合体、さらにはフッ素系界面活性剤などが有効である。さらに耐候性、耐光性を向上させる目的で紫外線吸収剤、また耐熱劣化向上法として酸化防止剤を配合することも可能である。さらにこれらのコーティング組成物中には、被膜性能、透明性などを大幅に低下させない範囲で微粒子状無機物以外の無機化合物なども配合することができる。これらの配合物の併用によって熱可塑性樹脂からなる成形体との密着性、耐薬品性、耐すり傷性、耐久性、染色性などの諸特性を向上させることができる。前記の配合可能な無機材料としては下記の一般式(IV)で表わされる金属アルコキシド、キレート化合物および/またはその加水分解物が挙げられる。
一般式(IV)
M(OR5)m (IV)
(ここでR5はアルキル基、アシル基、アルコキシアルキル基であり、mは金属Mの電荷数と同じ値である。Mとしてはケイ素、チタン、ジルコン、アンチモン、タンタル、ゲルマニウム、アルミニウムなどである。)
本発明における微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜を形成せしめる場合には、硬化促進、低温硬化などを可能とする目的で各種の硬化剤が使用可能である。硬化剤としては各種エポキシ樹脂硬化剤、あるいは各種有機ケイ素樹脂硬化剤などが適用される。これらの硬化剤の具体的な例としては、各種の有機酸およびそれらの酸無水物、窒素含有有機化合物、各種金属錯化合物あるいは金属アルコキシド、さらにはアルカリ金属の有機カルボン酸塩、炭酸塩などの各種塩、また過酸化物、アゾビスイソブチロニトリルなどのラジカル重合開始剤などが挙げられる。これらの硬化剤は2種以上混合して使用することも可能である。
【0037】
これらの硬化剤の中でも本発明の目的には、コーティング組成物の安定性、コーティング後の被膜の着色防止などの点から、特に下記に示すアルミニウムキレート化合物が有用である。ここでいうアルミニウムキレート化合物とは、一般式AlYn3-nで示されるアルミニウムキレート化合物である(但し式中YはOL(Lは炭素数1〜4のアルキル基)、Zは一般式M1COCH2COM2(M1 ,M2 はいずれも炭素数1〜4のアルキル基)で示される化合物に由来する配位子、および一般式M3COCH2COOM4(M3 ,M4 はいずれも炭素数1〜4のアルキル基)で示される化合物に由来する配位子から選ばれる少なくとも1つであり、nは0,1または2である。)。Al Yn3-n で示されるアルミニウムキレート化合物のうちで、コーティング組成物への溶解性、安定性、硬化触媒としての効果などの観点からして、アルミニウムアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート、アルミニウムジ−n−ブトキシド−モノエチルアセトアセテート、アルミニウム−ジ−iso−プロポキシド−モノメチルアセトアセテートなどが好ましい。これらの硬化剤は、2種以上を併用して用いることも何ら問題はない。
【0038】
塗布方法としては通常のコーティング作業で用いられる公知の方法が適用可能であるが、例えば浸漬塗装法、流し塗り法、スピンコート法などが好ましい。このようにして塗布されたコーティング組成物は一般には加熱乾燥によって硬化される。加熱方法としては熱風、赤外線などで行なうことが可能である。また加熱温度は適用される熱可塑性樹脂からなる成形体および用いられるコーティング組成物によって決定されるべきであるが、通常は室温から250℃、より好ましくは35〜200℃が使用される。室温より低温では硬化または乾燥が不充分になりやすく、また250℃より高温になると熱分解、亀裂発生などが起りさらには黄変などの問題を生じやすくなる。
【0039】
本発明における微粒子状無機物の含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜の膜厚は特に限定されないが、密着強度の保持、導電性を有する被膜の耐久性、耐すり傷性などの点から10〜20,000nmの間で好ましく用いられる。すなわち、10nm未満では被覆効果を余り期待できず、20,000nmを越えると塗りむらなどが生じ易くなる。
【0040】
本発明におけるコーティング組成物の塗布にあたっては、塗布されるべき表面は清浄化されていることが好ましく、清浄化に際しては界面活性剤による汚れ除去、さらには有機溶剤による脱脂、フレオンによる蒸気洗浄などが適用される。
【0041】
さらには、本発明では微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜を被覆する際の熱可塑性樹脂からなる成形体との密着性向上、各層間の密着性向上を目的に界面を前処理することが可能である。かかる前処理の方法としては、活性化ガス処理、薬品処理、紫外線処理などが挙げられる。前記活性化ガス処理とは、常圧もしくは減圧下において生成するイオン、電子あるいは励起された気体による処理である。これらの活性化ガスを生成させる方法としては、例えばコロナ放電処理、減圧下での直流、低周波、高周波あるいはマイクロ波による高電圧放電などによるものである。特に減圧下での高周波放電によって得られる低温プラズマによる処理が、再現性、生産性などの点で好ましい。ここで使用されるガスは特に限定されるものではないが、具体例としては酸素、窒素、水素、炭酸ガス、二酸化硫黄、ヘリウム、ネオン、アルゴン、フレオン、水蒸気、アンモニア、一酸化炭素、塩素、一酸化窒素、二酸化窒素などが挙げられる。これらは1種のみならず2種以上混合しても使用可能である。前記の中で好ましいガスとしては、酸素を含んだものが挙げられ、空気などの自然界に存在するものであっても良い。さらに好ましくは、純粋な酸素ガスが密着性向上に有効である。さらには同様の目的で前記処理に際しては被処理基材の温度を上げることも可能である。
【0042】
一方、薬品処理の具体例としては苛性ソーダなどのアルカリ処理、塩酸、硫酸、過マンガン酸カリウム、重クロム酸カリウムなどの酸処理、有機溶剤処理などが挙げられる。
【0043】
以上の前処理は、連続的、または段階的に併用して実施することも十分可能である。
【0044】
本発明は、以上によって得られた微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜の上に少なくとも一層の導電性を有する被膜が設けられてなるものである。導電性を有する被膜の具体例としては、ITO(インジウム・スズ混合酸化物)、酸化スズ、酸化カドミウムなどの金属酸化物、金、銀、銅、パラジウム、ニッケル、アルミニウム、クロムなどの金属、導電性高分子などの導電性薄膜が用いられる。中でも、透明性、低抵抗などの諸特性を考慮した場合、ITOが好ましく用いられる。ITOなどの金属酸化物薄膜、金属薄膜の成製膜方法としては、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、コーティング法、スプレィ法などの公知の手法を用いることができる。また、スパッタリング法としては、直流方式、高周波方式、マグネトロン方式、強磁場マグネトロン方式などの公知の方法が用いられる。かかるITOの膜厚は、特に限定されないが抵抗値、透明性および成膜時間を考慮した場合、15〜500nmの範囲から適宜選択されることが好ましい。
【0045】
また、少なくとも一層の導電性を有する被膜の密着性向上、耐久性向上、ガスバリア性向上の点で微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜と導電性を有する被膜の界面にSi、Al、Tiなどの金属酸化物および/または金属窒化物を設けることも可能である。かかるSi、Al、Tiなどの金属酸化物および/または金属窒化物の膜厚は特に限定されないが好ましくは10〜200nm、より好ましくは30〜120nmである。
【0046】
これらの少なくとも一層の導電性を有する被膜は、要求される機能によって1層の被膜であっても良いし2層以上積層されていても何ら問題はない。また、2層以上を構成する場合、該導電性を有する被膜の材質や性質が異なる場合は、その目的に応じて積層される順序を適宜設定することができる。
【0047】
本発明の導電性を有するプラスチック成形体を表示素子用電極として用いる場合は、リン原子を含有してなる熱可塑性樹脂からなる成形体の機械的特性を鑑みてその厚みは、0.1〜10mmであることが好ましく、より好ましくは0.3〜1.0mmである。
【0048】
また、本発明のプラスチック成形体は、前記の微粒子を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜、及び、少なくとも一層の導電性を有する被膜をこの順に積層したものであれば、他の被膜を含むものであっても良い。例えば、最外層に硬化性被膜を設けたり、最内層にクッション層やアンカー層を設けたり、前記膜間に密着性を改良するための膜を設けたりする態様が挙げられる。これらは、透明であることが好ましい。
【0049】
以上によって得られた導電性を有するプラスチック成形体は、コンデンサ、抵抗体などの電気部品回路材料、電子写真や静電記録などの複写用材料、液晶ディスプレイ用、エレクトロクロミックディスプレイ用、エレクトロルミネッセンスディスプレイ用、タッチパネル用の信号入力用透明電極、太陽電池、光増幅器などの光電変換素子の他、帯電防止用、電磁波遮蔽用、面発熱体、センサーなどの各種用途に用いることができる。本発明の導電性を有するプラスチック成形体は、耐熱性の良好な信号入力用透明電極が得られることから液晶ディスプレイ用基板としての使用が可能である。この信号入力用透明電極は、TN(Twisted Nematic)型、STN(Super Twisted Nematic)型、強誘電液晶(FLC:Ferroelectric Liquid Clistal)型などの単純マトリックス型、MIM(Metal-Insulator-Metal)型、TFT(Thin-Film Transistor)型などのアクティブマトリックス型などの液晶ディスプレイに適用可能であるが、製造プロセスが比較的単純であることから単純マトリックス型液晶ディスプレイに好ましく用いられる。
【0050】
本発明の導電性を有するプラスチック成形体を液晶ディスプレイ用基板として使用する場合、導電性を有するプラスチック成形体によって液晶を挟持した構造をとる。すなわち、従来のガラス基板を使用した液晶ディスプレイにおいて、本発明の導電性を有するプラスチック成形体によりガラス基板を代替した構成となる。具体的には、熱可塑性樹脂からなるプラスチック成形体上に微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜、酸素ガスバリア被膜、導電性を有する被膜を設け、必要に応じてパッシベージョン膜、さらにその上に配向膜が設けられた基板により液晶層を挟持した構造をとる。液晶層を挟持した基板の外側には偏向板が設けられる。液晶ディスプレィには必要に応じてさらに位相差板や光反射板、光導光板が用いられる。本発明の導電性を有するプラスチック成形体を用いた液晶ディスプレイの製造方法としては、公知の方法を適用することができる。例えば、単純マトリックス型液晶ディスプレイの場合、〔液晶デバイスハンドブック(日本学術振興会第142委員会編、日刊工業新聞社発行、1989)p.531参照〕、基板を洗浄後、透明導電膜成膜、透明導電膜微細加工(レジスト塗布、現像、エッチング、レジスト除去)、配向膜形成、ラビング処理、洗浄、シール剤印刷、基板張合せ、加熱・加圧、真空脱気、液晶注入、注入口封止、液晶セル分断、偏向板・光反射板の張付けなどの工程を順次経ることによって液晶ディスプレイ素子が得られる。これらの液晶ディスプレイ製造工程においては、該導電性を有するプラスチック成形体を使用した液晶ディスプレイ用基板の耐熱性、機械的特性などの諸特性を考慮して製造条件が設定されるべきである。
【0051】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。尚、各測定および評価は次の方法で行った。
【0052】
1.熱可塑性樹脂プラスチック成形体からなる成形体の諸性能
1.1 光学特性
(ア)屈折率、アッベ数
熱可塑性樹脂からなるプラスチック成形体を互いに直行する2面が鏡面仕上げになるように研磨した。屈折計(カルニュー光学工業(株)社製:KPR−2)を使用し、d線(波長:587.6nm)屈折率(nd)、下式より求められるアッベ数(νd)を測定した。
【0053】
アッベ数(νd)=(nd−1)/(nf−nc)
(ここで、nd:d線屈折率(波長587.6nm)、nf:f線屈折率(波長656.3nm)、nc:c線屈折率(波長486.1nm)。)
すなわち、その数値が大きいほど低分散であることを示している。
【0054】
(イ)複屈折
50mm×50mm×0.5mmに試料を成形し、位相差フィルム検査装置(大塚電子(株)社製:RETS−1100)を使用し、d線(波長:587.6nm)でのリターデーションを測定した。
【0055】
1.2 力学特性
10mm×25mm×3mmに試料を成形し、オリエンテック(株)社製テンシロン(型式RTM−100)を用いて、支点間距離22mm、曲げ速度1.5mm/minにて曲げ試験を行った。評価パラメーターは脆さの指標である靭性値(曲げ応力×破断変位)とした。
【0056】
1.3 ガラス転移温度
示差走査熱量計(セイコー電子工業(株)社製:SSC5200)を使用し、以下の条件でガラス転移点温度(Tg)を測定した。尚、測定は1つのサンプルに対して、サンプルを測定器から取り出すことなしに2回の測定操作を行い、2回目の測定結果を使用した。すなわち、1回目の測定操作の終了後直ちに下記(ア)の条件で冷却と冷却後の温度の安定化を行い、その後直ちに同条件で2回目の測定を行って求めた。
【0057】
試料容器:アルミニウム製開放型試料容器
サンプル量:約5mg
雰囲気:乾燥窒素流(20ml/min)
測定条件:0〜250℃
昇温速度:10℃/分
(ア)冷却、温度安定化条件
20ml/minの乾燥窒素流雰囲気下、冷却速度20℃/minで0℃まで冷却し、その状態で30分間保持し、温度を安定化させた。
【0058】
2.微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜を設けた導電性を有するプラスチック成形体の諸特性
2.1 外観
目視にて透明性やクラックを観察して無いものを○とした。
【0059】
2.2 密着性
被膜面に1mmの熱可塑性樹脂からなるプラスチック成形体に達する碁盤目を被膜の上から綱ナイフで100個入れて、セロハン粘着テープ(商品名“セロテープ(登録商標)”ニチバン(株)社製)を強く貼り付け90度方向に急速に剥がして被膜剥離の無いものをを○とした。
【0060】
2.3 導電性
Loresta MCP−TESTER−FP(三菱油化(株)社製)を使用し表面抵抗値(Ω/□)を室温で測定した。
【0061】
2.4 酸素ガス透過率
OX−TRAN 2/20MH(MOCON(株)社製)を使用し等圧クーロメトリック法により酸素透過率を測定した。
【0062】
実施例1
1.熱可塑性樹脂プラスチック成形体からなる成形体の作製
窒素雰囲気下、1,2−ジクロロエタン(100ml)中にメチルベンジリデンビスフェノール(40mmol)、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](0.15g)、およびトリエチルアミン(88mmol)を混合し、氷冷下攪拌した。この溶液にフェニルチオホスホン酸ジクロライド(30mmol)の1,2−ジクロロエタン(45ml)溶液を60分間かけて滴下し、滴下終了後室温で120分間攪拌した。その後、濃度0.571mol/lであるトリホスゲンの1,2−ジクロロエタン(5.83ml)溶液を30分かけて滴下し、滴下終了後120分間攪拌した。次にオイルバスを用いて溶液温度70℃で120分間攪拌した。その後、12時間室温にて攪拌を行った。反応溶液をヘキサン2000mlに投入して再沈し、ポリマーを濾取した後、(1)エタノール2000ml、(2)水/エタノール=1/1混合溶液2000ml、(3)水2000mlの順で生成したポリマーを洗浄、乾燥して目的の樹脂粉末を収率90%で得た。得られた樹脂粉末の熱特性をDSCで測定するとTgは、159℃であった。また、得られた樹脂粉末を240℃に加熱した金型に投入した後に金型を閉じ圧力2tにて加圧後、金型を冷却した。冷却後に金型を分割することによって、100mm×100mm×0.5mmの熱可塑性樹脂からなるプラスチック成形体を得た。この熱可塑性樹脂からなるプラスチック成形体の光学特性は、屈折率が1.639、アッベ数が27、リターデーションが3nmであった。また、力学特性は靭性値が28、弾性率が250kg/mm2であった。
【0063】
2.コーティング組成物の作製
2.1 γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン加水分解物の調製
撹拌装置を備えた反応器にγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン120.0gを仕込み、液温を10℃に保ち、撹拌しながら0.01規定塩酸水溶液27.5gを徐々に滴下する。滴下終了後冷却をやめて、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの加水分解物を得た。
【0064】
2.2 コーティング組成物の調製
前記γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン加水分解物に、メチルアルコール207.7g、ベンジルアルコール118.7g、N,N−ジメチルホルムアミド267.0g、ケイ素系界面活性剤1.7g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(シェル化学(株)社製:商品名“エピコート827”)85.0gを配合混合し、さらにコロイド状五酸化アンチモンゾル(日産化学(株)社製:商品名“アンチモンゾルA−2550” 平均粒子径50nm)354.1g、アルミニウムアセチルアセトネート17.0g、銅アセチルアセトネート1.4gを配合し、充分撹拌した後、コーティング組成物とした。
【0065】
3.微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜を設けた熱可塑性樹脂からなるプラスチック成形体の作製
前記1項によって得られた熱可塑性樹脂からなるプラスチック成形体に前記2.2項で調製したコーティング組成物を引き上げ速度10cm/分の条件で熱可塑性樹脂からなるプラスチック成形体に浸漬塗布し、次いで100℃で12分の予備硬化を行った。その後110℃で4時間加熱して微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜を有するプラスチック成形体を得た。
【0066】
4.導電性を有するプラスチック成形体の作製
前記3項によって得られた微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜を設けた熱可塑性樹脂からなるプラスチック成形体の片面にITOを主成分とする導電性を有する被膜を直流マグネトロンスパッタリング法により、ターゲット材料に高密度(相対密度:95%)ITO(SnO210%)を用い、基板加熱温度を120℃、到達真空度を5×10-5Torrに設定し、導入ガスにArとO2を用い、成膜真空度2×10-3Torr、投入電力1.5kw、スパッタリングレイトを10nm/minのスパッタリング条件で100nm成膜した。得られた導電性を有するプラスチック成形体の外観は○、密着性は○、表面抵抗は58Ω/□であった。この導電性を有するプラスチック成形体を140℃で2時間の耐熱性評価をしたところ、外観は○、表面抵抗は初期の値と同じ58Ω/□であり、優れた耐熱性を有していた。
【0067】
実施例2
コーティング組成物の調製、微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜の作成方法および導電性を有する被膜の作製方法を以下に示す通りに変更する以外は、実施例1と同様に行った。
【0068】
1.コーティング組成物の作製
1.1 γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシシラン加水分解物の調製
攪拌装置を備えた反応器にγ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシシラン50.6gを仕込み、液温を10℃に保ち、攪拌しながら0.05規定塩酸水溶液7.4gを徐々に滴下する。滴下終了後30分間攪拌を継続し、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシシラン加水分解物を得た。
【0069】
1.2 コーティング組成物の調製
前記γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシシラン加水分解物に、n−プロピルアルコール98.9g、ジアセトンアルコール33.1g、ベンジルアルコール16.5g、アセチルアセトン13.2g、トリエチレングリコール4.7g、ケイ素系界面活性剤0.7g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(シェル化学(株)社製:商品名“エピコート827”)35.5gを配合混合し、さらにコロイド状シリカゾル(触媒化成工業(株)社製:商品名“OSCAL−1235” 平均粒子径45nm)237.0g、アルミニウムアセチルアセトネート7.1gを配合し、充分撹拌した後、コーティング組成物とした。
【0070】
2.微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜を設けた熱可塑性樹脂からなるプラスチック成形体の作製
実施例1の熱可塑性樹脂からなるプラスチック成形体に前記1.2項で調製したコーティング組成物を引き上げ速度10cm/分の条件で熱可塑性樹脂からなるプラスチック成形体に浸漬塗布し、次いで82℃で12分の予備硬化を行った。その後93℃で4時間加熱して微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜を設けた熱可塑性樹脂からなるプラスチック成形体を得た。
【0071】
3.導電性を有するプラスチック成形体の作製
前記2によって得られた微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜を設けた熱可塑性樹脂からなるプラスチック成形体の片面にSiO2を主成分とする被膜を高周波マグネトロンスパッタリング法により、ターゲット材料にSiO2を用い、基板加熱温度を120℃、到達真空度を5×10-5Torrに設定し、導入ガスにArを用い、成膜真空度2×10-3Torr、投入電力1.5kw、スパッタリングレイトを5nm/minのスパッタリング条件で60nm成膜し、その層状にITOを主成分とする導電性を有する被膜を直流マグネトロンスパッタリング法により、ターゲット材料に高密度(相対密度:95%)ITO(SnO210%)を用い、導入ガスにArとO2を用い、成膜真空度2×10-3Torr、投入電力1.5kw、スパッタリングレイトを10nm/minのスパッタリング条件で100nm成膜した。得られた導電性を有するプラスチック成形体の外観は○、密着性は○、表面抵抗は62Ω/□であった。この導電性を有するプラスチック成形体を140℃で2時間の耐熱性評価をしたところ、外観は○、表面抵抗は65Ω/□であり、さらに40℃/90%RHで1000時間の耐湿熱性評価をしたところ、外観は○、表面抵抗は70Ω/□と優れた耐熱性および耐湿熱性を有していた。また、酸素透過率は、1.8[cc/m2・day・atm]と優れた酸素ガスバリア性を有していた。
【0072】
実施例3
コーティング組成物の調製、微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜の作成方法および導電性を有する被膜の作製方法を以下に示す通りに変更する以外は、実施例1と同様に行った。
【0073】
1.コーティング組成物の作製−1
1.1 ポリビニルアルコールの調製
撹拌装置を備えた反応器に精製水を304.0g仕込み、準完全鹸化型(91〜94mol%)、重合度(600)のポリビニルアルコ−ル96.0gを配合し、その後80〜90℃に保ち、撹拌しながら溶解させた。
【0074】
1.2 γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン加水分解物の調整
撹拌装置を備えた反応器にγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン53.6gを仕込み、液温を10℃に保ち、撹拌しながら0.01規定塩酸水溶液12.3gを徐々に滴下する。滴下終了後冷却をやめて、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの加水分解物を得た。
【0075】
1.3 コーティング組成物の調製
前記1.1項のポリビニルアルコール水溶液101.6g、前記1.2項のγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン加水分解物4.5g、フッ素系界面活性剤0.3g、精製水419.6g、メチルアルコール337.6g、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン69.7g、1,4−ジオキサン29.9gを配合混合し、さらにコロイド状シリカゾル(触媒化成工業(株)社製:商品名“OSCAL−1132”平均粒子系13nm)86.6g、アルミニウムアセチルアセトネート0.3gを配合し、充分撹拌した後、コーティング組成物とした。
【0076】
2.微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜を設けた熱可塑性樹脂からなるプラスチック成形体の作製−1
実施例1の熱可塑性樹脂からなるプラスチック成形体に前記1.3項で調製したコーティング組成物を引き上げ速度20cm/分の条件で熱可塑性樹脂からなるプラスチック成形体に浸漬塗布し、次いで90℃で12分の予備硬化を行った。その後130℃で2時間加熱して微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜を設けた熱可塑性樹脂からなるプラスチック成形体を得た。
【0077】
3.コーティング組成物の作製−2
3.1 フェニルトリメトキシシラン加水分解物の調製
攪拌装置を備えた反応器にフェニルトリメトキシシラン19.8gを仕込み、液温を20℃に保つ。0.01規定塩酸水溶液5.4g秤量し、攪拌しながら1/20量の0.01規定塩酸水溶液を滴下する。その後、滴下を中止し攪拌を継続しながら加水分解反応を進める。混合溶液が透明になったら、液温を20℃に保ち撹拌しながら残りの0.01規定塩酸水溶液を徐々に滴下する。滴下終了後冷却をやめて、フェニルトリメトキシシラン加水分解物を得た。
【0078】
3.2 コーティング組成物の調製
前記フェニルトリメトキシシラン加水分解物23.4gに、エチルアルコール153.8g、ジアセトンアルコール51.2g、ベンジルアルコール73.2g、N,N−ジメチルホルムアミド29.4g、ケイ素系界面活性剤0.7g、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(シェル化学(株)社製:商品名“エピコート827”)86.9gを配合混合し、さらにコロイド状シリカゾル(触媒化成工業(株)社製:商品名“OSCAL−1235” 平均粒子径45nm)675.6g、アルミニウムアセチルアセトネート5.8gを配合し、充分撹拌した後、コーティング組成物とした。
【0079】
4.微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜を設けた熱可塑性樹脂からなるプラスチック成形体の作製−2
前記2項によって得られた微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜を設けた熱可塑性樹脂からなるプラスチック成形体上に前記3.2で調製したコーティング組成物を引き上げ速度10cm/分の条件でプラスチック成形体に浸漬塗布し、次いで82℃で12分の予備硬化を行った。その後93℃で4時間加熱して微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜を設けた熱可塑性樹脂からなるプラスチック成形体を得た。
【0080】
5.導電性を有するプラスチック成形体の作製
前記4によって得られた2層積層された微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜を設けた熱可塑性樹脂からなるプラスチック成形体の片面にSiO2を主成分とする被膜を高周波マグネトロンスパッタリング法により、ターゲット材料にSiO2を用い、基板加熱温度を120℃、到達真空度を5×10-5Torrに設定し、導入ガスにArを用い、成膜真空度2×10-3Torr、投入電力1.5kw、スパッタリングレイトを5nm/minのスパッタリング条件で30nm成膜し、その層状にITOを主成分とする導電性を有する被膜を直流マグネトロンスパッタリング法により、ターゲット材料に高密度(相対密度:95%)ITO(SnO210%)を用い、導入ガスにArとO2を用い、成膜真空度2×10-3Torr、投入電力1.5kw、スパッタリングレイトを10nm/minのスパッタリング条件で200nm成膜した。得られた導電性を有するプラスチック成形体の外観は○、密着性は○、表面抵抗は20Ω/□であった。この導電性を有するプラスチック成形体を140℃で2時間の耐熱性評価をしたところ、外観は○、表面抵抗は初期値と同じ値であり、さらに40℃/90%RHで1000時間の耐湿熱性評価をしたところ、外観は○、表面抵抗は25Ω/□と優れた耐熱性および耐湿熱性を有していた。また、酸素透過率は、0.4[cc/m2・day・atm]と優れた酸素ガスバリア性を有していた。
【0081】
比較例1
微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜を設けない以外は全て実施例1と同様に行った。得られた導電性を有するプラスチック成形体は、スパッタリング装置から取出し直後にITO膜にクラックが発生し、電流が導通しない状態であった。
【0082】
比較例2
市販されているPESフィルム(0.2mm厚)を使用し、微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜を設けない以外は実施例1と同様に行った。 得られた導電性を有するプラスチック成形体は、スパッタリング装置から取出すとカールが酷くまたITO膜にクラックが発生し、電流が導通しない状態であった。
【0083】
【発明の効果】
本発明によって得られた導電性を有するプラスチック成形体は、以下に示す効果が有る。
(1)射出成形が可能であり、大量生産性および安価なプラスチック成形体が得られる。
(2)光学等方性に優れたプラスチック成形体が得られる。
(3)耐熱性、耐湿熱性に優れた導電性を有するプラスチック成形体が得られる。
(4)酸素ガスバリア性に優れた導電性を有するプラスチック成形体が得られる。

Claims (4)

  1. ガラス転移温度が130℃以上のリン原子を含有してなる熱可塑性樹脂であり、カーボネート残基、下記一般式(I)で示されるホスホン酸残基および下記一般式( II )で示される2価フェノール残基を含み、カーボネート残基とホスホン酸残基のモル分率が式(1)を満足する熱可塑性樹脂からなる成形体の少なくとも一面に下記AおよびB被膜がこの順に2層以上積層されてなる構造を有することを特徴とする導電性を有するプラスチック成形体。
    A 微粒子状無機物を含みかつ架橋性の有機物ポリマーからなる被膜
    B 少なくとも一層の導電性を有する被膜
    一般式(I)
    Figure 0004003469
    一般式( II
    Figure 0004003469
    [一般式(I)中、R 1 は炭素数2以上の有機基、X 1 は酸素、硫黄あるいはセレンを表し、熱可塑性樹脂中にR 1 あるいはX 1 の異なるホスホン酸残基を2種以上含んでもよい。一般式( II )中、R 2 は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜20の脂肪族基、芳香族基から選ばれる炭化水素基、ニトロ基からなる群から選ばれ、p、qはp+q=0〜8の整数、Y 1 は単結合、エーテル基、チオエーテル基、アルキレン基、アルキリデン基、シクロアルキレン基、ハロ置換アルキレン基、ハロ置換アルキリデン基、フェニルアルキリデン基、カルボニル基、スルホン基、脂肪族ホスフィンオキシド基、芳香族ホスフィンオキシド基、アルキルシラン基、ジアルキルシラン基、フルオレン基からなる群から選ばれる。樹脂組成物中にR 2 あるいはY 1 の異なる2価フェノール残基を2種以上含んでもよい。]
    1>(a)/{(a)+(b)}≧0.5 (1)
    [ 式(1)中、(a)はホスホン酸残基のモル数、(b)はカーボネート残基のモル数を示す。 ]
  2. 被膜A中に微粒子状無機物を1重量%以上80重量%以下含有してなる請求項1記載の導電性を有するプラスチック成形体。
  3. 一般式(I)中のR がフェニル、ハロ置換フェニル、メトキシフェニル、エトキシフェニル、n−プロピル、イソプロピル、シクロヘキシル、ビニル、アリル、ベンジル、アミノアルキル、ヒドロキシアルキル、ハロ置換アルキル、アルキルサルファイドから選ばれる請求項1または2に記載の導電性を有するプラスチック成型体。
  4. 請求項1〜3いずれかに記載の導電性を有するプラスチック成形体からなる表示素子用電極。
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