JP4003164B2 - 形状記憶合金パイプ型アクチュエータの作製方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、形状記憶合金からなるパイプ型のアクチュエータの作製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
医療分野においては、カテーテルを血管に挿入し、カテーテル先端を病巣部に導き、カテーテルを介して病巣部へ薬剤を注入したり血管内へ治療器具を挿入したりして治療を行っている。
近年、カテーテルの先端にアクチュエータを設け、外部からの操作によってアクチュエータを駆動し、所望の方向にカテーテルの先端を曲げ、複雑・微細な血管網の目的の部位にカテーテルを導き得るようにする工夫が種々試みられている(例えば特開平11−048171号公報参照)。また、工業分野においても、生産設備等の複雑・微細な配管の目的の個所に細線、あるいは細管を導くようにし得る技術が求められている。例えば、光ファイバ内視鏡を複雑・微細な配管の所望の個所に導くことができれば、光ファイバによる影像により、容易に故障診断を行うことができる。
【0003】
アクチュエータを取り付けた細管(または細線)は能動細管(または能動細線)と呼ばれている。例えば、カテーテルあるいは光ファイバのような細管、細線の先端部位の表面に沿って、形状記憶合金(SMA:Shape MemoryAlloy) からなるコイル、あるいは平板状のジグザグばねを3本ないし4本取り付け、これらを独立に電流で加熱して所望の方向に曲げるものがある。
SMAコイル型のアクチュエータ( 例えば上記文献参照)を用いた能動細管は、変位量が大きいという特徴がある。
また、SMAワイヤを曲げて形成したワイヤ型ジグザグばね、あるいは、SMA平板を加工して形成した平板状ジグザグばね型の伸縮アクチュエータ(上記文献参照)を用いた能動細管は、変位量はあまり大きくないが、上記のコイルを使用した能動細管に比べ、径の小さい能動細管が実現できるという特徴がある。
【0004】
上記のように、実用化できる能動細管が種々生産されるようになったが、コストが高いという問題がある。
医療用の能動細管、すなわち能動カテーテルは、感染症防止などの観点から、使い捨てが基本的な使用法であり、能動カテーテル普及のためには、量産性および低コスト化の実現が求められている。
このため、コスト低減のための種々の技術開発がなされてきた。例えば、コイル型やワイヤ型ジグザグばねの場合には、アクチュエータの加工および加工後の形状記憶熱処理を1本ごとに行う必要があるために、生産性が低くコストの低減には限界があったが、本発明者らによって、SMAシートを前もって形状記憶させ、SMAの変形温度より低い温度で引き延ばし、フォトリソグラフィー工程と電解エッチングにより、平板状ジグザグばね型のアクチュエータを、一括して大量に作製できる技術が開発された(特開2001−279500号公報参照)。この方法は、SMAシート上にフォトリソグラフィー工程で、アクチュエータ・パターンを有するレジストパターンを一括して大量に形成し、SMAシートの加工面の裏側に予めダミーの金属層を設けておき、SMAシートを貫通してダミー金属層途中まで電解エッチングすることによって、高精度に、かつ、一括して大量にアクチュエータを生産できるようにしたものであり、この方法によれば、アクチュエータの加工および加工後の形状記憶熱処理を1本ごとに行う必要がなく、コストが下がる。
また、曲面形状を記憶させてから引き延ばしたSMAシートを上記の方法で加工し、需要の大きい超微細径の能動カテーテルを低コストで生産する方法(特願2001−358453号参照) も提案されている。
【0005】
しかしながら、上記の方法を用いても、アクチュエータ作製後に、細管一本毎にアクチュエータを位置あわせして固定する組立工程が必要である。アクチュエータの位置あわせには、精密さが要求され、低コスト化、ひいては信頼性向上のためには、この組立工程の簡素化が望まれる。
【0006】
図10は従来法(特願2001−358453号)による、能動細管作製工程の例を示す図である。
曲面形状を記憶させてから引き延ばしたSMAシート101を形成し、シート101の裏面にダミー金属層102を形成し、SMAシート101の表面に平板状ジグザグばね型のアクチュエータの形状を有するレジストパターン103を形成し、レジストパターン103をマスクとして電解エッチングして平板状ジグザグばね型のアクチュエータ104を形成し、細管105の先端部分に複数のアクチュエータ104の両端104a,104bを固定して装着する。図に示した例では3本のアクチュエータ104を装着する場合を示しており、3本のアクチュエータ104を等間隔に配列しなければならない。なお、図において、106,107,108はアクチュエータに電流を流すための電流端子である。
細管径が0.5mmφといった微細能動細管の場合には、組立工程に特殊な装置、治具を必要とし、これらの装置、治具を使用しても組立てに時間がかかり、コストが下がらないと共に、信頼性上の問題が発生しやすい。
【0007】
このように、従来の能動細管においては、能動細管一本毎に複数のアクチュエータを精密な位置あわせをして組み立てる工程を必要とし、このためコストが高くなると共に、信頼性が十分でないという課題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記課題に鑑み本発明は、能動細管一本毎にアクチュエータを位置あわせして組み立てる工程を必要としない形状記憶合金パイプ型アクチュエータの作製方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の形状記憶合金パイプ型アクチュエータの作製方法は、形状記憶合金パイプに形状記憶する工程と、形状記憶された形状記憶合金パイプの内面にダミー金属層を形成する工程と、ダミー金属層を形成した形状記憶合金パイプの表面にレジストパターンを形成する工程と、レジストパターンを形成した形状記憶合金パイプを電解エッチングする工程と、電解エッチングした形状記憶合金パイプからダミー金属層を除去する工程とからなることを特徴とする。
ここで、形状記憶合金パイプに形状記憶する工程は、形状記憶合金パイプを形状記憶合金の変態点温度以上に加熱して形状を記憶させ、形状記憶合金の変形温度より低温で引き延ばす。
また、形状記憶合金パイプの内面にダミー金属層を形成する工程は、形状記憶合金パイプ内に無電解メッキ液を圧送して行う無電解メッキによることを特徴とする。
また、形状記憶合金パイプの表面にレジストパターンを形成する工程は、アクチュエータ部のパターンを有するマスクを用い、アクチュエータ部毎に形状記憶合金パイプを回転して露光する非平面露光によることを特徴とする。
さらに、形状記憶合金パイプを電解エッチングする工程は、形状記憶合金の電解エッチング速度がダミー金属の電解エッチング速度よりも大きい電解エッチング液を用いることを特徴とする。
上記の方法により作製された形状記憶合金パイプ型アクチュエータは、アクチュエータ部と、アクチュエータ部の両端を固定し且つアクチュエータ部を細管に固定する固定部がパイプ状の一体物で構成される。
この形状記憶合金パイプ型アクチュエータは、上記の形状記憶合金パイプ型アクチュエータを複数連結することが可能である。
上記構成によれば、アクチュエータ部と、アクチュエータ部を細管に固定する固定部がパイプ状の一体物であるので、アクチュエータを細管に位置あわせして固定する組立工程を必要とせず、パイプの内径を細管の外径に応じて設計すれば、細管に挿入し固定するだけで能動細管を作製でき、従って低コストで提供できる。また、アクチュエータ部と、アクチュエータ部を細管に固定する固定部が一体物であるので信頼性が高い。また、アクチュエータの表面形状が細管の外形に沿った円筒形状をなしているために、カテーテルに使用した場合には、血管壁を傷つけることが無く、安全性が高い。
そして、上記の形状記憶合金パイプ型アクチュエータを複数連結した形状記憶合金パイプ型アクチュエータは、多関節型能動細管のアクチュエータとして使用できる。
【0011】
上記構成によれば、形状記憶合金パイプを形状記憶合金の変態点温度以上に加熱して形状を記憶させ、形状記憶合金の変形温度より低温で引き延ばし、以後の工程を変形温度より低い温度で行うから、工程中に形状記憶合金パイプが変形することが無く、以後の工程を容易に、かつ、精度良く行うことができる。
無電解メッキは、メッキ液を形状記憶合金パイプ内に圧送して行うから、形状記憶合金パイプ内に均一にダミー金属層を形成することができる。
レジストパターンの形成は、アクチュエータ部のパターンを有するマスクを用い、アクチュエータ部毎に形状記憶合金パイプを回転して露光する非平面露光であるから、形状記憶合金パイプの周囲に沿って複数のアクチュエータ部のレジストパターンを精度良く形成できる。
電解エッチングの電解エッチング液には、形状記憶合金の電解エッチング速度がダミー金属の電解エッチング速度よりも大きい電解エッチング液を用いるので、細管の内径が細い場合でも形状記憶合金層の貫通後にダミー金属層が残留し、パターン精度良くエッチングすることができる。
上記工程によって、アクチュエータ部とアクチュエータ部を細管に固定する固定部がパイプ状の一体物で構成された形状記憶合金パイプ型アクチュエータが完成する。
形状記憶合金パイプ型アクチュエータを細管に挿入し、接着剤等で固定するだけなので、個々のアクチュエータを細管の周囲に等間隔で精密に位置あわせして固定する工程が無くなり、従って、低コストで作製できる。
また、アクチュエータ部とアクチュエータ部を細管に固定する固定部がパイプ状の一体物であるので信頼性が高い。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は本発明の形状記憶合金パイプ型アクチュエータの構成を示す図である。図1(a)において、形状記憶合金パイプ型アクチュエータ1は、アクチュエータ部2と、アクチュエータ部2の両端2a,2bを固定し且つアクチュエータ部2を細管3に固定する固定部4がパイプ状の一体物で構成されている。すなわち、アクチュエータ部2と固定部4の表面及び裏面は、同一のパイプの表面及び裏面を形成するように構成されている。
アクチュエータ部2は単数であっても良く、また、複数であっても良い。また、アクチュエータ部2の形状記憶は、長手方向の伸縮であっても、面に沿った湾曲であっても良い。形状記憶合金(以後、SMAと称する)は好ましくは、NiTi系合金である。
図1の例は、3本のアクチュエータ部2を有し、固定部4をグランド端子5とし、各々のアクチュエータ部2の中点に電流供給端子6,7,8を設け、電流供給端子6,7,8を選択することによって特定のアクチュエータ部2を加熱して伸縮させ、その方向に細管3の先端を曲げる例を示している。図1(b)に等価回路を示す。
なお、本発明の形状記憶合金パイプ型アクチュエータを複数連結した形状記憶合金パイプ型アクチュエータの構成は、図1に示した構成を直列に連結したものであり、図1と同等な構成であるので説明を省く。
【0013】
この構成によれば、形状記憶合金パイプ型アクチュエータ1を細管3に取り付けて能動細管を作製する際に、細管3を挿入して固定するだけでよく、従来法のようにアクチュエータの取り付け位置の精密な位置あわせを必要としないから、低コストで能動細管を作製できる。また、アクチュエータ部2と固定部4が一体物なので、アクチュエータ部2と固定部4の位置あわせ不良や接着不良といった不良が生じることが無く、極めて信頼性が高い。また、アクチュエータの表面形状が細管の外形に沿った円筒形状をなしているために、カテーテルに使用した場合には、血管壁を傷つけることが無く、安全性が高い。
【0014】
次に、本発明の形状記憶合金パイプ型アクチュエータの製造方法を図2〜5に基づいて説明する。以下に説明する工程においては、形状記憶処理工程以外は、SMAの変形温度より低い温度で行う。
図2は本発明の形状記憶合金パイプ型アクチュエータ1の製造方法を示す図である。
はじめに、形状記憶処理したSMAパイプ21の内壁に無電解メッキを行う。図2(a)は、形状記憶処理したSMAパイプ21の内壁に無電解メッキによって、ダミー金属層22を形成した状態を示している。
図3は、SMAパイプ21の内壁に無電解メッキする方法の一例を示す図である。SMAパイプ21の両端21a,21bをシリコンチューブ等の不活性且つ絶縁性のチューブ31に挿入し、これらのシリコンチューブ31を介してチューブポンプ32で無電解メッキ液33を循環、圧送する。電解メッキでは、SMAパイプ21の両端21a,21b付近のメッキ速度が速く、SMAパイプの両端21a,21bの入り口が塞がれてしまい、SMAパイプ21の内壁に均一にダミー金属層22を形成することができない。しかし、無電解メッキではSMAパイプ21の内壁に均一にダミー金属層22を形成することができ、また、無電解メッキ液33を循環、圧送することによって、ダミー金属層22の厚みの均一度が向上する。
【0015】
次に、SMAパイプ21の表面にレジスト23を塗布し、図2(b)に示すように、フォトリソグラフィー工程によりアクチュエータ部2のレジストパターン25を形成する。レジストの塗布は、例えば、ディップコート法を使用する。図2(b)は、SMAパイプ21の内壁に均一にダミー金属層22を形成したSMAパイプ21にレジスト23を塗布し、アクチュエータ部2と固定部4のパターンを有するマスク24を介して紫外線投影露光を行う工程を示している。図の例は、アクチュエータ部2を3個有する場合の露光方法を示しており、SMAパイプ21を回転して120度毎に3回の露光を行い、3個のアクチュエータ部2と円筒状の固定部4を有するレジストパターン25を形成する。この後、レジスト硬化処理を行う。
【0016】
次に、レジストパターン25をマスクとしてSMAパイプ21を電解エッチングする。
図2(c)は、レジストパターン25を形成したSMAパイプ21を電解エッチングした後の、ダミー金属層22上にSMAからなるアクチュエータ部2が形成された状態を示している。
ここで、図4は図2(c)によりSMAパイプ21を電解エッチングする際の電解エッチング方法の一例を示す図である。レジストパターン25を形成したSMAパイプ21の先端、及び電解液に接触する不要部分を絶縁物41で覆い、対向電極42はステンレス網等の多孔質の円筒でSMAパイプ21を対称性良く覆うことでエッチング速度のばらつきを押さえることができる。
電解液43は、SMAのエッチング速度がダミー金属22のエッチング速度よりも大きいことが望ましい。細管3の外径が細いためにSMAパイプ21の内径が細く、金属ダミー層22を厚く形成できない場合にも、SMAのエッチング速度がダミー金属22のエッチング速度よりも大きいので、電解エッチングがSMAを貫通した後も金属ダミー層22が残留し、SMAのエッチングを精度良く行うことができる。
【0017】
図5は電解エッチング後のエッチング状態を模式的に示したものであり、SMAパイプ21の断面形状を示している。図に示すように、電解エッチングは化学エッチングに比べサイドエッチング量が少なく、また、ダミー金属層22に十分貫通するまでエッチングを行うことによって、場所によるエッチング深さのばらつきを吸収できる。
【0018】
次に、残留しているダミー金属層22を化学エッチングによって剥離する。図2(d)は、ダミー金属層22をエッチングによって剥離した状態を示しており、形状記憶合金パイプ型アクチュエータの完成状態を示している。
【0019】
次に、本発明の実施例を示す。
試作した形状記憶合金パイプ型アクチュエータの構造は、図1と同等である。外径約600μm 、内径約500μm のSMAパイプ内に、ジグザグバネ型のアクチュエータ部が3本形成されており、これらのアクチュエータ部は両端の固定部で連結されている。このアクチュエータをカテーテルに装着し、図1(b)に示すように3本のアクチュエータに独立に通電加熱することによって、多方向への曲げが可能となる。本アクチュエータを長手方向に複数連結したような構造にすれば、多関節の曲げ機構も実現可能である。
【0020】
次に、本発明の実施例による具体的な作製工程の一例を示す。
作製工程は図2に示した工程と同等である。SMAパイプは、NiTi形状記憶合金からなるパイプを使用した。ダミー金属層の無電解メッキは、銅メッキで行った。
SMAパイプの形状記憶工程で生成した表面の酸化被膜のうち、SMAパイプ内面の被膜については超音波洗浄器中でフッ硝酸液に浸漬して除去し、SMAパイプ外側の被膜は機械的に研磨して除去した。SMAパイプ内壁に触媒処理を行った後に無電解銅めっき膜を数μm形成した。パイプ内壁への処理は、図3に示したようにSMAパイプをシリコーンチューブに挿入し、溶液をパイプ内にフローさせて行った。
【0021】
次に、ポジレジスト(東京応化工業, OFPR800)をディップコートし、パイプを120°回転させながら、アクチュエータ部1本分のパターンの投影露光を3回行うことにより、SMAパイプ外周に3本分のレジストパターンを形成し、エッチング耐性を得るために、200℃、60分のハードベークを行った。次に、SMAパイプ層を貫通し、内側の無電解銅めっき層の途中まで電解エッチングを行った。SMAと銅のエッチング速度差を得やすいLiCl・エタノールを電解液に用いた。
【0022】
続いて、レジストを除去し、濃硝酸に浸漬して銅めっき層を選択除去し、形状記憶合金パイプ型アクチュエータを完成した。
【0023】
次に、作製工程をさらに詳しく説明する。
(1)SMAパイプ内面へのダミー金属層の形成について。
SMA層を電解エッチングで均一に貫通加工するためには、貫通加工する裏側に銅やニッケルのダミー金属層を設けておく必要がある。パイプ形状のSMA材料を外側から貫通加工する場合には、図5に示したように、パイプ内壁へのダミー金属の形成が必要となる。細いパイプの内壁に均一な金属層を形成するために、図3に示したように、SMAパイプをシリコーンチューブに挿入し、無電解メッキ溶液を圧送することにより無電解メッキを行った。電気めっきの場合には、SMAパイプの端部分の成長速度が高く、パイプ内全体に十分な膜厚が成長する前に、成長した銅めっき膜によってパイプの端が閉じてしまった。なお、この現象は、溶液の圧送方向を逆転させても同様であり、電流密度等のメッキ条件を変えて実験を行った範囲内では、この現象を回避することは出来なかった。無電解メッキ法を用いた場合には、パイプ内壁の全体に比較的均一に成長しやすく、50℃、12時間で約3〜7μmの膜厚を得ることが出来た。
【0024】
(2)SMAパイプ表面へのフォトレジストパターンの形成について。
投影露光によるパイプ表面へのパターン形成の寸法精度などの評価を行った。図6は、投影露光によるパイプ表面へのパターン形成の寸法精度評価方法を示す図である。図6(a)に示すようにパイプの長手方向に平行(パターンA)および垂直( パターンB) なストライプのパターニングを行った。粘度を調整したポジレジスト(東京応化工業、OFPR800)をディップコーティングし、ベーク後で約5μmのレジスト膜厚が得られるようにした。フォトマスクとSMAパイプを密着させ、露光を行い、現像およびベーク後に、パターンAおよびBの場合のライン幅およびスペース幅を調べた。図6(b)に示した入射角(θ)を関数としてパターン幅を測定した。
【0025】
図7はパターン幅の測定結果を示す図である。図において、記号●(黒丸)、■(黒四角)はそれぞれ、Line幅及びSpace幅の測定値であり、実線及び破線はそれぞれ、入射角(θ)からcos則に基づいて計算される理論パターン幅である。図7(a)及び図7(b)はそれぞれ、パターンA及びパターンBに対応する。
図から明らかなように、パターンAでは、図7(a)に示したように、45°近い入射角まではラインおよびスペースともcos則通りの幅でパターニングすることが可能であった。さらに大きい入射角度では、次第にレジストの抜けが悪くなり、スペース幅がcos則よりも狭くなった。入射角度が大きい領域ではパターンの解像度が低下したが、少なくとも60°近くまでは、実用的な解像度でパターンを形成することができた。
パターンBでは、図7(b)に示したように、50°を超える入射角までラインおよびスペース幅とも一定であり、さらに大きな角度になると急激にスペースが狭くなった。
【0026】
この実験に用いたのは汎用の露光光源であり、特に投影露光用に光の平行度などを調整したものではないが、上記のパターニングが可能であった。3本のアクチュエータ部をパイプ内に形成するためには、最大でも入射角度60°以内でパターン形成できれば良いので、今回用いた投影露光法でも十分なパターニングが可能であることがわかった。SMAパイプの回転とフォトマスクの平行移動を同期させ、SMAパイプを回転させながら露光する転動露光法などの手法を用いれば、大きな入射角度域でのパターン精度低下の問題もなく、さらに精度良くパターニングが可能になるものと考えられる。
【0027】
図8は、試作した形状記憶合金パイプ型アクチュエータのレジストパターン形成後の状態を示す図である。ジグザグばね状のアクチュエータ部のLine/Spaceは130μm/30μmである。後の電解エッチングの際の電解液中のエタノールに対する耐性を向上させるために、現像後に200℃、60分のポストベークを行っているので、レジストパターンのエッジ部がだれたプロファイルになっているが、レジストパターン底面部のパターン寸法はポストベーク前後で変化はない。
【0028】
(3)SMAパイプの電解エッチングについて。
SMAパイプの電解エッチングの装置構成は図4に示した構成と同等である。SMAパイプの先端部および根元部のパターニングしない箇所をレジストで絶縁カバーし、円筒型の対向電極42(SUS304)の中心軸に位置させて電解液中に浸漬した。LiCl・エタノール電解液中で、両極間にDC8Vを印加して、SMAを電解エッチングした。LiCl・エタノール電解液を用いたエッチングでは、SMAパイプ貫通後の銅ダミー層のエッチング速度が低い特徴があり、比較的薄い銅層でもダミー層として使用可能であり、パイプ内面へのダミー層の厚膜形成が困難である場合には、有効なエッチング用電解液である。液はスターラーで攪拌した。
【0029】
図9は試作した形状記憶合金パイプ型アクチュエータの、電解エッチング後(図9(a)、ただしレジスト剥離後)、ダミー銅層の除去後(図9(b),図9(c))のSEM写真である。
銅のダミー層は、濃硝酸に浸漬することにより、容易に選択的に除去することができる。電解エッチング後のアクチュエータ部のLine幅は、Top部で約50μm、Bottom部で約75μmであり、良好なアクチュエータを作製することができた。
【0030】
なお、上記説明では、単一の形状記憶合金パイプ型アクチュエータの作製方法について説明したが、複数の形状記憶合金パイプ型アクチュエータが連結した多関節型の形状記憶合金パイプ型アクチュエータを作製する場合は、レジストパターンを形成するマスクに連結型のアクチュエータ・パターンを有するマスクを使用すればよく、他の工程は同一でよい。
【0031】
【発明の効果】
以上の説明から理解されるように、本発明によれば、能動細管一本毎にアクチュエータを位置あわせして組み立てる工程を必要としないので、低コストで能動細管を提供することができる。また、アクチュエータ部と取付部が一体物であるので信頼性及び安全性が高い能動細管が提供される。従って、本発明を医療用の使い捨て能動カテーテルに適用すれば極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の形状記憶合金パイプ型アクチュエータの構成を示す図である。
【図2】本発明の形状記憶合金パイプ型アクチュエータの製造方法を示す図である。
【図3】SMAパイプの内壁に無電解メッキする方法の一例を示す図である。
【図4】電解エッチング方法の一例を示す図である。
【図5】電解エッチング後のエッチング状態を模式的に示したものであり、SMAパイプの断面形状を示している。
【図6】投影露光によるパイプ表面へのパターン形成の寸法精度評価方法を示す図である。
【図7】パターン幅の測定結果を示すグラフである。
【図8】試作した形状記憶合金パイプ型アクチュエータのレジストパターン形成後の状態を示す図である。
【図9】試作した形状記憶合金パイプ型アクチュエータの、(a)は電解エッチング後の状態(ただしレジスト剥離後)の、また、(b)及び(c)はダミー銅層の除去後のSEM写真である。
【図10】従来法による能動細管作製工程の例を示す図である。
【符号の説明】
1 形状記憶合金パイプ型アクチュエータ
2 アクチュエータ部
2a,2b アクチュエータ部の両端
3 細管
4 固定部
5 GND端子
6,7,8 電流供給端子
21 SMAパイプ
21a,21b SMAパイプの両端
22 ダミー金属層
23 レジスト
24 マスク
25 レジストパターン
31 シリコンチューブ
32 循環ポンプ
33 無電解メッキ液
41 絶縁被膜
42 対抗電極
43 電解エッチング液
Claims (4)
- 形状記憶合金パイプに形状記憶する工程と、
形状記憶された形状記憶合金パイプの内面にダミー金属層を形成する工程と、
ダミー金属層を形成した形状記憶合金パイプの表面にレジストパターンを形成する工程と、
上記レジストパターンを形成した形状記憶合金パイプを電解エッチングする工程と、
電解エッチングした形状記憶合金パイプからダミー金属層を除去する工程と、
からなることを特徴とする、形状記憶合金パイプ型アクチュエータの作製方法。 - 前記形状記憶合金パイプの内面にダミー金属層を形成する工程は、形状記憶合金パイプ内に無電解メッキ液を圧送して行う無電解メッキによることを特徴とする、請求項1に記載の形状記憶合金パイプ型アクチュエータの作製方法。
- 前記形状記憶合金パイプの表面にレジストパターンを形成する工程は、アクチュエータ部のパターンを有するマスクを用い、アクチュエータ部毎に形状記憶合金パイプを回転して露光する非平面露光によることを特徴とする、請求項1に記載の形状記憶合金パイプ型アクチュエータの作製方法。
- 前記形状記憶合金パイプを電解エッチングする工程は、形状記憶合金の電解エッチング速度がダミー金属の電解エッチング速度よりも大きい電解エッチング液を用いることを特徴とする、請求項1に記載の形状記憶合金パイプ型アクチュエータの作製方法。
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