JP4002737B2 - 自動変速機の変速制御装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動変速機におけるとくにアップシフト時の制御にかかる油圧制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
車両用の自動変速機においては、歯車変速機構内に油圧で作動する複数の締結装置を備え、車両の走行状態に応じて所定の変速段が選択されて、締結装置の締結・解放状態が切換えられてギヤ比が変化する。すなわち、図12に示すようにアクセルペダルの操作に基づくスロットルバルブの開度(スロットル開度TVO)と車速Nsの関係で示される変速線Lが設定され、走行状態がこの変速線Lを横切って変化すると変速段を切り替えることになる。
【0003】
例えば、矢示aのようにスロットル開度TVOがほぼ一定、あるいは緩やかな変化をしている状態で車速が増大すると、アップシフトの変速指令に基づいて締結装置への油圧が制御される。スロットル開度がほぼ一定あるいは緩やかな変化状態でのアップシフトをオートアップシフトと呼び、エンジンの状態では例えば回転数3000rpm前後で多く行なわれる。
【0004】
この変速時の油圧制御は、歯車変速機構の入力トルクの増大に応じて油圧を上昇させるオープン制御と変速の推移に応じたフィードバック制御を組み合わせて行なわれている。フィードバック制御は、変速の間に歯車変速機構の出力軸トルクが大きく変化してショックが発生するのを防止する目的で、変速前の変速段のギヤ比から変速後の変速段のギヤ比に切り替わる過程での目標ギヤ比を設定して、この目標ギヤ比に沿わせるようにする。
【0005】
図13は上記オートアップシフト時のギヤ比、歯車変速機構の出力軸トルク、および指令油圧の関係を示す。
第1の変速段から第2の変速段への変速指令があると、スタンバイフェーズ後のイナーシャフェーズにおける指令油圧として、まずそのときの入力トルクに基づいた傾斜をもつオープン制御成分POPが設定される。このオープン制御成分によるギヤ比の変化は図13の(a)に破線で示すようなものとなるが、(b)に示す出力軸トルクの変化量(段差)を所定量Bに抑えてトルク変化のエネルギーを吸収するために、目標ギヤ比が(a)に実線で示すように設定される。
指令油圧は、図13の(c)に示すように、上記目標ギヤ比に沿わせるフィードバック制御成分PFBでオープン制御成分POPを補正した値Pcとなる。
これにより、途中の大きな出力軸トルク変化が抑えられ、ショックのない変速が得られる。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来、このオープン制御とフィードバック制御を組み合わせた油圧制御は、変速に際して一律に行なわれているので、オートアップシフト時には上述のようにショックが有効に防止されるにもかかわらず、異なる変速状況下ではショックを招いてしまうという問題がある。
すなわち、第1の変速段から第2の変速段へのアップシフトは、アクセルペダルを踏込んでいた足を戻して、図12に矢示bで示すように、スロットル開度TVOが変速線Lを越えて変化した場合にも発生する。
この足戻しアップシフトはオートアップシフトに比較してエンジンの高回転側、例えばエンジン回転数6000rpm前後から開始する例も多い。
【0007】
この場合、スロットル開度TVOの低下により入力トルクが減少して、オープン制御成分POPの傾斜が小さくなり、油圧上昇の速度が低く、さらに回転が大きいためもあって、これによるギヤ比は、図14の(a)に破線で示すように変化し、変速が遅れ傾向となる。
このため、図14の(c)に示すように、実線で示す目標ギヤ比に沿わせるフィードバック制御成分PFBでオープン制御成分POPを補正した指令油圧Pcは、オープン制御のみに比較して大きくなる。
【0008】
この間の歯車変速機構の出力軸トルクは、図14の(b)に示すように、時刻t0で始まるイナーシャフェーズの変速初期におけるオープン制御の傾斜が小さいために、緩やかな上昇で始まり、後半から終期にかけては急上昇する。これは、オートアップシフト時と入力トルクが同一であったとすれば、吸収すべきトルク変化のエネルギーは同じであるから、変速初期に吸収できなかったエネルギー分が後半で吸収されねばならないからである。
この結果、変速完了時点t1における出力軸トルクの段差がとくに大きくなってショックを発生させる。
したがって本発明は、上記の問題点に鑑み、足戻しアップシフト時にもショックを発生させないようにした自動変速機の変速制御装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1の本発明は、歯車変速機構に締結装置を備え、第1の変速段から高速側の第2の変速段へ変速するアップシフト時に、当該アップシフトに関わる締結装置への指令油圧を、入力トルクに基づいて傾斜を定めるオープン制御の成分と目標ギヤ比に対するフィードバック制御の成分とで形成する自動変速機において、スロットル開度が低減する足戻しアップシフト時のスロットル開度の変化量が所定のしきい値以上であるときは、フィードバック制御の成分を低下させるものとした。
【0010】
請求項2の発明は、とくにスロットル開度の変化量のしきい値が、変速の種類に応じて低速段間の変速では小さく、高速段間の変速では大きく設定されているものとした。
請求項3の発明は、スロットル開度の変化量のしきい値が、エンジン回転数またはタービン回転数が大きいほど小さく設定されているものとした。
【0011】
請求項4の発明は、歯車変速機構に締結装置を備え、第1の変速段から高速側の第2の変速段へ変速するアップシフト時に、当該アップシフトに関わる締結装置への指令油圧を、入力トルクに基づいて傾斜を定めるオープン制御の成分と目標ギヤ比に対するフィードバック制御の成分とで形成する自動変速機において、目標ギヤ比の傾斜を、スロットル開度が低減する足戻しアップシフト時のスロットル開度の変化量が大きいほど小さくなるように設定するものとした。
【0012】
請求項5の発明は、請求項4の発明において、目標ギヤ比の傾斜がさらに変速の種類に応じて低速段間の変速では小さく、高速段間の変速では大きく設定されているものとした。
請求項6の発明は、請求項4の発明において、目標ギヤ比の傾斜がさらにエンジン回転数またはタービン回転数が大きいほど小さく設定されているものとした。
【0013】
請求項7の発明は、歯車変速機構に締結装置を備え、第1の変速段から高速側の第2の変速段へ変速するアップシフト時に、当該アップシフトに関わる締結装置への指令油圧を、入力トルクに基づいて傾斜を定めるオープン制御の成分と目標ギヤ比に対するフィードバック制御の成分とで形成する自動変速機において、フィードバック制御のゲインを、スロットル開度が低減する足戻しアップシフト時のスロットル開度の変化量が大きいほど小さくなるように設定するものとした。
【0014】
請求項8の発明は、請求項7の発明において、フィードバック制御のゲインがさらに変速の種類に応じて低速段間の変速では小さく、高速段間の変速では大きく設定されているものとした。
請求項9の発明は、請求項7の発明において、フィードバック制御のゲインがさらにエンジン回転数またはタービン回転数が大きいほど小さく設定されているものとした。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を実施例により説明する。
図1は第1の実施例にかかる自動変速機を備えた車両の駆動系を示す図である。
トルクコンバータ3と歯車変速機構4とからなる自動変速機2がエンジン1に接続され、歯車変速機構4の出力は、図示しない差動・終減速機を経て車輪に伝達される。
歯車変速機構4は油圧で作動する複数の図示しない締結装置を備え、締結装置の締結・解放の組合せを切り替えることにより回転の伝達経路を切り替え、所定の複数の変速段を実現する。
変速制御用のコントロールバルブ7は上記締結装置への油圧を制御する複数のソレノイド8(8a〜8c)を備えている。
【0016】
エンジン1を制御するエンジンコントローラ10には、スロットルセンサ13とエンジン回転センサ14が接続され、アクセルペダル11の操作に基づいて開閉するエンジン1のスロットルバルブ12の開度(スロットル開度TVO)信号とエンジン出力軸の回転数(エンジン回転数Ne)信号が入力され、エンジンコントローラ10はこれらの信号に基づいて、要求されるエンジントルクTeを求め、エンジン1の燃料噴射量や点火時期を制御する。
【0017】
自動変速機2を制御する変速機コントローラ20には、スロットルセンサ13からのスロットル開度TVOとエンジン回転センサ14からのエンジン回転数Neの各信号が入力されるとともに、エンジンコントローラ10からエンジントルクTeの信号を入力している。
変速機コントローラ20は、さらにタービンセンサ15からのタービン回転数Ntおよび車速センサ16からの車速Nsの各信号を入力し、走行状態に応じた変速指令を生成するとともに、指令油圧を演算してソレノイド8をデューティ制御する。
【0018】
変速機コントローラ20は、エンジン回転数Neとタービン回転数Ntからトルクコンバータ3におけるスリップ率を演算し、エンジンコントローラ10から得るエンジントルクとスリップ率とに基づいて歯車変速機構4への入力トルクを求める。
そして、この入力トルクに基づいて、指令油圧のオープン制御成分POPの傾斜を設定する。この傾斜はあらかじめマップとして準備しておき、入力トルクに対応する値を読み出すことができる。
【0019】
さらに、歯車変速機構4の出力軸トルクの変化量を所定量に抑えるために、目標ギヤ比を設定し、この目標ギヤ比に沿わせるフィードバック制御成分PFBを演算して、Pc=POP+PFBを指令油圧とする。
変速機コントローラ20は、足戻しによるスロットル開度の変化でアップシフトを行う際、スロットル開度の変化量が所定のしきい値以上となった場合、フィードバック制御を禁止して、指令油圧Pcのフィードバック制御成分PFBを0(ゼロ)にする。
【0020】
変速機コントローラ20におけるアップシフト時の指令油圧制御の流れを、図2のフローチャートにより、図3を参照して説明する。図3の(a)はギヤ比、(b)はスロットル開度、(c)は指令油圧、(d)は変速機出力軸トルクの変化を示す。
変速機コントローラ20は、スロットル開度TVOと車速から、図3の(b)に示す時刻t0において走行状態が変速線を横切ったことを検出すると、まずステップ101において、どの変速段からどの変速段への変速であるか、すなわち例えば第2速から第3速へなど、変速の種類を判断する。
【0021】
ステップ102では、図3の(c)に示すように、スタンバイフェーズとして当該変速において締結される締結装置のプリチャージを開始するとともに、ステップ103において基本アップシフト制御ロジックを開始する。
基本アップシフト制御ロジックは、ギヤ比の変化開始を検出することによりイナーシャフェーズの開始を検知し、イナーシャフェーズ中の基本目標ギヤ比の設定や、ギヤ比から変速終了を検知して指令油圧を最大に戻すなどの制御を行う。なお、ギヤ比はタービン回転数Ntと車速Nsの比で求められる。
【0022】
ステップ104では、指令油圧のオープン制御成分POPを演算する。ここでは、まず歯車変速機構4への入力トルクを求め、この入力トルクに基づいて、あらかじめ設定されたマップから傾斜を読み出して、当該傾斜を有する直線としてオープン制御成分POPを算出する。
【0023】
つぎに、ステップ105において、アクセルペダル11から足戻し前のスロットル開度と足戻し後のスロットル開度の差、すなわちスロットル開度の変化量ΔTVOに対するしきい値TVOthを決定する。
しきい値TVOthは変速の種類に応じて予め設定されており、図4に示すように、第1速から第2速へ(1→2)など低速段間の変速では小さく設定され、例えば第4速から第5速へ(4→5)など高速段間の変速では相対的に大きく設定されている。
これは、低速段間の変速ほどエンジン回転の変化が大きいので、フィードバック制御成分も大きくなり、フィードバックのかけ過ぎにより変速終了時の出力トルクのピークが高くなりやすいことに対応させたものである。
【0024】
ステップ106では、スロットル開度の変化量ΔTVOがしきい値TVOth以上であるかどうかをチェックする。
ステップ101で判断した変速の種類にかかるしきい値TVOthに対して、スロットル開度の変化量ΔTVOが、ΔTVO≧TVOthである場合は、ステップ107に進み、フィードバック制御成分をPFB=0に設定して、フィードバック制御禁止とする。
【0025】
一方、ΔTVO<TVOthのときにはステップ108において、フィードバック制御領域であるイナーシャフェーズに入っているかどうかをチェックする。
イナーシャフェーズに入っているときには、ステップ109に進んで、基本目標ギヤ比に対するフィードバック制御成分PFBを演算する。
また、イナーシャフェーズに入っていないときには、ステップ107へ進んでPFB=0とする。
【0026】
ステップ107およびステップ109のあとは、ステップ110において、オープン制御成分POPにフィードバック制御成分PFBを加えて指令油圧Pcを求める。この指令油圧Pcに基づいてソレノイド8がデューティ制御され、変速の過程が進められる。
イナーシャフェーズにおいて、ステップ110で演算されたフィードバック制御成分PFBを含む指令油圧Pcは、基本アップシフト制御ロジックに従ったもので、図3の(c)に破線で示され、これに対応して(a)、(b)および(d)でも破線で示される。
【0027】
これに対してフィードバック制御成分PFBを0としオープン制御成分POPのみの指令油圧Pcは、(c)に実線で示すように緩やかな上昇となる。この結果(d)に示されるように、歯車変速機構4の出力軸トルクは、フィードバック制御成分PFBを含んでピーク状に突出してショックとなる破線に対して、実線のように低く抑えられ、ショックが発生しない。
変速が終了するまでステップ104以下が繰り返され、ステップ111で変速終了が検知されると本アップシフトの制御は終了する。
【0028】
本実施例は以上のように構成され、指令油圧が入力トルクに対応させて設定されるオープン制御成分POPと目標ギヤ比に対するフィードバック制御成分PFBとからなるアップシフト時の油圧制御において、スロットル開度の変化量ΔTVOが所定のしきい値TVOth以上のときフィードバック制御成分PFBを0にするものとしたので、足戻しアップシフト時に入力トルクの低減によりオープン制御成分POPの傾斜が小さくなるのに対応してフィードバックがかかりすぎてショックが発生する現象が防止される。
【0029】
またとくに、上記のしきい値TVOthを変速の種類に応じて変化させ、低速段間の変速で小さく設定しているので、エンジン回転の変化が大きい低速段間の変速でも確実にショックを防止しながら、速やかなアップシフトが実現する。
【0030】
なお、変形例として、しきい値TVOthを変速の種類に応じて変化させるかわりに、図5に示すように、エンジン回転数Neあるいはタービン回転数Ntが大きい程しきい値TVOthを小さく設定するようにしてもよく、これによっても同様に低速段間の変速を含めた各変速でショックが防止される。
また、上記実施例ではフィードバック制御成分PFBを0(ゼロ)にするものとしたが、完全に0にしなくても、所定量低下させるだけでもよい。
【0031】
つぎに第2の実施例について説明する。これは、足戻しアップシフト時にフィードバック制御を禁止するかわりに、フィードバック制御の目標ギヤ比の傾斜を変化させるようにしたものである。
図6は第2の実施例におけるアップシフト時の指令油圧制御の流れを示すフローチャートである。
ステップ201から204は、前実施例の図2におけるステップ101から104と同じである。
【0032】
ステップ204でオープン制御成分POPを算出したあと、ステップ205では、スロットル開度の変化量ΔTVOに対する目標ギヤ比の傾斜を決定する。
目標ギヤ比の傾斜は、図7に示すように、ΔTVOが大きいほど小さくなるようにあらかじめ設定され、さらに変速の種類に応じて、第1速から第2速へなど低速段間の変速では小さく、例えば第4速から第5速へなど高速段間の変速では相対的に大きく設定されている。
【0033】
ステップ206において、フィードバック制御領域であるイナーシャフェーズに入っているかどうかをチェックする。
そして、イナーシャフェーズに入っているときはステップ207に進んで、ステップ205で決定した傾斜に基づく目標ギヤ比を設定し、当該目標ギヤ比に対するフィードバック制御成分PFBを演算する。
また、イナーシャフェーズに入っていないときには、ステップ208へ進んでPFB=0とする。
【0034】
ステップ207およびステップ208のあとは、ステップ209において、オープン制御成分POPにフィードバック制御成分PFBを加えて指令油圧Pcを求める。この指令油圧Pcに基づいてソレノイド8がデューティ制御され、変速の過程が進められる。
変速が終了するまでステップ204以下が繰り返され、ステップ210で変速終了が検知されると本アップシフトの制御は終了する。
その他の構成は前実施例と同じである。
【0035】
本実施例は以上のように構成され、スロットル開度の変化量ΔTVOの大きさにより目標ギヤ比の傾斜を変化させ、ΔTVOが大きいほどその傾斜を小さくするものとしたので、スロットル開度の変化が大きい足戻しアップシフト時に、フィードバックがかかりすぎることがないので、ショックが発生する現象が防止される。
【0036】
また、上記の目標ギヤ比の傾斜はさらに変速の種類に応じても変化させ、低速段間の変速でとくに小さく設定しているので、エンジン回転の変化が大きい低速段間の変速でも確実にショックが防止される。
【0037】
なお、変形例として、目標ギヤ比の傾斜を変速の種類に応じて変化させるかわりに、図8に示すように、エンジン回転数Neあるいはタービン回転数Ntが大きい程目標ギヤ比の傾斜を小さく設定するようにしてもよく、これによっても同様に低速段間の変速を含めた各変速でショックが防止される。
【0038】
つぎに第3の実施例について説明する。これは、足戻しアップシフト時にフィードバック制御を禁止するかわりに、フィードバック制御のゲインを変化させるようにしたものである。
図9は第3の実施例におけるアップシフト時の指令油圧制御の流れを示すフローチャートである。
ステップ301から304は、第1の実施例の図2におけるステップ101から104と同じである。
【0039】
ステップ304でオープン制御成分POPを算出したあと、ステップ305では、スロットル開度の変化量ΔTVOに対するフィードバック制御のゲインを決定する。
フィードバック制御のゲイン(F/B制御ゲイン)は、図10に示すように、ΔTVOが大きいほど小さくなるようにあらかじめ設定され、さらに変速の種類に応じて、第1速から第2速へなど低速段間の変速では小さく、例えば第4速から第5速へなど高速段間の変速では相対的に大きく設定されている。
【0040】
ステップ306において、フィードバック制御領域であるイナーシャフェーズに入っているかどうかをチェックする。
そして、イナーシャフェーズに入っているときはステップ307に進んで、ステップ305で決定したゲインにしたがって基本目標ギヤ比に対するフィードバック制御成分PFBを演算する。
また、イナーシャフェーズに入っていないときには、ステップ308へ進んでPFB=0とする。
【0041】
ステップ307およびステップ308のあとは、ステップ209において、オープン制御成分POPにフィードバック制御成分PFBを加えて指令油圧Pcを求める。この指令油圧Pcに基づいてソレノイド8がデューティ制御され、変速の過程が進められる。
変速が終了するまでステップ304以下が繰り返され、ステップ310で変速終了が検知されると本アップシフトの制御は終了する。
その他の構成は第1の実施例と同じである。
【0042】
本実施例は以上のように構成され、スロットル開度の変化量ΔTVOの大きさによりフィードバック制御のゲインを変化させ、ΔTVOが大きいほどそのゲインを小さくするものとしたので、スロットル開度の変化が大きい足戻しアップシフト時に、フィードバックがかかりすぎることがないので、ショックが発生する現象が防止される。
【0043】
また、上記のフィードバック制御のゲインはさらに変速の種類に応じても変化させ、低速段間の変速でとくに小さく設定しているので、エンジン回転の変化が大きい低速段間の変速でも確実にショックが防止される。
【0044】
なお、変形例として、フィードバック制御のゲインを変速の種類に応じて変化させるかわりに、図11に示すように、エンジン回転数Neあるいはタービン回転数Ntが大きい程フィードバック制御のゲインを小さく設定するようにしてもよく、これによっても同様に低速段間の変速を含めた各変速でショックが防止される。
【0045】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明は、アップシフト時の締結装置への指令油圧を、入力トルクに基づいて傾斜を定めるオープン制御の成分と目標ギヤ比に対するフィードバック制御の成分とで形成する自動変速機において、アップシフト時のスロットル開度の変化量が所定のしきい値以上であるときには、フィードバック制御の成分を低下させるものとしたので、スロットル開度が大きく低減する足戻しアップシフト時の入力トルク低減の結果、小さくなるオープン制御成分の傾斜に対応してフィードバックがかかりすぎることによりショックが発生する現象が防止される。
【0046】
フィードバック制御の成分を低下させる代わりに、目標ギヤ比の傾斜を、アップシフト時のスロットル開度の変化量が大きいほど小さくなるように設定するものとしたときにも、スロットル開度の変化が大きい足戻しアップシフト時に、フィードバック量が抑えられるのでショックの発生が防止される。
【0047】
また、フィードバック制御の成分を低下させる代わりに、フィードバック制御のゲインを、アップシフト時のスロットル開度の変化量が大きいほど小さくなるように設定するものとしたときにも、同様にスロットル開度の変化が大きい足戻しアップシフト時に、フィードバック量が抑えられるのでショックの発生が防止される。
【0048】
上記のスロットル開度の変化量のしきい値、目標ギヤ比の傾斜、あるいはフィードバック制御のゲインをさらに変速の種類に応じて低速段間の変速では小さく、高速段間の変速では大きく設定することにより、エンジン回転の変化がとくに大きい低速段間の変速でも確実にショックを防止しながら、速やかなアップシフトが実現する。
また、変速の種類の代わりに、さらにエンジン回転数またはタービン回転数が大きいほどスロットル開度の変化量のしきい値、目標ギヤ比の傾斜、あるいはフィードバック制御のゲインを小さく設定することによっても同様に、低速段間の変速でも確実にショックを防止しながら、速やかなアップシフトが実現する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例にかかる車両の駆動系を示す図である。
【図2】第1の実施例におけるアップシフト指令油圧制御の流れを示すフローチャートである。
【図3】アップシフト制御時の動作状態を示す説明図である。
【図4】スロットル開度の変化量に対するしきい値の設定要領を示す図である。
【図5】変形例におけるしきい値の設定要領を示す図である。
【図6】第2の実施例におけるアップシフト指令油圧制御の流れを示すフローチャートである。
【図7】スロットル開度の変化量に対する目標ギヤ比の傾斜の設定要領を示す図である。
【図8】変形例における目標ギヤ比の傾斜の設定要領を示す図である。
【図9】第3の実施例におけるアップシフト指令油圧制御の流れを示すフローチャートである。
【図10】スロットル開度の変化量に対するフィードバック制御のゲインの設定要領を示す図である。
【図11】変形例におけるフィードバック制御のゲインの設定要領を示す図である。
【図12】変速線の例を示す図である。
【図13】オートアップシフト時の動作状態を示す説明図である。
【図14】従来例における足戻しアップシフト時の動作状態を示す説明図である。
【符号の説明】
1 エンジン
2 自動変速機
3 トルクコンバータ
4 歯車変速機構
7 コントロールバルブ
8a〜8c ソレノイド
10 エンジンコントローラ
11 アクセルペダル
12 スロットルバルブ
13 スロットルセンサ
14 エンジン回転センサ
15 タービンセンサ
16 車速センサ
20 変速機コントローラ

Claims (9)

  1. 歯車変速機構に締結装置を備え、第1の変速段から高速側の第2の変速段へ変速するアップシフト時に、当該アップシフトに関わる締結装置への指令油圧を、入力トルクに基づいて傾斜を定めるオープン制御の成分と目標ギヤ比に対するフィードバック制御の成分とで形成する自動変速機において、
    スロットル開度が低減する足戻しアップシフト時の前記スロットル開度の変化量が所定のしきい値以上であるときは、前記フィードバック制御の成分を低下させることを特徴とする自動変速機の変速制御装置。
  2. 前記スロットル開度の変化量のしきい値が、変速の種類に応じて低速段間の変速では小さく、高速段間の変速では大きく設定されていることを特徴とする請求項1記載の自動変速機の変速制御装置。
  3. 前記スロットル開度の変化量のしきい値が、エンジン回転数またはタービン回転数が大きいほど小さく設定されていることを特徴とする請求項1記載の自動変速機の変速制御装置。
  4. 歯車変速機構に締結装置を備え、第1の変速段から高速側の第2の変速段へ変速するアップシフト時に、当該アップシフトに関わる締結装置への指令油圧を、入力トルクに基づいて傾斜を定めるオープン制御の成分と目標ギヤ比に対するフィードバック制御の成分とで形成する自動変速機において、
    前記目標ギヤ比の傾斜を、スロットル開度が低減する足戻しアップシフト時の前記スロットル開度の変化量が大きいほど小さくなるように設定することを特徴とする自動変速機の変速制御装置。
  5. 前記目標ギヤ比の傾斜がさらに変速の種類に応じて低速段間の変速では小さく、高速段間の変速では大きく設定されていることを特徴とする請求項4記載の自動変速機の変速制御装置。
  6. 前記目標ギヤ比の傾斜がさらにエンジン回転数またはタービン回転数が大きいほど小さく設定されていることを特徴とする請求項4記載の自動変速機の変速制御装置。
  7. 歯車変速機構に締結装置を備え、第1の変速段から高速側の第2の変速段へ変速するアップシフト時に、当該アップシフトに関わる締結装置への指令油圧を、入力トルクに基づいて傾斜を定めるオープン制御の成分と目標ギヤ比に対するフィードバック制御の成分とで形成する自動変速機において、
    前記フィードバック制御のゲインを、スロットル開度が低減する足戻しアップシフト時の前記スロットル開度の変化量が大きいほど小さくなるように設定することを特徴とする自動変速機の変速制御装置。
  8. 前記フィードバック制御のゲインがさらに変速の種類に応じて低速段間の変速では小さく、高速段間の変速では大きく設定されていることを特徴とする請求項7記載の自動変速機の変速制御装置。
  9. 前記フィードバック制御のゲインがさらにエンジン回転数またはタービン回転数が大きいほど小さく設定されていることを特徴とする請求項7記載の自動変速機の変速制御装置。
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