JP4001994B2 - 電力系統の想定事故安定度評価方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、電力系統の安定度を監視あるいは評価する方法の改良に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
系統内に発電機を有する電力系統に何らかの事故あるいは異常(例えば短絡、地絡、遮断など)が生じたとき、当然ながら保護システムが作動してこれらの事故部分あるいは異常部分は系統から切離される(以後事故除去と言う)。しかし事故の影響は例えば発電機の揺籃として系統内に残るので、前記事故除去後に、この系統がどの程度安定であるかを評価することが必要である。この評価方法として、従来、いわゆる等面積法、又はPEBS法(Potential Energy Boundary Surface)と呼ばれる方法が用いられている。
【0003】
図8は等面積法を用いて系統の安定度を評価する評価システム(システムの構成そのものは図示しないが、一般には計算機である)の動作フローチャートである。
図8において、S10は想定事故ケース入力ステップ(以下入力ステップという)であり、想定する事故の条件を入力する。S11は入力ステップS10で入力した想定事故に対し、等面積法によって系統の安定度を算定する計算ステップである。
【0004】
ここで、事故後軌跡は発電機端子まで縮約されたアドミッタンスと発電機内部電圧を用いて求める。そのため使用する系統モデルは事前に単純化しておく必要がある。
S12は計算ステップS11の計算結果に基づき、系統の安定性に支障となりそうな事故ケースを厳重事故として抽出する厳重事故抽出ステップである。
S13は厳重事故抽出ステップS12で抽出した事故ケースに対し、詳細シミュレーションを行って、それぞれの事故の際の安定度を計算ステップS11よりも更に詳細に評価する詳細評価ステップである。
S14は詳細評価ステップS13の結果を出力する評価結果出力ステップである。以上の過程を全ての想定事故について繰返して行う。
【0005】
図9は、もう一つの方法として前述したPEBS法による評価のフローを示すフローチャートである。
図に於いて、S10は図8の入力ステップS10と同じものであるので詳細な説明は省略する。S16は入力ステップS10で入力した想定事故の各々に対し、系統の事故後の軌跡を算定する(積分ステップによるシミュレーションを行う)軌跡算定ステップである。
【0006】
S17は軌跡算定ステップS16によって算定した事故後の系統の軌跡がPEBSと交差するかどうかを判定する判定ステップである。判定ステップS17で軌跡がPEBSと交差しなければ系統が不安定であるから、ステップS18に示すようにシミュレーションを継続し、軌跡がPEBSと交差すれば交差する直前における軌跡算定ステップS16の積分ステップで計算された修正運動エネルギーをエネルギーマージンとして、シミュレーションを終了するとともに、次の想定事故ケースの入力S10へと戻る。安定な場合には運動エネルギーが最小になるまで詳細なモデルによりシミュレーションするのであり、評価精度は高いものの、不安定な場合にはPEBSと交差するまでシミュレーションを続けなければならない。
以上を繰返して全ての想定事故について評価を行う。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来の系統安定度判別方法では、等面積法による場合、一機無限大系統の事故後軌跡は、発電機端子まで縮約されたアドミッタンスと発電機内部電圧を用いて求めるため、単純な発電機と負荷からなる系統モデルしか取扱うことができず、評価精度が高くない。又、等面積法で抽出した厳重事故ケースに対し、再度最初からシミュレーションで評価し直さなければならないため、評価するのに時間がかかる(処理速度が遅い)という問題があった。
【0008】
また、PEBS法を用いる場合、安定な事故ケースに対しても運動エネルギーが最小になるまで詳細なモデルを用いてシミュレーションするので、精度は高いが時間がかかり、不安定な事故ケースに対してはPEBSと交差するまでシミュレーションを続ける必要があるので、全ての想定事故について評価を行うのに多大な時間を要するという問題があった。
【0009】
この発明は上記のような問題点を解消するためになされたもので、複雑な系統を単純化せずに取扱うことができ、評価精度が高く、しかも多くの事故ケースの評価処理に要する時間が従来よりも短くてすむ、動作時間効率のよい系統安定度評価方法を得ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
この発明に係る電力系統の想定事故安定度評価方法は、発電機を含む電力系統上に想定した事故の後の、前記電力系統の安定度を評価する方法であって、想定する事故ケース毎に、前記発電機の動特性を表す微分方程式とこの電力系統の電圧又は電流を表す代数方程式を解くことにより、前記事故後の前記発電機の動揺と前記電力系統のノード電圧を求めて時間領域のシミュレーションを行う手順と、前記シミュレーションで得た前記発電機の状態データを基に、拡張等面積法により前記電力系統の安定度を評価する第1の評価手順と、前記第1の評価手順により安定と評価されなかった事故ケースについて、前記第1の評価手順の終了後に、前記シミュレーションで得た前記発電機の状態データとはタイミングの異なる発電機の状態データを基に、前記電力系統の安定度を評価する第2の評価手順とを含み、かつ、前記第2の評価手順の1件の事故ケースの評価に要する処理時間が前記第1の評価手順による1件の事故ケースの評価に要する処理時間よりも長いものであり、前記第1の評価手順は、前記シミュレーションで得た発電機の状態データを基に、前記発電機の修正運動エネルギーを計算する手順と、前記計算結果に基づき前記電力系統の安定度を判定する手順と、前記判定結果が安定である場合には前記シミュレーションを停止する手順とを含むものであり、前記第2の評価手順は、事故後の軌跡がPEBSと交差するか否かによって系統の安定度を評価することを特徴とする方法である。
【0011】
また、この発明に係る電力系統の想定事故安定度評価方法は、発電機を含む電力系統上に想定した事故の後の、前記電力系統の安定度を評価する方法であって、想定する事故ケース毎に、前記発電機の動特性を表す微分方程式とこの電力系統の電圧又は電流を表す代数方程式を解くことにより、前記事故後の前記発電機の動揺と前記電力系統のノード電圧を求めて時間領域のシミュレーションを行う手順と、前記シミュレーションで得た前記発電機の状態データを基に、拡張等面積法により前記電力系統の安定度を評価する第1の評価手順と、前記第1の評価手順により安定と評価されなかった事故ケースについて、前記第1の評価手順の終了後に、前記シミュレーションで得た前記発電機の状態データとはタイミングの異なる発電機の状態データを基に、前記電力系統の安定度を評価する第2の評価手順とを含み、かつ、前記第2の評価手順の1件の事故ケースの評価に要する処理時間が前記第1の評価手順による1件の事故ケースの評価に要する処理時間よりも長いものであり、前記第1の評価手順は、前記シミュレーションで得た発電機の状態データを基に、系統に接続した複数の発電機をそれぞれの発電機の電圧位相角を基準に2つのグループに分離する手順と、前記2つのグループを2つの発電機に等価し、更に一機無限大系統に等価する手順と、前記発電機の状態データを基に、前記発電機の修正運動エネルギーを計算する手順と、前記一機無限大系統の発電機出力と発電電圧位相の関係曲線(P−δ曲線)を推定する手順と、前記発電機出力と発電電圧位相の関係曲線を用いて求めた減速面積と 前記修正運動エネルギーとを比較し、前記電力系統の安定度を判定する手順と、前記判定結果が安定である場合には前記シミュレーションを停止する手順を含むものであり、前記第2の評価手順は、事故後の軌跡がPEBSと交差するか否かによって系統の安定度を評価することを特徴とする方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1の評価システムの構成の概要を図1に示す。
図1において、21は評価対象である系統内に発電機を有する電力系統(もしくは電力系統のモデル)を示す、22は電力系統21から、評価を行う上で必要な系統の構成データとオンラインデータを収集するデータ収集部で各種のセンサもしくはモデルからのデータ出力装置により構成される。23はデータ収集部22からのデータと図示しない他の情報(例えば需要予測)などに基づいて系統の現在の状態を推定する推定部、24は想定事故ケース入力部で従来の図8、図9の入力ステップS10を実行するものと同じである。25はこの発明による想定事故安定度スクリーニングと評価部、26は安定度制御部、27は出力部である。
【0013】
ただし、安定度制御部26、出力部27は、評価結果に基づいて系統を制御する場合、あるいは評価結果を何か他の用途に用いる必要がある場合に必要となるものであって、この発明の目的である評価を行うことそのものにはなくてもよい。
図1の想定事故安定度スクリーニングと評価部25の動作フローを図2に示す。 図2においてフローステップ(以下単にSと呼ぶ)S31では図1の状態推定部23と想定事故ケース入力部24から系統状態推定結果と事故ケースのデータを入力する。
【0014】
S32ではS31で入力された系統状態推定結果とデータを基に、系統の時間領域シミュレーションを行う。即ち、系統状態推定結果を初期条件として、想定した事故を模擬的に発生させ、発電機の動特性を表す微分方程式と電力系統を表す代数方程式を解くことによって、事故後の発電機動揺状態及び電力系統のノード電圧などを求める。このステップはこの発明に言う系統の時間領域シミュレーションを行う手順である。
【0015】
S33ではS32で得られたシミュレーションの各積分ステップの発電機動揺の結果を出力する。S34ではS33の出力結果を用いて、後述する拡張等面積法により想定事故毎に系統が安定か否かを判別するスクリーニングを行う(詳細は後述する)。S35ではS34の判別結果により系統が安定か不安定かで以後のフローを切換える。不安定であればS36で時間領域シミュレーションS32を継続して実施し、安定であればS37でシミュレーションを中止して次の想定事故の入力S31へと戻る。S38で判別結果を出力する。
【0016】
図2のフローでは、電力系統の時間領域シミュレーションS32の結果を用いて、安定度の判別を行うようにしたので、発電機と負荷の詳細なモデルを使用することができる。また、不安定なケースに対してはシミュレーションをそのまま続ければよいので、再度初めからシミュレーションをやり直す必要がないので、処理時間の無駄をなくすことができる。
【0017】
図3は図2のS34想定事故のスクリーニングの詳細動作を説明するフローチャートである。図3においてS33は図2のS33と同じものであり、時間領域シミュレーションS32の各積分ステップの発電機位相角δ、発電機速度ω、発電機電気出力Pe、発電機機械入力Pm、を読みとる。S42では事故除去直後の発電機位相角δを用いて、系統に接続された複数の発電機を2つのグループに分ける。即ち、発電機を位相角δの大きさの順に並べて、隣接する発電機の位相角差の最も大きなところから2つのグループに分ける。一方(δの大きい方)を上位発電機グループ、他方(δの小さい方)を下位発電機グループと仮称する。以後の説明の都合上、上位発電機グループをグループS、下位発電機グループをグループAと呼ぶ。S43では上記2つの発電機グループをそれぞれ次のように2つの発電機に等価する。
【0018】
【数1】
【0019】
更に、その2機系統を下記の様に一機無限大系統に等価する。
【0020】
【数2】
【0021】
S44では事故除去直後のシミュレーション結果を用いて、事故除去直後の修正運動エネルギーVk-correct を下記の式(1)に基づいて計算する。
Vk-correct=(1/2)Meq(ωeq)2 ……(1)
S45ではS43で求めた等価一機無限大系統の事故除去後の発電機出力と発電機位相の関係曲線、即ちP−δ曲線を推定する。一機無限大系統のP−δ曲線はサイン曲線となり、等価一機無限大系統の発電機の有効出力をPe-eqp とすると、後述する(2)式の一般形で表すことができるので、この曲線の Pcp 、Pmaxp 、γp を事故直後のシミュレーション結果Pcp と位相角δ(3つ以上の積分ステップのデータ)を用いて、最小二乗法で求めるのである。
【0022】
S46ではS45で推定された事故除去後のP−δ曲線を用いて、事故除去後の系統の安定平衡点を(3)式で求め、不安定平衡点 δu=π−δp−2γpを求める。
【0023】
【数3】
【0024】
S47ではS46で求められた不安定平衡点δu を用いて(4)式により減速面積を計算する。
式(4)でδcl は事故除去時刻である。
S48では、S44で計算された事故除去直後の修正運動エネルギーVk-correctをS47で(4)式により求めた減速面積Adecと比較し、安定かどうか判別する。
即ち、Vk-correct<Adec ならば安定、
Vk-correct>Adec ならば不安定である。
【0025】
系統が安定であれば、図2のS35、S37に示すとおり、時間領域シミュレーションを停止して、次の事故ケースの入力S31に戻る。系統が不安定であればS36に示すとおりシミュレーションを継続する。
【0026】
図3のフローによれば、事故除去直後の各発電機の位相角δを用いて発電機群を2つのグループに分け、等面積法で限界エネルギーを求めているので、安定不安定の判別処理を高速で行うことができる。また、発電機群を2つのグループに分けて修正運動エネルギー(発電機の脱調につながらない発電機間のやり取りエネルギーを除いた)を計算しているため、安定度判別をより正確に行うことができる。また、事故後の系統軌跡は電力系統のシミュレーション結果から推定しているため、発電機と負荷の詳細なモデルを使うことができる。
【0027】
実施の形態2.
図4はこの発明の実施の形態2による想定事故安定度スクリーニング方法のフローを示す図である。図に於いてS31、S32、S33、S34、S35、S36、S37は図2の同符号と同じものであるので詳細な説明を省略する。S56はこの発明によるPEBS法による想定事故の安定度スクリーニングである。S57はS56の結果、系統事故除去後の軌跡がPEBSと交差するか否かを判定するステップで、交差すればS59でエネルギーマージンを計算する。交差しなければS36で時間領域シミュレーションを継続する。
【0028】
図4のS56のPEBS法による想定事故の安定度スクリーニングのフローを図5に詳細に示す。図5において、S53では時間領域シミュレーションの各積分ステップでの発電機位相角δ、発電機速度ω、発電機電気出力Pe、 発電機機械入力Pm、 を読みとる。このステップの作業内容は図4のS33のステップと同じ内容であるが実行するタイミングが異なっているので、取込んだデータは当然、S33のデータとは異なっている。
【0029】
S62では時間領域シミュレーションS32の各積分ステップのポテンシャルエネルギーの増加分ΔPE(事故除去時のポテンシャルエネルギーはPE=0である)、及び修正運動エネルギーVk-correct をそれぞれ下記(5)式と前述の(1)式によって計算する。
【0030】
【数4】
【0031】
S63ではS53で取込んだ各積分ステップの結果を用いて、(6)式と(7)式に示すDOT1とDOT2を求める。ここでDOT1は事故の軌跡がPEBSと交差するかどうかの判断指標である。即ち、DOT1が0になるところはPEBSを示している。事故後の軌跡がPEBSを越えると系統は不安定となる。また、DOT2は事故後の発電機速度を示す指標である。DOT2が0になるところは発電機の速度が最小となることを意味し、そこから発電機の位相角δが現象に向う。DOT1がプラスからマイナスに変ると、事故除去後の軌跡がPEBSと交差したことを意味し、DOT2がプラスからマイナスに変ると発電機の速度が最小となり(運動エネルギーが最小、ポテンシャルエネルギーが最大となる)、事故除去後の軌跡がスイングバックする、即ち、事故後の発電機速度が最小となったところから発電機の位相角が現象に向うことを意味している。
【0032】
S57は事故除去後の軌跡がPEBSと交差するかどうかを見て、系統安定かどうかを判別し、交差すれば安定度限界を通過し系統は不安定と判別される。そしてS59に移り、DOT1がプラスからマイナスに変る一つ前の積分ステップの修正運動エネルギーをエネルギーマージンとして計算し、更にS37へ移ってシミュレーションを終了する。S57で交差しなかった場合(交差する前にDOT2がプラスからマイナスに変ればという意味である)は、系統は第一波安定で、S36へ移ってシミュレーションを継続し、系統第一波以後の安定度を調べるための準備を行う。もし第一波だけでよいのであればシミュレーションを中断してもよい。
【0033】
図4、図5のフローでは、まず、スクリーニングの第一段階としてS34で高速で処理が可能な拡張等面積法を用いて、想定事故の安定度を近似的に評価し、これによって想定事故の大部分を占める十分に安定なケースを以後の安定判別の対象から除外し、次に、スクリーニングの第二段階として、S56で不安定な事故ケースと安定性余裕が十分でない事故ケースのみに対してPEBS法による安定度判別を実行するという、二段構えの評価を実施している。
【0034】
一般的には事故ケースの大部分は安定なので、このようにすれば、判定精度は高いが処理時間のかかる第二段階で評価しなければならない事故ケースの件数が少なくなり、全体の想定事故評価処理に要する時間を大幅に短縮することができる。また、スクリーニングの第二段階(S53〜S57)では、シミュレーション結果を用いて、事故後の軌跡がPEBSと交差するかどうかを直接調べているため、安定度判別結果の信頼性を高めることができる。
【0035】
実施の形態3.
実施の形態2で説明した二段階の評価法を更に一般化して多段階とすることができる。図6はそのような評価システムのフローを示すものである。図6においてS31、S32、S33、S36、S37は図2の同符号のものと同じであるので詳細な説明は省略する。
S74は第1の評価法による系統の安定度判別ステップを表している。ここで第1の評価法の処理所要時間はT1 であるとする。
【0036】
同様にしてS75、S76はそれぞれ第2、第n の評価法による系統安定度判別ステッ
プであり、その処理所要時間はそれぞれT2、Tnであるとする。評価の具体的な方法としては、実施の形態1、2で説明した拡張等面積法、PEBS法などの他、例えば事故前後の発電機運動エネルギーの変化を計算するなど系統が不安定と見なしうる現象を計算する方法が多く知られている。本発明で説明した評価方法及び前記既知の方法を含めて、一般的に、大まかに言えば、これら評価法の処理所要時間と評価精度はほぼ比例の関係にあり、時間が長くかかるものは精度が高く、時間が短くてすむ方法は精度がよくない。
【0037】
図6において、第1の評価方法、第2の評価方法、第n の評価方法の処理所要時間は
T1 <T2 <Tn
であるように、処理時間の短い評価方法を前段になるように評価方法を配列しておく。前段の評価で安定であると判定されたケースについては、以後の精度の高い評価法の対象とせず、シミュレーションも停止する。そして安定であると判定されなかったケースについては順次、次段の評価方法へ移していくのである。最後の評価法(図6のS76)で不安定と判定されたケースについてはS36によりシミュレーションを継続する。
【0038】
図6の方法では、複数の種類の想定事故安定度スクリーニング方法を組合わせて安定判別の効率を向上している。ここで説明しなかった他のスクリーニング方法も、この組合わせの中に組込むことが可能で、判別精度が高くしかも処理速度の速い系統安定度判別スクリーニング方法が得られる。
【0039】
実施の形態1、2で説明した評価方法を、図6の第2〜第3の評価方法に組込んだ場合のフローを図7に示す。S31、S32、S33、S34、S36、S37については図2の同符号のものと同じ、S56、S57については図4の同符号と同じである
【0040】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、電力系統の時間領域シミュレーション結果を用いて安定度の判別を行うようにしたので、発電機と負荷の詳細なモデルを使用することができる。また不安定なケースに対してシミュレーションを改めてやり直すことなく、そのまま継続して実行できるので、無駄な処理時間がなくなり、処理時間を有効に利用することができる。
【0041】
また、この発明によれば、複数の発電機を2つの発電機に等価し、更に一機無限大系統に等価して、限界エネルギーを求める手順としているので、処理速度が高速となる。また、安定度判別もより正確となる。電力系統のシミュレーションから系統軌跡を求める手順としているので、発電機と負荷の詳細なモデルを使用することができる。
【0042】
また、この発明によれば、少なくとも二段階の評価、即ち、前段では処理速度が速い判定方法を、後段では処理速度は遅いか判定精度の高い評価方法を採用している。全事故ケース中に不安定なケースがきわめて少ない実状から、ほとんどのケースは前段で処理され、高精度な評価を必要とするまれなケースだけが後段で処理されるので、全体としてきわめて効率のよい安定度評価を行うことができる。
【0043】
又、この発明によれば前記前段処理として拡張等面積法を、前記後段処理としてPEBS法を用いたので、最も効率のよい多段評価方法が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1による評価システムの構成概要図である。
【図2】 図1の要部の動作フローチャートである。
【図3】 図2の要部の詳細フローチャートである。
【図4】 この発明の実施の形態2による想定事故安定度評価方法のフローチャートでである。
【図5】 図4の要部の詳細フローチャートである。
【図6】 この発明の実施の形態3による評価方法のフローチャートである。
【図7】 図6の方法を具体化したフローチャートである。
【図8】 等面積法により系統の安定度を評価する方法の従来のフローチャートである。
【図9】 PEBS法により系統の安定度評価を行う従来のフローチャートである。
【符号の説明】
S32 時間領域のシミュレーションを行う手順
S35 判定結果が安定であればシミュレーションを停止する手順
S42 発電機の位相角δに基づき、複数の発電機を2つのグループに分離する手順
S43 一機無限大系統に等価する手順
S44 発電機の修正運動エネルギーを計算する手順
S45 発電機出力と位相の関係曲線を求める手順
S48 修正運動エネルギーにより安定度を判定する手順
S62 系統のポテンシャルと発電機の修正運動エネルギーを求める手順
S63 DOTを求める手順
S74 第1の評価法による評価手順
S75 第2の評価法による評価手順
S76 第Nの評価法による評価手順
δi 発電機iの位相角、
ωi 発電機iの角速度、
Mi 発電機iの慣性定数、
δeq 一機無限大系統の発電機の位相角、
ωeq 一機無限大系統の発電機の角速度、
Meq 一機無限大系統の発電機の慣性定数、
Vk-correct 事故除去直後の発電機の修正運動エネルギー
Claims (3)
- 発電機を含む電力系統上に想定した事故の後の、前記電力系統の安定度を評価する方法であって、想定する事故ケース毎に、前記発電機の動特性を表す微分方程式とこの電力系統の電圧又は電流を表す代数方程式を解くことにより、前記事故後の前記発電機の動揺と前記電力系統のノード電圧を求めて時間領域のシミュレーションを行う手順と、前記シミュレーションで得た前記発電機の状態データを基に、拡張等面積法により前記電力系統の安定度を評価する第1の評価手順と、前記第1の評価手順により安定と評価されなかった事故ケースについて、前記第1の評価手順の終了後に、前記シミュレーションで得た前記発電機の状態データとはタイミングの異なる発電機の状態データを基に、前記電力系統の安定度を評価する第2の評価手順とを含み、かつ、前記第2の評価手順の1件の事故ケースの評価に要する処理時間が前記第1の評価手順による1件の事故ケースの評価に要する処理時間よりも長いものであり、前記第1の評価手順は、前記シミュレーションで得た発電機の状態データを基に、前記発電機の修正運動エネルギーを計算する手順と、前記計算結果に基づき前記電力系統の安定度を判定する手順と、前記判定結果が安定である場合には前記シミュレーションを停止する手順とを含むものであり、前記第2の評価手順は、事故後の軌跡がPEBSと交差するか否かによって系統の安定度を評価するものであることを特徴とする電力系統の想定事故安定度評価方法。
- 発電機を含む電力系統上に想定した事故の後の、前記電力系統の安定度を評価する方法であって、想定する事故ケース毎に、前記発電機の動特性を表す微分方程式とこの電力系統の電圧又は電流を表す代数方程式を解くことにより、前記事故後の前記発電機の動揺と前記電力系統のノード電圧を求めて時間領域のシミュレーションを行う手順と、前記シミュレーションで得た前記発電機の状態データを基に、拡張等面積法により前記電力系統の安定度を評価する第1の評価手順と、前記第1の評価手順により安定と評価されなかった事故ケースについて、前記第1の評価手順の終了後に、前記シミュレーションで得た前記発電機の状態データとはタイミングの異なる発電機の状態データを基に、前記電力系統の安定度を評価する第2の評価手順とを含み、かつ、前記第2の評価手順の1件の事故ケースの評価に要する処理時間が前記第1の評価手順による1件の事故ケースの評価に要する処理時間よりも長いものであり、前記第1の評価手順は、前記シミュレーションで得た発電機の状態データを基に、系統に接続した複数の発電機をそれぞれの発電機の電圧位相角を基準に2つのグループに分離する手順と、前記2つのグループを2つの発電機に等価し、更に一機無限大系統に等価する手順と、前記発電機の状態データを基に、前記発電機の修正運動エネルギーを計算する手順と、前記一機無限大系統の発電機出力と発電電圧位相の関係曲線(P−δ曲線)を推定する手順と、前記発電機出力と発電電圧位相の関係曲線を用いて求めた減速面積と前記修正運動エネルギーとを比較し、前記電力系統の安定度を判定する手順と、前記判定結果が安定である場合には前記シミュレーションを停止する手順を含むものであり、前記第2の評価手順は、事故後の軌跡がPEBSと交差するか否かによって系統の安定度を評価するものであることを特徴とする電力系統の想定事故安定度評価方法。
- 前記第2の評価手順は、前記シミュレーションを行う手順で得た発電機の状態データを基に、前記電力系統のポテンシャルエネルギーと前記発電機の修正運動エネルギーを計算する手順と、前記計算結果に基づき各積分ステップのDOTを計算し、その極性によって事故後の軌跡がPEBSと交差するか否かを判定する手順を含むものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の電力系統の想定事故安定度評価方法。
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