JP3999303B2 - 電流検出装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、変流器、即ち電流トランス(CT)を用いた電流検出装置に関し、特に、外来雑音の影響を軽減した電流検出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
電流トランス(CT)とはカレント・トランスを略したもので、変流器とも呼ばれ、電力関係では、大電流を測定するための電流変成器(計器用変成器)として広く使用されている。図3には、かかる電流トランスの簡略図が示されている。図3において、環状の閉磁路に数100ターンから2000ターン程度の2次巻線を巻回し、同閉磁路内を貫通させた1次線に被測定電流isを貫通電流として流す。磁路の形状としてはトロイダル巻線を施したものが漏洩磁束の低減や小型化を図るのに有効である。そして、2次巻線に流れる電流を検出して被測定電流を検出する。
【0003】
図4には、図3に示すような電流トランスを電流センサとして用いた従来型の電流検出装置の回路構成が示されている。電流トランス(CT)1の1次線に検出電流isを流すと、2次巻線に電流が誘起され、この電流はオペアンプ2の反転入力に供給される。オペアンプ2の反転入力と出力間には帰還抵抗Rfが接続され、その非反転入力は接地される。この抵抗Rfには電流トランス1の2次巻線に流れる電流と同じ大きさの電流が流れる。
【0004】
今、検出電流をis、電流トランス1の変流比をkとすると、2次巻線には電流(k・is)が流れるので、オペアンプ2の信号出力電圧にはvos=(k・is)Rfなる電圧が現われる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上述のような従来の回路構成により、大電流の測定が可能であるが、図4に示す従来の回路は次のような欠点をもつ。即ち、電流トランス1の入力側と接地間の浮遊容量Csを介して同相モードの雑音電圧vnが電流トランス1の2次側に混入するため、微小電流検出が困難となるという問題である。例えば、図4において、同相モード雑音電圧vnによりオペアンプ2の出力に現われる雑音出力電圧は、von=vn・ωCs・Rfとなる。
【0006】
そこで、本発明の目的は、電流トランスを用いた電流検出の際の同相雑音成分の重畳の影響を除去できる電流検出装置を提供することにある。
【0007】
本発明の他の目的は、上記目的に追加して更に直流ドリフトの問題を解決できる電流検出装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上述の問題点を解決するため、本発明による電流検出装置は、変流器の1次線に流れる検出電流に対応して2次巻線に流れる電流を検出することにより前記検出電流を検出する電流検出装置において、前記2次巻線の両端にそれぞれ反転入力端が接続され出力端と反転入力端間に帰還抵抗を有する1対の電流入力型の増幅器と、該1対の電流入力型の増幅器の出力端がそれぞれ入力端に接続された差動増幅器とを備え、前記1対の電流入力型の増幅器の増幅率を調整して前記1次線と前記2次巻線の両端間の浮遊容量のばらつきによるアンバランスな同相モード雑音をもキャンセルする。
【0009】
本発明の他の態様による電流検出装置は、前記差動増幅器の出力側から前記1対の電流入力型の増幅器の一方の入力側へ直流帰還を施す直流帰還手段を備える。
【0010】
本発明の他の態様による電流検出回路は、変流器の1次線に流れる検出電流に対応して2次巻線に流れる電流を検出することにより前記検出電流を検出する電流検出装置において、
前記2次巻線の両端にそれぞれ反転入力端が接続され出力端と前記反転入力端間に帰還抵抗が接続された1対の電流入力型の増幅器を備え、
該1対の電流入力型の増幅器の一方の帰還回路は抵抗器とキャパシタの並列回路であり、その出力を抵抗器とキャパシタとの並列回路を介して他方の電流増幅型の増幅器の入力に注入し、前記他方の電流入力型の増幅器の出力側において前記検出電流を検出するように構成され、
前記1対の電流入力型の増幅器において抵抗器とキャパシタの並列回路2組を調整して前記1次線と前記2次巻線の両端間の浮遊容量のばらつきによるアンバランスな同相モード雑音をもキャンセルする。
【0011】
ここで、前記他方の電流入力型の増幅器の出力側から前記他方の電流入力型の増幅器の非反転入力端へ直流帰還を施す直流帰還手段を備える。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明による電流検出装置の実施形態を説明する。図1は本発明による電流検出装置の一実施形態を示す回路図である。本実施形態では、検出電流isを電流トランス(電流センサ)の1次側に流して2次側に流れる電流を電流入力型の差動アンプで受けて雑音成分をキャンセルするとともに、オペアンプ5等で構成される積分器を用いて出力から入力に直流帰還を施すことによりドリフト特性を改善している。
【0013】
図1において、同相モード雑音vnは、図中の浮遊容量Cs1、Cs2を介して電流センサ1の2次巻線に重畳し悪影響を及ぼす。同相モード雑音vnは、説明の都合上、等価的にこのような雑音電圧が存在することを示したものであり、実際の電流検出装置においてはvnなる雑音電圧源を用意する必要はない。電流トランス(カレントトランス=CT)型の電流センサ1の2次巻線の出力端子11、12には1次側の貫通電流、即ち検出電流(is)に比例した電流が流れる。電流センサ1の一方の端子11は、オペアンプ3の反転入力(−)に接続されている。他方の端子12はオペアンプ4の反転入力(−)に接続されている。
【0014】
オペアンプ3と4の反転入力(−)と出力との間には帰還抵抗Rf1、Rf2がそれぞれ接続されている。オペアンプ3と4の非反転入力(+)にはオフセット電流を補償する抵抗R6とR7がそれぞれ接続され、接地されている。
【0015】
オペアンプ3と4の出力は、抵抗R1〜R4及びオペアンプ2から成る差動アンプの反転入力と非反転入力にそれぞれ入力され、オペアンプ2の出力から電圧出力vOが取り出される。オペアンプ2の出力には抵抗R5が接続され、この抵抗R5の他端はオペアンプ5の反転入力(−)に接続されている。オペアンプ5の反転入力(−)と出力間にはキャパシタC1が接続され、非反転入力(+)は接地されている。
【0016】
オペアンプ5の出力は、抵抗R8を経由してオペアンプ4の非反転入力(+)に接続され、オペアンプ2の出力に現われる直流ドリフトを負帰還によりキャンセルしている。
【0017】
こうして、オペアンプ2の出力には、電流センサ1の端子11−12に流れる電流に比例した電圧が現われる。今、電流センサ1の貫通電流をis、電流センサ1の変流比をkとすると、2次巻線に流れる電流はis・kとなり、オペアンプ3の帰還抵抗の抵抗値をRf1、オペアンプ4の帰還抵抗値Rf2とすると、オペアンプ2の反転入力と非反転入力に供給される電圧vs1、vs2はそれぞれ次のようになる。
vs1= (is・k)Rf1 (1)
vs2=−(is・k)Rf2 (2)
【0018】
このvs1、vs2がオペアンプ2で構成される差動アンプに入力される。抵抗R1〜R4の抵抗値を等しくすれば、この段の利得は1となり、Rf1=Rf2=Rfとすると、出力出圧voは次式のようになる。
vo=(vs1−vs2)=2(is・k)Rf (3)
【0019】
今、貫通電流is=1〔A〕、2次巻数n=719、帰還抵抗Rf=3.595kΩとすると、k=1/nであるから、voは10〔V/A〕となる。
【0020】
一方、同相モードの雑音電圧vnについては上記vn1、vn2はそれぞれ次のようになる。
vn1=−vn・jωCs1・Rf1 (4)
vn2=−vn・jωCs2・Rf2 (5)
このvn1、vn2は、次段の差動アンプに入力されるので、vn1=vn2であれば、出力に同相モードの雑音電圧は現われない。その条件は次の通りである。
Rf1・Cs1=Rf2・Cs2 (6)
【0021】
通常、浮遊容量Cs1、Cs2の値は等しくないため、式(6)の条件を満足するようにRf1あるいはRf2に可変抵抗器を直列に接続してこれを調整し、Cs1、Cs2のばらつきを補償する。
【0022】
以上のような構成により、電流トランスの入出力間の浮遊容量に起因して生ずる雑音成分vnの影響は除去できる。一方、電流入力型の差動増幅器の導入に伴い、この増幅器の直流利得が極端に増加するため直流ドリフトが新たな問題となる。
【0023】
より具体的には、本実施形態では、上述のように、オペアンプ5、抵抗R5及びキャパシタC1から成る回路は積分器を構成しており、オペアンプ2の出力の交流成分を除去し直流成分を取り出している。かかるオペアンプ5による直流帰還効果は次のとおりである。
【0024】
電流センサ1の2次巻線の直流抵抗は種類にもよるが普通は数10Ω以下である。一方、オペアンプ3による電流−電圧変換回路の帰還抵抗Rf1は通常数kΩである。そしてこの段の直流利得はG=Rf1/Riで表わされ、入力抵抗Riは前述の2次巻線の直流抵抗であるから、結局この段の直流利得は100倍のオーダとなる。
【0025】
このため、この電流−電圧変換回路のオペアンプに安価な汎用オペアンプを使用すると温度ドリフトが大きくなり使いものにならない。また温度ドリフトの小さいオペアンプを使用すると、そのようなオペアンプは非常に高価であるためコストがアップするという問題が発生する。
【0026】
本実施形態では、かかる問題を解決するため、出力から初段にオペアンプ5による直流帰還を施し温度ドリフトを軽減している。その結果、オペアンプ3、4に安価なオペアンプを使用しても十分満足できる温度ドリフト特性が得られる。
【0027】
図2は本発明による電流検出装置の他の実施形態を示す要部回路図であり、説明の都合上、浮遊容量Cs1、Cs2及び同相モード雑音電圧VNが記入されている。本実施形態は、図1に示す実施形態と同様に、電流トランス(CT)型の電流センサ1に流れる電流を出力電圧voに変換して出力するもので、等価的に同様な機能を果たすが、使用オペアンプを4個から3個に、使用抵抗を10個から7個に低減できる。
【0028】
電流トランス型の電流センサ1、閉磁路に2次巻線(出力端子11、12)を巻回し、1次線は閉磁路内を貫通させて使用される。貫通電流に比例した電流が2次巻線に誘起される。オペアンプ6の反転入力は、電流センサ1の一方の出力端子11に接続され、オペアンプ6の出力と反転入力(−)との間には抵抗R101と浮遊容量C101の並列回路が接続されている。抵抗R101は帰還抵抗(Rf1)であり、電流センサ1の2次側に流れる電流はオペアンプ6により電圧に変換され、出力電圧voが出力される。
【0029】
電流センサ1の他方の端子12は、オペアンプ7の反転入力(−)に接続されている。オペアンプ7の出力と反転入力(−)との間には抵抗R102(抵抗Rf2)とキャパシタC102の並列回路が接続されている。オペアンプ7の非反転入力(+)はR106を経て接地されている。オペアンプ7の出力は、抵抗R103とキャパシタC103の並列回路を介してオペアンプ6の反転入力(−)に接続されている。
【0030】
オペアンプ6の出力は、抵抗R105を介してオペアンプ8の反転入力(−)に接続されている。オペアンプ8の出力と反転入力(−)との間にはキャパシタC105が接続されている。オペアンプ8、抵抗R105、キャパシタC105から成る回路は積分回路を構成し、抵抗R105とキャパシタC105の値の積で計算される時定数を秒のオーダとすることにより出力vo中の直流成分を抽出している。そして、これをオペアンプ6の非反転入力(+)に負帰還することにより、出力voに現われるドリフトをキャンセルしている。こうすることにより、上述実施形態の説明で述べたのと同じ理由によりオペアンプ6と7の直流利得が非常に大きくなり、結果として出力に多大のドリフトが発生するという問題点が除去される。
【0031】
電流センサ1の2次巻線に流れる信号電流issについて考えると、出力端子12から流出する電流は、オペアンプ7で極性反転され、R103を経由してオペアンプ6の反転入力(仮想接地点)に注入される。ここでR103に流れる電流はissと極性が同じであるため、信号電流を増大するように作用する。
【0032】
次に雑音である同相モード雑音電圧VNの影響を考える。まず電流センサ1の出力端子11には浮遊容量Cs1を介して同相雑音成分が現われる。一方、前記VNのうち浮遊容量CS2を経由して電流センサ1の出力端子12に現われる同相雑音成分はオペアンプ7で反転され、逆位相となりオペアンプ6の反転入力に注入される。このため信号路である出力端子11に現われる浮遊容量CS1経由のVN成分はキャンセルされる。
【0033】
以下では、上記で定性的に説明した浮遊容量Cs1、Cs2を介して、信号に重畳する同相モード雑音電圧について定量的な観点で説明する。
【0034】
図2に示すように、電流センサ1の1次側(貫通電流)には同相モード雑音電圧VNが重畳しているものとすると、次の基本式が成立する。
is1=jωCs1・VN (7)
【0035】
回路が正常に動作している場合には、オペアンプ6と7の非反転入力(+)は交流的にはゼロ電位である。また、オペアンプの性質より反転入力(−)も交流的にゼロ電位である。すると、出力端子11、12はともに同電位なので2次巻線の浮遊容量Cstには交流電流は流れず、ist=0となりCstの影響は考えなくてよい。このため次の関係式が成立する。
is2=jωCs2・VN (8)
v2 = −Z2(iss+is2)
(9)
vo=Z1(iss−is1−(v2/Z3))
(10)
ここでZ1=R101//C101、Z2=R102//C102、Z3=R103//C103である。(a//bは、aとbの並列接続を表わす)
【0036】
基本式(7)〜(10)から、is1、is2、v2を消去してvoを求めると、次のようになる。
【数1】
【0037】
ここで信号と雑音との関係のみに着目するため、(11)式の右辺からVNを含む項のみを取り出すと次のようになる
【数2】
【0038】
ここで、τ1=C101・R101、τ2=C102・R102、τs02=(C102・Cs1-C103・Cs2)・R102・R103、τs1=(Cs1・R103-Cs2・R102)、τs2=τs02/τs1である。
(13)、(14)式より、vo/VN=0とするにはτs1及びτs02をゼロとすれば良い事ががわかる。即ち、次の関係式が導かれる。
【数3】
【0039】
実際の調整にあたっては、例えば、雑音電圧VNとして矩形波信号を印加し、最初に抵抗R102、R103の比を調整して浮遊容量CS1、CS2の影響をキャンセルして(15)式を満足させる。次にC102、C103を調整して(16)式を満足させる。このように調整を行えば、浮遊容量Cs1、Cs2を介しての同相モード雑音電圧の侵入を阻止できる。
【0040】
また、この回路はオペアンプ8による直流帰還の効果により、オペアンプ6と7の非反転入力(+)は直流的にはゼロ電位であるため、電流センサ1の2次巻線に直流が流れない。
【0041】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明による電流検出装置では、電流トランス(CT)タイプの電流センサの出力を電流入力型の差動増幅手段で検出しているため、同相モードの雑音電圧が浮遊容量を介して電流センサの2次側に注入されたとしても、この雑音電圧は同相成分であるため差動増幅器によりキャンセルされ出力には現われない。更に、直流利得の増大に伴う出力ドリフトを直流帰還回路を付加して抑圧しているので、検出電流のダイナミックレンジを飛躍的に増大させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による電流検出装置の実施形態を示す回路図である。
【図2】本発明による電流検出装置の他の実施形態を示す回路図である。
【図3】電流トランスの簡略図である。
【図4】図3に示す電流トランスを電流センサとして用いた従来型の電流検出装置の回路構成である。
【符号の説明】
1 電流センサ
2〜8 オペアンプ
Claims (4)
- 変流器の1次線に流れる検出電流に対応して2次巻線に流れる電流を検出することにより前記検出電流を検出する電流検出装置において、
前記2次巻線の両端にそれぞれ反転入力端が接続され出力端と反転入力端間に帰還抵抗を有する1対の電流入力型の増幅器と、該1対の電流入力型の増幅器の出力端がそれぞれ入力端に接続された差動増幅器とを備え、
前記1対の電流入力型の増幅器の増幅率を調整して前記1次線と前記2次巻線の両端間の浮遊容量のばらつきによるアンバランスな同相モード雑音をもキャンセルすることを特徴とする電流検出装置。 - 前記差動増幅器の出力側から前記1対の電流入力型の増幅器の一方の入力側へ直流帰還を施す直流帰還手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の電流検出装置。
- 変流器の1次線に流れる検出電流に対応して2次巻線に流れる電流を検出することにより前記検出電流を検出する電流検出装置において、
前記2次巻線の両端にそれぞれ反転入力端が接続され出力端と前記反転入力端間に帰還抵抗が接続された1対の電流入力型の増幅器を備え、
該1対の電流入力型の増幅器の一方の帰還回路は抵抗器とキャパシタの並列回路であり、その出力を抵抗器とキャパシタとの並列回路を介して他方の電流増幅型の増幅器の入力に注入し、前記他方の電流入力型の増幅器の出力側において前記検出電流を検出するように構成され、
前記1対の電流入力型の増幅器において抵抗器とキャパシタの並列回路2組を調整して前記1次線と前記2次巻線の両端間の浮遊容量のばらつきによるアンバランスな同相モード雑音をもキャンセルすることを特徴とする電流検出装置。 - 前記他方の電流入力型の増幅器の出力側から前記他方の電流入力型の増幅器の非反転入力端へ直流帰還を施す直流帰還手段を備えることを特徴とする請求項3に記載の電流検出装置。
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