以下、本発明の各実施形態に係る層間絶縁膜の形成方法について説明するが、その前提として、各実施形態に係る層間絶縁膜の形成方法に用いられるCVD装置について図1を参照しながら説明する。
図1は平行平板型のプラズマCVD装置の概略構成を示している。図1に示すように、内部が気密に保持される反応室11の内部には、シリコンよりなる半導体基板12が載置されると共に下部電極となる試料台13が設けられており、該試料台13は切替スイッチ14を介して第1の高周波電源15又は接地に接続される。尚、試料台13の内部には、図示を省略したヒーターが設けられており、試料台13に載置される半導体基板12はヒーターによって所定の温度に加熱される。反応室11の内部における試料台13と対向する位置には上部電極となるシャワーヘッド16が設けられており、該シャワーヘッド16には13.56MHzの高周波電力を供給する第2の高周波電源17が接続されている。
反応室11には、反応室11内に原料ガスを導入するための第1のガス供給ライン21、第2のガス供給ライン22及び第3のガス供給ライン23とが設けられている。第1のガス供給ライン21には、液体よりなる原料を貯蔵する第1の貯蔵容器24が設けられ、図示しないマスフローコントローラを介して流量が制御されたキャリアガスが第1の貯蔵容器24に供給されると、第1の貯蔵容器24から反応室11内にバブリングされた原料ガスが導入される。第2のガス供給ライン22には、液体よりなる原料を貯蔵する第2の貯蔵容器25が設けられ、図示しないマスフローコントローラを介して流量が制御されたキャリアガスが第2の貯蔵容器25に供給されると、第2の貯蔵容器25から反応室11内にバブリングされた原料ガスが導入される。また、反応室11には真空ポンプ26が接続されており、該真空ポンプ26の駆動により反応室11内のガスを排気して反応室11の内部を真空状態にすることができる。
以下、本発明の各実施形態に係る層間絶縁膜の形成方法が適用される第1の半導体装置の製造方法について、図2(a)〜図2(d)を参照しながら説明する。
まず、図2(a)に示すように、半導体基板100の上に、例えばアルミニウムよりなる第1の金属配線101を形成した後、前記のプラズマCVD装置を用いて、図2(b)に示すように、第1の金属配線101を含む半導体基板100の上に全面に亘って層間絶縁膜102を堆積する。尚、層間絶縁膜102の形成方法については後述する。
次に、図2(c)に示すように、層間絶縁膜102に対して平坦化処理を施す。その後、図2(d)に示すように、層間絶縁膜102にコンタクト103を形成した後、層間絶縁膜102の上に例えばアルミニウムよりなる第2の金属配線104を形成する。
以下、本発明の各実施形態に係る層間絶縁膜の形成方法が適用される第2の半導体装置の製造方法について、図3(a)〜図3(d)を参照しながら説明する。
まず、図3(a)に示すように、半導体基板200の上に、第1層の窒化シリコン膜201、第1層の層間絶縁膜202、第2層の窒化シリコン膜203及び第2層の層間絶縁膜204を順次堆積する。尚、第1層の層間絶縁膜202及び第2層の層間絶縁膜204の形成方法については後述する。
次に、図3(b)に示すように、第2層の窒化シリコン膜203及び第2層の層間絶縁膜204をフォトリソグラフィによりパターニングして配線パターン形成用開口部205を形成した後、第1層の窒化シリコン膜201及び第1層の層間絶縁膜202をフォトリソグラフィによりパターニングしてコンタクト用開口部206を形成する。この場合、第2層の窒化シリコン膜203は第2層の層間絶縁膜204に対するエッチングのエッチングストッパーの役割を果たし、第1層の窒化シリコン膜201は第1層の層間絶縁膜202に対するエッチングのエッチングストッパーの役割を果たす。
次に、図3(c)に示すように、スパッタ法又はCVD法により、半導体基板200の上に全面に亘って例えば銅よりなる金属膜207を堆積した後、該金属膜207を熱処理によりリフローさせて該金属膜207を配線パターン形成用開口部205及びコンタクト用開口部206に埋め込む。
次に、金属膜207に対してCMPを行なって、図3(d)に示すように、金属膜207よりなる金属配線208及びコンタクト209を形成すると、デュアルダマシン構造を有する埋め込み配線を形成することができる。
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る層間絶縁膜は、一般式:R1 xSi(OR2 )4-x (但し、R1 はフェニル基又はビニル基であり、R2 はアルキル基であり、xは1〜3の整数である。)で表わされる有機シリコン化合物であるフェニルトリメトキシシラン(Ph−Si−(OCH3 )3 )を主成分とする原料をプラズマ重合反応させることにより形成されるプラズマ重合膜である。
以下、第1の実施形態に係る層間絶縁膜の形成方法について説明する。
まず、例えば400℃に加熱され且つ切替スイッチ14により接地された試料台13の上に半導体基板12を載置した後、反応室11の内部を真空ポンプ26により真空引きする。
次に、第1の貯蔵容器24に[化1]に示されるフェニルトリメトキシシランを貯蔵すると共に、第1の貯蔵容器24に、例えばアルゴンよりなるキャリアガスを480cc/minの流量で供給して、バブリングされたフェニルトリメトキシシランを反応室11の内部に導入する。
次に、反応室11内の圧力を約1.0Torrに調整した後、上部電極となるシャワーヘッド16に第2の高周波電源17から周波数が13.56MHzである250Wの高周波電力を印加する。このようにすると、フェニルトリメトキシシランガスが部分的に分解して、分解生成物としてモノマー、イオン及びラジカルが生成されると共に、生成されたモノマー、イオン及びラジカルが重合反応して、半導体基板12の上にプラズマ重合膜よりなる層間絶縁膜が形成される。このプラズマ重合膜の構造を[化2]に模式的に示す。
第1の実施形態に係る層間絶縁膜は、プラズマCVD法により形成されるため、有機SOG薬液の塗布工程及び有機SOG膜の熱硬化工程を複数回づつ行なう必要がないので、製膜性が向上すると共にコストの低減を図ることができる。
また、第1の実施形態に係る層間絶縁膜は、従来の有機SOG膜に比べて、膜中に含まれるSiCH3 の量が大きく低減しているので、層間絶縁膜を酸素プラズマによりエッチングをしても、SiOHは僅かしか生成されない。このため、
コンタクトホールに金属材料を埋め込む工程において、SiOHが脱水縮合反応を起こしてH2 Oを生成し、コンタクトにおける導通不良を発生させるという現象が生じない。
図4は、第1の実施形態に係る層間絶縁膜及び従来の有機SOG膜に対して、フーリエ変換赤外分光分析(以下、FT−IRと示す。)を行なったときの分析結果を示している。従来の有機SOG膜においては、波数:1300(cm-1)の近傍において吸光度のピークが現われているのに対して、第1の実施形態に係る層間絶縁膜においては、波数:1300(cm-1)の近傍において吸光度のピークが有機SOG膜に比べて小さい。従って、第1の実施形態に係る層間絶縁膜は有機SOG膜に比べて、SiCH3 の含有量が少ないことが分かる。
図5は、熱処理を施していない層間絶縁膜、及び窒素雰囲気中における450℃及び500℃の温度下でそれぞれ熱処理を施した層間絶縁膜に対してFT−IRを行なったときの分析結果を示している。図5に示すように、熱処理を施していない層間絶縁膜と、450℃及び500℃の温度下で熱処理を施した層間絶縁膜との間でFT−IRスペクトルに変化が見られなかったので、第1の実施形態に係る層間絶縁膜は、LSIのプロセスに耐える十分な耐熱性を有していることが分かる。
また、第1の実施形態に係る層間絶縁膜の比誘電率は約3.0であった。また、該層間絶縁膜を2週間室温で放置した後に比誘電率を測定したところ約3.1であって、第1の実施形態に係る層間絶縁膜は経時変化の少ない安定した膜質であった。
さらに、リーク電流密度についても、5MV/cmで約4.5×10-8A/cm2 と良好な結果が得られた。
尚、反応室11内の圧力は、約1.0Torrに設定したが、これに限定されるものではなく、100mTorr〜20Torrの範囲内で適宜選択できるが、0.5〜5.0Torrの範囲内が好ましい。
また、半導体基板12の加熱温度は、400℃であったが、これに限られず、25℃〜500℃の範囲内で適宜選択可能である。もっとも、半導体基板12を400℃を越える温度に加熱すると、該半導体基板12に形成されている金属配線を構成するアルミニウムの耐熱温度を超えてしまうので、加熱温度は400℃以下が好ましい。また、半導体基板12の温度が200℃未満であると、層間絶縁膜を形成する際に不要な成分が膜中に取り込まれてしまう恐れがあるので、加熱温度は200℃以上が好ましい。
また、上部電極であるシャワーヘッド16に印加する高周波電力としては、100〜1000Wの範囲内で適宜選択できるが、250〜500Wの範囲内が好ましい。
また、前記の一般式:R1 xSi(OR2 )4-x において、R1 がフェニル基である化合物としては、フェニルトリメトキシシランのほかに、ジフェニルジメトキシシラン(Ph2 −Si−(OCH3 )2 )等を挙げることができ、R1 がビニル基である化合物としては、ビニルトリメトキシシラン(CH2 =CH−Si−(OCH3 )3 )及びジビニルジメトキシシラン((CH2 =CH)2 −Si−(OCH3 )2 )等を挙げることができる。
さらに、第1の実施形態においては、一般式:R1 xSi(OR2 )4-x で表わされる有機シリコン化合物を主成分とする原料をプラズマ重合反応させてプラズマ重合膜よりなる層間絶縁膜を形成したが、これに代えて、一般式:R1 xSiH4-x (但し、R1 はフェニル基又はビニル基であり、xは1〜3の整数である。)で表わされる有機シリコン化合物を主成分とする原料をプラズマ重合反応させてプラズマ重合膜よりなる層間絶縁膜を形成してもよいし、前記の一般式:R1 xSi(OR2 )4-x 又は一般式:R1 xSiH4-x で表わされる有機シリコン化合物を主成分とする原料を、例えばO2 やH2 O等よりなる酸化剤と反応させて層間絶縁膜を形成してもよい。この場合には、図1に示すCVD装置における第3のガス供給ライン23からO2 ガスやH2 Oガス等を反応室11の内部に導入する。
尚、前記の一般式:R1 xSiH4-x において、R1 がフェニル基である化合物としては、フェニルシラン及びジフェニルシラン等を挙げることができ、R1 がビニル基である化合物としては、ビニルシラン及びジビニルシラン等を挙げることができる。
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る層間絶縁膜は、分子中に炭素原子同士の二重結合を有していると共に水素原子を含む弗素化炭素化合物である1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロペンを主成分とする原料をプラズマ重合反応させることによって形成される弗素化アモルファスカーボン膜である。
以下、第2の実施形態に係る層間絶縁膜の形成方法について説明する。
まず、切替スイッチ14により接地された試料台13の上に半導体基板12を載置した後、反応室11の内部を真空ポンプ26により真空引きする。
次に、第1の貯蔵容器24に1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロペンを貯蔵すると共に、第1の貯蔵容器24に例えばアルゴンよりなるキャリアガスを50〜500sccmの流量で供給して、バブリングされた1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロペンを反応室11の内部に導入する。
次に、反応室11内の圧力を100〜500mTorrに調整した後、上部電極となるシャワーヘッド16に第2の高周波電源17から周波数が13.56MHzである100〜500Wの高周波電力を印加する。このようにすると、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロペンガスが部分的に分解して、分解生成物としてモノマー、イオン及びラジカルが生成され、生成されたモノマー、イオン及びラジカルが重合反応して、半導体基板12上にプラズマ重合膜よりなる層間絶縁膜が形成される。
このプラズマ重合膜は、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロペンを主成分としているため、炭素原子及び弗素原子と共に水素原子を含んだ弗素化アモルファスカーボン膜となっており、膜堆積直後の比誘電率は2.5であった。
ところで、プラズマ重合膜は、原料ガスがプラズマ中で分解して生成された分解生成物であるイオンやラジカルが半導体基板12上で反応することにより形成されるため、プラズマ中に存在する分解生成物の特性がプラズマ重合膜の構造に対して大きな影響を与える。また、プラズマ重合膜の耐熱性は、プラズマ重合膜の構造を決定する架橋密度と密接に関連している。
従来の弗素化アモルファスカーボン膜よりなるプラズマ重合膜は、プラズマ重合膜を構成するポリマーの結合が直鎖状であって一次元性であるため、ガラス転移点が低いので、耐熱性に劣ると考えられる。
これに対して、第2の実施形態に係る層間絶縁膜は、プラズマ重合膜を構成するポリマーの結合が3次元的になり易いため、架橋密度が高くなってガラス転移点が高くなるので、耐熱性に優れている。すなわち、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロペンは分子中に炭素原子同士の二重結合を有しているため、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロペンがプラズマ中で分解して生成される分解生成物は、半導体基板12上でプラズマ重合膜を形成する際に架橋反応を生じ易い。このため、得られるプラズマ重合膜は、ガラス転移点が高くなって、耐熱性に優れている。
第2の実施形態に係る層間絶縁膜の耐熱性を評価するために、第2の実施形態に係る弗素化アモルファスカーボン膜が形成された半導体基板12を真空中における400℃の温度下で1時間保持したところ、弗素化アモルファスカーボン膜の膜厚減少は約6%程度に過ぎないと共に、比誘電率は約2.6程度であって約0.1の増加に留まった。これにより、第2の実施形態に係る弗素化アモルファスカーボン膜が耐熱性に優れていることを確認できた。
尚、第2の実施形態においては、分子中に炭素原子同士の二重結合を有していると共に水素原子を含む弗素化炭素化合物として、1,1,1,3,3−ペンタフルオロプロペンを用いたが、これに代えて、1H,1H,2H−パーフルオロヘキセン、1H,1H,2H−パーフルオロ−1−オクテン、トリフルオロエチレン又は3,3,3−トリフルオロプロパン等を用いることができる。
第2の実施形態に係る層間絶縁膜の原料としては、分子中に炭素原子同士の二重結合を有していると共に水素原子を含む弗素化炭素化合物を単独で用いてもよいし、この弗素化炭素化合物に他の成分例えばN2 等が含まれていてもよい。
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る層間絶縁膜は、分子中に炭素原子同士の二重結合を有していると共に水素原子を含まない弗素化炭素化合物であるヘキサフルオロプロペンを主成分とする原料をプラズマ重合反応させることによって形成される弗素化アモルファスカーボン膜である。
第3の実施形態は、第2の実施形態における原料を変更したものであるから、以下においては、原料についてのみ説明する。
反応室11の内部にヘキサフルオロプロペンを導入すると、ヘキサフルオロプロペンが部分的に分解してプラズマ化され、分解生成物としてモノマー、イオン及びラジカルが生成され、生成されたモノマー、イオン及びラジカルが重合反応して、半導体基板12上にプラズマ重合膜よりなる層間絶縁膜が形成される。
第3の実施形態においては、ヘキサフルオロプロペンが水素原子を含んでいないため、炭素原子及び弗素原子のみを含む弗素化アモルファスカーボン膜であって、堆積直後における弗素化アモルファスカーボン膜の比誘電率は2.3であった。
また、第3の実施形態においても、プラズマ重合膜を構成するポリマーの結合が3次元的になり易いため、ガラス転移点が高いので、耐熱性に優れている。
第3の実施形態に係る層間絶縁膜の耐熱性を評価するために、第3の実施形態に係る弗素化アモルファスカーボン膜が形成された半導体基板12を真空中における400℃の温度下で1時間保持したところ、弗素化アモルファスカーボン膜の膜厚減少は約5%程度に過ぎないと共に、比誘電率は約2.5程度であって約0.2の増加に留まった。これにより、第3の実施形態に係る弗素化アモルファスカーボン膜が耐熱性に優れていることを確認できた。すなわち、第3の実施形態に係る弗素化アモルファスカーボン膜は、水素原子を含まず、弗化炭素のみからなるので、第2の実施形態に係る弗素化アモルファスカーボン膜に比べて、耐熱性がより向上していると共に比誘電率が一層低くなっている。
尚、第3の実施形態に係る層間絶縁膜の原料としては、分子中に炭素原子同士の二重結合を有していると共に水素原子を含まない弗素化炭素化合物を単独で用いてもよいし、この弗素化炭素化合物に他の成分例えばN2 等が含まれていてもよい。
(第4の実施形態)
第4の実施形態に係る層間絶縁膜は、分子中に炭素原子同士の二重結合を2つ有していると共に水素原子を含まない弗素化炭素化合物であるヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンを主成分とする原料をプラズマ重合反応させることによって形成される弗素化アモルファスカーボン膜である。
第4の実施形態は、第2の実施形態における原料を変更したものであるから、以下においては、原料についてのみ説明する。
反応室11の内部に、[化3]に示すヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンを導入すると、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンが部分的に分解して、分解生成物としてモノマー、イオン及びラジカルが生成され、生成されたモノマー、イオン及びラジカルが重合反応して、半導体基板12上にプラズマ重合膜よりなる層間絶縁膜が形成される。
第4の実施形態においては、ヘキサフルオロ−1,3−ブタジエンは、分子中に炭素原子同士の二重結合を2つ有しているため、プラズマ中でこれら2つの二重結合が部分的に分解されると、例えば[化4]に示すような、4つの未結合手を有するラジカルが生成され、生成されたラジカルが重合反応を起こす。このため、プラズマ重合膜を構成するポリマーの結合が確実に3次元的になるため、架橋密度が第2及び第3の実施形態よりも大きくなって、ガラス転移点が一層高くなるので、耐熱性が一層向上する。
尚、第4の実施形態に係る層間絶縁膜の原料としては、分子中に炭素原子同士の二重結合を2つ有していると共に水素原子を含まない弗素化炭素化合物を単独で用いてもよいし、この弗素化炭素化合物に他の成分例えばN2 等が含まれていてもよい。
(第5の実施形態)
第5の実施形態に係る層間絶縁膜は、分子中に炭素原子同士の三重結合を有していると共に水素原子を含む弗素化炭素化合物である3,3,3−トリフルオロプロピンを主成分とする原料をプラズマ重合反応させることによって形成される弗素化アモルファスカーボン膜である。
第5の実施形態は、第2の実施形態における原料を変更したものであるから、以下においては、原料についてのみ説明する。
反応室11の内部に3,3,3−トリフルオロプロピン(CF3 C≡CH)を導入すると、3,3,3−トリフルオロプロピンが部分的に分解して、分解生成物としてモノマー、イオン及びラジカルが生成され、生成されたモノマー、イオン及びラジカルが重合反応して、半導体基板上にプラズマ重合膜よりなる層間絶縁膜が形成される。
第5の実施形態においては、3,3,3−トリフルオロプロピンが水素原子を含んでいるため、炭素原子及び弗素原子と共に水素原子を含む弗素化アモルファスカーボン膜であって、堆積直後における弗素化アモルファスカーボン膜の比誘電率は2.5であった。
第5の実施形態においては、3,3,3−トリフルオロプロピンは、[化5]に示すように、炭素原子同士の三重結合を有しているため、プラズマ中でこの三重結合が部分的に分解されると、例えば[化6]に示すような、4つの未結合手を有するラジカルが生成され、生成されたラジカルが重合反応を起こす。このため、プラズマ重合膜を構成するポリマーの結合が確実に3次元的になるため、架橋密度が第2及び第3の実施形態よりも大きくなって、ガラス転移点が一層高くなるので、耐熱性が一層向上する。
第5の実施形態に係る層間絶縁膜の耐熱性を評価するために、第5の実施形態に係る弗素化アモルファスカーボン膜が形成された半導体基板を真空中における400℃の温度下で1時間保持したところ、弗素化アモルファスカーボン膜の膜厚減少は約5%程度に過ぎないと共に、比誘電率は約2.6程度であって約0.1の増加に留まった。これにより、第5の実施形態に係る弗素化アモルファスカーボン膜が耐熱性に優れていることを確認できた。
尚、第5の実施形態においては、分子中に炭素原子同士の三重結合を有していると共に水素原子を含む弗素化炭素化合物として、3,3,3−トリフルオロプロピンを用いたが、これに代えて、パーフルオロ(t−ブチル)アセチレン(HC≡CC(CF3 )3 を用いてもよい。
また、第5の実施形態に係る層間絶縁膜の原料としては、分子中に炭素原子同士の三重結合を有していると共に水素原子を含む弗素化炭素化合物を単独で用いてもよいし、この弗素化炭素化合物に他の成分例えばN2 等が含まれていてもよい。
(第6の実施形態)
第6の実施形態に係る層間絶縁膜は、分子中に炭素原子同士の三重結合を有していると共に水素原子を含まない弗素化炭素化合物であるヘキサフルオロ−2−ブチンを主成分とする原料をプラズマ重合反応させることによって形成される弗素化アモルファスカーボン膜である。
第6の実施形態は、第2の実施形態における原料を変更したものであるから、以下においては、原料についてのみ説明する。
反応室11の内部にヘキサフルオロ−2−ブチン(CF3 C≡CCF3 )を導入すると、ヘキサフルオロ−2−ブチンが部分的に分解して、分解生成物としてモノマー、イオン及びラジカルが生成され、生成されたモノマー、イオン及びラジカルが重合反応して、半導体基板12上にプラズマ重合膜よりなる層間絶縁膜が形成される。
第6の実施形態においては、ヘキサフルオロ−2−ブチンが水素原子を含んでいないため、炭素原子及び弗素原子のみを含む弗素化アモルファスカーボン膜であって、堆積直後における弗素化アモルファスカーボン膜の比誘電率は2.3であった。
第6の実施形態においては、ヘキサフルオロ−2−ブチンは、前記の[化5]に示した3,3,3−トリフルオロプロピンと同様に、炭素原子同士の三重結合を有しているため、プラズマ中でこの三重結合が部分的に分解されると、3,3,3−トリフルオロプロピンの場合と同様に、4つの未結合手を有するラジカルが生成され、生成されたラジカルが重合反応を起こす。このため、プラズマ重合膜を構成するポリマーの結合が確実に3次元的になるため、架橋密度が第2及び第3の実施形態よりも大きくなって、ガラス転移点が一層高くなるので、耐熱性が一層向上する。
第6の実施形態に係る層間絶縁膜の耐熱性を評価するために、第6の実施形態に係る弗素化アモルファスカーボン膜が形成された半導体基板12を真空中における400℃の温度下で1時間保持したところ、弗素化アモルファスカーボン膜の膜厚減少は約5%程度に過ぎないと共に、比誘電率は約2.4程度であって約0.1の増加に留まった。これにより、第6の実施形態に係る弗素化アモルファスカーボン膜が耐熱性に優れていることを確認できた。
尚、第6の実施形態においては、分子中に炭素原子同士の三重結合を有していると共に水素原子を含まない弗素化炭素化合物を単独で用いてもよいし、この弗素化炭素化合物に他の成分例えばN2 等が含まれていてもよい。
(第7の実施形態)
第7の実施形態に係る層間絶縁膜は、分子中に炭素原子同士の多環構造(縮合環構造)を有していると共に水素原子を含まない弗素化炭素化合物であるパーフルオロデカリンを主成分とする原料をプラズマ重合反応させることによって形成される弗素化アモルファスカーボン膜である。
第7の実施形態は、第2の実施形態における原料を変更したものであるから、以下においては、原料についてのみ説明する。
反応室11の内部に、[化7]に示すパーフルオロデカリンを導入すると、パーフルオロデカリンが部分的に分解して、分解生成物としてモノマー、イオン及びラジカルが生成され、生成されたモノマー、イオン及びラジカルが重合反応して、半導体基板12上にプラズマ重合膜よりなる層間絶縁膜が形成される。
第7の実施形態においては、パーフルオロデカリンが水素原子を含んでいないため、炭素原子及び弗素原子のみを含む弗素化アモルファスカーボン膜であって、堆積直後における弗素化アモルファスカーボン膜の比誘電率は2.3であった。
第7の実施形態においては、パーフルオロデカリンは、[化7]に示すように、炭素原子同士の多環構造(縮合環構造)を有しているため、プラズマ中で多環構造が部分的に分解されると、例えば[化8]に示すような、4つの未結合手を有するラジカルが生成され、生成されたラジカルが重合反応を起こす。このため、プラズマ重合膜を構成するポリマーの結合が確実に3次元的になるため、架橋密度が第2及び第3の実施形態よりも大きくなって、ガラス転移点が一層高くなるので、耐熱性が一層向上する。
第7の実施形態に係る層間絶縁膜の耐熱性を評価するために、第7の実施形態に係る弗素化アモルファスカーボン膜が形成された半導体基板12を真空中における400℃の温度下で1時間保持したところ、弗素化アモルファスカーボン膜の膜厚減少は約5%程度に過ぎないと共に、比誘電率は約2.4程度であって約0.1の増加に留まった。これにより、第7の実施形態に係る弗素化アモルファスカーボン膜が耐熱性に優れていることを確認できた。
尚、第7の実施形態においては、分子中に炭素原子同士の多環構造を有していると共に水素原子を含まない弗素化炭素化合物として、パーフルオロデカリンを用いたが、これに代えて、[化9]に示すパーフルオロフロレン、[化10]に示すパーフルオロ−1−メチルデカリン及び[化11]に示すPerfluoro(tetradecahydrophenanthrene) 等の縮合環構造を有する弗素化炭素化合物を用いてもよいし、[化12]に示すパーフルオロビフェニール等の通常の多環構造を有する弗素化炭素化合物を用いてもよい。
(第8の実施形態)
第8の実施形態に係る層間絶縁膜は、一般式:R1 xSi(OR2 )4-x (但し、R1 はフェニル基又はビニル基であり、R2 はアルキル基であり、xは1〜3の整数である。)で表わされる有機シリコン化合物であるフェニルトリメトキシシランと、弗化炭素化合物であるF−C結合を有するベンゼン誘導体との混合ガスを主成分とする原料をプラズマ重合反応させることによって形成される弗化炭素含有シリコン酸化膜である。
以下、第8の実施形態に係る層間絶縁膜の形成方法について説明する。
まず、例えば400℃に加熱され且つ切替スイッチ14により接地された試料台13の上に半導体基板12を載置した後、反応室11の内部を真空ポンプ26により真空引きする。
次に、[化1]に示されるフェニルトリメトキシシランを貯蔵している第1の貯蔵容器24に例えばアルゴンよりなるキャリアガスを200cc/minの流量で供給して、バブリングされたフェニルトリメトキシシランを反応室11の内部に導入すると共に、F−C結合を有するベンゼン誘導体であって[化13]に示すジフロロベンゼンを貯蔵している第2の貯蔵容器25に例えばアルゴンよりなるキャリアガスを200cc/minの流量で供給して、バブリングされたジフロロベンゼンを反応室11の内部に導入する。
次に、反応室11内の圧力を約1.0Torrに調整した後、上部電極となるシャワーヘッド16に第2の高周波電源17から周波数が13.56MHzである600Wの高周波電力を印加する。このようにすると、フェニルトリメトキシシランガス及びジフロロベンゼンが部分的に分解して、分解生成物としてモノマー、イオン及びラジカルが生成されると共に、生成されたモノマー、イオン及びラジカルが重合反応して、半導体基板12の上にプラズマ重合膜よりなる層間絶縁膜が形成される。このプラズマ重合膜の構造を[化14]に模式的に示す。
第8の実施形態に係る層間絶縁膜は、プラズマCVD法により形成されるため、有機SOG薬液の塗布工程及び有機SOG膜の熱硬化工程を複数回づつ行なう必要がないので、製膜性が向上すると共にコストの低減を図ることができる。
また、第8の実施形態に係るプラズマ重合膜の比誘電率は約2.5であって低い誘電率を示す。また、2週間室温で放置した後の比誘電率は約2.7であって、経時変化の少ない安定した膜質である。従って、第8の実施形態によると、製膜性の向上を図りつつ比誘電率の低減を実現することができる。
さらに、リーク電流密度についても、5MV/cmで約4.5×10-8A/cm2 と良好な結果が得られた。
尚、反応室11内の圧力は、約1.0Torrに設定したが、これに限定されるものではなく、100mTorr〜20Torrの範囲内で適宜選択できるが、0.5〜5.0Torrの範囲内が好ましい。
また、上部電極であるシャワーヘッド16に印加する高周波電力としては、100〜1000Wの範囲内で適宜選択できるが、250〜500Wの範囲内が好ましい。
また、半導体基板12の加熱温度は、第1の実施形態と同様、25℃〜500℃の範囲内で適宜選択可能であるが、200〜400℃が好ましい。
また、前記の一般式:R1 xSi(OR2 )4-x において、R1 がフェニル基である化合物としては、フェニルトリメトキシシランのほかに、ジフェニルジメトキシシラン等を挙げることができ、R1 がビニル基である化合物としては、ビニルトリメトキシシラン及びジビニルジメトキシシラン等を挙げることができる。
また、弗化炭素化合物であるF−C結合を有するベンゼン誘導体としては、ジフロロベンゼンに代えて、フロロベンゼン及びヘキサフロロベンゼン等の弗化ベンゼンを用いることができる。
(第9の実施形態)
第9の実施形態に係る層間絶縁膜は、一般式:R1 xSi(OR2 )4-x (但し、R1 はフェニル基又はビニル基であり、R2 はアルキル基であり、xは1〜3の整数である。)で表わされる有機シリコン化合物であるフェニルトリメトキシシランと、弗化炭素化合物であるC2 F6 との混合ガスを主成分とする原料をプラズマ重合反応させることによって形成される弗化炭素含有シリコン酸化膜である。
以下、第9の実施形態に係る層間絶縁膜の形成方法について説明する。
まず、例えば400℃に加熱され且つ切替スイッチ14により接地された試料台13の上に半導体基板12を載置した後、反応室11の内部を真空ポンプ26により真空引きする。
次に、フェニルトリメトキシシランを貯蔵している第1の貯蔵容器24に例えばアルゴンよりなるキャリアガスを200cc/minの流量で供給して、バブリングされたフェニルトリメトキシシランを反応室11の内部に導入すると共に、C2 F6 ガスを第3のガス供給ライン23から反応室11内に導入する。
次に、反応室11内の圧力を約1.0Torrに調整した後、上部電極となるシャワーヘッド16に第2の高周波電源17から周波数が13.56MHzである700Wの高周波電力を印加する。このようにすると、フェニルトリメトキシシランガス及びC2 F6 が部分的に分解して、分解生成物としてモノマー、イオン及びラジカルが生成されると共に、生成されたモノマー、イオン及びラジカルが重合反応して、半導体基板12の上にプラズマ重合膜よりなる層間絶縁膜が形成される。このプラズマ重合膜の構造を[化15]に模式的に示す。
第9の実施形態に係る層間絶縁膜は、プラズマCVD法により形成されるため、有機SOG薬液の塗布工程及び有機SOG膜の熱硬化工程を複数回づつ行なう必要がないので、製膜性が向上すると共にコストの低減を図ることができる。
また、第9の実施形態に係るプラズマ重合膜の比誘電率は約2.9であって低い誘電率を示す。また、2週間室温で放置した後の比誘電率は約3.0であって、経時変化の少ない安定した膜質である。従って、第9の実施形態によると、製膜性の向上を図りつつ比誘電率の低減を実現することができる。
さらに、リーク電流密度についても、5MV/cmで約5.5×10-8A/cm2 と良好な結果が得られた。
尚、反応室11内の圧力は、約1.0Torrに設定したが、これに限定されるものではなく、100mTorr〜20Torrの範囲内で適宜選択できるが、0.5〜5.0Torrの範囲内が好ましい。
また、上部電極であるシャワーヘッド16に印加する高周波電力としては、100〜2000Wの範囲内で適宜選択できるが、300〜750Wの範囲内が好ましい。
また、半導体基板12の加熱温度は、第1の実施形態と同様、25℃〜500℃の範囲内で適宜選択可能であるが、200〜400℃が好ましい。
また、前記の一般式:R1 xSi(OR2 )4-x において、R1 がフェニル基である化合物としては、フェニルトリメトキシシランのほかに、ジフェニルジメトキシシラン等を挙げることができ、R1 がビニル基である化合物としては、ビニルトリメトキシシラン及びジビニルジメトキシシラン等を挙げることができる。
また、弗化炭素化合物としては、C2 F6 に代えて、CF4 又はC4 F8 等を用いてもよい。
さらに、第9の実施形態においては、一般式:R1 xSi(OR2 )4-x で表わされる有機シリコン化合物を主成分とする原料をプラズマ重合反応させてプラズマ重合膜よりなる層間絶縁膜を形成したが、これに代えて、一般式:R1 xSiH4-x (但し、R1 はフェニル基又はビニル基であり、xは1〜3の整数である。)で表わされる有機シリコン化合物を主成分とする原料をプラズマ重合反応させてプラズマ重合膜よりなる層間絶縁膜を形成してもよいし、前記の一般式:R1 xSi(OR2 )4-x 又は一般式:R1 xSiH4-x で表わされる有機シリコン化合物を主成分とする原料を、例えばO2 やH2 O等よりなる酸化剤と反応させて層間絶縁膜を形成してもよい。この場合には、第3のガス供給ライン23から、C2 F6 ガスと共にO2 ガス又はH2 Oガスを反応室11の内部に導入する。
尚、前記の一般式:R1 xSiH4-x において、R1 がフェニル基である化合物としては、フェニルシラン及びジフェニルシラン等を挙げることができ、R1 がビニル基である化合物としては、ビニルシラン及びジビニルシラン等を挙げることができる。
(第10の実施形態)
第10の実施形態に係る層間絶縁膜は、一般式:R1 xSi(OR2 )4-x (但し、R1 はフェニル基又はビニル基であり、R2 はアルキル基であり、xは1〜3の整数である。)で表わされる有機シリコン化合物であるフェニルトリメトキシシランと、弗化炭素化合物である[化7]に示すパーフルオロデカリンとの混合ガスを主成分とする原料をプラズマ重合反応させることによって形成される弗化炭素含有シリコン酸化膜である。
以下、第10の実施形態に係る層間絶縁膜の形成方法について説明する。
まず、例えば400℃に加熱され且つ切替スイッチ14により接地された試料台13の上に半導体基板12を載置した後、反応室11の内部を真空ポンプ26により真空引きする。
次に、フェニルトリメトキシシランを貯蔵している第1の貯蔵容器24に例えばアルゴンよりなるキャリアガスを280cc/minの流量で供給して、バブリングされたフェニルトリメトキシシランを反応室11の内部に導入すると共に、パーフルオロデカリンを貯蔵している第2の貯蔵容器25に例えばアルゴンよりなるキャリアガスを42cc/minの流量で供給して、バブリングされたパーフルオロデカリンを反応室11の内部に導入する。
次に、反応室11内の圧力を約2.0Torrに調整した後、上部電極となるシャワーヘッド16に第2の高周波電源17から周波数が13.56MHzである500Wの高周波電力を印加する。このようにすると、フェニルトリメトキシシランガス及びパーフルオロデカリンが部分的に分解して、分解生成物としてモノマー、イオン及びラジカルが生成されると共に、生成されたモノマー、イオン及びラジカルが重合反応して、半導体基板12の上にプラズマ重合膜よりなる層間絶縁膜が形成される。
第10の実施形態に係る層間絶縁膜は、プラズマCVD法により形成されるため、有機SOG薬液の塗布工程及び有機SOG膜の熱硬化工程を複数回づつ行なう必要がないので、製膜性が向上すると共にコストの低減を図ることができる。
また、第10の実施形態に係るプラズマ重合膜の比誘電率は約2.6であって低い誘電率を示す。また、2週間室温で放置した後の比誘電率は約2.7であって、経時変化の少ない安定した膜質である。従って、第10の実施形態によると、製膜性の向上を図りつつ比誘電率の低減を実現することができる。
さらに、ガラス転移点は430℃以上であって、良好な耐熱性を示した。
尚、反応室11内の圧力は、約2.0Torrに設定したが、これに限定されるものではなく、100mTorr〜20Torrの範囲内で適宜選択できるが、0.5〜5.0Torrの範囲内が好ましい。
また、上部電極であるシャワーヘッド16に印加する高周波電力としては、100〜1000Wの範囲内で適宜選択できるが、250〜500Wの範囲内が好ましい。
また、半導体基板12の加熱温度は、第1の実施形態と同様、25℃〜500℃の範囲内で適宜選択可能であるが、200〜400℃が好ましい。
また、前記の一般式:R1 xSi(OR2 )4-x において、R1 がフェニル基である化合物としては、フェニルトリメトキシシランのほかに、ジフェニルジメトキシシラン等を挙げることができ、R1 がビニル基である化合物としては、ビニルトリメトキシシラン及びジビニルジメトキシシラン等を挙げることができる。
また、弗化炭素化合物としては、パーフルオロデカリンに限られず、第2〜第7の実施形態に示したものを適宜用いることができる。
(第11の実施形態)
第11の実施形態に係る層間絶縁膜は、シロキサン誘導体であるヘキサメチルジシロキサンと、弗化炭素化合物である[化7]に示すパーフルオロデカリンとの混合ガスを主成分とする原料をプラズマ重合反応させることによって形成される弗化炭素含有シリコン酸化膜である。
以下、第11の実施形態に係る層間絶縁膜の形成方法について説明する。
まず、例えば400℃に加熱され且つ切替スイッチ14により接地された試料台13の上に半導体基板12を載置した後、反応室11の内部を真空ポンプ26により真空引きする。
次に、ヘキサメチルジシロキサンを貯蔵している第1の貯蔵容器24に例えばアルゴンよりなるキャリアガスを28cc/minの流量で供給して、バブリングされたヘキサメチルジシロキサンを反応室11の内部に導入すると共に、パーフルオロデカリンを貯蔵している第2の貯蔵容器25に例えばアルゴンよりなるキャリアガスを280cc/minの流量で供給して、バブリングされたパーフルオロデカリンを反応室11の内部に導入する。
次に、反応室11内の圧力を約0.8Torrに調整した後、上部電極となるシャワーヘッド16に第2の高周波電源17から周波数が13.56MHzである250Wの高周波電力を印加する。このようにすると、ヘキサメチルジシロキサン及びパーフルオロデカリンが部分的に分解して、分解生成物としてモノマー、イオン及びラジカルが生成されると共に、生成されたモノマー、イオン及びラジカルが重合反応して、半導体基板12の上にプラズマ重合膜よりなる層間絶縁膜が形成される。
第11の実施形態に係る層間絶縁膜は、プラズマCVD法により形成されるため、有機SOG薬液の塗布工程及び有機SOG膜の熱硬化工程を複数回づつ行なう必要がないので、製膜性が向上すると共にコストの低減を図ることができる。
また、第11の実施形態に係るプラズマ重合膜の比誘電率は約2.75であって低い誘電率を示す。また、2週間室温で放置した後の比誘電率は約2.8であって、経時変化の少ない安定した膜質である。従って、第11の実施形態によると、製膜性の向上を図りつつ比誘電率の低減を実現することができる。
さらに、ガラス転移点は430℃以上であって、良好な耐熱性を示した。
尚、反応室11内の圧力は、約0.8Torrに設定したが、これに限定されるものではなく、100mTorr〜20Torrの範囲内で適宜選択できるが、0.5〜5.0Torrの範囲内が好ましい。
また、上部電極であるシャワーヘッド16に印加する高周波電力としては、100〜1000Wの範囲内で適宜選択できるが、250〜500Wの範囲内が好ましい。
また、半導体基板12の加熱温度は、第1の実施形態と同様、25℃〜500℃の範囲内で適宜選択可能であるが、200〜400℃が好ましい。
また、シロキサン誘導体としては、ヘキサメチルジシロキサンに代えて、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン(H(CH3 )2 Si−O−Si(CH3 )2 H、又は[化16]に示す1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン等を用いてもよい。
また、弗化炭素化合物としては、パーフルオロデカリンに限られず、第2〜第7の実施形態に示したものを適宜用いることができる。
さらに、第11の実施形態においては、シロキサン誘導体を主成分とする原料をプラズマ重合反応させてプラズマ重合膜よりなる層間絶縁膜を形成したが、これに代えて、シロキサン誘導体を主成分とする原料を、例えばO2 やH2 O等よりなる酸化剤と反応させて層間絶縁膜を形成してもよい。この場合には、第3のガス供給ライン23から、O2 ガス又はH2 Oガスを反応室11の内部に導入する。
尚、第1〜第11の実施形態においては、キャリアガスとしてアルゴンガスを使用したが、これに代えて、水素、窒素又はヘリウム等を適当に用いることができる。
また、第1〜第11の実施形態においては、下部電極となる試料台13は接地していたが、これに代えて、切替スイッチ14により、試料台13に第1の高周波電源15から高周波電力を印可すると、反応室11において発生した反応ガスよりなるプラズマを試料台13に効率良く取り込めるので、層間絶縁膜の形成速度を2〜5倍程度に向上させることができる。