JP3998758B2 - 画像検査方法および装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、基準画像と検査対象画像とを比較して検査する画像検査方法と装置に関する。特に、正常濃度値との差は大きいが寸法の小さい不良や寸法は大きいが正常濃度値と差の小さい不良を検出することができる画像検査方法と装置に関する。
【0002】
なお、印刷物における印刷の濃淡を数量的に表す場合、一般に“濃度値”が用いられる。しかし、印刷の濃淡は“濃度値”に限定されず“反射率”、“透過率”または、その他の線型、非線型の数量によって表すことができる。本発明においては数量的に表した印刷の濃淡を“反射率”等のその他の数量的表現を含めた意味で“濃度値”と記述する。
【0003】
【従来の技術】
印刷物の不良には、印刷用紙の皺、異物、汚れ等の欠陥によるもの、印刷中に発生する、インキ汚れ、ヒッキー、ドクター筋、濃度不良、色調不良等、様々なものがある。
従来、印刷物の検査は、人間によって行われる目視検査が主体であり、例えば、枚葉印刷機、あるいは輪転印刷機の折ユニットから排出される印刷後の印刷物においては、印刷機のオペレータ(操作者)が適時抜き取って、目視による検査を行っていた。また、連続した印刷物が印刷機より排出され抜き取りの行えない場合は、印刷物の走行速度に同期させて瞬間発光するストロボ光を印刷物に照射し、人間の目の残像を利用して静止状態とし印刷物の目視検査を行っていた。
目視検査は精神の集中を必要とし検査する人間に対する作業負荷が非常に大きく、また人間が行うため検査基準が曖昧であったり不良の見逃しが避けられないものである。そこで、印刷物検査を自動的に行う提案がなされ様々な技術が開示されている。
【0004】
例えば、特公平1−47823号には、正常な印刷物が印刷された時点で走行印刷物の絵柄から読み取った画像データを基準画像データとして画像メモリに記憶しておき、その画像メモリから読み出した基準画像データを、印刷中の検査対象の印刷物の絵柄から読み取った検査対象画像データと画素単位で比較して印刷の良否判定を行う方式の印刷物の検査装置に関する技術が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような検査装置においては画素単位の比較を基本とするため、濃度値の差が大きい不良については、その面積の大きさの如何にかかわらず検出できるが、濃度値の差が小さい不良については、その面積の大きさがいくら大きくても検出することができないという問題がある。
これを避けるため、所定の領域の画素の濃度値の差の絶対値を積分することにより、ノイズとの見分けが困難な小さな濃度値の差を明確な有意差として検出することが行われる。積分処理装置を実現し易いため、印刷画像全体の濃度値のわずかな変化の検出や、印刷用紙の移送方向に延びるドクター筋やヒッキーの検出に適用される。
【0006】
ところが本来は、この積分する領域は印刷絵柄の内容に応じて決定することが効果的である。しかし印刷物における絵柄は多種多様であるため、印刷品目が切り替わる度に積分する領域を決定することは運用上実際的ではない。また、多種多様な絵柄に対応できるように積分する領域をあらかじめ多様化細分化することが考えられるが、積分処理装置における演算量が膨大となるため装置規模の点で現実的ではない。
そこで本発明の目的は、不良における濃度値の差と面積の大きさとの両方を一体として扱う検査基準により良否判定を行う画像検査方法および装置を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は下記の本発明によって達成される。すなわち、本発明は「基準画像と検査対象画像を比較して検査する画像検査方法において、前記基準画像と前記検査対象画像とに基づいてすくなくとも差の絶対値の演算を行って得る濃淡画像に対して複数の所定の閾値を用いて2値化演算を行い前記閾値の各々に対応する2値化画像を得る2値化演算過程と、前記閾値の各々に対応して値の大きな閾値に対しては面積の小さな所定の構成要素を用いて前記閾値の各々に対応する2値化画像に対してモルフォロジー演算を行い前記閾値の各々に対応するモルフォロジー演算画像を得るモルフォロジー演算過程と、前記閾値の各々に対応するモルフォロジー演算画像の全てに基づいて不良における正常濃度値との差と面積の大きさとの両不良属性から不良種類を判別し不良種別値を得る良否判定を行う良否判定過程と、を含むことを特徴とする画像検査方法。」である。
本発明によれば、2値化過程において得られる2値化画像は閾値に応じて画素値(濃度値)によって規定される特定の範囲に含まれるか否かを示す画像とすることができる。それに続くモルフォロジー演算過程において得られるモルフォロジー演算画像は構成要素に応じて画素数(面積)に関し特定の範囲の部分画像を2値化画像から抽出して構成した画像とすることができる。複数の閾値とそれに対応する複数の構成要素によって複数の2値化画像が得られる。そして良否判定過程において上記により得られた複数の2値化画像に基づき良否判定が行われるから、不良における正常濃度値との差と面積の大きさとの両方を一体として扱う検査基準により良否判定を行い、しかも、その検査基準と所望の基準との一致度が高い画像検査方法が提供される。また、本発明におけるモルフォロジー演算は2値化画像に対して行われるから濃淡画像に対して行う場合と比較して演算過程を簡略化することができる。また、濃淡画像の画素値(濃度値)と画素数(面積)は不良における濃度値の差と面積の大きさに直接結びつくから、それに基づく2値化画像に対するモルフォロジー演算過程が簡略化される。また、値の大きな閾値に対しては面積の小さな構成要素が対応するから、不良の軽重に対する一般的な認識と検出される不良との傾向が一致する。
【0008】
また本発明は「基準画像と検査対象画像を比較して検査する画像検査装置において、前記基準画像と前記検査対象画像とに基づいてすくなくとも差の絶対値の演算を行って得る濃淡画像に対して複数の所定の閾値を用いて2値化演算を行い前記閾値の各々に対応する2値化画像を得る2値化演算手段と、前記閾値の各々に対応する所定の構成要素を用いて前記閾値の各々に対応する2値化画像に対してモルフォロジー演算を行い前記閾値の各々に対応するモルフォロジー演算画像を得るモルフォロジー演算手段と、前記閾値の各々に対応するモルフォロジー演算画像の全てに基づいて不良における正常濃度値との差と面積の大きさとの両不良属性から不良種類を判別し不良種別値を得る良否判定を行う良否判定手段と、を含むことを特徴とする画像検査方法。」である。
本発明によれば、2値化過程において得られる2値化画像は閾値に応じて画素値(濃度値)によって規定される特定の範囲に含まれるか否かを示す画像とすることができる。それに続くモルフォロジー演算過程において得られるモルフォロジー演算画像は構成要素に応じて画素数(面積)に関し特定の範囲の部分画像を2値化画像から抽出して構成した画像とすることができる。複数の閾値とそれに対応する複数の構成要素によって複数の2値化画像が得られる。そして良否判定手段により上記により得られた複数の2値化画像に基づき良否判定が行われるから、不良における正常濃度値との差と面積の大きさとの両方を一体として扱う検査基準により良否判定を行い、しかも、その検査基準と所望の基準との一致度が高い画像検査装置が提供される。また、本発明におけるモルフォロジー演算は2値化画像に対して行われるから濃淡画像に対して行う場合と比較して演算手段を簡略化することができる。また、濃淡画像の画素値(濃度値)と画素数(面積)は不良における濃度値の差と面積の大きさに直接結びつくから、それに基づく2値化画像に対するモルフォロジー演算手段が簡略化される。また、値の大きな閾値に対しては面積の小さな構成要素が対応するから、不良の軽重に対する一般的な認識と検出される不良との傾向が一致する。
【0011】
【発明の実施の形態】
次に本発明について実施の形態により説明する。図1は本発明の画像検査方法を実施する装置(画像検査装置)の構成を示すブロック図である。図1において、1は印刷面を撮像する画像入力カメラ、2は画像を一時記憶する画像入力バッファ、3は画像入力における同期のための同期回路、4は良品印刷物の画像(基準画像)を記憶する基準画像メモリ、5は基準画像から不感帯画像を演算する不感帯演算回路、6は不感帯画像を記憶する不感帯画像メモリ、7は基準画像の更新と不感帯画像の作成を司令する回路基準画像更新・不感帯画像作成司令回路、8は検査対象画像と基準画像との差分の絶対値を演算する差分・絶対値化回路、9a,9b,9cは画像(差分絶対値画像)の2値化演算を行う2値化回路、10は2値化回路9a,9b,9cにおける演算パラメータ(閾値等)を設定する2値化閾値設定回路、11a,11b,11cは画像(2値化演算済画像)のモルフォルジー演算を行うモルフォルジー演算回路、12はモルフォルジー演算回路11a,11b,11cの演算パラメータ(構成要素等)を設定する構成要素設定回路、13はモルフォルジー演算回路11a,11b,11cの出力に基づいて印刷物の良否判定を行う判定回路、14は判定回路13が出力する不良種別値に対応する操作量を出力する制御回路である。
【0012】
画像入力カメラ1は印刷機に設置され、印刷ユニットから排出されるウェブ(印刷用紙)の印刷面を撮像する。画像入力カメラ1はラインセンサカメラ、イメージセンサカメラ等を用いることができる。画像入力カメラ1の撮像信号(アナログ信号)はA/D変換器によりディジタルデータに変換され画像入力バッファ2に一時記憶される。検査が行われるときは印刷機においてウェブは移送されているから、ウェブの移送に同期して、画像入力カメラ1が印刷面を撮像し画像入力バッファ2が所定の印刷領域の画像を一時記憶する。この同期は同期信号に基づいて行われる。同期回路3は、たとえば印刷機の原動軸の回転を検出するロータリーエンコーダ等が出力するウェブの移送信号に基づいて同期信号を生成し、その同期信号を画像入力カメラ1と入力バッファ2に出力する。
【0013】
基準画像メモリ4は画像入力バッファ2が一時記憶する画像を入力し、所定の印刷領域全体の画像、すなわち所定の検査領域の画像(1周期分の印刷物の画像)を記憶する。基準画像メモリ4が記憶するこの画像は良品印刷物の画像(基準画像)である。印刷機において良品が印刷されているときに、印刷機の制御盤で自動で行われる論理判定またはオペレータによる手入力に基づいて、回路基準画像更新・不感帯画像作成司令回路7は基準画像メモリ4に対して基準画像の更新を司令する出力を行う。基準画像の更新は検査開始前に行われるだけでなく、検査中においても、たとえば印刷速度を変化させた場合等の印刷条件の変更において適時実行される。
基準画像の一例を図2(A)に示す。基準画像は本来は濃淡画像(この例では画素値が0〜255)であるが、図2(A)では線画で濃淡画像を示してある。
【0014】
不感帯演算回路5は基準画像メモリ4が記憶する基準画像に基づいて不感帯画像を演算し不感帯画像メモリ6に出力する。基準画像と検査対象画像を画素ごとに比較する場合、一般に画像におけるエッジ部分(濃淡の急変部分)は基準画像と検査対象画像の位置ずれの影響が大きく現れ、正常な範囲内の位置ずれの場合においても差の絶対値が大きくなる。不感帯画像は、このような正常な範囲内の位置ずれを印刷不良と誤判定することがないようにするためのデータである。すなわち、基準画像と検査対象画像との差を評価する場合に、単純な差の絶対値だけにより評価するのではなく不感帯画像で設定される値が考慮される。たとえば差の絶対値が不感帯画像で設定される値を越える場合に、越えた値を実質的な基準画像と検査対象画像の差と見なすことが行われる。
【0015】
不感帯演算回路5は回路基準画像更新・不感帯画像作成司令回路7が出力する司令に基づいて不感帯画像を演算する。通常は、基準画像が更新される度に不感帯画像が演算される。
不感帯画像の一例を図2(B)に示す。不感帯画像は本来は濃淡画像であるが、図2(A)と同様図2(B)では線画で濃淡画像を示してある。図2(B)において、濃い部分が不感帯の大きさ(不感の強度)を示す。
【0016】
差分・絶対値化回路8は、画像入力バッファ2が出力する検査対象画像と、基準画像メモリ4が記憶する基準画像と、不感帯画像メモリ6が記憶する不感帯画像を入力する。そして、基準画像と検査対象画像の差の絶対値を各画素ごとに演算して差の絶対値画像を得る。前述のように、演算において不感帯画像が考慮され、たとえば各画素ごとの検査対象画像と検査対象画像の差の絶対値が不感帯画像で設定される値を越える場合に、越えた値を差の絶対値画像の各画素の値とする。また、不感帯画像で設定される値を越えない場合には差はないものとし、その画素値を“0”とする。
【0017】
検査対象画像の一例を図2(C)に、また不感帯画像を考慮しない単純な差の絶対値画像の一例を図2(D)に、また不感帯画像を考慮した実質的な差の絶対値画像の一例を図3(E)に示す。これらは本来は濃淡画像であるが、図2(C),図2(D),図3(E)では線画で濃淡画像を示してある。図2(C)に示す検査対象画像は欠陥部分を含んでいる。図2(D)に示す単純な差の絶対値画像では画像における(欠陥ではない)エッジ部分が認められる。図3(E)に示す実質的な差の絶対値画像では画像におけるエッジ部分はほぼ消えてなくなるが、欠陥部分ではない検査対象画像と基準画像との差も現れている。
【0018】
2値化回路9a,9b,9cは差分・絶対値化回路8が出力する差の絶対値画像に対して2値化を行う。その2値化を行う場合の閾値は2値化閾値設定回路12によって2値化回路9a,9b,9cに設定される。図3(E)に示す実質的な差の絶対値画像に対して、2値化回路9a,9b,9cにより2値化を行うと、図3(F),図3(G),図3(H)に示す2値化画像が得られる。図3(F),図3(G),図3(H)に示す3つの2値化画像は、異なる閾値で2値化を行って得た2値化画像であり、図3(F)が最も閾値が小さく(18/255;閾値/最大値)、図3(G)は中間の閾値であり(36/255)、図3(H)は閾値が最も大きい(54/255)。
【0019】
モルフォロジー演算回路11a,11b,11cは差の絶対値画像に対してモルフォロジー(morphology)演算を実行する。モルフォロジー演算は対象画像と対象画像に作用させる構成要素(structuring element )との2項演算を基本形態とする。構成要素を変えることにより様々な変換を得ることができる。構成要素設定回路10はその構成要素をモルフォロジー演算回路11a,11b,11cに設定する。モルフォロジー演算は“dilation”“erosion ”“opening ”“closing ”の4つの基本演算から構成される。モルフォロジー演算についてはまとめて後述することとし、ここでは図1におけるモルフォロジー演算回路11a,11b,11cの役割について説明する。
【0020】
判り易くするために、図1におけるモルフォロジー演算回路11a,11b,11cを省略した場合と存在する場合とを比較して説明する。モルフォロジー演算回路11a,11b,11cを省略した場合、判定回路13は、複数の2値化回路9a,9b,9cが出力する2値化画像において閾値を越える画素の有無(黒い画素の有無)によって良否判定を行う。黒い画素の連続性や形状等を考慮して判定する方法もあるが基本的には黒い画素の有無によって判定が行われる。そこで3つの2値化画像について検討すると以下のことが判る。図3(F)では、不良を検出するとともに不良で無い部分についても不良と誤検出する(ノイズが混入する)ことが判る。また図3(G)では、不良と誤検出する程度は小さくなっているものの皆無ではない。しかも不良の見落としが認められる。また図3(H)では、不良と誤検出することはないが不良の見落としがはなはだしい。したがって、この一例に示すように差の絶対値画像に対して単純な2値化を行った場合には、濃度の低い不良を検出しようとすると誤検出を避けることができず、誤検出を避けようとすると濃度の低い不良を見落とすこととなる。
【0021】
図4は不良濃度(正常濃度との差)と不良面積についての一般的な人間の認識の傾向を示す図である。図4において横軸は不良面積であり縦軸は不良濃度を示す。一般的に不良濃度が大きいほどまた不良面積が大きいほどその不良は重欠陥と見なされ、逆に、不良濃度が小さいほどまた不良面積が小さいほどその不良は軽欠陥と見なされる。図4において、右上方向に原点から遠ざかるほど重欠陥であり、左下方向に原点に近づくほど軽欠陥である。したがって、図4に示すような、重欠陥の領域、中欠陥の領域、軽欠陥の領域、正常な領域に区分することができる。
【0022】
モルフォロジー演算回路11a,11b,11cを省略した場合において、前述の2値化回路9a,9b,9cによる2値化は、図4における横軸(不良面積)と平行方向の直線によって図4の領域を2分割することに相当する。そして、その直線の上方の領域に含まれる不良が検出され、その直線の下方の領域に含まれる不良は検出されない。これは、レベル差だけで欠陥を検出する従来の方式に相当する。その直線の上方の領域には、前述の正常な領域は含まれており、正常であるのに不良と誤検出することが避けられないことを示している。また、その直線の下方の領域には、正常な領域だけでなく重欠陥の領域、中欠陥の領域、軽欠陥の領域が含まれ、特に濃度の低い不良の見落としが避けられないことを示している。
【0023】
2値化の閾値を変化させることは、図4における横軸(不良面積)と平行方向の直線の上下方向の位置を変化させる、すなわち不良レベルを変化させることに相当する。しかし、この図4の例においてそのように不良レベルを変化させることを行ってみても、基本的に誤検出や見落としを避けることができない。すなわち差の絶対値画像に対して単純な2値化を行った場合には、濃度の低い不良を検出しようとすると誤検出を避けることができず、誤検出を避けようとすると濃度の低い不良を見落とすこととなる。
【0024】
次に、図1におけるモルフォロジー演算回路11a,11b,11cが存在する本発明の場合について説明する。モルフォロジー演算回路11a,11b(,11c)において図3(F),図3(G)に示す2値化画像に対して、面積の異なる2つの構成要素によりオープニング(opening )というモルフォロジー演算を行う。その結果、2値化画像から図5(I)と図5(J)に示すモルフォロジー演算画像が生成する。図5(I)の構成要素の面積に対して図5(J)の構成要素の面積は大きい。図5(I)と図5(J)に示すように、このモルフォロジー演算を行うことにより孤立点や面積の小さな画像部分が除去される。図5(I)と比較して図5(J)の構成要素の面積が大きいので図5(I)と比較して図5(J)の方が除去される画像部分が多い。
【0025】
図6は構成要素の一例を示す図である。図6(A)は1×1の画素で構成される面積を有し、図6(B)は3×3の画素で構成される面積を有し、図6(B)は5×9の画素で構成される面積を有する。黒色で示す画素は中心画素であり灰色で示す画素は近傍画素である。図6に示すように構成要素も一種の2値化画像であり、構成要素の各画素は画素値“1”を有する。図3(E)の画像に図6(B)の構成要素を用いてモルフォロジー演算を行うことにより図5(I)の画像が得られ、図3(E)の画像に図6(C)の構成要素を用いてモルフォロジー演算を行うことにより図5(J)の画像が得られる。
【0026】
モルフォロジー演算においては画像の対象画素に対して構成要素の中心画素を当てはめて構成要素の画素内(中心画素と近傍画素)で演算が行われる。画像の対象画素を変更してモルフォロジー演算を行う領域の全ての対象画素に対してその演算が行われる。図7はこのモルフォロジー演算を行う方法の説明図である。図7において灰色の画素が原画像(2値化画像)の値が“1”の部分を表し、白色の画素が原画像の値が“0”の部分を表す。図7において太線は構成要素(ここでは3×3画素の正方形)を示す。
【0027】
図8はモルフォロジー演算の一つであるオープニング演算を行う演算装置の一例を示すブロック図である。図7,図8においてオープニング演算装置の動作を説明する。画像バッファ21にはオープニング演算を行う対象の画像が一時記憶されている。構成要素制御部22は順次選択される対象画素に対して構成要素の中心画素を当てはめて演算の実行を制御する。構成要素制御部22による制御下においてAND演算部23は、構成要素と演算対象画像とが重なる部分の各画素について、構成要素の画素値(“1”)と演算対象画像の画素値(“0”または“1”)とを比較し、両者の画素値が“1”の場合は“1”に、またいずれかの画素値が“0”の場合は“0”に演算対象画像の画素値(濃度値)を置き換える演算を実行する(図7参照)。画像バッファ24はその演算によって得られる画像を一時記憶する。
【0028】
構成要素制御部25は順次選択される画像バッファ24の対象画素に対して構成要素の中心画素を当てはめて演算の実行を制御する(図7参照)。構成要素制御部25による制御下においてOR演算部26は、構成要素と演算対象画像とが重なる部分の各画素について、構成要素の画素値(“1”)と演算対象画像の画素値(“0”または“1”)とを比較し、両者の画素値が“0”の場合は“0”に、またいずれかの画素値が“1”の場合は“1”に演算対象画像の画素値(濃度値)を置き換える演算を実行する(図7参照)。画像バッファ27はその演算によって得られる画像を一時記憶する。
これにより、画像バッファ21の画像に対してオープニング演算が実行され画像バッファ27にはオープニング演算済の画像が一時記憶されることになる。
【0029】
前述の2値化画像である図3(F)と図3(G)に対して上記のモルフォロジー演算を実行すると図5(I)と図5(J)に示す2値化画像が得られる。2値化する場合の閾値は図3(F)に比較して図3(G)は高い。図5(I)は図3(F)を相対的に大きな面積の構成要素によりモルフォロジー演算したもので濃度が高く小さな面積の不良が検出され、濃度が低く大きな面積の不良は検出されない。一方、図5(J)は図3(G)を相対的に小さな面積の構成要素によりモルフォロジー演算したもので濃度が低く大きな面積の不良が検出される。
【0030】
このように、2値化回路9a,9b,9cとモルフォロジー演算回路11a,11b,11cを組み合わせることにより、不良における正常濃度値との差と面積の大きさとの両方によって検出する不良の領域を区分することができる。図4において組合せA,組合せB,組合せCの3つは、オープニングというモルフォロジー演算における構成要素の面積と2値化における閾値の大きさによって検出する不良の領域を設定できることを示している。すなわち、図4において組合せA,組合せB,組合せCの各々は、2つの境界線によって領域が区分され検出する不良の領域は、図4において、2つの境界線の右上方向で原点から離れた領域である。
【0031】
したがって、組合せA,組合せB,組合せCの各々によって検出する不良の領域の論理和の領域が検出可能な不良の領域となる。その検出可能な不良の領域は、図4において、軽欠陥の領域、中欠陥の領域、重欠陥の領域をほぼ包含し、正常の領域は含まれない。図4に示す組合せA,組合せB,組合せCの3つの組合せよりも多くの組合せを用いれば、検出可能な不良の領域と各欠陥の領域との一致度をより正確にすることができる。
【0032】
図4において、2値化の閾値は組合せAよりも組合せBが、組合せBよりも組合せCが小さい。また、構成要素の面積は組合せAよりも組合せBが、組合せBよりも組合せCが大きい。すなわち、2つの境界線の交点における不良レベルが2値化の閾値にほぼ等しく、2つの境界線の交点における不良面積が構成要素の面積にほぼ等しくなる。図4に示すように、所定の閾値の各々に対応する構成要素は、値の小さな閾値に対しては面積の大きな構成要素が対応するようにすることにより、不良の軽重に対する一般的な認識と検出される不良との傾向を一致させることができる。
【0033】
図9は3つの組合せを用いた場合に判定回路13によって行われる不良の領域分けを示す図である。図9に示すように、不良の領域は、不良における正常濃度値との差と面積の大きさとによって、No.0〜No.7に区分される。ただし、No.0の領域は許容範囲内であり不良と判定されない。検出された不良がNo.1〜No.7のいずれの領域のものであるかは、組合せA,組合せB,組合せCのいずれに属し、いずれに属さないかにより判定することができる。また、組合せAの不良に対して“1”、組合せBの不良に対して“2”、組合せCの不良に対して“4”の重み付けを行って加算すると、加算された数値はNo.1〜No.7の区分と一致する。この数値の大きさにより不良が重欠陥であるか、軽欠陥であるかを決定することもできる。
このようにして、判定回路13は検出された不良が属する領域を示す不良種別値、たとえば、No.0〜No.7を出力する。
【0034】
制御出力回路14はその不良種別値を入力し、それに対応する操作量を出力する。たとえば、検出した不良がNo.1,No.2,No.4の領域の不良であれば軽欠陥であるとして警報出力を行う。また、検出した不良がNo.3,No.6,No.7の領域の不良であれば中欠陥または重欠陥であるとして印刷機の排紙ユニットにおいて不良印刷物を除去する制御出力を行う。
【0035】
次に、モルフォロジー演算について説明する。本発明におけるモルフォロジー演算はEN の部分集合に対するモルフォロジー演算であり、それは2値のモルフォロジー演算である。A,BをEN の部分集合とし、aを集合Aの要素、bを集合Aの要素とする。通常、集合Aは対象画像、集合Bは構成要素に対応する。
【0036】
すでに説明したようにモルフォロジー演算は“dilation”“erosion ”“opening ”“closing ”の4つの基本演算から構成される。まず2値のdilationと2値のerosion について定義を行う。
(定義1)2値のdilation:集合AとBによるdilationは、次の数1によって定義される。
【数1】
(定義2)2値のerosion :集合AとBによるerosion は、次の数2によって定義される。
【数2】
【0037】
次に2値のopening と2値のclosing について定義を行う。
(定義3)2値のopening :集合Aの構成要素Bによるopening は、次の数3によって定義される。
【数3】
(定義4)2値のclosing :集合Aの構成要素Bによるclosing は、次の数4によって定義される。
【数4】
【0038】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、不良における濃度値の差と面積の大きさとの両方を一体として扱う検査基準により良否判定を行う画像検査方法および装置が提供される。また、本発明におけるモルフォロジー演算は2値化画像に対して行われるから、濃淡画像に対して行う場合と比較して演算を簡略化できる。また複数の所定の閾値を用い演算結果の全てに基づいて良否判定を行うから、検査基準と所望の基準との一致度が高い。また濃淡画像は基準画像と検査対象画像とに基づいてすくなくとも差の絶対値の演算を行って得る画像であるから、それに基づく2値化画像に対するモルフォロジー演算過程が簡略化される。また良否判定過程は、閾値の各々に対応するモルフォロジー演算画像の全てに基づいて、不良における正常濃度値との差と面積の大きさとの両不良属性から不良種類を判別し不良種別値を得るから、不良種別値により検出される不良が重欠陥であるか軽欠陥であるかを判定することができる。また閾値の各々に対応する所定の構成要素は値の大きな閾値に対しては面積の小さな構成要素が対応するから、不良の軽重に対する一般的な認識と検出される不良との傾向が一致する。」という顕著な効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の画像検査方法を実施する装置(画像検査装置)の構成を示すブロック図である。
【図2】基準画像(A)、不感帯画像(B)、検査対象画像(C)、単純な差の絶対値画像(D)を示す絵図である。
【図3】実質的な差の絶対値画(E)、異なる閾値で2値化を行って得た2値化画像(F),(G),(H)を示す絵図である。
【図4】不良濃度(正常濃度との差)と不良面積についての一般的な人間の認識の傾向を示す図である。
【図5】モルフォロジー演算画像(I),(J)を示す図である。
【図6】構成要素の一例を示す図である。
【図7】モルフォロジー演算を行う方法の説明図である。
【図8】モルフォロジー演算の一つであるオープニング演算を行う演算装置の一例を示すブロック図である。
【図9】3つの組合せを用いた場合に判定回路によって行われる不良の領域分けを示す図である。
【符号の説明】
1 画像入力カメラ
2 画像入力バッファ
3 同期回路
4 基準画像メモリ
5 不感帯演算回路
6 不感帯画像メモリ
7 基準画像更新・不感帯画像作成司令回路
8 差分.絶対値化回路
9a,9b,9c モルフォロジー演算回路
10 構成関数設定回路
11a,11b,11c 2値化回路
12 2値化閾値設定回路
13 判定回路
14 制御出力回路
21,24,27 画像バッファ
22,25 構成要素制御部
23 AND演算部
26 OR演算部
Claims (2)
- 基準画像と検査対象画像を比較して検査する画像検査方法において、
前記基準画像と前記検査対象画像とに基づいてすくなくとも差の絶対値の演算を行って得る濃淡画像に対して複数の所定の閾値を用いて2値化演算を行い前記閾値の各々に対応する2値化画像を得る2値化演算過程と、
前記閾値の各々に対応して値の大きな閾値に対しては面積の小さな所定の構成要素を用いて前記閾値の各々に対応する2値化画像に対してモルフォロジー演算を行い前記閾値の各々に対応するモルフォロジー演算画像を得るモルフォロジー演算過程と、
前記閾値の各々に対応するモルフォロジー演算画像の全てに基づいて不良における正常濃度値との差と面積の大きさとの両不良属性から不良種類を判別し不良種別値を得る良否判定を行う良否判定過程と、
を含むことを特徴とする画像検査方法。 - 基準画像と検査対象画像を比較して検査する画像検査装置において、
前記基準画像と前記検査対象画像とに基づいてすくなくとも差の絶対値の演算を行って得る濃淡画像に対して複数の所定の閾値を用いて2値化演算を行い前記閾値の各々に対応する2値化画像を得る2値化演算手段と、
前記閾値の各々に対応して値の大きな閾値に対しては面積の小さな所定の構成要素を用いて前記閾値の各々に対応する2値化画像に対してモルフォロジー演算を行い前記閾値の各々に対応するモルフォロジー演算画像を得るモルフォロジー演算手段と、
前記閾値の各々に対応するモルフォロジー演算画像の全てに基づいて不良における正常濃度値との差と面積の大きさとの両不良属性から不良種類を判別し不良種別値を得る良否判定を行う良否判定手段と、
を含むことを特徴とする画像検査装置。
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