JP3998746B2 - オキソチタニウムフタロシアニン配向膜及びその製造方法 - Google Patents

オキソチタニウムフタロシアニン配向膜及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、オキソチタニウムフタロシアニン(以下、OTiPcと略記する)の配向膜と、その製造方法に関し、更に詳しくは、電子写真感光体、特に、レーザープリンター用感光体、光電変換材料、センサー材料などに有用な高い配向性を示すオキソチタニウムフタロシアニン配向膜と、その製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
フタロシアニン類は、塗料、印刷インキ、着色剤及び電子材料として有用な化合物であり、これらの中でも、特に、OTiPcは、近年、電子写真感光体、特にレーザープリンター用感光体の光導電性物質として盛んに利用されている化合物である。OTiPcの薄膜は、電子写真感光体の光導電層として有用であり、種々の検討がなされている。
【0003】
例えば、▲1▼特開昭59−166959号公報には、OTiPcの蒸着膜を可溶性溶媒の蒸気に接触させることにより、X線回折図でブラッグ角(2θ)が7.5度、12.6度、13.0度、25.4度、26.2度、28.6度に強い回折ピークを有する薄膜を得、これを電子写真感光体に於ける電荷発生層とすることが開示されている。この公報に記載のOTiPc蒸着膜の製造方法は、フタロニトリルと四塩化チタンにより製造されたOTiPcを原料とし、10-5〜10-6トール(torr)の真空下でアルミニウム基板上に0.05〜0.5μm蒸着した後、テトラヒドロフラン、メタノール等の可溶性溶剤蒸気に1〜24時間接触させる方法である。
【0004】
また、▲2▼特開昭59−49544号公報には、蒸着により得られた非晶質のOTiPc薄膜をトルエン、キシレン、クロロホルム、ジクロロエタンなどの溶媒で処理することで、ブラッグ角(2θ)が9.2度、13.1度、20.7度、26.2度、27.1度に強い回折ピークを与えるOTiPc蒸着膜が得られることが記載されている。この公報の実施例には、10-5トールで蒸着した蒸着膜とのみ記載されており、その蒸着条件の詳細は記載されていない。
【0005】
更に、▲3▼特開平1−120564号公報には、OTiPcを10-4〜10-6トールで300〜600℃に加熱して蒸着膜を形成し、その蒸着膜をアルコール処理することにより、ブラッグ角(2θ)が27.0度付近の位置に回折ピークを持つ蒸着膜が得られることが開示されている。
【0006】
更にまた、▲4▼特開平4−81860号公報には、10-4〜10-7トールで450〜500℃に加熱して得られたOTiPc蒸着膜を、芳香族溶媒と水を含む混合蒸気に接触させることにより、ブラッグ角(2θ)が27.3度の位置に回折ピークを示す蒸着膜が得られることが開示されている。
【0007】
以上の製法は、いずれも、OTiPc蒸着膜を溶媒と接触せしめる溶媒処理を施すものであるが、このような製法で得られた薄膜を、榎田等の報告(Journal of Imaging Science, 34(6)巻,234頁(1990))などと比較すると、上記特開昭59−166959号公報及び特開昭59−49544号公報の方法で得られた薄膜は、X線回折図におけるブラッグ角(2θ)が7.5度〜28.6度に強い何本も回折ピークを示していることから、これら薄膜は特別に配向はしていない。上記特開平1−120564号公報特開平4−81860号公報の方法では、溶剤処理前はアモルファス状態と記載されており、溶媒処理後に初めて、ブラッグ角(2θ)が27.0度あるいは27.3度の位置に回折ピークを示し、そして、溶媒処理後もX線回折図は単一の回折ピークではなく、他にも回折ピークが記載されていることから、配向していない薄膜である。
【0008】
すなわち、上記した全てのOTiPc蒸着膜の製造方法は、溶媒の種類により蒸着膜内の結晶形を定の結晶形に制御できるが、分子配向を制御できるものではなかった。
【0009】
さらに、丸山らは非線形光学材料を目的とし、有機分子線蒸着法で配向の規制されたサファイアR面上に3×10-10トールという超高真空下、基板を100 ℃に加熱することによって、薄膜X線回折におけるブラッグ角(2θ)が7.550度にのみ強い回折ピークを示すOTiPcのb軸配向多結晶膜を得ている(信学技報、EMD92-112、OME92-65(1993))。
【0010】
しかしながら、この方法では、超高真空を得るための特別の真空装置を必要とし、更に、特別に配向の規制された基板上に、加熱下で成膜する等の条件下で配向性の薄膜を製造する方法であり、工業化が困難であり、成膜装置も高価とならざるを得ない。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者等は、この様な現状に鑑み、特殊な真空装置あるいは単結晶等の特別な基板を用いずに、高度に配向したOTiPc薄膜を得るべく、鋭意検討を行った結果、OTiPcの結晶の配向を規制する重要な因子は、蒸着速度であり、この蒸着速度をある値以下に制御することによって、通常の真空装置で配向規制能の無いガラス基板等の基板上に蒸着した場合でも、高度に配向したOTiPc薄膜を得ることができ、室温以下の基板上に蒸着した場合、薄膜X線回折でブラッグ角(2θ)が6.8±0.2度の範囲のみに強い回折ピークを示すこと、更にこの配向性の薄膜を有機溶媒で結晶化処理することにより、薄膜の配向性を維持したまま、結晶化度が向上し、薄膜X線回折でブラッグ角(2θ)が7.6±0.2度の範囲のみに強い回折ピークを示すことと、配向性の薄膜の光導電性は配向していない薄膜に比べて高いこと等を見いだして、特許出願し、既に、特開平7−11425号公報として公開されている。また、真空度、蒸着速度及び基板温度を制御すると、特定の金属基板上に特定の配向をしたαあるいはβ型結晶が形成できることを報告した(米原等、川村理化学研究所報告、平成7年、第27〜41頁)。
【0012】
しかしながら、これらの方法では、ガラス、NESA(酸化スズ)、ITO(酸化インジウム)、酸化亜鉛等の酸化性基板やアルミニウム、チタニウム、鉄等の酸化皮膜を有する基板上には上記配向膜を形成することができるが、銅、銀、金のような表面酸化膜のない基板上では配向が異なる膜が、更に白金を基板とした時は蒸着時の真空度により異なった配向をした膜が得られると報告されている。従って、基板金属の種類に依存したOTiPc配向膜を得ることができるが、いかなる基板においてもOTiPc環が垂直方向に配向したα型結晶膜(薄膜X線回折でブラッグ角(2θ)が7.6±0.2度の範囲のみに強い回折ピークを示す)が得られるわけではなく、工業的見地から好ましいものではなかった。
【0013】
本発明が解決しようとする課題は、特殊な真空装置あるいは限定された基板を用いずに、高度に配向したα型OTiPc薄膜を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、真空度、蒸着速度及び基板温度を制御してOTiPcを蒸着する際、OTiPcの結晶の配向を規制する重要な因子は、基板金属とOTiPcの相互作用であり、基板表面を自己組織化膜で被覆することで、いずれの金属基板を用いた場合でも、高度に配向したOTiPc薄膜を得ることができ、室温以下の温度の基板上に蒸着した膜は、薄膜X線回折でブラッグ角(2θ)が6.8±0.2度の範囲のみに強い回折ピークを示すこと、更にこの配向性の薄膜を有機溶媒で結晶化処理することにより、薄膜の配向性を維持したまま、結晶化度が向上し、薄膜X線回折でブラッグ角(2θ)が7.6±0.2度の範囲のみに強い回折ピークを示すこと、また、蒸着時に基板温度を100〜250℃に加熱することで、薄膜X線回折でブラッグ角(2θ)が7.6±0.2度の範囲のみに強い回折ピークを示すα型結晶膜が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0015】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、
(1)金属基板基板上に自己組織化膜を有し、かつ、該自己組織化膜上にオキソチタニウムフタロシアニンの蒸着膜を有することを特徴とするオキソチタニウムフタロシアニン配向膜、
(2)金属基板が、銅、銀、金又は白金より構成される基板あるいは表面にそれらの金属の薄膜を有する基板である上記(1)に記載のオキソチタニウムフタロシアニン配向膜、
(3)自己組織化膜がチオール類、スルフィド類及びジスルフィド類からなる群から選ばれる1種以上の自己組織化膜形成用化合物からなる膜であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のオキソチタニウムフタロシアニン配向膜、
(4)薄膜X線回折において、ブラッグ角6.8±0.2度の範囲にのみ明確なピークを示す上記(1)、(2)又は(3)に記載のオキソチタニウムフタロシアニン配向膜、
(5)薄膜X線回折において、ブラッグ角7.6±0.2度の範囲にのみ明確なピークを示す上記(1)、(2)又は(3)に記載のオキソチタニウムフタロシアニン配向膜、
【0016】
(6)金属基板上に自己組織化膜を形成した後、該自己組織化膜上にオキソチタニウムフタロシアニンを、蒸着速度0.8オングストローム/秒以下で蒸着させることを特徴とする上記(1)、(2)、(3)、(4)又は(5)に記載のオキソチタニウムフタロシアニン配向膜の製造方法、
(7)金属基板として、銅、銀、金又は白金より構成される基板あるいは表面にそれらの金属の薄膜を有する基板を用いる上記(6)に記載のオキソチタニウムフタロシアニン配向膜の製造方法、
(8)自己組織化膜としてチオール類、スルフィド類及びジスルフィド類からなる群から選ばれる1種以上の自己組織化膜形成用化合物からなる膜を用いる上記(6)あるいは(7)に記載のオキソチタニウムフタロシアニン配向膜の製造方法、
(9)オキソチタニウムフタロシアニンを蒸着させた後、有機溶媒を用いて蒸着膜を結晶化処理することを特徴とする上記(5)、(6)、(7)又は(8)に記載のオキソチタニウムフタロシアニン配向膜の製造方法、
(10)有機溶媒として、テトラヒドロフランあるいはジクロロメタンを用いる上記(9)に記載のオキソチタニウムフタロシアニン配向膜の製造方法、
【0017】
(11)オキソチタニウムフタロシアニンを蒸着させる際、金属基板を100〜250℃に加熱して結晶膜を作製することを特徴とする上記(5)、(6)、(7)又は(8)に記載のオキソチタニウムフタロシアニン配向膜の製造方法、
(12)蒸着速度が、0.10〜0.8オングストローム/秒の範囲でオキソチタニウムフタロシアニンの蒸着を行う上記(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)又は(11)に記載のオキソチタニウムフタロシアニン配向膜の製造方法、
(13)真空度10-4〜10-8トールの範囲でオキソチタニウムフタロシアニンの蒸着を行う上記(4)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(11)又は(12)に記載のオキソチタニウムフタロシアニン配向膜の製造方法、
を提供する。
【0018】
【発明の実施の形態】
本発明のオキソチタニウムフタロシアニン配向膜を、図面を用いて説明する。図1は、オクタデシルメルカプタンを用いて自己組織化膜を形成した金薄膜を形成した基板上に蒸着したOTiPc配向蒸着膜のX線回折図(Cu−Kα)であり、図中、(1)は室温の基板上に蒸着した溶媒蒸気未処理膜、(2)は、(1)の膜をジクロロメタンあるいはテトラヒドロフランの蒸気による結晶化処理を行った配向蒸着膜、(3)は150℃に加熱した基板上に形成した配向蒸着膜のX線回折図である。図1に示すように、薄膜X線回折でブラッグ角(2θ)が6.8±0.2又は7.6±0.2度のみに強い回折ピークを示す。ここで、蒸着速度を毎秒0.8オングストローム以下に制御し蒸着する。この0.8オングストローム以下の速度で室温の基板に蒸着した時の溶媒蒸気未処理膜は、基本的にはアモルファス膜であるが、図1(1)に示すように、薄膜X線回折でブラッグ角(2θ)が6.8±0.2度の位置にのみ回折ピークを示す。そして、有機溶媒蒸気による結晶化処理後の蒸着膜は、図1(2)に示すように、ブラッグ角(2θ)が7.6±0.2度の位置にのみ回折ピークを示す。また、100〜250℃の基板上に蒸着した膜は図1(3)に示すように、ブラッグ角(2θ)が7.6±0.2度の位置にのみ回折ピークを示す。すなわち、室温基板上に形成した未処理膜では、基本的にはアモルファスであるが、OTiPc環が垂直方向に配向した膜となり、これを溶媒蒸気処理すると同様にOTiPc環が垂直方向に配向したα型(7.6±0.2度)膜、すなわちα型結晶のb軸が基板に対し垂直方向に配向した膜を与える。また、加熱基板上でも同様に、OTiPc環が基板に垂直方向に配向したα型結晶膜、すなわち、α型結晶のb軸が基板に対し垂直方向に配向した膜を与える。
【0019】
この時、自己組織化膜を形成していない金薄膜を形成した基板を用いると、室温の基板上に形成した蒸着膜では、未処理の場合、図3(1)に示すように薄膜X線回折図(CuーKα)は6.8±0.2及び26.2±0.2度に弱い回折ピークを示す。そして、有機溶媒蒸気による結晶化処理後の蒸着膜は図3(2)に示すようにブラッグ角(2θ)が7.6±0.2度及び26.2±0.2度の位置に回折ピークを示す。また、、100〜250℃の基板上に蒸着した膜は図1(3)に示すように、ブラッグ角(2θ)が26.2±0.2度の位置に回折ピークを示す。すなわち、室温基板上に形成した未処理膜では、上記の基本的にはアモルファスであるが、OTiPc環が垂直方法に配向した膜と水平方向に配向した膜の混合膜となり、これを溶媒蒸気処理するとα型(7.6±0.2度)とβ型(26.2±0.2度)の混合膜となる。また、加熱基板上では、OTiPc環が基板に水平方向に配向したβ型結晶膜、すなわち、β型結晶のc軸が基板に対し垂直方向に配向した膜を与える。
【0020】
OTiPcを蒸着する際の蒸着速度は、毎秒0.8オングストローム以下であれば、特に制限はないが、遅いと蒸着膜製造に多大な時間を要することから、毎秒0.15〜0.8オングストロームの範囲が好ましい。また、蒸着速度の制御は、膜厚モニター等を用い、蒸着速度をモニターしながら、OTiPcの加熱を制御することで容易に行うことができる。また、分子線束モニターを用いることもできる。
【0021】
蒸着時の基板温度は、室温以下では、OTiPc環が基板に垂直方向に配向したアモルファス膜を与え、室温〜100℃の範囲では、この膜とOTiPc環が基板に垂直方向に配向したα型結晶の混合膜を与える。この場合、有機溶媒蒸気処理、好ましくはテトラヒドロフランやジクロロメタン蒸気で処理することで上記のα型配向膜を形成することができる。
【0022】
蒸着時の基板温度が100℃以上の場合、好ましくは100〜250℃の範囲において蒸着すると蒸着時に結晶化が起り上記のα型配向膜を形成することができる。
【0023】
本発明の製造方法では、基板の種類を選ばず、自己組織化膜が形成された如何なる基板上にもα型OTiPc配向膜を形成することができる。
【0024】
本発明の製造方法で使用可能な基板としては、例えば、ガラス、石英、金属、アモルファスシリコン;ガラス上に蒸着された金属膜などの配向制御能を持たない基板;結晶シリコン、雲母、金属単結晶など、結晶方位の定まったものから成る基板;これらの基板上に蒸着された金属膜などが挙げられる。
【0025】
本発明の製造方法では、配向制御能を持たない基板上にα型OTiPcの配向膜を形成することができる。もちろん、結晶方位の定まったものを基板として用いても、基板上にα型OTiPcの配向膜を形成することができる。
【0026】
なお、NESAガラス(酸化スズ)、ITOガラス(酸化インジウム)、酸化チタニウムあるいは酸化亜鉛のように金属酸化物よりなる基板、アルミニウム、クロム、チタニウム、亜鉛、ニッケル、鉄等のように金属表面に自然酸化膜が形成された基板の場合、自己組織化膜を形成しなくても本発明の条件下でα型OTiPc配向膜を形成することができるが、自己組織化膜を形成した上に蒸着膜を作製すると更に安定してα型OTiPc膜を作製することができるので好ましい。特に、銅、銀、金及び白金のように、自然酸化膜を形成しないあるいは形成しづらい金属基板や金属薄膜を形成した基板を用いた場合、特に本発明の特徴を発揮できるので好ましい。
【0027】
また、これらの金属基板は、ガラス、プラスチック等の基板上に、蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング等の手法で形成することもできる。金の蒸着膜を用いる場合、一般に、金と基板の接着が悪く、自己組織化膜形成用化合物溶液にこれを浸漬すると、金の薄膜がはがれる傾向にある。従って、基板上に、チタニウム、クロムあるいはニッケル等の金属をあらかじめ、蒸着又はスパッタリングで形成した後、金を蒸着して用いることが好ましい。
【0028】
本発明のOTiPc配向膜の製造方法の特徴は、基板上に自己組織化膜が形成されていることにある。特定の化合物の溶液に基板を浸漬すると、特定の化合物が、まず基板表面に吸着し、次いで化学結合あるいは化学結合に匹敵するエネルギーで表面に特殊な吸着(化学吸着)を起こし、自ら組織化しながら基板表面に単分子膜を形成し、最終的には基板表面に緻密な単分子膜層を形成する(L.Wetzer、R.Isocovichi、J.Sagiv、Thin Solid Films、第99巻、第235頁(1983年)、J.P.Folkers、C.B.Gorman、P.E.Laibinis、S.Buchholz、G.M.Whitesides、R.G.Nuzzo、Langmuir、第11巻、第813頁(1995年)等参照)。本発明の自己組織化膜は、上記のようにして、基板として用いる金属層あるいは金属酸化物層等の表面に形成された緻密な単分子膜のことを言う。
【0029】
ここで自己組織化膜を形成するために用いる特定の化合物(以下、自己組織化膜形成用化合物と言う)としては、例えば、有機アルコキシシラン類、有機ハロシラン類、有機ジシラザン類、カルボン酸類、ヒドロキサム酸類、ホスホン酸類、チオール類、スルフィド類、ジスルフィド類等が挙げられる。
【0030】
表面に酸化物を有する基板を用いた場合、有機アルコキシシラン類、有機ハロシラン類、有機ジシラザン類、カルボン酸類、ヒドロキサム酸類、ホスホン酸類等の自己組織化膜形成用化合物が表面の酸化物と反応して、また、酸化物を有していない金属基板を用いた場合、チオール類、スルフィド類、ジスルフィド類等の自己組織化膜形成用化合物が表面と化学結合に匹敵する吸着(化学吸着)をして、以下に例示するように、自ら結合を形成し、それぞれの基板表面に組織化された緻密な超薄膜、即ち、自己組織化膜を形成する(I.M.Tidswellら、J.Chem.Phys.、第95巻、第2854頁(第1991年)、東芝シリコーン、Products Information、S-0002等参照)。
【0031】
【化1】
Figure 0003998746
【0032】
【化2】
Figure 0003998746
【0033】
ここで自己組織化膜形成用化合物として用いる有機アルコキシシラン類、有機ハロシラン類、有機ジシラザン類、カルボン酸類、ヒドロキサム酸類、ホスホン酸類、チオール類、スルフィド類、ジスルフィド類等としては、特に制限はないが、例えば、下記一般式(1)〜(8)
123SiX ・・・(1)
123SiNHSiR123 ・・・(2)
1COOH ・・・(3)
1(C=O)NHOH ・・・(4)
1(P=O)(OH)2 ・・・(5)
1SH ・・・(6)
1SR4 ・・・(7)
1SSR4 ・・・(8)
(式中、R1及び/又はR4は、炭素原子数2〜30の置換されてもよいアルキル基を、R2及び/又はR3は低級アルキル基、アルコキシ基又はハロゲン原子を、Xはアルコキシ基又はハロゲン原子等を表わすが、ここに例示の置換基に限定されるものではない。なお、上記R1及び/又はR4として定義された「置換されていてもよいアルキル基」の置換基としては、特に限定はないが、ニトリル基、メルカプト基、アミノ基、アクリレート基、グリシドキシ基、ハロゲン原子又は置換されてもよいアリール基等が推奨される。)
で示される化合物等が挙げられる。
【0034】
ガラスや金属酸化物層上には、有機アルコキシシラン類、有機ハロシラン類、有機ジシラザン類、カルボン酸類、ヒドロキサム酸類、ホスホン酸類等が自己組織化膜を形成し、銅、銀、金、白金等の酸化物を形成しないあるいは形成しづらい金属又は薄膜上には、チオール類、スルフィド類、ジスルフィド類が自己組織化膜を形成する。従って、これらの自己組織化膜形成用化合物の中でも、特にチオール類、スルフィド類、ジスルフィド類が推奨される。また、上記一般式中のR1及び/又はR4が炭素原子数2〜30の置換されてもよいアルキル基であって、かつ該置換されていてもよいアルキル基の置換基が、ニトリル基、メルカプト基、アミノ基、アクリレート基、グリシドキシ基、ハロゲン原子又は置換されてもよいアリール基である化合物が好ましい。
【0035】
上記表面に酸化物を有する基板としては、元々酸化物導電体からなる、酸化スズ(NESA)、酸化インジウム(ITO)等の導電性基板に加えて、アルミニウム、銅、クロム、チタニウム、鉄、ニッケル等の金属の上に発生した自然酸化膜を含有する金属基板や薄膜等が好適である。これらの金属においては、これらの金属の自然酸化膜がそれぞれの表面に形成されることが知られている〔W.A.Nevin、G.A.Chamberlain、IEEE Trans.Electron Devices、第40巻、第75頁(1993)、L.Wetzer、R.Isocovichi、J.Sagiv、Thin Solid Films、第99巻、第235頁(1983)及びJ.P.Folkers、C.B.Gorman、P.E.Laibinis、S.Buchholz、G.M.Whitesides、R.G.Nuzzo、Langmuir、第11巻、第813頁(1995)等〕。 更に、これら自然酸化膜を電気化学的に陽極酸化等を行って、その酸化物層を厚くして用いることもできる。
【0036】
また、表面に酸化物を有さない電極層としては、金、白金、銀、銅等の表面に酸化物層を有さない電極層が好適である。
【0037】
前記した自己組織化膜形成用化合物の中で、有機アルコキシシラン、有機ハロシラン及び有機ジシラザンとしては、特に制限はないが、通常シランカップリング剤として市販されている有機アルコキシシランや有機ハロシラン、例えば、信越化学工業株式会社の珪素化合物試薬カタログ記載の化合物や東芝シリコーン株式会社の有機ケイ素化合物カタログ記載の化合物等を使用してもよく、またこれらに新たな官能基を付与して用いることもできる。これらの中でも、有機トリアルコキシシラン及び有機トリハロシランが好ましい。
【0038】
自己組織化膜形成用化合物として用いることができる有機トリアルコキシシラン及び有機トリハロシランの代表的なものを例示すると、メチルトリクロロシラン、エチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、ブチルトリメトキシシラン、ペンチルトリクロロシラン、オクチルトリエトキシシラン、オクチルメチルジクロロシラン、デシルトリメトキシシラン、デシルトリクロロシラン、ドデシルトリエトキシシラン、テトラデシルトリクロロシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリクロロシラン、エイコシルトリクロロシラン、ドコシルトリクロロシラン、トリアコンタシルトリクロロシラン、エチルオクタデシルジメトシキシラン、3,3,3−トリフルオロプロピルトリクロロシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルトリクロロシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシルトリエトキシシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルトリクロロシラン、3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、
【0039】
クロロメチルトリメトキシシラン、クロロメチルトリエトキシシラン、2−シアノエチルトリクロロシラン、3−クロロプロピルトリクロロシラン、3−シアノプロピルトリクロロシラン、5−シアノペンチルトリメトキシシラン、メルカプトメチルトリメトキシシラン、3−ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、2−シアノエチルトリメトキシシラン、5−シアノペンチルトリメトキシシラン、10−シアノデシルトリメトキシシラン、11−シアノウンデシルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−ブロモプロピルトリメトキシシラン、10−ブロモデシルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、5−メルカプトペンチルトリエトキシシラン、10−メルカプトデシルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、10−アミノデシルトリメトキシシラン、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−アニリノプロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、4−クロロフェニルトリメトキシシラン、5−〔5′−(2′−メチル−2′−ボラ−1′,3′−ジオキサ)シクロヘキシル〕ペンチルトリクロロシラン、3−モルフォリノプロピルトリメトキシシラン、3−ピペラジノプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、N,N′−ビス(トリメチルシリル)ウレア、N−トリエチルシリルアセトアミド、ジエチルトリメチルシリルアミン、トリメチルシリルイミダゾール等が挙げられるが、ここに例示の化合物に限定されるものではない。
【0040】
自己組織化膜形成用化合物として用いることができるカルボン酸類の代表的なものを例示すると、プロピオン酸、酪酸、ヘキサン酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、ヘキサデカン酸、エイコサン酸、ドコサン酸、トリアコンタン酸、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキサン酸、12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,17,17,18,18,19,19,19−ヘプタデカフルオロノナデカン酸、9−(1′−ピレニル)ノナン酸、トリメチルシリル酢酸、3−メルカプトプロピオン酸、10−メルカプトデカン酸、3−シアノプロピオン酸、16−シアノヘキサデカン酸、4−シアノ安息香酸、2−カルボキシチオフェン等が挙げられるが、ここに例示の化合物に限定されるものではない。
【0041】
自己組織化膜形成用化合物として用いることができるヒドロキサム酸類として代表的なものを例示すると、N−ヒドロキシペンタンアミド、N−ヒドロキシヘキサンアミド、N−ヒドロキシデカンアミド、10,N−ジヒドロキシデカンアミド、N−ヒドロキシテトラデカンアミド、N−ヒドロキシオクタデカンアミド、N−ジヒドロキシヘキサデカンアミド、N−ヒドロシキエイコサンアミド、N−ヒドロキシ−3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキサンアミド、N−ヒドロキシ−12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,17,17,18,18,19,19,19−ヘプタデカフルオロノナデカンアミド、N−ヒドロキシ−10−メルカプトデカンアミド、N−ヒドロキシ−10−シアノデカンアミド、N−ヒドロキシ−10−アミノデカンアミド、N−ヒドロキシ−10−クロロデカンアミド、N−ヒドロキシ−10−フェニルデカンアミド等が挙げられるが、ここに例示の化合物に限定されるものではない。
【0042】
自己組織化膜形成用化合物として用いることができるホスホン酸類として代表的なものを例示すると、プロパンホスホン酸、オクタンホスホン酸、デカンホスホン酸、ヘキサデカンホスホン酸、ドコサンホスホン酸、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキサンホスホン酸、12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,17,17,18,18,19,19,19−ヘプタデカフルオロノナデカンホスホン酸、3−メルカプトプロピオンホスホン酸、10−メルカプトデカンホスホン酸、3−シアノプロピオンホスホン酸等が挙げられるが、ここに例示の化合物に限定されるものではない。
【0043】
自己組織化膜形成用化合物として用いることができるチオール類として代表的なものを例示すると、ブタンチオール、ヘキサンチオール、ノナンチール、ヘキサデカンチオール、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキサンチオール、12,12,13,13,14,14,15,15,16,16,17,17,18,18,19,19,19−ヘプタデカフルオロノナデカンチオール、1−シアノ−6−メルカプトヘキサン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、5−メルカプトペンチルトリエトキシシラン、10−メルカプトデシルトリメトキシシラン、3′−メルカプトプロピルベンゼン、3−メルカプトプロピオン酸、N−ヒドロキシ−10−メルカプトデカンアミド等が挙げられるが、ここに例示の化合物に限定されるものではない。また、チオール類としては、必要に応じて、ハロゲン化アルキルと硫化水素ナトリウム又はチオ尿素の反応により得た脂肪族チオールを、更にアリールグリニアール試薬を硫黄の反応により得た芳香族チオールを用いることができる。
【0044】
自己組織化膜形成用化合物として用いることができるスルフィド類として代表的なものを例示すると、ジエチルスルフィド、ジペンチルスルフィド、ジデシルスルフィド、ジオクタデシルスルフィド、ジエチルジスルフィド、ジプロピルジスルフィド、ジデシルジスルフィド、ジオクタデシルジスルフィド等が挙げられるが、ここに例示の化合物に限定されるものではない。
【0045】
本発明では、必要に応じて末端に反応性官能基を有する自己組織化膜を基板上に形成し、その上に有機シラン系、カルボン酸系、ヒドロキサム酸系、チオール系等の自己組織化膜を積層した多層膜を形成することもできる。この場合、第一層目の自己組織化膜形成用化合物としては、その末端に第二層目の自己組織化膜形成用化合物と反応する反応性官能基を有するものであれば特に制限はなく、例えば、反応性官能基として、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、カルボニル基、アルデヒド基、メルカプト基、リン酸基、ハロゲン原子等を有する自己組織化膜形成用化合物が挙げられ、中でも水酸基、アミノ基、カルボキシル基、カルボニル基、アルデヒド基、メルカプト基を有する自己組織化膜形成用化合物が好ましく、特に水酸基を有する自己組織化膜形成用化合物が推奨される。
【0046】
更に、反応性官能基が、有機シラン系、カルボン酸系、ヒドロキサム酸系、チオール系、スルフィド系、ジスルフィド系等の自己組織化膜形成部位と反応する場合は、層数の制御が困難となることから、これらの反応性官能基を予め保護した自己組織化膜形成用化合物を用いて第一層目を形成した後、保護基を脱離して、末端に水酸基、アミノ基、カルボキシル基、カルボニル基、アルデヒド基、メルカプト基等を生成させた後、第二層目を形成することが推奨される。尚、第二層目を形成した後、上記と同様にして第三層目以降を形成することも可能である。
【0047】
また、反応性官能基の保護及び脱離には、有機反応で既知な保護及び脱離の方法を用いることができる。例えば、Protective Groups in Organic Chemistry(J.F.W.McOmie著、Plenum Press(1973年))に記載の官能基保護法及びその保護基の脱離方法を用いることができる。例示すると、水酸基に対しては、エーテル化、エステル化、アセタール化、ケタール化等の保護及びその脱離手法を、アミノ基に対しては、キレート化、アミド化、アゾメチン化等の保護及びその脱離手法を、カルボキシル基に対しては、エステル化、塩形成等の保護及びその脱離手法を、カルボニル及びアルデヒド基に対しては、ケタール化、アセタール化、アゾメチン化等の保護及びその脱離手法を、メルカプト基に対しては、チオエーテル化、チオアセタール化、チオエステル化等の保護及びその脱離手法を用いることができる。
【0048】
更に、二層目以降の膜の形成には、上記反応性官能基の保護手法を利用して反応性官能基を有する自己組織化膜上に膜を形成することもできる。
【0049】
基板上に、有機アルコキシシラン類、有機ハロシラン類、有機ジシラザン類、カルボン酸類、ヒドロキサム酸類、ホスホン酸、チオール類、スルフィド類、ジスルフィド類等の自己組織化膜形成用化合物からなる自己組織化膜を形成する方法としては、例えば、これら自己組織化膜形成用化合物を溶媒に溶解させ、その溶液に基板を接触させて自己組織化膜形成用化合物を基板金属層あるいは金属酸化物層と反応させた後、この基板を該溶液から分離し、次いで自己組織化膜形成用化合物が溶解する溶液で洗浄して、未反応の自己組織化膜形成用化合物を除去する方法が挙げられる。なお、ここでの反応は、自己組織化膜形成用化合物と基板表面との間で起こる化学結合あるいは化学結合に匹敵するエネルギーで表面に特殊な吸着(化学吸着)を言う。
【0050】
自己組織化膜形成用化合物として用いる有機ハロシラン類や有機ジシラザン類を溶解させる溶媒としては、例えば、ヘキサン、デカン、ヘキサデカンの如き脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレンの如き芳香族炭化水素、四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタンの如きハロゲン化炭化水素、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、1,2−ジメトキシエタンの如きエーテル系化合物等が挙げられるが、これらの化合物に限定されるものではなく、水酸基やカルボニル基を有さない溶媒であれば使用できる。これらの溶媒は、単独で使用することも、また、2種類以上混合して使用することもできる。
【0051】
また、自己組織化膜形成用化合物として用いる有機アルコキシシラン類を溶解させる溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、プロパノール、2−プロパノールの如き低級アルコール、アセトン、2−ブタノンの如きケトン他、上記有機ハロシラン類や有機ジシラザン類に用いることができる溶媒が挙げられる。これらの溶媒は、単独で使用することも、また、2種類以上混合して使用することもできる。
【0052】
更にまた、自己組織化膜形成用化合物として用いるカルボン酸類、ヒドロキサム酸類、ホスホン酸、チオール類、スルフィド類又はジスルフィド類を溶解させる溶媒としては、特に制限はなく、これらの自己組織化膜形成用化合物を溶解し、これらと反応しない溶媒であれば良く、上記有機アルコキシシラン類、有機ハロシラン類や有機ジシラザン類の場合に例示した溶媒等を用いることができる。
【0053】
自己組織化膜形成用化合物溶解液の濃度には、特に限定はないが、薄すぎると反応の進行に時間を要し、また濃すぎると自己組織化膜を形成しづらく成る。従って、工業的生産性の見地から、溶解液中の自己組織化膜形成用化合物の濃度は、0.001mmol/リットル〜5mol/リットルの範囲が好ましい。
【0054】
なお、有機ハロシラン類を用いる場合、副生する塩化水素を捕捉する目的でピリジン、トリエチルアミン、ジメチルアニリン等のアミンを共存させても良い。また、有機アルコキシシラン類を用いる場合、ギ酸、酢酸等のカルボン酸を触媒として添加することもできる。
【0055】
自己組織化膜形成用化合物溶液と基板を接触させ、自己組織化膜を形成するための処理温度については、特に限定はないが、自己組織化膜、好ましくは自己組織化単分子膜を形成するためには、−10〜150℃の範囲が好ましく、0〜100℃の範囲が特に好ましい。
【0056】
自己組織化膜を形成するための処理時間についても、特に制限はないが、温度が低いと長時間を要し、温度が高いと短時間で処理が終了する。処理時間は、一般に1分〜2日の範囲が好ましく、1分〜1日の範囲が特に好ましい。有機アルコキシシラン類や有機ハロシラン類や有機ジシラザン類を用いる場合は、短時間、例えば、1分〜3時間の処理が、またカルボン酸類、ヒドロキサム酸類、ホスホン酸、チオール類、スルフィド類、ジスルフィド類等を用いる場合は、例えば、1分〜24時間の処理が一般に推奨される。また、有機アルコキシシラン類や有機ハロシラン類や有機ジシラザン類を用いる場合、短時間、例えば、1時間の処理を2回以上、好ましくは2〜3回繰り返すことも緻密な自己組織化単分子膜の形成にとって有利となり、推奨できる。この場合、処理後の基板を熱処理することは、自己組織化膜の形成を完全ならしめる上で有効である。この熱処理温度として、特に制限はないが、50〜200℃の範囲が好ましく、50〜150℃の範囲が特に好ましい。
【0057】
自己組織化膜形成にとって重要なことは、基板を所定濃度の自己組織化膜形成用化合物溶液と所定時間接触させた後、基板を溶液から分離し、溶媒で洗浄することによって未反応の自己組織化膜形成用化合物を除去することにあり、必要により、洗浄に次いで熱処理する等の方法が推奨される。
【0058】
この時、使用できる溶媒としては、自己組織化膜形成用化合物の溶解に用いることができる前記の溶媒を用いることができる。この洗浄時、超音波洗浄器等を用いることも有効な手段である。
【0059】
また、このようにして形成された自己組織化膜の膜厚は、自己組織化膜形成用化合物のアルキル鎖長によるが、通常、0.3〜10nmの膜厚を示す。
【0060】
本発明のOTiPcの蒸着膜を形成する際の蒸着時の真空度は、特に限定されないが、工業的見地から、通常10-4〜10-8トールの範囲が推奨される。
【0061】
蒸発装置の蒸発源と基板との距離は特に制限はないが、蒸着源付近に基板が位置すると、蒸着源の熱の影響により、OTiPcの配向に乱れが生じ、熱の影響が特に強い場合には、β型の結晶が混入する。また、蒸発源から基板が遠くに位置すると、大きな真空槽が必要になり、あるいは昇華したOTiPcが基板まで到達しない(真空度により平均自由行程が定まる)などの不都合を生じる。このため、蒸発源と基板との距離は、一般には5〜50cmの範囲が好ましい。
【0062】
蒸着源の加熱範囲は、真空度により異なる。低真空の場合は、高温が必要となり、高真空では、昇華温度は低くなる。例示するならば、真空度10-5〜10-8トール程度では、蒸着源の加熱温度は、200〜500℃の範囲である。
【0063】
室温以下の基板温度で形成したOTiPcの蒸着膜を、有機溶媒で結晶化処理すると、薄膜X線回折でブラッグ角(2θ)が6.8±0.2であったピークが7.6±0.2度にシフトする。このピークは、α型OTiPcのb軸が基板にほぼ垂直に配向、すなわち、フタロシアニン環が基板にほぼ垂直に配向したことを示す。
【0064】
OTiPcの蒸着膜を結晶化処理するために用いる有機溶媒としては、例えば、テトラヒドロフランの如きエーテル類、ジクロロメタン、クロロベンゼンの如きハロゲン化炭化水素、メタノールの如きアルコール類、アセトンの如きケトン類、ピリジンの如きアミン類、ベンゼン、トルエンの如き芳香族炭化水素等が挙げられる。これら中でも、特に、テトラヒドロフラン及びジクロロメタンが好ましい。
【0065】
有機溶媒による結晶化は、蒸着膜を有機溶媒中に浸漬しても良いが、浸漬すると溶媒の種類によっては、蒸着膜がわずかに溶解する場合があるので、有機溶媒の蒸気に蒸着膜を接触させる。有機溶媒の蒸気を用いる場合、結晶化は極めて短時間に進行するが、結晶化を完全に行うためには、30分から24時間の範囲が好ましい。この有機溶媒の蒸気を用いるときは、加熱は必要ないが、室温から有機溶媒の沸点までの温度範囲で行うことができる。
【0066】
OTiPcの蒸着時に基板を加熱して結晶化させる方法では、蒸着中、基板を加熱すれば良いが、温度が低いとα型とアモルファスの混合膜となり、温度が高いとα型とβ型の混合膜となる傾向にあるので、蒸着時の基板温度は、100〜250℃の範囲が好ましく、150〜200℃の範囲の範囲が特に好ましい。
【0067】
更に、このOTiPcの蒸着膜を形成するために用いる原料と成るOTiPcは、従来既知のフタロニトリルと四塩化チタンにより製造されたOTiPcを用いることができる。また、この方法で製造されたOTiPcは一部核塩素化されたOTiPcを含有している。本発明の効果を更に有効ならしめるには、ハロゲン原子の含有量が0.1重量%以下のOTiPcを用いることがより好ましい。ハロゲン化OTiPcを含有しない高純度OTiPcの合成法としては、本発明者等がすでに出願した尿素やアミド化合物の存在下にフタロニトリル類とチタニウムテトラアルコキシドとを反応させる方法(特開平6−293769号公報)や既知の手法である1,3−ジイミノイソインドリンとチタニウムテトラアルコキシドを反応させる方法などを用いることができる。
【0068】
一方、蒸着膜の可視吸収スペクトルにおいて、自己組織化膜上に形成されたOTiPc蒸着膜は、溶剤処理が未処理の状態では、720nmに吸収極大を示すが、結晶化処理を施したOTiPc膜は、吸収極大が長波長シフトし、820〜900nmに吸収極大を示す。従って、有機溶媒によりあるいは蒸着中の基板加熱により結晶化して得た配向性蒸着膜は、レーザー等の近赤外光に高い感度を示すようになり、レーザープリンター感光体、センサー、光起電力素子等に有用となる。
【0069】
本発明のOTiPc配向膜を、電子写真あるいはレーザープリンター感光体として用いるときは、アルミニウム基板、銅基板、金やITOをポリマー膜上に形成し、次いで本発明の手法で自己組織化膜を形成した後、OTiPcを蒸着したものを電荷発生層として用い、OTiPc蒸着膜上に、電荷輸送物質単体又はこれを樹脂に溶解あるいは分散させた形で電荷輸送層を形成する。光導電性を用いたセンサーを構成する場合には、自己組織化膜を形成した基板上にOTiPc蒸着膜を形成し、次いでその上に櫛の歯電極を形成するか、あるいは、あらかじめ基板上に櫛の歯電極を形成し、自己組織化膜で被覆した後、OTiPc配向膜を形成するすることなどでセンサーを構築できる。また、自己組織化膜で被覆したNESA、ITO等の透明導電性膜と半透明金属基板などでOTiPc配向膜を挟持するとセンサーや光電変換素子を構築することができる。
【0070】
【実施例】
以下、実施例を用いて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はそれらの具体例に限定されるものではない。
【0071】
<実施例1>
フタロニトリル128g、チタニウムテトラブトキシド89.6g、尿素58g及びn−オクタノール380mlを室温で、撹拌器、還流冷却器、温度計及び窒素ガス導入管付きの4口フラスコに入れ、これらを撹拌しながら、窒素雰囲気下でフラスコを160℃の油浴に浸し、その温度で6時間反応させた。反応終了後、生成した沈殿を濾別し、沈殿をジメチルホルムアミド、アセトン、メタノールを用いて洗浄し、真空乾燥させて、OTiPc121.6gを得た。生成物の元素分析結果は、計算値と誤差範囲内で一致し、本反応では基本的にハロゲン原子は含有していなかった。
【0072】
以上のようにして得たOTiPcをアルゴン気流中、2mmHgの圧力下で500〜510℃に加熱し昇華精製した。このようにして精製したOTiPcを蒸着用原料として用いた。
【0073】
基板の作製は以下のようにして行った。縦と横の長さが20mm、厚さが1mmのパイレックスガラス上に2×10-5トールの真空下でチタニウムを膜厚150オングストロームとなるように蒸着し、引き続き、金を膜厚200オングストロームとなるように蒸着した。この基板をオクタデシルメルカプタンの1mM/エタノール溶液に室温で3時間浸漬し、引き上げた後、エタノールで十分洗浄し、次いで窒素ガスをブローすることによって乾燥させて基板を得た。エリプソメーターによる測定から、25オングストロームの薄膜が金蒸着膜上に形成されていた。また、ESCAによる表面分析結果も合わせ、金蒸着膜上にオクタデシルメルカプタンの単分子膜すなわち自己組織化膜が形成されていることが判った。
【0074】
油回転ポンプ及び油拡散ポンプで構築した真空系を有する蒸着装置を用い、アルミナルツボに上記精製OTiPcを仕込み、2×10-6トールの真空下で蒸着を行った。上記の自己組織化膜を形成した基板を、ルツボ上20cmの距離に3枚設置し、蒸着中、室温に保持した。蒸着速度は、水晶振動子を用いた膜厚モニターによって測定した。蒸着速度は、膜厚モニターで観察しながら、アルミナルツボを400〜450℃に加熱することにより、0.5オングストローム/秒に制御した。こうして、膜厚1500オングストロームの蒸着膜を3枚の基板に形成した。この蒸着膜の内、1枚はそのまま、他の2枚はそれぞれジクロロメタン、テトラヒドロフランの飽和蒸気中に12時間放置して、有機溶媒蒸気による結晶化処理を行った。
【0075】
図1(1)及び(2)は、これら3種の蒸着膜のX線回折図であり、図中、(1)は未処理の蒸着膜、(2)はジクロロメタンの飽和蒸気による結晶化処理を行った蒸着膜のX線回折図である。テトラヒドロフランの飽和蒸気による結晶化処理後のX線回折図も図1(2)と同様である。
【0076】
また、図2(1)及び(2)はこれらの3種の蒸着膜の偏光可視吸収スペクトルの角度依存性を示す図であり、(1)は未処理の蒸着膜、(2)はジクロロメタンの飽和蒸気により結晶化処理を行った蒸着膜の偏光可視吸収スペクトルの角度依存性を示す図である。テトラヒドロフランの飽和蒸気による結晶化処理後の偏光可視吸収スペクトルも図2(2)と同様である。図中、0、30、60はそれぞれ、入射角が0度、30度、60度の時の偏光可視吸収スペクトルを示す。尚、入射光の偏光面は蒸着基板に対する光の入射面に平行に設定した。
【0077】
図1(1)から明らかなように、未処理の蒸着膜のX線回折図では、ブラッグ角(2θ)が6.85度(13.0オングストローム)のみに回折ピークを示し、OTiPc分子が配向していることを示している。図2(1)の偏光可視吸収スペクトルの入射光の角度依存性で、入射角を0度から30度、60度に変更すると、720nmの吸収極大はやや低下し、640nm付近の吸収が増大することからも、OTiPcの分子がほぼ同方向に配向していることを示している。
【0078】
図1(2)から明らかなように、ジクロロメタンの飽和蒸気で蒸着膜を結晶化処理すると、結晶化が進行し、X線回折図では、ブラッグ角(2θ)が7.6度(11.6オングストローム)にのみ回折ピークが観測される。これはα型OTiPcの(010)面に対応する。従って、α型結晶のb軸が基板にほぼ垂直方向に配向され、即ち、OTiPcのフタロシアニン環が基板にほぼ垂直に立って配向され、蒸着膜を形成する微結晶の方位が揃っていることを示している。また、溶媒蒸気による結晶化処理を行うと、偏光可視吸収スペクトルの吸収極大は、図2(1)に示す未処理の場合の720nmから、図2(2)に示す830nmにシフトする。偏光可視吸収スペクトルの入射光の角度依存性から、入射角が大きくなるにつれ、600〜640nm付近の吸収が増大することからも、OTiPc分子あるいは微結晶が配向していることが理解できる。
【0079】
<実施例2>
実施例1と同様にして3枚の自己組織化膜が形成された金蒸着膜を形成した。金蒸着膜上には、エリプソメーターによる測定から、25オングストロームの薄膜が形成されており、また、ESCAによる表面分析結果も合わせ、オクタデシルメルカプタンの単分子膜すなわち自己組織化膜が形成されていることが判った。
【0080】
次いで、実施例1において基板温度を室温を150℃に変更した以外は実施例1と同様にして、2枚の自己組織化膜を形成した金蒸着膜上にOTiPc蒸着膜を形成した。1枚は、OTiPc蒸着条件に保持した。この真空下、加熱処理した金基板表面をエリプソメーター及びESCAで分析したところ、金蒸着膜上には25オングストロームの薄膜が有り、オクタデシルメルカプタンの自己組織化膜はほぼ加熱前と同じ状況で金表面に残存していた。
【0081】
図1(3)はこれらのOTiPc蒸着膜のX線回折図であり、また、図2(3)はこれらの蒸着膜の偏光可視吸収スペクトルの角度依存性を示す図である。図中、0、30、60はそれぞれ、入射角が0度、30度、60度の時の偏光吸収スペクトルを示す。なお、入射光の偏光面は蒸着基板に対する光の入射面に平行に設定した。
【0082】
図1(3)から明らかなように、150℃の基板上にOTiPcを蒸着することによって、結晶化が進行し、X線回折図では、図1(2)と同様に、ブラッグ角(2θ)が7.6度(11.6オングストローム)のみに回折ピークが観測される。これはα型OTiPcの(010)面に対応する。従って、α型結晶のb軸が基板にほぼ垂直方向に配向され、即ち、OTiPcのフタロシアニン環が基板にほぼ垂直に立って配向され、蒸着膜を形成する微結晶の方位が揃っていることを示している。また、偏光可視吸収スペクトルは、図2(3)に示したように図2(2)と同様に830nmに吸収極大を示す。偏光可視吸収スペクトルの入射光の角度依存性から、入射角が大きくなるにつれ、600〜640nm付近の吸収が増大することからも、OTiPc分子あるいは微結晶が配向していることが理解できる。
【0083】
<比較例1>
実施例1において、オクタデシルメルカプタン溶液で処理しない、すなわち自己組織化膜を形成しない以外は同様にして、室温の金蒸着膜上にOTiPc蒸着膜を形成した。実施例1と同様に、1枚はそのまま、他の2枚はそれぞれジクロロメタンの飽和蒸気中に放置して有機溶媒蒸気による結晶化処理を行った。
【0084】
有機溶媒蒸気未処理のOTiPc蒸着膜のX線回折図を図3(1)に、ジクロロメタンを用いて蒸気処理を施したOTiPc蒸着膜のX線回折図を図3(2)に示した。また、有機溶媒蒸気未処理のOTiPc蒸着膜又はジクロロメタンを用いて蒸気処理を施したOTiPc蒸着膜の可視吸収スペクトルを図4(1)あるいは(2)に示した。
【0085】
また、テトラヒドロフランを用いて蒸気処理を施したOTiPc蒸着膜においても図3(2)および図4(2)と同様のシグナルを示した。
【0086】
図3(1)から明らかなように、未処理の蒸着膜のX線回折図では、ブラッグ角(2θ)が6.85度と26.3度に回折ピークを示し、OTiPc分子は一方向に配向していない。また、図4(1)の偏光可視吸収スペクトルは、720nmの極大と640nm付近のショルダーに加え、760nm付近のショルダーを示し、基本的にはアモルファスのスペクトル形状であるが、入射角依存性も示さないので、明らかに図2(1)の配向膜とは異なるものである。
【0087】
図3(2)に示すように、ジクロロメタン蒸気で蒸着膜を結晶化処理すると、結晶化が進行し、X線回折図では、ブラッグ角(2θ)が7.6度と26.3度に主たる回折ピークが観測される。前者はα型OTiPcの(010)面に対応し、後者はβ型の(001)面に対応する。したがって、α型とβ型の混合膜が形成されていることが明らかである。
【0088】
可視吸収スペクトルの吸収極大は、図4(1)に示す未処理の場合の720nmから、図4(2)に示す670nmと750nmの2つの極大にシフトする。従って、X線回折の結果と同様に、α型とβ型の混合膜が形成されたことを示している。
【0089】
<比較例2>
実施例1において、自己組織化膜を形成しない基板を用い、基板温度を150℃に変更した以外は、実施例1と同様にして、金蒸着膜上にOTiPc蒸着膜を形成した。
【0090】
図3(3)はこれらのOTiPc蒸着膜のX線回折図であり、図4(3)はこれらの蒸着膜の可視吸収スペクトルである。
【0091】
図3(3)から明らかなように、150℃に加熱した金蒸着膜を形成した基板上にOTiPcを蒸着することで、結晶化が進行し、X線回折図では、ブラッグ角(2θ)が26.3度のみに回折ピークが観測される。これはβ型OTiPcの(001)面に対応する。したがって、β型結晶においてOTiPc環が基板にほぼ水平に配向していることを表わしている。また、可視吸収スペクトルは、図4(3)に示すように、687nmと766nmに吸収極大を示し、典型的なβ型結晶膜である。
【0092】
このように、実施例1及び2と異なり、自己組織化膜で処理していない金蒸着膜上にOTiPcを0.5オングストローム/秒の速度で形成した場合、混合膜あるいはβ型結晶膜が得られることが明らかである。
【0093】
<実施例3>
縦及び横の長さが20mm、厚さが1mmの大きさを有する5枚のパイレックスガラス板の面上に、真空下、スパッタリング法で膜厚200オングストロームの白金蒸着膜を形成した。次に、これらの基板をオクタデシルメルカプタンの1mM/エタノール溶液に、室温で1時間浸漬し、引き上げた後、エタノールを用いて十分に洗浄し、窒素ガスをブローすることによって乾燥させて、表面に自己組織化膜を形成した白金蒸着膜を有する基板を得た。エリプソメーター及びESCAによる表面分析結果から、膜厚29.8オングストロームのオクタデシルメルカプタンの自己組織化膜が白金蒸着膜上に形成されていることを確認した。この自己組織化膜を形成した白金蒸着膜を有する基板1枚を2×10-6トールの真空下、150℃に5時間加熱した。その後、室温に冷却し、常圧下で、白金蒸着膜上の自己組織化膜の膜厚をエリプソメーターで測定したところ、14.0オングストロームであった。以上の結果から、白金蒸着膜上にほぼ半数のオクタデシルメルカプタン基からなる自己組織化膜が残存していることが明らかである。
【0094】
この自己組織化膜を形成した白金蒸着膜を有する基板2枚を実施例1と同様の蒸着装置に仕込み、基板温度を室温に維持しながら、2×10-6トールの真空下でOTiPcの蒸着を行い(蒸着速度;0.5オングストローム/秒)、膜厚1000オングストロームのOTiPc膜を形成した。その後、1枚はそのまま、他は、ジクロロメタンの飽和蒸気による結晶化処理を施した。
【0095】
蒸着後、未処理のOTiPc膜のX線回折図は図1(1)と同様であり、偏光可視吸収スペクトルも図2(1)と同様であった。従って、得られたOTiPc膜は、実施例1と同様に、本質的にはアモルファスであるが、OTiPc環が基板に垂直方向に配向した膜であった。
【0096】
一方、ジクロロメタンの飽和蒸気による結晶化処理を施したOTiPc膜は、実施例1と同様の傾向を示し、X線回折図は図1(2)と、偏光可視吸収スペクトルは図2(2)とそれぞれ同様であった。従って、得られたOTiPc膜は、実施例1と同様に、α型結晶膜で、OTiPc環が基板に垂直方向に配向した膜であった。
【0097】
残り2枚の内の1枚の自己組織化膜を形成した白金蒸着膜を有する基板には、基板温度を150℃とした以外は、上記と同様にして、膜厚1000オングストロームのOTiPc膜を形成した。
【0098】
最後の1枚の自己組織化膜を形成した白金蒸着膜を有する基板には、油回転ポンプおよびターボモレキュラーポンプで構築した真空系を有する分子線蒸着装置を用い、石英製のクヌーセンセルにOTiPcを仕込み、2×10-7トールの真空下、上記基板を、ルツボ上20cmの距離に設置し、蒸着中、150℃に保持し、蒸着速度を、水晶振動子を用いた膜厚モニターによって測定し、クヌーセンセルを240〜270℃に加熱することにより、0.5オングストローム/秒に制御しながら、膜厚1000オングストロームの蒸着膜を形成した。
【0099】
いずれにおいても、OTiPc膜のX線回折図は図1(3)と同様であり、偏光可視吸収スペクトルも図2(3)と同様のパターンを示し、実施例2と同様にα型結晶膜で、OTiPc環が基板に垂直方向に配向したOTiPc膜であった。
【0100】
以上のように、自己組織化膜を形成した白金蒸着膜上にOTiPcを蒸着した場合には、蒸着条件によらず、一定の配向膜が得られ、この事実は、以下の比較例3の結果と比較して好ましいことが明らかである。
【0101】
<比較例3>
実施例3において、オクタデシルメルカプタンからなる自己組織化膜を形成しない白金蒸着膜を有する基板を用いた以外は、実施例3と同様にして、白金蒸着膜上にOTiPc蒸着膜を形成した。
【0102】
実施例1と同じ蒸着装置を用いた場合、室温の基板上では、X線回折図及び可視吸収スペクトルは、それぞれ図3(1)及び図4(1)と類似しており、比較例1と同様に、基本的にアモルファスであるが、OTiPc環は一定の配向をしていないことを示していた。一方、基板温度を150℃とした場合、X線回折および偏光可視吸収スペクトルは、それぞれ図1(3)及び図2(3)と類似しており、実施例2と同様、OTiPc環が垂直方向に配向したα型膜が得られた。
【0103】
油回転ポンプ及びターボモレキュラーポンプで構築した真空系を有する分子線蒸着装置を用い、石英製のクヌーセンセルから、2×10-7トールの真空下で150℃に保持した白金蒸着膜上にOTiPcを蒸着した場合、実施例1と同じ蒸着装置を用いた場合と全く異なるX線回折図及び可視吸収スペクトルを示した。X線回折図及び可視吸収スペクトルをそれぞれ図5及び図6に示した。これらから、(−212)面(28.8度)および(−202)面(25.5度)が配向した、すなわち、α型結晶でc軸が基板に垂直方向に配向した膜が得られていることが理解できる。
【0104】
このように、自己組織化膜で処理していない白金蒸着膜上にOTiPcを0.5オングストローム/秒の速度で蒸着した場合、条件により種々の膜が得られ、実施例3に示した結果と比較して、好ましくないことが明らかである。
【0105】
<実施例4>
縦及び横の長さが20mm、厚さが1mmの大きさを有する4枚のパイレックスガラス板の面上に、真空下、膜厚200オングストロームの銅の蒸着膜を形成した。次に、これらの基板をオクタデシルメルカプタンの1mM/エタノール溶液に、室温で1時間浸漬し、引き上げた後、エタノールを用いて十分に洗浄し、窒素ガスをブローすることによって乾燥させて、表面に自己組織化膜を形成した銅蒸着膜を有する基板を得た。エリプソメーター及びESCAによる表面分析結果から、膜厚44.1オングストロームのオクタデシルメルカプタンの自己組織化膜が銅蒸着膜上に形成されていることを確認した。この自己組織化膜を形成した銅蒸着膜を有する基板1枚を2×10-6トールの真空下、150℃に5時間加熱した。その後、室温に冷却し、常圧下で、銅蒸着基板上の自己組織化膜の膜厚をエリプソメーターで測定したところ、44.1オングストロームであった。以上の結果から、銅基板上のオクタデシルメルカプタン基からなる自己組織化膜は真空下加熱によってもほぼそのまま残存していることが明らかである。
【0106】
この自己組織化膜を形成した銅蒸着膜を有する基板2枚を実施例1と同様の蒸着装置に仕込み、基板温度を室温に維持しながら、2×10-6トールの真空下でOTiPcの蒸着を行い(蒸着速度;0.5オングストローム/秒)、膜厚1000オングストロームのOTiPc膜を形成した。その後、1枚はそのまま、他は、ジクロロメタンの飽和蒸気による結晶化処理を施した。
【0107】
蒸着後、未処理のOTiPc膜のX線回折図は図1(1)と同様であり、偏光可視吸収スペクトルも図2(1)と同様であった。従って、得られたOTiPc膜は、実施例1と同様に、本質的にはアモルファスであるが、OTiPc環が基板に垂直方向に配向した膜であった。
【0108】
一方、ジクロロメタンの飽和蒸気による結晶化処理を施したOTiPc膜は、実施例1と同様の傾向を示し、X線回折図は図1(2)と、偏光可視吸収スペクトルは図2(2)とそれぞれ同様であった。従って、得られたOTiPc膜は、実施例1と同様に、α型結晶膜で、OTiPc環が基板に垂直方向に配向した膜であった。
【0109】
最後の1枚の自己組織化膜を形成した銅蒸着膜を有する基板には、油回転ポンプおよびターボモレキュラーポンプで構築した真空系を有する分子線蒸着装置を用い、石英製のクヌーセンセルにOTiPcを仕込み、2×10-7トールの真空下、上記基板を、ルツボ上20cmの距離に設置し、蒸着中、150℃に保持し、蒸着速度を、水晶振動子を用いた膜厚モニターによって測定し、クヌーセンセルを240〜270℃に加熱することにより、0.5オングストローム/秒に制御しながら、膜厚1000オングストロームの蒸着膜を形成した。
【0110】
このようにして得たOTiPc膜のX線回折図は図1(3)と同様であり、偏光可視吸収スペクトルも図2(3)と同様のパターンを示し、実施例2と同様にα型結晶膜で、OTiPc環が基板に垂直方向に配向したOTiPc膜であった。
【0111】
以上のように、自己組織化膜を形成した銅蒸着膜上にOTiPcを蒸着した場合には、蒸着条件によらず、一定の配向膜が得られ、この事実は、以下の比較例4の結果と比較して好ましいことが明らかである。
【0112】
<比較例4>
実施例4で使用した油回転ポンプおよびターボモレキュラーポンプで構築した真空系を有する分子線蒸着装置に、縦と横の長さが20mm、厚さが1mmのパイレックスガラス板を仕込み、その面上に、膜厚200オングストロームの銅の蒸着膜を形成した。次いで、真空を破らずに、この基板を150℃に加熱し、実施例4と同様にOTiPcを1000オングストロームの厚さに蒸着した。
【0113】
このようにして得たOTiPc膜のX線回折図及び可視吸収スペクトルは、それぞれ図3(3)及び図4(3)と同様であり、β型結晶膜であった。実施例4に示した結果と比較して、好ましくないことが明らかである。
【0114】
<実施例5>
実施例4において、銅蒸着膜を有する基板に代えて銀蒸着膜を有する基板を用いた以外は、実施例4と同様にして、銀蒸着膜上に、膜厚26.1オングストロームのオクタデシルメルカプタン自己組織化膜を形成した。銀蒸着上の自己組織化膜の膜厚は、加熱前後において変化はなかった。
【0115】
実施例4と同様にして、油回転ポンプおよびターボモレキュラーポンプで構築した真空系を有する分子線蒸着装置を用いて、自己組織化膜を形成した銀蒸着膜を有する基板に、OTiPcの蒸着膜を形成した。
【0116】
このようにして得たOTiPc膜のX線回折図及び偏光可視吸収スペクトルはそれぞれ図1(3)及び図2(3)と同様のパターンを示し、α型結晶膜で、OTiPc環が基板に垂直方向に配向したOTiPc膜であった。
【0117】
以上のように、自己組織化膜を形成した銀蒸着膜上にOTiPcを蒸着した場合には、一定の配向膜が得られ、この事実は、以下の比較例5の結果と比較して好ましいことが明らかである。
【0118】
<比較例5>
比較例4において、銅に代えて銀を用いた以外は、比較例4と同様にして、銀蒸着膜上にOTiPcを1000オングストロームの厚さに蒸着した。
【0119】
このようにして得たOTiPc蒸着膜のX線回折図及び可視吸収スペクトルは、それぞれ図3(3)及び図4(3)と同様であり、β型結晶膜であった。実施例5に示した結果と比較して、好ましくないことが明らかである。
【0120】
<実施例6>
縦及び横の長さが20mm、厚さが1mmの大きさを有するパイレックスガラス板の面上に、真空下、クロムを150オングストロームの厚さに蒸着した後、その上に、金を200オングストロームの厚さに蒸着した。次に、この基板を3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン/メタノール溶液に、室温で1時間浸漬し、引き上げた後、メタノールを用いて十分に洗浄し、窒素ガスをブローすることによって乾燥させて、表面に自己組織化膜を形成した基板を得た。エリプソメーター及びESCAによる表面分析結果から、膜厚20オングストロームの3−メルカプトプロピルトリメトキシシランから成る自己組織化膜が形成されていることを確認した。
【0121】
実施例4と同様にして、自己組織化膜を形成した基板に、油回転ポンプおよびターボモレキュラーポンプで構築した真空系を有する分子線蒸着装置を用いて、膜厚1000オングストロームのOTiPcの蒸着膜を形成した。
【0122】
このようにして得たOTiPc膜のX線回折図及び偏光可視吸収スペクトルはそれぞれ図1(3)及び図2(3)と同様のパターンを示し、α型結晶膜で、OTiPc環が基板に垂直方向に配向したOTiPc膜であった。
【0123】
<実施例7>
実施例6において、クロム上に金を蒸着した基板に代えて、アルミニウムを200オングストロオームの厚さに蒸着したガラス基板を用い、更に、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン/メタノール溶液に代えて、2−シアノエチルトリメトキシシランの1%メタノール溶液を用いた以外は、実施例6と同様にして、表面に自己組織化膜を形成した基板を得た。エリプソメーター及びESCAによる表面分析結果から、2−シアノエチルシロキシ基から成る自己組織化膜がアルミニウム蒸着基板上に形成されていることを確認した。
【0124】
次に、自己組織化膜を形成したアルミニウム蒸着膜を有する基板に、実施例6と同様にして、OTiPcの蒸着膜を形成した。
【0125】
このようにして得たOTiPc膜のX線回折図及び偏光可視吸収スペクトルはそれぞれ図1(3)及び図2(3)と同様のパターンを示し、α型結晶膜で、OTiPc環が基板に垂直方向に配向したOTiPc膜であった。
【0126】
【発明の効果】
本発明のOTiPc配向膜は、金属基板上に自己組織化膜とOTiPcの蒸着膜を順次、積層したことを特徴とし、このように構成することによって、基板の材質及び蒸着条件に係わりなく、OTiPcの分子あるいは微結晶を一定方向に配向した薄膜が得られる。
【0127】
この薄膜に有機溶媒を用いて結晶化処理を施すと、更に結晶化が進み、α型OTiPc結晶が配向した薄膜となる。
【0128】
また、100〜250℃に加熱した自己組織化膜を有する基板上にOTiPcを蒸着した場合、蒸着中に結晶化が進行して、α型OTiPc結晶が配向した薄膜となる。
【0129】
本発明のOTiPc配向膜は、光導電特性が高いので、電子写真感光体、レーザープリンター感光体、光電変換材料あるいは光センサー材料として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1及び実施例2で得たオクタデシルメルカプタンから成る自己組織化膜を形成した金薄膜を有する基板上に蒸着したオキソチタニウムフタロシアニン蒸着膜のX線回折図である。
【符号の説明】
(1) 室温の基板上に蒸着した蒸着膜であって、溶媒蒸気で処理していないもの。
(2) 室温の基板上に蒸着した蒸着膜であって、ジクロロメタンの飽和蒸気による結晶化処理を行ったもの。
(3) 150℃に加熱した基板上に形成した蒸着膜のもの。
【図2】実施例1及び実施例2で得たオクタデシルメルカプタンから成る自己組織化膜を形成した金薄膜を有する基板上に蒸着したオキソチタニウムフタロシアニン蒸着膜の入射角0度、30度及び60度の偏光可視吸収スペクトルである。
【符号の説明】
(1) 室温の基板上に蒸着した蒸着膜であって、溶媒蒸気で処理していないもの。
(2) 室温の基板上に蒸着した蒸着膜であって、ジクロロメタンの飽和蒸気による結晶化処理を行ったもの。
(3) 150℃に加熱した基板上に形成した蒸着膜のもの。
【図3】比較例1及び比較例2で得た自己組織化膜を形成しない金薄膜を有する基板上に蒸着したオキソチタニウムフタロシアニン蒸着膜のX線回折図である。
【符号の説明】
(1) 室温の基板上に蒸着した蒸着膜であって、溶媒蒸気で処理していないもの。
(2) 室温の基板上に蒸着した蒸着膜であって、ジクロロメタンの飽和蒸気による結晶化処理を行ったもの。
(3) 150℃に加熱した基板上に形成した蒸着膜のもの。
【図4】比較例1及び比較例2で得た自己組織化膜を形成しない金薄膜を有する基板上に蒸着したオキソチタニウムフタロシアニン蒸着膜の可視吸収スペクトルである。
【符号の説明】
(1) 室温の基板上に蒸着した蒸着膜であって、溶媒蒸気で処理していないもの。
(2) 室温の基板上に蒸着した蒸着膜であって、ジクロロメタンの飽和蒸気による結晶化処理を行ったもの。
(3) 150℃に加熱した基板上に形成した蒸着膜のもの。
【図5】比較例3で得た自己組織化膜を形成しない白金蒸着膜を有する基板上に、油回転ポンプ及びターボモレキュラーポンプで構築した真空系を有する分子線蒸着装置を用いて蒸着したオキソチタニウムフタロシアニン蒸着膜のX線回折図である。
【図6】比較例3で得た自己組織化膜を形成しない白金蒸着膜を有する基板上に、油回転ポンプ及びターボモレキュラーポンプで構築した真空系を有する分子線蒸着装置を用いて蒸着したオキソチタニウムフタロシアニン蒸着膜の可視吸収スペクトルである。

Claims (13)

  1. 金属基板上に自己組織化膜を有し、かつ、該自己組織化膜上に配向したオキソチタニウムフタロシアニンの蒸着膜を有することを特徴とするオキソチタニウムフタロシアニン配向膜。
  2. 金属基板が、銅、銀、金又は白金より構成される基板あるいは表面にそれらの金属の薄膜を有する基板である請求項1記載のオキソチタニウムフタロシアニン配向膜。
  3. 自己組織化膜がチオール類、スルフィド類及びジスルフィド類からなる群から選ばれる1種以上の自己組織化膜形成用化合物からなる膜であることを特徴とする請求項1又は2記載のオキソチタニウムフタロシアニン配向膜。
  4. オキソチタニウムフタロシアニンの蒸着膜がアモルファス膜であって、X線回折において、ブラッグ角6.8±0.2度の範囲にのみ明確なピークを示す請求項1、2又は3記載のオキソチタニウムフタロシアニン配向膜。
  5. オキソチタニウムフタロシアニンの蒸着膜がα型結晶膜であって、薄膜X線回折において、ブラッグ角7.6±0.2度の範囲にのみ明確なピークを示す請求項1、2又は3記載のオキソチタニウムフタロシアニン配向膜。
  6. 金属基板上に自己組織化膜を形成した後、該自己組織化膜上にオキソチタニウムフタロシアニンを、蒸着速度0.8オングストローム/秒以下で蒸着させることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載のオキソチタニウムフタロシアニン配向膜の製造方法。
  7. 金属基板として、銅、銀、金又は白金より構成される基板あるいは表面にそれらの金属の薄膜を有する基板を用いる請求項6記載のオキソチタニウムフタロシアニン配向膜の製造方法。
  8. 自己組織化膜としてチオール類、スルフィド類及びジスルフィド類からなる群から選ばれる1種以上の自己組織化膜形成用化合物からなる膜を用いる請求項6あるいは7記載のオキソチタニウムフタロシアニン配向膜の製造方法。
  9. オキソチタニウムフタロシアニンを蒸着させた後、有機溶媒を用いて蒸着膜を結晶化処理することを特徴とする請求項5、6、7又は8記載のオキソチタニウムフタロシアニン配向膜の製造方法。
  10. 有機溶媒として、テトラヒドロフランあるいはジクロロメタンを用いる請求項9記載のオキソチタニウムフタロシアニン配向膜の製造方法。
  11. オキソチタニウムフタロシアニンを蒸着させる際、金属基板を100〜250℃に加熱して結晶膜を作製することを特徴とする請求項5、6、7又は8記載のオキソチタニウムフタロシアニン配向膜の製造方法。
  12. 蒸着速度が、0.15〜0.8オングストローム/秒の範囲でオキソチタニウムフタロシアニンの蒸着を行う請求項4、5、6、7、8、9、10又は11記載のオキソチタニウムフタロシアニン杯硬膜の製造方法。
  13. 真空度10-4〜10-8トールの範囲でオキソチタニウムフタロシアニンの蒸着を行う請求項4、5、6、7、8、9、10、11又は12記載のオキソチタニウムフタロシアニン配向膜の製造方法。
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