JP3998483B2 - デコンプ手段を備える内燃機関のデコンプリフト量調整方法 - Google Patents

デコンプ手段を備える内燃機関のデコンプリフト量調整方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、機関始動時に、圧縮行程で機関弁を開弁させることにより、圧縮圧力を減少させて、始動を容易にするためのデコンプ手段を備える内燃機関のデコンプリフト量調整方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、デコンプ手段を備える内燃機関として、例えば特開2001−221023号公報に開示されたものが知られている。この内燃機関のデコンプ手段は、カム軸に設けられた排気カムにより開閉作動される排気弁を開弁するデコンプカム(押圧子)が設けられたデコンプレバーを備える。デコンプカムは、デコンプ作動時には、排気カムのベース円部よりもカム軸の径方向外方に突出していて、排気弁に当接するロッカアームのスリッパに接触し、該ロッカアームを揺動させて排気弁を所定のリフト量(以下、「デコンプリフト量」という。)で開弁させる。
【0003】
また、従来、内燃機関の製造コストを削減するために、排気量が同じで、共通の機関構成部品を使用する一方、燃料供給装置などの仕様を変更することなどにより、異なる出力特性を有する別個の機種の内燃機関を製造することも行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、デコンプリフト量を大きくして、圧縮圧力の減少の度合いを大きくすると、始動装置の操作力が小さくなって、その操作性が向上する利点はあるものの、圧縮圧力の減少により、シリンダ内の燃料の着火性が低下して、内燃機関の始動性が低下する。また、最大出力が異なる内燃機関で、デコンプリフト量が同一に設定されるとき、該デコンプリフト量は、機関の始動性を確保する観点から、最大出力が大きい内燃機関に合わせて設定される。そのため、最大出力が小さい内燃機関では、その出力の割りに始動装置の操作力が大きくなって、そのような内燃機関が搭載された機器等の使用者に違和感を与える。
このようなことから、デコンプリフト量は、内燃機関の始動性および始動装置の操作性を考慮して、出力特性の異なる内燃機関毎に設定することが望ましい。
【0005】
しかしながら、内燃機関の機種毎にデコンプ手段の構造、例えばデコンプカムの形状を変更するのでは、内燃機関の機種の数に応じた種類のデコンプ手段を用意しなければならないことから、内燃機関がコスト高となるうえ、比較的小さな部品であるために識別が困難なデコンプ手段の製品管理が大変になる難点がある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、請求項1ないし請求項記載の発明は、適切なデコンプリフト量でデコンプ作動を行うデコンプ手段を備える内燃機関において、最大出力に応じて機関の始動性重視の第1内燃機関および始動装置の操作性重視の第2内燃機関が低コストで得られるデコンプリフト量の調整方法を提供することを目的とする。そして、請求項2記載の発明は、さらに、燃料の着火性に応じて機関の始動性が確保されるかまたは向上し、しかも始動装置の操作性が改善された内燃機関を得ることを目的とし、請求項記載の発明は、さらに、内燃機関のコストを一層削減することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段および発明の効果】
請求項1記載の発明は、燃料供給装置と、カム軸に設けられた動弁カムにより開閉作動される機関弁と、マニュアル式の始動装置と、デコンプ作動時に前記動弁カムのベース円部よりも径方向に突出する位置を占めて前記機関弁を開弁するデコンプカムを有するデコンプ手段とを備え、異なる出力特性を有する第1内燃機関および第2内燃機関において、前記第2内燃機関の最大出力が前記第1内燃機関の最大出力よりも小さく設定され、前記第1内燃機関の前記デコンプ手段と前記第2内燃機関の前記デコンプ手段と同一の仕様とされると共に、前記第2内燃機関の前記動弁カムのベース円部の径が前記第1内燃機関の前記動弁カムのベース円部の径よりも小さく設定されることにより、前記第2内燃機関のデコンプリフト量が前記第1内燃機関のデコンプリフト量よりも大きく設定されるデコンプ手段を備える内燃機関のデコンプリフト量調整方法である。
【0008】
これにより、最大力が異なる第1,第2内燃機関に同一仕様のデコンプ手段が使用されると共に第2内燃機関の動弁カムのベース円部の径が第1内燃機関の動弁カムのベース円部の径よりも小さく設定されることで、第1内燃機関では、デコンプリフト量が小さくなって、圧縮圧力がより高くなり、第2内燃機関では、デコンプリフト量が大きくなって、圧縮圧力の減少の程度がより大きくなる
【0009】
この結果、請求項1記載の発明によれば、次の効果が奏される。すなわち、最大出力が異なる第1,第2内燃機関において、最大出力が第2内燃機関よりも大きいために、比較的大型の機器に搭載されることが多く、始動性が重視される第1内燃機関では、デコンプリフト量が小さくされることにより、機関の始動性が向上し、最大出力が第1内燃機関よりも小さいために、比較的小型の機器に搭載されることが多く、始動装置の操作性が重視される第2内燃機関では、デコンプリフト量が大きくされることにより、始動装置の操作性が向上する。
そして、最大出力が大きい第1内燃機関のデコンプリフト量を小さく設定し、最大出力が小さい第2内燃機関のデコンプリフト量を大きく設定するために、同一仕様のデコンプ手段が使用され、かつ内燃機関の機種毎に専用に加工されることからコスト増加の要因とならない動弁カムのベース円部の径異ならせること行われるので、最大出力に応じて始動装置の操作性重視の第2内燃機関および機関の始動性重視の第1内燃機関が低コストで得られ、またデコンプ手段の管理も容易になる。
【0013】
請求項記載の発明は、請求項記載のデコンプ手段を備える内燃機関のデコンプリフト量調整方法において、前記燃料供給装置は気化器であり、前記第2内燃機関の前記気化器のベンチュリのスロート部の通路面積は、前記第1内燃機関の前記気化器のベンチュリのスロート部の通路面積よりも小さいものである。
【0014】
これにより、第1内燃機関に比べて、ベンチュリのスロート部の通路面積が小さい第2内燃機関では、気化器での燃料の霧化が良好に行われて、燃料の着火性がよくなる。
【0015】
この結果、請求項記載の発明によれば、請求項記載の発明の効果に加えて、次の効果が奏される。すなわち、最大出力が第1内燃機関よりも小さいために始動装置の操作性が重視される第2内燃機関では、気化器のベンチュリのスロート部の通路面積が小さいことで霧化が促進されて着火性が向上するので、始動装置の操作性を向上させるためにデコンプリフト量が大きいにも拘わらず、機関始動性が向上する。
【0016】
請求項記載の発明は、請求項1または請求項記載のデコンプ手段を備える内燃機関のデコンプリフト量調整方法において、前記第1内燃機関と前記第2内燃機関とは同一の排気量を有し、前記第1内燃機関の前記カム軸と前記第2内燃機関の前記カム軸とは、互いに共用可能とされているものである。
【0017】
これにより、第1,第2内燃機関において、カム軸が共用化される。
この結果、請求項記載の発明によれば、引用された請求項記載の発明の効果に加えて、次の効果が奏される。すなわち、最大出力が異なる第1,第2内燃機関において、排気量が同一であり、カム軸が共用化されるので、内燃機関のコストを一層削減できる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施例を図1ないし図9を参照して説明する。
本発明が適用されるデコンプ手段を備える第1内燃機関E1および第2内燃機関E2は、同一の排気量を有する一方で、互いに異なる出力特性を有する。そして、両内燃機関E1,E2は、いずれも船外機に搭載されるもので、その基本的な構造は同じであるので、先ず、第1内燃機関E1が搭載された船外機について、図1ないし図7を参照して説明する。
【0019】
図1を参照すると、第1内燃機関E1は、クランク軸8の回転軸線が上下方向を指向するように船外機1に搭載された直列2気筒4ストロークの水冷式バーチカル内燃機関である。内燃機関Eは、シリンダ軸線が前後方向を指向するように上下方向に並設された2つのシリンダ2aを有するシリンダブロック2と、シリンダブロック2の前端に結合されたクランクケース3と、シリンダブロック2の後端に結合されたシリンダヘッド4と、該シリンダヘッド4の後端に結合されたヘッドカバー5とを備える。そして、シリンダブロック2、クランクケース3、シリンダヘッド4およびヘッドカバー5により機関本体が構成される。
【0020】
各シリンダ2aに往復動可能に嵌合されたピストン6は、コンロッド7を介してクランク軸8に連結される。シリンダブロック2の前部とクランクケース3とにより形成されるクランク室9に収容されて、シリンダブロック2およびクランクケース3に上下1対のメタル軸受を介して回転可能に支持されるクランク軸8は、シリンダヘッド4に形成された燃焼室10で、点火栓により点火された混合気の燃焼圧力で駆動されるピストン6により回転駆動される。ここで、両シリンダ2aのピストン6は、クランク角度で360°の位相で往復動するため、内燃機関E1の燃焼は、両シリンダ2aにおいて等間隔で交互に行われる。クランク室9から上方に突出するクランク軸8の上端部には、クランクプーリ11、交流発電機12および始動装置としてのリコイルスタータ13が上方に向かって順次設けられる。
【0021】
図2を併せて参照すると、シリンダヘッド4とヘッドカバー5とで形成される動弁室14には、シリンダヘッド4に回転可能に支持されて、クランク軸8の回転軸線に平行な回転軸線L1を有するカム軸15が収容される。動弁室14から上方に突出するカム軸15の上端部15aにはカムプーリ16が設けられる。そして、クランクプーリ11と、カムプーリ16と、両プーリ11,16に掛け渡されたタイミングベルト17とからなる伝動機構により、カム軸15がクランク軸8に同期して、その1/2の回転数で回転駆動される。カム軸15の下端部15bには、シリンダヘッド4の下壁の外面に取り付けられたトロコイド型のオイルポンプ18のインナロータ18bに結合されたポンプ駆動軸18aが、軸継手19を介して結合される。
【0022】
図1に示されるように、前記機関本体は支持ブロック20の上端に結合され、該支持ブロック20の下端にエクステンションケース21の上端が結合され、エクステンションケース21の下端にギヤケース22が結合される。前記機関本体の下半部と支持ブロック20とが、エクステンションケース21の上端に結合されたアンダカバー23により覆われ、前記機関本体の上半部が、アンダカバー23の上端に結合されたエンジンカバー24により覆われる。
【0023】
クランク軸8の下端部に結合された駆動軸25が、支持ブロック20を貫通して、エクステンションケース21内を下方に延びて、ギヤケース22内で、ベベルギヤ機構およびクラッチ機構から構成される前後進切換装置26を介してプロペラ軸27に結合される。それゆえ、内燃機関E1の動力は、クランク軸8、駆動軸25、前後進切換装置26およびプロペラ軸27を経由して、その後端部に結合されたプロペラ28に伝達され、プロペラ28が回転駆動される。
【0024】
また、船外機1を船体30に着脱自在に取り付けるためのスターンブラケット31には、チルト軸32を介して揺動アーム33が上下方向に揺動可能に支持され、該揺動アーム33の後端部にパイプ状のスイベルケース34が結合される。スイベルケース34の内部に回動可能に嵌合されたスイベル軸35は、その上端部にマウントフレーム36を、その下端部にセンタハウジング37を備える。マウントフレーム36はマウントラバー38aを介して支持ブロック20に弾性的に結合され、センタハウジング37はマウントラバー38bを介してエクステンションケース21に弾性的に結合される。そして、マウントフレーム36の前端部には操舵ハンドル(図示されず)が結合され、この操舵ハンドルが左右に操作されることにより、船外機1がスイベル軸35を中心軸として左右方向に揺動されて、船外機1が操舵される。
【0025】
図2,図3を参照して、内燃機関E1についてさらに説明する。シリンダヘッド4には、シリンダ2a毎に、気化器95で形成されて燃焼室10に供給される混合気が流通する1つの吸気ポート40と、燃焼室10から排出された燃焼ガスが流通する1つの排気ポート41とが形成される。ここで、燃料供給装置としての気化器95は、フロート室、スロー系およびメイン系を含む各種燃料通路、チョーク弁(いずれも図示されず)、ベンチュリ95aおよびスロットル弁95bを備える。
【0026】
吸気ポート40を開閉する機関弁としての吸気弁42および排気ポート41を開閉する機関弁としての排気弁43は、弁バネ44の弾発力により常時閉弁方向に付勢されており、動弁室14内に設けられた動弁装置により開閉作動される。この動弁装置は、カム軸15と、カム軸15に形成されて各シリンダ2aに対応する動弁カム45と、シリンダヘッド4に固定されたロッカ軸46に揺動可能に支持されて動弁カム45により駆動されるカムフォロアとしての吸気ロッカアーム47および排気ロッカアーム48とを備える。
【0027】
吸気ロッカアーム47の一端部には、吸気弁42との当接部としての調整ネジ47aが設けられ、その他端部には、吸気カム部45iおよび排気カム部45eが一体に形成されて共通のカムプロフィールのカム面45sを有する動弁カム45の吸気カム部45iのカム面45sとの接触部としてのスリッパ47aが設けられる。一方、排気ロッカアーム48の一端部には、排気弁43との当接部としての調整ネジ48bが設けられ、その他端部には、動弁カム45の排気カム部45eのカム面45sとの接触部としてのスリッパ48bが設けられる。そして、吸気弁42および排気弁43を閉弁状態に保つベース円部45aと、吸気弁42および排気弁43の開閉時期とリフト量とを規定するノーズ部45bとで形成されるカムプロフィールのカム面45sを有する動弁カム45がカム軸15と共に回転することにより、吸気ロッカアーム47および排気ロッカアーム48が揺動されて、吸気弁42および排気弁43が開閉作動される。各動弁カム45のカム面45sは、鋳造されたカム軸素材に対して、機械加工を施すことにより形成される。
【0028】
図2に示されるように、カム軸15は、1対の動弁カム45と、上部および下部ジャーナル部50a,50bと、両ジャーナル部50a,50bにそれぞれ連なる上部および下部スラスト受け部51a,51bと、両動弁カム45の間および動弁カム45と下部スラスト受け部51bとの間に形成される軸部52と、燃料ポンプ(図示されず)を駆動するための駆動カム53とを備え、さらにカム軸15の中心部には、下部ジャーナル部50bが形成される下端部15bの端面で開口し、上部ジャーナル部50aの部分で閉塞された中空部54が、回転軸線方向Aに沿って上下方向に延びて形成される。
【0029】
上部ジャーナル部50aは、シリンダヘッド4の上壁の一部から構成される上部軸受部55aの軸受孔に挿入されて、該上部軸受部55aに回転可能に支持され、下部ジャーナル部50bは、シリンダヘッド4の下壁に形成された孔に固定された円筒状の下部軸受部55bの軸受孔に挿入されて、該下部軸受部55bに回転自在に支持される。各軸部52は、動弁カム45のベース円部45aの半径よりも小さな半径Rの円柱面からなる外周面を有する円周面部分52aを有する。軸部52に設けられる駆動カム53は、ロッカ軸46に揺動可能に支持された駆動アーム56を揺動させて、駆動アーム56に当接する燃料ポンプの駆動ロッドを往復駆動させる。
【0030】
次に、潤滑系統について説明する。図1を参照すると、オイルパン57が形成される支持ブロック20は、いわゆるオイルケースを形成する。そして、オイルパン57には、貯留された潤滑油の油面下に位置するオイルストレーナ58に接続された吸入パイプ59が収容される。吸入パイプ59の上端は管継手を介してシリンダブロック2に形成された油路60aに接続され、該油路60aがシリンダヘッド4に形成された油路60bを介してオイルポンプ18の吸入ポート18e(図2参照)に連通する。
【0031】
また、オイルポンプ18の吐出ポート(図示されず)は、シリンダヘッド4およびシリンダブロック2に形成された油路(図示されず)およびオイルフィルタ(図示されず)を介してシリンダブロック2に形成された主油路(図示されず)に連通して、該主油路は、内燃機関Eの軸受部を含む各摺動部(例えば、クランク軸8を支持する前記メタル軸受)に通じる多数の油路に連通する。そして、該主油路に連通する前記多数の油路のうちの1つの油路61が、図2に示されるように、動弁室14内の前記動弁装置および後述するデコンプ手段Dの各摺動部に潤滑油を供給するための給油路としてシリンダヘッド4に形成される。
【0032】
それゆえ、オイルポンプ18が作動すると、オイルパン57内に貯留された潤滑油は、オイルストレーナ58、吸入パイプ59、油路60a,60bおよび吸入ポート18eを順次流れて、インナロータ18bとアウタロータ18cとの間に形成されるポンプ室18dに吸入される。ポンプ室18dから吐出された高圧の潤滑油は、前記吐出ポート、前記オイルフィルタおよび前記主油路を順次流れ、さらに油路61を含む前記多数の油路を通って各摺動部に供給される。
【0033】
そして、上部軸受部55aの軸受面に開口する油路61の潤滑油の一部は、上部ジャーナル部50aに形成されて中空部54に開口する孔からなる油路62を経て中空部54に流入する。すなわち、油路62は、カム軸15の1回転毎に油路61と間欠的に連通して、中空部54に潤滑油を供給する。それゆえ、この中空部54は油路63を構成し、該油路63内の潤滑油が、動弁カム45のカム面45sに開口する孔からなる油路64から流出して、吸気ロッカアーム47のスリッパ47aと動弁カム45との摺動部を潤滑し、さらにカム面45sを流下して排気ロッカアーム48のスリッパ48bと動弁カム45との摺動部を潤滑する。油路63内の残りの潤滑油は、前記軸継手19、さらには開口部54aから流出した後、下部軸受部55bと下部ジャーナル部50bとの摺動部、下部スラスト受け部51bと下部軸受部55bとの摺動部を潤滑して、動弁室14内に流出する。なお、油路64は、図示された位置である必要はなく、例えば動弁カム45のノーズ部45bの頂部と、回転軸線L1を挟んで対向する位置に設けられてもよい。
【0034】
油路61の残りの潤滑油は、上部ジャーナル部50aと上部軸受部55aとの僅かな隙間を通って、上部スラスト受け部51aと上部軸受部55aとの摺動部を潤滑した後、動弁室14内に流出して、油路64から動弁室14内に放出された潤滑油と共に、吸気ロッカアーム47、排気ロッカアーム48および駆動アーム56の各アームとロッカ軸46との摺動部を潤滑する。そして、油路61から供給された潤滑油は、最終的に動弁室14の下部に落下または流下して、シリンダヘッド4およびシリンダブロック2に形成された戻り油路(図示されず)を経てオイルパン57に戻る。
【0035】
図2,図3に示されるように、カム軸15には、内燃機関Eの始動時に操作されるリコイルスタータ13の操作力を軽減するために、デコンプ作動をする、すなわち圧縮行程にある各シリンダ2a内の吸気を排気ポート41に放出することにより圧縮圧力を減少させるデコンプ手段Dが、各シリンダ2aに対応して設けられる。両デコンプ手段Dは、同一の仕様であり、互いの位相がカム角度で180°(クランク角度で360°)となる位置に配置される。
【0036】
図4,図5,図7(A)を併せて参照すると、各デコンプ手段Dは、動弁カム45のうち排気ロッカアーム48のスリッパ48bが接触する排気カム部45eに隣接する軸部52に配置される。具体的には、排気カム部45eの、軸部52に隣接する部分である下端部45e1からその真下の軸部52にかけて、回転軸線L1に平行であると共に後述する揺動中心線L2に直交する平面P1に含まれる平面からなる底面66aを有する切欠部からなる収容部66が形成される。さらに、軸部52において、回転軸線方向Aで収容部66と一部重なる位置から収容部66よりも下方に延びて、平面P1に直交すると共に回転軸線L1に平行な平面P2に含まれる平面からなる中央底面67aおよび該中央底面67aに対して傾斜すると共に回転軸線L1に平行な平面からなる1対の端部底面67bを有する切欠部からなる収容部67が形成される。
【0037】
具体的には、収容部66は、排気カム部45eの下端部45e1の周方向での一部および軸部52の排気カム部45e寄りの周方向での一部において、回転軸線L1から底面66aまでの距離d1が円周面部分52aの半径Rよりも小さくされて、軸部52の最大径よりも回転軸線L1寄りに形成された切欠部から構成され、収容部67は、軸部52の周方向での一部において、回転軸線L1を含み揺動中心線L2に平行な基準平面P3から底面67aまでの距離d2が円周面部分52aの半径Rよりも小さくされて、軸部52の最大径よりも回転軸線L1寄りに形成された切欠部から構成される。
【0038】
図4,図7(A)に示されるように、軸部52において、収容部67の上方には、平面P1に平行に径方向外方に突出する1対の突出部68a,68bからなる保持部69が形成され、各突出部68a,68bには、後述する遠心ウエイト81をカム軸15に対して揺動可能に支持するための1本の円柱状のピン71が挿入される保持孔70が形成される。両突出部68a,68bは、ピン71の軸線方向に間隔をおいて、カム軸15に一体成形される。
【0039】
なお、この明細書において、「径方向」および「周方向」とは、特に断らない限り、カム軸15の径方向およびカム軸15の周方向をそれぞれ意味する。また、「ほぼ直交する」とは、直交する場合および直交に近い状態で交差する場合を含むものとする。
【0040】
図6を併せて参照すると、各デコンプ手段Dは、金属製、例えばニッケルを15%含む鉄合金製の単一の部材からなるデコンプ部材80と、捩りコイルバネからなる戻しバネ90とから構成される。デコンプ部材80は、保持部69に保持される枢支部としてのピン71を介して揺動可能に支持される遠心ウエイト81と、該遠心ウエイト81と一体に揺動して始動時に排気ロッカアーム48のスリッパ48bに接触して排気弁43に開弁力を作用させるデコンプカム82と、遠心ウエイト81とデコンプカム82とを連結する板状のアーム83とをその構成要素として有する。そして、遠心ウエイト81と、デコンプカム82と、アーム83とは、メタルインジェクションによる型成形で一体に成形されて、デコンプ部材80が形成される。
【0041】
また、1対の突出部68a,68bの間に配置された戻しバネ90は、その一端部90aが遠心ウエイト81に係止され、その他端部90b(図7(A)参照)が一方の突出部68aに係止される。そして、その弾発力は、内燃機関Eの始動時に、機関回転数が所定回転数に達するまでは、遠心ウエイト81が後述する揺動開始位置(図7(A)参照)を占めるようにモーメントを遠心ウエイト81に作用させる値に設定される。
【0042】
遠心ウエイト81は、その揺動中心線L2の方向で両突出部68a,68bの外側に位置する1対の板状の基部81a,81bと、両基部81a,81bに連なるウエイト本体81cとから構成される。ウエイト本体81cからピン71に向かって延びて、後述するアーム83の肉厚t1よりもやや大きく、ウエイト本体81cの径方向での肉厚t2(なお、図6に示された肉厚t2を示す位置は、例示である。)よりも小さい肉厚t3(図6において、揺動中心線L2の方向での板厚である。)を有する各基部81a,81bには、保持孔70と同一の径を有する挿入孔84が形成されて、ピン71が、それら孔70,84に摺動しつつ回動できるように挿入される。それゆえ、遠心ウエイト81をカム軸15に組み付けるときは、各基部81a,81bの挿入孔84、各突出部68a,68bの保持孔70、戻しバネ90を一直線上に整合させた状態で、頭部71aを有するピン71が、一方の基部81b側から、戻しバネ90の内側を通るように、各挿入孔84および各保持孔70に挿入される。そして、他方の基部81aから突出するピン71の先端部71bをかしめることによりピン71の抜止めがなされて、遠心ウエイト81を含むデコンプ部材80がカム軸15に揺動可能に取り付けられる。そして、デコンプ部材80が揺動するとき、ピン71はデコンプ部材80と一体的に、保持部69の保持孔70内で揺動する。
【0043】
ピン71の軸線でもある揺動中心線L2は、カム軸15の回転軸線L1にほぼ直交する平面P4(図7参照)上にあり、かつ回転軸線L1および中空部54に対して交差しない位置にあって、この実施例では、回転軸線L1または基準平面P3から軸部52の半径Rよりもやや大きい距離をおいて(図4参照)、径方向にオフセットした位置にある。それゆえ、保持部69が突出部68a,68bから構成されることにより、揺動中心線L2を基準平面P3から、軸部52の半径Rよりも径方向で外方に位置させることができる。そして、ピン71自体も、回転軸線L1および中空部54と交差しないように、回転軸線L1および中空部54から径方向にオフセットした位置にある。
【0044】
ウエイト本体81cは、図4,図6によく示されるように、アーム83の、径方向での肉厚t1(板厚でもある)よりも大きな径方向での肉厚t2を有するブロックからなる。そして、ウエイト本体81cは、遠心ウエイト81とアーム83との連結部81c1から、アーム83よりも回転軸線L1寄りの位置を、揺動中心線L2に沿って、回転軸線L1に対してアーム83が位置する側とは反対側まで延び、さらに揺動中心線L2での両端部81c2,81c3において、収容部67の底面67aよりも基準平面P3に近い位置まで延びている。さらに、前記揺動開始位置において、ウエイト本体81cの外周面81c6は、ピン71から回転軸線方向Aに離れるにしたがって径方向内方に向かって収斂しており、この実施例では下方に向かって径方向内方に傾斜している。また、ウエイト本体81cから各基部81a,81bとは異なる方向に延びて形成されたアーム83は、前記揺動開始位置において収容部66に収容されると共に、ウエイト本体81cの一方の端部81c2側で、底面66aに沿って延びている。
【0045】
図7を併せて参照すると、ウエイト本体81cのカム軸15に面する内周面81c4の平面部81c4aには、突起からなる当接部81c5が形成される。当接部81c5は、収容部67の底面67aに当接することで、遠心ウエイト81(またはデコンプ部材80)の揺動開始位置を規定する。そして、デコンプ部材80がこの揺動開始位置にあるとき、デコンプカム82と動弁カム45との間には回転軸線方向Aでの隙間Cが形成される。一方、アーム83の回転軸線方向Aでの側面である下面83bには、突起からなる当接部83bが形成される。当接部83bは、底面66aに隣接して収容部66の下側壁となる段部52bの上面52b1に当接することで、径方向外方に揺動する、すなわち開く方向に揺動する遠心ウエイト81(またはデコンプ部材80)の最大揺動位置を規定する。
【0046】
そして、遠心ウエイト81(またはデコンプ部材80)は、デコンプカム82にスリッパ48bが接触していない状態では、カム軸15の停止時を初期状態としたとき、該初期状態から、内燃機関Eが運転されてカム軸15が回転し、デコンプ部材80に生じる遠心力による揺動中心線L2回りのモーメントが戻しバネ90の弾発力にる反対方向のモーメントよりも大きくなって、揺動を開始するまで、当接部81c5が底面67aに当接した状態で、その一部が収容部67に収容される前記揺動開始位置を占める。なお、デコンプカム82にスリッパ48bが接触しているときには、遠心力によるモーメントが、戻しバネ90の弾発力によるモーメントよりも大きくなっても、デコンプカム82と弁バネ44の弾発力が作用するスリッパ48bとの間の摩擦力により、遠心ウエイト81は揺動しない。
【0047】
この揺動開始位置で、図4に示されるように、内周面81c4において基準平面P3から最も離れた部分である平面部81c4aは、該平面部81c4aと基準平面P3との距離が円周面部分52aの半径Rよりも小さくなる位置を占める。また、デコンプ部材80の重心Gは、前記揺動開始位置および前記最大揺動位置で規定される範囲であるデコンプ部材80の最大揺動範囲において、常に揺動中心線L2よりも下方に位置すると共に、前記揺動開始位置で、揺動中心線L2の鉛直下方よりもやや基準平面P3に近い距離にあり、これにより、遠心ウエイト81が前記最大揺動位置を占めるときの、遠心ウエイト81の径方向での位置が、基準平面P3または回転軸線L1に近くなる。
【0048】
また、アーム83の先端側に位置するデコンプカム82は、揺動中心線L2の方向に突出するカム面82sを有すると共に、揺動中心線L2の方向でカム面82sとは反対側に、底面66aと接触する接触面62aを有し、遠心ウエイト81と共に一体に揺動するときには、底面66a上を摺動する。そして、デコンプカム82は、デコンプ部材80が揺動開始位置を占めるとき、すなわちデコンプ作動時に、基準平面P3に対して揺動中心線L2および遠心ウエイト81とは反対側に位置すると共に、収容部66の上端部である排気カム部側部分66bに収容されていて、動弁カム45のベース円部45aから最大で所定高さH1(図3,図4参照)で径方向に突出する。そして、該所定高さH1により、デコンプ作動時の排気弁43のリフト量、すなわちデコンプリフト量LD1(図3参照)が規定される。
【0049】
さらに、デコンプカム82が、排気ロッカアーム48のスリッパ48bと接触していて、排気弁43を開弁させるときには、排気ロッカアーム48を介してデコンプカム82に作用する弁バネ44の弾発力に基づく荷重が、該荷重の受け面として機能する底面66aにより受け止められる。それゆえ、デコンプ作動時に、排気ロッカアーム48からアーム83が受ける荷重が軽減されるので、アーム83の肉厚t1を小さくしたとしても、所要の剛性を確保することができる。
【0050】
次に、主として、図8,図9を参照して、第2内燃機関E2(図1参照)について説明する。前述のように、第2内燃機関E2の基本的な構造は、第1内燃機関E1と同じであるので、以下では異なる点を中心に説明する。なお、第2内燃機関E2において、カム軸115以外の第1内燃機関E1の部品と同一のものには、同じ符号を使用した。
【0051】
この第2内燃機関E2は、第1内燃機関E1が搭載される前述した船外機1と同一構造の船外機に搭載され、その機関の構造については、気化器95およびカム軸115(図8参照)を除いて第1内燃機関E1と同一である。それゆえ、第2内燃機関E2に備えられるデコンプ手段Dは、第1内燃機関E1のデコンプ手段Dと同一仕様のものであり、デコンプ手段Dのカム軸115に対する配置や支持の態様も同一である。また、第2内燃機関E2において、シリンダブロック2、クランクケース3、シリンダヘッド4およびヘッドカバー5は、第1内燃機関E1と同様に、機関本体を構成する。そして、該機関本体と、ピストン6と、コンロッド7とクランク軸8とから構成される機関主要部は、第1内燃機関E1の機関主要部であるそれら部品と同一仕様のものである。さらに、カム軸115を除く動弁装置も、両内燃機関E1,E2で同一仕様である。
【0052】
一方、第2内燃機関E2では、第1内燃機関E1に比べて、気化器の吸気通路が小さくされ、動弁カム145により開閉作動される吸気弁42および排気弁43の開弁期間およびリフト量が小さくされることで、第2内燃機関E2の最大出力は、第1内燃機関E1の最大出力よりも小さく設定されている。また、第2内燃機関E2の気化器のベンチュリは、気化器95のベンチュリ95aのスロート部95a1の通路面積S(図3参照)よりも小さな通路面積のスロート部を有する。それゆえ、第1,第2内燃機関E1,E2が同一の作動条件下で作動するとき、チョーク弁が作用する冷間始動時に、第2内燃機関E2の気化器では、燃料が第1内燃機関E1に比べて吸気の流速が大きくなるベンチュリを通過するため、第1内燃機関E1に比べて、燃料の霧化特性が良好であることから、燃焼室10内での燃料の着火性も良好となる。
【0053】
また、図8を参照すると、第2内燃機関E2のカム軸115については、上部および下部ジャーナル部150a,150bと、上部および下部スラスト受け部151a,151bと、両動弁カム145の間および動弁カム145と下部スラスト受け部151bとの間に形成される軸部152とは、第1内燃機関E1のカム軸15に設けられるそれらと同一の仕様で形成される。そして、中空部154および上端部115aは、カム軸15のそれらとほぼ同一の形状に形成される。したがって、カム軸15とカム軸115とは互いに互換性があり、共用することが可能である。
【0054】
一方、第1内燃機関E1と同様に、カム軸素材に機械加工を施すことにより形成される動弁カム145のカム面145sのカムプロフィールは、第1内燃機関E1の動弁カム45のそれとは異なっている。具体的には、第2内燃機関E2の動弁カム145では、ベース円部145の径は、動弁カム45のベース円部45aの径よりも小さくなるように設定され、動弁カム145のノーズ部の作動角および突出量は、それぞれ、ノーズ部45bの作動角および突出量よりも小さく設定される。その結果、第2内燃機関E2では、吸気弁42および排気弁43の開弁期間およびリフト量が、第1内燃機関E1のそれらよりも小さくさなる。
【0055】
動弁カム145のベース円部145aの径が、動弁カム45のベース円部45aの径に比べて小さくなっていることにより、図9に示されるように、第2内燃機関E2では、デコンプカムDが動弁カム145のベース円部145aから径方向で突出する最大の所定高さH2は、第1内燃機関E1の所定高さH1よりも高い。したがって、デコンプ作動時、デコンプカム82がスリッパ48bに接触して排気ロッカアーム48を揺動させるとき、この所定高さH2により規定される、第2内燃機関E2の排気弁48の最大のデコンプリフト量は、第1内燃機関E1のデコンプリフト量LD1よりも大きくなる。このように、機種の異なる内燃機関毎に専用に加工されるカム軸15,115の動弁カム45,145のベース円部45a,145aの径を異なる値に設定することにより、デコンプリフト量は、出力特性が異なる第1内燃機関E1および第2内燃機関E2にそれぞれ適切な値に調整される。
【0056】
次に、前述のように構成された実施例の作用および効果について説明する。
内燃機関E1,E2が停止され、カム軸15,115が回転していないとき、デコンプ部材80の重心Gは、揺動中心線L2よりも基準平面P3にやや近い位置にあるため、デコンプ部材80には、デコンプ部材80の自重により図7(A)において揺動中心線L2を中心に時計回りの方向のモーメントと、戻しバネ90の弾発力による反時計回りの方向のモーメントとが作用する前記初期状態にある。しかしながら、戻しバネ90の弾発力によるモーメントが大きくなるように戻しバネ90の弾発力が設定されているため、遠心ウエイト81(またはデコンプ部材80)は、図示される前記揺動開始位置を占め、デコンプカム82は収容部66の排気カム部側部分66b内に位置する。
【0057】
内燃機関E1,E2を始動するために、リコイルスタータ13のリールに巻き付けられているロープに結合されたスタータノブ13a(図1参照)を引くことにより、リコイルスタータ13が操作されて、クランク軸8が回転すると、カム軸15,115がその1/2の回転数で回転する。このときのクランク軸8の回転数、すなわち機関回転数は、前記所定回転数以下であるため、デコンプ部材80に作用する遠心力によるモーメントは、戻しバネ90の弾発力によるモーメント以下になっているので、デコンプ部材80は前記揺動開始位置を占める。そのため、各シリンダ2aが圧縮行程にあるとき、動弁カム45,145のベース円部45a,145よりも径方向に突出しているデコンプカム82が、スリッパ48bに接触して排気ロッカアーム48を揺動させて、所定のデコンプリフト量で排気弁43を開弁する。このとき、シリンダ2a内の圧縮された吸気が排気ポート41に放出され、該シリンダ2a内の圧縮圧力が低減されて、ピストン6が上死点を容易に乗り越えることができて、リコイルスタータ13の操作力が軽減される。
【0058】
その後、機関回転数が上昇して、前記所定回転数を越えると、デコンプ部材80に作用する遠心力によるモーメントが、戻しバネ90の弾発力によるモーメントに打ち勝つ。このとき、デコンプカム82に排気ロッカアーム48のスリッパ48bが接触していなければ、デコンプ部材80は、遠心力によるモーメントで揺動を開始し、アーム83は底面66a上を摺動して、アーム83の当接部83bが段部52bの上面52b1に当接するまで揺動して、図7(B)に示される前記最大揺動位置を占める。この最大揺動位置では、デコンプカム82は、収容部66の排気カム部側部分66bから回転軸線方向Aに離れて、スリッパ48bと接触しない位置にあるので、デコンプ動作が解除される。したがって、シリンダ2aが圧縮行程にあるとき、スリッパ48bは排気カム部45eのベース円部45aに接触するので、図3において二点鎖線で示されるように排気弁43は閉弁状態にあり、通常の圧縮圧力で吸気が圧縮される。その後、内燃機関E1,E2は次第に機関回転数が上昇して、アイドリング運転に移行する。なお、前記最大揺動位置で、重心Gは、基準平面P3から、揺動中心線L2の基準平面P3からの距離d2(図5参照)とほぼ等しい距離にあり、また遠心ウエイト81の外周面81c6は、前述のように下方に向かって径方向内方に傾斜していることから、遠心ウエイト81が占める範囲が径方向で大きくなるのが抑制されて、軸部52の最大径である円周面部分52aの外周面とほぼ同軸の円柱面上の位置を占める。
【0059】
このように、第2内燃機関 E2 の最大出力が第1内燃機関 E1 の最大出力よりも小さく設定されて、第1内燃機関E1のデコンプ手段Dと第2内燃機関E2の前記デコンプ手段Dと同一の仕様とされ、かつ第1内燃機関E1の動弁カム45のベース円部45aの径と第2内燃機関E2の動弁カム145のベース円部145aの径と異なる値に設定されることにより、最大力が異なる内燃機関E1,E2、すなわち機種の異なる内燃機関E1,E2に同一仕様のデコンプ手段Dが使用され、しかも内燃機関E1,E2毎に適切なデコンプリフト量の設定は、内燃機関E1,E2の機種毎に専用に加工されることからコスト増加の要因とならない動弁カム45,145のベース円部45a,145aを変更することにより行われるので、適切なデコンプリフト量でデコンプ作動を行うことができるデコンプ手段Dを備えた内燃機関E1,E2が低コストで得られ、またデコンプ手段Dの管理も容易になる。
【0060】
そして、第2内燃機関E2の動弁カム145のベース円部145aの径は、第1内燃機関E1の動弁カム45のベース円部45aの径よりも小さく設定されることにより、第2内燃機関E2では、第1内燃機関E1に比べてデコンプリフト量が大きくなって、圧縮圧力の減少の程度がより大きくなる。また、第1内燃機関E1では、第2内燃機関E2に比べてデコンプリフト量が小さくなって、圧縮圧力がより高くなる
このように、最大出力が大きい第1内燃機関 E1 のデコンプリフト量を小さく設定し、最大出力が小さい第2内燃機関 E2 のデコンプリフト量を大きく設定するために、同一仕様のデコンプ手段Dが使用され、かつ内燃機関 E1 E2 の機種毎に専用に加工されることからコスト増加の要因とならない動弁カム 45 145 のベース円部 45a 145a の径を異ならせることが行われるので、最大出力に応じてリコイルスタータ 13 の操作性重視の第2内燃機関 E2 および機関の始動性重視の第1内燃機関 E1 が低コストで得られる。
【0061】
最大出力が第1内燃機関E1よりも小さい第2内燃機関E2の気化器のベンチュリのスロート部の通路面積は、第1内燃機関E1の気化器95のベンチュリ95aのスロート部95a1の通路面積Sよりも小さい。これにより、第1内燃機関E1に比べて、ベンチュリのスロート部の径が小さく、そして最大出力が小さい第2内燃機関E2では、気化器での燃料の霧化が良好に行われて、燃料の着火性がよくなる。その結果、最大出力が第2内燃機関 E2 よりも大きいために、比較的大型の機器に搭載されることが多く、始動性が重視される第1内燃機関E1では、小さいデコンプリフト量により機関の始動性が向上する。一方、最大出力が第1内燃機関 E1 よりも小さいために、比較的小型の機器に搭載されることが多く、リコイルスタータ13の操作性が重視される第2内燃機関E2では、大きなデコンプリフト量により圧縮圧力の減少の程度が大きくなってリコイルスタータ13の操作性が向上する。そして、第2内燃機関 E2 では、気化器のベンチュリのスロート部の通路面積が小さいことで霧化が促進されて着火性が向上するの、デコンプリフト量が大きいにも拘わらず、機関始動性が向上する。
【0062】
第1内燃機関E1と第2内燃機関E2とは、前記機関主要部が共通であると共に同一の排気量を有し、第1内燃機関E1のカム軸15と第2内燃機関E2のカム軸115とは、互いに共用可能とされていることにより、異なる出力特性の内燃機関E1,E2において、排気量が同一であり、前記機関主要部およびカム軸15,115が共用化されるので、各内燃機関E1,E2のコストを一層削減できる。
【0063】
以下、前述した実施例の一部の構成を変更した実施例について、変更した構成に関して説明する。
前記実施例では、吸気弁および排気弁は、共通の動弁カムにより開閉作動されたが、動弁カムは、互いに独立した吸気カムおよび排気カムから構成されるものであってもよい。また、デコンプ手段により開弁される機関弁は排気弁であったが、吸気弁がデコンプ手段により開弁されるようにしてもよい。
【0064】
内燃機関は、クランク軸の回転軸線が水平方向を指向するように支持された内燃機関であってもよく、船外機以外に、発電機や圧縮機・ポンプ等の機器に使用される汎用機関として、または乗物用の機関として使用されるものであってよい。また、内燃機関は、単気筒内燃機関または3気筒以上の内燃機関であってもよい。さらに、燃料供給装置は、気化器の代わりに燃料噴射装置であってもよく、燃焼室内での燃料の着火性を高めるために、点火栓の種類を異ならせたり、1つの燃焼室当たりの点火栓の装着数を異ならせることもできる。
【0065】
前記実施例では、内燃機関は火花点火式内燃機関であったが、圧縮点火式内燃機関であってもよい。また、始動装置は、リコイルスタータ以外のキック式スタータ等のマニュアル式のスタータであってもよい。さらに、前記実施例では、内燃機関E1,E2において、前記機関主要部およびカム軸15,115が共用化されたが、それら部品のうち、一部が供用されてもよい。
【0066】
第1内燃機関E1と第2内燃機関E2とで、カム軸15,115の空洞部54,154と上端部15a,115aとを同一仕様に形成して、全く同一のカム軸素材からそれぞれのカム軸を形成することにより、内燃機関のコストが一層削減される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示し、デコンプ手段を備える第1内燃機関が搭載される船外機の概略右側面図である。
【図2】図1の第1内燃機関のシリンダヘッドを中心とした縦断面図である。
【図3】ロッカアームについては図2のIII−III矢視図であり、シリンダヘッドについては吸気弁および排気弁の軸線を通る平面での断面図であり、カム軸については図4と同様の断面図である。
【図4】図7(A)のIV−IV線断面図である。
【図5】図7(A)のV−V線断面図である。
【図6】(A)は、図1のデコンプ手段のデコンプ部材の側面図であり、(B)は、(A)のB矢視図であり、(C)は、(A)のC矢視図であり、(D)は、(A)のD矢視図である。
【図7】(A)は、図2の要部拡大図に相当し、揺動開始位置にあるデコンプ手段を示し、(B)は、最大揺動位置にあるデコンプ手段を示す。
【図8】第2内燃機関のカム軸の側面図である。
【図9】第1内燃機関および第2内燃機関において、デコンプカムがベース円部から突出する高さを説明する図であり、二点鎖線は、ベース円部と同一径の仮想円弧を示す。
【符号の説明】
1…船外機、2…シリンダブロック、3…クランクケース、4…シリンダヘッド、5…ヘッドカバー、6…ピストン、7…コンロッド、8…クランク軸、9…クランク室、10…燃焼室、11…クランクプーリ、12…交流発電機、13…リコイルスタータ、14…動弁室、15…カム軸、16…カムプーリ、17…タイミングベルト、18…オイルポンプ、19…軸継手、20…支持ブロック、21…エクステンションケース、22…ギヤケース、23…アンダカバー、24…エンジンカバー、25…駆動軸、26…前後進切換装置、27…プロペラ軸、28…プロペラ、30…船体、31…スターンブラケット、32…チルト軸、33…揺動アーム、34…スイベルケース、35…スイベル軸、36…マウントフレーム、37…センタハウジング、38a,38b…マウントラバー、
40…吸気ポート、41…排気ポート、42…吸気弁、43…排気弁、44…弁バネ、45…動弁カム、45a…ベース円部、46…ロッカ軸、47,48…ロッカアーム、
50a,50b…ジャーナル部、51a,51b…スラスト受け部、52…軸部、53…駆動カム、54…中空部、55a,55b…軸受部、56…駆動アーム、57…オイルパン、58…オイルストレーナ、59…吸入パイプ、60a,60b,61〜64…油路、66,67…収容部、68a,68b…突出部、69…保持部、70…保持孔、71…ピン、
80…デコンプ部材、81…遠心ウエイト、81c5…当接部、82…デコンプカム、83…アーム、84…挿入孔、
90…戻しバネ、95…気化器、95a…ベンチュリ、95a1…スロート部、
115…カム軸、145…動弁カム、145a…ベース円部、150a,150b…ジャーナル部、151a,151b…スラスト受け部、152…軸部、154…中空部、
E1,E2…内燃機関、L1…回転軸線、L2…揺動中心線、A…回転軸線方向、S…通路面積、R…半径、D…デコンプ手段、P1,P2,P4…平面、P3…基準平面、d1,d2…距離、t1〜t3…肉厚、H1,H2…高さ、C…隙間、G…重心、LD1…デコンプリフト量。

Claims (3)

  1. 燃料供給装置と、カム軸に設けられた動弁カムにより開閉作動される機関弁と、マニュアル式の始動装置と、デコンプ作動時に前記動弁カムのベース円部よりも径方向に突出する位置を占めて前記機関弁を開弁するデコンプカムを有するデコンプ手段とを備え、異なる出力特性を有する第1内燃機関および第2内燃機関において、
    前記第2内燃機関の最大出力が前記第1内燃機関の最大出力よりも小さく設定され、
    前記第1内燃機関の前記デコンプ手段と前記第2内燃機関の前記デコンプ手段と同一の仕様とされると共に、前記第2内燃機関の前記動弁カムのベース円部の径が前記第1内燃機関の前記動弁カムのベース円部の径よりも小さく設定されることにより、前記第2内燃機関のデコンプリフト量が前記第1内燃機関のデコンプリフト量よりも大きく設定されることを特徴とするデコンプ手段を備える内燃機関のデコンプリフト量調整方法。
  2. 前記燃料供給装置は気化器であり、前記第2内燃機関の前記気化器のベンチュリのスロート部の通路面積は、前記第1内燃機関の前記気化器のベンチュリのスロート部の通路面積よりも小さいことを特徴とする請求項記載のデコンプ手段を備える内燃機関のデコンプリフト量調整方法。
  3. 前記第1内燃機関と前記第2内燃機関とは、同一の排気量を有し、前記第1内燃機関の前記カム軸と前記第2内燃機関の前記カム軸とは、互いに共用可能とされていることを特徴とする請求項1または請求項記載のデコンプ手段を備える内燃機関のデコンプリフト量調整方法。
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