JP3997694B2 - 磁気パターンの認識方法、情報記録媒体、磁気パターン認識装置及び複合処理装置 - Google Patents

磁気パターンの認識方法、情報記録媒体、磁気パターン認識装置及び複合処理装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気パターンの認識方法、情報記録媒体、磁気パターン認識装置及び複合処理装置に関する。特に、磁気パターンの認識方法において、磁気パターンの取得した検出磁気波形の積分波形における、複数のバーから構成される磁気パターンの隣り合う2つのバーの間の距離に基づいて形成される凹曲線の位置によって、磁気パターンを文字として認識するステップを備えた磁気パターンの認識方法、情報記録媒体、磁気パターン認識装置及び複合処理装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、金融機関などにおいては、磁気インク文字が使用されており、磁気インク文字の印刷されたチェック用紙などが磁気パターン認識装置によって選別され、集計等の作業が行われていた。現金やカードと同様に多くのパーソナルチェックが店舗における買い物に使用されるケースも多い。このパーソナルチェックの表面には、カスタマーアカウントやパーソナルチェックのシリアル番号などが磁気インク文字(MICR文字、Magnetic Ink Character Recognition)を用いて記載してあり、この磁気インク文字を磁気ヘッドで読み取り、これらのデータを照会することによって、パーソナルチェックの有効・無効が確認できるようになっている。
【0003】
このため、各々の店舗の会計処理ステーション(POSステーション)に磁気インクを認識するための装置が設置されるようになっており、これらの多くの装置は直流モータを用いてパーソナルチェック用紙を搬送しながら磁気ヘッドによって磁気インク文字を認識するようになっている。
【0004】
MICR文字としては、欧州や南米などにおいて使用されているCMC7フォントと主に北米において使用されているE13Bフォントがある。以下、磁気インク文字であるMICR文字のCMC7フォント(以下、MICR−CMC7フォント文字とする)を使用して説明する。
【0005】
MICR−CMC7フォント文字を使用して印刷されたCMC7チェックの規格においては、フォントとして、10種類の数字、5種類の記号及び26種類のアルファベットが存在する。
【0006】
MICR−CMC7フォント文字は磁気バーコードである。一文字が7本のバーで構成され、隣り合う2つのバーによって形成される6つのバー間隔が「広い」間隔(=1)、または「狭い」間隔(=0)の組み合せによって、文字を認識する。MICR−CMC7フォント文字において、バー間隔の「広い」間隔の数をN1、「狭い」間隔の数をN0とすると、数字と記号は、N1:N0=2:4であり、アルファベットは、N1:N0=1:5またはN1:N0=3:3である。
【0007】
図18は、MICR−CMC7フォント文字の数字と記号の一例を示す。図19は、MICR−CMC7フォント文字を、6つのバー間隔の「広い」間隔(=1)または「狭い」間隔(=0)の組み合せパターン(以下、「バー間隔パターン」とする)によって表した対応表である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
MICR−CMC7フォント文字のバー間隔の「広い」間隔の数をN1、「狭い」間隔の数をN0とするとき、文字を認識するための判定条件は、N1とN0の割合が重要となる。即ち、N1:N0=2:4である場合は、数字または記号であると判定できる。また、N1:N0=1:5またはN1:N0=3:3である場合は、アルファベットであると判定できる。
【0009】
しかしながら、CMC7チェック用紙を折り曲げた場合、CMC7チェック用紙は、折り目部分において物理的な縮みが生じる。従って、折り目部分の物理的な縮みにより、折り曲げられたCMC7チェック用紙を磁気ヘッドによって読み取った検出磁気波形も縮みの影響を受ける。
【0010】
フォント上に折り目がある場合、折り目部分の物理的な縮みにより、本来「広い」間隔であるはずのバー間隔が、「狭い」間隔のバー間隔であると判定されてしまう可能性がある。そのため、バー間隔の「広い」間隔の数をN1、「狭い」間隔の数をN0とするとき、数字または記号であるはずのN1:N0=2:4が、N1:N0=1:5となってしまい、数字または記号であると認識できない可能性がある。同様に、アルファベットであるはずのN1:N0=3:3が、N1:N0=2:4となってしまい、アルファベットであると認識できない可能性がある。
【0011】
図20、図21は、CMC7チェック用紙のフォント上に折り目が存在する場合の、折り目によるバー間隔の縮みを説明する図である。ここで、説明に用いたMICR−CMC7フォント文字は、記号「SV」である。また、バーの長軸に平行となるような折り目軸とする。
【0012】
図20(a)は、折り曲げる前のCMC7チェック用紙を、折り目軸に直交する面で切断した図である。図20(b)は、折り曲げた後のCMC7チェック用紙を、折り目軸に直交する面で切断した図である。図20(c)は、折り曲げる前のバー間隔を説明する図である。図20(d)は、折り曲げた後のバー間隔を説明する図である。
【0013】
図20に示すように、用紙送り方向を矢印2002とするとき、CMC7チェック用紙2004を用紙送り方向に沿って移動させて磁気ヘッド2001によって検出磁気波形を取得する。このとき、磁気ヘッド2001による検出磁気波形の読み取り方向は矢印2003となる。MICR−CMC7フォント文字の7本のバーをバー2005aからバー2005gとする。折り曲げる前の隣り合う2つのバーによって形成される6つのバー間隔をバー間隔2006aからバー間隔2006fとし、折り曲げた後の隣り合う2つのバーによって形成される6つのバー間隔をバー間隔2008aからバー間隔2008fとし、そして、折り曲げた位置を折り目2007とする。ここで、磁気ヘッド2001の読み取り方向をバーの長軸に直交する方向とする。また、磁気ヘッド2001に対して先に読み取られるバーの近端部と次に読み取られるバーの近端部との間の距離をバー間隔とする。即ち、図20においては、隣り合う2つのバーのそれぞれの右端部の間の距離がバー間隔である。
【0014】
折り曲げる前のバー間隔を、「広い」間隔(=1)と「狭い」間隔(=0)とによって表すと、バー間隔2006aは0、バー間隔2006bは0、バー間隔2006cは0、バー間隔2006dは0、バー間隔2006eは1、バー間隔2006fは1となる。即ち、MICR−CMC7フォント文字の1文字分のバー間隔パターンは「000011」となり、図19の表から記号「SV」であると認識できる。
【0015】
一方、折り目2007をバー2005eとバー2005fの間とする場合、CMC7チェック用紙の折り目2007の近傍において縮みが生じる。即ち、折り山ができることによって折り目2007を挟んだバー間隔2008eが、折り曲げる前と比較して狭くなる。折り曲げた後のバー間隔を「広い」間隔(=1)と「狭い」間隔(=0)とによって表すと、バー間隔2008aは0、バー間隔2008bは0、バー間隔2008cは0、バー間隔2008dは0、バー間隔2008eは0、バー間隔2008fは1となる。即ち、MICR−CMC7フォント文字の1文字分のバー間隔パターンは「000001」となり、アルファベットとしては認識できるが、記号「SV」として認識できない結果となる。
【0016】
上述したCMC7チェック用紙の縮みを、磁気ヘッド2001によって取得した検出磁気波形を使用して説明する。
【0017】
図21(a)は、磁気バーコードであるMICR−CMC7フォント文字のバーと検出磁気波形の関係を示す図である。ここで、磁気ヘッドの読み取り方向を矢印2101とし、MICR−CMC7フォント文字のバーをバー2102aからバー2102gとする。また、磁気ヘッドに早く読み取られる側の読み取り方向に垂直なバーの端部を、バー右端部2104aからバー右端部2104gとし、磁気ヘッドに遅く読み取られる側の読み取り方向に垂直なバーの端部を、バー左端部2103aからバー左端部2103gとし、MICR−CMC7フォント文字の隣り合う2つのバーのバー間隔を、バー間隔2105aからバー間隔2105fとする。
【0018】
検出磁気波形は、CMC7チェック用紙の磁化されたバーによる磁束密度の変化を電圧変化として測定したものである。
【0019】
従って、検出磁気波形は微分波形となり、バーの端部の位置において、極値をとる波形となる。即ち、バー右端部2104aからバー右端部2104gの位置において、検出磁気波形は極大値(以下、ピークという)となり、バー左端部2103aからバー左端部2103gの位置において検出磁気波形は極小値(以下、ボトムピークという)となる。
【0020】
また、バー間隔2105aからバー間隔2105fは、検出磁気波形の隣り合うピークの間の距離であるピーク間隔2106aからピーク間隔2106fに対応付けられる。即ち、バー間隔が「広い」間隔とは、ピーク間隔が「広い」間隔であり、バー間隔が「狭い」間隔とは、ピーク間隔が「狭い」間隔である。
【0021】
図21(b)は、図20に示したように、折り目2007をバー2005eとバー2005fの間とする場合の、MICR−CMC7フォント文字を折り曲げる前の検出磁気波形と折り曲げた後の検出磁気波形を示す図である。
【0022】
MICR−CMC7フォント文字を折り曲げる前の検出磁気波形を実線により示す波形2111とし、折り曲げた後の検出磁気波形を点線により示す波形2112とする。また、波形2111のピーク間隔をピーク間隔2113aからピーク間隔2113fとし、波形2112のピーク間隔をピーク間隔2114aからピーク間隔2114fとする。ここで、図21(b)は検出磁気波形の読み取り方向を矢印2110とする。
【0023】
折り曲げる前の波形2111のピーク間隔を、「広い」間隔(=1)と「狭い」間隔(=0)とによって表すと、ピーク間隔2113aは0、ピーク間隔2113bは0、ピーク間隔2113cは0、ピーク間隔2113dは0、ピーク間隔2113eは1、ピーク間隔2113fは1となる。即ち、ピーク間隔に対応付けられる図20のバー間隔は、バー間隔2008aは0、バー間隔2008bは0、バー間隔2008cは0、バー間隔2008dは0、バー間隔2008eは1、バー間隔2008fは1となり、MICR−CMC7フォント文字の1文字分のバー間隔パターンは「000011」となり、図19の表から記号「SV」であると認識できる。
【0024】
図20に示したように、折り目2007によりバー間隔2008eが狭くなる。従って、検出磁気波形のピーク間隔がバー間隔と対応することから、折り曲げた後の波形2112のピーク間隔2114eは、折り曲げる前の波形2111のピーク間隔2113eと比較して狭くなる。折り曲げた後の波形2112のピーク間隔を、「広い」間隔(=1)と「狭い」間隔(=0)とによって表すと、ピーク間隔2114aは0、ピーク間隔2114bは0、ピーク間隔2114cは0、ピーク間隔2114dは0、ピーク間隔2114eは0、ピーク間隔2114fは1となる。即ち、ピーク間隔に対応付けられる図20のバー間隔は、バー間隔2008aは0、バー間隔2008bは0、バー間隔2008cは0、バー間隔2008dは0、バー間隔2008eは0、バー間隔2008fは1となり、MICR−CMC7フォント文字の1文字分のバー間隔パターンは「000001」となり、アルファベットとしては認識できるが、記号「SV」として認識できない結果となる。
【0025】
従って、印刷規格においてはCMC7チェック用紙を折ることを禁止しているが、実際の市場おいては、折りたたんで携帯している場合もあるため、従来の磁気パターン認識装置では、文字を認識できないまたは文字を誤認識するという問題点があった。
【0026】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたもので、磁気パターンの認識方法において、磁気パターンの取得した検出磁気波形の積分波形における、複数のバーから構成される磁気パターンの隣り合う2つのバーの間の距離に基づいて形成される凹曲線の位置によって、磁気パターンを文字として認識するステップを備えた磁気パターンの認識方法、情報記録媒体、磁気パターン認識装置及び複合処理装置を提供することを目的とする。
【0027】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上述した従来の問題点を解決すべく研究を重ねた。その結果、磁気パターンの認識において、取得した検出磁気波形から1つ分の磁気パターンの検出磁気波形を切り出し、切り出した検出磁気波形を積分した積分波形を生成し、生成した積分波形の極小点とそれを挟む2つの極大点とによって形成される凹曲線と、2つの極大点を結ぶ直線とによる空間(以下、「谷」という)の面積の大小が、磁気パターンのバー間隔の広狭に依存することが判明した。バー間隔が広いとき、谷の面積が大きくなる。そこで、生成した積分波形の谷の面積に基づいて、谷を「深い谷」または「浅い谷」の谷パターンに変換し、谷パターンが「深い谷」である谷の、積分波形の幅における相対位置に基づいて、文字を認識する。ここで、「深い谷」とは、面積の大きい谷のことであり、「浅い谷」とは、面積の小さい谷のことである。上述した方法により、磁気パターンの印刷されたチェック用紙上の折り曲げられた磁気パターンについても文字として認識できることが判明した。
【0028】
上記研究結果に基づき、以下の発明を提供する。
【0029】
本発明の、磁気パターンの認識方法における第1の態様は、複数のバーによって構成される所定の磁気パターンの検出磁気波形を積分して得られる積分波形における、複数のバーの隣り合う2つのバーの間の距離に基づいて形成される凹曲線の位置によって、磁気パターンを所定の文字として認識する磁気パターン認識ステップを備えることを特徴とする磁気パターンの認識方法である。
【0030】
本発明の、磁気パターンの認識方法における第2の態様は、磁気パターン認識ステップが、下記のステップを備えることを特徴とする磁気パターンの認識方法である。
(a)微分波形からなる検出磁気波形を積分した積分波形を生成する積分波形生成ステップと、
(b)積分波形生成ステップによって生成した積分波形の極小点と極小点を挟む2つの極大点とによって形成される凹曲線と、2つの極大点を結ぶ直線からなる空間で表される谷を、「深い谷」または「浅い谷」の谷パターンに変換する谷パターン変換ステップと、
(c)谷パターン変換ステップによって変換した谷パターンの中の「深い谷」の位置に基づいて、磁気パターンを識別する磁気パターン識別ステップ。
【0031】
本発明の、磁気パターンの認識方法における第3の態様は、積分波形生成ステップが、下記のステップを備えることを特徴とする磁気パターンの認識方法である。
(a)微分波形からなる検出磁気波形を積分する波形積分化ステップと、
(b)波形積分化ステップによって積分した検出磁気波形を平滑化補正する波形平滑化補正ステップと、
(c)波形平滑化補正ステップによって平滑化した検出磁気波形を正規化補正する波形正規化補正ステップ。
【0032】
本発明の、磁気パターンの認識方法における第4の態様は、谷パターン変換ステップにおいて、谷が、磁気パターンの積分波形における、両端の極大点の間に存在することを特徴とする磁気パターンの認識方法である。
【0033】
本発明の、磁気パターンの認識方法における第5の態様は、谷パターン変換ステップにおいて、谷が、磁気パターンの積分波形における、極小点の左側に単調減少する連続した所定の数以上の点と、右側に単調増加する連続した所定の数以上の点とによって形成される凹曲線を持つことを特徴とする磁気パターンの認識方法である。
【0034】
本発明の、磁気パターンの認識方法における第6の態様は、谷パターン変換ステップが、下記のステップを備えていることを特徴とする磁気パターンの認識方法である。
(a)谷の面積を算出する谷面積算出ステップと、
(b)谷面積算出ステップによって算出された谷の面積に基づいて、谷を「深い谷」または「浅い谷」の谷パターンに判別するパターン判別ステップ。
【0035】
本発明の、磁気パターンの認識方法における第7の態様は、谷面積算出ステップにおいて、谷の面積を、凹曲線の極小点と極小点を挟む2つの極大点とによって形成される三角形の面積によって近似することを特徴とする磁気パターンの認識方法である。
【0036】
本発明の、磁気パターンの認識方法における第8の態様は、パターン判別ステップにおいて、谷が、積分波形における、両端の極大点の間に存在する最小極小点の値と谷の極小点の値との偏差と、谷の面積と、に基づいた谷の評価関数の値が、所定の深い谷識別判定閾値以下であるとき、谷を「深い谷」と判定することを特徴とする磁気パターンの認識方法である。
【0037】
本発明の、磁気パターンの認識方法における第9の態様は、磁気パターン識別ステップが、谷パターンが「深い谷」である谷の数によって、磁気パターンを識別することを特徴とする磁気パターンの認識方法である。
【0038】
本発明の、磁気パターンの認識方法における第10の態様は、磁気パターン識別ステップが、下記のステップを備えることを特徴とする磁気パターンの認識方法である。
(a)谷の位置を算出する谷位置算出ステップと、
(b)谷位置算出ステップによって算出した谷の位置から、積分波形の幅における谷の相対位置を算出する谷相対位置算出ステップと、
(c)谷相対位置算出ステップによって算出した谷の相対位置から、磁気パターンを確定する磁気パターン確定ステップ。
【0039】
本発明の、磁気パターンの認識方法における第11の態様は、下記のステップを、更に備えることを特徴とする磁気パターンの認識方法である。
(a)検出磁気波形及び検出条件を取得する磁気パターン検出ステップと、
(b)磁気パターン検出ステップによって取得した検出磁気波形から1つ分の磁気パターンの検出磁気波形を切り出す磁気パターン切り出しステップ。
【0040】
本発明の、磁気パターンの認識方法における第12の態様は、磁気パターンを認識するための判定条件を変更できる判定条件変更ステップを、更に備えることを特徴とする磁気パターンの認識方法である。
【0041】
本発明の、磁気パターンの認識方法における第13の態様は、磁気パターンは、磁気インク文字であることを特徴とする磁気パターンの認識方法である。
【0042】
本発明の、情報記録媒体における第1の態様は、上述の磁気パターンの認識方法のステップを有するプログラムを記録した情報記録媒体である。
【0043】
本発明の、情報記録媒体における第2の態様は、コンパクト・ディスク、フロッピー・ディスク、ハード・ディスク、光磁気ディスク、ディジタル・ビデオ・ディスク、もしくは磁気テープであることを特徴とする。
【0044】
本発明の、磁気パターン認識装置における第1の態様は、複数のバーによって構成される所定の磁気パターンの検出磁気波形を積分して得られる積分波形における、複数のバーの隣り合う2つのバーの間の距離に基づいて形成される凹曲線の位置によって、磁気パターンを所定の文字として認識する磁気パターン認識手段を備えることを特徴とする磁気パターン認識装置である。
【0045】
本発明の、磁気パターン認識装置における第2の態様は、磁気パターン認識手段が、下記の手段を備えることを特徴とする磁気パターン認識装置である。
(a)微分波形の検出磁気波形を積分した積分波形を生成する積分波形生成手段と、
(b)積分波形生成手段によって生成した積分波形の極小点と極小点を挟む2つの極大点とによって形成される凹曲線と、2つの極大点を結ぶ直線とからなる空間で表される谷を、「深い谷」または「浅い谷」の谷パターンに変換する谷パターン変換手段と、
(c)谷パターン変換手段によって変換した谷パターンの中の「深い谷」の位置に基づいて、磁気パターンを識別する磁気パターン識別手段。
【0046】
本発明の、磁気パターン認識装置における第3の態様は、積分波形生成手段が、下記の手段を備えることを特徴とする磁気パターン認識装置である。
(a)微分波形からなる検出磁気波形を積分する波形積分化手段と、
(b)波形積分化手段によって積分した検出磁気波形を平滑化補正する波形平滑化補正手段と、
(c)波形平滑化補正手段によって平滑化した検出磁気波形を正規化補正する波形正規化補正手段。
【0047】
本発明の、磁気パターン認識装置における第4の態様は、谷パターン変換手段において、谷が、磁気パターンの積分波形における、両端の極大点の間に存在することを特徴とする磁気パターン認識装置である。
【0048】
本発明の、磁気パターン認識装置における第5の態様は、谷パターン変換手段において、谷が、磁気パターンの積分波形における、極小点の左側に単調減少する連続した所定の数以上の点と、右側に単調増加する連続した所定の数以上の点とによって形成される凹曲線を持つことを特徴とする磁気パターン認識装置である。
【0049】
本発明の、磁気パターン認識装置における第6の態様は、谷パターン変換手段が、下記の手段を備えることを特徴とする磁気パターン認識装置である。
(a)谷の面積を算出する谷面積算出手段と、
(b)谷面積算出手段によって算出した谷の面積に基づいて、谷を「深い谷」または「浅い谷」の谷パターンに判別するパターン判別手段。
【0050】
本発明の、磁気パターン認識装置における第7の態様は、谷面積算出手段において、谷の面積を、凹曲線の極小点と極小点を挟む2つの極大点とによって形成される三角形の面積によって近似することを特徴とする磁気パターン認識装置である。
【0051】
本発明の、磁気パターン認識装置における第8の態様は、パターン判別手段において、谷が、積分波形における、両端の極大点の間に存在する最小極小点の値と谷の極小点の値との偏差と、谷の面積と、に基づいた谷の評価関数の値が、所定の深い谷識別判定閾値以下であるとき、谷を「深い谷」と判定することを特徴とする磁気パターン認識装置である。
【0052】
本発明の、磁気パターン認識装置における第9の態様は、磁気パターン識別手段が、谷パターンが「深い谷」である谷の数によって、磁気パターンを識別することを特徴とする磁気パターン認識装置である。
【0053】
本発明の、磁気パターン認識装置における第10の態様は、磁気パターン識別手段が、下記の手段を備えることを特徴とする磁気パターン認識装置である。
(a)谷の位置を算出する谷位置算出手段と、
(b)谷位置算出手段によって算出した谷の位置から、積分波形の幅における谷の相対位置を算出する谷相対位置算出手段と、
(c)谷相対位置算出手段によって算出した谷の相対位置から、磁気パターンを確定する磁気パターン確定手段。
【0054】
本発明の、磁気パターン認識装置における第11の態様は、下記の手段を、更に備えることを特徴とする磁気パターン認識装置である。
(a)検出磁気波形及び検出条件を取得する磁気パターン検出手段と、
(b)磁気パターン検出手段によって取得した検出磁気波形から1つ分の磁気パターンの検出磁気波形を切り出す磁気パターン切り出し手段。
【0055】
本発明の、磁気パターン認識装置における第12の態様は、磁気パターンを認識するための判定条件を変更できる判定条件変更手段を、更に備えることを特徴とする磁気パターン認識装置である。
【0056】
本発明の、磁気パターン認識装置における第13の態様は、磁気パターンは、磁気インク文字であることを特徴とする磁気パターン認識装置である。
【0057】
本発明の、複合処理装置における第1の態様は、上述の磁気パターン認識装置の手段を備えることを特徴とする複合処理装置である。
【0058】
本発明の、複合処理装置における第2の態様は、パルスモータを備えた紙送り手段と、紙送り手段により送られた紙片に印刷する印刷手段と、紙送り手段によって送られた紙片に付された磁気パターンを検出する磁気検出手段と、を更に備えることを特徴とする複合処理装置である。
【0059】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施形態は説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。従って、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なもので置換した実施形態を採用することが可能であるが、これらの実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【0060】
図1は、MICR−CMC7フォント文字の認識機能を備えた複合処理装置の概要を示す斜視図である。
【0061】
以下においては、プリンタをベースとしてMICR−CMC7フォント文字(磁気インク文字)の認識機能を備えた複合処理装置(以下「プリンタ」という)100に基づいてMICR−CMC7フォント文字の認識機能を説明する。
【0062】
プリンタ100は、本体101の左右に延びた移動軸102に沿ってプリンタヘッド(印刷ヘッド)103が移動しながらジャーナル印字、およびスリップ印字を行う。本例のプリンタヘッド103は、たとえばワイヤードットタイプであり、ヘッド103に内蔵されたワイヤーをプラテン104に向かって駆動しインクリボンをインパクトすることによって、ロール紙105または単票用紙106に印字を行う。プリンタヘッド103はタイミングベルトやヘッド送り用のパルスモータを用いたプリンタヘッド駆動手段によって動かされ、プラテン104に沿って左右に動いてロール紙105または単票用紙106の所定の位置に印字を行う。ロール紙105または単票用紙106は、後述するフィードローラー群、および紙送り用のパルスモータなどによって構成される紙送り機構によってプリンタヘッド103の移動方向と直角に送られる。ロール紙105は本体101の後方101bにセットされ、後方101bからプラテン104とプリンタヘッド103の間を通って本体101の上方101cに導かれる。本例のプリンタ100は、2本のロール紙105をセットでき、店舗の記録用のジャーナル紙および領収書として使用するレシート紙の印刷が可能である。
【0063】
さらに、プリンタ100はMICRデータを持ったパーソナルチェックなどの単票用紙(チェック用紙)106の処理も行えるようになっている。チェック用紙106は、本体101の前方101aに用意された用紙挿入口109から、後述する紙経路を通ってプリンタヘッド103とプラテン104との間に導かれ、印刷が終了した後は、プリンタの上方101cから排出される。
【0064】
以下の説明において、単票用紙としてパーソナルチェック106を用いた場合を例にとって説明する。なお、本例のプリンタは、パーソナルチェック以外にも、帳票類や、レシートなど様々な単票用紙に対し印刷できることはもちろんである。本例で参照しているパーソナルチェック106は、店舗の支払いに使用される個人使用用の小切手であり銀行で発行される。パーソナルチェックの表面106aには、使用者のアカウントなどがMICR−CMC7フォント文字107で印刷されている。MICR−CMC7フォント文字は文字形状や印字品質が規格化されており、また、パーソナルチェック上の印刷位置も規格化されている。従って、パーソナルチェックの所定の領域を磁気ヘッドで検出することによってMICR−CMC7フォント文字に対応した波形が得られ、この波形から印刷されたデータを判別できる。この際、磁気ヘッドで検出する前にMICR−CMC7フォント文字の付された領域に永久磁石を当て、MICR−CMC7フォント文字を磁化している。
【0065】
パーソナルチェック106の表面106aには、さらに、支払われる金額や支払い者のサインが記入される。また、パーソナルチェック106の裏面106bには、使用された日時、店舗名、金額などの記録が裏書き(エンドースメント印字)108される。店舗の担当者がパーソナルチェックを受け取ると、まず、MICR−CMC7フォント文字で記載されたデータからパーソナルチェックの有効または無効を確認し、次に、有効なパーソナルチェックにはエンドースメント印字を施す。
【0066】
プリンタ100においては、プリンタヘッド103によってエンドースメント印字108が可能なように、裏面106bを上にしてパーソナルチェック106はセットされる。このため、パーソナルチェック106が挿入口109から挿入されると、MICRデータ107は下方を向いてプリンタ本体の右側に沿って置かれる。
【0067】
図2は、複合処理装置のブロック構成図である。図2に、複合処理装置(プリンタ)100の紙経路202に沿って配置されたMICR−CMC7フォント文字の認識処理に係わる部分の構成を示す。
【0068】
紙経路202に沿って紙の挿入口109から順番に、チェック用紙に印刷されたMICR−CMC7フォント文字を磁化するための永久磁石203、MICR−CMC7フォント文字による波形を検出するための磁気ヘッド204が配置されている。挿入口109から挿入されたチェック用紙は紙送りローラ205に挟まれて紙経路202に沿って導かれ、永久磁石203および磁気ヘッド204を順番に通過し、チェック用紙に印刷されたMICR−CMC7フォント文字が検出される。紙経路202に沿って、さらに、印刷ヘッド103が設置されており、MICR−CMC7フォント文字によって記載されたアカウントなどの情報が確認されると、紙送りローラ205によってチェック用紙がさらに搬送され、印刷ヘッド103によってエンドースメント印字が連続して行えるようになっている。
【0069】
MICR−CMC7フォント文字を検出した磁気ヘッド204は、MICR文字検出回路206を介してプロセッサ210に検出磁気波形を送る。MICR文字検出回路206は、磁気ヘッド204で検出された磁束密度の変化による微小な電圧変化を増幅する増幅回路207と、様々なノイズやMICR文字の印刷不良による不要な信号を除去するフィルタ回路208と、フィルタ回路208を通過したアナログ信号をA/D変換してディジタル値を出力するA/D変換回路209を備えている。フィルタ回路208は、チェック用紙に対する紙送り速度とMICR−CMC7フォント文字の規格に従った配列間隔の長さによって定まるカットオフ周波数を用いて磁気ヘッド204からの不要な信号を除去できるようになっている。プロセッサ210は、MICR文字検出回路206から送られた検出磁気波形及び検出条件をRAM211に一次的に保管する。
【0070】
MICR−CMC7フォント文字を認識するための判定条件は、ROM212に記憶されているが、入力装置213により判定条件を変更することも可能で、変更された判定条件はRAM211に保管される。
【0071】
そして、MICR−CMC7フォント文字の検出が終了すると、RAM211に一次的に保管された検出磁気波形、検出条件及び変更された判定条件と、ROM212に記憶されている判定条件に基づいてMICR−CMC7フォント文字を認識する。
【0072】
MICR−CMC7フォント文字を認識できると、その結果を表示したりまたは外部のコンピュータなどに出力する。もちろん、MICR−CMC7フォント文字の検出磁気波形を直接コンピュータに転送し、コンピュータ側でMICR−CMC7フォント文字の認識に関する処理を行うことも可能である。
【0073】
プリンタ100においては、プロセッサ210が紙送りローラ205などの搬送機構を制御する機能も備えており、モータ制御回路215を介して搬送用のパルスモータ214を制御し、MICR−CMC7フォント文字の読み取り用と、印刷用とにパルスモータ214を兼用できるようになっている。さらに、プロセッサ210は、プリンタヘッド103を用いて印刷を行う印刷制御回路217を制御する機能も備えている。
【0074】
このように、プリンタ100は単票用紙へ印字する機能に加え、チェック用紙等の単票用紙に印刷されたMICRデータを読み取る機能を備えた複合処理装置である。そして、同一紙経路に沿って送られるチェック用紙に対し、印刷とMICRデータの読み取りの両方が可能なように、それぞれの機能は配置されており、パーソナルチェックに付されたMICR−CMC7フォント文字の読み取りと、パーソナルチェックへのデータの印刷、本例では特に裏書き印字を連続して処理できる。
【0075】
図3は、複合処理装置における文字認識の機能ブロック図である。
【0076】
プロセッサ210の搬送制御手段303は、モータ制御回路215を介してチェック用紙を搬送し、磁気ヘッド204によりMICR−CMC7フォント文字を検出する。磁気ヘッド204によって検出された検出磁気波形は、MICR文字検出回路206を介してプロセッサ210に入力される。
【0077】
プロセッサ210の磁気パターン検出手段304は、検出された検出磁気波形及び検出条件を、いったんRAM211の検出波形記憶部310に記憶する。
【0078】
MICR−CMC7フォント文字を認識するための判定条件は、ROM212の認識判定条件記憶部313に記憶されている。また、MICR−CMC7フォント文字を認識するための判定条件は、入力装置213を介してプロセッサ210の判定条件変更手段302によって、条件変更することも可能であり、変更された判定条件は、RAM211の判定条件変更記憶部312に記憶される。
【0079】
MICR−CMC7フォント文字の検出が終了すると、プロセッサ210の磁気パターン切り出し手段305は、RAM211の検出波形記憶部310に記憶された検出磁気波形から1文字ごとの開始位置を検出し、各文字の検出磁気波形を切り出す。
【0080】
プロセッサ210の積分波形生成手段306は、切り出された1文字分の検出磁気波形を積分して、更に積分した波形に補正処理を実行して、積分波形を生成する。ここで、生成された積分波形の極小点と極小点を挟む2つの極大点によって形成される凹曲線と、2つの極大点を結ぶ直線とから形成される空間を「谷」という。
【0081】
プロセッサ210の谷パターン変換手段307は、積分波形生成手段306によって生成された積分波形の谷の面積を算出し、更にROM212の認識判定条件記憶部313およびRAM211の判定条件変更記憶部312に従って、谷を「深い谷」または「浅い谷」の谷パターンに変換する(以下、「パターン変換」という)。「深い谷」とは、谷の面積が大きいこと示し、「浅い谷」とは、谷の面積が小さいことを示す。
【0082】
プロセッサ210の磁気パターン識別手段308は、積分波形における谷の位置を算出し、算出した谷の位置から、積分波形の幅における谷の相対位置を算出する。更に、谷の相対位置とROM212の認識判定条件記憶部313とに基づいて、MICR−CMC7フォント文字を認識する。磁気パターン識別手段308において、文字が一義的に決まった場合は、その認識結果をRAM211の認識結果記憶部311に記憶する。磁気パターン識別手段308において、文字が一義的に決定できない場合は、チェック用紙を磁気ヘッド204に対し再び移動させてMICR−CMC7フォント文字を再検出したり、オペレータに文字の認識ができなかったことを通知するなどのエラー処理が行われる。
【0083】
プロセッサ210の制御手段301は、判定条件変更手段302、搬送制御手段303、磁気パターン検出手段304、磁気パターン切り出し手段305、積分波形生成手段306、谷パターン変換手段307及び磁気パターン識別手段308を関連付けて制御する。
【0084】
本発明の磁気パターンの認識方法は、複数のバーによって構成される所定の磁気パターンの検出磁気波形を積分して得られる積分波形における、複数のバーの隣り合う2つのバーの間の距離に基づいて形成される凹曲線の位置によって、磁気パターンを所定の文字として認識する磁気パターン認識ステップを備えている。
【0085】
また、本発明の磁気パターンの認識方法は、磁気パターン認識ステップが、下記のステップを備えている。
(a)微分波形からなる検出磁気波形を積分した積分波形を生成する積分波形生成ステップと、
(b)積分波形生成ステップによって生成した積分波形の極小点と極小点を挟む2つの極大点とによって形成される凹曲線と、2つの極大点を結ぶ直線とからなる空間で表される谷を、「深い谷」または「浅い谷」の谷パターンに変換する谷パターン変換ステップと、
(c)谷パターン変換ステップによって変換した谷パターンの中の「深い谷」の位置に基づいて、磁気パターンを識別する磁気パターン識別ステップ。
【0086】
また、本発明の磁気パターンの認識方法は、下記のステップを、更に備えている。
(a)検出磁気波形及び検出条件を取得する磁気パターン検出ステップと、
(b)磁気パターン検出ステップによって取得した検出磁気波形から1つ分の磁気パターンの検出磁気波形を切り出す磁気パターン切り出しステップ。
【0087】
上述した本発明の磁気パターンの認識方法について、図を参照しながら以下に詳細に説明する。図4は、複合処理装置における文字認識処理のフローチャート図である。
【0088】
まず、RAM211に記憶されている検出磁気波形から文字の開始位置を検出する(ステップS401)。例えば、MICR−CMC7フォント文字「SV」に対しては、図21(b)に示すような検出磁気波形2111が得られる。検出磁気波形2111の1番目のピーク(図21(b)の左端のピーク)が、文字の開始位置として識別される。
【0089】
次に、1文字分の検出磁気波形を切り出す(ステップS402)。例えば、切り出された1文字分の検出磁気波形は、図21(b)に示すように、7つのピークからなっている。
【0090】
次に、切り出された1文字分の検出磁気波形を積分して、積分波形を生成する積分波形生成処理を実行する(ステップS403)。
【0091】
図8は、積分波形の生成方法を示す図である。図8(a)は、一般的な波形を示す図であり、図8(b)は、波形の積分方法を示す図である。図8(c)は、検出磁気波形を示す図であり、図8(d)は、検出磁気波形の積分波形を示す図である。図8(a)、(b)から明らかなように、波形を構成する複数の点のy座標の値を、x軸の右方向に順次加算した値を、グラフ化した波形が積分波形である。図8(c)、(d)から明らかなように、積分波形の谷の面積の大小は、検出磁気波形のピーク間隔の広狭に依存する。即ち、ピーク間隔L1、L2、L3、L4のそれぞれに最も大きく影響を受ける積分波形の谷の面積はS1、S2、S3、S4である。例えば、谷の面積S1は、ピーク間隔L1とL2の影響を受ける。更に、谷の面積S1に対する影響の度合いは、ピーク間隔L1がピーク間隔L2に比べて大きい事がわかる。また、広いピーク間隔に影響を受ける谷の面積は大きいことが分かる。一方、ピーク間隔が広いとは、磁気パターンのバー間隔が広いことを表す。従って、磁気パターンのバー間隔パターンが「広い」間隔であるバー間隔によって影響を受ける谷は、面積の大きい谷である。そこで、磁気パターンのバー間隔または検出磁気波形のピーク間隔によって、磁気パターンを認識するのではなく、検出磁気波形の積分波形の谷によって、磁気パターンを認識する。
【0092】
次に、生成された積分波形において、谷を探索して、探索した谷の面積に基づいて、「深い谷」または「浅い谷」の谷パターンに変換する谷パターン変換処理を実行する(ステップS404)。谷パターンが「深い谷」である谷とは、谷の面積が大きいことを示し、谷パターンが「浅い谷」である谷とは、谷の面積が小さいことを示す。従って、谷パターンが「深い谷」である谷の数は、磁気パターンのバー間隔パターンが「広い」間隔であるバー間隔の数となる。
【0093】
次に、谷パターンが「深い谷」である谷の数が1〜3個であるか否かを判定する(ステップS405)。谷パターンが「深い谷」である谷の数が1〜3個である場合(ステップS405;Yes)は、次の処理(ステップS406)に移る。一方、谷パターンが「深い谷」である谷の数が0または4個以上である場合(ステップS405;No)は、文字を認識不可能としてエラー処理を実行し(ステップS407)、文字の認識処理を終了する。
【0094】
また、ステップS407において、文字を認識不可能としてエラー処理を実行した後、上述した文字の認識処理を終了せずに、次の文字の認識処理を実行するためのステップS408に移っても良い。
【0095】
次に、谷パターンが「深い谷」である谷の位置を算出し、算出した谷の位置から、積分波形の幅における谷の相対位置を算出し、谷の相対位置とROM212の認識判定条件記憶部313とに基づいて、MICR−CMC7フォント文字を認識する磁気パターン識別処理を実行する(ステップS406)。
【0096】
文字を認識した後は、ステップS401からステップS407を繰り返して、チェック用紙上の全ての文字について、文字の認識処理が実行されたか否かを判定する(ステップS408)。
【0097】
チェック用紙上の全ての文字について、文字の認識処理が実行された場合(ステップS408;Yes)は、文字の認識処理を終了する。チェック用紙上の全ての文字について、文字の認識処理が実行されていない場合(ステップS408;No)は、次の文字を認識するために、ステップS401に戻る。
【0098】
尚、ステップS407のエラー処理においては、自動的にチェック用紙を紙経路202に沿ってバックフィードし、再び磁気ヘッド204の前面を通過させてMICR−CMC7フォント文字の読み取りを行うことも考えられる。または、オペレータに対し認識できなかった個所を示してマニュアルで入力させることも可能である。また、MICR−CMC7フォント文字を識別ができなかったとしてチェック用紙をプリンタ100から排出しても良い。
【0099】
本発明の磁気パターンの認識方法は、積分波形生成ステップが、下記のステップを備えている。
(a)微分波形からなる検出磁気波形を積分する波形積分化ステップと、
(b)波形積分化ステップによって積分した検出磁気波形を平滑化補正する波形平滑化補正ステップと、
(c)波形平滑化補正ステップによって平滑化した検出磁気波形を正規化補正する波形正規化補正ステップ。
【0100】
上述した本発明の磁気パターンの認識方法における、積分波形生成処理について、図を参照しながら以下に詳細に説明する。図5は、文字認識処理における積分波形生成処理のフローチャート図である。
【0101】
まず、1文字分の検出磁気波形を積分して、積分波形を生成する(ステップS501)。
【0102】
次に、積分された検出磁気波形を斜め補正する(ステップS502)。検出磁気波形を積分して得られた積分波形は、全体的に傾いてしまう現象がみられる。これは、取得した検出磁気波形の値の0点位置の取り方にずれが生じるためである。また、読み取り回路の特性によって、検出磁気波形における正の領域の面積と負の領域の面積とが異なるときにも、積分波形は傾いてしまう。ステップS502はこの0点位置の取り方のずれを補正する。図9は、積分波形の斜め補正を示す図である。0点位置の取り方にずれの無い検出磁気波形を積分した波形は、図8に示すように波形の両端の値が同じ値になる。従って、ステップS501において得られた積分波形901に、積分波形901の両端を結んだ補正直線903を加算して、斜め補正後の積分波形902を作成する。
【0103】
次に、斜め補正された積分波形を平滑化補正する(ステップS503)。平滑化補正とは、積分波形の任意の点とその点の前後各n点との合計(2n+1)点を単純平均し、平均した値を積分波形の任意の点とすることである。ここで、nは、任意の正整数である。また、上述したような、合計(2n+1)点を単純平均することを「平滑化を行う」という。本例においては、n=2として、合計5点による平滑化を行う。図10は、積分波形の平滑化補正を示す図である。ステップS501によって作成された斜め補正後の積分波形1001に平滑化を行い、平滑化補正後の積分波形1002を作成する。図からわかるように、平滑化補正後の積分波形1002において、広い空間の谷は狭い空間の谷に比べて、平滑化による影響を受けにくい。従って、平滑化補正により、積分波形において、広い空間の谷を残した積分波形を作成することができる。
【0104】
最後に、平滑化された積分波形の高さ方向を正規化し、正規化補正後の積分波形を作成する(ステップS504)。積分波形の高さは電圧で表される。電圧は、磁界の強さに影響される。即ち、検出されるCMC7チェック用紙の印刷状態や磁気ヘッド等の検出条件によって、同一の磁気パターンから検出される波形は異なる。従って、正規化を行うことにより、積分波形の高さ方向を同一のスケールとする。図4の積分波形生成処理以後の文字認識処理においては、この正規化補正された積分波形を、検出磁気波形の積分波形として、処理を実行していく。
【0105】
本発明の磁気パターンの認識方法は、谷パターン変換ステップにおいて、谷が、磁気パターンの積分波形における、両端の極大点の間に存在することを特徴とする。
【0106】
また、本発明の磁気パターンの認識方法は、谷パターン変換ステップにおいて、谷が、磁気パターンの積分波形における、極小点の左側に単調減少する連続した所定の数以上の点と、右側に単調増加する連続した所定の数以上の点とからなる凹曲線を持つことを特徴とする。
【0107】
また、本発明の磁気パターンの認識方法は、谷パターン変換ステップが、下記のステップを備えている。
(a)谷の面積を算出する谷面積算出ステップと、
(b)谷面積算出ステップによって算出した谷の面積に基づいて、谷を「深い谷」または「浅い谷」の谷パターンに判別するパターン判別ステップ。
【0108】
また、本発明の磁気パターンの認識方法は、谷面積算出ステップにおいて、谷の面積を、凹曲線の極小点と極小点を挟む2つの極大点とによって形成される三角形の面積によって近似することを特徴とする。
【0109】
また、本発明の磁気パターンの認識方法は、パターン判別ステップにおいて、谷が、積分波形における、両端の極大点の間に存在する最小極小点の値と谷の極小点の値との偏差と、谷の面積と、に基づいた谷の評価関数の値が、所定の深い谷識別判定閾値以下であるとき、谷を「深い谷」と判定することを特徴とする。
【0110】
上述した本発明の磁気パターンの認識方法における、谷パターン変換処理について、図を参照しながら以下に詳細に説明する。図6は、文字認識処理における谷パターン変換処理のフローチャート図である。
【0111】
まず、積分波形から谷を探索するための探索範囲を決める(ステップS601)。図11は、谷の探索範囲を示す図である。図からわかるように、積分波形1101の両端には窪み部分1102が存在する。この窪み部分1102を谷と誤認することを避けるために、積分波形1101の両端において、両端に最も近い極大点である右端極大点1103と左端極大点1104を検索し、検索した右端極大点1103と左端極大点1104によって挟まれる範囲を谷探索範囲1105とする。ここで、右端極大点1103と左端極大点1104を検索する具体的な条件は、積分波形1101の左端から順次右方向へ検索したとき、値が最大値のm1%以上になり、かつ、m2個以上連続して単調増加した点であり、かつ、次の点が減少する点である。ここで、m1及びm2は任意の正整数である。本例においては、m1=10、m2=2とする。
【0112】
次に、積分波形における谷の探索範囲から谷を探索する(ステップS602)。谷を探索する条件は、次の2つである。
【0113】
条件1は、任意の点の左側にk1個以上連続して単調減少する点が存在し、かつ、右側にk2個以上連続して単調増加する点が存在する、連続した(1+k1+k2)個の点によって形成される積分波形の凹曲線と、凹曲線の両端を結ぶ直線とによる空間を谷とする。以下、この任意の点を極小点とする。また、凹曲線の両端の点を極大点とする。
【0114】
条件2は、任意の点の左側にk2個以上連続して単調減少する点が存在し、かつ、右側にk1個以上連続して単調増加する点が存在する、連続した(1+k1+k2)個の点によって形成される積分波形の凹曲線と、凹曲線の両端を結ぶ直線とによる空間を谷とする。ここで、k1及びk2は任意の正整数である。本例においては、k1=4、k2=3とする。
【0115】
図12は、谷の探索条件を示す図である。図12(a)は、上記条件1を満たす場合の谷を示す図である。図12(b)は、上記条件2を満たす場合の谷を示す図である。図12(c)は、谷では無い場合を示す図である。
【0116】
次に、探索した谷の面積を算出する(ステップS603)。谷の面積は近似によって算出する。
【0117】
図13は、谷の面積の算出方法を示す図である。図13(a)は、谷の面積を示す図であり、図13(b)は、谷の面積を近似した図であり、図13(c)は、近似した谷の面積の算出方法を示す図である。
【0118】
図13(a)からわかるように、積分波形1301において、谷の面積Sは、極小点Aとこの極小点を挟む2つの極大点B、Cによって形成される凹曲線BACと、2つの極大点B、Cを結ぶ直線BCとによる空間の面積である。正確な谷の面積を計算するには、処理時間がかかってしまう。また、プロセッサの処理負荷も大きくなる。そこで、図13(b)(c)に示すように、極小点Aと2つの極大点B、Cから形成される三角形ABCの面積S’を谷の面積Sの近似値とする。ここで、極小点A、極大点B及び極大点Cの座標を(0,0)、(−xL,yL)および(xR,yR)とする。
【0119】
三角形AEB、三角形ACDおよび台形BCDEのそれぞれの面積をS1、S2およびS3とすると、
S1=xL*yL/2
S2=xR*yR/2
S3=(xL+xR)*(yL+yR)/2
となる。ここで、「*」は乗算を表す。
【0120】
従って、三角形ABCの面積S’は S’=S3−S1−S2=(xL*yR+xR*yL)/2
となる。
【0121】
次に、算出された谷の面積と、谷底の高さとによって定義される谷の評価関数の値を算出する(ステップS604)。ここで、谷底の高さは、最小の極小点の値を0としたときの谷に存在する極小点の値である。
【0122】
評価関数E(H,S)を、
E(H,S)=aH*H + aS*S
と定義する。ここで、谷底の高さをHとし、谷の面積をSとし、Hに対する重み付け係数をaHとし、Sに対する重み付け係数をaSとする。また、aSはマイナス値である。
【0123】
次に、算出された谷の評価関数の値から、谷を「深い谷」または「浅い谷」の谷パターンにパターン変換する(ステップS605)。パターン変換の条件は、谷の評価関数の値Eが深い谷識別判定閾値Emax以下のとき、谷パターンを「深い谷」とし、谷の評価関数の値Eが深い谷識別判定閾値Emaxより大きいとき、谷パターンを「浅い谷」とする。
【0124】
図14は、谷の評価関数の値によるパターン変換を示す図である。図からわかるように、谷パターンが「深い谷」である谷の面積は大きく、谷底の高さは小さい。即ち、谷パターンが「深い谷」である谷の評価関数は小さい値となる。従って、深い谷識別判定閾値Emaxに基づいた上述のパターン変換の条件に従って、谷を谷パターンにパターン変換する。
【0125】
ステップS602からステップS605を、積分波形の全ての谷について繰り返し実行して、全ての谷を谷パターンにパターン変換する(ステップS607)。全ての谷についてのパターン変換が終了した場合(ステップS607;Yes)は、谷パターン変換処理を終了する。一方、全ての谷についてのパターン変換が終了しない場合(ステップS607;No)は、ステップS602に戻り、次の谷を探索する。
【0126】
本発明の磁気パターンの認識方法は、磁気パターン識別ステップが、谷パターンが「深い谷」である谷の数によって、磁気パターンを識別することができる。
【0127】
本発明の磁気パターンの認識方法は、磁気パターン識別ステップが、下記のステップを備えている。
(a)谷の位置を算出する谷位置算出ステップと、
(b)谷位置算出ステップによって算出した谷の位置から、積分波形の幅における谷の相対位置を算出する谷相対位置算出ステップと、
(c)谷相対位置算出ステップによって算出した谷の相対位置から、磁気パターンを確定する磁気パターン確定ステップ。
【0128】
上述した本発明の磁気パターンの認識方法における、磁気パターン識別処理について、図を参照しながら以下に詳細に説明する。図7は、文字認識処理における磁気パターン識別処理のフローチャート図である。
【0129】
まず、積分波形において、谷パターンが「深い谷」である谷の位置を算出する(ステップS701)。積分波形において、各点の間隔の粗さのために、積分波形の正確な極小値が得られない。そこで、積分波形の極小点とその極小点の前後各1点の合計3点が2次曲線上にあると仮定して、正確な極小値となる「真の極小点」を算出する。この真の極小点のx座標値を「谷の位置」とする。
【0130】
図15は、波形を2次曲線と仮定したときの、真の極小点の算出方法を示す図である。図15(a)は、真の極小点を示す図であり、図15(b)は、曲線の傾きを示す図である。極小点を点Pとし、極小点の前後の点を点M、点Qとし、真の極小点を点Rとする。点P、点M、点Q、点Rの座標を、それぞれ、(x0,y0)、(xm,ym)、(xq,yq)、(xr,yr)とする。また、2次曲線上において、x座標値がx0とxmの中点である点を点A、x0とxqの中点である点を点Bとする。点A、点Bの座標を、それぞれ、(xa,ya)、(xb,yb)とし、点R、点A、点Bの傾きを、それぞれ、Dr、Da、Dbとする。ここで、xm=x0−1、xq=x0+1、xa=x0−1/2、xb=x0+1/2である。また、点Rは極小値であることから、Dr=0である。
【0131】
図15(b)に示すように、2次曲線の傾きは1次式で表される。従って、下記比例式が成り立つ。
【0132】
(Dr−Da):(Db−Dr)=(xr−xa):(xb−xr)
即ち、谷の位置xrは、下記の式になる。
【0133】
xr=x0−(Db+Da)/{(Db−Da)*2}
また、点Aの傾きDaおよび点Bの傾きDbは、下記の式になる。
【0134】
Da=y0−ym、 Db=yq−y0
次に、谷パターンが「深い谷」である谷の位置から、積分波形の幅における谷の相対位置を算出する(ステップS702)。
【0135】
図16は、谷パターンが「深い谷」である谷が2つ存在する場合における、2つの谷の相対位置の算出方法を示す図である。図に示すように、谷パターンが「深い谷」である2つの谷の位置から、互いの谷の位置がある方向とは反対の方向に延ばした水平線と積分波形とが交わる点を点A、点Bとする。積分波形の幅とは、点Aから点Bの範囲のことである。また、谷パターンが「深い谷」である2つの谷の位置で区切られた部分の幅を幅1、幅2、幅3とする。積分波形の幅は、幅1、幅2、幅3の幅合計となる。谷パターンが「深い谷」である2つの谷の相対位置r1、r2を、幅合計に対する幅1と幅2の比率によって表す。即ち、2つの谷の相対位置r1、r2は、下記の式になる。
【0136】
r1=幅1/(幅1+幅2+幅3)
r2=幅2/(幅1+幅2+幅3)
谷パターンが「深い谷」である谷が2つ存在する場合と同様に、谷パターンが「深い谷」である谷が1つ存在する場合においては、谷の相対位置は、下記の式となる。
【0137】
r1=幅1/(幅1+幅2)
また、谷パターンが「深い谷」である谷が3つ存在する場合においては、谷の相対位置は、下記の式となる。
【0138】
r1=幅1/(幅1+幅2+幅3+幅4)
r2=幅2/(幅1+幅2+幅3+幅4)
r3=幅3/(幅1+幅2+幅3+幅4)
次に、積分波形において、谷パターンが「深い谷」である谷の数を判定する(ステップS703)。谷パターンが「深い谷」である谷の数が2個である場合(ステップS703;2)は、MICR−CMC7フォント文字は数字または記号であると判定して、次のステップS705に移る。
【0139】
次に、谷パターンが「深い谷」である谷の相対位置r1、r2と、ROM212の認識判定条件記憶部313の15個のMICR−CMC7フォント文字のr1標準値とr2標準値とに基づいて、又は、r1、r2の2次元の境界範囲の閾値に基づいて、MICR−CMC7フォント文字を認識し、数字または記号を確定する(ステップS705)。
【0140】
図17は、谷パターンが「深い谷」である谷が2つ存在する場合のr1−r2相関を示す図である。図17(a)は、数字と記号のMICR−CMC7フォント文字のr1−r2相関を示す図である。図17(b)は、MICR−CMC7フォント文字の2次元の境界範囲を説明する図である。谷パターンが「深い谷」である谷が2つ存在する場合のMICR−CMC7フォント文字には、10個の数字と5個の記号とがある。図に示すように、検出磁気波形から最終的に得られるr1、r2の値は、15個のMICR−CMC7フォント文字によって異なった2次元の境界範囲内に存在する。即ち、15個のMICR−CMC7フォント文字のr1、r2、それぞれの標準値となる標準点Miおよび2次元の境界範囲の閾値がわかる。ここで、標準点Miの座標を(s1(i),s2(i))とする。また、r1方向の境界範囲の最大閾値をs1H(i)とし、最小閾値をs1L(i)とする。また、r2方向の境界範囲の最大閾値をs2H(i)とし、最小閾値をs2L(i)とする。また、i=1〜15である。
【0141】
得られたr1、r2の値が、図17(a)に示すMICR−CMC7フォント文字の2次元の境界範囲内に入った場合に、文字を認識する。即ち、下記の条件を満たすMICR−CMC7フォント文字を認識文字とする。但し、下記の条件を満たすMICR−CMC7フォント文字がない場合は、文字を認識不可能とする。
【0142】
s1L(i)<r1<s1H(i) かつ、
s2L(i)<r2<s2H(i)
また、15個のMICR−CMC7フォント文字の標準点Miと、認識判定する対象のCMC7チェック用紙上の文字から得られた点Xとの誤差をそれぞれ算出し、15個のMICR−CMC7フォント文字の中で最小誤差となるMICR−CMC7フォント文字を、認識文字とする。ここで、点Xの座標を(r1,r2)とする。
【0143】
誤差Error(i)は、下記の式である。
【0144】
Error(i)=|(r1−s1(i))|+|(r2−s2(i))|
但し、誤差Error(i)の最小値が、予め定められた閾値よりも大きくなってしまう場合は、文字を認識不可能とする。
【0145】
谷パターンが「深い谷」である谷の数が1個である場合(ステップS703;1)は、谷パターンが「深い谷」である谷の相対位置r1と、ROM212の認識判定条件記憶部313の15個のMICR−CMC7フォント文字のr1標準値とに基づいて、または、r1の1次元の境界範囲の閾値に基づいて、MICR−CMC7フォント文字を認識し、アルファベットを確定する(ステップS704)。即ち、谷パターンが「深い谷」である谷の数が2個である場合は、r1、r2の2次元における、境界範囲内の標準点Miと認識判定する対象の文字の点Xとの誤差によって、または、r1、r2の2次元の境界範囲の閾値によって、MICR−CMC7フォント文字を認識し、数字または記号を確定すると同様に、r1の1次元における、境界範囲内の標準点Miと認識判定する対象の文字の点Xとの誤差によって、または、r1の1次元の境界範囲の閾値によって、MICR−CMC7フォント文字を認識し、アルファベットを確定する。
【0146】
谷パターンが「深い谷」である谷の数が3個である場合(ステップS703;3)は、谷パターンが「深い谷」である谷の相対位置r1、r2、r3と、ROM212の認識判定条件記憶部313の15個のMICR−CMC7フォント文字のr1標準値とr2標準値とr3標準値とに基づいて、またはr1、r2、r3の3次元の境界範囲の閾値に基づいて、MICR−CMC7フォント文字を認識し、アルファベットを確定する(ステップS706)。即ち、r1、r2、r3の3次元における、境界範囲内の標準点Miと認識判定する対象の文字の点Xとの誤差によって、または、r1、r2、r3の3次元の境界範囲の閾値によって、MICR−CMC7フォント文字を認識し、アルファベットを確定する。
【0147】
また、上述の磁気パターンの認識方法を、従来の微分波形である検出磁気波形に基づいた磁気パターンの認識方法と組み合せることも可能である。
【0148】
本発明の情報記録媒体は、上述の磁気パターンの認識方法のステップを有するプログラムを記録することもできる。
【0149】
また、本発明の情報記録媒体は、コンパクト・ディスク、フロッピー・ディスク、ハード・ディスク、光磁気ディスク、ディジタル・ビデオ・ディスク、もしくは磁気テープであっても良い。
【0150】
本発明の磁気パターン認識装置は、複数のバーによって構成される所定の磁気パターンの検出磁気波形を積分して得られる積分波形における、複数のバーの隣り合う2つのバーの間の距離に基づいて形成される凹曲線の位置によって、磁気パターンを所定の文字として認識する磁気パターン認識手段を備えている。
【0151】
また、本発明の磁気パターン認識装置は、磁気パターン認識手段が、下記の手段を備えている。
(a)微分波形からなる検出磁気波形を積分した積分波形を生成する積分波形生成手段と、
(b)積分波形生成手段によって生成した積分波形の極小点と極小点を挟む2つの極大点とによって形成される凹曲線と、2つの極大点を結ぶ直線とからなる空間で表される谷を、「深い谷」または「浅い谷」の谷パターンに変換する谷パターン変換手段と、
(c)谷パターン変換手段によって変換した谷パターンの中の「深い谷」の位置に基づいて、磁気パターンを識別する磁気パターン識別手段。
【0152】
また、本発明の磁気パターン認識装置は、積分波形生成手段が、下記の手段を備えている。
(a)微分波形からなる検出磁気波形を積分する波形積分化手段と、
(b)波形積分化手段によって積分した検出磁気波形を平滑化補正する波形平滑化補正手段と、
(c)波形平滑化補正手段によって平滑化した検出磁気波形を正規化補正する波形正規化補正手段。
【0153】
また、本発明の磁気パターン認識装置は、谷パターン変換手段において、谷が、磁気パターンの積分波形における、両端の極大点の間に存在する。
【0154】
また、本発明の磁気パターン認識装置は、谷パターン変換手段において、谷が、磁気パターンの積分波形における、極小点の左側に単調減少する連続した所定の数以上の点と、右側に単調増加する連続した所定の数以上の点とによって形成される凹曲線を持つ。
【0155】
また、本発明の磁気パターン認識装置は、谷パターン変換手段が、下記の手段を備えている。
(a)谷の面積を算出する谷面積算出手段と、
(b)谷面積算出手段によって算出した谷の面積に基づいて、谷を「深い谷」または「浅い谷」の谷パターンに判別するパターン判別手段。
【0156】
また、本発明の磁気パターン認識装置は、谷面積算出手段において、谷の面積を、凹曲線の極小点と極小点を挟む2つの極大点とによって形成される三角形の面積によって近似する。
【0157】
また、本発明の磁気パターン認識装置は、パターン判別手段において、谷が、積分波形における、両端の極大点の間に存在する最小極小点の値と谷の極小点の値との偏差と、谷の面積と、に基づいた谷の評価関数の値が、所定の深い谷識別判定閾値以下であるとき、谷を「深い谷」と判定する。
【0158】
また、本発明の磁気パターン認識装置は、磁気パターン識別手段が、谷パターンが「深い谷」である谷の数によって、磁気パターンを識別する。
【0159】
また、本発明の磁気パターン認識装置は、磁気パターン識別手段が、下記の手段を備えている。
(a)谷の位置を算出する谷位置算出手段と、
(b)谷位置算出手段によって算出した谷の位置から、積分波形の幅における谷の相対位置を算出する谷相対位置算出手段と、
(c)谷相対位置算出手段によって算出した谷の相対位置から、磁気パターンを確定する磁気パターン確定手段。
【0160】
また、本発明の磁気パターン認識装置は、下記の手段を、更に備えている。
(a)検出磁気波形及び検出条件を取得する磁気パターン検出手段と、
(b)磁気パターン検出手段によって取得した検出磁気波形から1つ分の磁気パターンの検出磁気波形を切り出す磁気パターン切り出し手段。
【0161】
また、本発明の複合処理装置は、上述の磁気パターン認識装置の手段を備えている。
【0162】
また、本発明の複合処理装置は、パルスモータを備えた紙送り手段と、紙送り手段により送られた紙片に印刷する印刷手段と、紙送り手段によって送られた紙片に付された磁気パターンを検出する磁気検出手段と、を更に備えている。
【0163】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、以下の効果を奏する。
【0164】
MICR−CMC7フォント文字が印刷されたCMC7チェック用紙の文字認識において、MICR−CMC7フォント文字が折り曲げられた状態の場合、文字の認識が不可能であったり、誤認識されてしまっていたが、以下の方法によって、CMC7チェック用紙上の折り曲げられたMICR−CMC7フォント文字についても、数字、記号及びアルファベットとして、認識できる磁気パターンの認識方法を提供する。
【0165】
磁気パターンの認識において、取得した検出磁気波形から1つ分の磁気パターンの検出磁気波形を切り出す。切り出した検出磁気波形を積分した積分波形を生成する。生成した積分波形の極小点と極小点を挟む2つの極大点とによって形成される凹曲線と、2つの極大点を結ぶ直線とによる空間である谷は、磁気パターンのバー間隔に依存する。即ち、バー間隔が広いとき、谷の面積が大きくなる。そこで、生成した積分波形の谷の面積に基づいて、谷を「深い谷」または「浅い谷」の谷パターンに変換し、谷パターンが「深い谷」である谷の、積分波形の幅における相対位置に基づいて、文字を認識する。ここで、「深い谷」とは、面積の大きい谷のことであり、「浅い谷」とは、面積の小さい谷のことである。上述した方法により、磁気パターンの印刷されたチェック用紙上の折り曲げられた磁気パターンについても文字として認識することができる。
【0166】
また、上述の磁気パターンの認識方法を、従来の微分波形である検出磁気波形に基づいた磁気パターンの認識方法と組み合せることによって、更に、正確に文字を認識することもできる。
【0167】
また、上述した磁気パターンの認識方法のプログラムを記録した情報記録媒体をソフトウェア商品として、容易に配布したり販売したりすることができる。
【0168】
また、上述した磁気パターンの認識方法を実行する手段を備えた磁気パターン認識装置及び複合処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】複合処理装置の概要を示す斜視図である。
【図2】複合処理装置のブロック構成図である。
【図3】複合処理装置における文字認識の機能ブロック図である。
【図4】複合処理装置における文字認識処理のフローチャート図である。
【図5】文字認識処理における積分波形生成処理のフローチャート図である。
【図6】文字認識処理における谷パターン変換処理のフローチャート図である。
【図7】文字認識処理における磁気パターン識別処理のフローチャート図である。
【図8】(a)一般的な波形を示す図、
(b)波形の積分方法を示す図、
(c)検出磁気波形を示す図、
(d)検出磁気波形の積分波形を示す図である。
【図9】積分波形の斜め補正を示す図である。
【図10】積分波形の平滑化補正を示す図である。
【図11】谷の範囲を示す図である。
【図12】(a)条件1を満たす場合の谷を示す図、
(b)条件2を満たす場合の谷を示す図、
(c)谷でない場合を示す図である。
【図13】(a)谷の面積を示す図、
(b)谷の面積の近似を示す図、
(c)近似した谷の面積の算出方法を示す図である。
【図14】谷の評価関数値によるパターン変換を示す図である。
【図15】(a)真の極小点を示す図、
(b)2次曲線に近似した波形の傾きを示す図である。
【図16】谷パターンが「深い谷」である谷が2つ存在する場合の谷の相対位置の算出方法を示す図である。
【図17】(a)数字と記号のMICR−CMC7フォント文字のr1−r2相関を示す図、
(b)MICR−CMC7フォント文字の2次元の境界範囲を説明する図である。
【図18】数字と記号を示すMICR−CMC7フォント文字の一例である。
【図19】MICR−CMC7フォント文字のバー間隔パターンの対応表である。
【図20】(a)折り曲げる前のCMC7チェック用紙の切断図、
(b)折り曲げた後のCMC7チェック用紙の切断図、
(c)折り曲げる前のバー間隔図、
(d)折り曲げた後のバー間隔図である。
【図21】(a)MICR−CMC7フォント文字のバーと検出磁気波形の関係図、
(b)MICR−CMC7フォント文字を折り曲げる前の検出磁気波形と折り曲げた後の検出磁気波形の関係図である。
【符号の説明】
100 複合処理装置(プリンタ)
301 制御手段
302 判定条件変更手段
303 搬送制御手段
304 磁気パターン検出手段
305 磁気パターン切り出し手段
306 積分波形生成手段
307 谷パターン変換手段
308 磁気パターン識別手段
310 検出波形記憶部
311 認識結果記憶部
312 判定条件変更記憶部
313 認識判定条件記憶部
901 斜め補正前の積分波形
902 斜め補正後の積分波形
903 補正直線
1001 斜め補正後の積分波形
1002 平滑化補正後の積分波形
1101 積分波形
1102 窪み部分
1103 右端極大点
1104 左端極大点
1105 谷探索範囲
1301 積分波形

Claims (10)

  1. 複数のバーによって構成される所定の磁気パターンの検出磁気波形を積分して得られる積分波形における、複数の前記バーの隣り合う2つのバーの間の距離に基づいて形成される凹曲線の位置によって、前記磁気パターンを所定の文字として認識する磁気パターン認識ステップを備え、
    前記磁気パターン認識ステップが、
    (a)微分波形からなる前記検出磁気波形を積分した前記積分波形を生成する積分波形生成ステップと、
    (b)前記積分波形生成ステップによって生成した前記積分波形の極小点と前記極小点を挟む2つの極大点とによって形成される前記凹曲線と、2つの前記極大点を結ぶ直線とからなる空間で表される谷を、「深い谷」または「浅い谷」の谷パターンに変換する谷パターン変換ステップと、
    (c)前記谷パターン変換ステップによって変換された前記谷パターンの中の「深い谷」の位置に基づいて、前記磁気パターンを識別する磁気パターン識別ステップと、
    を備えることを特徴とする磁気パターンの認識方法
  2. 前記積分波形生成ステップが、下記のステップを備えていることを特徴とする、請求項に記載の磁気パターンの認識方法。
    (a)微分波形からなる前記検出磁気波形を積分する波形積分化ステップと、
    (b)前記波形積分化ステップによって積分した前記検出磁気波形を平滑化補正する波形平滑化補正ステップと、
    (c)前記波形平滑化補正ステップによって平滑化された前記検出磁気波形を正規化補正する波形正規化補正ステップ。
  3. 前記谷パターン変換ステップにおいて、前記谷が、前記磁気パターンの前記積分波形における、両端の極大点の間に存在することを特徴とする、請求項に記載の磁気パターンの認識方法。
  4. 前記谷パターン変換ステップにおいて、前記谷が、前記磁気パターンの前記積分波形における、前記極小点の左側に単調減少する連続した所定の数以上の点と、右側に単調増加する連続した所定の数以上の点とによって形成される前記凹曲線を持つことを特徴とする、請求項に記載の磁気パターンの認識方法。
  5. 前記谷パターン変換ステップが、下記のステップを備えていることを特徴とする、請求項に記載の磁気パターンの認識方法。
    (a)前記谷の面積を算出する谷面積算出ステップと、
    (b)前記谷面積算出ステップによって算出した前記谷の面積に基づいて、前記谷を「深い谷」または「浅い谷」の谷パターンに判別するパターン判別ステップ。
  6. 前記谷面積算出ステップにおいて、前記谷の面積を、前記凹曲線の前記極小点と前記極小点を挟む2つの前記極大点とによって形成される三角形の面積によって近似することを特徴とする、請求項に記載の磁気パターンの認識方法。
  7. 前記パターン判別ステップにおいて、前記谷が、前記積分波形における、両端の前記極大点の間に存在する最小極小点の値と前記谷の極小点の値との偏差と、前記谷の面積と、に基づいた谷の評価関数の値が、所定の深い谷識別判定閾値以下であるとき、前記谷を「深い谷」と判定することを特徴とする、請求項に記載の磁気パターンの認識方法。
  8. 前記磁気パターン識別ステップが、前記谷パターンが「深い谷」である前記谷の数によって、前記磁気パターンを識別することを特徴とする、請求項に記載の磁気パターンの認識方法。
  9. 前記磁気パターン識別ステップが、下記のステップを備えることを特徴とする、請求項に記載の磁気パターンの認識方法。
    (a)前記谷の位置を算出する谷位置算出ステップと、
    (b)前記谷位置算出ステップによって算出した前記谷の位置から、前記積分波形の幅における前記谷の相対位置を算出する谷相対位置算出ステップと、
    (c)前記谷相対位置算出ステップによって算出した前記谷の相対位置から、前記磁気パターンを確定する磁気パターン確定ステップ。
  10. 複数のバーによって構成される所定の磁気パターンの検出磁気波形を積分して得られる積分波形における、複数の前記バーの隣り合う2つのバーの間の距離に基づいて形成される凹曲線の位置によって、前記磁気パターンを所定の文字として認識する磁気パターン認識手段を備え、
    前記磁気パターン認識手段が、
    (a)微分波形からなる前記検出磁気波形を積分した前記積分波形を生成する積分波形生成手段と、
    (b)前記積分波形生成手段によって生成した前記積分波形の極小点と前記極小点を挟む2つの極大点とによって形成される前記凹曲線と、2つの前記極大点を結ぶ直線とからなる空間で表される谷を、「深い谷」または「浅い谷」の谷パターンに変換する谷パターン変換手段と、
    (c)前記谷パターン変換手段によって変換した前記谷パターンの中の「深い谷」位置に基づいて、前記磁気パターンを識別する磁気パターン識別手段と、
    を備えることを特徴とする磁気パターン認識装置
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