JP3997633B2 - 車両の駆動力制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関とモータジェネレータを組み合わせたハイブリッド車両に関し、特に、駆動力の制御に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から排気エミッションを低減するため、エンジンとモータジェネレータを組み合わせて、いずれか一方または双方の駆動力により走行するハイブリッド車両が知られており、例えば、特開平8−308018号公報に開示されるものがある。
【0003】
これは、エンジンとモータジェネレータを組み合わせて、バッテリの要求馬力(モータジェネレータの要求出力または充電に必要な仕事率)が増大すればエンジン馬力を減少させる一方、電池の要求馬力が減少すればエンジン馬力を増大するよう、駆動力の制御を行うものである。
【0004】
この他、特開平9−46820号公報、特開平10−8670号公報等に開示されるハイブリッド車両も、上記と同様に、運転状態に応じた目標駆動力と電池の要求馬力から、モータジェネレータとエンジンの駆動力を制御している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の車両の駆動力制御装置にあっては、バッテリの要求馬力または充電に必要な仕事率に合わせてモータジェネレータを作動させているため、目標駆動力に対するエンジン馬力が、常時エンジンの燃料消費率が良い運転領域で発生しているわけではなく、ハイブリッド車両の燃費性能を低下させる場合があった。
【0006】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、バッテリの要求馬力に合わせてモータジェネレータを駆動しながらもエンジン馬力を最適燃費で発生させて、かつ、目標駆動力を実現することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
第1の発明は、エンジンに連結されて油圧制御装置を備えた自動変速機と、運転状態または運転操作に応じて目標駆動力を演算する目標駆動力設定手段と、前記目標駆動力と車速に基づいて、最適燃費を達成可能な目標エンジントルクと自動変速機の目標入力軸回転数を制御する駆動力制御手段とを備えた車両の駆動力制御装置において、
駆動輪またはエンジンに連結されて車両の推進、エンジンの始動または発電を行うモータジェネレータと、前記モータジェネレータと電気的に結合され電力の授受を行うバッテリと、運転状態またはバッテリの状態に基づいて、バッテリが充電または放電すべき仕事を要求馬力として演算するバッテリ要求馬力設定手段と、前記バッテリの要求馬力を車速で割った商に基づいてモータジェネレータを駆動または発電するよう制御するモータジェネレータ制御手段と、を備え、前記駆動力制御手段は、前記バッテリの要求馬力と前記目標駆動力とに基づきエンジンの目標駆動力を演算するエンジンの目標駆動力設定手段と、前記エンジンの目標駆動力に基づいて最適燃費となるエンジンの動作点を求め、この動作点から前記目標エンジントルクと自動変速機の目標入力軸回転数をそれぞれ設定する目標値設定手段とを備える。
【0008】
また、第2の発明は、前記第1の発明において、前記目標駆動力合成手段は、バッテリの放電またはモータジェネレータの駆動が行われる場合には合成した目標駆動力を減少する一方、バッテリの充電またはモータジェネレータの発電が行われる場合には合成した目標駆動力を増大する。
【0009】
また、第3の発明は、前記第1または第2の発明において、前記目標値設定手段は、エンジン回転数と負荷の特性から予め設定されて燃料消費率が最少となる最適燃費点列または最適燃費線に基づいて、前記合成した目標駆動力と車速から目標入力軸回転数を設定する。
【0010】
また、第4の発明は、前記第3の発明において、前記目標値設定手段は、予め設定した駆動力に対する車速と入力軸回転数の特性曲線またはマップに基づいて目標入力軸回転数を演算する。
【0011】
また、第5の発明は、前記第1ないし第3の発明において、前記目標値設定手段は、エンジン回転数と負荷の特性から予め設定されて燃料消費率が最少となる最適燃費点列または最適燃費線に基づいて、前記合成した目標駆動力と車速から目標エンジントルクを設定する。
【0012】
また、第6の発明は、前記第5の発明において、前記目標値設定手段は、予め設定した駆動力に対する車速と入力軸回転数の特性曲線またはマップに基づいて目標エンジントルクを演算する。
【0013】
また、第7の発明は、前記第4または第6の発明において、前記駆動力に対する車速と入力軸回転数の特性曲線またはマップは、前記最適燃費線上のエンジン動作点を、駆動軸換算の馬力に変換した等馬力線によって予め設定される。
【0014】
また、第8の発明は、前記第1の発明において、前記目標値設定手段は、目標入力軸回転数に応じた目標変速比と前記合成した目標駆動力から目標エンジントルクを設定する。
【0015】
また、第9の発明は、前記第1の発明において、前記目標値設定手段は、実際の入力軸回転数に応じた実変速比と前記合成した目標駆動力から目標エンジントルクを設定する。
【0016】
【発明の効果】
したがって、第1の発明は、エンジンとモータジェネレータに自動変速機を組み合わせたハイブリッド車両では、エンジンまたはモータジェネレータの双方または一方の駆動力によって車両の推進を行うとともに、バッテリに充電が必要な場合にはエンジンの駆動力により発電を行っている。このような車両の駆動力は、運転状態などに応じた目標駆動力とバッテリの状態に応じたバッテリの要求馬力がそれぞれ演算され、バッテリの要求馬力を車速で割った商と目標駆動力を合成し、この合成した目標駆動力に基づいて燃費が最適となるように目標エンジントルクと自動変速機の目標入力軸回転数をそれぞれ設定することで、要求される目標駆動力を実現しながらバッテリの要求馬力に合わせてモータージェネレータを駆動するのに加えて、最適の燃費でエンジンの運転を行うことが可能となって、エンジンとモータジェネレータに自動変速機を組み合わせたハイブリッド車両の燃費性能を向上させることが可能となる。
【0017】
また、第2の発明は、バッテリの充電または放電に応じてバッテリの要求馬力の符号は変化し、この符号の変化に応じて目標駆動力を増減することで、バッテリの要求馬力とエンジンの目標駆動力を協調させることができ、モータジェネレータの数に係わらず、バッテリ要求馬力の符号に基づいて容易に目標駆動力の設定を行うことができる。
【0018】
また、第3の発明は、最適燃費線に基づいて、合成した目標駆動力と車速から自動変速機の目標入力軸回転数を求めることで、要求される目標駆動力を実現しながらバッテリの要求馬力に合わせてモータージェネレータを駆動するのに加えて、最適の燃費でエンジンの運転を行うことができる。
【0019】
また、第4の発明は、合成した目標駆動力と車速から自動変速機の目標入力軸回転数を求める際には、最適燃費線に基づいて予め設定した駆動力に対する車速と入力軸回転数の特性曲線またはマップに基づいて演算することで、燃費が最適となる目標入力軸回転数を容易かつ迅速に得ることができる。
【0020】
また、第5の発明は、最適燃費線に基づいて、合成した目標駆動力と車速から目標エンジントルクを求めることで、要求される目標駆動力を実現しながらバッテリの要求馬力に合わせてモータージェネレータを駆動するのに加えて、最適の燃費でエンジンの運転を行うことができる。
【0021】
また、第6の発明は、合成した目標駆動力と車速から目標エンジントルクを求める際には、最適燃費線に基づいて予め設定した駆動力に対する車速と入力軸回転数の特性曲線またはマップに基づいて演算することで、燃費が最適となる目標エンジントルクを容易かつ迅速に得ることができる。
【0022】
また、第7の発明は、駆動力に対する車速と入力軸回転数の特性曲線またはマップを、最適燃費線上において、駆動軸換算の馬力に変換した等馬力線をパラメータとすることで、最適燃費となるエンジンの動作点を容易かつ迅速に得ることができる。
【0023】
また、第8の発明は、目標入力軸回転数に応じた目標変速比に基づいて、合成した目標駆動力から目標エンジントルクを設定することで、演算を簡易にして制御装置の演算負荷を低減することができる。
【0024】
また、第9の発明は、自動変速機の実際の入力軸回転数に応じた実変速比と合成した目標駆動力から目標エンジントルクを設定することにより、自動変速機に変速の遅れが生じた場合、目標エンジントルクも遅れを補償するように増減することから、変速遅れの補償も同時に行うことが可能となって、変速制御の精度を向上させることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0026】
図1は、本発明を適用可能なハイブリッド車両の一例を示し、エンジンまたはモータジェネレータのいずれか一方、または、双方の駆動力を用いて走行するものである。
【0027】
図1に示す車両のパワートレインは、モータジェネレータ(図中M/G)1、エンジン2、クラッチ3、モータジェネレータ4、無段変速機5(図中CVT)、差動装置6及び駆動輪7から構成される。モータジェネレータ1の出力軸とエンジン2の出力軸及びクラッチ3の入力軸は互いに連結されており、また、クラッチ3の出力軸とモータジェネレータ4の出力軸及び無段変速機5の入力軸は互いに連結されている。
【0028】
クラッチ3の締結時には、エンジン2とモータジェネレータ4の少なくとも一方が車両の推進源となり、クラッチ3の解放時には、モータジェネレータ4のみが車両の推進源となる。エンジン2またはモータジェネレータ4の駆動力は、無段変速機5及び差動装置6を介して駆動輪7へ伝達される。
【0029】
ここで、クラッチ3は、例えば、電磁パウダークラッチ等で構成され、解放状態から締結状態までの間で、任意のクラッチ容量に設定することができ、例えば、中間容量のときにはクラッチ3をスリップさせながらトルクを伝達する一方、締結時(最大容量)には、入力軸と出力軸を結合してトルクの伝達を行う。
【0030】
なお、Vベルト式やトロイダル式で構成された無段変速機5は、図示しない油圧制御装置から供給された油圧によって作動する。
【0031】
モータジェネレータ1は、主としてエンジン2の始動と発電に用いられ、モータジェネレータ4は、主として車両の推進とエネルギーの回生に用いられる。
【0032】
もちろん、クラッチ3の締結時には、モータジェネレータ1を車両の推進と回生に用いることもでき、モータジェネレータ4をエンジン2の始動や発電に用いることもできる。なお、モータジェネレータ1、4は交流機で構成され、それぞれインバータ9を介してバッテリ8に接続される。
【0033】
上記パワートレインは、マイクロコンピュータを主体に構成された駆動力制御コントローラ10が、運転状態に応じて求めた目標駆動力Fdに基づいて制御され、エンジン2はエンジン制御コントローラ11に、無段変速機5は変速制御コントローラ12に、モータジェネレータ1、4はインバータ9を介してモータジェネレータ制御コントローラ13によってそれぞれ制御される。
【0034】
駆動力制御コントローラ16は、図2に示すように、車速センサ21からの車速VSP、アクセル開度センサ22からのアクセル踏み込み量APS、エンジン回転数センサ23からのエンジン回転数Ne、CVT入力軸回転数センサ24からの入力軸回転数Ni、バッテリ充電状態センサ25からはバッテリ8の充電状態SOC(State Of Charge)がそれぞれ入力される。
【0035】
そして、駆動力制御コントローラ16は、これらセンサからの信号に基づいて運転状態を判定し、図2に示すように、目標駆動力生成部101では、車両の運転状態に応じた目標駆動力Fdを演算し、電池要求馬力生成部102では、運転状態とバッテリ8の充電状態SOCに基づいてバッテリ8の要求馬力Wb(モータジェネレータの要求出力または充電に必要な仕事率)を演算する。
【0036】
次に、駆動力合成部103では、図2、図3に示すように、上記目標駆動力Fdとバッテリ8の要求馬力Wbを合成してから、後述するように、モータジェネレータ1、4の要求駆動力Fdmと、エンジン2の要求駆動力Fde(エンジンの目標駆動力)を演算し、要求駆動力Fdmはモータジェネレータ制御コントローラ12へ入力されて、モータジェネレータ1、4の駆動または発電あるいは回生が行われる。
【0037】
一方、エンジン2の要求駆動力Fdeは駆動力制御部104へ入力されて、エンジン2の燃費が最適となるような要求エンジントルクtTe(目標エンジントルク)と要求入力軸回転数tNi(=目標エンジン回転数Neで無段変速機5の目標入力軸回転数を示す)が、要求エンジントルク演算部と要求入力軸回転数演算部でそれぞれ算出され、要求エンジントルクtTeはエンジン制御コントローラ11に、要求入力軸回転数tNiは変速制御コントローラ12にそれぞれ入力されて、エンジン制御コントローラ11はエンジン2の図示しない電子制御スロットルの駆動や燃料噴射制御や点火時期制御により、アクセルペダル踏み込み量APSに係わらず要求エンジントルクtTeを実現するとともに、変速制御コントローラ12は、要求入力軸回転数tNiに応じた変速比となるように図示しない変速機構を制御する。
【0038】
ここで、上記駆動力制御コントローラ10で行われる駆動力制御の一例について、図4のフローチャートを参照しながら以下に詳述する。なお、図4のフローチャートは、所定時間毎に実行されるものである。
【0039】
まず、ステップS1では、上記図2に示した各種センサからアクセル踏み込み量APS、エンジン回転数Ne、入力軸回転数Ni、充電状態SOC等の情報を読み込んでから、ステップS2で、目標駆動力Fdの演算を行う。
【0040】
目標駆動力Fdの演算は、例えば、車速VSPとアクセル踏み込み量APSから、図5に示すように、予め設定したマップf1に基づいて演算する。
【0041】
次に、ステップS3では、バッテリ8の充電状態SOCに基づいて、バッテリ8が放電可能な出力または充電のために必要な入力を、予め設定したマップ(図示せず)より電池要求馬力Wbを演算する。なお、電池要求馬力Wbは、バッテリ8の温度や運転状態を加味して演算してもよい。
【0042】
そして、ステップS4では、ステップS3で求めた電池要求馬力Wbを車速VSPで除したものを、
Fdm=Wb/VSP ………(1)
モータジェネレータ1、4の要求駆動力Fdmとして演算する。
【0043】
次に、ステップS5では、上記ステップS2で求めた目標駆動力Fdから電池要求馬力Wbを差し引いたものを、エンジン2の要求駆動力Fdeとして演算する。
【0044】
ステップS6では、上記ステップS5で求めたエンジン2の要求駆動力Fdeと、車速VSPに基づいて、図6に示すように、予め設定したマップに基づいて、無段変速機5の要求入力軸回転数tNi、すなわち、目標とするエンジン回転数Neを演算する。
【0045】
さらに、ステップS7では、図7に示すように、等燃費線に対応するエンジントルクTeとエンジン回転数Ne(=要求入力軸回転数tNi)のマップにおいて、予め設定した最適燃費線(等馬力線上で最も燃料消費率が低い点を結んだ線)上で、上記ステップS6で求めたエンジン回転数Neに対応するエンジントルクTeを要求エンジントルクtTeとして演算する。
【0046】
ここで、駆動系の伝達損失を無視すれば、車速VSPと駆動力Fdの関係は、図8に示すように、等馬力線(車軸馬力)で表され、各等馬力線に相当する車軸馬力を実現可能なエンジン2の動作範囲のうち、燃費最適(最少燃費)となるものは、図7に示した最適燃費線と交差する等馬力線上にあり、この車軸馬力に相当する点は1点であるため、エンジントルクTeとエンジン回転数Neの関係は一意で対応することになり、したがって、目標駆動力Fdeと車速VSP及び最適燃費線から要求入力軸回転数tNiと要求エンジントルクtTeを容易に求めることができる。
【0047】
そして、図6に示した、駆動力Fdに応じた車速VSPと要求入力軸回転数tNi(=エンジン回転数Ne)のマップは、図8に示した車軸馬力に応じた車速VSPと駆動力Fdのマップを、等駆動力線上の車速VSPと要求入力軸回転数tNiの関係に変換したものである。
【0048】
ここで、最適燃費線、等馬力線、等駆動力線と駆動力Fd、車速VSP、エンジン回転数Ne(要求入力軸回転数tNi)の相対関係は、図9に示すようになる。
【0049】
図9において、いま、車速VSP=VSP1のときに、目標駆動力Fdeが与えられると、図中車速VSP−駆動力Fdの平面(マップ)上で点αとなり、要求される車軸馬力は、この点αを通る等馬力線である。
【0050】
この点αの状態を実現する最も燃費の良いエンジン2の動作点は、点αを通る等馬力線が、エンジン回転数Ne−エンジントルクTeのマップ上で最適燃費線と交差する点aであり、この点aは等馬力線と最適燃費線が交差する唯一の点で、この点aから目標とするエンジン回転数Ne1と、エンジントルクTe1が得られ、これらを目標値としてエンジン2と無段変速機5を制御すれば、現在の運転状態において最適な燃費で目標駆動力Fdeを実現することができる。
【0051】
そして、車速VSPと駆動力Fdの関係は、図中車速VSP−エンジン回転数Neの平面上で、等駆動力線をパラメータとしたマップとして表現することができ、この平面が図6に示した車速VSPと要求入力軸回転数tNiのマップであり、図9における点α、点aは、車速VSP−エンジン回転数Neの平面上の点a’となって、目標とする駆動力Fdeと車速VSPから目標とするエンジン回転数Ne、すなわち、要求入力軸回転数tNiを求めることができる。
【0052】
ここで、図6に示した車速VSPと要求入力軸回転数tNiのマップの求め方について詳述する。
【0053】
各エンジン馬力毎に、燃費が最適となる運転条件は、図7に示したエンジン回転数Ne−エンジントルクTeのマップの等燃費線より、燃費が最少となる点の列として、最適燃費線を得ることができる。
【0054】
次に、図8に示した車速VSP−駆動力Fdのマップ上で、各エンジン馬力毎の等馬力線に相当する車軸馬力を実現する最適燃費のエンジン2の動作点は、図7に示した最適燃費線上の1点である。
【0055】
なぜならば、駆動力Fd、車速VSP、エンジン回転数Ne、エンジントルクTeの関係は、パワートレイン系の伝達損失を無視すれば、
Fd×VSP=Te×Ne ………(2)
と表現される。
【0056】
この(2)式において、右辺はエンジン馬力を表すが、その中で燃費が最適となる点は、最適燃費線上の1点であるからである。
【0057】
したがって、図8のマップに示した等馬力線は、等燃費最適エンジン回転線ということになる。そこで、図6のように、任意の駆動力Fdに対して各車速VSP毎の燃費最適エンジン回転の変化を求めると、エンジン2の目標駆動力Fdeと車速VSPから、目標駆動力Fdeを最適燃費で実現するためのエンジン回転数Ne、すなわち、要求入力軸回転数tNiを求める特性が、図5のように得られる。
【0058】
このような駆動力制御にモータジェネレータ1、4を加えた場合、モータジェネレータ1、4の回転数をNm、モータジェネレータ1、4のトルクをTmとしたとき、パワートレイン系の伝達損失を無視すれば、エネルギ保存則より、
Fd×VSP=Te×Ne+Tm×Nm ………(3)
となる。これより、
Te×Ne=(Fd−Tm×Nm/VSP)×VSP ………(4)
となる。
【0059】
したがって、バッテリ8からの電池要求馬力Wbを車速VSPで割った商を、目標駆動力Fdから差し引いて合成した目標駆動力、すなわち、エンジン2の目標駆動力Fdeとし、この目標駆動力Fdeを上記した駆動力制御に与え、また、バッテリ8の要求馬力Wbを実現するようにモータジェネレータ制御コントローラ13がモータジェネレータ1、4を制御すれば、目標駆動力Fdはエンジン2の燃費が最適となるエンジン回転数Neに設定され、かつ、バッテリ8の要求馬力Wbを満たすようにモータジェネレータ1、4が作動してバッテリ8の充放電が行われる。
【0060】
そして、上記合成した目標駆動力は、バッテリ8が充電を要求しているときには、エンジン2への要求駆動力が増大し、バッテリ8が放電を要求しているときにはエンジン2への要求駆動力が減少するように、符号を調整すればよく、例えば、バッテリ8が充電を要求しているときには、電池要求馬力Wbの符号を負に、バッテリ8が放電を要求しているときには、電池要求馬力Wbの符号を正に設定する。
【0061】
こうして、目標駆動力Fdと電池要求馬力Wbに基づいて求めたエンジン2の目標駆動力Fdeより、図6のマップから要求入力軸回転数tNiを、図7のマップから要求エンジントルクtTeを求め、エンジン2のトルクTeと無段変速機5の変速比を制御することにより、運転状態に応じた目標駆動力Fdとバッテリ8の要求馬力Wbを実現しながら、エンジン2を燃費が最適となるように運転することが可能となって、ハイブリッド車両の燃費性能を向上させることが可能となるのである。
【0062】
図10は第2の実施形態を示し、前記第1実施形態の駆動力制御部104の構成を変更したもので、その他は、前記第1実施形態と同様である。
【0063】
駆動力制御部104では、要求入力軸回転数tNiの演算を前記第1実施形態と同様にして、図6のマップより車速VSPと目標駆動力Fdeに応じた要求入力軸回転数tNiを演算する一方、要求エンジントルクtTeの演算を、要求入力軸回転数tNiに基づく目標変速比より行うようにしたものである。
【0064】
目標変速比をtRTOとすると、車速VSPを無段変速機5の出力軸回転数相当値とすると、
tRTO=tNi/VSP ………(5)
で表される。目標変速比RTOを達成するときの要求エンジントルクtTeは、
tTe=Fde/tRTO ………(6)
として、簡易な演算によって求めることができ、駆動力制御コントローラ10の演算負荷を低減するとともに、制御内容を簡素にすることができる。
【0065】
図11は第3の実施形態を示し、前記第2実施形態の駆動力制御部104の構成を変更したもので、その他は、前記第2実施形態と同様である。
【0066】
駆動力制御部104では、要求入力軸回転数tNiの演算を前記第1実施形態と同様にして、図6のマップより車速VSPと目標駆動力Fdeに応じた要求入力軸回転数tNiを演算する一方、要求エンジントルクtTeの演算を実際の変速比である実変速比rRTOに基づいて求めるようにしたものである。
【0067】
現在の実変速比rRTOは、入力軸回転数Niを無段変速機5の出力軸回転数相当値である車速VSPで割った商で、rRTO=VSP/Niより演算できる。
【0068】
そして、要求エンジントルクtTeは、エンジン2の目標駆動力Fdeを実変速比rRTOで割った商であり、演算内容をさらに簡素にすることができるのに加え、要求エンジントルクtTeを実変速比rRTOより求めたため、無段変速機5に変速の遅れが生じた場合、要求エンジントルクtTeも遅れを補償するように増減することから、無段変速機5の変速遅れの補償も同時に行うことが可能となって、変速制御の精度を向上させることができる。ただし、変速が遅れている期間に関しては、変速遅れに応じて要求エンジントルクtTeが変動した分、最適燃費線からずれるため、エンジン2の運転条件は最適燃費を実現することはできない。
【0069】
なお、上記実施形態において、モータジェネレータが2つある場合の一例を示したが、モータジェネレータの数に係わらず、各モータジェネレータの要求駆動力の総和が電池要求馬力Wbとなり、図12に示すように、n個のモータジェネレータとモータジェネレータ制御コントローラ13a〜13nから構成される場合、各モータジェネレータの要求駆動力Fdm1〜Fdmnの総和が電池要求馬力Wbとなって、上記と同様に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すハイブリッド車両の概略構成図。
【図2】同じくコントローラの概略構成図。
【図3】同じく駆動力制御の概念図。
【図4】駆動力制御の一例を示すフローチャート。
【図5】アクセルペダルの踏み込み量APSをパラメータとした車速VSPと駆動力Fdの関係を示すマップである。
【図6】駆動力Fdをパラメータとした車速VSPと要求入力軸回転数tNiの関係を示すマップである。
【図7】最適燃費線と等馬力線の関係を示すエンジン回転数NeとエンジントルクTeのマップである。
【図8】車速VSPと駆動力Fdに応じた車軸馬力の関係を示すマップである。
【図9】車速VSPと駆動力Fdに応じた等馬力線と最適燃費線及びエンジントルクTeエンジン回転数Neの関係を示すマップの概念図である。
【図10】第2の実施形態を示し、駆動力制御の概念図。
【図11】第3の実施形態を示し、駆動力制御の概念図。
【図12】他の実施形態を示し、駆動力制御の概念図。
【符号の説明】
1、4 モータジェネレータ
2 エンジン
5 無段変速機
8 バッテリ
9 インバータ
10 駆動力制御コントローラ
Claims (9)
- エンジンに連結されて油圧制御装置を備えた自動変速機と、
運転状態または運転操作に応じて目標駆動力を演算する目標駆動力設定手段と、
前記目標駆動力と車速に基づいて、最適燃費を達成可能な目標エンジントルクと自動変速機の目標入力軸回転数を制御する駆動力制御手段とを備えた車両の駆動力制御装置において、
駆動輪またはエンジンに連結されて車両の推進、エンジンの始動または発電を行うモータジェネレータと、
前記モータジェネレータと電気的に結合され電力の授受を行うバッテリと、
運転状態またはバッテリの状態に基づいて、バッテリが充電または放電すべき仕事を要求馬力として演算するバッテリ要求馬力設定手段と、
前記バッテリの要求馬力を車速で割った商に基づいてモータジェネレータを駆動または発電するよう制御するモータジェネレータ制御手段と、を備え、
前記駆動力制御手段は、
前記バッテリの要求馬力を車速で割った商を前記目標駆動力から差し引いてエンジンの目標駆動力を演算するエンジンの目標駆動力設定手段と、
前記エンジンの目標駆動力に基づいて最適燃費となるエンジンの動作点を求め、この動作点から前記目標エンジントルクと自動変速機の目標入力軸回転数をそれぞれ設定する目標値設定手段とを備えたことを特徴とする車両の駆動力制御装置。 - 前記目標駆動力合成手段は、バッテリの放電またはモータジェネレータの駆動が行われる場合には合成した目標駆動力を減少する一方、バッテリの充電またはモータジェネレータの発電が行われる場合には合成した目標駆動力を増大することを特徴とする請求項1に記載の車両の駆動力制御装置。
- 前記目標値設定手段は、エンジン回転数と負荷の特性から予め設定されて燃料消費率が最少となる最適燃費点列または最適燃費線に基づいて、前記合成した目標駆動力と車速から目標入力軸回転数を設定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の車両の駆動力制御装置。
- 前記目標値設定手段は、予め設定した駆動力に対する車速と入力軸回転数の特性曲線またはマップに基づいて目標入力軸回転数を演算することを特徴とする請求項3に記載の車両の駆動力制御装置。
- 前記目標値設定手段は、エンジン回転数と負荷の特性から予め設定されて燃料消費率が最少となる最適燃費点列または最適燃費線に基づいて、前記合成した目標駆動力と車速から目標エンジントルクを設定することを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかひとつに記載の車両の駆動力制御装置。
- 前記目標値設定手段は、予め設定した駆動力に対する車速と入力軸回転数の特性曲線またはマップに基づいて目標エンジントルクを演算することを特徴とする請求項5に記載の車両の駆動力制御装置。
- 前記駆動力に対する車速と入力軸回転数の特性曲線またはマップは、前記最適燃費線上のエンジン動作点を、駆動軸換算の馬力に変換した等馬力線によって予め設定されたことを特徴とする請求項4または請求項6に記載の車両の駆動力制御装置。
- 前記目標値設定手段は、目標入力軸回転数に応じた目標変速比と前記合成した目標駆動力から目標エンジントルクを設定することを特徴とする請求項1に記載の車両の駆動力制御装置。
- 前記目標値設定手段は、実際の入力軸回転数に応じた実変速比と前記合成した目標駆動力から目標エンジントルクを設定することを特徴とする請求項1に記載の車両の駆動力制御装置。
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