JP3997569B2 - 建築用ガラス板の端部加工方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はガラス板端部の研磨加工方法に関し、より詳細には建築用ガラス板の端部加工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
ガラス板を切断した後切断端面を研削していない状態では、ガラスエッジに応力が負荷されると稜部(ガラス平面と切断端面との間の境界の角部)、特に切断の際にホイールカッターやダイヤモンドカッターで切線(切断溝)を入れた部分に応力が集中し破壊の要因となる。また、10mmを超える厚板ガラスは切断時に切断端面がガラス平面に対して垂直な面にならず斜めに切断される場合がある。
【0003】
特に端面が露出するガラス扉等に用いる建築用のガラス板においては、端面の仕上りを十分良好にするとともに十分な強度を保つ必要がある。
【0004】
そこで従来より、特に建築用のガラス板を製造する場合、強度や外観品質を十分に向上させるために、砥粒径の異なる複数の砥石を用いてガラス板の端部を研磨加工していた。
【0005】
図4は従来のガラス板端部の研磨加工方法の説明図である。
研磨すべきガラス板1が矢印Aの方向に搬送され、その搬送路に沿って、複数個(図の例では6個)の端面研磨用カップ型砥石2および端面両側の稜部研磨用の2個のカップ型砥石2a、2bが連続的に一直線上に配設される。複数個並んだ端面研磨用の砥石2は、ガラス表面に対し端面を垂直な面とするために、平均砥粒径が大きく研削効率の高い#80番(平均砥粒径230μm)の砥石が最初に配設され、この後順番に砥粒径を小さくして、例えば#100番(平均砥粒径190μm)、#120番(平均砥粒径160μm)、#140番(平均砥粒径140μm)、#170番(平均砥粒径120μm)と並べ、最後に必要とする仕上げ面(粗摺り仕上げ、磨き仕上げ、つや出し仕上げ等)に応じた砥粒径の番手の砥石が配設される。図は粗摺り仕上げ用の#200番(平均砥粒径100μm)の砥石を用いている。なお、磨き仕上げでは#500番(平均砥粒径45μm)、つや出し仕上げでは#800番(平均砥粒径30μm)の砥石が通常用いられる。
【0006】
このような端面研磨用の複数の砥石2の後に、2個の稜部研磨用の砥石2a、2bがそれぞれ稜部を研磨するように回転軸を傾斜させて配置される。これらの稜部研磨用の砥石2a、2bとしては#270番(平均砥粒径65μm)の砥石が用いられている。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記した従来のガラス板端部の加工方法では、図5に示すように、最初に平均砥粒径の大きな砥石(#80番、#100番等)2でガラス板の端面1aが研磨されるため、この端面1aに、平均砥粒径が小さな砥石2の場合に比べ大きなクラック(研磨きず)が発生する。このクラックの一部は、後続の平均砥粒径が小さな砥石2で研磨した際にその砥粒が衝突し、小さな砥粒によるクラックが重畳する状態となって、クラックがさらに深く進行して端面1aの内部に残留する。これらの深いクラックは、ガラスエッジの強度品質を低下させる。
【0008】
さらに、このような端面研磨によるクラックのなかで、特に稜部1b近傍のクラックは、稜部1bの研磨時に砥粒の衝突によりクラックがさらに深く進展して強度品質をさらに低下させる。このような深いクラックがあると、ガラス板1に大きな応力が作用したときに、このクラックを起点としてガラス板1が破壊する原因となる。
【0009】
一方、ガラス板1のエッジ強度を増大させることを目的として、ガラス板の端面を曲面形状に研磨した熱強化ガラスが提案されている(特開平9−71429号公報)。しかしながら、この公報記載のガラス板の端部研磨方法では、特殊な曲面形状の研磨ホイールを用いなければならず、新たなホイール製造が面倒になりエッジの加工コストやその品質管理コストも増加する。
【0010】
本発明は上記従来技術の欠点に対処してなされたものであって、簡単な構成でガラス板端部の研削・研磨加工の面積を少なくしてガラス破壊の原因となるクラックの発生を抑え、ガラス板端部の強度を高めたガラス板端部の加工方法の提供を目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するため、本発明では、所定寸法にガラス板を切断した後に、ガラス板切断端面を切断した状態のままで研削せずに、前記端面両端側の稜部のみを、平均砥粒径が50μm以下の砥石のみを用いて研磨し、前記稜部の表面凹凸を最大0.003mm以下に仕上げ、前記端面は加工が行われないことを特徴とする建築用ガラス板の端部加工方法を提供する。
【0012】
この方法によれば、ガラス板の端面を研削することなく稜部のみが研磨され、ガラス板端部の研削・研磨加工の面積を少なくしてガラス破壊の原因となるクラックの発生を抑え、ガラス板端部の強度を高めることができる。
【0013】
この場合、前記稜部のみを、平均砥粒径が50μm以下の砥石を用いて研削し、前記稜部の表面凹凸を最大0.003mm以下に仕上げることが好ましい。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、図面に従って本発明の実施の形態に係るガラス板端部の加工方法を説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施の形態に係るガラス板端部のカップ形砥石を用いた加工方法による研磨状態の概略断面図である。図2は、本発明の別の実施の形態に係るガラス板端部の筒状砥石を用いた加工方法による研磨状態の概略断面図である。図3は、本発明のさらに別の実施の形態に係るガラス板端部のバフ磨きを用いた加工方法による研磨状態の概略断面図である。
【0016】
図1において、ガラス板1は所定寸法に切断され、そのうち端面1aを切断加工したままの状態で研削しない。なお、本発明において上記の切断加工したままの状態とは、研削加工が施されていないことを意味するものであって、研削とは直接関係ない処理、例えばガラス板の施工のための接着工程等の処理を必要に応じて端面1aに施したもの等は、上記状態に含むものとする。
【0017】
稜部研磨面1dは、研削されていないガラス板の端面の両端に位置する稜部が研磨されて形成される。稜部研磨面1dは、端面1aに対して傾斜しており、稜部研磨面1dと端面1aとのなす角βは、120°≦β≦150°であることが好ましい。したがってガラス板表面1cと稜部研磨面1dとのなす角αは、120°≦α≦150°であることが好ましい。
【0018】
稜部研磨面1dの端面1a側への投影幅Hの大きさは、ガラス板の厚みに応じて適宜決定されるが、ガラス板の切断時における切線を入れる工程により生ずるクラックを考慮して、H≧1mmが好ましい。
【0019】
本発明は、図4の従来技術における端面研磨用の6個の砥石2を省略し、稜部研磨用の2個の砥石2a、2bのみを用いることが好ましい。
【0020】
すなわち、図1に示すように、ガラス板1は、ホイールカッター等でガラス平面1cに切線(切断溝)を入れ切断した場合に強度的に最も弱い部分(ホイールカッターによる亀裂が残留している部分)となるガラス板の稜部のみが、砥石により研磨される。具体的には、平均砥粒径が50μm以下、望ましくは45μm以下、砥石番手で表記すると#400番以上、望ましくは#500番以上の砥粒層3を円盤4上に装着し、その中心に回転軸5を設けたカップ形砥石2aを用い、その回転軸5を端面1aに対し傾斜させて、稜部1b(ガラス板の表面1cと端面1aとの間の境界の角部、図5参照)のみを研磨する。この研磨工程を経た稜部研磨面1dは、表面凹凸の最大が0.003mm以下に仕上げられるので、研磨表面に発生するクラックも小さくなり、ガラスエッジに荷重が付加した場合の応力集中を少なく抑えることができる。端面1aは、加工が行われないため研削によるクラックは存在せず、稜部研磨面1dよりも高い強度を有する。
【0021】
この研磨工程は、上述したカップ形砥石2aを用いた研磨方法に限定されるものではなく、例えば、図2に示すように、円筒の両端側に円錐状の砥粒層3を設け、この砥粒層3を被加工物であるガラス板1の稜部1bに接触させて研磨を行う筒状砥石6を用いた研磨方法や、図3に示すように、研磨用ベルト7の外周面を被加工物であるガラス板1の稜部1bに接触させて研磨するバフ研磨方法、またはこれらを併用する研磨方法により行ってもよい。何れの場合にも、前述の本発明の実施の形態による稜部1bの研磨を行って稜部研磨面1dの表面凹凸の最大値が0.003mm以下に仕上げられ、端面1aは全く加工されていなければよい。
【0022】
【実施例】
以下本発明のさらに具体的な実施例について説明する。
呼称厚8mmのフロートガラスに対し、送り速度0.7m/min、砥石回転数1000rpmで、以下のように1つの実施例サンプルと、強度比較用のための2つの比較例サンプルを加工した。なお、各サンプルは、それぞれ同じ仕様のものを60枚用意し、これらを以下に示す強度評価に供した。
【0023】
実施例:
平均砥粒径が45μm(#500番)のカップ形砥石を利用してガラス板の稜部のみ研磨仕上げした。
【0024】
比較例1:
平均砥粒径を230μm(#80番)から段階的に細かくしていき最終的に45μm(#500番)のカップ形砥石を利用して端面を研磨し、その後に平均砥粒径が45μm(#500番)のカップ形砥石を利用して稜部を研磨仕上げした。
【0025】
比較例2:
ガラスエッジに研磨および研削を施していない切り放し品。
【0026】
研磨後、強度評価のために各サンプルの加工辺を長辺とした長さ100cm、高さ10cmのフロートガラスを各条件毎に60枚用意した。強度実験は、室温16〜21℃、相対湿度45〜55%の条件で、サンプルの加工辺の中央30cm部分に均一な引張り応力を載荷できる荷重スパン30cm、支持スパン90cmの4点曲げ試験によって行った。各サンプルの最大高さの測定は、JIS B0601に準拠して行った。それらの結果を表1に示す。また強度実験での各条件の破壊起点の割合を表2に示す。
【0027】
【表1】
【0028】
【表2】
【0029】
表1からわかるように、稜部のみ#500番で研磨を行った実施例の場合、切り放し品(比較例2)と比べ、平均破壊応力値で160kgf/cm2 増加(1.34倍)し、破壊応力3σn-1 下限値でも76kgf/cm2 増加(1.19倍)した。
【0030】
なお、3σn-1 下限値は、1/1000の破壊確率を意味するもので、3σn-1 下限値で示す応力がガラス板に与えられた場合に、約1000枚のうち1枚のガラス板に割れが発生することを意味する。
【0031】
また、従来の加工方法により、端面を段階的研磨後#500番で仕上げ、稜部を#500番で仕上げた比較例1の場合、切り放し品(比較例2)と比べ、平均破壊応力は51kgf/cm2 の増加(1.11倍)にとどまり、破壊応力3σn-1 下限値では47kgf/cm2 の強度低下(0.88倍)を確認した。
【0032】
また、表2からわかるように、端面を段階的研磨後#500番で仕上げ、稜部を#500番で仕上げた従来例である比較例1の場合、破壊起点の92%が端面であるが、稜部のみ#500番で研磨を行った実施例の場合は、稜部の研磨面で100%破壊していた。切り放し品(比較例2)の場合は、切断時にホイールカッターで亀裂を入れた所が破壊起点になった。
【0033】
すなわち、ガラス板の破壊は、加工により発生するクラックが原因であり、しかも粗い砥石を最初に用いる端面からの破壊が稜部からの破壊よりも多いことがわかる。従来技術によって端面を研磨した場合、そのことによって端面に大きなクラックが生じ、結果としてエッジ強度を低下させている。これに対し本発明によって稜部のみ研磨した場合は、端面が研磨されず、したがって大きなクラックは発生せず、切り放し品の場合に強度が相対的に弱くなる稜部を取り除くようにこの稜部のみが細かい砥石で研磨されるため、小さなクラックしか発生せず飛躍的にエッジ強度を増加させることができる。
【0034】
また、加工装置についてみると、稜部のみ研磨する場合、表面および裏面の稜部を研磨する砥石と駆動用モータが装備されていればよく、端面の加工のための砥石と駆動用モータが必要ないため、装置の小型化とともに設備の稼働コストの低減を図ることができる。
【0035】
また、上述した研磨による、端面の両側のガラス板の表面と稜部研磨面とのなす角αおよび端面と稜部研磨面とのなす角β(図1参照)は、ともに120°から150°の範囲とすることが強度上好ましい(なお、αまたはβの一方が120〜150°であれば他方は必然的に150〜120°となる)。また、稜部研磨面の端面側への投影幅Hは1mm以上とする。これにより、強度低下を伴う端面研磨を施すことなく端部を良好に仕上げることができ、ガラスエッジの強度を高めるとともに外観を向上させることができる。
【0036】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、ガラス板の端面を研磨することなく稜部のみを研磨することによって、エッジ強度を向上させることが可能となる。また、端面の加工を行わずに済むため、加工装置は稜部の研磨設備のみでよく、装置の小型化とともに設備の稼働コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るガラス板端部の加工方法による研磨状態の概略断面図。
【図2】本発明の別の実施の形態に係るガラス板端部の加工方法による研磨状態の概略断面図。
【図3】本発明のさらに別の実施の形態に係るガラス板端部の加工方法による研磨状態の概略断面図。
【図4】従来のガラス板端部の研磨加工方法の砥石の配置構成図。
【図5】図4の研磨加工方法による研磨状態の概略断面図。
【符号の説明】
1:ガラス板
1a:端面
1b:稜部
1c:表面
1d:稜部研磨面
2、2a、2b:カップ型砥石
3:砥粒層
4:円盤
5:回転軸
6:筒状砥石
7:研磨用ベルト
Claims (1)
- 所定寸法にガラス板を切断した後に、ガラス板切断端面を切断した状態のままで研削せずに、前記端面両端側の稜部のみを、平均砥粒径が50μm以下の砥石のみを用いて研磨し、前記稜部の表面凹凸を最大0.003mm以下に仕上げ、前記端面は加工が行われないことを特徴とする建築用ガラス板の端部加工方法。
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