JP3997411B2 - 排水性舗装の機能回復装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、排水性舗装の機能回復装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
排水性舗装とは、走行面に排水可能な空隙を有する舗装をいう。かかる排水性舗装は、降雨時に雨水を空隙を通して排水することにより、走行車両のハイドロプレーニング現象を防止するとともに、車両走行時のタイヤの騒音を低減する機能も併せもっている。
【0003】
しかし、かかる排水性舗装は長期間の使用により走行面の空隙に土砂や粉塵等が詰まり、排水性能、騒音低減性能等が低下する。そこで、排水性舗装の機能を回復する手段が種々、提案されている。
従来、提案されている機能回復手段は、ブラシ、超音波振動、高圧水等を用いた物理的手段と、界面活性剤等を用いた化学的手段とに大別される。このうち、最も効果的な手段は、高圧水を用いた手段であると考えられている。
【0004】
図5は、高圧水を用いた排水性舗装の機能回復装置の代表的な模式図である。この例では、排水性舗装1に向けてポンプ52とノズル53で高圧水54を噴射し、この圧力で浮き上がった空隙詰まり物と水を吸引手段55で吸引し、これをサブタンク56を介して汚水タンク57aに回収するものである。なお、この図で、57bは清水タンク、58はサブタンク56内を減圧するためのブロアである。
【0005】
図6は、同様に高圧水を用いた排水性舗装の機能回復装置の別の例である。この装置は、[特許文献1]の「舗装の目詰まり物の除去装置」に開示されたものであり、排水性舗装1の表面に向けて配置された第1噴射ノズル53aと、その噴射方向の延長線と舗装表面より下方で交差するように舗装表面に向けて配置された第2噴射ノズル53bとを有し、圧力水54を噴射する噴射手段と、舗装表面に浮き上がった空隙詰まり物を水と共に吸引する吸引手段55とを備え、同時に振動体59により圧力水54に振動を付与するものである。
【0006】
【特許文献1】
特開平9-100519号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、この装置では、密閉状態に近づけた洗浄空間をブロア、真空発生装置等の吸引手段55で減圧して、舗装表面に浮き上がった空隙詰まり物を水と共に吸引して洗浄水を回収している。
【0008】
しかし、そのため、以下の問題点があった。
(1)吸引のため大がかりな吸引装置(ブロア、真空発生装置等)が必要であり、装置の製造コストが高い。また、吸引装置の運転動力が大きく、そのためランニングコストも高い。
(2)吸引装置の性能を維持するために、洗浄空間を密閉状態に近づける必要があり、そのシールのため低速(例えば1km/h以下)で運転しなければならない。また、たとえ密閉状態が良好であっても、空隙詰まり物を含んだ水を吸引するには、ある程度の吸引時間が必要であるため、低速運転により単位面積あたりの吸引時間を確保しなければならない。その結果、この装置で排水性舗装の機能回復を実施する際には、車道の交通規制が不可欠となる。
また、交通規制を回避するために、例えば6km/h以上の速度で装置を移動させると、洗浄空間の気密性能が低下し、単位面積あたりの吸引時間も短くなるので、十分な機能回復を行うことができなくなる。
【0009】
上述した問題点を解決するために、本発明の出願人は先に、「排水性舗装の機能回復装置」を創案し出願した(特願2001-154861、未公開)。
この装置は、図7に模式的に示すように、移動可能なフレームに、排水性舗装1の表面に対して斜めに洗浄水54を噴射する噴射ノズル62と、該洗浄水が舗装表面で反射して飛び上がる位置に設けられた、路面を反射して飛び上がった該洗浄水を捕捉するための槽を有する洗浄水回収装置64とを備えたものであり、洗浄水自体の運動エネルギーにより洗浄水を舗装表面に浮き上がった空隙詰まり物と共に洗浄水回収装置64に導くことができる。
【0010】
しかし、この装置で浮き上がった空隙詰まり物と共に洗浄水を回収し再利用すると、回収水に含まれる粗粒を吸引できる特殊な水ポンプが必要となり、水ポンプが大型で高価となる問題点があった。また、吸引した粗粒及び細粒により、途中のフィルターの目詰まりが激しく、フィルター洗浄や交換に手間がかかり装置の稼働率が低下する問題点があった。
【0011】
本発明は、上述した種々の問題点を解決するために創案されたものである。すなわち本発明の目的は、交通規制が不要な速度で、排水性舗装を洗浄することができ、かつその洗浄水を高価な真空ポンプを用いることなく、フィルター等の洗浄や交換に手間がかからず、低コストかつ低ランニングコストで回収し再利用することができる排水性舗装の機能回復装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明によれば、洗浄水を内部に保有する洗浄水タンクと、該洗浄水タンク内の洗浄水を加圧して噴射ノズルから排水性舗装の表面に対して斜めに噴射する吐出ポンプと、舗装表面で反射した洗浄水をその運動エネルギーで上方に導く傾斜案内板と、該傾斜案内板により回収した洗浄水を内部に貯める回収樋と、該回収樋から粒子を含む洗浄水を洗浄水タンクに回収する回収ポンプとを備え、前記回収樋は、回収ポンプで吸引できない大きさの粗粒を分離・回収する回収カートリッジを有し、該回収カートリッジは、回収樋から着脱可能に構成されている、ことを特徴とする排水性舗装の機能回復装置が提供される。
【0013】
上記本発明の構成によれば、噴射ノズルが排水性舗装の表面に対して斜めに洗浄水を噴射するので、傾斜案内板で舗装表面で反射した洗浄水をその運動エネルギーで上方に導くことで、洗浄水自体の運動エネルギーにより洗浄水を舗装表面に浮き上がった空隙詰まり物と共に回収樋に導くことができる。
また、吐出ポンプと汎用性の高い安価な回収ポンプのみで、洗浄水を噴射しかつ回収して再利用できるので、高価な真空ポンプを用いることなく、低コストかつ低ランニングコストで回収し再利用することができる。
さらに、洗浄水をその運動エネルギーを利用して回収するので、洗浄空間の減圧が不要となり、交通規制が不要な速度(例えば、6km/h以上)で装置を移動させても、回収効率の低下を防止することができる。
【0015】
また、回収ポンプに悪影響を与える大きさの粗粒を回収カートリッジで分離・回収するので、回収ポンプに汎用性の高い安価なポンプ(例えば汎用排水ポンプ)を用いることができ、低コスト化ができる。
また、この回収カートリッジを回収樋から分離し、内部の粗粒を排出することで、比率の高い粗粒を簡単に処理でき、細粒用のフィルター等の目詰まりを低減し、洗浄や交換の手間を大幅に低減できる。
【0016】
前記回収カートリッジは、上方が傾斜案内板から導かれる洗浄水を受けるように開口し水平に延びた矩形容器であり、その外面に前記粗粒が通過できない大きさの開口が多数設けられている。
【0017】
この構成により、回収カートリッジに導入された洗浄水は、自重により開口を通って回収樋内に回収され、粗粒のみが回収カートリッジに残る。従って、回収カートリッジを回収樋から単に取り出し、逆さまにするだけで内部の粗粒を排出することができる。
【0018】
また前記回収ポンプと洗浄水タンクの間に、遠心セパレータとフィルター装置を備え、噴射ノズルに適用できない大きさの細粒を分離回収する。
【0019】
この構成により、遠心セパレータの遠心分離作用により、細粒の大部分を回収でき、フィルター装置の負荷を大幅に低減できる。
また、フィルター装置を備えることにより、遠心セパレータで回収できないわずかの細粒を確実に分離回収でき、噴射ノズルの摩耗や劣化を確実に防止することができる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好ましい実施形態を図面を参照して説明する。なお、各図において、共通する部分には同一の符号を付し重複した説明を省略する。
【0021】
図1は、本発明の機能回復装置を搭載した車両の全体構成図である。この図に示すように、本発明の排水性舗装の機能回復装置10は、移動可能な車両7に内蔵され、進行方向に移動しながら、使用するようになっている。車両7は、自走式の車両でも、牽引式、或いは手押し式の車両でもよい。また、機能回復装置10は、1台に限られず複数台を同一の車両に搭載してもよい。
【0022】
図2は図1の機能回復装置10の全体構成図である。この図に示すように、本発明の機能回復装置10は、洗浄水タンク12、吐出ポンプ14、傾斜案内板15、回収樋16、及び回収ポンプ18を備える。
【0023】
洗浄水タンク12は、洗浄水4を内部に保有する。洗浄水タンク12は、洗浄水を補給する補給口(図示せず)を有する容器であり、作業開始前に十分な量の洗浄水を内部に入れておくようになっている。内部圧力は大気圧(大気開放)であるのが好ましい。
噴射ノズル13は、吐出ポンプ14で加圧して供給された洗浄水4を、排水性舗装1の表面に対して斜めに噴射する。噴射ノズル13の列は、この例では進行方向(洗浄方向)に直交する方向に設けられている。
吐出ポンプ14は、例えばプランジャーポンプであり、噴射ノズル13に十分高い圧力(例えば20MPa)の洗浄水を供給する。
【0024】
傾斜案内板15は、洗浄水4が舗装表面で反射して飛び上がる位置に設けられ、舗装表面で反射した洗浄水をその運動エネルギーで上方に導く。傾斜案内板15はこの例では、螺旋状に巻かれた2枚の平板からなり、舗装表面で反射した洗浄水を洗浄水自体の運動エネルギーにより回収樋16内に導入されるようになっている。
【0025】
回収樋16は、傾斜案内板15により回収した洗浄水を内部に貯める容器である。また、回収樋16は、洗浄水が導入される位置に、粗粒を分離・回収する回収カートリッジ17を有する。
回収ポンプ18は、回収樋16の内部に設置され、粒子を含む洗浄水を洗浄水タンク12に回収する。回収ポンプ18は、所望の流量で十分な揚程を有する水中ポンプであるのがよい。
【0026】
図2において、本発明の機能回復装置10は更に、回収ポンプ18と洗浄水タンク12の間に、遠心セパレータ19とフィルター装置20を備えている。
遠心セパレータ19は、液体と固形物を接線方向に流入し、遠心力により粒子を分離して下方の回収ポット19aに回収し、液体部分をフィルター装置20に供給するようになっている。遠心セパレータ19の分離回収性能は、高いほど好ましいが、例えば、43ミクロン以下の粒子を98%以上の回収率で回収できるものを用いるのがよい。
なお回収ポット19a内に回収された粒子は、装置の運転終了後等に定期的に排出する。
【0027】
フィルター装置20は、濾布を用い、例えば43ミクロン以上の粒子を100%回収できるものを用いる。この濾布も、装置の運転終了後等に定期的に交換するのがよい。
【0028】
この構成により、遠心セパレータ19の遠心分離作用により、細粒の大部分を回収でき、フィルター装置20の負荷を大幅に低減できる。また、フィルター装置20を備えることにより、遠心セパレータ19で回収できないわずかの細粒を確実に分離回収でき、噴射ノズル13の摩耗や劣化を確実に防止することができる。
【0029】
図3は、本発明の回収樋と回収カートリッジの構成図である。この図において、(A)は、回収カートリッジ17を外した回収樋16の断面図、(B)は回収カートリッジ17の斜視図、(C)は回収カートリッジ17の壁面構造図である。
【0030】
図3(A)に示すように、回収樋16は回収カートリッジ17を支持する複数の水平なガイド棒16aとこれを支持するリブ板16bを内部に有する。回収樋16の一方の側面には、回収カートリッジ17を水平に挿入できる図示しない開口を有し、ガイド棒16aをガイドとして回収カートリッジ17を外部に抜き出すことができるようになっている。
また、リブ板16bには、回収樋16に回収された洗浄水が幅方向に自由に流通できるように開口16cが設けられている。
【0031】
図3(B)に示すように、回収カートリッジ17は、上方が傾斜案内板15から導かれる洗浄水を受けるように開口した水平に延びた矩形容器であり、その外面に回収ポンプ18で吸引できない大きさの粗粒が通過できない大きさの開口が多数設けられている。
【0032】
図3(C)に示すように、回収カートリッジ17の壁面構造は、この例では、多孔板17aと金網17bの二重構造である。内側の金網17bは、開口寸法が0.5mm前後(約30メッシュ)であり、回収ポンプ18で吸引できない大きさの粗粒(例えば直径1mm以上)の通過を防ぐ。また外側の多孔板17aは、直径20mm前後の開口を有する厚さ2〜3mmの金属板であり、内側の金網17bを支持するようになっている。
【0033】
図4は、本発明の回収カートリッジの使用方法を示す模式図である。この図において、(A)は、回収カートリッジ17を回収樋16に収納した状態、(B)は回収カートリッジ17の引出し中、(C)は引出した回収カートリッジ17から粗粒を排出している状態を示している。
図4(A)に示すように、機能回復装置10の使用中は回収カートリッジ17を回収樋16に収納した状態にする。この際、回収カートリッジ17と回収樋16との隙間は、図示しないパッキン等で洗浄水が漏れないようになっている。
洗浄作業により、回収カートリッジ17に導入された洗浄水は、自重により開口を通って回収樋16内に回収され、粗粒のみが回収カートリッジ17に残る。
従って、図4(C)に示すように、回収カートリッジ17を回収樋から単に取り出し、逆さまにするだけで内部の粗粒を排出することができる。
【0034】
上述した本発明の構成によれば、噴射ノズル13が排水性舗装1の表面に対して斜めに洗浄水4を噴射するので、傾斜案内板15で舗装表面で反射した洗浄水をその運動エネルギーで上方に導くことで、洗浄水自体の運動エネルギーにより洗浄水を舗装表面に浮き上がった空隙詰まり物と共に回収樋16に導くことができる。
また、吐出ポンプ14と汎用性の高い安価な回収ポンプ18のみで、洗浄水を噴射しかつ回収して再利用できるので、高価な真空ポンプを用いることなく、低コストかつ低ランニングコストで回収し再利用することができる。
さらに、洗浄水をその運動エネルギーを利用して回収するので、洗浄空間の減圧が不要となり、交通規制が不要な速度(例えば、6km/h以上)で装置を移動させても、回収効率の低下を防止することができる。
【0035】
また、回収ポンプ18に悪影響を与える大きさの粗粒を回収カートリッジ17で分離・回収するので、回収ポンプ18に汎用性の高い安価なポンプ(例えば汎用排水ポンプ)を用いることができ、低コスト化ができる。
また、この回収カートリッジ17を回収樋16から分離し、内部の粗粒を排出することで、比率の高い粗粒を簡単に処理でき、細粒用のフィルター等の目詰まりを低減し、洗浄や交換の手間を大幅に低減できる。
【0036】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更できることは勿論である。
【0037】
【発明の効果】
上述したように、本発明の排水性舗装の機能回復装置は、交通規制が不要な速度で、排水性舗装を洗浄することができ、かつその洗浄水を高価な真空ポンプを用いることなく、フィルター等の洗浄や交換に手間がかからず、低コストかつ低ランニングコストで回収し再利用することができる、等の優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の機能回復装置を搭載した車両の全体構成図である。
【図2】図1の機能回復装置の全体構成図である。
【図3】本発明の回収樋と回収カートリッジの構成図である。
【図4】本発明の回収カートリッジの使用方法を示す模式図である。
【図5】従来の排水性舗装の機能回復装置の模式図である。
【図6】従来の排水性舗装の機能回復装置の別の模式図である。
【図7】未公開の先行出願による機能回復装置の模式図である。
【符号の説明】
1 排水性舗装、4 洗浄水、7 車両、
10 機能回復装置、12 洗浄水タンク、
13 噴射ノズル、14 吐出ポンプ、
15 傾斜案内板、16 回収樋、
16a ガイド棒、16b リブ板、16c 開口、
17 回収カートリッジ、17a 多孔板、17b 金網、
18 回収ポンプ、19 遠心セパレータ、
19a 回収ポット、20 フィルター装置
Claims (3)
- 洗浄水を内部に保有する洗浄水タンクと、該洗浄水タンク内の洗浄水を加圧して噴射ノズルから排水性舗装の表面に対して斜めに噴射する吐出ポンプと、舗装表面で反射した洗浄水をその運動エネルギーで上方に導く傾斜案内板と、該傾斜案内板により回収した洗浄水を内部に貯める回収樋と、該回収樋から粒子を含む洗浄水を洗浄水タンクに回収する回収ポンプとを備え、
前記回収樋は、回収ポンプで吸引できない大きさの粗粒を分離・回収する回収カートリッジを有し、該回収カートリッジは、回収樋から着脱可能に構成されている、ことを特徴とする排水性舗装の機能回復装置。 - 前記回収カートリッジは、上方が傾斜案内板から導かれる洗浄水を受けるように開口し水平に延びた矩形容器であり、その外面に前記粗粒が通過できない大きさの開口が多数設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の排水性舗装の機能回復装置。
- 前記回収ポンプと洗浄水タンクの間に、遠心セパレータとフィルター装置を備え、噴射ノズルに適用できない大きさの細粒を分離回収する、ことを特徴とする請求項1に記載の排水性舗装の機能回復装置。
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