JP3995823B2 - ハロゲン化銀写真感光材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高感度で、かつ処理後の残色が少なく、さらには保存安定性に優れたハロゲン化銀写真感光材料に関するものであり、特にグラフィックアーツの分野に用いられる超硬調のハロゲン化銀写真感光材料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
写真製版工程には、連続調の原稿を網点画像に変換する工程が含まれる。この工程では、よりシャープな網点を形成するために、超硬調な写真特性が要求されている。この目的のため、従来よりこの工程では、いわゆるリス型伝染現像の技術が用いられてきたが、そこで用いられる現像液は極めて保恒性が悪く、近年では特開昭56−106244号に記載されたように、ヒドラジン誘導体を含有するハロゲン化銀写真感光材料を用いて超硬調の写真特性を得る方法が一般的となっている。
【0003】
さらに最近では、画像のデジタル処理の発達に伴い、従来の複雑なプロセスを経ずに、コンピューター上で集版作業を行い、比較的安価なイメージセッターで直接、最終版を形成させる方法が望まれるようになり、より簡易でメンテナンスフリーな画像形成方法が求められてきた。このようなイメージセッターで出力されたフィルムは、そのものが最終の版であるが故に、従来では実用上問題とならなかった処理後の残色が、著しい場合は次工程の印刷版の焼き付けや、色校正において問題を生じたり、着色していること自体が商品としての価値を大きく損なう原因となり、処理後の残色の少ないハロゲン化銀写真感光材料が強く求められてきた。
【0004】
このような要求に対して、残色の少ない増感色素が特開平3−171135号、同平6−313943号、同平7−287337号、特願平10−30829号等に開示されている。中でも水溶性に優れた増感色素は、その役目を終えた後、ハロゲン化銀写真感光材料を処理する間に、現像液、定着液、水洗液等の処理液中に流出し、残色の点からも望ましい。
【0005】
またこのような水溶性の増感色素を使用する利点としては、メタノールやエタノールといった有機溶媒を溶剤として用いなくて良いため、有機溶媒を多量に使用することによるゼラチン膜の物性悪化の防止や、さらには作業環境上の面からも好ましいことなどがあげられる。
【0006】
一般に増感色素の溶解性は、単に水溶性基の有無やその数によって決まるのではなく、その基本骨格や総分子量等といった複雑な要素によって決定づけられると考えられる。そのため水溶性が高く、かつ増感性の高い増感色素を見いだすためには、広範な増感色素群の中から試験を重ねていくほかはない。また、このようにして選ばれた増感色素により分光増感されたハロゲン化銀写真感光材料は、しばしば使用されるまでの保存中に感度が低下してしまい、イメージセッターによる出力で、最高濃度の低下や網点面積率の変動を引き起こし実用上重大な問題となっている。
【0007】
特にヒドラジン誘導体を含有する高コントラストハロゲン化銀写真感光材料には、数多くの酸化還元に関与する化学種がハロゲン化銀乳剤層、もしくは乳剤層に隣接する親水性コロイド層に存在するため、これらが分光増感感度の不安定さを助長することが多い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
上記のような問題に対して、本発明が解決しようとする課題は、塗布液の経時安定性、塗布後の保存安定性に優れ、かつ高感度で、処理後の残色の少ないハロゲン化銀写真感光材料を提供することにある。さらには高コントラストなハロゲン化銀写真感光材料を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の上記課題は、支持体上に少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を有し、露光後にハイドロキノンを現像主薬として含有する現像液を用いた現像工程、定着工程を経て現像処理されるハロゲン化銀写真感光材料において、該ハロゲン化銀乳剤が水に0.1重量%以上溶解する増感色素により分光増感され、かつ該乳剤層もしくは他の親水性コロイド層にスルホン酸基で置換されたハイドロキノン誘導体を含有し、且つ該乳剤層もしくは他の親水性コロイド層がハイドロキノンを含まないか、ハイドロキノンを銀1モル当たり0.003モル以下の量で含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料により達成される。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明で用いられる増感色素について詳しく説明する。本発明に用いられる増感色素は、水に0.1重量%以上溶解することを特徴とするもので、公知のシアニン、メロシアニン、複合シアニン、複合メロシアニン、スチリル、ヘミシアニン色素等から選択できるが、残色の点からも、特開平3−171135号、同平6−313943号、同平7−287337号、特願平10−30829号等に記載の水溶性の増感色素が特に好ましい。特に好ましい増感色素の具体例としては下記一般式(1)あるいは一般式(2)で表されるものである。
【0011】
【化1】
一般式(1)中、Z1は、下記一般式(A)、(B)または(C)を表す。Y1は酸素原子、イオウ原子、セレン原子またはNR11を表す。L1、L2は置換されてもよいメチン基を表す。nは1または2である。R11、R1は置換されてもよいアルキル基を表す。さらに、Z1が一般式(A)で表される場合、R1、R4の少なくとも一つ、Z1が一般式(B)で表される場合、R1、R7の少なくとも一つ、Z1が一般式(C)で表される場合、R1、R9の少なくとも一つが可水溶性基で置換されている。M1は該分子の電荷を中和するためのカウンターイオンを表す。
【0012】
【化2】
【0013】
一般式(2)中、Z2は、下記一般式(A)、(B)または(C)を表す。Y2、Y3は酸素原子、イオウ原子、セレン原子またはNR12を表す。L3、L4は置換されてもよいメチン基を表す。R12、R2、R3は置換されてもよいアルキル基を表す。さらに、Z2が一般式(A)で表される場合、R2、R3、R4の少なくとも一つ、Z2が一般式(B)で表される場合、R2、R3、R7の少なくとも一つ、Z2が一般式(C)で表される場合、R2、R3、R9の少なくとも一つが可水溶性基で置換されている。M2は該分子の電荷を中和するためのカウンターイオンを表す。
【0014】
【化3】
【0015】
一般式(A)中、Y4は酸素原子、イオウ原子、セレン原子またはNR13を表す。R13、R4は置換されてもよいアルキル基を表す。R5、R6は各々独立に水素原子、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アリール基、アシル基、アシロキシ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、カルバモイル基、スルファモイル基、カルボキシル基またはシアノ基を表す。上記置換基はさらに置換されていてもよい。さらにR5、R6は互いに結びついて脂肪族環、芳香族環を形成してもよく、その場合はR5、R6について示した置換基例中の同じか、異なっていてもよい1つ以上の置換基で置換されていてもよい。
【0016】
【化4】
【0017】
一般式(B)中、R7は置換されてもよいアルキル基を表す。R8は各々独立にアルキル基、アルケニル基、アルコキシ基、スルホ基またはハロゲン原子を表す。mは0〜4の整数を表す。mが2以上の場合、複数のR8は同じでも、異なっていてもよく、互いに連結して環を形成していてもよい。
【0018】
【化5】
【0019】
一般式(C)中、R9は置換されてもよいアルキル基を表す。
【0020】
以下に本発明に用いられる増感色素の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0021】
【化6】
【0022】
【化7】
【0023】
【化8】
【0024】
【化9】
【0025】
本発明に用いる水溶性の増感色素を、本発明のハロゲン化銀乳剤中に添加する時期は、これまで有用であることが認められている乳剤調製のいかなる工程中であってもよいが、増感色素が水溶性であることから、脱塩終了後に添加することが好ましい。例えば、脱塩後から化学熟成開始前までの時期、化学熟成直前または化学熟成工程中の時期、化学熟成後から乳剤が塗布される前までのいかなる時期、工程中において添加されてもよい。また同一化合物を単独で、または異種構造の化合物を組み合わせて、例えば化学熟成中と化学熟成完了後とに分けたり、あるいは化学熟成前と化学熟成工程中とに分けるなどして分割して添加してもよく、分割して添加する化合物および化合物の組み合わせの種類をも変えて添加してもよい。
【0026】
本発明の増感色素の添加量は、ハロゲン化銀粒子の形状、サイズにより異なるが、好ましくはハロゲン化銀1モル当たり、4×10-8〜8×10-2モル、さらに好ましくは1×10-7〜1×10-3モル、特に好ましくは1×10-5〜5×10-3モルの範囲内で用いることができる。
【0027】
本発明において用いられるスルホン酸基で置換されたハイドロキノン誘導体の具体例としては、ハイドロキノンモノスルホン酸、ハイドロキノン−2,5−ジスルホン酸、ハイドロキノン−2,6−ジスルホン酸、5−メトキシハイドロキノン−2−スルホン酸、5−メチルハイドロキノン−2−スルホン酸、5−ブロモハイドロキノン−2−スルホン酸、5−クロロハイドロキノン−2−スルホン酸、あるいはこれらの化合物のアルカリ金属塩などがあるが、特にハイドロキノンモノスルホン酸あるいはこのカリウム塩が好ましい。
【0028】
本発明の感光材料において、上記のスルホン酸基で置換されたハイドロキノン誘導体は、ハロゲン化銀乳剤層、もしくはその他の親水性コロイド層のいずれの層にも含有させることができるが、本発明の増感色素と同じハロゲン化銀乳剤層に含有させるのが好ましい。スルホン酸基で置換されたハイドロキノン誘導体の含有量は、用いられるハロゲン化銀乳剤の特性、化合物の化学構造及び現像条件によって異なるので、適当な含有量としては、ハロゲン化銀乳剤中の銀1モルに対して10-5〜1モルの範囲が実際上有用であり、10-3〜10-1モルの範囲が特に有用である。
【0029】
ハイドロキノンモノスルホン酸は現像主薬として公知のものであり、特開平4−225348号、同平6−308683号、同平8−179481号、同平8−286332号等にハイドロキノンや他の現像主薬と組み合わせて用いる方法が記載されている。またハロゲン化銀写真感光材料に、ポリヒドロキシベンゼン類は種々の目的で導入され、ヒドラジン誘導体を含むハロゲン化銀写真感光材料においても、米国特許第4,332,108号、同第4,385,108号、同第4,377,634号等に開示されている。特開昭62−21143号にはヒドラジン誘導体とポリヒドロキシベンゼン化合物を併用して、圧力増感を防止する技術が開示されている。特開平1−147536号には、ヒドラジン誘導体とポリヒドロキシベンゼン化合物、および可視域に吸収極大を持たない化合物を組み合わせて黒ポツや圧力耐性を向上させる技術が開示されている。また特開平2−124560号や同平2−216138号には特定の増感色素とヒドラジン誘導体、ポリヒドロキシベンゼン化合物を用いて圧力かぶりを防止する技術が開示されている。
【0030】
このようにハロゲン化銀写真感光材料にポリヒドロキシベンゼン化合物を導入する主な目的は、圧力カブリを防止することにあり、最も有効に作用しているポリヒドロキシベンゼン化合物はハイドロキノンであった。しかしながら処理後の残色を改良するために水溶性の増感色素を用いた場合、ハイドロキノンは空気酸化しやすく、その酸化物がこれら増感色素を分解し、分光増感感度が低下することがわかった。スルホン酸基で置換されたハイドロキノン誘導体が、ハイドロキノンと同等の圧力カブリを防止する効果を有し、かつ水溶性の増感色素に対して経時安定性や保存安定性に優れた効果を示すことは、従来技術から予想されない効果である。
【0031】
したがって本発明の目的のためには、スルホン酸基で置換されたハイドロキノン誘導体を含有させる場合、乳剤層もしくは他の親水性コロイド層にはハイドロキノンを実質的に含有しないことが好ましい。特に水溶性の増感色素と同じハロゲン化銀乳剤層には含有しないことが好ましい。ここでハイドロキノンを実質的に含有しないとは、そのハイドロキノンの含有量が銀1モル当たり0.005モル以下、より好ましくは0.003モル以下のことである。
【0032】
本発明に用いられるヒドラジン化合物について詳しく説明する。本発明に用いられるヒドラジン化合物には、米国特許第4,224,401号、同第4,243,734号、同第4,272,614号、同第4,385,108号、同第4,269,929号、同第4,323,643号、及び特開昭56−106244号、同61−267759号、同61−230145号、同62−270953号、同62−178246号、同62−180361号、同62−275247号、同63−253357号、同63−265239号、特願平1−92356号、同1−99822号等の明細書に記載されたヒドラジン化合物などがあり、本発明に使用することができ、特に下記の一般式(3)で表されるヒドラジン化合物を使用するのが好ましい。
【0033】
【化10】
【0034】
一般式(3)中、R1は脂肪族基または芳香族基を表し、R2は2価の脂肪族基または2価の芳香族基を表す。R3は水素原子、脂肪族基または芳香族基を表し、R4は脂肪族基を表す。Gはカルボニル基、スルホニル基、スルフィニル基、オキサリル基またはホスホリル基を表す。R5は水素原子、脂肪族基、アルコキシ基、アリールオキシ基、芳香族基、アミノ基または一般式(4)を表す。一般式(3)中のイソチオウレイド基はプロトン酸の塩になっていてもよい。
【0035】
【化11】
【0036】
一般式(4)中、Q+はカチオン性の基を含む基を表し、A-はアニオンを表すが、Q+がスルホ基を含む時は不要である。
【0037】
一般式(3)で表される化合物について更に詳しく説明する。一般式(3)においてR1で表される脂肪族基としては好ましくは炭素数1〜30のものであって、特に1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基である。R1で表される芳香族基は単環または2環のアリール基または不飽和ヘテロ環である。ここで不飽和ヘテロ環基はアリール基と縮環していてもよい。R1の脂肪族基または芳香族基は置換されていてもよく、代表的な置換基としては例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、スルファモイル基、ウレイド基、ウレタン基、カルバモイル基、アルキルまたはアリールチオ基、アルキルまたはアリールスルホニル基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、アリールオキシカルボニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アシルオキシ基、アミド基、スルホンアミド基、カルボキシ基などが挙げられる。R1はその中にカプラー等の不動性写真用添加剤において常用されているバラスト基が組み込まれているものでもよい。バラスト基とは8以上の炭素数を有する写真性に対して比較的不活性な基であり、例えばアルキル基、フェニル基、アルキルフェニル基、フェノキシ基、アルキルフェノキシ基などの中から選ぶことができる。またR1はその中にハロゲン化銀粒子表面に対する吸着を強める基が組み込まれているものでもよい。かかる吸着基としては、チオ尿素、複素環チオアミド基、メルカプト複素環基、トリアゾール基などの米国特許第4,385,108号、同第4,459,347号、特開昭59−195233号、同59−200231号、同59−201045号、同59−201046号、同59−201047号、同59−201049号、同61−170733号、同61−270744号、同62−948号、同63−234244号、同63−234245号、同63−234246号に記載された基が挙げられる。
【0038】
一般式(3)においてR2で表される2価の脂肪族基としては好ましくは炭素数1〜30のものであって、特に1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキレン基である。R2で表される芳香族基は、単環または2環のアリーレン基、または不飽和ヘテロ環である。ここで不飽和ヘテロ環基はアリール基と縮環していてもよい。R2として好ましいものはアルキレン基であり、特に好ましくはエチレン基、プロピレン基である。一般式(3)において、R3で表される脂肪族基としては炭素数1〜5のアルキル基であり、アリール基等の置換基を有しても良い。好ましくは、メチル基、エチル基及びベンジル基である。Gがカルボニル基の場合、R5で表される基のうち好ましいものは、水素原子、アルキル基(例えば、メチル基、トリフルオロメチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−メタンスルホンアミドプロピル基、フェニルスルホニルメチル基、2−ヒドロキシベンジル基など)、アリール基(例えば、フェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、o−メタンスルホンアミドフェニル基、4−メタンスルホニルフェニル基、2−ヒドロキシメチルフェニル基など)などであり、特に水素原子が好ましい。Gがスルホニル基、スルフィニル基及びオキサリル基の場合、R5で表される基のうち好ましいものは、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基など)、アリ−ルオキシ基(例えば、フェノキシ基、4−クロロフェノキシ基など)、アミノ基などであり、特に置換アミノ基(例えば、メチルアミノ基、3−ヒドロキシプロピルアミノ基、2,3−ジヒドロキシプロピルアミノ基、2−ヒドロキシメチルアニリノ基など)が好ましい。R5はその中にカプラー等の不動性写真用添加剤において常用されているバラスト基が組み込まれているものでもよく、あるいはハロゲン化銀粒子表面に対する吸着を強める基が組み込まれているものでもよい。Gがホスホリル基の場合には、R5としてはメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、フェノキシ基、フェニル基が好ましい。また、R5はG−R5の部分を残余分子から分裂させ−G−R5部分の原子を含む環式構造を生成させる環化反応を生起するようなものであってもよく、例えば特開昭63−29751号などに記載のものが挙げられる。一般式(3)中のイソチオウレイド基がプロトン酸の塩を形成する場合、該プロトン酸としては塩酸、硫酸、p−トルエンスルホン酸等が挙げられ、好ましくは塩酸及びp−トルエンスルホン酸である。
【0039】
一般式(4)におけるQ+は、少なくとも1つの四級窒素原子を有するカチオン性の基を含む基であり、炭素数1〜4個の炭素原子を持つ直鎖または分岐炭化水素鎖を通じてGに結合し、この鎖の一部又は全部は四級窒素原子を持つ複素環の一部を構成していてもよい。Q+の好ましい例としては、トリアルキルアンモニオアルキル基、ピリジニウム−1−イルアルキル基、1−アルキルピリジニウム−2−イル基、1−アルキルピリジニウム−3−イル基、1−アルキルピリジニウム−4−イル基、チアゾリニウム−3−イルアルキル基、オキサゾリニウム−3−イルアルキル基、1−アルキルイミダゾリウム−3−イルアルキル基などが挙げられる。これらの基は置換されていてもよく、置換基としてはR1の置換基として挙げられたものが好ましい。更にこれらの基が環構造を形成する場合、他の環と縮環していてもよい。A-はQ+の対アニオンであり、好ましい例としてはCl-、Br-、p−トルエンスルホナート、メチルスルホナートなどが挙げられるが、Q+の置換基としてスルホ基を持ち、分子内塩を形成する場合は存在しない。
【0040】
以下に本発明に用いられるヒドラジン化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
【化12】
【0042】
【化13】
【0043】
【化14】
【0044】
【化15】
【0045】
本発明のヒドラジン誘導体は、適当な水混和性有機溶媒、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノールなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトンなど)、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセロソルブなどに溶解して用いることができる。また、既によく知られた乳化分散法によって、ジメチルフタレート、トリクレジルホスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルテレフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作成して用いることもできる。コロイドミル、ボールミルあるいは超音波による固体分散法として知られている方法によって用いることができる。
【0046】
本発明の感光材料において、上記のヒドラジン誘導体は、ハロゲン化銀乳剤層に含有させるのが好ましいが、その他の親水性コロイド層に含有させてもよい。層中でのヒドラジン誘導体の含有量は、用いられるハロゲン化銀乳剤の特性、化合物の化学構造及び現像条件によって異なるので、適当な含有量としては、ハロゲン化銀乳剤中の銀1モル当り約1×10-6〜5×10-2モルの範囲が実際上有用であり、より好ましくは、1×10-5〜2×10-2モルの範囲がよい。
【0047】
次に、本発明のハロゲン化銀写真感光材料に用いられるハロゲン化銀乳剤について述べる。本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤には特に制限はないが、塩化銀含有率が50モル%以上である塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀を用いることが特に好ましい。塩沃臭化銀を用いる場合には、沃化銀の含有率が5モル%以下、より好ましくは1モル%以下である。本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤のハロゲン化銀粒子の形状は、特に好ましくは立方体のような規則的な結晶体を有するものであるが、その他の八面体、不定形、板状のようなものであってもよい。
【0048】
本発明に用いられるハロゲン化銀の平均粒子サイズは、0.5μm以下の粒子が好ましく、より好ましくは0.4μm以下であって、粒子サイズ分布が95%の粒子が数平均粒子サイズの±20%以内、好ましくは±15%以内のサイズに入る単分散ハロゲン化銀粒子がよい。ハロゲン化銀乳剤の調製方法は、順混合、逆混合、同時混合等のハロゲン化銀写真感光材料の分野で公知の種々の方法が用いられる。
【0049】
本発明に用いられるハロゲン化銀乳剤にはハロゲン化銀粒子の形成または物理熟成の過程に於て亜硫酸塩、鉛塩、タリウム塩、ロジウム塩もしくはその錯塩、イリジウム塩もしくはその錯塩を共存させてもよい。本発明の化学増感に先だって行うpAgの調整の手段としては、塩化ナトリウム、臭化ナトリウム、臭化カリウム、ヨウ化カリウム、硝酸銀などを用いればよい。乳剤のpAgは化学熟成開始後、塗布直前の間に各種添加剤や塗布液の濃度変化により変化するが、上記の化合物で同様に調整できる。
【0050】
本発明のハロゲン化銀乳剤は種々の化学増感剤によって増感することが好ましく、硫黄増感、還元増感、金増感、セレン増感、テルル増感などの方法を用いることができるが、塩化金酸、三塩化金酸、チオシアネート金酸などを増感剤として用いる金増感が好ましい。さらに好ましくは、硫黄プラス金増感による化学増感が最も好ましい。硫黄増感剤としては、ゼラチン中に含まれる硫黄化合物のほか種々の硫黄化合物、例えばチオ硫酸塩、チオ尿素類、チアゾ−ル類、ロ−ダニン類等を用いることができる。
【0051】
本発明に用いられる写真乳剤は4級アンモニウム塩、チオエ−テル化合物、ポリエチレンオキサイド誘導体、ジケトン類などを用いて増感することもできる。これらの方法は米国特許第2,708,162号、同3,046,132号、同3,046,133号、同3,046,134号、同3,046,135号、英国特許第939,357号等に記載されている。
【0052】
本発明の感光材料には、感光性乳剤層の他にオーバーコート層や中間層、バックコート層、下塗層その他の親水性コロイド層を設置することができる。
【0053】
本発明の写真乳剤には種々の親水性コロイドが用いられ、写真乳剤用および/または他の写真構成層用のベヒクルとして使用する親水性コロイドには例えばゼラチン、コロイド性アルブミン、カゼイン、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース等のセルロース誘導体、寒天、アルギン酸ソーダ、澱粉誘導体などの糖誘導体、合成親水性コロイド、例えばポリビニルアルコール、ポリN−ビニルピロリドン、ポリアクリルアミドまたはこれらの誘導体、部分加水分解物等があげられる。必要に応じて、これらのコロイドの二つ以上の相溶性混合物を使用する。この中で最も一般的に用いられるのはゼラチンであるが、ゼラチンは一部または全部を合成高分子物質で置き換えることができるほか、いわゆるゼラチン誘導体すなわち分子中に含まれる官能基としてのアミノ基、イミノ基、ヒドロオキシ基、カルボキシル基をそれらと反応し得る基を一個持った試薬で処理、改質した物は他の高分子物質の分子鎖を結合させたグラフトポリマ−で置き換えて使用してもよい。
【0054】
本発明の乳剤を用いた写真感光材料には、写真乳剤層その他の親水性コロイド層に無機または有機の硬膜剤を含有してよい。例えばクロル酸(クロム明ばん、酢酸クロムなど)、アルデヒト類(ホルムアルデヒト、グリオキサール、グルタールアルデヒトなど)、N−メチロール化合物(ジメチロール尿素、メチロールジメチルヒダントインなど)、ジオキサン誘導体(2,3−ジヒドロキシジオキサンなど)、活性ビニル化合物(1,3,5−トリアクリロイル−ヘキサヒドロ−S−トリアジン、1,3−ビニルスルホニル−2−プロパノールなど)、活性ハロゲン化合物(2,4−ジクロロ−6−ヒロキシ−S−トリアジンなど)ムコハロゲン酸類(ムコクロル酸、ムコフェノキシクロル酸など)などを単独または組み合わせて用いることができる。
【0055】
本発明の感光材料の写真乳剤層または他の親水性コロイド層には塗布助剤、帯電防止、スベリ性改良、乳化分散、接着防止など種々の目的で界面活性剤を含んでもよい。例えば、サポニン(ステロイド系)、アルキレンオキサイド誘導体(例えばポリエチレングリコール、ポリエチレングリコール/ポリプロピレングリコール縮合物、ポリエチレングリコールアルキルエーテル類またはポリエチレングリコールアルキルアリールエーテル類、ポリエチレングリコールエステル類、ポリエチレングリコールソルビタンエステル類、ポリアルキレングリコールアルキルアミンまたはアミド類、シリコーンのポリエチレンオキサイド付加物類)、グリオキシドーリル誘導体(たとえばアルケニルコハク酸ポリグリセリド、アルキルソエノールポリグリセリド)、多価アルコールの脂肪酸エステル類、糖のアルキルエステル類などの非イオン性界面活性剤、アルキルカルボン酸塩、アルキルスルフォン酸塩、アルキルベンゼンスルフォン酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキル硫酸エステル類、アルキルリン酸エステル類、N−アシル−N−アルキルタウリン類、スルホコハク酸エステル類、スルホアルキルポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル類などのような、カルボキシ基、スルホ基、ホスホ基、硫酸エステル基、燐酸エステル基等の酸性基を含むアニオン界面活性剤:アミノ酸類、アミノアルキルスルホン酸類、アミノアルキル硫酸または燐酸エステル類、アルキルベタイン類、アミンオキシド類などの両性界面活性剤:アルキルアミン塩類、脂肪族あるいは芳香族第4級アンモニュウム塩類、ピリジウム、イミダゾリウムなどの複素環第4級アンモニュウム塩類、および脂肪族または複素環を含むホスホニウムまたはスルホニウム塩類などのカチオン界面活性剤を用いることができる。
【0056】
本発明の感光材料の写真乳剤層または他の親水性コロイド層には、感光材料の製造工程、保存中あるい写真処理中のカブリを防止し、あるいは写真性能を安定化させる目的で、種々の化合物を含有させることができる。すなわちアゾール類例えばベンゾチアゾリウム塩、ニトロインダゾール類、トリアゾール類、ベンゾトリアゾール類、ベンズイミダゾール類(特にニトロ−またはハロゲン置換体)、あるいはチオケト化合物、例えばオキサゾリンチオン、あるいはアザインデン類、例えばテトラザインデン類(特に4−ヒドロキシ置換(1,3,3a,7)テトラザインデン類)、あるいはベンゼンチオスルホン酸類、あるいはベンゼンスルフィン酸などのようなカブリ防止剤または安定剤として知られた多くの化合物を加えることができる。
【0057】
本発明の感光材料にはヒドラジン誘導体と共に造核促進剤を含むことが好ましい。造核促進剤とは、ヒドラジン誘導体の存在下で硬調化促進効果をもつものであり、写真乳剤層その他の親水性コロイド層に、特開昭62−222241号、米国特許第4,975,354号、特開平7−140577号、特開平7−159915号、特開平8−171166号、特開平8−190165号、特開平8−248579号、特開平8−297339号等に記載されている化合物を使用することができる。
【0058】
本発明の写真感光材料には、前記以外の種々の化合物、たとえば帯電防止剤、ハレーション防止染料、イラジエーション防止染料、可塑剤、ジヒドロキシベンゼン類以外の他の現像主薬、紫外線吸収剤、蛍光染料、現像促進剤、カプラー等を使用することができる。
【0059】
本発明の写真感光材料には、ハロゲン化銀乳剤層やその他の親水性コロイド層に、接着防止の目的でシリカ、酸化マグネシウム、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート等のマット剤を使用することができる。
【0060】
本発明に用いる写真感光材料には、写真乳剤層その他の親水性コロイド層に、寸度安定性の改良などの目的で、水不溶または難溶性合成ポリマー分解物を含むことができる。例えば、アルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド、酢酸ビニル、アクリロニトリル、オレフィン、スチレンなどの単独もしくは組合せ、またはこれらとアクリル酸、メタクリル酸、α、β−不飽和ジカルボン酸、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、スチレンスルホン酸等の組合せを単量体成分とするポリマーを用いることができる。
【0061】
本発明の写真感光材料においては、通常写真感光材料の支持体として用いられるものがすべてもちいられる。たとえばセルロースナイトレートフィルム、セルロースアセテートフィルム、セルロースアセテートブチレートフィルム、セルロースアセテートプロピオネートフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム、その他これらの積層物、紙などがある。バライタまたはα−オレフィンポリマー、特にポリエチレン、ポリプロピレンなど炭素原子2〜10のα−オレフィンのポリマーを塗布またはラミネートした紙、特公昭47−19068号に示されているような表面を粗面化することによって、他の高分子物質との密着性をよくするプラスチックフィルム等の支持体なども好適である。
【0062】
また、本発明の親水性コロイド層の塗布方法としては、エアードクター、ブレードコート、スクイズコート、エアーナイフコート、リバースロールコート、キャストコート、エクストルージョンコート等の方法が用いられる。そして塗布量は1〜15μm、より好ましくは2〜10μmとすることが好ましい。
【0063】
本発明のハロゲン化銀感光材料を用いて超硬調の写真特性を得るには、従来のリス現像液や米国特許第2,419,975号明細書に記載されたpH13に近い高アルカリ現像液を用いる必要はなく、安定な現像液を用いることができる。すなわち、本発明のハロゲン化銀写真感光材料は、保恒剤としての亜硫酸イオンを充分に(特に0.15モル/l以上)含んだ現像液を用いることができ、またpH9.5以上、特に10.0〜12.0の現像液によって充分に超硬調のネガ画像を得ることができる。現像主薬には特別な制限はなく、ジヒドロキシベンゼン類、3−ピラゾリドン類、アミノフェノール類などを単独あるいは組み合わせて用いる事ができる。現像液にはその他、アルカリ金属の亜硫酸塩、炭酸塩、ホウ酸塩、及びリン酸塩の如きpH緩衝剤、臭化物、沃化物、及び有機カブリ防止剤(特に好ましくは、ニトロインダゾール類またはベンゾトリアゾール類)の如き、現像抑制剤ないし、カブリ防止剤などを含むことができる。また、必要に応じて、硬水軟化剤、溶解助剤、色調剤、現像促進剤、界面活性剤、消泡剤、硬膜剤、フィルムの銀汚れ防止剤(例えば2−メルカプトベンゾイミダゾール酸類)などを含んでいてもよい。これら添加剤の具体例は、リサーチディスクロージャー176号の17643などに記載されている。
【0064】
本発明では、感光材料中に現像主薬を内蔵させて、アルカリ性のアクチベータ溶液で処理する方式を採用しても良い。(特開昭57−129436号、同57−129433号、同57−129434号、同57−129435号、米国特許4,323,643号などを参照)。処理温度は通常18℃から50℃の間で選ばれるが、18℃より低い温度または50℃をこえる温度としてもよい。写真処理には自動現像機を用いるのが好ましい。本発明では感光材料を自動現像機に入れてから出てくるまでのトータルの処理時間を45秒〜120秒に設定しても充分に超硬調のネガ階調の写真特性が得られる。
【0065】
【実施例】
以下に実施例により本発明を具体的に説明するが、むろんこの記述により本発明が制限されるものではない。
【0066】
<乳剤の調製>
水600ml中に塩化ナトリウム5g、ゼラチン40gを含む水溶液に40℃でpAg8.5にコントロールしたダブルジェット法で硝酸銀水溶液と3.25×10-6モル/モルAgの水溶性イリジウム塩と2.0×10-7モル/モルAgの水溶性ロジウム塩を含むハロゲン溶液を混合して、平均粒径0.25μmの塩臭化銀(塩化銀含有率55モル%)乳剤を調製し、銀1モルに対し0.2モルとなるようにヨウ化カリウム水溶液を添加した後、沈殿、水洗、再溶解した。この乳剤に銀1モル当たりチオ硫酸ナトリウム6mg、塩化金酸8mgを加え、55℃で60分間加熱し、化学増感を施した後、安定剤として4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデン150mgを加えた。この乳剤を分割し、表1に示す本発明の増感色素と比較例の化16を2.5×10-5モル/モルAg加えた。更に界面活性剤として化17を添加し、表1に示す本発明のスルホン酸基で置換されたハイドロキノン誘導体及び比較例のハイドロキノンを2×10-2モル/モルAg量添加し、さらに硬膜剤として1,3−ジビニルスルホニル−2−プロパノールを50mg/m2加えて、乳剤を調製した。調製した乳剤は、帯電防止層及び必要な染料を含有する裏塗り層を有するポリエチレンテレフタレートフィルム上に硝酸銀で5g/m2、ゼラチン2.5g/m2になるように塗布した。
【0067】
【化16】
【0068】
【化17】
【0069】
<保護液の調製>
この上に保護層として、ゼラチン水溶液にポリエチルアクリレートラテックスを0.3g/m2、化17の界面活性剤、2.5μmの不定形シリカマット剤を15mg/m2、さらに硬膜剤を加え、ゼラチンが1.0g/m2となるように塗布して表1に示す試料を作成した。
【0070】
【表1】
【0071】
<写真特性>
得られた試料を633nmの干渉フィルターとステップウェッジを通して10-5秒のキセノンフラッシュ光で露光を施した後、下記処方の現像液と定着液PURCF901(三菱製紙(株)製)を使用し、35℃30秒で現像した後、定着、水洗、乾燥して、写真特性を求めた。感度値は、透過濃度3.0を得るのに必要な露光量の逆数として求め、試料No.11の感度を100とした時の相対的な値で示した。またカブリは未露光部の濃度を示した。結果を表2に示す。
【0072】
<塗布液の経時安定性>
上記の調製した乳剤を38℃で20時間保温した後に、上述と同様に裏塗り済みのポリエチレンテレフタレートフィルム上に塗布し、塗布液の経時安定性を調べる試料を作成した。同様に現像を行い、乳剤調整後、すぐに塗布した試料との感度変化を評価した。表中の値は乳剤塗液調整後、すぐに塗布した試料に対する20時間保温した後塗布した試料の感度変化で表した。プラスの値は経時により感度が増加したことを、マイナスの値は経時により感度が減感したことを表す。例えば−0.10は乳剤塗液調整後、すぐに塗布した試料に対して10%感度が減感したことを表す。得られた結果を表2に示す。
【0073】
<水溶性、残色の評価>
水溶性は25℃において0.1重量%の均一な水溶液となるかを表した。また残色は未露光のサンプルを上述と同様の方法にて現像処理し、処理したサンプルを5枚重ねて目視で評価した。5段階評価で、5が最も処理後の残色が少なく、1が最も処理後に着色がきつく残っている。3が実用上許容される限界である。
【0074】
<現像液(濃縮物)>
1-フェニル-4-ヒドロキシメチル-4-メチル-3-ピラゾリドン 2.3g
ハイドロキノン 85.0g
水酸化ナトリウム 26.0g
炭酸ナトリウム 50.0g
亜硫酸カリウム 220.0g
ジエチレントリアミン五酢酸 9.1g
臭化カリウム 12.5g
ベンゾトリアゾール 0.6g
1-フェニル-5-メルカプトテトラゾール 0.1g
ジエチレングリコール 110.0g
水を加えて 1リットル
上記濃縮物を水2部に対し1部の割合で希釈してpH10.5の現像液とした。
【0075】
【表2】
【0076】
表2の結果より、水溶性の高い増感色素を用いることにより処理後の残色を改良できたことがわかる。また本発明のスルホン酸基で置換されたハイドロキノン誘導体を使用した本発明の写真感光材料は、ハイドロキノン誘導体を使用していない比較例の写真感光材料と比べてカブリが低く、ハイドロキノンを使用した比較例の写真感光材料と比べて高感で、塗布液の経時安定性に優れていることがわかる。
【0077】
実施例2
実施例1において乳剤調整後、すぐに塗布して作成した試料を、湿度55%RH、温度40℃の下で20日間放置させた後、実施例1と同様の方法にて現像処理を行い、塗布後の経時保存安定性を調べた。実施例1の経時をかけずに処理して得られた感度に対する感度変化で評価した。得られた結果を表3に示す。
【0078】
【表3】
【0079】
表3の結果より、本発明のスルホン酸基で置換されたハイドロキノン誘導体を使用した本発明の写真感光材料は、ハイドロキノン誘導体を使用していない比較例の写真感光材料と比べてカブリが低く、ハイドロキノンを使用した比較例の写真感光材料と比べて高感で、塗布後の保存安定性に優れていることがわかる。
【0080】
実施例3
実施例1の乳剤にヒドラジン化合物H−1を2×10-4モル/モルAg、化18で表される造核促進剤を1×10-3モル/モルAg加えた以外は同様にして、実施例1の試料No.1〜11に対応するヒドラジン化合物、及び造核促進剤を含有する試料(No.1H〜11H)を作成した。
【0081】
【化18】
【0082】
作成した試料を実施例1と同様に露光、現像処理して写真特性を求めた。感度は試料No.11Hの感度を100とした時の相対的な値で示した。ガンマ値は光学濃度が1.0〜2.5の直線部のtanθで表した。さらに実施例1と同様に塗布液の経時安定性を評価した。得られた結果を表4に示す。
【0083】
【表4】
【0084】
表4の結果を見ると、ハイドロキノン誘導体を使用していない比較例の写真感光材料(No.1Hと11H)は、ヒドラジン誘導体の硬調化現像によりカブリが高くなり、その結果感度も高くなっている。ハイドロキノンを使用した比較例の写真感光材料(No.10H)はカブリは低くなっているものの、同時に感度も低くなり、塗布液の経時安定性も悪い。それに対して本発明のスルホン酸基で置換されたハイドロキノン誘導体を使用した写真感光材料は、ヒドラジン誘導体による超硬調の写真特性を維持しつつ、カブリが低くても高感で、さらに塗布液の経時安定性にも優れていることがわかる。
【0085】
また表4の各試料を実施例2と同様にして、塗布後の経時保存安定性を調べたが、実施例2の結果と同様に本発明のスルホン酸基で置換されたハイドロキノン誘導体を添加した試料において、塗布後の経時保存安定性の改善が見られた。
【0086】
実施例4
増感色素としてD−18を使用し、ハイドロキノンとハイドロキノンモノスルホン酸カリウムを表5に示す量、乳剤層に添加する以外は実施例3と同様にして以下に示す試料を作成した。作成した試料を実施例1と同様に露光、現像処理して写真特性を求めた。感度は試料No.21の感度を100とした時の相対的な値で示した。さらに実施例1と同様に塗布液の経時安定性を評価した。得られた結果を表5に示す。
【0087】
【表5】
【0088】
表5の結果より、本発明のスルホン酸基で置換されたハイドロキノン化合物(ハイドロキノンモノスルホン酸カリウム)とハイドロキノンを併用した場合、塗布液調製直後の減感程度は少ないものの、塗布液を経時した際の減感は大きくなるため、併用しないことが好ましいことがわかる。
【0089】
【発明の効果】
本発明により、高感度で、かつ処理後の残色が少なく、さらには塗布液の経時安定性、塗布後の保存安定性に優れたハロゲン化銀写真感光材料を提供することができた。
Claims (1)
- 支持体上に少なくとも1層のハロゲン化銀乳剤層を有し、露光後にハイドロキノンを現像主薬として含有する現像液を用いた現像工程、定着工程を経て現像処理されるハロゲン化銀写真感光材料において、該ハロゲン化銀乳剤が水に0.1重量%以上溶解する増感色素により分光増感され、かつ該乳剤層もしくは他の親水性コロイド層にスルホン酸基で置換されたハイドロキノン誘導体を含有し、且つ該乳剤層もしくは他の親水性コロイド層がハイドロキノンを含まないか、ハイドロキノンを銀1モル当たり0.003モル以下の量で含有することを特徴とするハロゲン化銀写真感光材料。
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