JP3993440B2 - 浚渫船の土砂排出方法 - Google Patents
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Description
この発明は、水底の土砂を浚渫する浚渫船の土砂排出方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
図11は、従来の浚渫船の側面図であり、図12は、従来の浚渫船の横断面図である。一般的に浚渫船は、図11及び図12に示すように、土砂積込ホールド1、アーム2、トラニオン3、船内吸引管4、浚渫ポンプ5、土砂吐出管6、ローディングスプレッター7、オーバーフロー管8、コニカル弁9等を具備している。
【0003】
アーム2は、中空であり、その先端に海底などの水底の土砂を吸い込むためのヘッド2aが設けられ、このヘッド2aにより土砂が移動可能となるようにトラニオン3に接続されている。また、アーム2は、土砂を船内に吸い込むために船内吸引管4に接続されており、この船内吸引管4は、浚渫ポンプ5の吸込側に接続されている。浚渫ポンプ5の吐出側には、土砂吐出管6が接続されており、この土砂吐出管6の先端には、土砂積込ホールド1内に土砂を積み込むためのローディングスプレッター7が接続されている。
【0004】
浚渫場に移動した浚渫船は、図11の矢印A方向に前進することで、水底の土砂はヘッド2aの底面開口により吸引される。浚渫ポンプ5を運転することで、ヘッド2aの前方に堆積した土砂は、その廻りの水によりスラリー化され、アーム2、船内吸引管4、土砂吐出管6を介して、ローディングスプレッター7より、土砂積込ホールド1内に積み込まれる。
【0005】
積み込まれたスラリー化した土砂は、通常土砂積込ホールド1内に沈降し、この土砂の上部の水は、オーバーフロー管8から船外に排出される。そして、土砂積込ホールド1が満杯になれば、浚渫船はアーム2を船内に収容し、浚渫地から土捨て場に移動する。
【0006】
土捨て場に移動した浚渫船は、図示しない駆動手段により、土砂積込ホールド1内の底部中央に配置されたコニカル弁9を下降させ、積み込まれた土砂を排出する。なお、排出が終了した浚渫船は、コニカル弁9を駆動手段により上昇させた後、再び浚渫場に移動し、浚渫を行う。
【0007】
また、コニカル弁9などで船底から積み込んだ土砂を排出するほかに、土砂を陸上に排送するシステムを備えた浚渫船がある。図13は、陸送用の浚渫船の横断面図であり、図14は、陸送用の浚渫船の要部平面図である。陸送用の浚渫船の土砂積込ホールド1の底部中央には、土砂吸込部(以下、「ピット」とする)10が設けられている。土砂積込ホールド1内に複数設けられた各ピット10は、それぞれ開閉弁11を介して船内に設けられた排出管12に連通している。
【0008】
排出管12の一方には、海水、即ち船外の水を取水する取水弁13が設けられており、他方には、土砂を陸送するために排出ポンプ14が設けられている。土砂積込ホールド1内の土砂は、取水弁13を開き排出管12内に船外の水を取水するとともに、排出ポンプ14を運転することで、ピット10、開閉弁11を介して排出管12内に吸い込まれる。ここで、土砂積込ホールド1内の土砂は、取水弁13により取水された水によってスラリー化される。この吸い込まれたスラリー化した土砂は、浚渫船に設けられた図示しない接続装置を介して、海上管(浮き管)並びにその先の陸上管を通り陸上に排出される。なお、取水弁13より取水された水は、排出管12内を洗浄、即ち排出管12内に残った土砂を除去する作用もある。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、浚渫船においては、浚渫作業の効率を良くすることが重要である。この浚渫作業の効率を良くするためには、土砂積込ホールド1の容積を大きく確保し、1回の浚渫で多くの土砂を積み込めること、空所の容積を小さくして効率の良いホールド配置とすること、土砂積込ホールド1内の土砂を効率よく排出できることが重要である。特に陸送用の浚渫船では、土砂積込ホールド1内の土砂を効率よく排出ポンプに吸い込むことができるかが重要である。
【0010】
そこで、土砂積込ホールド1の容積を大きく確保する、あるいは空所の容積を少なくするためには、図12及び図13に示す土砂積込ホールド1の底部両側面に設けられた傾斜面15、16の傾斜角θ1を小さくする必要がある。しかし、土砂積込ホールド1内に積み込まれる土砂の安息角を考慮すると、この傾斜角θ1を土砂の安息角よりも小さくすることには問題がある。即ち、傾斜角θ1を土砂の安息角よりも小さくした場合は、駆動装置によりコニカル弁9を下降した際、傾斜面15、16の上面に土砂が残り、土砂積込ホールド1内の土砂を完全に船外に排出することができなくなる。従って、土砂積込ホールド1内の容積を大きく確保しても、土砂の排出時に土砂積込ホールド1内に土砂が残るので、浚渫船の作業効率を向上させることはできない。
【0011】
特に、陸送用の浚渫船においては、以下のような問題点がある。
陸送用の浚渫船では、土砂積込ホールド1内の土砂を排出する場合、取水弁13から取水された海水により、土砂をスラリー化するが、ピット10内の土砂の希釈が不十分であると、この土砂により排出管12が閉塞する恐れがある。
【0012】
図15は、従来の問題点を示す図であり、同図(a)は土砂の粒子が粗い場合、同図(b)は土砂の粒子が細かい場合である。上記のように排出管12の閉塞が起こらなくても、同図(a)に示すように、土砂積込ホールド1内に積み込まれた土砂の粒子が粗い場合は、ピット10上方の一部分の土砂のみが排出管12に吸い込まれ、土砂積込ホールド1内の大部分の土砂が排出されない恐れがある。また、同図(b)に示すように、土砂の粒子が細かい場合には、ピット10上方の土砂と土砂積込ホールド1内の水のみが排出管12に吸い込まれ、土砂積込ホールド1の両側面の土砂が排出されない恐れがある。
【0013】
上記のように陸送用の浚渫船において、傾斜面15、16の傾斜角θ1を土砂積込ホールド1内の土砂の安息角よりも小さくすると、土砂の排出時に土砂積込ホールド1内の土砂が効率よく排出されないので、浚渫船の作業効率を向上させることはできない。また、排出ポンプ14に吸い込まれる土砂が適切な濃度にスラリー化されていない場合、即ち土砂が圧密な状態の場合、排出ポンプ14に負担がかかり、土砂を効率よく排出できず、且つ、排出ポンプ14の寿命を縮めてしまうという問題がある。
【0014】
そこで、この発明は、上記に鑑みてなされたものであって、浚渫船の浚渫作業を効率よく行うことができる浚渫船の土砂排出方法を提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、この発明は、土砂積込手段により土砂積込ホールドに積み込まれた水底の土砂を土砂積込ホールドの底部の土砂吸込部から排出管に吸い込み、この排出管に設けられた取水弁を開弁し水を取水するとともに排出ポンプで船外に排出する浚渫船の土砂排出方法において、土砂積込ホールドの底面の一部又は全部の傾斜角を土砂の安息角よりも小さくするとともに、土砂吸込部に第一のジェットノズルを設け、土砂積込ホールド両側面に第二のジェットノズルを設け、取水弁を開弁して水の取水を開始し、排出ポンプを運転するとともに、第一のジェットノズルからジェット水を噴出して土砂積込ホールド内のスラリー化した土砂の濃度の調節を開始し、スラリー化した土砂の濃度を調節した後、第一のジェットノズルから第二のジェットノズルにジェット水の噴出を切り替え、土砂積込ホールド内のスラリー化した土砂の攪拌を開始し、スラリー化した土砂の攪拌をした後、取水弁から取水される水の取水量と第二のジェットノズルから噴出されるジェット水の噴出量の和が排出ポンプのポンプ流量よりも小さくなるように取水量を調節することを特徴とする。
【0028】
この発明では、土砂積込ホールドの底面の一部又は全部の傾斜角をこの土砂積込ホールドに積み込まれる土砂の安息角より小さくすることで、土砂積込ホールドの容積を大きく確保することができ、空所の容積を少なくすることができる。また、第一のジェットノズルからジェット水を噴出して土砂積込ホールド内、特に土砂吸込部付近のスラリー化した土砂の濃度を調節し、排出管内での土砂による閉塞を防止した後、第一のジェットノズルから第二のジェットノズルにジェット水の噴出を切り替え、土砂積込ホールド内のスラリー化した土砂の攪拌し、この土砂を適度な濃度に均一化した後、取水弁から取水される水の取水量と第二のジェットノズルから噴出されるジェット水の噴出量の和が排出ポンプのポンプ流量よりも小さくなるように取水量を調節することで、土砂積込ホールド内の土砂を残さずに即ち効率よく排出することができる。これにより、浚渫船の浚渫作業の効率を良くすることができる。
【0029】
また、この発明は、請求項1に記載の浚渫船の土砂排出方法において、第一のジェットノズルは、土砂吸込部に回動自在に支持されていることを特徴とする。
【0030】
この発明では、第一のジェットノズルを土砂吸込部に回動自在に支持することで、土砂積込ホールド内、特に土砂吸込部付近の広い範囲のスラリー化した土砂の濃度を調節し、排出管内での土砂による閉塞を防止するとともに、土砂積込ホールド内のスラリー化した土砂を攪拌して、この土砂を適度な濃度に均一化するので、土砂積込ホールド内の土砂を残さずに即ち効率よく排出することができる。これにより、浚渫船の浚渫作業の効率を良くすることができる。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの或いは実質的に同一のものが含まれる。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものが含まれるものとする。
【0032】
図1は、参考例1にかかる浚渫船の横断面図であり、同図(a)は土砂積込状態を示す図、同図(b)は土砂排出状態を示す図である。同図(a)に示すように、土砂積込ホールド1の底面の所定位置にそれぞれジェットノズル17、17が設けられている。また、ジェットノズル17、17が設けられた位置より上部の底面には、その傾斜角が土砂積込ホールド1内に積み込まれた土砂の安息角よりも大きい従来と同様の傾斜面15、16が設けられている。そして、ジェットノズル17、17が設けられた位置より下部の底面には、その傾斜角θ2が土砂の安息角よりも小さい傾斜面18、19が設けられている。なお、参考例1にかかる浚渫船の基本的構成は、図11及び12に示す従来の浚渫船と同様であるのでその説明は省略する。
【0033】
水底の土砂は、アーム2、船内吸引管4、浚渫ポンプ5、土砂吐出管6、ローディングスプレッター7などで構成される土砂積込手段により土砂積込ホールド1内に積み込まれる。即ち、水底の土砂は、浚渫ポンプ5を運転することで、アーム2、船内吸引管4、土砂吐出管6を介して、ローディングスプレッター7から土砂積込ホールド1内に積み込まれる。ここで、土砂積込手段は、上記のような、浚渫ポンプ5を運転して水底の土砂を吸い込み、土砂ホールド1内に積み込む手段に限定されるものではなく、例えば、グラブなどで水底の土砂を掴み取り、土砂積込ホールド1内に積み込む手段であっても良い。
【0034】
土砂積込ホールド1内に積み込まれた土砂は、浚渫船が浚渫地から土捨て場に移動したのちコニカル弁9などで構成される排出手段により、船外に排出される。即ち、土砂積込ホールド1内に積み込まれた土砂は、図示しない駆動手段により、コニカル弁9を下降させることで、船外に排出する。ここで、土砂を排出する際、この土砂の安息角よりも大きい傾斜角を有する傾斜面15、16上面の土砂は、自然に傾斜面15、16に沿って下方に移動するが、土砂の安息角よりも小さい傾斜角θ2を有する傾斜面18、19上面の土砂は残ってしまう。
【0035】
そこで、同図(b)に示すように、この傾斜面15、16と傾斜面18、19の間に設けられたジェットノズル17からジェット水を噴出する。なお、ジェット水は、図示しないジェットポンプなどから供給される。このジェット水は、傾斜面18、19に沿って、且つコニカル弁9に向かって噴出されるので、傾斜面18、19上面の土砂は、この傾斜面18、19に沿ってコニカル弁9に向かって押し流される。従って、傾斜面15、16の上面の土砂は、自然に傾斜面15、16に沿って下方に移動し、傾斜面18、19の上面に移動したこの土砂は、ジェットノズル17から噴出されるジェット水により、傾斜面18、19に沿ってコニカル弁9に押し流され、このコニカル弁9により船外に排出される。
【0036】
参考例1にかかる浚渫船によれば、土砂積込ホールド1の底面の一部である傾斜面18、19の傾斜角をこの土砂積込ホールド1に積み込まれる土砂の安息角より小さくすることで、土砂積込ホールド1の容積を大きく確保し、浚渫船内の空所の容積を少なくすることができ、ジェット水を傾斜面18、19に沿って且つコニカル弁9に向けて噴出するジェットノズル17を設けたので、土砂積込ホールド1内の土砂を残さずに即ち効率よく排出することができる。
【0037】
なお、上記参考例1では、ジェットノズル17を土砂積込ホールド1の所定位置に設け、このジェットノズル17の上部、下部にそれぞれ傾斜角の異なる傾斜面15、16と傾斜面18、19を設けたが、この発明はこれに限定されるものではなく、図2に示すように、ジェットノズル17を土砂積込ホールド1の側面と底面の間に設け、土砂積込ホールド1の底面の全部をその傾斜角が土砂の安息角よりも小さい傾斜面18、19としても良い。
【0038】
図3は、参考例2にかかる浚渫船の要部平面図である。同図に示すように、土砂積込ホールド1に設けられたジェットノズル17は、この土砂積込ホールド1の底面に回動自在に支持されている。なお、参考例2にかかる浚渫船の基本的構成は、図1に示す参考例1の浚渫船と同様であるのでその説明は省略する。
【0039】
土砂積込手段により土砂積込ホールド1内に積み込まれた土砂をコニカル弁9(排出手段)により船外に排出する際、ジェットノズル17からジェット水を噴出する。ここで、噴出されるジェット水が、コニカル弁9に向かってのみ噴出されると、ジェットノズル17とコニカル弁9の間にある傾斜面18、19上面の土砂は、傾斜面18、19に沿ってコニカル弁9に向かって押し流される。しかし、ジェット水が噴出されない傾斜面18、19の他の部分の土砂は残ってしまう恐れがある。
【0040】
そこで、同図に示すように、ジェットノズル17を土砂積込ホールド1の底面で回動させる。ジェットノズル17が回動することで、傾斜面18、19上面の広い範囲でジェット水が噴出され、土砂がこの傾斜面18、19上面に残ることなく傾斜面18、19に沿ってコニカル弁9に向かって押し流される。
【0041】
参考例2にかかる浚渫船によれば、ジェットノズル17を、土砂積込ホールド1に回動自在に支持することで、土砂積込ホールド1の底面の傾斜面18、19の広い範囲にジェット水を噴出することができ、この傾斜面18、19の土砂を確実に排出手段に押し流すので、土砂積込ホールド1内の土砂を残さずに即ち効率よく排出することができる。
【0042】
図4は、参考例3にかかる浚渫船の横断面図である。同図に示すように、土砂積込ホールド1の底面には、その傾斜角が土砂積込ホールド1内に積み込まれた土砂の安息角よりも小さい傾斜面18、19がそれぞれ2段設けられている。この傾斜面18、18と19、19の段差部20及び土砂積込ホールド1の側面と底面の間にジェットノズル17がそれぞれ設けられている。なお、参考例3にかかる浚渫船の基本的構成は、図1に示す参考例1の浚渫船と同様であるのでその説明は省略する。
【0043】
土砂積込手段により土砂積込ホールド1内に積み込まれた土砂をコニカル弁9(排出手段)により船外に排出する際、上部のジェットノズル17からジェット水を噴出することで、上部の傾斜面18、19上面の土砂は下方に押し流される。下部の傾斜面18、19に押し流された土砂は、下部のジェットノズル17からジェット水を噴出することで、下部の傾斜面18、19に沿ってコニカル弁9に向かって押し流される。
【0044】
なお、上記参考例3では、上部のジェットノズル17からジェット水を噴出してから、下部のジェットノズル17からジェット水を噴出しているが、この発明はこれに限定されるものではなく、上部、下部のジェットノズル17から同時にジェット水を噴出しても良い。また、上記第3の実施形態では、土砂積込ホールド1の底面にその傾斜角が土砂積込ホールド1内に積み込まれた土砂の安息角よりも小さい傾斜面18、19をそれぞれ2段設けたが、この発明はこれに限定されるものでなく、傾斜面18、19を複数段設けても良い。
【0045】
参考例3にかかる浚渫船によれば、土砂積込ホールド1の底面の傾斜面18、19に段差部20を設け、この段差部20にジェットノズル17を配置することで、土砂積込ホールド1の底面の傾斜面18、19に大量のジェット水を噴出することができ、この底面の土砂を大量に排出手段に押し流すので、土砂積込ホールド1内の土砂を残さずに即ち効率よく排出することができる。
【0046】
なお、上記参考例1、参考例2、参考例3では、排出手段として駆動装置により上下動するコニカル弁9について説明したが、排出手段はこれに限定されるものでなく、図5に示すように浚渫船の船底に船底扉21を設けたものでも良い。船底扉21は、土砂積込手段により土砂積込ホールド1内に土砂を積み込む場合は、同図(a)に示すように、閉じた状態となり、積み込まれた土砂を船外に排出する際は、同図(b)に示すように、ジェットノズル17からジェット水を噴出するとともに開いた状態となる。
【0047】
図6は、参考例4にかかる陸送用の浚渫船を示す図であり、同図(a)は、横断面図、同図(b)は、要部縦断面図である。同図(a)に示すように、土砂積込ホールド1の底面には、その傾斜角θ2が土砂の安息角よりも小さい傾斜面18、19が設けられている。土砂吸込部であるピット10は、同図(b)に示すように、陸送用の浚渫船の長手方向の両側面が傾斜しており、この両側面の垂直方向にジェット水を噴出するようにそれぞれ第一のジェットノズル22、22が設けられている。なお、参考例4にかかる陸送用の浚渫船の基本的構成は、図13及び14に示す従来の陸送用の浚渫船と同様であるのでその説明は省略する。
【0048】
土砂積込手段により土砂積込ホールド1内に積み込まれた土砂は、排出ポンプ14を運転することで、ピット10より排出管12に吸い込まれ、取水弁13により取水された水とともに船外に排出される。ここで、土砂は取水弁13より取水された水によりスラリー化するが、取水された水のみは、ピット10付近のスラリー化した土砂の希釈が不十分であり、排出管12がこの土砂により閉塞する場合がある。そこで、第一のジェットノズル22からジェット水を噴出し、このピット10付近のスラリー化した土砂の濃度を排出管12を閉塞しない適切な濃度に調節する。この適切な濃度に調節された土砂は、ピット10から排出管12に吸い込まれ、船外に排出される。なお、ジェット水は、図示しないジェットポンプなどから供給される。
【0049】
参考例4にかかる浚渫船によれば、土砂積込ホールド1の底面の一部である傾斜面18、19の傾斜角をこの土砂積込ホールド1に積み込まれる土砂の安息角より小さくすることで、土砂積込ホールド1の容積を大きく確保し、浚渫船内の空所の容積を少なくすることができ、土砂積込ホールド1の底部に設けられたピット10に第一のジェットノズル22を設けることで、ピット10付近のスラリー化した土砂の濃度を調節し、排出管12内での土砂による閉塞を防止することができる。そして、排出管12の閉塞による土砂の排出作業の中断がなくなり、土砂積込ホールド1内の土砂を効率よく排出することができる。
【0050】
図7は、この発明の第1の実施形態にかかる陸送用の浚渫船の横断面図である。同図に示すように、ピット10に第一のジェットノズル22、22を設けるとともに、土砂積込ホールド1の両側面の所定位置に第二のジェットノズル23、23が設けられている。なお、この発明の第1の実施形態にかかる浚渫船の基本的構成は、図6に示す参考例4の浚渫船と同様であるのでその説明は省略する。
【0051】
土砂積込手段により土砂積込ホールド1内に積み込まれた土砂は、排出ポンプ14を運転することで、ピット10より排出管12に吸い込まれ、取水弁13により取水された水とともに船外に排出される。ピット10付近の土砂は、排出管12に吸い込まれる際、取水弁13より取水された水によりスラリー化し、第一のジェットノズル22から噴出されるジェット水によりスラリー化した土砂の濃度を排出管12を閉塞しない適切な濃度に調節する。ここで、第一のジェットノズル22から噴出されるジェット水のみでは、土砂積込ホール1内のスラリー化したすべての土砂の濃度を適切な濃度、即ち排出ポンプ14が効率よくスラリー化した土砂を吐出できる濃度にすることができない。そこで、土砂積込ホールド1の両側面に設けられた第二のジェットノズル23からジェット水を噴出し、土砂積込ホール1内のスラリー化した土砂を攪拌し、この土砂のすべてを適切な濃度に均一化する。この均一化された土砂は、ピット10から排出管12に吸い込まれ船外に排出される。
【0052】
この発明の第1の実施形態にかかる浚渫船によれば、土砂積込ホールド1の両側面に第二のジェットノズル23を設けることで、土砂積込ホールド1内のスラリー化した土砂を攪拌して、この土砂を適度な濃度に均一化するので、土砂積込ホールド1内の土砂を残さずに即ち効率よく排出することができる。
【0053】
次に、この発明の第1の実施形態にかかる陸送用の浚渫船の土砂排出方法について説明する。図8は、この発明の第1の実施形態にかかる陸送用の浚渫船の要部縦断面図である。同図に示すように、ピット10に設けられた第一のジェットノズル22と土砂積込ホールド1に設けられた第二のジェットノズル23は、それぞれ配管を介して切替弁26に連通している。この切替弁26を切り替えることによって、第一のジェットノズル22、第二のジェットノズル23にジェット水がジェットポンプ25により供給される。なお、24は、スラリー化した土砂のうち、土砂積込ホールド1内に沈降した土砂のレベルを検出する界面計である。
【0054】
図9は、各種流量と経過時間の関係を示す図である。ここで、取水弁13から取水される水の取水量をQ1、第一のジェットノズル22から噴出されるジェット水の噴出量をQ2、第二のジェットノズル23から噴出されるジェット水の噴出量をQ3、Q1とQ2とQ3の和をQ4、排出ポンプ14のポンプ流量をQ5とする。
【0055】
まず、取水弁13を開き排出管12内に水を取水し、排出ポンプ14を運転するとともに、ジェットポンプ25から供給されるジェット水を第一のジェットノズル22から噴出する。このとき、取水量Q1と噴出量Q2の和Q4とポンプ流量Q5が同じ流量となるように取水弁13、ジェットポンプ25、排出ポンプ14を制御する。従って、土砂積込ホールド1のスラリー化した土砂の容積に変化はない。第一のジェットノズル22から噴出されるジェット水により、ピット10付近のスラリー化した土砂は、排出管12を閉塞させない濃度に調節される。
【0056】
次に、ピット10付近のスラリー化した土砂の濃度を調節した後、切替弁26を第一のジェットノズル22から第二のジェットノズル23へジェット水を供給するように切り替える。即ち、排出管12を閉塞させない濃度に調節された土砂が排出ポンプ14により船外に排出されることで、土砂積込ホールド1内に沈降した土砂の界面が下がったことを界面計24が検出し、この検出信号を切替弁26に出力し、この切替弁26を切り替える。ここで、第一のジェットノズル22から第二のジェットノズル23へジェット水の供給を切り替える方法は、上記のように界面計24の検出信号により切替弁26を切り替える方法に限定されるものではなく、土砂積込ホールド1に積み込まれる土砂の種類により予め切替時間を設定しておいて切り替えても良い。
【0057】
このとき、取水量Q1と噴出量Q3の和Q4とポンプ流量Q5が同じ流量となるように取水弁13を制御する。従って、土砂積込ホールド1のスラリー化した土砂の容積に変化はない。第二のジェットノズル23からのジェット水により、土砂積込ホールド1内のスラリー化した土砂の濃度を排出ポンプ14が効率よく吐出できる濃度に攪拌する。
【0058】
次に、土砂積込ホールド1内のスラリー化した土砂の攪拌をした後、この土砂が適切な濃度に均一化された後、取水弁13より取水される水の取水量Q1を減らし、土砂積込ホールド1内のスラリー化した土砂の排出を開始する。このとき、取水量Q1と噴出量Q3の和Q4がポンプ流量Q5よりも少なくなるように取水弁13を制御する。従って、土砂積込ホールド1のスラリー化した土砂の容積は、減り始める。取水量Q1を減らすことで、土砂積込ホールド1内のスラリー化した土砂は、排出管12を介して排出ポンプ14に吸い込まれ、船外に排出される。
【0059】
この発明にかかる浚渫船の土砂排出方法によれば、土砂積込ホールド1の底面である傾斜面18、19の傾斜角をこの土砂積込ホールド1に積み込まれる土砂の安息角より小さくすることで、土砂積込ホールドの容積を大きく確保し、浚渫船内の空所の容積を少なくすることができ、第一のジェットノズル22からジェット水を噴出してピット10(土砂吸込部)付近のスラリー化した土砂の濃度を調節し、排出管12内での土砂による閉塞を防止した後、第一のジェットノズル22から第二のジェットノズル23にジェット水の噴出を切り替え、土砂積込ホールド1内のスラリー化した土砂を攪拌し、この土砂を適度な濃度に均一化した後、取水弁13から取水される水の取水量と第二のジェットポンプ23から噴出されるジェット水の噴出量の和が排出ポンプのポンプ流量よりも小さくなるように取水量を調節することで、土砂積込ホールド1内の土砂を残さずに即ち効率よく排出することができる。
【0060】
図10は、この発明の第2の実施形態にかかる陸送用の浚渫船の横断面図である。同図に示すように、ピット10に設けられた第一のジェットノズル22は、このピット10に回動自在に支持されている。なお、第2の実施形態にかかる浚渫船の基本的構成は、図7に示す第1の実施形態の浚渫船と同様であるのでその説明は省略する。
【0061】
土砂積込手段により土砂積込ホールド1内に積み込まれた土砂は、排出ポンプ14を運転することで、ピット10より排出管12に吸い込まれ、取水弁13により取水された水とともに船外に排出される。ピット10付近の土砂は、排出管12に吸い込まれる際、取水弁13より取水された水によりスラリー化する。第一のジェットノズル22を回動させながらジェット水を噴出すると、ジェット水がピット10付近の土砂及び土砂積込ホールド1の下部の土砂に行き渡り、これらのスラリー化した土砂の濃度を排出管12を閉塞しない適切な濃度に調節することができる。また、土砂積込ホールド1内の下部のスラリー化した土砂は、第一のジェットノズル22を回動させ土砂積込ホールド1に向けてジェット水を噴出することで攪拌される。そして、第二のジェットノズル23からジェット水を噴出し、土砂積込ホールド1内のスラリー化した土砂の全体を攪拌し、適度な濃度に均一化した後、排出管12に吸い込み船外に排出する。
【0062】
この発明にかかる浚渫船及び浚渫船の土砂排出方法によれば、第一のジェットノズル22をピット10に回動自在に支持することで、ピット10付近の広い範囲のスラリー化した土砂の濃度を調節し、排出管12内での土砂による閉塞を防止するとともに、土砂積込ホールド1内のスラリー化した土砂を攪拌して、この土砂を適度な濃度に均一化するので、土砂積込ホールド1内の土砂を残さずに即ち効率よく排出することができる。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に記載の発明によれば、土砂積込ホールドの底面の傾斜角をこの土砂積込ホールドに積み込まれる土砂の安息角より小さくするとともに、土砂吸込部に第一のジェットノズルを設け、土砂積込ホールド両側面に第二のジェットノズルを設け、第一のジェットノズルからジェット水を噴出して土砂積込ホールド内、特に土砂吸込部付近のスラリー化した土砂の濃度を調節し、排出管内での土砂による閉塞を防止した後、第一のジェットノズルから第二のジェットノズルにジェット水の噴出を切り替え、土砂積込ホールド内のスラリー化した土砂を攪拌し、この土砂を適度な濃度に均一化した後、取水弁から取水される水の取水量と第二のジェットポンプから噴出されるジェット水の噴出量の和が排出ポンプのポンプ流量よりも小さくなるように取水量を調節したので、土砂積込ホールドの容積を大きく確保することができ、空所の容積を少なくすることができるとともに、土砂積込ホールド内の土砂を残さずに即ち効率よく排出することができる。これにより、浚渫船の浚渫作業の効率を良くすることができる。
【0070】
また、請求項2に記載の発明によれば、第一のジェットノズルを土砂吸込部に回動自在に支持したので、土砂積込ホールド内、特に土砂吸込部付近及び土砂積込ホールドの下部のスラリー化した土砂の濃度を調節し、排出管内での土砂による閉塞を防止するとともに、土砂積込ホールド内のスラリー化した土砂を攪拌して、この土砂を適度な濃度に均一化することができ、土砂積込ホールド内の土砂を残さずに即ち効率よく排出することができる。これにより、浚渫船の浚渫作業の効率を良くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 参考例1にかかる浚渫船の横断面図であり、同図(a)は、土砂積込状態を示す図、同図(b)は、土砂排出状態を示す図である。
【図2】 参考例1にかかる浚渫船の他の横断面図である。
【図3】 参考例2の実施形態にかかる浚渫船の要部平面図である。
【図4】 参考例3にかかる浚渫船の横断面図である。
【図5】 参考例の浚渫船の排出手段の他の構成例を示す図であり、同図(a)は、土砂積込状態を示す図、同図(b)は、土砂排出状態を示す図である。
【図6】 参考例4にかかる陸送用の浚渫船を示す図であり、同図(a)は、横断面図、同図(b)は、要部縦断面図である。
【図7】 この発明の第1の実施形態にかかる陸送用の浚渫船の横断面図である。
【図8】 この発明の第1の実施形態にかかる陸送用の浚渫船の要部縦断面図である。
【図9】 各種流量と経過時間の関係を示す図である。
【図10】 この発明の第2の実施形態にかかる陸送用の浚渫船の横断面図である。
【図11】 従来の浚渫船の側面図である。
【図12】 従来の浚渫船の横断面図である。
【図13】 陸送用の浚渫船の横断面図である。
【図14】 陸送用の浚渫船の要部平面図である。
【図15】 従来の問題点を示す図である。
【符号の説明】
1 土砂積込ホールド
9 コニカル弁
10 ピット
12 排出管
13 取水弁
14 排出ポンプ
15、16、18、19 傾斜面
17 ジェットノズル
20 段差部
21 船底扉
22 第一のジェットノズル
23 第二のジェットノズル
24 界面計
25 ジェットポンプ
26 切替弁
Claims (2)
- 土砂積込手段により土砂積込ホールドに積み込まれた水底の土砂を土砂積込ホールドの底部の土砂吸込部から排出管に吸い込み、この排出管に設けられた取水弁を開弁し水を取水するとともに、排出ポンプで船外に排出する浚渫船の土砂排出方法において、
前記土砂積込ホールドの底面の一部又は全部の傾斜角を土砂の安息角よりも小さくするとともに、前記土砂吸込部に第一のジェットノズルを設け、土砂積込ホールド両側面に第二のジェットノズルを設け、
前記取水弁を開弁して水の取水を開始し、前記排出ポンプを運転するとともに、前記第一のジェットノズルからジェット水を噴出して土砂積込ホールド内のスラリー化した土砂の濃度の調節を開始し、
前記スラリー化した土砂の濃度の調節をした後、前記第一のジェットノズルから前記第二のジェットノズルにジェット水の噴出を切り替え、土砂積込ホールド内のスラリー化した土砂の攪拌を開始し、
前記スラリー化した土砂の攪拌をした後、前記取水弁から取水される水の取水量と前記第二のジェットノズルから噴出されるジェット水の噴出量の和が前記排出ポンプのポンプ流量よりも小さくなるように取水量を調節することを特徴とする浚渫船の土砂排出方法。 - 前記第一のジェットノズルは、前記土砂吸込部に回動自在に支持されていることを特徴とする請求項1に記載の浚渫船の土砂排出方法。
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