JP3992510B2 - 新規ラクトサミン誘導体とその製造方法 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、新規ラクトサミン誘導体に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は公知のラクトサミンアジドクロライド化合物から一段階で効率的に得られる新規ラクトサミン誘導体とその製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来技術とその課題】
特定の構造のオリゴ糖は細胞に分子シグナルとして作用し、特定の遺伝子発現を誘導することが知られている。例えば、N−アセチルラクトサミンは、癌や老化などに関与するマーカーとして知られているオリゴ糖のコアを形成する二糖であり、生化学や生医学的見地からもきわめて重要な二糖と考えられており、種々の合成方法が報告されている。しかし、これまでに報告されている合成方法では、しばしば生成物が得られないことがあるなどの問題があり、効率的なN−アセチルラクトサミンの合成方法や有用な誘導体を得るための優れた報告例はないのが実情である。
【0003】
N−アセチルラクトサミンを始めとするラクトサミン類を少ないステップ数で効率的に合成する方法や、合成中間体として有用なラクトサミン誘導体が得られれば、化学合成手法としての重要な知見が得られるだけでなく、生化学や医学の分野におけるラクトサミン類の作用の解明や新たな疾病の治療方法等の確立につながることが期待される。
【0004】
したがって、この出願の発明は、従来技術の問題点を解消し、種々のオリゴ等合成の中間体としても有用なラクトサミンの誘導体とそれを効率的に製造する方法を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、以上のとおりの課題を解決するものとして、まず、第1には、次式(I)
【0006】
【化2】
【0007】
(ただし、Rは置換基を有していてもよい炭化水素基である)
で示されることを特徴とする新規ラクトサミン誘導体を提供する。
【0008】
また、第2には、この出願の発明は、前記の新規ラクトサミン誘導体をラクトサミンアジドクロライドから一段階で効率的に製造する方法であって、ラクトサミンアジドクロライドを、塩基の存在下、チオ酢酸と反応させることを特徴とする新規ラクトサミン誘導体の製造方法を提供する。
【0009】
この出願の発明は、第3には、前記の新規ラクトサミン誘導体をラクトサミン由来のオキザゾリン誘導体に変換する方法であって、新規ラクトサミン誘導体にN−ヨードスクシンイミド(N−iodosuccinimide:NIS)およびトリフルオロメタンスルホン酸(trifluoromethanesulfonic acid:TfOH)を反応させることを特徴とするラクトサミン誘導体からのラクトサミンオキザゾリン誘導体の製造方法を提供する。
【0010】
そして、この出願の発明は、第4には、前記の新規ラクトサミン誘導体をラクトサミン由来のチオグリコシド誘導体に変換する方法であって、新規ラクトサミン誘導体に金属ナトリウムを接触させ、チオラートアニオンとした後、5−ブロモ−1−ペンテンと反応させることを特徴とするラクトサミン誘導体からのラクトサミンチオグリコシド誘導体の製造方法をも提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
この出願の発明者らは、公知のラクトサミン前駆体にチオ酢酸を作用させることにより、アジドの還元と得られるアミンのアセチル化、さらに還元末端の塩素原子のチオアセチル基への変換が一段階で行えることを見出し、本願発明に至ったものである。
【0012】
すなわち、この出願の発明の新規ラクトサミン誘導体は、次式(II)
【0013】
【化3】
【0014】
(ただし、Rは置換基を有していてもよい炭化水素基である)
で表される公知のラクトサミンアジドクロライド(例えばN−アセチルラクトサミンアジドクロライド;Lemieux et al.,Can.J.Chem.1979,57,1244)に塩基下でチオ酢酸を反応させることにより得られるものであり、次式(I)
【0015】
【化4】
【0016】
(ただし、Rは置換基を有していてもよい炭化水素基である)
で表されるアセトアミドチオアセテート化合物である。このとき、Rは、いずれの式においても、置換基を有していてもよい炭化水素基であり、具体的には、メチル(CH3−)、エチル(C2H5−)等のアルキル基、アセチル(CH3CO−)、ラクトイル(CH3CH(OH)CO−)などのアシル基、カルボキシル基などが例示される。さらに、N、S等のヘテロ原子を含むものであってもよい。
【0017】
この出願の発明の新規ラクトサミン誘導体の製造方法において、塩基は、アミン系化合物を添加してもよいが、好ましくは反応溶媒をピリジンとして行う。これにより70%以上の高い反応収率で生成物が得られる。このとき、反応温度は、とくに限定されないが、反応は室温で十分に進行する。このような柔和な条件下で、単純な合成手順により効率的にラクトサミン誘導体を得る方法はこれまで全く知られていなかったものである。
【0018】
この出願の発明の新規ラクトサミン誘導体(アセトアミドチオアセテート化合物)を出発物質とすることにより、さらに公知のオキサゾリン化合物(例えばYohino et al.,Glycoconjugate J.1992,9,287)へと変換できる。すなわち、この出願の発明の新規ラクトサミン誘導体にN−ヨードスクシンイミド(N−iodosuccinimide:NIS)とトリフルオロメタンスルホン酸(trifluoromethanesulfonic acid:TfOH)を反応させることにより次式(III)
【0019】
【化5】
【0020】
(ただし、Rは置換基を有していてもよい炭化水素基である)
のラクトサミンオキザゾリン誘導体が得られるのである。この反応も、効率的に進行し、70%以上の高い収率で生成物を与える。反応は、室温で進行するが、NISとTfOHの添加の際には、0℃付近まで反応温度を低下することが好ましい。また、反応は、有機溶媒中で行われるが、溶媒としては、NISとTfOHが溶解するものであればよく、例えばベンゼン、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタンなどが挙げられる。このオキサゾリン誘導体は、さらに(+)−camphorsulfonic acid(CSA)存在下に4−ペンテン−1−オールと反応させることにより次式(IV)
【0021】
【化6】
【0022】
(ただし、Rは置換基を有していてもよい炭化水素基である)
のN−アセトラクトサミンのO−グリコシド誘導体に変換される。このO−グルコシド誘導体の製造方法において、反応温度等の条件はとくに限定されない。好ましくは、室温〜100℃の反応温度で行う。このとき、反応は高収率で進行する。
【0023】
この出願の発明は、さらに、前記の新規ラクトサミン誘導体をラクトサミン由来のチオグリコシド誘導体に変換する方法をも提供する。すなわち、新規ラクトサミン誘導体に金属ナトリウムを接触させ、チオラートアニオンとした後、5−ブロモ−1−ペンテンと反応させることにより、次式(V)
【0024】
【化7】
【0025】
のラクトサミンチオグリコシド誘導体が得られる。このような反応は、高収率でS−グルコシド誘導体を与える。
【0026】
以上より、この出願の発明の新規ラクトサミン誘導体は、公知の化合物から容易に効率よく得られるだけでなく、さらに天然のO−グルコシドとS−グリコシドのいずれにも誘導が可能であるという点で付加価値の高いものである。したがって、この出願の発明の新規ラクトサミン誘導体は、医薬品、農薬等の原料や中間体として有用である。
【0027】
以下、実施例を示してこの出願の発明についてさらに詳細に説明する。もちろん、この出願の発明は、以下の実施例に限定されるものではないことはいうまでもない。
【0028】
【実施例】
反応式(A)に従って以下の化合物を合成した。
【0029】
【化8】
【0030】
<実施例1> O−(2,3,4,6−Tetra−O−acetyl−β−D−galactopyranosyl)−(1→4)−2−acetamido−3,6−di−O−acetyl−1−S−acetyl−2−deoxy−1−thio−β−D−glucopyranose(化合物2)の合成
Lemieuxらの方法により得られたO−(2,3,4,6−Tetra−O−acetyl−β−D−galactopyranosyl)−(1→4)−2−azido−3,6−di−O−acetyl−2−deoxy−α−D−glucopyranosyl Chloride(化合物1)(1.0g,1.50mmol)をアルゴンガス雰囲気下ピリジン(6mL)に溶解させ、室温でチオ酢酸(3mL)を加えた。反応溶液を同温度にて4時間攪拌し、その後、エバポレーターを用いて濃縮した。得られた残査をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒;トルエン:酢酸エチル=1:2)にて精製したところ、目的とする化合物2が747mg(71.6%)得られた。
【0031】
同定結果を表1に示した。
【0032】
【表1】
【0033】
<実施例2〉 O−(2,3,4,6−Tetra−O−acetyl−β−D−galactopyranosyl)−(1→4)−2−methyl−(3,6−di−O−acetyl−1,2−dideoxy−α−D−glucopyrano)−[2,1−d]−2−oxazoHne(化合物3)の合成
化合物2(4.35g,6.27mmol)の溶解した1,2−ジクロロメタン(40mL)溶液に、アルゴンガス雰囲気下、室温でN−Iodosuccinimide(5.60g,25.1mmol)を加え、その後、0℃に冷却した。その冷却した溶液にTrifulic acid(223μL,2.51mmol)を加え、室温で4時間攪拌した。反応溶液を、冷えた10wt% Na2S2O3、sat.NaHCO3、Brineにて順次洗浄し、最後に無水MgSO4で脱水乾燥した。ろ過後、濃縮し、残査をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒;トルエン:酢酸エチル:トリエチルアミン=100:200:1)にて精製したところ、無色透明のシラップ状のオキサゾリン誘導体(化合物3)が2.70g(70.0%)得られた。
【0034】
同定結果を表2に示した。
【0035】
【表2】
【0036】
<実施例3> n−Pentenyl O−(2,3,4,6−Tetra−O−acetyl−β−D−galactopyranosyl)−(1→4)−2−acetamido−3,6−di−O−acetyl−2−deoxy−β−D−glucopyranoside(化合物4)の合成
オキサゾリン誘導体(化合物3)(349mg,0.565mmol)、4−penten−1−ol(300μL,2.82mmol)、(+)−10−camphorsulfonic acid(92mg,0.396mmol)の溶解した1,2−ジクロロメタン溶液を、アルゴンガス雰囲気下、90℃で一晩反応させた。反応溶液を、冷水、sat.NaHCO3、Brineにて順次洗浄し、最後に無水MgSO4で脱水乾燥した。ろ過後、濃縮し、残査をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒;トルエン:酢酸エチル=1:2)にて精製したところ、グリコシド(化合物4)が312mg(78.6%)得られた。
【0037】
同定結果を表3に示した。
【0038】
【表3】
【0039】
<実施例4> n−Pentenyl O−(2,3,4,6−Tetra−O−acetyl−β−D−galactopyranosyl)−(1→4)−2−acetamido−3,6−di−O−acetyl−2−deoxy−1−thio−β−D−glucopyranoside(化合物5)
チオアセテート体(化合物2)(631mg,0.910mmol)の溶解した乾燥メタノール溶液に、アルゴンガス雰囲気下、−40℃で金属Na(21mg,0.910mmol)の溶解したメタノール溶液(5mL)を滴下した。同温度にて一時間攪拌した後に、5−bromo−1−pentene(323μL,2.73mmol)を滴下した。2時間後、イオン交換樹脂[Dowex 50Wx8(H+)]にてpHを7とし、濃縮した。一部のアセチル基の欠損が認められたので、残査をピリジン(6mL)と無水酢酸(3 mL)にて処理し、完全アセチル体へと変換した。常法による後処理後、残査をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒;クロロホルム;メタノール=40:1)にて精製したところ、チオグリコシド(化合物5)が517mg(78.9%)得られた。
【0040】
同定結果を表4に示した。
【0041】
【表4】
【0042】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明により、新規なラクトサミン誘導体とその製造方法が提供される。この誘導体は、公知のオリゴ糖から容易に誘導可能なだけでなく、天然のO−グルコシドやS−グルコシドへの変換も可能であり、医薬、農薬等の原料や中間体として有用性が高い。
【発明の属する技術分野】
この出願の発明は、新規ラクトサミン誘導体に関するものである。さらに詳しくは、この出願の発明は公知のラクトサミンアジドクロライド化合物から一段階で効率的に得られる新規ラクトサミン誘導体とその製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来技術とその課題】
特定の構造のオリゴ糖は細胞に分子シグナルとして作用し、特定の遺伝子発現を誘導することが知られている。例えば、N−アセチルラクトサミンは、癌や老化などに関与するマーカーとして知られているオリゴ糖のコアを形成する二糖であり、生化学や生医学的見地からもきわめて重要な二糖と考えられており、種々の合成方法が報告されている。しかし、これまでに報告されている合成方法では、しばしば生成物が得られないことがあるなどの問題があり、効率的なN−アセチルラクトサミンの合成方法や有用な誘導体を得るための優れた報告例はないのが実情である。
【0003】
N−アセチルラクトサミンを始めとするラクトサミン類を少ないステップ数で効率的に合成する方法や、合成中間体として有用なラクトサミン誘導体が得られれば、化学合成手法としての重要な知見が得られるだけでなく、生化学や医学の分野におけるラクトサミン類の作用の解明や新たな疾病の治療方法等の確立につながることが期待される。
【0004】
したがって、この出願の発明は、従来技術の問題点を解消し、種々のオリゴ等合成の中間体としても有用なラクトサミンの誘導体とそれを効率的に製造する方法を提供することを課題としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
この出願の発明は、以上のとおりの課題を解決するものとして、まず、第1には、次式(I)
【0006】
【化2】
【0007】
(ただし、Rは置換基を有していてもよい炭化水素基である)
で示されることを特徴とする新規ラクトサミン誘導体を提供する。
【0008】
また、第2には、この出願の発明は、前記の新規ラクトサミン誘導体をラクトサミンアジドクロライドから一段階で効率的に製造する方法であって、ラクトサミンアジドクロライドを、塩基の存在下、チオ酢酸と反応させることを特徴とする新規ラクトサミン誘導体の製造方法を提供する。
【0009】
この出願の発明は、第3には、前記の新規ラクトサミン誘導体をラクトサミン由来のオキザゾリン誘導体に変換する方法であって、新規ラクトサミン誘導体にN−ヨードスクシンイミド(N−iodosuccinimide:NIS)およびトリフルオロメタンスルホン酸(trifluoromethanesulfonic acid:TfOH)を反応させることを特徴とするラクトサミン誘導体からのラクトサミンオキザゾリン誘導体の製造方法を提供する。
【0010】
そして、この出願の発明は、第4には、前記の新規ラクトサミン誘導体をラクトサミン由来のチオグリコシド誘導体に変換する方法であって、新規ラクトサミン誘導体に金属ナトリウムを接触させ、チオラートアニオンとした後、5−ブロモ−1−ペンテンと反応させることを特徴とするラクトサミン誘導体からのラクトサミンチオグリコシド誘導体の製造方法をも提供する。
【0011】
【発明の実施の形態】
この出願の発明者らは、公知のラクトサミン前駆体にチオ酢酸を作用させることにより、アジドの還元と得られるアミンのアセチル化、さらに還元末端の塩素原子のチオアセチル基への変換が一段階で行えることを見出し、本願発明に至ったものである。
【0012】
すなわち、この出願の発明の新規ラクトサミン誘導体は、次式(II)
【0013】
【化3】
【0014】
(ただし、Rは置換基を有していてもよい炭化水素基である)
で表される公知のラクトサミンアジドクロライド(例えばN−アセチルラクトサミンアジドクロライド;Lemieux et al.,Can.J.Chem.1979,57,1244)に塩基下でチオ酢酸を反応させることにより得られるものであり、次式(I)
【0015】
【化4】
【0016】
(ただし、Rは置換基を有していてもよい炭化水素基である)
で表されるアセトアミドチオアセテート化合物である。このとき、Rは、いずれの式においても、置換基を有していてもよい炭化水素基であり、具体的には、メチル(CH3−)、エチル(C2H5−)等のアルキル基、アセチル(CH3CO−)、ラクトイル(CH3CH(OH)CO−)などのアシル基、カルボキシル基などが例示される。さらに、N、S等のヘテロ原子を含むものであってもよい。
【0017】
この出願の発明の新規ラクトサミン誘導体の製造方法において、塩基は、アミン系化合物を添加してもよいが、好ましくは反応溶媒をピリジンとして行う。これにより70%以上の高い反応収率で生成物が得られる。このとき、反応温度は、とくに限定されないが、反応は室温で十分に進行する。このような柔和な条件下で、単純な合成手順により効率的にラクトサミン誘導体を得る方法はこれまで全く知られていなかったものである。
【0018】
この出願の発明の新規ラクトサミン誘導体(アセトアミドチオアセテート化合物)を出発物質とすることにより、さらに公知のオキサゾリン化合物(例えばYohino et al.,Glycoconjugate J.1992,9,287)へと変換できる。すなわち、この出願の発明の新規ラクトサミン誘導体にN−ヨードスクシンイミド(N−iodosuccinimide:NIS)とトリフルオロメタンスルホン酸(trifluoromethanesulfonic acid:TfOH)を反応させることにより次式(III)
【0019】
【化5】
【0020】
(ただし、Rは置換基を有していてもよい炭化水素基である)
のラクトサミンオキザゾリン誘導体が得られるのである。この反応も、効率的に進行し、70%以上の高い収率で生成物を与える。反応は、室温で進行するが、NISとTfOHの添加の際には、0℃付近まで反応温度を低下することが好ましい。また、反応は、有機溶媒中で行われるが、溶媒としては、NISとTfOHが溶解するものであればよく、例えばベンゼン、トルエン、クロロホルム、ジクロロメタンなどが挙げられる。このオキサゾリン誘導体は、さらに(+)−camphorsulfonic acid(CSA)存在下に4−ペンテン−1−オールと反応させることにより次式(IV)
【0021】
【化6】
【0022】
(ただし、Rは置換基を有していてもよい炭化水素基である)
のN−アセトラクトサミンのO−グリコシド誘導体に変換される。このO−グルコシド誘導体の製造方法において、反応温度等の条件はとくに限定されない。好ましくは、室温〜100℃の反応温度で行う。このとき、反応は高収率で進行する。
【0023】
この出願の発明は、さらに、前記の新規ラクトサミン誘導体をラクトサミン由来のチオグリコシド誘導体に変換する方法をも提供する。すなわち、新規ラクトサミン誘導体に金属ナトリウムを接触させ、チオラートアニオンとした後、5−ブロモ−1−ペンテンと反応させることにより、次式(V)
【0024】
【化7】
【0025】
のラクトサミンチオグリコシド誘導体が得られる。このような反応は、高収率でS−グルコシド誘導体を与える。
【0026】
以上より、この出願の発明の新規ラクトサミン誘導体は、公知の化合物から容易に効率よく得られるだけでなく、さらに天然のO−グルコシドとS−グリコシドのいずれにも誘導が可能であるという点で付加価値の高いものである。したがって、この出願の発明の新規ラクトサミン誘導体は、医薬品、農薬等の原料や中間体として有用である。
【0027】
以下、実施例を示してこの出願の発明についてさらに詳細に説明する。もちろん、この出願の発明は、以下の実施例に限定されるものではないことはいうまでもない。
【0028】
【実施例】
反応式(A)に従って以下の化合物を合成した。
【0029】
【化8】
【0030】
<実施例1> O−(2,3,4,6−Tetra−O−acetyl−β−D−galactopyranosyl)−(1→4)−2−acetamido−3,6−di−O−acetyl−1−S−acetyl−2−deoxy−1−thio−β−D−glucopyranose(化合物2)の合成
Lemieuxらの方法により得られたO−(2,3,4,6−Tetra−O−acetyl−β−D−galactopyranosyl)−(1→4)−2−azido−3,6−di−O−acetyl−2−deoxy−α−D−glucopyranosyl Chloride(化合物1)(1.0g,1.50mmol)をアルゴンガス雰囲気下ピリジン(6mL)に溶解させ、室温でチオ酢酸(3mL)を加えた。反応溶液を同温度にて4時間攪拌し、その後、エバポレーターを用いて濃縮した。得られた残査をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒;トルエン:酢酸エチル=1:2)にて精製したところ、目的とする化合物2が747mg(71.6%)得られた。
【0031】
同定結果を表1に示した。
【0032】
【表1】
【0033】
<実施例2〉 O−(2,3,4,6−Tetra−O−acetyl−β−D−galactopyranosyl)−(1→4)−2−methyl−(3,6−di−O−acetyl−1,2−dideoxy−α−D−glucopyrano)−[2,1−d]−2−oxazoHne(化合物3)の合成
化合物2(4.35g,6.27mmol)の溶解した1,2−ジクロロメタン(40mL)溶液に、アルゴンガス雰囲気下、室温でN−Iodosuccinimide(5.60g,25.1mmol)を加え、その後、0℃に冷却した。その冷却した溶液にTrifulic acid(223μL,2.51mmol)を加え、室温で4時間攪拌した。反応溶液を、冷えた10wt% Na2S2O3、sat.NaHCO3、Brineにて順次洗浄し、最後に無水MgSO4で脱水乾燥した。ろ過後、濃縮し、残査をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒;トルエン:酢酸エチル:トリエチルアミン=100:200:1)にて精製したところ、無色透明のシラップ状のオキサゾリン誘導体(化合物3)が2.70g(70.0%)得られた。
【0034】
同定結果を表2に示した。
【0035】
【表2】
【0036】
<実施例3> n−Pentenyl O−(2,3,4,6−Tetra−O−acetyl−β−D−galactopyranosyl)−(1→4)−2−acetamido−3,6−di−O−acetyl−2−deoxy−β−D−glucopyranoside(化合物4)の合成
オキサゾリン誘導体(化合物3)(349mg,0.565mmol)、4−penten−1−ol(300μL,2.82mmol)、(+)−10−camphorsulfonic acid(92mg,0.396mmol)の溶解した1,2−ジクロロメタン溶液を、アルゴンガス雰囲気下、90℃で一晩反応させた。反応溶液を、冷水、sat.NaHCO3、Brineにて順次洗浄し、最後に無水MgSO4で脱水乾燥した。ろ過後、濃縮し、残査をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒;トルエン:酢酸エチル=1:2)にて精製したところ、グリコシド(化合物4)が312mg(78.6%)得られた。
【0037】
同定結果を表3に示した。
【0038】
【表3】
【0039】
<実施例4> n−Pentenyl O−(2,3,4,6−Tetra−O−acetyl−β−D−galactopyranosyl)−(1→4)−2−acetamido−3,6−di−O−acetyl−2−deoxy−1−thio−β−D−glucopyranoside(化合物5)
チオアセテート体(化合物2)(631mg,0.910mmol)の溶解した乾燥メタノール溶液に、アルゴンガス雰囲気下、−40℃で金属Na(21mg,0.910mmol)の溶解したメタノール溶液(5mL)を滴下した。同温度にて一時間攪拌した後に、5−bromo−1−pentene(323μL,2.73mmol)を滴下した。2時間後、イオン交換樹脂[Dowex 50Wx8(H+)]にてpHを7とし、濃縮した。一部のアセチル基の欠損が認められたので、残査をピリジン(6mL)と無水酢酸(3 mL)にて処理し、完全アセチル体へと変換した。常法による後処理後、残査をシリカゲルクロマトグラフィー(展開溶媒;クロロホルム;メタノール=40:1)にて精製したところ、チオグリコシド(化合物5)が517mg(78.9%)得られた。
【0040】
同定結果を表4に示した。
【0041】
【表4】
【0042】
【発明の効果】
以上詳しく説明したとおり、この出願の発明により、新規なラクトサミン誘導体とその製造方法が提供される。この誘導体は、公知のオリゴ糖から容易に誘導可能なだけでなく、天然のO−グルコシドやS−グルコシドへの変換も可能であり、医薬、農薬等の原料や中間体として有用性が高い。
Claims (4)
- 請求項1の新規ラクトサミン誘導体をラクトサミンアジドクロライドから一段階で効率的に製造する方法であって、ラクトサミンアジドクロライドを、塩基の存在下、チオ酢酸と反応させることを特徴とする新規ラクトサミン誘導体の製造方法。
- 請求項1の新規ラクトサミン誘導体をラクトサミン由来のオキザゾリン誘導体に変換する方法であって、新規ラクトサミン誘導体にN−ヨードスクシンイミド(N−iodosuccinimide:NIS)およびトリフルオロメタンスルホン酸(trifluoromethanesulfonic acid:TfOH)を反応させることを特徴とするラクトサミン誘導体からのラクトサミンオキザゾリン誘導体の製造方法。
- 請求項1の新規ラクトサミン誘導体をラクトサミン由来のチオグリコシド誘導体に変換する方法であって、新規ラクトサミン誘導体に金属ナトリウムを接触させ、チオラートアニオンとした後、5−ブロモ−1−ペンテンと反応させることを特徴とするラクトサミン誘導体からのラクトサミンチオグリコシド誘導体の製造方法。
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