JP3992121B2 - 排気ガス希釈サンプリング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は自動車の排気ガス測定などの環境技術分野に係わる。
【0002】
【従来の技術】
自動車排気ガスによる大気汚染の防止技術において、汚染成分の排出量を測定する方法として、CVS(Constant Volume Sampler)装置が1970年代から広く世界中で利用されてきた。これは排気ガスの全流量を清浄な空気で希釈して一定流量の希釈排気ガスとし、水分などの凝縮を防ぎながら一定流量である運転時間内の試料ガスをバッグにサンプリングしてガス分析する方法で、希釈排気ガスの中のある特定成分の濃度がその排出量に比例する装置である。
【0003】
【従来技術の問題点】
CVS装置は排気ガスの全量を希釈するために多量の清浄な希釈空気を必要とする。装置全体が大型となり、設置や配管のスペースやブロワーなどの動力も大きくなりコストも問題となる。近年自動車の排気ガス対策が進み、またCNGやメタノ一ル燃料など水分の割合の多い排気ガスへの対応やとくに低濃度の汚染成分排出のエンジンに適応する測定装置には清浄度の極めて高い乾燥希釈空気を多量に供給することが必要であるが、その実現が困難となってきている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
排気ガスの汚染成分の排出量を測定するための代表的試料をバッグにサンプリングするにはCVS装置と同様に排気ガスを希釈して水分などの凝縮を防ぐ必要がある。希釈排気ガスの量はガス分析などに必要な量で良い訳で、排気ガスのサンプリング量を少なくして、清浄度が極めて高いことが要求されてコストなどで多くの難点がある希釈空気の量をできるだけ少なくし、しかもCVS装置と同様に希釈排気ガスの中の汚染成分の濃度を全排気ガス流量の中の量に比例するようにすることが課題である。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決する手段のーつとしてサンプリングする排気ガスの質量流量を連続的に測定しながら抽出し、これと混合して希釈する清浄空気もしくはN2 ガスの流量を排気ガス流量の関数として希釈排気ガスの流量をサンプリングする排気ガス流量に比例し全排気ガス流量に逆比例するように制御する手段を選んだ。
【0006】
一般に石油系燃料の燃焼排気ガスの露点は55℃ないし65℃であるが、この流量を制御するためには圧力変化などが生じるので、80℃程度以上に保つ必要がある。こうした高温では熱式のマスフローメ−タを適用することは応答性などの点で適切ではない。流量を露点より遥かに高い温度で定温度・圧力において圧力損失少なく測定するにはラミナ−フロ−メ−タを用いることが適当である。実際の装置の特性を考慮して本発明では、抽出する排気ガスの流量ををラミナ−フロ−メ−タで圧力損失150mmH2 O以下で応答性と精度を高くして連続的に測定し、この測定した質量流量に対応する清浄な希釈空気またはN2 の流量を常温で利用する熱式などの通常のマスフロ−コントロ−ラで応答性良く制御する手段を採用した。
【0007】
ラミナ−フロメ−タでの圧力損失は大気圧力に比較して極めて小さいのでその下流側の管系の圧力も常圧に近く、吸引圧力の制御も必要無く、ポンプ負荷への影響も少ない。
【0008】
さらに希釈量が小さいとき希釈排気ガスの露点が問題になることがあるが、本装置では流量が少なく装置が小形化できるので容易に管系を45℃以上に保つようにして、1/2程度以内の希釈比にも対応できるようにした。
【0009】
【発明実施の形態】
本発明では実際に希釈排気ガスに用いる排気ガス流量は通常5L/min以下と少ないので、排気ガスのサンプリング系での遅れ時間を少なくするためにバイパス流を利用する。サンプリング系の温度は110℃程度に保ち、普通15L/min程度のバイパス流から1〜5 L/min程度の排気ガスが分流されて一定の入り口温度・圧力条件においてラミナ−フロ−メ−タに入る。この流量は直接的には制御されないが、希釈空気またはN2 と混合された希釈排気ガス流量としてはこれらを吸引する複数のポンプの全流量としてほぼ定まることになる。
【0010】
希釈空気またはN2 の流量da は流量と別に測定される排気ガスの全質量流量から計算されてマスフロ−コントロ−ラで制御される。排気ガスの全質量流量をXとし、ラミナ−フロ−メ−タで測定された希釈に用いる排気ガス質量流量をqとし、制御される希釈空気の質量流量をda として、定数Aと希釈比rとの関係を数式にすると次のようになる。
【0011】
da =q(A/X−1),r=q/(da +q) ここにAはある測定時間で選定する定数(A≧Xmax )であるが、装置として一定にしておいてもよい。この式のda になるように、信号Xと信号qとに応じてマスフローコントローラで希釈空気流量を制御する。
【0012】
希釈排気ガス流量はこれを吸引するポンプの合計した流量であるが、Xによって希釈比は変化する。しかし、Aが一定であれば希釈排気ガス中のある特定成分の濃度はその成分の排出値に比例する。したがってこの方式の希釈排気ガスから一定の流量でサンプリングしてバッグに捕集すれば、その運転時間内の排出量を代表する試料が得られる。
【0013】
【実施例】
本発明の実施例を図1の装置解説図によって説明する。エンジンの排気管系の末端であるテールパイプ51に挿入した排気サンプリングプローブ21をサンプリングプロ−ブホルダ−31に取付けて排気ガス1をほぼ一定流量で抽出し、約110℃に保たれたサンプリング系22を経由して15L/min程度の流量の排気ガス試料がガスコネクタ−23を通して本装置100に取り入れられる。高温フィルタ24を経て、排気ガス分流器25において必要な流量の希釈に用いる排気ガス2が分流され、残余のガスはバッファータンク26とバイパスポンプ27、およぴ流量調節弁28、流量モニタ−29を経由し排気排出コネクター30から装置外に導かれ、エンジン排気系の下流側で排気サンプリングプローブ21に影響しない位置の排気排出ダクト32に戻される。このようにして排気サンプリング系での遅れはほぼ0.2秒以内にすることができる。
【0014】
希釈に用いる排気ガス2は100℃程度に正確に温度制御されたラミナ−フロ−メ−タ10に入る。この流量はフロ−メ−タ用圧力センサ11で検出され、流量信号qとして制御回路50に入力される。ここでは下流側のシステムの流量によって流量が決定されるが、圧力損失は150mmH2 O以下とすることも可能である。
【0015】
希釈に用いる清浄な空気またはN2 は本装置100の外部から供給されるが、例えば図に例示するようにボンベ41から減圧弁42で一定圧力にしてガスコネク夕−43から本装置100に導入され、電磁弁44、3方電磁弁46を経て圧力計45で圧力指示しマスフローコントローラ20で流量制御されて希釈空気として供給される。この流量はほぼ室温に近い温度で作動する熱式のマスフローコントローラ20で制御回路50からの信号に応じて流量値da に応答性良く制御される。
【0016】
排気ガスと清浄な希釈空気とは混合部12でほぼ一定な圧力条件で混合され、希釈排気ガス3となる。この庄力は希釈排気ガス分流部13′から分流されて流量の適当な吸引ポンプ36の入り口側バッファ−タンク35によって脈動を少なくされ、ほぼ大気圧程度に保たれる。希釈排気ガスの一部は流量調節弁16で制御され流量計17でモニタ−されながら一定流量の希釈排気ガス試料4としてバッグサンプリングポンプ14で吸引され3方電磁弁18を経由してバッグ6などに圧力スイッチ7の上限圧以下で圧送され、補集されてガス分析用の試料5となる。バッグ6は多くの場合複数個装着され、各分岐管に電磁弁9を備えて切り替えて使用すると共に、着脱容易なコネクタ−8を備えておく。
【0017】
バッグからの試料ガスの排出には排出ポンプ47と電磁弁48,49が備えられている。これらによって試料ガスは分析ガスコネクタ−33から図に示していないガス分析装置に送出される。各電磁弁の切り替えによって試料ガスの導入やバッグを洗浄するパージ空気の導入・排出などを行う。
【0018】
希釈排気ガスはバッグサンプリングの他に吸引ポンプ36で吸引されて排出される部分があるが、例えばアルデヒド類などカルボニ−ル化合物の補集には100℃程度の高い温度のままで希釈排気ガス分流部13において分流して電磁弁19を経由し外部ガスサンプラ−コネクタ−52と吸引ガスコネクタ−54を介して装置100の外部に装着したカ−トリッジ式サンプラ−53を通過してポンプ37で吸引し流量調節弁38と流量モニタ−39により一定流量にして排気排出コネクタ34から排出するようにし必要なサンプリングに利用することもできる。このようにしてバッグサンプリング以外にもある範囲では希釈排気ガス試料の流量が一定でない場合にも本装置は適用できる。
【0019】
制御回路50には全排気ガス流量の信号Xと希釈に用いる排気ガス流量の信号qが入力され、希釈比に関係し最大希釈空気流量に制約される定数Aが設定してあり、希釈空気流量da の指示信号が次の式により計算されて発信される。
da =q(A/X−1)
制御回路50には希釈比rを次の式によって計算し表示するようにしてある。r=q/(da +q)
希釈排気ガスの露点とバッグ入り口までの温度には注意が必要で希釈比rが0.5より大きくなると露点は45℃以上にもなる。通常はr≦1/2で配管系を40℃以上にして露点より高く保てばよい。
【0020】
希釈排気ガスは吸引ポンプ36によって常に一部分が吸引されている。これらの希釈排気ガスは連続ガス分析などにも利用できる。バッグ6への希釈排気ガス試料の送入はバッグサンプリングポンプ14と流量調節弁16と流量計17で必要流量に設定し、3方電磁弁18の切り替えによってバッグサンプリングが必要な時間だけ行われる。このバッグサンプリングポンプ14の出・入り口に取り付けるバッファータンク15には実質的なガスの流れの遅れ時間が短いものを選ぶことが望ましい。
【0021】
【発明の効果】
本発明によると極めて小型な装置によって小流量の清浄な希釈用ガスを利用してエンジンの排気ガスのある特定成分の排出量に比例した濃度の希釈排気ガス試料が得られる。従来のCVS装置では全排気ガス流量に対応する希釈用ガスを必要としたのに対比すると、ほぼ1/1000程度の希釈用ガスでガス分析に必要なバッグ試料が得られる。また希釈排気ガスの試料は必要な料に設定して測定途中で変更してもある特定成分の濃度がその成分の排出値に比例する関係が保たれ広い範囲に適切な利用が可能である。
【0022】
とくに排気ガス対策が進んだエンジンにCVS装置など排気ガス希釈サンプリング装置を適用するとき希釈に用いるガス清浄度が重要になるが、本発明の装置では希釈用ガスが小流量であるために、高純度のボンベガスまたは清浄度の高いガス精製装置からの水分や不純物を含まないガスを利用することが可能となり、バックグランド濃度に影響されない信頼性の高い測定ができる。
【0023】
希釈排気ガスの露点に関連して、管路系の温度を容易に高くできるので、希釈比rを0.5以上大きくすることもできる。さらに、装置が全体として小形化できるために、測定室におけるスペースが小さくて済み、設置にも自由度が増し、排気ガスサンプリングについてのコストも大幅に低減できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の希釈排気ガスサンプリング装置の構成を示す装置解説図
【符号の説明】
1 装置に導入する試料排気ガス
2 希釈に用いる試料排気ガス
3 希釈排気ガス
4 バッグに捕集する希釈排気ガス試料
5 バッグに捕集された希釈排気ガス試料
6,6′,6 バッグ
7 圧カスイッチ
8,8′,8 コネクター
9,9′,9 電磁弁
10 ラミナ−フロ−メ−タ(LFE) 41 純空気ボンベ
11 フロ−メ−タ用圧力センサ 42 減圧弁
12 排気ガス・希釈ガス混合部 43 ガスコネ夕ター
13,13′ 希釈排気ガス分流部 44 電磁弁
14 サンプリングポンプ 45 圧力計
15 バッファータンク 46 電磁弁
16 流量調節弁 47 排出ポンプ
17 流量計 48 電磁弁
18 3方電磁弁 49 電磁弁
19 カルボニ−ルサンプリング用電磁弁 50 制御回路
20 マスフローコントローラ 51 テールパイプ
21 サンプリングプローブ 52 外部ガスサンプラ−コネ
22 サンプリング系 クタ−
23 ガスコネクター 53 カ−トリッジ
24 高温フィルタ 54 吸引ガスコネクタ−
25 分流器 60 ガス分析装置
26 バッファータンク 100 排気ガス希釈サンプリ
27 バイパスポンプ ング装置
28 流量調節弁
29 流量モニター
30 排気排出コネクター
31 サンプリングプローブホルダー
32 排気排出ダクト
33 分析ガスコネクター
34 排気排出コネクター
35 バッファータンク
36 ポンプ
38 流量調節弁
39 流量モニタ−
Claims (1)
- エンジンの排気ガスを露点以上の温度において流量測定をしながら連続的に抽出し、これに清浄な乾燥空気またはN2を混合して希釈する時に、希釈排気ガスの中のある特定成分の濃度が全排気ガス流量Xの中のある特定成分の排出量に比例するように、連続的に抽出する排気ガス流量の測定値qの関数として次式に従うように希釈に用いる清浄な空気またはN2の流量daを制御する排気ガス希釈サンプリング装置であって、その希釈排気ガスを一定流量でサンプリングすると、そのサンプリング時間内の排出量に比例したある特定成分の濃度が得られる排気ガス希釈サンプリング装置。
da=q(A/X−1) Aはある測定時間で選定する定数(A≧X max)
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