JP3989717B2 - 医療用排出用具 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、胸腔に貯留した気体や液体を排出させ、さらに集液を行うための医療用排出用具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
正常の胸腔内は常に陰圧(−5〜−20cmH2O)に保たれることで、肺は持続的に膨張しているが、気胸、胸部外傷などにより乱されると、肺が十分膨張できずに換気障害を生じる。一般に体腔、その中でも特に気胸等の胸部の治療に対する医療用具においては、カテーテルを胸腔内に留置し貯留容器に接続して、気体及び胸水等の液体を排出させるが、肺の膨張・回復を図るに際しては、カテーテルに接続する細管が水封止され、且つ上部近傍にエアー排出口を有する容器を用いる方法と、カテーテルにフラッターバルブと言われる逆止弁のキットを接続させ、更に集液するためのバッグ又はボトル状の容器をこのキットに接続する方法が行われている。
【0003】
前者の方法は、水封止の水を容器内に収納しておくため、水の供給及び漏出防止、排液による水位上昇に伴う水封管内の水の上部への移動を防ぐために多くの操作と注意が必要であるとともに、安全のため大きな容器が使用されており、携帯して持ち歩くのには非常に不便であった。
後者の方法は、フラッターバルブである逆止弁のキットとバッグ等の容器を接続して使用するという煩雑さがあり、携帯するにおいても逆止弁のキットとバッグ等がほぼ直列に配置されるため嵩張りが多く、こちらも携帯移動には不向きであった。
【0004】
これらを改善すべく、特に携帯性の向上を主目的に当発明者らは特開昭61−90669号公報にて貯留容器に逆止弁を内蔵した一体型のキットを開示し、基本的にはカテーテルの留置以降はこの発明品である一体型キットのみを接続すれば手技が完了することとなった。
【0005】
しかしながら、この一体型キットは排液量の貯留を考慮しているため、容器本体よりも上部に逆止弁を配置しており、排液量の少ない気胸患者にとっては必要以上に大きなものとなり、小型化が求められていた。また別の観点において、この一体型キットを含めた従来の用具を使用するにあたって、患者に接続した直後の胸腔内のエアー抜きを速やかに実施したい場合や、カテーテル等に詰まりが発生した場合の解除を目的に、シリンジやアスピレーションキット等の強制排気を行うための新たな用具が必要になる場合があり、余計なコストがかかっていた。また、従来の用具による胸腔内へのカテーテル留置は胸壁の刺入部位に局所麻酔を行い皮膚に小切開を加えてカテーテルを挿入しカテーテル先端が胸腔内に到達した時点で、カテーテルに内挿の穿刺針を引き抜いていた。その際カテーテルを通して胸腔内に外気が侵入するため、胸腔内の陰圧を保つのが困難であるとともに、当然のことながら外気の綺麗な手術室等での留置操作に限定されていた。更に挿入穿刺時の不具合として、胸壁の厚みが薄い小児では穿刺針挿入時に肺を穿刺してしまうことがあり、一方、胸壁の厚い肥満患者でも胸腔内への到達を見極めるのが難しく、やはり肺を穿刺してしまう危険性があった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、従来のこのような問題点を解決することを目的とするもので、特に少排液量症例用としてより小型で、必要に際し新たな別の用具を使用せずとも単体で強制排気操作が行え、カテーテル後端部に外部方向にのみ開口する逆止弁を設置することで穿刺針抜去の際に胸腔内へ外気の侵入を防ぐことができ、更に小児や肥満患者へのカテーテル挿入においてカニューラ針、ガイドワイヤー及びダイレーターを併用することでカテーテルを胸腔内に安全に挿入し、留置できることを特徴とする医療用排出用具を提供するものである。
【0007】
【発明が解決するための手段】
即ち本発明は、
(1)上部に排出口と排気口を供えた中空容器と、前記中空容器に着脱可能で接続時に気密性が確保される流入部とから構成されており、前記中空容器の排気口には外部方向にのみ開口する逆止弁が設置されており、また前記流入部には患者に留置されたカテーテルを接続するためのコネクターと、外周を保護カバーで覆われた前記容器内部方向にのみ開口する逆止弁とが設置されており、前記流入部に設置された逆止弁の保護カバーが容器内でかつ内壁に接触しないように配置され、更に容器背面の内壁と保護カバーとの間が5mm以上開いていると共に、前記中空容器はポンピング可能な弾性体であることを特徴とする医療用排出用具。
(2)前記排気口の逆止弁の出口に吸引源へ接続するためのコネクターが設置されるか、又は前記流入部の逆止弁側に吸引源へ接続するためのコネクターを備えたアダプターが着脱可能である(1)に記載の医療用排出用具。
(3)前記中空容器の上部又は前記流入部には衣類等に固定するための携帯手段が一体もしくは取り外し可能に設けられている(1)又は(2)に記載の医療用排出用具。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、図面をもとに本発明について詳細に説明する。図1から図6は本発明の実施例となる医療用排出用具の構造を示す図であり、図1はカテーテル留置後の本体の使用状態を示す正面図(a)と側面図(b)で、図2は本体から流入部を取り外した状態を示す側面図(a)と正面図(b)で、図3はカテーテルの穿刺針挿入口より穿刺針を挿入した状態を示す図で、図4は穿刺針をカテーテルの穿刺針挿入口より引き抜いた状態を示す図で、図5は本体と流入部を接続した状態を示す図で、図6は流入部にコネクター付きアダプターを接続した状態を示す図である。
【0009】
本体(1)と流入部(2)を接続した状態を図1及び図5に示す。本体(1)は上部近傍に排出口(3)と排気口(4)とを有し、必要な場合には側面に排液量を測定するための目盛(10)が付設される。排出口(3)は貯留した排液を排出する出口となるものであるが、本体(1)はエアー抜きのルートのない閉鎖系であるため排出口(3)のみで排液と外部空気との置換が行えるように十分な開口面積が確保される大きさであることが重要であり、外側外周には流入部(2)との着脱を行うための接続手段が設けられている。
【0010】
また、排気口(4)には本体(1)より外側に向かって開口する逆止弁B(9)が設置され、更にその先端には一時的な低圧持続吸引を行う際などの吸引源へのラインへ接続するためのコネクターB(8)が設置されている。本体(1)の材質は逆止弁の動きや排液の性状が見えるように透明であることに加え、人の手によるポンピング(押し潰した後に手を離すと元に戻る)可能な弾性体であるものが求められプラスチックやゴム製が好ましい。逆止弁B(9)はプラスチックやゴム製等の軟質材質の扁平チューブ状であり、その先端部は内面が密着しており、体内から排出された気体の流れは密着部を押し広げ排出できるが、逆方向からの流れは流入することができない構造となっている。
【0011】
流入部(2)は前記本体(1)の排出口(3)と着脱することが可能であり、嵌合部には前記同様に例えば排出口(3)と対になる接続手段が設けられ、接続時には気密性を確保されるものであり、必要により内部にパッキンを内蔵することも好ましい実施例の一つである。流入部(2)には本体(1)側に向かって開口する逆止弁A(6)が設置され、流入部(2)の上部には患者に留置されたカテーテルと接続するためのコネクターA(5)が設置されている。
【0012】
更に逆止弁A(6)には流入部(2)を本体(1)から取り外した際に逆止弁A(6)に雑菌が付着することを防止するために、外側に先端側が開口する保護カバー(7)が設置されている。このため逆止弁A(6)は完全に保護カバー(7)に埋没することが重要であり、先端位置(図1のA寸法)を5mm以上下げた方が好ましい。逆止弁A(6)は前述の逆止弁B(9)と同様の構造であり、保護カバー(7)は逆止弁A(6)の動きが見えるように透明でかつ逆止弁A(6)を保護するという観点より硬質材料であることが望ましく、プラスチックやガラス等が好ましい。
【0013】
ここで、本体(1)に対する流入部(2)の逆止弁A(6)と保護カバー(7)の配置について詳細に述べる。基本的に排液量の少ない場合を想定しており、より小型化を図るために逆止弁A(6)を含んだ保護カバー(7)は本体(1)内に配置されている。保護カバー(7)は先述の如く取り外し後の雑菌の付着を防止するものであるが、図1のカテーテル留置後の使用状態においては本体(1)内に貯留した排液が逆止弁A(6)と接触することにより逆止弁A(6)の先端に詰まりが発生することを防止する必要があり、保護カバー(7)の先端開口部は極力排液と接触しにくい箇所に配置されることが重要である。
【0014】
従って、患者携帯時の動きによる排液が本体(1)の側壁を上昇することにより保護カバー(7)内に侵入することを防止するため、本体(1)の内壁と保護カバー(7)は隙間をもたせておくことが好ましい。また、本体(1)の設置状態は一般に患者に携帯させているため、患者が立位の場合は図1の底面が下面となり、また、側位の場合は背面が下面となる。これを基に本体(1)の外寸と想定排液量により図1の底面及び背面を下面としたそれぞれの場合において想定排液貯留時に接触しないよう配置が決定される。特に本体(1)と保護カバー(7)の背面との隙間(図1のB寸法)は5mm以上開けたものが好ましい。
【0015】
更に本発明品の携帯性を向上させる目的で種々の携帯手段を備えることが望ましく、例えば本体(1)の上部又は流入部(2)に携帯用クリップ(11)を一体に設置したり、本体(1)の背面に粘着テープ等を設置することが考えられ、コストと操作性を鑑み適宜付設することが可能である。ただし、後述するカテーテル(16)の後端に流入部(2)が一体に設置されている場合は患者への挿入操作の妨げとならないよう、後から流入部(2)に携帯用クリップ(11)が取り付けられるよう着脱が可能なように設計されるのが好ましい。
【0016】
また、図1、2のように排気口(4)の逆止弁B(9)の先端には一時的な低圧持続吸引を行う際などの吸引源へのラインへ接続するためのコネクターB(8)を設置したり、図6のように流入部(2)にコネクターB(8)付きのアダプター(12)を本体(1)と同様の接続手段により着脱できる構造することも望ましい実施例の一つである。
【0017】
次にカテーテル(16)と流入部(2)及び逆止弁A(6)が一体となった医療用排出用具を説明する。カテーテル(16)の穿刺針挿入口(19)より穿刺針(13)を挿入した状態を図3に、穿刺針(13)をカテーテル(16)の穿刺針挿入口(19)より引き抜いた状態を図4に示す。穿刺針(13)は内針(14)と外筒針(15)の二重針から成り、内針(14)及び外筒針(15)の材質は特に限定されるものではないが、ステンレス等の金属加工品から成る。内針(14)と外筒針(15)との段差は後述するカテーテル(16)の先端チップ(17)にフックするために0.15〜0.50mmあることが好ましい。これは0.15mm未満では穿刺針(13)とカテーテル(16)を胸腔内に挿入する際、穿刺針(13)が先端チップ(17)を乗り越え、針先が突出し肺を穿刺する危険性が起こるためである。また、0.50mmを越えるとカテーテル直径が太くなり、患者に対して低侵襲でなくなる可能性がある。実用性を考えると段差寸法は0.3mmが好ましい。
カテーテル(16)は穿刺針挿入口(19)を有し、カテーテル(16)の先端は内針(14)と外筒針(15)の段差がフックされるようにカテーテル(16)の一体加工或いはX線不透過性の先端チップ(17)を接続している。カテーテル(16)の先端部近傍には効率良く胸腔内の気体、液体を排出するための側孔(18)が一個以上空いており、カテーテル(16)の後端には本体(1)接続側に向かって開口する逆止弁A(6)を備えた流入部(2)が設置されている。
【0018】
穿刺針挿入口(19)はカテーテル(16)内へ穿刺針(13)を挿入するための挿入口となるものであるが、穿刺針挿入口(19)の形状は切れ目形状を有し、大きさは穿刺針が挿入できるとともに治癒後のカテーテル(16)抜去時、穿刺針挿入口(19)が抜去抵抗とならない大きさと形状であることが望ましく、切れ目長は1〜10mmであることが好ましい。実用性を考えると、カテーテル(16)の長さは250〜400mm、カテーテル(16)の外径は1〜3mmであることが好ましい。穿刺針挿入口(19)の位置は胸腔内へのカテーテル(16)留置長さを考えると30〜150mmであることが好ましい。30mm未満では先端チップ(17)のカテーテル(16)との接着部分及び側孔(18)位置を確保することが難しく、150mmを越えると穿刺針抜去時に穿刺針挿入口(19)が胸腔外に位置する可能性があるため、カテーテル(16)を通して胸腔内に外気が侵入する危険性がある。
【0019】
次に本発明の医療用排出装置の使用方法を具体的に説明する。挿入部の皮膚を消毒し、局所麻酔後、カテーテルの太さに合わせて皮膚に小切開を加え、患者にカテーテルを留置後、カテーテルの末端にコネクターA(5)を接続することにより設置完了となる。また、カテーテル(16)と流入部(2)及び逆止弁A(6)が一体となったカテーテル(16)では胸腔に穿刺挿入後、カテーテル(16)から穿刺針(13)を引き抜き、カテーテル(16)先端を胸腔内の適切な位置に留置し流入部(2)と本体(1)の排出口(3)を接続することにより設置完了となる。通常は上記の使用方法で良いが、肥満患者や小児患者の場合にはセルジンガー法(ガイドワイヤーを使用したカテーテル挿入法)による挿入が好ましい。まず、カニューラ針を刺入する。カニューラ外套に沿ってガイドワイヤーを挿入し、カニューラ外套を抜去する。ガイドワイヤーに沿ってダイレーターを挿入し、刺入ルートを拡張する。ダイレーターを引き抜き、内針(14)を抜いた外筒針(15)をカテーテル(16)に挿入した状態で、ガイドワイヤーに沿ってカテーテル(16)を胸腔内に挿入する。外筒針(15)とガイドワイヤーを引き抜き、カテーテル(16)後端の流入部(2)と本体(1)の排出口(3)を接続することにより留置完了となる。
【0020】
設置時に速やかに胸腔内の排液または排気を実施したい場合には、本体(1)をポンピングさせると逆止弁A(6)と逆止弁B(9)が交互に開閉し胸腔内より強制排出を行うことができる。そして本体(1)内に胸水等の排液が貯留した場合には適宜流入部(2)を取り外し、排出口(3)より排液を排出する。このとき流入部(2)に付設した逆止弁A(6)が働いているため外気が胸腔内に侵入することはない。
【0021】
【発明の効果】
以上に述べた如く、本発明による医療用排出用具はより小型であるため携帯性が向上されており、また特別な吸引装置を必要とせずに本体をポンピングすることにより強制排出が行えるため、低コストでかつ簡便な用具として有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例となる医療用排出用具の本体の構造を示す(a)は正面図、(b)は側面図である。
【図2】本発明の一実施例となる医療用排出用具の本体から流入部を取り外した状態を示す(a)は側面図、(b)は正面図である。
【図3】本発明の一実施例である医療用排出用具のうち穿刺針とカテーテルを示す図である。
【図4】本発明の一実施例である医療用排出用具のうちカテーテルから穿刺針を引き抜いた状態を示す図である。
【図5】本発明の一実施例である医療用排出用具のうちカテーテルに本体を接続した状態を示す図である。
【図6】本発明の一実施例である医療用排出用具のうちカテーテルにコネクター付きアダプターを接続した状態を示す図である。
【符号の説明】
1 本体
2 流入部
3 排出口
4 排気口
5 コネクターA
6 逆止弁A
7 保護カバー
8 コネクターB
9 逆止弁B
10 目盛
11 携帯用クリップ
12 アダプター
13 穿刺針
14 内針
15 外筒針
16 カテーテル
17 先端チップ
18 側孔
19 穿刺針挿入口
Claims (3)
- 上部に排出口と排気口を供えた中空容器と、前記中空容器に着脱可能で接続時に気密性が確保される流入部とから構成されており、前記中空容器の排気口には外部方向にのみ開口する逆止弁が設置されており、また前記流入部には患者に留置されたカテーテルを接続するためのコネクターと、外周を保護カバーで覆われた前記容器内部方向にのみ開口する逆止弁とが設置されており、前記流入部に設置された逆止弁の保護カバーが容器内でかつ内壁に接触しないように配置され、更に容器背面の内壁と保護カバーとの間が5mm以上開いていると共に、前記中空容器はポンピング可能な弾性体であることを特徴とする医療用排出用具。
- 前記排気口の逆止弁の出口に吸引源へ接続するためのコネクターが設置されるか、又は前記流入部の逆止弁側に吸引源へ接続するためのコネクターを備えたアダプターが着脱可能である請求項1に記載の医療用排出用具。
- 前記中空容器の上部又は前記流入部には衣類等に固定するための携帯手段が一体もしくは取り外し可能に設けられている請求項1又は2に記載の医療用排出用具。
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