JP3988521B2 - 内燃機関のノッキング制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関のノッキングの発生を判定して、例えば点火時期制御や空燃比制御等、その必要とされる制御を行う内燃機関のノッキング制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関では一般に、ノッキングが生じていると判定されるときには点火時期を遅角させ、これとは逆にノッキングが生じていないと判定されるときには点火時期を徐々に進角させて点火時期を最適化する点火時期制御が行われている。
【0003】
そして、こうした内燃機関のノッキングの発生を判定する手法として、例えば特開平3−121269号公報に記載された手法が知られている。この装置では、内燃機関の振動の強度をノックセンサにより検出するとともに同振動(正確にはその対数変換値)についての強度分布を推定し、その強度分布に基づいてノック判定レベルを設定する。そして、この設定したノック判定レベルによりノッキングの発生を判定する。
【0004】
ところで、こうしたノッキング判定では、ノックセンサを通じて検出される振動強度が、これを入力し処理する回路によって定まるダイナミックレンジに全て収まる分布となっていることが大前提となっている。
【0005】
しかしながら、機関回転速度及び機関負荷が共に低い運転領域にあっては、ノックセンサにより検出される振動強度がごく小さくなって、同振動強度が上記ダイナミックレンジから外れてしまうことがある。そして、このとき、本来ノック判定レベルの設定に用いるべき振動強度の検出自体ができなくなる。従ってこの場合には、上記強度分布を実際の分布に即したかたちで推定することができなくなって適正なノッキング判定ができなくなり、ひいては上記点火時期制御の精度が著しく低下することとなる。なお、このように振動強度が小さくなったときにその強度信号を増幅するアンプを備えた装置もあるが、このような強度信号は、たとえ増幅したとしても、上記振動強度そのものが小さい場合にはやはり大きな信号とはなり得ない。そして通常、こうした強度信号は、A/D(アナログ/ディジタル)変換されて制御装置に取り込まれるため、このような増幅を経た信号は、自ずとその分解能も低下し、精度上の問題も無視できなくなる。
【0006】
一方、こうしてノッキング判定を行う装置は通常、その回路特性から自ずと定まる限界判定レベルを有している。この限界判定レベルとは、上記ノック判定レベルに対してその限界レベルを定めた値であり、同ノック判定レベルがこの値よりも低い値になったことをもって、適正なノッキング判定ができなくなったと判断する。
【0007】
そして従来は、こうした限界判定レベルよりも上記ノック判定レベルを高い値に留めておくことの可能な所定の回転速度(実行最低回転速度)を予め設定し、機関回転速度がその実行最低回転速度よりも低くなったときに適正なノッキング判定ができなくなったと判断するようにしている装置もある。このような装置によれば、不適正に判定されたノッキングの判定結果に基づいて点火時期が制御されてしまうといったような事態は回避されるようになり、ひいてはその制御精度の不要な低下を抑制することができるようになる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記ノックセンサや内燃機関には一般に個体差がある。そして、この個体差に起因してノックセンサから出力される信号(上記振動強度を示す強度信号)にばらつきが生じることは避けられない。
【0009】
このため、広い機関運転領域にわたってノッキング判定の実行を可能とすべく、上記実行最低回転速度を過度に低い値に設定すると、個体によっては、ノック判定レベルが上記限界判定レベルよりも小さな値となっているにもかかわらず、ノッキング判定が実行されてしまうといった不都合が生じるおそれがある。そして、このような不適正なノッキング判定に基づいて例えば上記点火時期制御が行われる場合には、その制御精度の低下も免れない。換言すれば、全ての個体について適正なノッキング判定を行うためには、上記実行最低回転速度についても、これに若干余裕を見込んだ高めの速度に設定せざるを得ない。そして、このことが、特に機関回転速度が低い領域での、適正なノッキング判定を可能ならしめる運転領域を狭める一因となっている。
【0010】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、適正なノッキング判定を可能とする運転領域の拡大を図り、ひいてはより広い運転領域にわたって機関出力維持のための適切な制御の実行を可能ならしめる内燃機関のノッキング制御装置を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
先ず、請求項1に記載の発明は、内燃機関に発生する振動をノックセンサで検出するとともに、この検出される振動の強度分布に基づいてノック判定レベルを設定し、前記検出される振動の強度とこの設定したノック判定レベルとの比較に基づきノッキングの発生の有無を判定してその必要とされる機関制御を行うとともに、前記ノッキングの発生の有無の判定についての実行可能領域を定める実行最低回転速度を設定し、機関回転速度がこの実行最低回転速度よりも低いときには前記ノッキングの発生の有無についての判定の実行を禁止する内燃機関のノッキング制御装置において、前記設定されるノック判定レベルと同ノック判定レベルが有効である下限の限界値を示す限界判定レベルとの比較に基づいて前記実行最低回転速度を学習更新する学習手段を備えることをその要旨とする。
【0012】
上記限界判定レベルは、ノックセンサの出力信号を入力し処理する回路の特性から自ずと定まる値であり、通常は同回路を設計する上で一義的に定められる値である。一方、上記ノック判定レベルとは、内燃機関やノックセンサの個体差に起因するばらつきを含んだ上で、同センサの出力信号に基づき算出設定される値である。すなわち、それら個体差によっては、このノック判定レベルと上記限界判定レベルとの相対的な関係において、上記実行最低回転速度に余裕が生じてくる場合もあり得る。この点、ノック判定レベルと限界判定レベルとの比較に基づいて実行最低回転速度を積極的に学習更新する上記構成によれば、上記個体差、すなわち上記余裕の有無に応じたかたちで、上記最低実行回転速度が定められる。このため、少なくともこの実行最低回転速度を若干余裕を見込んだ高めの速度に設定する従来の装置と比べれば、適正なノッキング判定を可能とする運転領域は確実に拡大されるようになる。しかも、この拡大される度合いは、上記余裕の度合いが大きいほど顕著となる。また、同構成によれば、内燃機関やノックセンサ等の個体差も好適に吸収されるようになる。
【0013】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の内燃機関のノッキング制御装置において、前記学習手段による前記実行最低回転速度の学習更新は、前記ノック判定レベルが前記限界判定レベルよりも大きいときには前記実行最低回転速度を所定値だけ低くし、前記ノック判定レベルが前記限界判定レベルよりも小さいときには前記実行最低回転速度を所定値だけ高くする態様で行われることをその要旨とする。
【0014】
上記構成によれば、ノック判定レベルが限界判定レベルよりも大きいとき、すなわち実行最低回転速度が適正な値に設定されていると判断されるときには、同実行最低回転速度が低い速度に更新される。そしてこのとき、適正なノッキング判定が可能な運転領域は拡大される。これとは逆に、ノック判定レベルが限界判定レベルよりも小さいとき、すなわち実行最低回転速度が不適正な値に設定されていると判断されるときには、同実行最低回転速度が高い速度に更新される。このときには、適正なノッキング判定が可能な運転領域は縮小される。このような判断結果に応じて実行最低回転速度を逐次更新することで、同実行最低回転速度を常に適切な値に調整することができるようになる。
【0015】
また、請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の内燃機関のノッキング制御装置において、前記学習手段は、前記検出される振動の強度が低くなる所定の機関運転状態に対応して前記実行最低回転速度の学習更新を実行することをその要旨とする。
【0016】
上記検出される振動の強度が高い機関運転領域では、ノック判定レベルが限界判定レベルを下回ることはない。そして、このような状態で上記実行最低回転速度についての学習更新が実行されるようなことがあると、同実行最低回転速度は上記余裕がある方向に不適正に更新されるようになる。この点、上記構成によれば、こうした状態での実行最低回転速度の学習更新が実質的に禁止され、ひいては同実行最低回転速度を適正な値に維持することができるようになる。
【0017】
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の内燃機関のノッキング制御装置において、前記学習更新が実行される前記所定の機関運転状態は、機関回転速度がその時点で学習されている前記実行最低回転速度の近傍でその上方にあり、且つ機関負荷が同機関のとり得るほぼ最低負荷域にある状態であることをその要旨とする。
【0018】
上記構成によれば、実行最低回転速度の学習更新は、機関回転速度が同実行最低回転速度よりも若干高く、且つ機関負荷もそのほぼ最低の領域にあるときにその実行が許可されるようになる。このような機関運転状態において上記ノック判定レベルと限界判定レベルとの比較に基づく実行最低回転速度の学習が行われることで、その学習値たる実行最低回転速度の値についての信頼性をより高いものとすることができるようになる。
【0019】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関のノッキング制御装置において、前記必要とされる機関制御が前記ノッキングの発生の有無に応じて機関点火時期を進角側または遅角側に制御する点火時期制御であり、前記ノッキングの発生の有無についての判定の実行が禁止されるときには、前記機関点火時期の少なくとも進角側への制御が規制されることをその要旨とする。
【0020】
上記構成によれば、適正なノッキング判定に基づき機関点火時期を精度良く制御可能な機関運転領域を好適に拡大することができるようになる。しかも、ノッキング判定の実行が禁止されるときには、機関点火時期が進角側に制御されること、すなわち機関点火時期がノッキングが生じ易くなる側に制御されることが規制される。これにより、少なくともノッキングの発生についてはこれを好適に抑制することができるようになる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明にかかる内燃機関のノッキング制御装置の一実施の形態について説明する。
【0022】
図1は本実施の形態にかかるノッキング制御装置が適用される多気筒(例えば4気筒、同図1では1気筒のみ図示している)内燃機関の概略構成を示している。なお、本実施の形態では、この内燃機関として、吸気通路内にて燃料を噴射するとともに、この噴射燃料と吸入空気とからなる混合気が燃焼室に吸入される構造のものを想定している。
【0023】
同図1に示すように、内燃機関10にあって、その燃焼室12の近傍には、同内燃機関10に生じる振動の強度に応じたノック信号KCSを出力するノックセンサ21が設けられている。また、クランクシャフト13の近傍には、その回転速度(機関回転速度)に応じた回転速度信号NEを出力する回転速度センサ22が設けられている。一方、吸気通路11に設けられたサージタンク14には、同タンク14内における圧力(吸気管内圧力)に応じた圧力信号、すなわち吸気圧信号PMを出力する吸気圧センサ23が設けられている。そして、上記クランクシャフト13と連結駆動されるカムシャフト15の近傍には、所定のカム角(ここでは圧縮上死点に対応するカム角)に対応して適宜のパルス信号(カム角信号)CAを出力するカム角センサ24が設けられている。
【0024】
また、内燃機関10には、燃焼室12内に吸入された混合気に点火させるための点火プラグ16が設けられている。この点火プラグ16には、点火コイル17及びイグナイタ18が電気的に接続されている。
【0025】
一方、本実施の形態にかかるノッキング制御装置には、例えばマイクロコンピュータ等からなる電子制御装置30が設けられている。この電子制御装置30には、その内部に設けられた入力回路30aを介して上記各センサ21,22,23,24から出力される各検出信号KCS,NE,PM,CAがそれぞれ取り込まれている。この電子制御装置30は、後述する実行最低回転速度を学習更新する学習手段の一部を構成している。
【0026】
この電子制御装置30は、上記燃焼室12に導入された混合気に点火する点火時期(上記圧縮上死点からの遅角量)を上記回転速度信号NEや吸気圧信号PMに基づいて演算している。また、この電子制御装置30は、上記ノックセンサ21にて検出されるノック信号KCSに基づいて内燃機関10におけるノッキングの発生を判定し、その判定結果に基づいて上記点火時期を調整している。
【0027】
そして、電子制御装置30は、こうして演算・調整された点火時期を指示する信号(点火信号)をイグナイタ18に出力する。イグナイタ18は、こうして入力される点火信号に基づき上記点火コイル17を駆動して、点火プラグ16に点火動作を行わせる装置である。これにより、燃焼室12内に吸入された混合気が上記演算された点火時期にて着火され、爆発・燃焼されて、適正な機関出力が維持されるようになっている。
【0028】
一方、本実施の形態にかかるノッキング制御装置では、上記ノックセンサ21を通じて検出される振動(正確には、上記ノック信号KCSの対数変換値lVpk)の強度分布が正規分布となることを前提に、その確率分布から求まる標準偏差や中央値に基づいてノック判定レベルを設定する。そして、このノック判定レベルによってノッキングの発生の有無を判定するようにしている。
【0029】
以下、こうしたノッキングを判定する処理の概要について、上記正規分布の一例を示す図2を参照しつつ説明する。
この処理では、初期値として標準偏差SGM及び中央値Vmが規定された図2に示すような正規分布について、それら標準偏差SGM及び中央値Vmをそのときどきのノック信号(信号強度)KCSの対数変換値lVpkに基づき随時更新している。
【0030】
具体的には、上記標準偏差SGMは以下のように更新される。
すなわち、上記対数変換値lVpkが「(中央値Vm−標準偏差SGM)<対数変換値lVpk<中央値Vm」といった範囲(図2中の範囲A)にあるときには、下式(1)に従って更新される。
標準偏差SGM=前回設定された標準偏差SGM’−2α …(1)
なお、上記係数「α」は、対数変換値lVpkと中央値Vmとの偏差に基づき算出される値(例えば、対数変換値lVpkと中央値Vmとの差を適宜の値で割った値)が用いられる。
【0031】
これとは逆に、対数変換値lVpkが上記範囲A以外の範囲にあるときには(図2中の範囲B)、下式(2)に従って更新される。
標準偏差SGM=前回設定された標準偏差SGM’+α …(2)
一方、上記中央値Vmは、具体的には、以下のように更新される。
【0032】
すなわち、上記対数変換値lVpkが「中央値Vm<対数変換値lVpk」といった範囲にあるときには、下式(3)に従って更新される。
中央値Vm=前回設定された中央値Vm’+β …(3)
なお、上記係数「β」についても上記係数「α」と同様に、対数変換値lVpkと中央値Vmとの偏差に基づき算出される値(例えば、対数変換値lVpkと中央値Vmとの差を適宜の値で割った値)が用いられる。
【0033】
これとは逆に、対数変換値lVpkが「中央値Vm≧対数変換値lVpk」といった範囲にあるときには、下式(4)に従って更新される。
中央値Vm=前回設定された中央値Vm’−β …(4)
このように、標準偏差SGM及び中央値Vmを更新することで、これら標準偏差SGM及び中央値Vmによって定まる正規分布は、そのときどきにおける対数変換値lVpkの分布に応じた正規分布に収束するようになる。
【0034】
そして、ノック判定レベルVkdが、このように随時更新されている標準偏差SGM及び中央値Vmに基づき下式(5)に従って設定される。
ノック判定レベルVkd=中央値Vm+u値×標準偏差SGM×係数k …(5)
なお、このu値は、上記回転速度センサ22により検出される機関回転速度、及び吸気圧センサ23により検出される吸入空気圧に基づいて「0〜3」の範囲で設定され、基本的には、上記燃焼室12内における混合気の燃焼圧力が高いときほど大きな値が設定されるようになっている。また、上記係数「k」は、上記u値と同様の態様で算出される値であって、ノック判定レベルVkdの微調整を行うための係数である。
【0035】
さらには、このときにおける上記対数変換値lVpkが上記設定されたノック判定レベルVkdよりも大きくなったことをもって、内燃機関10にノッキングが発生していると判定される。このようにノッキング発生の判定を行うことで、そのときどきのノック信号KCSの対数変換値lVpkの強度分布に応じたかたちでのノッキングの判定が可能となる。
【0036】
そして、本実施の形態にかかる点火時期制御にあっては、基本的に、ノッキングが発生していないときには点火時期を徐々に進角させ、これとは逆にノッキングが発生しているときには点火時期を遅角させるといった制御が実行される。このように、この装置では、上述したノッキング判定の結果に基づいて、上記点火時期制御等、内燃機関10に必要とされる制御を行うことで適正な機関出力が維持される。
【0037】
一方、本実施の形態の装置にあっても、上記ノック判定レベルVkdが有効である下限の限界値を示す前述した限界判定レベル(Vkdmin)を有している。また、同装置にあっては、上記設定されるノック判定レベルVkdがこの限界判定レベルVkdminを下回ったときにノッキング判定が実行されることを防止すべく、これも前述した実行最低回転速度(NEmin)が設定されている。
【0038】
そして、本実施の形態では、機関回転速度が上記実行最低回転速度NEmin以上の速度であるときには、ノック判定レベルVkdの算出、及び同レベルVkdに基づくノッキングの判定が実行される。なお、このとき上記点火時期制御にあっては、上述した点火時期の遅角側または進角側への制御が実行される。一方、機関回転速度が上記実行最低回転速度NEminを下回っているときには、ノック判定レベルVkdの算出、及びノッキングの判定が共に禁止される。なお、このとき上記点火時期制御にあっては、機関点火時期の遅角側及び進角側への変更が共に禁止される。そして、このときには、既に学習され、記憶されている機関点火時期に応じて点火動作が実行される。
【0039】
ここで、限界判定レベルVkdminは、前記電子制御装置30の入力回路30aの回路特性から自ずと定まる値であって、同入力回路30aを設計する上で一義的に定められた値である。一方、ノック信号KCSに基づき設定されるノック判定レベルVkdは、内燃機関10や、ノックセンサ21等の個体差に起因するばらつきを含んだ上で、ノックセンサ21の出力信号に基づき算出、設定される値である。従って、それら個体差によっては、上記ノック判定レベルVkdと限界判定レベルVkdminとの相対的な関係において、上記実行最低回転速度NEminに余裕が生じることがある。すなわち、場合によっては、ノック判定レベルVkdが限界判定レベルVkdminよりもはるかに大きい値であるにもかかわらず、実行最低回転速度NEminが上記個体差によって比較的高い速度に設定されていることをもって、ノッキング判定が禁止されるといった事態が生じることがある。
【0040】
そこで、本実施の形態にあっては、この点に着目し、上述した態様で用いられる実行最低回転速度NEminを、上記ノック判定レベルVkdと限界判定レベルVkdminとの比較に基づき適宜学習更新するようにしている。
【0041】
これにより、実行最低回転速度NEminが、ノック判定レベルVkdと限界判定レベルVkdminとの相対的な関係に応じたかたちで更新されるようになる。よって、実行最低回転速度NEmin、ひいては同実行最低回転速度NEminによって規定されるノッキングの発生の有無の判定についての実行可能領域が、同判定についての判定精度が維持された上で、個々の内燃機関10やノックセンサ21毎にその個体差に即したかたちで更新設定されるようになる。
【0042】
また、本実施の形態では、こうした実行最低回転速度NEminの更新を、前記ノック信号KCSが小さな値となる所定の機関運転状態であるときにのみ実行するようにしている。具体的には、上記所定の機関運転状態として、以下の(条件a)及び(条件b)が共に満たされる状態が採用される。
(条件a):機関回転速度が下式(6)により規定される範囲内にあること。
なお、上記所定速度NEaは、実行最低回転速度NEminを更新する上で好適な回転速度範囲を規定するための値であり、実験などにより求められる値である。
(条件b):機関負荷率が下式(7)により規定される範囲内にあること。
なお、上記機関負荷率klとしては、吸気圧信号PMに基づき算出されるそのときどきの吸入空気量を全負荷時における吸入空気量で除した値が用いられる。また、上記最低負荷率klmin、及び係数γは、機関負荷が内燃機関10のとり得るほぼ最低負荷域にあることを判断するために用いられる機関負荷率の範囲を規定するための値であり、実験などによりそれぞれ求められる値である。
【0043】
すなわち、本実施の形態では、これら(条件a)及び(条件b)を通じて、機関回転速度が実行最低回転速度NEminよりも若干高く、且つ機関負荷もその最低の領域にあるときにのみ、同実行最低回転速度NEminの学習更新が実行されるようになる。
【0044】
ここで、ノック信号KCSが小さな値で推移しているときには、以下の(関係a)及び(関係b)が共にノッキング判定の実行を許容する関係、若しくは同判定の実行を禁止する関係になっていることをもって、実行最低回転速度NEminが適正な値に設定されていることを判断することが可能である。
(関係a):機関回転速度と実行最低回転速度NEminとの関係。
(関係b):ノック判定レベルVkdと限界判定レベルVkdminとの関係。
【0045】
本実施の形態にあっては、上記(条件a)及び(条件b)を通じて、上記ノック信号KCSが小さな値で推移しているときの中でも、特に機関回転速度が実行最低回転速度NEminよりも若干高い速度で推移しているときにのみ、同実行最低回転速度NEminの学習更新の実行が許可される。これにより、上記(関係a)がノッキング判定の実行を許容する関係であることを前提として、上記学習更新が実行されるようになる。
【0046】
このため、上記(関係a)及び(関係b)のうち、(関係b)のみを監視し、その関係がノッキング判定の実行を許容する関係になっていることのみをもって、実行最低回転速度NEminが適正な値に設定されていると判断することが可能になる。具体的には、ノック判定レベルVkdが限界判定レベルVkdminよりも大きいときには、実行最低回転速度NEminが適正な値に設定されていると判断される。また、これとは逆に、上記ノック判定レベルVkdが限界判定レベルVkdmin以下であるときには、実行最低回転速度NEminが不適正な値に設定されていると判断される。
【0047】
さらに、本実施の形態では、実行最低回転速度NEminが適正な値に設定されていると判断されるときには、同実行最低回転速度NEminを所定値だけ低い速度に更新するようにしている。すなわち、このとき、ノッキング判定についての実行可能領域が拡大される。また、これとは逆に、実行最低回転速度NEminが適正な値に設定されていると判断されるときには、同実行最低回転速度NEminを所定値だけ高い速度に更新するようにしている。すなわち、このときには上記実行可能領域が縮小される。このように、実行最低回転速度NEminをその適正性についての判断結果に応じて逐次更新することで、同実行最低回転速度NEminが常に適切な値に調整される。
【0048】
以下、こうした実行最低回転速度NEminの更新処理を含むノッキング発生を判定する処理の処理手順について、図3〜図6に示すフローチャートを参照してそれぞれ詳細に説明する。
【0049】
なお、図3はノッキング判定処理の処理手順を、図4は標準偏差SGMの更新処理の処理手順を、図5は中央値Vmの更新処理の処理手順を、図6は実行最低回転速度NEminの更新処理の処理手順をそれぞれ示している。これらフローチャートに示される一連の処理は、例えば所定の時間を周期とする割り込み処理として上記電子制御装置30によりそれぞれ実行される。
【0050】
図3に示すように、この処理では先ず、このときの機関回転速度が実行最低回転速度NEmin以上の速度であるか否かが判断される(ステップS10)。そして、機関回転速度が実行最低回転速度NEminよりも低い速度であると判断される場合には(ステップS10:NO)、以下の処理を行うことなく、本処理が一旦終了される。
【0051】
その後、本処理が繰り返され、機関回転速度が実行最低回転速度NEmin以上の速度になったと判断されるようになると(ステップS10:YES)、以下の処理の実行が開始される。
【0052】
すなわち先ず、上記ノックセンサ21を通じてノック信号KCSが読み込まれる(ステップS20)。具体的には、予め実験等により求められたノッキングが生じ得る所定期間において、ノックセンサ21の出力信号のピーク値が保持され、このピーク値がノック信号KCSとして読み込まれる。
【0053】
その後、このノック信号KCSが、下式(8)に従って対数変換される(ステップS30)。
対数変換値lVpk=A×log(ノック信号KCS/a) …(8)
なお、上記係数「A」及び「a」は共に任意の定数(例えば、A=64/log(4),a=4)である。また、この対数変換は、通常の関数演算により行う構成としてもよいが、マップ値を直線補間などするマップ演算にて行う構成とすることで、その実現もより容易となる。
【0054】
そしてその後、以下に記載する処理(ステップS40〜S60)を通じて、この対数変換値lVpkに基づく標準偏差SGMや中央値Vmの更新が行われる。ここで、上記ノック信号KCSには内燃機関10における燃焼による振動とは関係のない機械振動、すなわちノイズ成分が含まれている。そして、このノイズ成分である機械振動成分は機関稼働状態に応じて変化するため、全ての機関稼働状態においてノック信号KCSの対数変換値lVpkに基づく上記標準偏差SGM及び中央値Vmの更新を実行すると、これら標準偏差SGM及び中央値Vmに上記機械振動成分の変動までもが反映されるようになる。すなわちこの場合には、これら標準偏差SGM及び中央値Vmに基づき設定されるノック判定レベルVkdも変化するようになり、ノッキングの発生を判定する上では好ましくない。
【0055】
このため、本実施の形態においては、ノック信号KCSに含まれるこうした機械振動成分が比較的少ないときを内燃機関10の安定稼働状態とし、同内燃機関10がこうした安定稼働状態にあるときにのみ上記標準偏差SGMの更新を行うようにしている。
【0056】
なお、内燃機関10が安定稼働状態にないときにあっても、中央値Vmの更新に限ってはこれを許可するようにしたのは、以下の理由による。
上記機械振動成分の影響を小さくする上では、内燃機関10が安定稼働状態にないとき上記標準偏差SGM及び中央値Vmの更新を共に禁止する、すなわち上記正規分布の更新自体を禁止することが一般には有効と考えられる。しかしながら、こうした構成では、正規分布の更新が禁止されている期間、同正規分布と実際の対数変換値lVpkによる強度分布とが徐々にずれ、更新が再開されたときの追従性が低下するようになる。このため、こうした追従性の観点から見た場合には、上記機械振動成分の影響が大きいときであっても、上記正規分布の更新を行い続けることが望ましい。
【0057】
一方、上記ノック信号KCS自体は、常にこの機械振動成分の分だけ大きな値となる。従って、こうしたノック信号KCSの対数変換値lVpkに基づいて例えば上記標準偏差SGMのみを更新し続けた場合には、この対数変換値lVpkが「中央値Vm<対数変換値lVpk」といった範囲の値になることが多くなる。すなわち、標準偏差SGMが前記関係式(2)に基づき更新されることが多くなる。その結果、標準偏差SGMが急激に大きな値になり、これに伴ってノック判定レベルVkdも急激に変化するようになる。他方、上記対数変換値lVpkに基づいて中央値Vmのみを更新した場合には、同中央値Vmが大きな値になるとはいえ、このときのノック判定レベルVkdは上述した標準偏差SGMによる変化ほど急激には変化しない。本実施の形態にあっては、こうした理由により、内燃機関10が安定稼働状態にないときであっても、中央値Vmの更新のみはこれを選択的に許可するようにしている。
【0058】
以下、こうした標準偏差SGMや中央値Vmを更新する処理について、具体的に説明する。
この処理では先ず、内燃機関10が安定稼動状態であるか否かが判断される(ステップS40)。具体的には、以下の各条件が全て満たされるか否かが判断される。
・回転速度センサ22を通じて検出される機関回転速度が所定範囲内である。
・吸気圧センサ23を通じて検出される吸入空気の圧力が所定圧力以下である。
・同吸入空気の圧力の所定時間当たりの変化量が所定量以下である。
【0059】
そして、これら各条件が全て満たされており、内燃機関10が安定稼働状態であると判断される場合には(ステップS40;YES)、その後、上記対数変換値lVpkに基づいて標準偏差SGM及び中央値Vmの更新(ステップS50及びステップS60)が行われる。
【0060】
一方、安定稼働状態ではないと判断される場合には(ステップS40;NO)、標準偏差SGMの更新を禁止し(ステップS50の処理をジャンプし)、上記対数変換値lVpkに基づく中央値Vmの更新(ステップS60)のみが行われる。
【0061】
上記標準偏差SGMの更新は、以下の処理を通じて行われる。
図4に示されるように、この処理では先ず、このときの対数変換値lVpkが「(中央値Vm−標準偏差SGM)<対数変換値lVpk<中央値Vm」といった範囲にあるか否かが判断される(ステップS51)。そして、同範囲にあると判断される場合には(ステップS51;YES)、前記関係式(1)に基づいて標準偏差SGMが更新される(ステップS52)。
【0062】
一方、上記範囲以外の範囲にあると判断される場合には(ステップS51;NO)、前記関係式(2)に基づいて標準偏差SGMが更新される(ステップS53)。こうして標準偏差SGMが、上記対数変換値lVpkに基づく判断を通じて、上記各態様(ステップS52,S53)で更新された後、本処理が一旦終了される。
【0063】
また、上記中央値Vmの更新は、以下の処理を通じて行われる。
図5に示されるように、この処理では先ず、このときの対数変換値lVpkが「中央値Vm<対数変換値lVpk」といった範囲にあるか否かが判断される(ステップS61)。そして、同範囲にあると判断される場合には(ステップS61;YES)、前記関係式(3)に基づいて中央値Vmが更新される(ステップS62)。これとは逆に、対数変換値lVpkが「中央値Vm≧対数変換値lVpk」といった範囲にあると判断される場合には(ステップS61;NO)、前記関係式(4)に基づいて中央値Vmが更新される(ステップS63)。
【0064】
こうして中央値Vmが、上記対数変換値lVpkに基づく判断を通じて、上記各態様(ステップS62,S63)で更新された後、本処理が一旦終了される。
本実施の形態にかかるノッキング判定処理にあっては、こうしたかたちで標準偏差SGMや中央値Vmを更新した後、それら更新した標準偏差SGMや中央値Vmにより規定される正規分布に基づいてノック判定レベルVkdの設定が行われる。
【0065】
すなわち先ず、上記標準偏差SGM及び中央値Vmにより規定される正規分布についての前記u値が設定される(図3のステップS70)。その後、ノック判定レベルVkdが、このu値、上記標準偏差SGM、及び中央値Vmに基づいて、前記関係式(5)から算出される(ステップS80)。
【0066】
そしてその後、このノック判定レベルVkdと上記対数変換値lVpkとの比較を通じて内燃機関10におけるノッキングの発生の有無が判定される(ステップS90)。すなわち、上記対数変換値lVpkが「ノック判定レベルVkd<対数変換値lVpk」といった範囲にある場合には、内燃機関10にノッキングが発生していると判定される。これとは逆に、上記対数変換値lVpkが「ノック判定レベルVkd≧対数変換値lVpk」といった範囲にある場合には、内燃機関10にノッキングが発生していないと判定される。
【0067】
本実施の形態の装置では、こうしてノッキングの発生の有無についての判定がなされた後、実行最低回転速度NEminの更新処理が実行される(ステップS100)。
【0068】
具体的には、図6に示されるように、先ず機関回転速度が前記関係式(6)により規定される範囲内にあるか否かに基づいて、機関回転速度が実行最低回転速度NEminよりも若干高い速度範囲にあるか否かが判断される。(ステップS101)。
【0069】
そして、機関回転速度が上記範囲内にあると判断される場合には(ステップS101:YES)、次に、機関負荷率klが、前記関係式(7)により規定される範囲内にあるか否かが判断される(ステップS:102)。
【0070】
そして、機関負荷率klが上記範囲内にあると判断される場合には(ステップS102:YES)、次に、上記算出されたノック判定レベルVkdが限界判定レベルVkdminよりも大きいか否かが判断される(ステップS103)。
【0071】
ここで、ノック判定レベルVkdが限界判定レベルVkdminよりも大きいと判断される場合には(ステップS103:YES)、実行最低回転速度NEminが所定値NE1だけ低い速度に更新された後(ステップS104)、本処理は一旦終了される。なお、この所定値NE1は、実行最低回転速度NEminを適切な値に学習更新することが可能な値であり、これも実験などにより求められた上で、予め電子制御装置30に記憶されている。
【0072】
一方、ノック判定レベルVkdが限界判定レベルVkdmin以下であると判断される場合には(ステップS103:NO)、実行最低回転速度NEminが上記所定値NE1だけ高い速度に更新された後(ステップS105)、本処理は一旦終了される。
【0073】
なお、機関回転速度が前記関係式(6)により規定される範囲内にない場合(ステップS101:NO)には、実行最低回転速度NEminを更新する環境が整っていないとして、本処理が一旦終了される。また、同様の理由で、機関負荷率klが前記関係式(7)により規定される範囲内にない場合にも(ステップS101:YES、及びステップS102:NO)、本処理が一旦終了される。
【0074】
以下、上述した実行最低回転速度NEminの更新処理がどのように行われるのかを、図7に示すタイミングチャートを参照しつつ説明する。
なお、図7は、機関負荷率klが上記関係式(7)に規定される範囲内にある場合における実行最低回転速度NEminの更新態様の一例を示している。また、図7において、図7(a)は機関回転速度の推移を示し、図7(b)は実行最低回転速度NEminの更新態様についての推移を示し、図7(c)はノック判定レベルVkdの設定態様についての推移を示している。さらに、図7中に示した各タイミングt1〜t9は、上記ノッキング判定処理の実行タイミングを示している。
【0075】
さて、図7(c)に示されるように、上記判定処理により設定されるノック判定レベルVkdが限界判定レベルVkdmin(図7中に一点鎖線にて示す)よりも大きな値であるときには、図7(b)に示されるように、実行最低回転速度NEminが上記ノッキング判定処理が実行される毎に所定値NE1ずつ低い速度に更新される(タイミングt1,t2)。
【0076】
その後、図7(c)に示されるように、ノック判定レベルVkdが限界判定レベルVkdmin以下の値に設定されると(タイミングt3)、図7(b)に示されるように、実行最低回転速度NEminが所定値NE1だけ高い速度に更新される。そしてその後、ノック判定レベルVkdが限界判定レベルVkdmin以下に設定されている期間(タイミングt3〜t6)、図7(b)に示されるように、実行最低回転速度NEminが所定値NE1だけ高い速度に更新され続ける。
【0077】
その後、図7(a)に示されるように、機関回転速度が実行最低回転速度NEminを下回ると(タイミングt6)、図7(c)に示されるように、その後においてノック判定レベルVkdの算出が禁止される(タイミングt7)。なお、このとき併せて、実行最低回転速度NEminの学習更新、及び点火時期制御による機関点火時期の遅角側及び進角側への制御が共に禁止される。
【0078】
その後、図7(a)に示されるように、機関回転速度が実行最低回転速度NEminを上回ると(タイミングtP)、その直後における上記ノッキング判定処理の実行タイミングにおいて(タイミングt8)、ノック判定レベルVkdの算出が開始される。このとき併せて、実行最低回転速度NEminの更新、及び点火時期制御についてもこれが開始される。なお、本例にあって、以後に上記判定処理が実行されるタイミング(タイミングt8,t9)では、それぞれノック判定レベルVkdが限界判定レベルVkdminよりも高いことをもって、実行最低回転速度NEminが所定値NE1だけ低い速度に更新される。
【0079】
ここで、実行最低回転速度NEminが若干余裕を見込んだ高めの速度に設定される場合における同速度NEminの一例を図7中に二点差線で示す。このように実行最低回転速度NEminが設定されている装置にあっては、図7中の全てのタイミング(タイミングt1〜t9)において、上記ノッキング判定が禁止される。これに対し、図7に実線で示した本例にあっては、上述した態様で実行最低回転速度NEminを学習更新することで、同図7中におけるタイミングt7に限ってノッキング判定の実行が禁止されるようになる。すなわち、本例にあっては、実行最低回転速度NEminが若干余裕を見込んだ高めの速度に設定される場合と比べて、適正なノッキング判定を可能とする運転領域が拡大されるようになり、ひいては適正なノッキング判定に基づき点火時期を精度良く制御可能な機関運転領域が拡大されるようになる。
【0080】
以上説明したように、本実施の形態によれば、以下に記載する効果が得られるようになる。
(1)本実施の形態では、ノック判定レベルVkdと限界判定レベルVkdminとの比較に基づいて実行最低回転速度NEminを更新するようにした。具体的には、ノック判定レベルVkdが限界判定レベルVkdminよりも大きいときには同実行最低回転速度NEminを所定値NE1だけ低い速度に更新するようにした。また、これとは逆に、上記ノック判定レベルVkdが限界判定レベルVkdmin以下であるときには同実行最低回転速度NEminを所定値NE1だけ高い速度に更新するようにした。これにより、そのときどきに設定されるノック判定レベルVkdと限界判定レベルVkdminとの関係、すなわち内燃機関10や、ノックセンサ21等の個体差が好適に反映される関係に応じたかたちで、実行最低回転速度NEminを更新することができるようになる。このため、実行最低回転速度NEmin、ひいては同実行最低回転速度NEminによって規定されるノッキング判定についての実行可能領域を、その判定精度を維持した上で、個々の内燃機関10やノックセンサ21毎にその個体差に即したかたちで更新設定することができるようになる。よって、より広い運転領域にわたって機関出力維持のための適切な制御を行うことができるようになる。
【0081】
(2)本実施の形態では、機関回転速度が実行最低回転速度NEminと同実行最低回転速度NEminに所定速度NEaを加算した速度とにより定められた速度範囲内にあり、且つ機関負荷が内燃機関10がとり得るほぼ最低負荷域にあるときにのみ、同実行最低回転速度NEminを更新するようにした。これにより、前記(関係a)及び(関係b)のうち、「(関係a):機関回転速度と実行最低回転速度NEminとの関係」がノッキング判定の実行を許容する関係であることを前提として、上記更新が実行されるようになる。従って、ノック判定レベルVkdが限界判定レベルVkdminよりも大きな値に設定されていることのみをもって、実行最低回転速度NEminが適正な値に設定されていることを好適に判断することができるようになる。
【0082】
なお、上記実施の形態は、以下のように変更して実施してもよい。
・上記実施の形態では、実行最低回転速度NEminの更新量として、同実行最低回転速度NEminが適正な値に設定されているときにおける高い速度側への更新量と、同実行最低回転速度NEminが不適正な値に設定されているときにおける低い速度側への更新量とを同じ所定値NE1に設定した。実行最低回転速度NEminを適切な値に調整することが可能であれば、それら更新量を異なる量に設定してもよい。
【0083】
・上記実施の形態では、ノック判定レベルVkdが限界判定レベルVkdminよりも大きいときには実行最低回転速度NEminを低い速度に更新するようにした。また、これとは逆に、ノック判定レベルVkdが限界判定レベルVkdmin以下であるときには実行最低回転速度NEminを高い速度に更新するようにした。これに限らず、実行最低回転速度NEminを適切な値に調節可能であれば、その更新態様は適宜変更可能である。
【0084】
・上記実施の形態では、実行最低回転速度NEminの更新を、機関回転速度が同速度NEminと同速度NEminに所定速度NEaを加算した速度とにより定まる速度範囲内にあり、且つ機関負荷が内燃機関10がとり得るほぼ最低負荷域にある所定の機関運転状態であるときにのみ実行するようにした。この所定の機関運転状態は、これに限られない。ノック信号KCSが小さな値であるときにのみ実行最低回転速度NEminの更新が実行されるのであれば、所定の機関運転状態は任意に変更可能である。こうした構成にあっても、前記(関係a)及び(関係b)が共にノッキング判定の実行を許容する関係となっている、若しくは共に同判定の実行を禁止する関係となっていることをもって、実行最低回転速度NEminが適正な値に設定されていることを判断することはできる。
【0085】
・また、こうした所定の機関運転状態は、ノック信号KCSが小さな値となる機関運転状態にも限定されない。実行最低回転速度NEminの適正性についての判断精度の好適な確保と、同実行最低回転速度NEminの好適な更新とが共に実現されるのであれば、上記所定の機関運転状態は任意に変更可能である。さらには、こうした所定の機関運転状態を省略して、内燃機関10の全運転領域にわたって、実行最低回転速度NEminについての適正性の判断及びその判断結果に基づく同速度NEminの更新を実行することも可能である。なお、これら構成にあっても、例えばノック判定レベルVkdと限界判定レベルVkdminとの比等に基づいて、それらノック判定レベルVkdと限界判定レベルVkdminとの関係がノッキング判定の実行を許容する関係になっているか否かを判断することは可能である。一方、機関回転速度と実行最低回転速度NEminとの関係が上記判定の実行を許容する関係になっているか否かについても、例えば機関回転速度と実行最低回転速度NEminとの比等に基づき判断することが可能である。そして、それら判断結果の比較を通じて、実行最低回転速度NEminの適正性を判断することはできる。
【0086】
・上記実施の形態では、ノッキング発生の有無に応じて制御量が調節される機関制御の一例として点火時期制御を挙げた。こうした機関制御としては他に、空燃比制御等も挙げられる。要は、ノッキング発生の有無の判定に基づき制御量が調節される機関制御や、ノッキングが発生していると判断されたときに制御量が規制される機関制御が実行される装置であれば、本発明を適用することによって、精度の良い制御が可能な運転領域を好適に拡大することはできる。
【0087】
・上記実施の形態では、ノック信号KCSの対数変換値lVpkの強度分布が正規分布となることを前提に、その確率分布から求まる標準偏差SGMや中央値Vmに基づいてノック判定レベルVkdを設定する装置に本発明を適用するようにしたが、これに限られない。要は、ノック信号KCSについての何らかの分布を推定するとともに同分布に基づきノック判定レベルを設定する装置であれば、本発明を適用することは可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる内燃機関のノッキング制御装置の一実施の形態についてその概略構成を示すブロック図。
【図2】推定される正規分布の一例を示す図。
【図3】ノッキングを判定する際の処理手順を示すフローチャート。
【図4】標準偏差を更新する際の処理手順を示すフローチャート。
【図5】中央値を更新する際の処理手順を示すフローチャート。
【図6】実行最低回転速度を更新する際の処理手順を示すフローチャート。
【図7】実行最低回転速度の更新態様の一例を示すタイミングチャート。
【符号の説明】
10…内燃機関、11…吸気通路、12…燃焼室、13…クランクシャフト、14…サージタンク、15…カムシャフト、16…点火プラグ、17…点火コイル、18…イグナイタ、21…ノックセンサ、22…回転速度センサ、23…吸気圧センサ、24…カム角センサ、30…電子制御装置、30a…入力回路。
Claims (5)
- 内燃機関に発生する振動をノックセンサで検出するとともに、この検出される振動の強度分布に基づいてノック判定レベルを設定し、前記検出される振動の強度とこの設定したノック判定レベルとの比較に基づきノッキングの発生の有無を判定してその必要とされる機関制御を行うとともに、前記ノッキングの発生の有無の判定についての実行可能領域を定める実行最低回転速度を設定し、機関回転速度がこの実行最低回転速度よりも低いときには前記ノッキングの発生の有無についての判定の実行を禁止する内燃機関のノッキング制御装置において、
前記設定されるノック判定レベルと同ノック判定レベルが有効である下限の限界値を示す限界判定レベルとの比較に基づいて前記実行最低回転速度を学習更新する学習手段を備える
ことを特徴とする内燃機関のノッキング制御装置。 - 前記学習手段による前記実行最低回転速度の学習更新は、前記ノック判定レベルが前記限界判定レベルよりも大きいときには前記実行最低回転速度を所定値だけ低くし、前記ノック判定レベルが前記限界判定レベルよりも小さいときには前記実行最低回転速度を所定値だけ高くする態様で行われる
請求項1に記載の内燃機関のノッキング制御装置。 - 前記学習手段は、前記検出される振動の強度が低くなる所定の機関運転状態に対応して前記実行最低回転速度の学習更新を実行する
請求項1または2に記載の内燃機関のノッキング制御装置。 - 前記学習更新が実行される前記所定の機関運転状態は、機関回転速度がその時点で学習されている前記実行最低回転速度の近傍でその上方にあり、且つ機関負荷が同機関のとり得るほぼ最低負荷域にある状態である
請求項3に記載の内燃機関のノッキング制御装置。 - 請求項1〜4のいずれかに記載の内燃機関のノッキング制御装置において、
前記必要とされる機関制御が前記ノッキングの発生の有無に応じて機関点火時期を進角側または遅角側に制御する点火時期制御であり、前記ノッキングの発生の有無についての判定の実行が禁止されるときには、前記機関点火時期の少なくとも進角側への制御が規制される
ことを特徴とする内燃機関のノッキング制御装置。
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