JP3987933B2 - 欠陥密度制御による分極反転法および光波長変換素子 - Google Patents

欠陥密度制御による分極反転法および光波長変換素子 Download PDF

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本発明は、強誘電体単結晶における分極反転領域を形成する方法およびそれを利用した光波長変換素子に関する。
強誘電体の分極反転現象を利用して、強誘電体の内部に周期的な分極反転領域(分極反転構造)を形成することができる。このような分極反転領域は、周波数変調器および光波長変換素子に利用される。特に、優れた非線形光学効果を有する強誘電体を用いた、短波長化可能な光波長変換素子および高出力用の光波長変換素子を実現することが望まれている。
光波長変換素子の波長変換領域を広げる(すなわち、短波長化する)ためには、分極反転領域の周期を短くする必要がある。従来の製造方法は、短周期の分極反転領域を形成するために、周期電極間の強誘電体の表面にプロトン交換を施している(例えば、特許文献1を参照。)。一方、高出力に耐え得るためには、周期分極反転構造の光の入射方向に対して垂直な方向の厚みを増加させ、分極反転領域が高いアスペクト比(深さ/幅)を有する必要がある。厚い周期分極反転構造を製造するに適した強誘電体として、実質的に定比組成のニオブ酸リチウム(LiNbO3;以降ではSLNと称する)および実質的に定比
組成のタンタル酸リチウム(LiTaO3;以降ではSLTと称する)が知られている(
例えば、非特許文献1を参照。)。
図8は、従来技術による周期分極反転領域の製造方法を示す図である。デバイス800は、ニオブ酸リチウム単結晶801と、櫛形電極802と、平面電極803と、プロトン交換領域804とを含む。プロトン交換領域804は、櫛形電極802をマスクとして、櫛形電極802の周囲、かつ、ニオブ酸リチウム単結晶801の表面に、プロトン交換処理が施された領域を指す。プロトン交換領域804においては、ニオブ酸リチウム単結晶801の強誘電性が劣化している。
このようなデバイス800に、直流電源805および高圧パルス電源806を用いて、電圧を印加する。櫛形電極802と平面電極803との間のニオブ酸リチウム単結晶801に電圧が印加され、分極反転する。プロトン交換領域804におけるニオブ酸リチウム単結晶801の強誘電性が劣化しているため、生成した分極反転領域の断面積は、櫛形電極802の断面積よりも大きくならないとされる。このようにして、短周期の分極反転領域を得る。
特開2002−147584号公報 北村、寺部,「Science & Technology Journal」,2002年10月,p70−73
しかしながら、特許文献1は、櫛形電極802側では短周期の分極反転領域を維持することができ得るが、平面電極803側では隣り合う分極反転領域が接合してしまうという問題を有する。したがって、特許文献1を用いて、従来よりも厚い分極反転領域を形成するのは困難である。
また、特許文献1のように電界印加法を用いて分極反転構造を製造する場合、電圧印加時間を短くすることによって、分極反転領域の短周期化を図っている。例えば、1〜3μmの周期を有する分極反転領域を形成する場合、パルス電圧の印加時間は約1msとなる
。このようなパルス電圧を発生させるために高圧パルス電源806に要求される周波数は、数KHzとなる。このような高周波を発生可能な高圧電源は非常に高価であり、最終的には、分極反転領域の短周期化は、装置の都合上限界に達することになる。
非特許文献1によれば、SLNの抗電界は、従来のコングルエント組成のニオブ酸リチウムの抗電界の約1/5であり、SLTの抗電界は、従来のコングルエント組成のタンタル酸リチウムの抗電界の約1/10である。このような、低抗電界のSLNまたはSLTを用いれば、従来よりも厚い分極反転領域を得ることができる。しかしながら、このようなSLNまたはSLTを用いた、短周期の分極反転領域を形成する方法は確立されていない。特に、これらを用いて従来よりも厚い分極反転領域を形成する場合には、高いアスペクト比が得られなければならないことから隣接する分極反転領域が接合する可能性がある。
したがって、本発明の目的は、制御可能な電圧印加時間内に強誘電体単結晶に短周期の分極反転領域を形成する方法およびそれを用いた光波長変換素子を提供することである。本発明のさらなる目的は、制御可能な電圧印加時間内に、強誘電体単結晶に短周期であり、かつ、従来よりも厚い分極反転領域を形成する方法、および、それを用いた光波長変換素子を提供することである。その解決手段として講じた構成は、以下(1)ないし(12)に記載の通りである。
(1) 強誘電体単結晶に分極反転領域を形成する方法であって、
前記強誘電体単結晶に対し、前記強誘電体単結晶の分極方向に垂直な第1の面に前記強誘電体単結晶の欠陥密度Dferroよりも大きな欠陥密度Dcont1(Dferro<Dcont1)を有する制御層を形成する工程と、
前記制御層上に第1の電極を形成する工程と、
前記強誘電体単結晶の前記第1の面に対向する第2の面に、前記第1の電極の面積よりも小さい面積を有する第2の電極を形成する工程と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に電界を印加する工程であって、前記第2の電極から生成した分極反転領域が有する自発分極が前記制御層を介して前記第1の電極側にて終端化される工程と、
を包含する、強誘電体単結晶に分極反転領域を形成する方法。
(2) 前記強誘電体単結晶は、実質的に定比組成のニオブ酸リチウムまたはタンタル酸リチウムのいずれかである、前記(1)項に記載の強誘電体単結晶に分極反転領域を形成する方法。
(3) 前記制御層を形成する工程は、
前記第1の面上にNb、Ta、Ti、Si、Mn、Y、W、および、Moからなる群から選択される金属層を堆積する工程と、
前記金属層をアニールする工程と、
を包含する、前記(1)項に記載の強誘電体単結晶に分極反転領域を形成する方法。
(4) 前記制御層を形成する工程は、前記第1の面を不活性雰囲気、酸素雰囲気および真空雰囲気からなる群から選択される雰囲気中でアニールする工程を包含する、前記(1)項に記載の強誘電体単結晶に分極反転領域を形成する方法。
(5) 前記第2の面に第1の領域および第2の領域を含むさらなる制御層を形成する工程をさらに包含し、前記第2の領域の欠陥密度は、前記強誘電体単結晶の欠陥密度Dferroと等しく、前記第1の領域の欠陥密度Dcont2は前記第2の領域の欠陥密度Dferroより
も大きい(Dferro<Dcont2)、前記(1)項に記載の強誘電体単結晶に分極反転領域を形成する方法。
(6) 前記さらなる制御層を形成する工程は、
マスクを介して前記第2の面上にNb、Ta、Ti、Si、Mn、Y、W、および、M
oからなる群から選択される金属層を堆積する工程と、
前記金属層をアニールする工程と、
を包含する、前記(5)項に記載の強誘電体単結晶に分極反転領域を形成する方法。
(7) 前記さらなる制御層を形成する工程は、マスクを介して前記第2の面を不活性雰囲気、酸素雰囲気および真空雰囲気からなる群から選択される雰囲気中でアニールする工程を包含する、前記(5)項に記載の強誘電体単結晶に分極反転領域を形成する方法。
(8) 前記第1の電極は平面電極であり、前記第2の電極は周期電極である、前記(1)項に記載の強誘電体単結晶に分極反転領域を形成する方法。
(9) 前記第1の電極、前記第2の電極および前記制御層を除去する工程をさらに包含する、前記(1)項に記載の強誘電体単結晶に分極反転領域を形成する方法。
(10) 強誘電体単結晶に分極反転領域を形成する方法によって製造される光波長変換素子であって、前記分極反転領域を形成する方法は、
前記強誘電体単結晶に対し、前記強誘電体単結晶の分極方向に垂直な第1の面に前記強誘電体単結晶の欠陥密度Dferroよりも大きな欠陥密度Dcont1(Dferro<Dcont1)を有する制御層を形成する工程と、
前記制御層上に平面電極を形成する工程と、
前記強誘電体単結晶の前記第1の面に対向する第2の面に周期電極を形成する工程と、
前記平面電極と前記周期電極との間に電界を印加し、前記周期電極から生成した分極反転領域が有する自発分極が、前記制御層を介して前記平面電極側にて終端化される工程と、
を包含する、光波長変換素子。
(11) 前記強誘電体単結晶は、実質的に定比のニオブ酸リチウムまたはタンタル酸リチウムのいずれかである、前記(10)項に記載の光波長変換素子。
(12) 前記方法は、前記制御層、前記平面電極および前記周期電極を除去する工程をさらに包含する、前記(10)項に記載の光波長変換素子。
本発明による方法は、強誘電体単結晶の第1の面に制御層を形成する工程と、制御層上に第1の電極を形成する工程と、強誘電体単結晶の第1の面に対向する第2の面に第2の電極を形成する工程と、第2の電極から第1の電極の方向に電界を印加する工程とを包含する。制御層の欠陥密度Dcont1と強誘電体単結晶の欠陥密度Dferroとは、関係Dferro
<Dcont1を満たす。これにより、第2の電極から第1の電極の方向に成長するドメイン
の成長速度は、制御層において低下するか、または、0になる。その結果、ドメインの自発分極の終端化が抑制され、電界の印加方向に対して垂直な方向へのドメインの成長が抑制される。
短周期の分極反転領域を形成する場合であっても、従来よりも長時間電圧を強誘電体単結晶に印加することが必要とされる。したがって、高価な装置を用いることなく、従来の装置を用いて分極反転領域のさらなる短周期化が可能である。また、第1の電極側においてドメインの成長を制御しているので、第1の電極側の分極反転領域の周期性が乱れることはない。本発明の方法は、強誘電体単結晶の厚さに関わらず適用することができるので、高出力用の厚い光波長変換素子を製造することができる。
本発明の原理に先立って、強誘電体の分極反転領域の生成工程を説明する。
図1は、強誘電体単結晶の分極反転領域の生成工程を示す図である。
デバイス100は、強誘電体単結晶101と、上部電極102と、下部電極103とを含む。強誘電体単結晶101は、180°ドメインを有する任意の強誘電体単結晶であり得る。上部電極102は、櫛形電極等の周期電極であり得る。下部電極103は、平面電
極であり得る。上部電極102の面積は、下部電極103の面積よりも小さければ、上部電極102および下部電極103の形状は問わない。
次に、工程ごとに説明する。
工程S1000:デバイス100に電界を印加した直後の様子を示す。上部電極102の端部に強誘電体単結晶101が分極反転した微細なドメイン104が発生する。ドメインが上部電極102の端部に発生するのは、電界がもっとも集中しているためである。このドメイン104の自発分極による静電荷を“+”で示す。
工程S1100:ドメイン104は下部電極103に達し、ドメイン106となる。自発分極が向き合う領域105の静電エネルギーは高く、不安定である。したがって、領域105がエネルギー的に安定になるためには、ドメイン104は、電界の印加方向に垂直な方向(すなわち、電極面積の方向)に成長するのではなく、電界の印加方向に成長することになる。これは、ドメイン104が電極面積の方向に広がると、静電エネルギーが増大し、より不安定となるためである。
ドメイン104が下部電極103に達し、ドメイン106になると、ドメイン106の静電荷は、下部電極103内を自由に行き来する自由電子(補償電荷)によって補償される(107)。これを自発分極の終端化という。ドメイン106の自発分極が終端化されると、ドメイン106は電極面積の方向に広がる(矢印Aおよび矢印B)。これは、ドメイン106と、強誘電体単結晶101との境界部分の結晶構造がエネルギー的に不安定であるためである。電界の印加状態下においては、エネルギー的な不安定さを解消するために、分極反転が電極面積方向に広がる(サイドウィンドという)現象が生じる。
工程S1200:工程S1000および工程S1100が繰り返し生じ、上部電極102と下部電極103との間の強誘電体単結晶101が分極反転し、分極反転領域108が生成する。詳細には、工程S1000のドメイン104が、電界集中の大きさに応じて、上部電極102の直下に次々に発生し、下部電極103へと成長する。次いで、ドメインの自発分極が終端化され、サイドウィンドが生じて、分極反転領域108となる。しかしながら、サイドウィンドは、上述したように、電界が印加されていない領域(図1の矢印Aの方向)にも生じる。サイドウィンドの速度は、矢印Bの方向の方が矢印Aの方向にくらべて速い。この結果、上部電極102よりも広がった分極反転領域108が生成される。上部電極102が櫛形電極等の周期電極であり、周期が非常に短い場合には、隣り合う分極反転領域が接合し得る。
本願発明者らは、短周期の分極反転構造を得るために、サイドウィンドの発生の制御に着目した。より詳細には、本願発明者らは、サイドウィンドの発生に寄与するドメインの静電荷の補償(補償電荷)の制御に着目し、その制御方法を見出した。
次に、本発明の原理を説明する。
図2は、本発明の分極反転を制御する方法を示す図である。
デバイス200は、強誘電体単結晶201と、制御層202と、第1の電極203と、第2の電極204とを含む。
強誘電体単結晶201は、180°ドメインを有する任意の強誘電体単結晶であり得る。
制御層202は、強誘電体単結晶201の180°ドメインの分極方向に対して垂直な面(第1の面)に形成されている。制御層202欠陥密度Dcont1と、強誘電体単結晶2
01の欠陥密度Dferroとは、関係Dferro<Dcont1を満たす。
制御層202は、例えば、強誘電体単結晶201に不純物元素を拡散させることによっ
て作製され得る不純物拡散層、または、強誘電体単結晶201中のLiを外拡散させることによって作製され得る外拡散層であり得る。金属拡散層および外拡散層は、それぞれ、母体の結晶格子における幾何学的な乱れを生じない置換不純物、および、母体の結晶格子における幾何学的な乱れを生じる空孔を有する。したがって、強誘電体単結晶201に比べて、制御層202中にはこのような欠陥(置換不純物または空孔)が多数存在することになる。金属拡散および外拡散によって制御層202に生成されるこれら欠陥は、母体の結晶格子の平衡状態を損なうことはないことに留意されたい。つまり、金属拡散および外拡散によって制御層202に生成される欠陥量は、有限であり、最大欠陥量は、母体の結晶格子の平衡状態を維持する程度までである。この最大欠陥量は、母体の材料に依存している。
第1の電極203は、制御層202上に形成された平面電極であり得る。第2の電極204は、第1の面に対向する第2の面に形成された櫛形電極等の周期電極であり得る。第2の電極204の面積は、第1の電極203の面積よりも小さければ、第1の電極203および第2の電極204の形状は問わない。
次に、各工程を説明する。
工程S2000:デバイス200に電界を印加した直後の様子を示す。第2の電極204の端部に強誘電体単結晶201が分極反転した微細なドメイン205が発生する。このドメイン205の自発分極による静電荷を“+”で示す。
工程S2100:ドメイン205は制御層202に達し、ドメイン207となる。図1を参照して工程S1100で説明したように、自発分極が向き合う領域206の静電エネルギーは高く、不安定である。したがって、領域206がエネルギー的に安定になるために、ドメイン205は、電界の印加方向(すなわち、第2の電極204から第1の電極203の方向)に成長する。
第1の電極203へ向かって成長するドメイン207の速度は、制御層202に達した後、低下するか、または、0になる。これは、強誘電体単結晶201の欠陥密度よりも高い欠陥密度を有する制御層202が、ドメインの成長を抑制する(すなわち、ドメインの成長速度を低下させる)、または、ドメインの成長を停止する(すなわち、ドメインの成長速度を0にする)ように機能するためである。
制御層202と強誘電体単結晶201とが上述の関係を満たす場合、結晶格子の幾何学的な乱れ(空孔の存在)、または、異種原子の存在により物理的にドメインの成長が妨げられる。このことは、制御層202においてドメインの成長(成長速度)が抑制されるか、または、停止することを意味する。欠陥密度の大きさが、ドメインの成長速度に影響を及ぼすことが知られている。
このように、制御層202によって、第1の電極203に達するドメイン207が低減するか、または、ドメイン207の第1の電極203への到達が抑制されるので、ドメイン207の静電荷を補償するのは困難となる(208)。このことは、ドメイン207が終端化されにくくなるため、ドメイン207の電界の印加方向に対して垂直な方向(すなわち、電極面積の方向)への成長(サイドウィンド)を抑制することを意味する。
より詳細には、制御層202は完全な絶縁体ではないため、第1の電極203からの自由電子(補償電荷)は、十分な時間をかけて制御層202中を移動し、ドメイン207の静電荷を補償し得る(すなわち、第2の電極204から生成した分極反転領域が有する自発分極は、制御層202を介して第1の電極203側にて終端化される)。例えば、強誘電体単結晶201が実質的に定比組成のニオブ酸リチウム(SLN)である場合、自由電
子が制御層202を移動し、ドメイン207に達するには少なくとも1sの時間を要する。つまり、本発明によれば、強誘電体単結晶201の欠陥密度Dferroと制御層202の
欠陥密度Dcont1との比の大きさによって、ドメイン207の静電荷の補償に要する時間
を制御することができる。ドメイン207のサイドウィンドの発生もまた制御され得る。例えば、SLNを用いて1〜3μmの周期の分極反転構造を製造する場合であっても、パルス電圧の印加時間は少なくとも約10msを必要とするため、従来の汎用のパルス電源を用いることができる。このパルス電圧の印加時間は、制御可能な時間範囲内であり、かつ、強誘電体単結晶201の分極反転領域を安定化するに十分な時間でもある。
工程S2200:工程S2000および工程S2100を繰り返し生じ、第1の電極203と第2の電極204との間の強誘電体単結晶201が分極反転し、分極反転領域209が生成した後、電圧の印加を取り去る。この間の時間は、工程S2100で説明したように、制御可能な電圧印加時間内である。図1を参照して説明したように、サイドウィンドは、矢印Aの方向および矢印Bの方向に生じる。しかしながら、矢印Aの方向に生じるサイドウィンドの速度は、矢印Bの方向に生じるサイドウィンドの速度に比べて著しく遅い。これは電界分布に起因する。したがって、生成した分極反転領域209の断面積は、第2の電極204の面積よりも大きくなり得るが、このことによるデバイスに及ぼす影響は、何ら問題にならない程度である。
上述してきたように、本発明によれば、制御層202を強誘電体単結晶201と第1の電極203との間に設ける(すなわち、制御層202をドメインの自発分極の終端化側に設ける)ことによって、制御可能な電圧印加時間内に従来よりも短周期の分極反転構造を製造することができる。強誘電体単結晶201の欠陥密度Dferroと制御層202の欠陥
密度Dcont1との関係を変化させることによって、電圧印加時間を変化させることができ
る。すなわち、金属拡散および外拡散の拡散量を増加させることによって、分極反転領域を形成するに必要な電圧印加時間はより長くなる。金属拡散および外拡散の拡散量を低減することによって、分極反転領域を形成するに必要な電圧印加時間はより短くなる。このような設定は、分極反転領域の周期、強誘電体単結晶の材料等に応じて適宜設計され得る。
ただし、強誘電体単結晶201と制御層202とが上述の関係(Dferro<Dcont1)を満たす限り、本発明の効果を得ることができるのは言うまでもない。本発明の方法は、強誘電体単結晶201が180°ドメインを有する任意の強誘電体に適用可能であるが、強誘電体単結晶201としてSLNまたはSLTを用いた場合には、短周期、かつ、従来に比べて厚い分極反転構造を製造することができる。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して詳述する。図中、同様の要素には同様の参照符号を付し、その説明を省略する。実施の形態では、強誘電体単結晶として実質的に定比組成のニオブ酸リチウム(SLN)を用いた場合を説明するが、強誘電体単結晶は、これに限定されない。
SLNは、例えば、特開2000−344595に記載される二重るつぼを使用したチョクラルスキー法により作製される。SLNの代わりに、実質的に定比組成のタンタル酸リチウム(SLT)を採用しても同様の効果が得られる。この場合も、例えば、特開2000−344595に記載される二重るつぼを使用したチョクラルスキー法により作製される。
なお、SLNにおいて、実質的に「定比組成である」とは、Li2O/(Nb25+L
2O)のモル分率が完全に0.50ではないものの、コングルエント組成よりも化学両
論比に近い組成(Li2O/(Nb25+Li2O)のモル分率=0.495〜0.5)を有しており、そのことに起因するデバイスの特性の低下が通常のデバイスの設計において
問題にならない程度であることをいう。同様に、SLTにおいて、実質的に「定比組成である」とは、Li2O/(Ta25+Li2O)のモル分率が完全に0.50ではないものの、コングルエント組成よりも化学両論比に近い組成(Li2O/(Ta25+Li2O)のモル分率=0.495〜0.5)を有しており、そのことに起因するデバイスの特性の低下が通常のデバイスの設計において問題にならない程度であることをいう。
(実施の形態1)
(1)金属拡散
図3は、本発明の実施の形態1による分極反転を制御する工程を示す図である。工程ごとに説明する。
工程S3000:SLN300の第1の面に金属層301を形成する。SLN300の分極方向はz軸に平行であり、180°単一ドメインを有している。SLN300の厚さは、3mmである。ただし、この厚さに限定されない。ここで、第1の面は、SLN300の分極方向に垂直な面であり、例えば、+Z面である。金属層301は、通常の物理的気相成長法または化学的気相成長法によって作製され得る。金属層400の材料は、SLN300のLiサイトと置換し、かつ、Liと価数が異なる限り任意の金属が用いられ得る。金属層301の材料は、好ましくは、Nb、Ta、Ti、Si、Mn、Y、W、および、Moからなる群から選択される。金属層301の厚さは、約100〜1000nmの範囲である。
工程S3100:金属層301を有するSLN300をアニールし、制御層302を形成する。アニールは、還元雰囲気、酸素雰囲気、および、真空雰囲気からなる群から選択される雰囲気中で、約300〜1000℃の温度範囲で、約2〜40時間の間行われる。このアニールによって、金属層301中の金属原子とSLN300中のLi原子とが置換する。金属原子の拡散距離は、約500〜2000nmである。拡散した金属原子は、SLN300の表面層に欠陥(この場合、置換不純物)を生成する。このSLN300の表面層が、制御層302である。なお、アニール後、過剰な金属層301をエッチングによって除去してもよい。
制御層302の欠陥密度の評価は、例えば、ラザフォード後方散乱分光(RBS)によって行われ得る。これにより定量的に制御層302の欠陥密度およびSLN300の欠陥密度を測定することができる。上述の条件で金属拡散を行った場合、制御層302の欠陥密度Dcont1と、SLN300の欠陥密度Dferroとは、関係Dferro<Dcont1を満たすことを確認した。
工程S3200:制御層302上に第1の電極303を形成する。第1の電極303は、平面電極であり得る。第1の電極303は、物理的気相成長法または化学的気相成長法によって形成される金属層であり得る。この場合、第1の電極303の材料は、例えば、Taであるが、この材料に限定されない。第1の電極303の厚さは、約50〜500nmである。第1の電極303は、LiCl溶液の液体電極(図示せず)であってもよい。
工程S3300:SLN300の第1の面に対向する第2の面に第2の電極304を形成する。第2の電極304は、櫛形電極等の周期電極であり得る。第2の電極304の周期は、約1〜3μmである。第2の電極304は、物理的気相成長法または化学的気相成長法によって形成される金属層であり得る。この場合、第2の電極304の材料は、例えば、Crであるが、この材料に限定されない。第2の電極304の厚さは、約50〜500nmである。第2の電極304は、LiCl溶液の液体電極(図示せず)であってもよい。
第2の電極304の作製には、ドライエッチングが用いられ得る。第2の電極304が金属層の場合、SLN300の第2の面に物理的気相成長法または化学的気相成長法を用
いてCrを適用する。次に、マスクとしてフォトレジストを適用する。フォトリソグラフィー技術によってフォトレジストを所定の形状、例えば、周期パターンにパターニングする。フォトレジストをパターニングする形状は、任意であって、周期パターンに限定されない。次いで、例えば、反応性イオンエッチング(RIE)技術を用いて、SLN300の第2の面をエッチングする。その後、フォトレジストを除去する。これにより、第2の電極304として周期的パターンを有する金属層が得られる。第2の電極304が液体電極の場合(図示せず)、金属層を形成することなく、フォトレジストを所定の形状にパターニングする。その後、第2の電極304として液体電極が、パターニングされたフォトレジストおよびSLN300に適用される。
工程S3400:第2の電極304から第1の電極303の方向に電界を印加する。印加すべき電界の大きさは、SLN300の抗電界の大きさ(約4kV/mm)以上である。電界の印加には、例えば、電界発生器305が用いられ得る。電界発生器305は、ファンクションジェネレータ(図示せず)と電圧アンプ(図示せず)とを含む。電界発生器305は、ファンクションジェネレータによって生成される任意のパルス波形に応じた電界を発生し、その発生した電界をSLN300に印加する。電界発生器305は、上記の構成に限定されない。
工程S3400において、SLN300に電界を印加すると、第2の電極304の端部に分極反転した微細なドメインが生成する。生成したドメインは、電界の印加方向(すなわち、第2の電極304から第1の電極303の方向)に成長する。第1の電極303へ向かって成長するドメインの成長速度は、制御層302に達した後、低下するか、または、0になる。これは、制御層302の欠陥密度Dcont1がSLN300の欠陥密度Dferroに比べて大きいため、ドメインの成長を抑制する(すなわち、ドメインの成長速度を低下させる)、または、ドメインの成長を停止する(すなわち、ドメインの成長速度を0にする)ように機能するためである。これにより、ドメインの有する静電荷の補償(自発分極の終端化)が抑制され、ドメインの電界の印加方向に対して垂直な方向への成長(サイドウィンド)も抑制される。
このように、金属拡散によって制御層302を作製する場合、高価な装置および複雑な装置を必要としないため非常に安価に作製することができる。
なお、工程S3100において、SLN300の第2の面側にアニールによる影響がないように、第2の面の保護膜としてPt等の金属層を形成し、アニール後にエッチングによって除去してもよい。あるいは、工程S3100の前に、工程S3300を行って、第2の電極304を第2の面の保護膜として用いてもよい。また、工程S3400後に、必要ならば、制御層302、第1の電極303および第2の電極304をエッチングまたは化学的機械研磨(CMP)によって除去してもよい。
(2)外拡散
図4は、本発明の実施の形態1によるさらなる分極反転を制御する工程を示す図である。工程ごとに説明する。ただし、工程S4100〜工程S4300は、図3を参照して説明した工程S3200〜工程S3400と同一であるため、説明を省略する。
工程S4000:SLN300をアニールし、制御層400を形成する。アニールは、還元雰囲気、酸素雰囲気、および、真空雰囲気からなる群から選択される雰囲気中で、約800〜1100℃の温度範囲で、約1〜20時間の間行われる。外拡散の距離は、約1〜20μmである。このアニールによって、SLN300の表面層中のLi原子が結晶外へと拡散する。その結果、SLN300の表面層に欠陥(この場合、空孔)が生成される。このSLN300の表面層が、制御層(外拡散層)400である。(1)で説明した金属拡散の場合と同様に、外拡散による制御層400の欠陥密度の評価は、例えば、ラザフ
ォード後方散乱分光(RBS)によって行われ得る。上述の条件で外拡散を行った場合、制御層400の欠陥密度Dcont1と、SLN300の欠陥密度Dferroとは、関係Dferro
<Dcont1を満たすことを確認した。
工程S4100:制御層400上に第1の電極303を形成する。
工程S4200:SLN300の第1の面に対向する第2の面に第2の電極304を形成する。
工程S4300:第2の電極304から第1の電極303の方向に電界を印加する。外拡散をした場合、ドメインの自発分極が終端化され、サイドウィンドが生じるまでに約7sを要することが確認された。
外拡散の場合も、制御層400は、制御層302と同様にして、ドメインの静電荷の補償(自発分極の終端化)を抑制し、サイドウィンドの発生を制御する。外拡散の場合、アニールすればよいだけなので、金属拡散の場合に比べて操作が簡便である点がよい。
なお、工程S4000において、SLN300の第2の面側もアニールによって外拡散が生じないように、第2の面の保護膜としてSiO2等の酸化物層を形成し、アニール後
にエッチングによって除去してもよい。あるいは、工程S4000の前に、工程S4200を行って、第2の電極304を第2の面の保護膜として用いてもよい。
また、工程S4300後に、必要ならば、制御層400、第1の電極303および第2の電極304をエッチングまたは化学的機械研磨(CMP)によって除去してもよい。
上述してきたように、実施の形態1によれば、強誘電体単結晶300と第1の電極303との間に制御層302および400を設ける。制御層302および400の欠陥密度Dcont1と強誘電体単結晶300の欠陥密度Dferroとは、関係Dferro<Dcont1を満たす。これにより、第2の電極304から第1の電極303へと向かうドメインは、制御層302および400に存在する欠陥によって、成長速度が低下するか、または、0になる。その結果、ドメインの自発分極の終端化が抑制されるので、ドメインの電界の印加方向に対して垂直な方向への成長もまた抑制される。
短周期の分極反転領域を形成する場合であっても、従来よりも長時間電圧をSLN300に印加することが必要とされる。したがって、高価な装置を用いることなく、従来の装置を用いて分極反転領域のさらなる短周期化が可能である。また、第1の電極303側においてドメインの成長を制御しているので、第1の電極303側の分極反転領域の周期性が乱れることはない。つまり、本発明の方法は、強誘電体単結晶300の厚さに関わらず適用することができる。特に、強誘電体単結晶300として低抗電界のSLNまたはSLTを用いた場合には、厚い分極反転構造が得られるので、高出力用の光波長変換素子を製造することができる。
(実施の形態2)
(1)金属拡散
図5は、本発明の実施の形態2による分極反転を制御する工程を示す図である。
工程ごとに説明する。図5は、例えば、図3の工程S3200から始まる。
工程S5000:第1の面に対向する第2の面にマスク500としてフォトレジストを提供する。次いで、フォトリソグラフィー技術によってフォトレジストを所定の形状、例えば、周期パターンにパターニングする。フォトレジストをパターニングする形状は、任意であって、周期パターンに限定されない。
工程S5100:マスク500および第2の面に金属層501を形成する。金属層501は、通常の物理的気相成長法または化学的気相成長法によって作製され得る。金属層501の材料は、SLN300のLiサイトと置換し、かつ、Liと価数が異なる限り任意
の金属が用いられ得る。金属層501の材料は、好ましくは、Nb、Ta、Ti、Si、Mn、Y、W、および、Moからなる群から選択される。金属層501の厚さは、約100〜1100nmの範囲である。
工程S5200:金属層501を有するSLN300をアニールし、その後、マスク500を除去し、さらなる制御層502を形成する。アニールは、還元雰囲気、酸素雰囲気、および、真空雰囲気からなる群から選択される雰囲気中で、約300〜1000℃の温度範囲で、約2〜40時間の間行われる。このアニールによって、金属層501中の金属原子とSLN300の領域503中のLi原子とが置換する。金属原子の拡散距離は、約500〜20000nmである。拡散した金属原子は、SLN300の領域503(第1の領域)の表面層に欠陥(この場合、置換不純物)を生成する。
このようにしてさらなる制御層502が形成される。さらなる制御層502は、金属原子が拡散された領域503(第1の領域)と、金属原子が拡散されていない領域504(第2の領域)とを含む。これら領域503と領域504とは、交互に周期的に並び得る。領域503の欠陥密度の評価は、例えば、ラザフォード後方散乱分光(RBS)によって行われ得る。上述の条件で金属拡散を行った場合、領域503の欠陥密度Dcont2と、領
域504の欠陥密度Dferroとは、関係Dferro<Dcont2を満たすことを確認した。領域
504の欠陥密度は、SLN300の欠陥密度Dferroに等しいことに留意されたい。マ
スク500は、エッチングにより除去される。なお、アニール後、マスク500とともに、過剰な金属層501をエッチングによって除去してもよい。
工程S5300:さらなる制御層502上に第2の電極505を形成する。第2の電極505は平面電極であり得る。第2の電極505は、物理的気相成長法または化学的気相成長法によって形成される金属層であり得る。この場合、第2の電極505の材料は、例えば、Crであるが、この材料に限定されない。第2の電極505の厚さは、約50〜500nmである。第2の電極505は、LiCl溶液の液体電極(図示せず)であってもよい。実施の形態1と異なり、第2の電極505を周期状にパターニングする必要はない。これは、第2の電極505は、さらなる制御層502における領域503(イオンが注入されている領域)と協働して、周期的なパターン電極(すなわち、領域506)として機能するためである。
工程S5400:第2の電極505から第1の電極303の方向に電界発生器305を用いて電界を印加する。工程S5400は、実施の形態1で図3を参照して説明した工程S3400と同様であるため説明を省略する。ただし、第2の電極505は全面電極であるため、図3に示される周期状の第2の電極304のように個々に電界を印加するための配線を必要としないため、簡便である。
工程S5400において、SLN300に電界を印加すると、第2の電極505のうち領域506の端部に分極反転した微細なドメインが生成する。生成したドメインは、電界の印加方向(すなわち、第2の電極505から第1の電極303の方向)に成長する。第1の電極303へ向かって成長するドメインの成長速度は、制御層302に達した後、低下するか、または、0になる。これは、制御層302の欠陥密度Dcont1がSLN300
の欠陥密度Dferroに比べて大きいため、ドメインの成長を抑制する(すなわち、ドメイ
ンの成長速度を低下させる)、または、ドメインの成長を停止する(すなわち、ドメインの成長速度を0にする)ように機能するためである。これにより、ドメインの有する静電荷の補償(ドメインの自発分極の終端化)が抑制され、ドメインの電界の印加方向に対して垂直な方向への成長(サイドウィンド)も抑制される。
実施の形態1とは異なり、実施の形態2では、さらなる制御層502がSLN300の第2の面側に形成されている。これにより、図2を参照して説明した、矢印A(図2)の
方向へのサイドウィンドを抑制することができる。これは、さらなる制御層502の領域503の欠陥密度Dcont2が、領域503以外のSLN300の欠陥密度Dferroよりも大きいためである。さらなる制御層502の領域503へのドメインの成長は、領域503中の欠陥の存在によって、物理的に抑制される。この結果、第2の電極505の領域506の面積と同じ断面積の分極反転領域を有する周期分極反転構造が得られるので、より高精度に制御された周期分極反転構造を製造することができる。
さらなる制御層502の機能は、欠陥の存在によって物理的にドメインの成長(サイドウィンド)を停止することである。したがって、さらなる制御層502の欠陥密度が大きいほど望ましい。
上述の説明では、図3の工程S3200から始めたが、図3の工程S3300後に、第2の電極304(図3)をマスク500として、金属拡散を行ってもよい。この場合、第2の電極304をエッチング等によって除去する必要がないため、操作が簡便である。ただし、この場合には、第2の電極304の材料は、アニールによってSLN300に拡散されない元素でなければならない。
なお、工程S5400後に、必要ならば、制御層302、第1の電極303、さらなる制御層502、および、第2の電極505をエッチングまたは化学的機械研磨(CMP)によって除去してもよい。
(2)外拡散
図6は、本発明の実施の形態2によるさらなる分極反転を制御する工程を示す図である。工程ごとに説明する。図6において、工程S6000、工程S6200および工程S6300は、図5の工程S5000、工程S5300および工程S5400と同一であるため、説明を省略する。図6は、例えば、図4の工程S4100から始まる。
工程S6000:第1の面に対向する第2の面にマスク500としてフォトレジストを提供する。
工程S6100:マスク500を介して第2の面をアニールし、その後、マスク500を除去し、さらなる制御層600を形成する。アニールは、還元雰囲気、酸素雰囲気、および、真空雰囲気からなる群から選択される雰囲気中で、約800〜1100℃の温度範囲で、約1〜20時間の間行われる。このアニールによって、SLN300の領域601(第1の領域)中のLi原子が結晶外へと拡散する。外拡散の距離は、約1〜20μmである。その結果、SLN300の領域601に欠陥(この場合、空孔)が生成される。
このようにしてさらなる制御層600が形成される。さらなる制御層600は、Li原子が外拡散された領域601(第1の領域)と、Li原子が外拡散されていない領域602(第2の領域)とを含む。これら領域601と領域602とは、交互に周期的に並び得る。金属拡散の場合と同様に、外拡散による領域601の欠陥密度の評価は、例えば、ラザフォード後方散乱分光(RBS)によって行われ得る。上述の条件で外拡散を行った場合、領域601の欠陥密度Dcont2と、領域602の欠陥密度Dferroとは、関係Dferro
<Dcont2を満たすことを確認した。領域602の欠陥密度は、SLN300の欠陥密度
ferroに等しいことに留意されたい。マスク500は、エッチングにより除去される。
工程S6200:さらなる制御層600上に第2の電極505を形成する。
工程S6300:第2の電極505から第1の電極303の方向に電界発生器305を用いて電界を印加する。
外拡散によって形成されたさらなる制御層600も、さらなる制御層502(図5)と同様にして、ドメインの矢印A(図2)方向への成長(サイドウィンド)を抑制するように機能するため、より高精度に制御された周期分極反転構造を製造することができる。
上述の説明では、図4の工程S4100から始めたが、図4の工程S4200後に、第
2の電極304(図4)をマスク500として、金属拡散を行ってもよい。この場合、第2の電極304をエッチング等によって除去する必要がないため、操作が簡便である。ただし、この場合には、第2の電極304の材料は、アニールによってSLN300に拡散されない元素でなければならない。
なお、工程S6300後に、必要ならば、制御層400、第1の電極303、さらなる制御層600、および、第2の電極505をエッチングまたは化学的機械研磨(CMP)によって除去してもよい。
上述してきたように、実施の形態2によれば、強誘電体単結晶300と第2の電極505との間にさらなる制御層502および600を設ける。さらなる制御層502および600は、金属が拡散された、または、Liが外拡散された第一の領域503および601と、金属が拡散されていない、または、Liが外拡散されていない(すなわち、強誘電体単結晶300と同じ)第2の領域504および602とを有する。第1の領域503および601の欠陥密度Dcont2と第2の領域504および602の欠陥密度Dferroとは、関係Dferro<Dcont2を満たす。これにより、第1の領域503および601へのドメインの成長は、内部に存在する欠陥(置換不純物または空孔)によって物理的に抑制される。
第1の電極303側においてドメインの成長を制御するだけでなく、第2の電極505側においてもドメインの成長を制御するので、実施の形態1に比べて、より高精度に制御された分極反転構造を製造することができる。
なお、実施の形態2では、さらなる制御層502および600と、制御層302および400とが、同じ製造方法による組み合わせとなる例を示してきた。しかしながら、本発明は、これに限らない。例えば、制御層を金属拡散によって製造し、さらなる制御層を外拡散によって製造してもよい。あるいは、制御層を外拡散によって製造し、さらなる制御層を金属拡散によって拡散してもよい。制御層の製造方法と、さらなる制御層の製造方法の組み合わせは、任意である。
(実施の形態3)
図7は、本発明の実施の形態3による光波長変換素子700を用いた光波長変換システムを示す図である。光波長変換システムは、光波長変換素子700と、光源701と、集光光学系702と含む。光波長変換素子700は、実施の形態1または2に記載される方法を用いて製造され得る。光波長変換素子700は、例えば、実質的に定比組成のニオブ酸リチウム(SLN)300から製造され得る。光波長変換素子700は、180°ドメインを有する任意の強誘電体単結晶から製造され得る。SLN300は、周期的な分極反転領域703を有する。SLN300は、制御層302または400を有する。
光源701は、例えば、半導体レーザであり得るが、これに限定されない。光源701は、コヒーレントである限り、任意の光源を用いることができる。光源701は、例えば、波長780nmの光を発する。
集光光学系702は、光701が発する光を集光し、光波長変換素子700に入射させるように機能する任意の光学系であり得る。
このような光波長変換システムの動作を説明する。光源701が発する光は、集光光学系702を介して光波長変換素子700に入射する。この光を基本波と呼ぶ。分極反転領域703は、光源701の光(基本波)の導波方向に周期的に繰り返されている。このような周期的な分極反転領域703により、基本波とその第2高調波とが位相整合(擬似位相整合)する。このようにして、基本波は、光波長変換素子700を伝播する間に波長390nmの第2高調波に変換される。なお、光波長変換素子700の基本波の入射面と出射面とに反射膜を設けて、光波長変換素子700を共振器として機能させてもよい。
このように本発明による方法を用いれば、従来よりも短周期の分極反転領域703を有
する光波長変換素子700を製造することができる。この結果、短波長への変換(例えば、780nmの波長の光を390nmの波長の光に変換)が可能となる。さらに、光波長変換素子700を反射型光波長変換素子として用いることによって、さらなる高効率化が可能である。また、本発明による方法を用いれば、微細チャープを有する光波長変換素子を作製することが可能となるので、入射する光の波長帯域幅を広げることができ、その結果、光源701の発する光701の波長ぶれに対する耐性が向上する。
上記光波長変換素子700は本発明の方法を適用する一例にすぎない。例えば、本発明は、電気光学偏光器、変調器および表面弾性波デバイスにも適用可能である。
以上説明してきたように、本発明によれば、強誘電体単結晶と第1の電極(ドメインの自発分極が終端化する側の電極)との間に制御層が設けられる。制御層の欠陥密度Dcont1と強誘電体単結晶の欠陥密度Dferroとは、関係Dferro<Dcont1を満たす。これにより、第2の電極から第1の電極の方向に成長するドメインの成長速度は、制御層において低下するか、または、0になる。その結果、ドメインの自発分極の終端化が抑制され、電界の印加方向に対して垂直な方向へのドメインの成長が抑制される。
短周期の分極反転領域を形成する場合であっても、従来よりも長時間電圧を強誘電体単結晶に印加することが必要とされる。したがって、高価な装置を用いることなく、従来の装置を用いて分極反転領域のさらなる短周期化が可能である。また、第1の電極側においてドメインの成長を制御しているので、第1の電極側の分極反転領域の周期性が乱れることはない。この結果、波長変換領域を広げること(すなわち、短波長化)が可能となる。本発明の方法は、強誘電体単結晶の厚さに関わらず適用することができるので、高出力用の厚い光波長変換素子を製造することができる。
強誘電体単結晶の分極反転領域の生成工程を示す図 本発明の分極反転を制御する方法を示す図 本発明の実施の形態1による分極反転を制御する工程を示す図 本発明の実施の形態1によるさらなる分極反転を制御する工程 本発明の実施の形態2による分極反転を制御する工程を示す図 本発明の実施の形態2によるさらなる分極反転を制御する工程を示す図 本発明の実施の形態3による光波長変換素子を用いた光波長変換システムを示す図 従来技術による周期分極反転領域の形成方法を示す図
符号の説明
200 デバイス
201、300 強誘電体単結晶
202、302、400 制御層
203、303 第1の電極
204、304、505 第2の電極
305 電界発生器
502、600 さらなる制御層
503、601 第1の領域
504、602 第2の領域
700 光波長変換素子
701 光源
702 集光光学系
703 分極反転領域

Claims (12)

  1. 強誘電体単結晶に分極反転領域を形成する方法であって、
    前記強誘電体単結晶に対し、前記強誘電体単結晶の分極方向に垂直な第1の面に前記強誘電体単結晶の欠陥密度Dferroよりも大きな欠陥密度Dcont1(Dferro<Dcont1)を有する制御層を形成する工程と、
    前記制御層上に第1の電極を形成する工程と、
    前記強誘電体単結晶の前記第1の面に対向する第2の面に、前記第1の電極の面積よりも小さい面積を有する第2の電極を形成する工程と、
    前記第1の電極と前記第2の電極との間に電界を印加する工程であって、前記第2の電極から生成した分極反転領域が有する自発分極が前記制御層を介して前記第1の電極側にて終端化される工程と、
    を包含する、強誘電体単結晶に分極反転領域を形成する方法。
  2. 前記強誘電体単結晶は、実質的に定比組成のニオブ酸リチウムまたはタンタル酸リチウムのいずれかである、請求項1に記載の強誘電体単結晶に分極反転領域を形成する方法。
  3. 前記制御層を形成する工程は、
    前記第1の面上にNb、Ta、Ti、Si、Mn、Y、W、および、Moからなる群から選択される金属層を堆積する工程と、
    前記金属層をアニールする工程と、
    を包含する、請求項1に記載の強誘電体単結晶に分極反転領域を形成する方法。
  4. 前記制御層を形成する工程は、前記第1の面を不活性雰囲気、酸素雰囲気および真空雰囲気からなる群から選択される雰囲気中でアニールする工程を包含する、請求項1に記載の強誘電体単結晶に分極反転領域を形成する方法。
  5. 前記第2の面に第1の領域および第2の領域を含むさらなる制御層を形成する工程をさらに包含し、前記第2の領域の欠陥密度は、前記強誘電体単結晶の欠陥密度Dferroと等
    しく、前記第1の領域の欠陥密度Dcont2は前記第2の領域の欠陥密度Dferroよりも大きい(Dferro<Dcont2)、請求項1に記載の強誘電体単結晶に分極反転領域を形成する方法。
  6. 前記さらなる制御層を形成する工程は、
    マスクを介して前記第2の面上にNb、Ta、Ti、Si、Mn、Y、W、および、Moからなる群から選択される金属層を堆積する工程と、
    前記金属層をアニールする工程と、
    を包含する、請求項5に記載の強誘電体単結晶に分極反転領域を形成する方法。
  7. 前記さらなる制御層を形成する工程は、マスクを介して前記第2の面を不活性雰囲気、酸素雰囲気および真空雰囲気からなる群から選択される雰囲気中でアニールする工程を包含する、請求項5に記載の強誘電体単結晶に分極反転領域を形成する方法。
  8. 前記第1の電極は平面電極であり、前記第2の電極は周期電極である、請求項1に記載の強誘電体単結晶に分極反転領域を形成する方法。
  9. 前記第1の電極、前記第2の電極および前記制御層を除去する工程をさらに包含する、請求項1に記載の強誘電体単結晶に分極反転領域を形成する方法。
  10. 強誘電体単結晶に分極反転領域を形成する方法によって製造される光波長変換素子であ
    って、前記方法は、
    前記強誘電体単結晶に対し、前記強誘電体単結晶の分極方向に垂直な第1の面に前記強誘電体単結晶の欠陥密度Dferroよりも大きな欠陥密度Dcont1(Dferro<Dcont1)を有する制御層を形成する工程と、
    前記制御層上に平面電極を形成する工程と、
    前記強誘電体単結晶の前記第1の面に対向する第2の面に周期電極を形成する工程と、
    前記平面電極と前記周期電極との間に電界を印加し、前記周期電極から生成した分極反転領域が有する自発分極が、前記制御層を介して前記平面電極側にて終端化される工程と、
    を包含する、光波長変換素子。
  11. 前記強誘電体単結晶は、実質的に定比のニオブ酸リチウムまたはタンタル酸リチウムのいずれかである、請求項10に記載の光波長変換素子。
  12. 前記方法は、前記制御層、前記平面電極および前記周期電極を除去する工程をさらに包含する、請求項10に記載の光波長変換素子。
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