JP6371171B2 - 強誘電体キャパシタおよび電子デバイス - Google Patents

強誘電体キャパシタおよび電子デバイス Download PDF

Info

Publication number
JP6371171B2
JP6371171B2 JP2014183094A JP2014183094A JP6371171B2 JP 6371171 B2 JP6371171 B2 JP 6371171B2 JP 2014183094 A JP2014183094 A JP 2014183094A JP 2014183094 A JP2014183094 A JP 2014183094A JP 6371171 B2 JP6371171 B2 JP 6371171B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
single crystal
ferroelectric
ferroelectric capacitor
charge
storage region
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2014183094A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2016058516A (ja
Inventor
貴弘 長田
貴弘 長田
北村 健二
健二 北村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
National Institute for Materials Science
Original Assignee
National Institute for Materials Science
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by National Institute for Materials Science filed Critical National Institute for Materials Science
Priority to JP2014183094A priority Critical patent/JP6371171B2/ja
Publication of JP2016058516A publication Critical patent/JP2016058516A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6371171B2 publication Critical patent/JP6371171B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Description

本発明は、強誘電体キャパシタおよび電子デバイスに関し、詳細には、自然エネルギーにより発生する電荷を蓄積する強誘電体キャパシタおよびそれを用いた電子デバイスに関する。
近年、自然エネルギーを利用した環境発電(エナジーハーベスト)が注目されている。このような環境発電技術として、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いたキャパシタが知られている(例えば、非特許文献1および2を参照)。非特許文献1および2によれば、PZTバルク材料で作製されたキャパシタは、焦電効果を利用して発生した電荷を蓄積できることが開示されている。しかしながら、材料に鉛を含んでおり、自然環境への影響が懸念され、鉛フリーの材料の開発が望まれている。
眞岩宏司ら,「Pb(Zr,Ti)O3セラミックスとその他材料からのエナジーハーベスト」,16p−B3−14,第59回応用物理学関係連合講演会,2012年3月 眞岩宏司,「強誘電体材料の焦電エナジーハーベスティングと電気熱量効果」、17p−F5−5,第59回応用物理学関係連合講演会,2012年3月
以上より、本発明の課題は、自然エネルギーにより発生する電荷を蓄積する強誘電体キャパシタ、および、それを用いた電子デバイスを提供することである。
本発明による強誘電体キャパシタは、分極の方向が制御され、電荷蓄積領域を有する強誘電体単結晶であって、前記電荷蓄積領域は、前記強誘電体単結晶の表面の一部の領域である、強誘電体単結晶と、前記電荷蓄積領域の周りに位置する金属層とを備え、前記強誘電体単結晶と前記金属層との接触界面にショットキー接合が形成されており、前記強誘電体単結晶に基づく電荷は、前記電荷蓄積領域上に閉じ込められ、蓄積され、これにより上記課題を解決する。
前記ショットキー接合がp型ショットキー接合である場合、前記強誘電体単結晶の仕事関数φは、前記金属層の仕事関数φよりも大きく、前記ショットキー接合がn型ショットキー接合である場合、前記強誘電体単結晶の仕事関数φは、前記金属層の仕事関数φよりも小さくてもよい。
前記強誘電体単結晶は、ニオブ酸リチウム単結晶またはタンタル酸リチウム単結晶であってもよい。
前記強誘電体単結晶は、ニオブ酸リチウム単結晶であり、前記金属層は、4.5eV以上の仕事関数を有する金属からなってもよい。
前記金属層は、CrまたはAuからなってもよい。
前記金属層は、前記電荷蓄積領域を包囲するように位置してもよい。
前記電荷は、前記強誘電体単結晶の自発分極により誘起された電荷、前記強誘電体単結晶の圧電効果により誘起された電荷、または、前記強誘電体単結晶の焦電効果により誘起された電荷であってもよい。
前記電荷蓄積領域の直径は、1.5μm以上55μm以下の範囲であってもよい。
前記強誘電体単結晶は、単一分極構造となるように分極の方向が制御されており、前記電荷蓄積領域に対応する前記強誘電体単結晶の表面内部の極性は、+極性または−極性のいずれかであってもよい。
前記強誘電体単結晶は、分極反転構造となるように分極の方向が制御されており、前記電荷蓄積領域に対応する前記強誘電体単結晶の表面内部の極性は、+極性または−極性のいずれかであってもよい。
本発明による強誘電体キャパシタと素子とを備えた電子デバイスは、前記強誘電体キャパシタが上述の強誘電体キャパシタであり、前記素子は、前記電荷蓄積領域と前記金属層との間に接続されており、前記電荷蓄積領域上に蓄積された電荷により動作するか、または、前記電荷蓄積領域上に蓄積された電荷量の変化を検出し、これにより上記課題を達成する。
本発明による強誘電体キャパシタは、強誘電体単結晶と金属層との接触界面にショットキー接合が形成されているので、ショットキー接合による障壁および金属層と蓄積される電荷との間に生じる物理的なギャップにより、電荷蓄積領域上に効率的に電荷を閉じ込め、蓄積することができる。また閉じ込め/蓄積される電荷は、強誘電体単結晶の自発分極、焦電効果または圧電効果に基づく、自然エネルギーにより発生する電荷である。これにより、本発明の強誘電体キャパシタは、自然エネルギーを利用した電源として機能し得る。また、本発明の強誘電体キャパシタは、サイズに制限がないので、ナノスケールからマイクロスケールサイズの超小型電源となり、電子デバイスのさらなる小型化を可能にする。
本発明の強誘電体キャパシタの構造を示す模式図 本発明の強誘電体キャパシタにおける強誘電体単結晶と金属層とのバンド構造を示す模式図 本発明の強誘電体キャパシタにおける電荷蓄積領域と金属層との種々のパターンを示す図 本発明の強誘電体キャパシタが圧電効果により表面電荷を蓄積する様子を示す図 本発明の強誘電体キャパシタが焦電効果により表面電荷を蓄積する様子を示す図 本発明の強誘電体キャパシタを用いた電子デバイスを示す模式図 強誘電体キャパシタを製造するプロセスを示す図 比較例1の強誘電体キャパシタの形状像と電位像とを示す図 比較例2の強誘電体キャパシタの形状像と電位像とを示す図 実施例3の強誘電体キャパシタの形状像と電位像とを示す図 実施例4の強誘電体キャパシタの形状像と電位像とを示す図 比較例1〜比較例2および実施例3〜実施例4の強誘電体キャパシタにおけるNb3dのXPSスペクトルを示す図 図12に示すXPSスペクトルから求めたバンドアライメントの模式図 実施例5の強誘電体キャパシタの形状像と電位像とを示す図 実施例6の強誘電体キャパシタの形状像と電位像とを示す図 実施例7の強誘電体キャパシタの形状像と電位像とを示す図 参考例8の強誘電体キャパシタの形状像と電位像とを示す図
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。なお、同様の要素には同様の番号を付し、その説明を省略する。
図1は、本発明の強誘電体キャパシタの構造を示す模式図である。
図1(A)は、本発明の強誘電体キャパシタの上面図であり、図1(B)および(C)は、本発明の強誘電体キャパシタの断面図である。
本発明の強誘電体キャパシタ100は、分極の方向が制御され、電荷蓄積領域110を有する強誘電体単結晶120と、電荷蓄積領域110の周りに位置する金属層130とを備える。電荷蓄積領域110は、強誘電体単結晶120の表面140の一部の領域である。本発明の強誘電体キャパシタ100において、強誘電体単結晶120と金属層130との接触界面にはショットキー接合が形成されている。
本発明の強誘電体キャパシタ100は、このような構成により、強誘電体単結晶120に由来する分極電荷を遮蔽するべく強誘電体キャパシタ100外部より集まる電荷150(すなわち、強誘電体単結晶120の自発分極により誘起された電荷)を、電荷蓄積領域110上に閉じ込め、蓄積できる。なお、以降では、分かりやすさのため、電荷蓄積領域110上に蓄積される電荷150を表面電荷150と呼ぶ。
強誘電体単結晶120は、特に材料に制限がないが、環境に優しい材料から構成されているものがよく、分極の方向を制御しやすい一軸性の強誘電体単結晶が好ましい。より具体的には、強誘電体単結晶120は、好ましくは、ニオブ酸リチウム単結晶またはタンタル酸リチウム単結晶である。これらの材料は、結晶のZ方位に沿った一軸性の分極を有しており、その分極の方向を制御する技術が確立されている。また、これらの材料は、優れた圧電効果、焦電効果、電気光学効果、非線形光学効果を有しており、これらにより電荷蓄積領域110上により効率的に表面電荷150を蓄積できる。中でも、強誘電体単結晶120は、ニオブ酸リチウム単結晶が好ましい。ニオブ酸リチウム単結晶は、加工性に優れており、高品質な強誘電体キャパシタを提供できる。
なお、本明細書において、用語「ニオブ酸リチウム単結晶(LN単結晶)」とは、コングルエント組成のLN単結晶(CLN)、定比組成のLN単結晶(SLN)、および、これらにドーパントを添加したLN単結晶を意図する。同様に、本明細書において、用語「タンタル酸リチウム単結晶(LT単結晶)」とは、コングルエント組成のLT単結晶(CLT)、定比組成のLT単結晶(SLT)、および、これらにドーパントを添加したLT単結晶を意図する。ドーパントは、例えば、Mg、Ca、Sr、Ba、Mn、Fe、Tb等であり、特性改善に適宜選択される。例えば、Mg、Ca、Sr、Ba等は、LNあるいはLTの耐光損傷性を向上させる。Mn、Fe、Tb等は、LNあるいはLTのフォトリフラクティブ効果を増大させる。
強誘電体単結晶120の厚さは、特に制限がないが、1μm以上10mm以下が好ましい。この範囲であれば、取扱いが簡便であるとともに、後述する圧電効果あるいは焦電効果によって分極電荷を生じやすいので、より多くの表面電荷を蓄積できる。
図1(B)は、図1(A)の強誘電体キャパシタ100の点線部分の断面図を示す。図1(B)中の矢印は分極の向きを示す。図1(B)では、強誘電体単結晶120が単一分極構造を有している。
詳細には、図1(B)では、分極の方向がすべて電荷蓄積領域110の表面に対して実質的に垂直な方向であり、分極の向きが強誘電体単結晶120の下から上へとなるように制御されており、電荷蓄積領域110に対応する強誘電体単結晶120の表面内部の極性が+極性である例を示す。この場合、表面電荷150として、+極性を遮蔽するだけのマイナスの電荷が蓄積される。図示しないが、電荷蓄積領域110として、図1(B)の裏面である−極性の表面を使い、表面電荷150としてプラスの電荷を蓄積してもよい。なお、実質的に垂直とは、すべての分極の向きが完全に垂直である必要はないが、いわゆるZカット基板として利用できる程度であればよいことを意味する。
図1(C)は、図1(B)とは別の強誘電体キャパシタの断面図を示す。ここでも、図1(C)中の矢印は分極の向きを示す。図1(C)では、強誘電体単結晶120が分極反転構造を有している。
詳細には、図1(C)では、分極の方向がすべて電荷蓄積領域110の表面に対して実質的に垂直な方向であり、電荷蓄積領域110の分極の向きと、それ以外の領域の分極の向きとが反転するように制御されており、電荷蓄積領域110に対応する強誘電体単結晶120の表面内部の極性が−極性である例を示す。この場合、表面電荷150として、−極性を遮蔽するだけのプラスの電荷が蓄積される。図示しないが、電荷蓄積領域110の表面として、図1(C)の裏面である+極性の表面を使い、表面電荷150としてマイナスの電荷を蓄積してもよい。
図1(B)および図1(C)に示すように、本発明の強誘電体キャパシタ100において、少なくとも電荷蓄積領域110の分極の方向は、電荷蓄積領域110の表面に対して実質的に垂直な方向となるように制御されていることが好ましい。これにより、強誘電体単結晶の自発分極、圧電効果、および、焦電効果により、より効率的に電荷蓄積領域110に対応する強誘電体単結晶120の表面内部に電荷(分極電荷とも呼ぶ)が発生する。その結果、本発明の強誘電体キャパシタ100は、これら分極電荷を遮蔽するだけの表面電荷150を有効に蓄積することができる。
図2は、本発明の強誘電体キャパシタにおける強誘電体単結晶と金属層とのバンド構造を示す模式図である。
図2(A)および図2(B)は、それぞれ、n型ショットキー接合およびp型ショットキー接合の場合を示す。
図2(A)に示すように、強誘電体単結晶120と金属層130との接触界面がn型ショットキー接合を形成する場合、強誘電体単結晶120の仕事関数φは、金属層130の仕事関数φより小さい(φ<φ)。
φ<φを満たす場合、強誘電体単結晶120と金属層130とを接触させると、接触面から遠くなるにしたがってフェルミレベル(E)が一緒になるため、強誘電体単結晶120でバンドが曲がる。この曲がった分が、金属層130から強誘電体単結晶120をみると障壁となる。バンドが曲がった領域では、強誘電体単結晶120内の分極電荷(例えば、電子)は、坂を越えて金属層130へと流れることはできない。すなわち、強誘電体キャパシタ100がn型ショットキー接合を有する場合に、強誘電体単結晶120と金属層130との間に電子のキャリアパスが形成されないので、表面電荷150を中和することができない。その結果、表面電荷150は、電荷蓄積領域110上に閉じ込められる。
図2(B)に示すように、強誘電体単結晶120と金属層130との接触界面がp型ショットキー接合を形成する場合、強誘電体単結晶120の仕事関数φは、金属層130の仕事関数φより大きい(φ>φ)。
φ>φを満たす場合、強誘電体単結晶120と金属層130とを接触させると、接触面から遠くなるにしたがってフェルミレベル(E)が一緒になるため、強誘電体単結晶120でバンドが曲がる。この曲がった分が、金属層130から強誘電体単結晶120をみると障壁となる。バンドが曲がった領域では、強誘電体単結晶120内の分極電荷(例えば、ホール)は、坂を越えて金属層130へと流れることはできない。すなわち、強誘電体キャパシタ100がp型ショットキー接合を有する場合には、強誘電体単結晶120と金属層130との間にホールのキャリアパスが形成されないので、表面電荷150を中和することができない。その結果、表面電荷150は、電荷蓄積領域110上に閉じ込められる。
ここで再度図1を参照する。上述のショットキー接合におけるバンドの曲がった領域(空乏領域)は、物理的なギャップ(図1中の点線矢印で示す領域)を形成し得るので、表面電荷150は金属層130に接することがない。その結果、本発明の強誘電体キャパシタ100は、電荷蓄積領域110上に表面電荷150を効率的に閉じ込めることができる。たとえギャップを越えて表面電荷150が金属層130に接触したとしても、上述したように、ショットキー接合により、強誘電体単結晶120と金属層130との間に有効なキャリアパスが形成されないので、表面電荷150が中和されることはない。そのため、本発明の強誘電体キャパシタ100は、表面電荷150を電荷蓄積領域110上に有効に閉じ込めることができる。
なお、ショットキー接合が形成されているか否かは、例えば、X線光電子分光(XPS)を用いてバンドアライメントを求めることにより確認できる。
表1および表2は、それぞれ、例示的な強誘電体および金属の仕事関数を示す。表1および表2を参照し、上述の仕事関数の関係を満たすように、材料設計することができる。なお、表1に示す仕事関数の値は、例えばS.M.Guoら,Appl.Phys.Lett.,89,223506,2006等を引用するものであるが、強誘電体の仕事関数の報告例は極めて少ない。仕事関数は、電子親和力と、伝導帯と価電子帯との差(E−E)との和であり、この値は強誘電体単結晶のバンドギャップに近似することから、仕事関数が不明な材料の場合、バンドギャップを仕事関数とみなして材料設計を行ってもよい。
表1および表2を参照すれば、例えば、強誘電体単結晶120としてニオブ酸リチウムを、金属層130としてAl、CrおよびAuを選択すれば、図2(B)のp型ショットキー接合が形成され得ることが分かる。しかしながら、実際には、後述する比較例1および比較例2に示すように、強誘電体単結晶120としてニオブ酸リチウム、金属層130としてAlの組合せの場合、p型オーミック接合となることが分かっており、電荷を蓄積する強誘電体キャパシタとならない。これは、製造過程においてニオブ酸リチウム単結晶とAl層との間の界面に酸化物層等が形成されることによるものと考えられ、表面処理等改善が必要とされる。このことから、強誘電体単結晶120としてニオブ酸リチウムを用いる場合、上述の関係φ>φを満たしつつ、金属層130は、少なくとも仕事関数が4.5eV以上である金属からなることが望ましい。これにより、確実にp型ショットキー接合が形成される。より好ましくは、金属層130は、CrまたはAuからなる。これらの金属を用いれば、ニオブ酸リチウム単結晶に格別な表面処理をすることなく、p型ショットキー接合を形成できるので、歩留まりを向上できる。
また、金属層130の厚さは、特に制限がないが、10nm以上1μm以下が好ましい。上述の条件を満たす金属を選択し、上述の厚さに制御すれば、金属層130と強誘電体単結晶120との接触界面にショットキー接合の望ましいバンドアライメントが形成され得るので、表面電荷の高い閉じ込め効果が期待できる。
図3は、本発明の強誘電体キャパシタにおける電荷蓄積領域と金属層との種々のパターンを示す図である。
図1では、電荷蓄積領域110が円形であり、金属層130が電荷蓄積領域110を包囲するように位置する例を示したが、金属層130が、電荷蓄積領域110の周りに位置していればよく、これに限らない。例えば、図3(A)に示すように、電荷蓄積領域110が円形であり、その周りに位置する金属層130は、一部が欠けていてもよい。しかしながら、金属層130が電荷蓄積領域110を完全に包囲する方が、表面電荷の閉じ込め効果が向上するため好ましい。
また、図3(B)に示すように、電荷蓄積領域110が矩形であってもよい。さらに、図3(C)に示すように、電荷蓄積領域110がドット状に複数あってもよいし、図3(D)に示すように、電荷蓄積領域110が線状に複数あってもよい。当然ながら、電荷蓄積領域と金属層とのパターンはこれらの組合せであってもよい。電荷蓄積領域と金属層との種々のパターンに、単一分域構造あるいは分極反転構造を組み合わせてもよい。
電荷蓄積領域110の直径Dは、好ましくは、1.5μm以上55μm以下の範囲である。直径Dが1.5μm未満であれば、電荷蓄積領域110が小さすぎるため、十分な表面電荷を蓄積できない場合がある。直径Dが55μmを超えると、電荷密度が小さくなり、非効率になり得る。なお、電荷蓄積領域110が矩形の場合には、長手方向の長さを直径Dとみなせばよい。
図4は、本発明の強誘電体キャパシタが圧電効果により表面電荷を蓄積する様子を示す図である。
図4(A)は、強誘電体単結晶120の初期状態を示しており、強誘電体単結晶120の分極の方向は、電荷蓄積領域110の表面に対して実質垂直な方向であり、分極の向きがすべての強誘電体単結晶120の下から上へとなるように制御されており、電荷蓄積領域110に対応する強誘電体単結晶120の表面内部の極性が+極性である例を示す。図4(A)では、本発明の強誘電体キャパシタ100は、強誘電体単結晶120の自発分極による分極電荷を遮蔽する表面電荷150を蓄積し得る。
図4(B)は、強誘電体単結晶120を押し縮めた場合を示す。上述してきたように、本発明の強誘電体キャパシタ100は、自発分極に基づく表面電荷に加えて、圧電効果に基づく表面電荷(すなわち、強誘電体単結晶120の圧電効果により誘起された電荷)を蓄積することができる。
詳細には、図4(B)に示すように、強誘電体単結晶120に圧力410を印加する(すなわち、強誘電体単結晶120を押し縮めたり、引っ張ったりする)と、強誘電体単結晶120内部では特定の方向に電荷が偏り、図4(A)と比較して、強誘電体単結晶120の上面側により多くのプラスの電荷が、下面側により多くのマイナスの電荷が誘起される。これにより、本発明の強誘電体キャパシタ100は、これら誘起されたプラスの電荷を遮蔽するより多くの表面電荷420を電荷蓄積領域110上に蓄積することができる。すなわち、本発明の強誘電体キャパシタ100は、圧電効果により、電荷蓄積領域110上に蓄積する表面電荷を増大することができる。
図5は、本発明の強誘電体キャパシタが焦電効果により表面電荷を蓄積する様子を示す図である。
図5(A)は、強誘電体単結晶120の初期状態を示しており、強誘電体単結晶120の分極の方向は、電荷蓄積領域110の表面に対して実質垂直な方向であり、分極の向きがすべての強誘電体単結晶120の下から上へとなるように制御されており、電荷蓄積領域110に対応する強誘電体単結晶120の表面内部の極性が+極性である例を示す。図5(A)では、本発明の強誘電体キャパシタ100は、強誘電体単結晶120の自発分極による分極電荷を遮蔽する表面電荷150を蓄積し得る。
図5(B)は、強誘電体単結晶120を加熱した場合を示す。上述してきたように、本発明の強誘電体キャパシタ100は、自発分極に基づく表面電荷に加えて、焦電効果に基づく表面電荷(すなわち、強誘電体単結晶120の焦電効果により誘起された電荷)を蓄積することができる。
詳細には、図5(B)に示すように、強誘電体単結晶120に赤外線等の光510を照射したり、ホットプレート等の加熱装置520により加熱したりすると、強誘電体単結晶120内部では特定の方向に電荷が偏り、図5(A)と比較して、強誘電体単結晶120の上面側により多くのプラスの電荷が、下面側により多くのマイナスの電荷が誘起される。これにより、本発明の強誘電体キャパシタ100は、これら誘起されたプラスの電荷を遮蔽するより多くの表面電荷530を電荷蓄積領域110上に蓄積することができる。すなわち、本発明の強誘電体キャパシタ100は、焦電効果により、電荷蓄積領域110上に蓄積する表面電荷を増大することができる。
次に、本発明の強誘電体キャパシタの製造方法の一例を説明する。
まず、分極の方向が制御された強誘電体単結晶を用意する。強誘電体単結晶の材料の選択は図1を参照して説明したとおりである。分極の方向が制御された強誘電体単結晶は、単一分極構造となるようにポーリング処理された単結晶基板であってもよいし、分極反転構造となるようにドメインエンジニアリング加工された単結晶基板であってもよい。このような単結晶基板は、例えば、登録3551242号を参照して、単一分極構造を有する、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等に代表される酸化物からなる強誘電体単結晶を製造してもよいし、特開平05−2889137号を参照して、周期構造を有する分極反転構造を形成してもよいし、A.Gruvermanら,Appl.Phys.Lett.,69,3191(1996)、北村ら,応用物理学会薄膜・表面物理分科会,NEWS LETTER[120](2004),12−18を参照し、走査型フォース顕微鏡(SFM)あるいは原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、ナノスケールを有する分極反転構造を形成してもよい。
リソグラフィ技術により、強誘電体単結晶の電荷蓄積領域の周りに金属層をパターニングする。金属層の材料の選択は図1を参照して説明したとおりである。
金属層のパターニングの一例は次のとおりである。強誘電体単結晶の電荷蓄積領域を含む表面全体に電子線に感光するレジストを塗布する。次に、電子線(EB)をレジストに照射し、所望のパターンを描画した後、現像液に浸し、感光したレジストを除去する。これにより、金属層を付けたい部分のみが露出する。次いで、物理気相成長法、化学気相成長法等により金属層を付与する。最後に、リフトオフ過程により不要なレジストを除去する。これは、ポジ型のレジストを用いた場合であるが、ネガ型のレジストを用いた場合には、感光していない部分が除去される点が異なる以外、手順は同様である。このようにして、本発明の強誘電体キャパシタが製造される。
金属層のパターニングは、電子線リソグラフィに限らず、フォトリソグラフィを用いてもよいし、リフトオフ過程に代えてエッチング過程を採用してもよい。電子線を用いたリソグラフィは、微細加工が可能なため、ナノスケールの強誘電体キャパシタを製造するに好ましい。所望のサイズや形状の電荷蓄積領域を有する強誘電体キャパシタを得るために、金属のパターニングは、既存の半導体技術等で知られるリソグラフィ技術を適宜採用できる。
このようにして得られた本発明の強誘電体キャパシタは、上述したように強誘電体単結晶に基づく表面電荷を蓄積することができる。このような表面電荷を利用して、本発明の強誘電体キャパシタは、センサや電荷移動スイッチ等の種々の素子と接続し、それらを動作させる電源として機能したり、特定の条件下(例えば、加圧下あるいは加熱下)において、蓄積される表面電荷の電荷量が変化するので、それ自身がセンサとしても機能したりする。
図6は、本発明の強誘電体キャパシタを用いた電子デバイスを示す模式図である。
本発明の電子デバイス600は、本発明の強誘電体キャパシタ100と、素子610とを備える。強誘電体キャパシタ100は、図1を参照して説明したとおりである。素子610は、強誘電体キャパシタ100の電荷蓄積領域110と金属層130との間に接続されており、電荷蓄積領域110上に蓄積された表面電荷により動作するか、または、電荷蓄積領域110上に蓄積された表面電荷の電荷量の変化を検出する。
例えば、素子610がダイオード等である場合、電荷蓄積領域110上に蓄積された表面電荷により容易に動作するので、本発明の電子デバイス600は、外部電源を不要とするダイオードセンサ等として機能する。
例えば、素子610がゴミ等の吸着物に対して抵抗値が変化するセンサである場合、本発明の電子デバイス600は、外部電源を不要とするゴミセンサとして機能する。本発明の電子デバイス600は、強誘電体キャパシタ100の電荷蓄積領域110上に蓄積された表面電荷を利用して、素子610間の抵抗値、あるいは、素子610を流れる電流値を測定することにより、その値に変化があれば、吸着物の存在を検出できる。
例えば、素子610が電圧計あるいは電流計である場合、本発明の電子デバイス600は、外部電源を不要とするスイッチとして機能する。本発明の電子デバイス600は、電荷蓄積領域110上に蓄積された、熱(光)あるいは圧力による表面電荷の電荷量の変化を素子610が検出することにより、一定量以上の電荷量であればオン(あるいはオフ)と、一定量未満の電荷量であればオフ(あるいはオン)とするスイッチとして機能し得る。
次に具体的な実施例を用いて本発明を詳述するが、本発明がこれら実施例に限定されないことに留意されたい。
[比較例1]
比較例1では、強誘電体単結晶120が単一分極構造を有する定比組成ニオブ酸リチウム(SLN)単結晶(厚さ0.5mm)であり、電荷蓄積領域110が+極性面(すなわち、電荷蓄積領域110に対応する強誘電体単結晶120の表面内部の極性が+極性である)を有する円形(直径2μm)の領域であり、金属層130がAl層である強誘電体キャパシタを製造した。
図7は、強誘電体キャパシタを製造するプロセスを示す図である。
図7では、強誘電体キャパシタを製造するプロセスの様子を断面図で、製造した強誘電体キャパシタを上面図で示す。SLN単結晶120の+極性面(図7では上面)に電子線に感光するレジスト(NEB−22、SUMITOMOCHEMICAL Co.,LTD製)710を塗布した。レジスト710に、帯電を防止するためエスペーサ(図示せず)を塗布した。レジスト710を電子線リソグラフィによりドーナツ状に感光させ、水洗によりエスペーサを除去し、現像液(TMAH2.38%)に浸し、感光した領域720のレジストを除去した。その後、純水でリンスした。次に、レジストが一部除去されたSLN単結晶120に電子線蒸着法によりAl層730を蒸着した。Al層の厚さは150nmであった。次いで、N−メチルピロリドン(NMP)を用いたリフトオフ過程により領域720以外のレジスト710およびAl層730を除去した。その結果、円形の電荷蓄積領域110(直径:2μm)を有するSLN単結晶120と、電荷蓄積領域110の周りを包囲するように位置するAl層130とを備えた比較例1の強誘電体キャパシタが製造された。
比較例1の強誘電体キャパシタの表面の形状像を、原子間力顕微鏡(AFM、SII製、NanoNavi II&E−sweep)により観察した。観察は、アルゴン雰囲気下にて、Siカンチレバーを用い、タッピングモードで行った。結果を図8(A)に示す。
比較例1の強誘電体キャパシタの電荷蓄積領域における電位像の温度依存性を、ヒータを備えたケルビンフォース顕微鏡(KFM、SII製、NanoNavi II&E−sweep)により観察した。観察は、室温(25℃)、40℃、55℃、70℃および90℃の各温度、アルゴン雰囲気下(1気圧)にて、Rhコートカンチレバーを用い、印加電圧5V、サイクリックスキャンモードで行った。結果を図8(B)〜(F)に示す。
比較例1の強誘電体キャパシタにおける、SLN単結晶とAl層との間のバンドアライメントを、X線光電子分光法(XPS、Thermo Fisher Scientific製、Theta Probe)により評価した。XPS用の試料には、比較例1の強誘電体キャパシタにおいて、Al層を5nmの厚さで製膜したものを用いた。結果を図12および図13に示す。
[比較例2]
比較例2では、強誘電体単結晶120が単一分極構造を有する定比組成ニオブ酸リチウム(SLN)単結晶(厚さ0.5mm)であり、電荷蓄積領域110が−極性面(すなわち、電荷蓄積領域110に対応する強誘電体単結晶120の表面内部の極性が−極性である)を有する円形(直径2μm)の領域であり、金属層130がAl層である強誘電体キャパシタを製造した。電荷蓄積領域110の極性面が逆である以外は、比較例1と同様の手順で製造した。
比較例2の強誘電体キャパシタの形状像および電位像を、比較例1と同様にして観察した。結果を図9に示す。
比較例2の強誘電体キャパシタにおけるSLN単結晶とAl層との間のバンドアライメントを、比較例1と同様に評価した。結果を図12および図13に示す。
[実施例3]
実施例3では、強誘電体単結晶120が単一分極構造を有する定比組成ニオブ酸リチウム(SLN)単結晶(厚さ0.5mm)であり、電荷蓄積領域110が+極性面を有する円形(直径2μm)の領域であり、金属層130がCr層である強誘電体キャパシタを製造した。金属層が異なる以外は、比較例1と同様の手順で製造した。
実施例3の強誘電体キャパシタの形状像および電位像を、比較例1と同様にして観察した。結果を図10に示す。
実施例3の強誘電体キャパシタにおけるSLN単結晶とCr層との間のバンドアライメントを、比較例1と同様に評価した。結果を図12および図13に示す。
[実施例4]
実施例4では、強誘電体単結晶120が単一分極構造を有する定比組成ニオブ酸リチウム(SLN)単結晶(厚さ0.5mm)であり、電荷蓄積領域110が−極性面を有する円形(直径2μm)の領域であり、金属層130がCr層である強誘電体キャパシタを製造した。電荷蓄積領域110の極性面が逆である以外は、実施例3と同様の手順で製造した。
実施例4の強誘電体キャパシタの形状像および電位像を、比較例1と同様にして観察した。結果を図11に示す。
実施例4の強誘電体キャパシタにおけるSLN単結晶とCr層との間のバンドアライメントを、比較例1と同様に評価した。結果を図12および図13に示す。
[実施例5]
実施例5では、強誘電体単結晶120が単一分極構造を有する定比組成ニオブ酸リチウム(SLN)単結晶(厚さ0.5mm)であり、電荷蓄積領域110が+極性面を有する円形(直径2μm)の領域であり、金属層130がAu層である強誘電体キャパシタを製造した。金属層が異なる以外は、比較例1と同様の手順で製造した。
実施例5の強誘電体キャパシタの形状像および電位像を、比較例1と同様にして観察した。結果を図14に示す。
[実施例6]
実施例6では、強誘電体単結晶120が単一分極構造を有する定比組成ニオブ酸リチウム(SLN)単結晶(厚さ0.5mm)であり、電荷蓄積領域110が−極性面を有する円形(直径2μm)の領域であり、金属層130がAu層である強誘電体キャパシタを製造した。電荷蓄積領域110の極性面が逆である以外は、実施例5と同様の手順で製造した。
実施例6の強誘電体キャパシタの形状像および電位像を、比較例1と同様にして観察した。結果を図15に示す。
[実施例7]
実施例7では、強誘電体単結晶120が単一分極構造を有する定比組成ニオブ酸リチウム(SLN)単結晶(厚さ0.5mm)であり、電荷蓄積領域110が+極性面を有する円形(直径2μm)と矩形(長手方向の長さ3μm)とを組み合わせた領域であり、金属層130がCr層である強誘電体キャパシタを製造した。また、金属層130は、電荷蓄積領域110を包囲することなく、一部が開放するように蒸着した。電子線を照射するパターンが異なる以外は、比較例1と同様の手順で製造した。
実施例7の強誘電体キャパシタの形状像および電位像を、比較例1と同様にして観察した。結果を図16に示す。
[参考例8]
参考例8では、強誘電体単結晶120が単一分極構造を有する定比組成ニオブ酸リチウム(SLN)単結晶(厚さ0.5mm)であり、電荷蓄積領域110が+極性面を有する矩形(長手方向の長さ50μm)の領域であり、金属層130がAl層である強誘電体キャパシタを製造した。参考例8では、SLN単結晶の表面に電子線蒸着によりSiO層(200nm)を付与しており、電子線を照射するパターンが異なる以外は、比較例1と同様の手順で製造した。
参考例8の強誘電体キャパシタの形状像および電位像を、比較例1と同様にして観察した。結果を図17に示す。
以上の実施例、比較例および参考例の実験条件の一覧を簡単のために表3に示す。
図8は、比較例1の強誘電体キャパシタの形状像と電位像とを示す図である。
図9は、比較例2の強誘電体キャパシタの形状像と電位像とを示す図である。
形状像において、明るく示される領域と暗く示される領域とは物体の高低差があることを示しており、明るく示される領域の高さは、暗く示される領域の高さよりも高い。図8(A)および図9(A)によれば、比較例1および比較例2の強誘電体キャパシタは、円形(直径2±0.5μm)の電荷蓄積領域を有しており、その周りに金属層が位置することにより高低差が生じていることを確認した。
電位像において、明るく示される領域と暗く示される領域とは電位の高低差があることを示しており、明るく示される領域の電位は、暗く示される領域の電位と異なる。図8(B)〜(F)および図9(B)〜(F)によれば、比較例1および比較例2の強誘電体キャパシタは、いずれも、SLN単結晶を加熱しても電荷蓄積領域内に電位の上昇を示さず、表面電荷が蓄積されないことが分かった。
図10は、実施例3の強誘電体キャパシタの形状像と電位像とを示す図である。
図11は、実施例4の強誘電体キャパシタの形状像と電位像とを示す図である。
図10(A)および図11(A)によれば、実施例3および実施例4の強誘電体キャパシタが、円形(直径2±0.5μm)の電荷蓄積領域を有することを確認した。
図10(B)および図11(B)によれば、実施例3および実施例4の強誘電体キャパシタの、電荷蓄積領域の電位と金属層の電位とは、ほぼ等しかった。このことから、実施例3および実施例4の強誘電体キャパシタが、室温において、電荷蓄積領域内の電位の上昇を示し、電荷蓄積領域上に自発分極により誘起された表面電荷を蓄積することが分かった。
さらに、図10(C)〜(F)および図11(C)〜(F)によれば、実施例3および実施例4の強誘電体キャパシタは、SLN単結晶を加熱しても、電荷蓄積領域内の電位の上昇を示した。より詳細には、SLN単結晶の温度上昇に伴い、70℃付近で電位の上昇がもっとも大きくなり、その後、電位がわずかに減少した。このことから、実施例3および実施例4の強誘電体キャパシタは、焦電効果により誘起された表面電荷を蓄積することが分かった。また、実施例3および実施例4の強誘電体キャパシタにおいて、電荷蓄積領域表面の極性依存性はほとんど見られないことが分かった。
図12は、比較例1〜比較例2および実施例3〜実施例4の強誘電体キャパシタにおけるNb3dのXPSスペクトルを示す図である。
図12には、基準として、+極性面および−極性面のSLN単結晶基板におけるNb3dのXPSスペクトルを併せて示す。これは、SLN単結晶基板と金属層との間に反応層がない場合、結合エネルギーと価電子帯上端のエネルギーとは一定間隔であるため、SLN単結晶基板の結合エネルギーと価電子帯上端のエネルギーとのエネルギー差と比較することで積層構造のSLNの価電子帯を見積もることができ、相対的なバンドアライメントの評価が可能であるためである。SLN単結晶基板のNb3dXPSスペクトルは、+極性面、−極性面のいずれも、206.25eVおよび209eVの結合エネルギーにおいてピークを示した。
図12によれば、比較例1および比較例2の強誘電体キャパシタにおけるNb3dのXPSスペクトルは、いずれも、わずかながら低エネルギー側にシフトした。一方、実施例3および実施例4の強誘電体キャパシタにおけるNb3dのXPSスペクトルは、いずれも高エネルギー側に著しくシフトした。なお、シフト量は、SLN単結晶の表面の極性に依存しなかった。
図13は、図12に示すXPSスペクトルから求めたバンドアライメントの模式図である。
図12のシフト量から各強誘電体キャパシタにおけるバンドアライメントを評価した。図13に示すように、比較例1および比較例2の強誘電体キャパシタでは、SLN単結晶とAl層との接触界面に、p型のオーミック接合が形成されており、実施例3および実施例4の強誘電体キャパシタでは、SLN単結晶とCr層との接触界面に、p型のショットキー接合が形成されていることが分かった。
以上より、本発明の強誘電体キャパシタは、分極の方向が表面に対して実質垂直となるように制御され、その表面の一部の領域に電荷蓄積領域を有する強誘電体単結晶と、電荷蓄積領域の周りに位置する金属層とを備えており、強誘電体単結晶と金属層との接触界面にショットキー接合が形成されており、これにより、電荷蓄積領域上に強誘電体単結晶に基づく表面電荷が蓄積されることが示された。
図14は、実施例5の強誘電体キャパシタの形状像と電位像とを示す図である。
図15は、実施例6の強誘電体キャパシタの形状像と電位像とを示す図である。
図14(A)および図15(A)によれば、実施例5および実施例6の強誘電体キャパシタが、円形(直径2±0.5μm)の電荷蓄積領域を有することを確認した。
図14(B)および図15(B)によれば、実施例5および実施例6の強誘電体キャパシタは、いずれも、室温において、電荷蓄積領域内の電位の上昇を示し、自発分極により誘起された表面電荷を蓄積することが分かった。実施例5および実施例6の強誘電体キャパシタにおいて、電荷蓄積領域表面の極性依存性はほとんど見られないといえる。図示しないが、実施例5および実施例6の強誘電体キャパシタにおいて、SLN単結晶を加熱すると、電荷蓄積領域内の電位の上昇を示すことを確認した。
以上より、本発明の強誘電体キャパシタにおいて、強誘電体単結晶と金属層との接触界面にp型ショットキー接合が形成される場合、強誘電体単結晶の仕事関数φ(例えば、SLN単結晶の仕事関数は5.3eV)は、金属層の仕事関数φM(例えば、Crの仕事関数は4.5eV、Auの仕事関数は4.6eV)よりも大きいことを満たしており、好ましくは、金属層の仕事関数が4.5eV以上であることが示された。また、電荷蓄積領域の直径(あるいは長手方向の長さ)は、1.5μm以上であることが好ましいことが分かった。
図16は、実施例7の強誘電体キャパシタの形状像と電位像とを示す図である。
図16(A)によれば、画像は不鮮明ながらも、実施例7の強誘電体キャパシタが、円形(直径2±0.5μm)と矩形(長手方向の長さ3±0.5μm)とを組み合わせた電荷蓄積領域を有することを確認した。この場合、電荷蓄積領域の直径は、5μmと見積もることができる。
図16(B)によれば、画像は不鮮明ながらも、実施例7の強誘電体キャパシタが、室温において、電荷蓄積領域内の電位の上昇を示し、自発分極により誘起された表面電荷を蓄積することが分かった。実施例7の強誘電体キャパシタでは、金属層が電荷蓄積領域を完全に包囲することなく、一部開放した状態であるが、表面電荷の蓄積に影響がないことを確認した。
以上から、本発明の強誘電体キャパシタにおいて、金属層は、電荷蓄積領域を完全に包囲する必要はなく、少なくとも電荷蓄積領域の周りに位置していればよいことが示された。また、本発明の強誘電体キャパシタにおいて、電荷蓄積領域の形状は、円形に制限されるものではなく、任意の形状であってもよいことが示された。
図17は、参考例8の強誘電体キャパシタの形状像と電位像とを示す図である。
図17(A)によれば、参考例8の強誘電体キャパシタが、矩形(長手方向の長さ50±5μm)の電荷蓄積領域を有することを確認した。
図17(B)によれば、参考例8の強誘電体キャパシタは、室温において、電荷蓄積領域内の金属層近傍において電位の上昇を示し、自発分極により誘起された表面電荷を蓄積することが分かった。参考例8の強誘電体キャパシタは、SLN単結晶とAl層との間の界面の影響を無視するためにSiO層を挿入している点が本発明の強誘電体キャパシタとは異なるが、効率的に表面電荷を蓄積可能な電荷蓄積領域の直径(あるいは長手方向の長さ)の上限は、55μmであると示唆される。
本発明の強誘電体キャパシタは、強誘電体単結晶に由来する分極電荷を遮蔽するだけの電荷(表面電荷)を蓄積することができるので、自然エネルギーを利用した電源として機能し得る。また、本発明の強誘電体キャパシタは、焦電効果あるいは圧電効果に誘起して蓄積される表面電荷の電荷量が変化するので、このような電荷量の変化を利用したスイッチとしても機能し得る。さらに、本発明の強誘電体キャパシタを電源として、センサや電荷移動スイッチ等と接続し、電子デバイスを構築できる。また、本発明の強誘電体キャパシタは電子線リソグラフィなど選択した製造技術によりナノスケール化が可能であるので、ナノスケールの電源あるいは電子デバイスを提供できる。
100 強誘電体キャパシタ
110 電荷蓄積領域
120 強誘電体単結晶
130 金属層
140 強誘電体単結晶の表面
150、420、530 表面電荷
410 圧力
510 光
520 加熱装置
600 電子デバイス
610 素子
710 レジスト
720 領域
730 Al層

Claims (11)

  1. 分極の方向が制御され、電荷蓄積領域を有する強誘電体単結晶であって、前記電荷蓄積領域は、前記強誘電体単結晶の表面の一部の領域である、強誘電体単結晶と、
    前記電荷蓄積領域の周りに位置する金属層と
    を備え、
    前記強誘電体単結晶と前記金属層との接触界面にショットキー接合が形成されており、
    前記強誘電体単結晶に基づく電荷は、前記電荷蓄積領域上に閉じ込められ、蓄積される、強誘電体キャパシタ。
  2. 前記ショットキー接合がp型ショットキー接合である場合、前記強誘電体単結晶の仕事関数φは、前記金属層の仕事関数φよりも大きく、
    前記ショットキー接合がn型ショットキー接合である場合、前記強誘電体単結晶の仕事関数φは、前記金属層の仕事関数φよりも小さい、請求項1に記載の強誘電体キャパシタ。
  3. 前記強誘電体単結晶は、ニオブ酸リチウム単結晶またはタンタル酸リチウム単結晶である、請求項1に記載の強誘電体キャパシタ。
  4. 前記強誘電体単結晶は、ニオブ酸リチウム単結晶であり、
    前記金属層は、4.5eV以上の仕事関数を有する金属からなる、請求項3に記載の強誘電体キャパシタ。
  5. 前記金属層は、CrまたはAuからなる、請求項4に記載の強誘電体キャパシタ。
  6. 前記金属層は、前記電荷蓄積領域を包囲するように位置する、請求項1に記載の強誘電体キャパシタ。
  7. 前記電荷は、前記強誘電体単結晶の自発分極により誘起された電荷、前記強誘電体単結晶の圧電効果により誘起された電荷、または、前記強誘電体単結晶の焦電効果により誘起された電荷である、請求項1に記載の強誘電体キャパシタ。
  8. 前記電荷蓄積領域の直径は、1.5μm以上55μm以下の範囲である、請求項1に記載の強誘電体キャパシタ。
  9. 前記強誘電体単結晶は、単一分極構造となるように分極の方向が制御されており、
    前記電荷蓄積領域に対応する前記強誘電体単結晶の表面内部の極性は、+極性または−極性のいずれかである、請求項1に記載の強誘電体キャパシタ。
  10. 前記強誘電体単結晶は、分極反転構造となるように分極の方向が制御されており、
    前記電荷蓄積領域に対応する前記強誘電体単結晶の表面内部の極性は、+極性または−極性のいずれかである、請求項1に記載の強誘電体キャパシタ。
  11. 強誘電体キャパシタと素子とを備えた電子デバイスであって、
    前記強誘電体キャパシタは、請求項1〜10のいずれかに記載の強誘電体キャパシタであり、
    前記素子は、前記電荷蓄積領域と前記金属層との間に接続されており、前記電荷蓄積領域上に蓄積された電荷により動作するか、または、前記電荷蓄積領域上に蓄積された電荷の電荷量の変化を検出する、電子デバイス。
JP2014183094A 2014-09-09 2014-09-09 強誘電体キャパシタおよび電子デバイス Active JP6371171B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014183094A JP6371171B2 (ja) 2014-09-09 2014-09-09 強誘電体キャパシタおよび電子デバイス

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2014183094A JP6371171B2 (ja) 2014-09-09 2014-09-09 強誘電体キャパシタおよび電子デバイス

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2016058516A JP2016058516A (ja) 2016-04-21
JP6371171B2 true JP6371171B2 (ja) 2018-08-08

Family

ID=55758857

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014183094A Active JP6371171B2 (ja) 2014-09-09 2014-09-09 強誘電体キャパシタおよび電子デバイス

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6371171B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2023113383A1 (ko) * 2021-10-21 2023-06-22 (주)아이블포토닉스 반도체 공정을 이용하여 단결정 유전체 디바이스를 제조하는 방법

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2019212793A (ja) * 2018-06-06 2019-12-12 ソニー株式会社 強誘電記憶装置

Family Cites Families (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH11261127A (ja) * 1998-03-10 1999-09-24 Matsushita Electric Ind Co Ltd 圧電部品、圧電センサおよび圧電アクチュエータ、ならびにインクジェットプリンタヘッド
EP1628352A4 (en) * 2003-05-08 2009-07-22 Panasonic Corp ELECTRIC SWITCH AND MEMORY BLOCK WITH THIS
JP4150293B2 (ja) * 2003-05-28 2008-09-17 京セラ株式会社 偏光変換器および偏波分散補償器
JP3987933B2 (ja) * 2003-11-12 2007-10-10 独立行政法人物質・材料研究機構 欠陥密度制御による分極反転法および光波長変換素子
JP2007003885A (ja) * 2005-06-24 2007-01-11 Shimadzu Corp 周期的分極反転領域を持つ基板の製造方法
WO2007049793A1 (ja) * 2005-10-25 2007-05-03 National Institute For Materials Science 分極反転領域を形成する方法、その装置およびそれを用いたデバイス
JP2007121194A (ja) * 2005-10-31 2007-05-17 Nec Corp 光検出素子
JP6146898B2 (ja) * 2012-06-29 2017-06-14 国立研究開発法人物質・材料研究機構 表面増強ラマン分光分析用(sers)基板、その製造方法、それを用いたバイオセンサおよびそれを用いたマイクロ流路デバイス

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2023113383A1 (ko) * 2021-10-21 2023-06-22 (주)아이블포토닉스 반도체 공정을 이용하여 단결정 유전체 디바이스를 제조하는 방법

Also Published As

Publication number Publication date
JP2016058516A (ja) 2016-04-21

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Huang et al. Gate‐coupling‐enabled robust hysteresis for nonvolatile memory and programmable rectifier in van der Waals ferroelectric heterojunctions
Basu et al. Photoconductivity in BiFeO3 thin films
Yang et al. Manipulation of oxygen vacancy for high photovoltaic output in bismuth ferrite films
Pantel et al. Tunnel electroresistance in junctions with ultrathin ferroelectric Pb (Zr0. 2Ti0. 8) O3 barriers
Gao et al. Oxygen vacancies induced switchable and nonswitchable photovoltaic effects in Ag/Bi0. 9La0. 1FeO3/La0. 7Sr0. 3MnO3 sandwiched capacitors
Leroy et al. High-speed metal-insulator transition in vanadium dioxide films induced by an electrical pulsed voltage over nano-gap electrodes
Jia et al. Origin of attendant phenomena of bipolar resistive switching and negative differential resistance in SrTiO3: Nb/ZnO heterojunctions
Tan et al. Electronic transport in graphene-based heterostructures
Chen et al. The conduction mechanism of large on/off ferroelectric diode currents in epitaxial (111) BiFeO3 thin film
Zacharaki et al. Very large remanent polarization in ferroelectric Hf1-xZrxO2 grown on Ge substrates by plasma assisted atomic oxygen deposition
Kundu et al. Lead-free epitaxial ferroelectric material integration on semiconducting (100) Nb-doped SrTiO3 for low-power non-volatile memory and efficient ultraviolet ray detection
Agarwal et al. Switchable photovoltaic and polarization modulated rectification in Si-integrated Pt/(Bi0. 9Sm0. 1)(Fe0. 97Hf0. 03) O3/LaNiO3 heterostructures
Xie et al. Nonvolatile Photoelectric Memory Induced by Interfacial Charge at a Ferroelectric PZT‐Gated Black Phosphorus Transistor
Won et al. Diode and photocurrent effect in ferroelectric BaTiO3− δ
Sarkar et al. Multifunctional BiFeO3/TiO2 nano-heterostructure: Photo-ferroelectricity, rectifying transport, and nonvolatile resistive switching property
Xu et al. Influence of La and Mn dopants on the current-voltage characteristics of BiFeO3/ZnO heterojunction
Mao et al. Polarization behavior of poly (vinylidene fluoride-trifluoroethylene) copolymer ferroelectric thin film capacitors for nonvolatile memory application in flexible electronics
Tan et al. Polarization imprint effects on the photovoltaic effect in Pb (Zr, Ti) O3 thin films
Li et al. Interaction of interfacial charge and ferroelectric polarization in a pentacene/poly (vinylidene fluoride-trifluoroethylene) double-layer device
Gerber et al. Low-voltage operation of metal-ferroelectric-insulator-semiconductor diodes incorporating a ferroelectric polyvinylidene fluoride copolymer Langmuir-Blodgett film
Md Sadaf et al. Ferroelectricity-induced resistive switching in Pb (Zr0. 52Ti0. 48) O3/Pr0. 7Ca0. 3MnO3/Nb-doped SrTiO3 epitaxial heterostructure
Fan et al. Resistive switching and photovoltaic effects in ferroelectric BaTiO3-based capacitors with Ti and Pt top electrodes
Mohan et al. Ferroelectric polarization retention with scaling of Hf0. 5Zr0. 5O2 on silicon
Jia et al. Ferroelectric polarization-controlled resistive switching in BaTiO3/SmNiO3 epitaxial heterostructures
JP6371171B2 (ja) 強誘電体キャパシタおよび電子デバイス

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20170627

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20180625

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180703

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180712

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6371171

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250