本発明の分極反転構造の形成方法において好ましくは、前記分極反転領域の全体の面積に対し、前記強誘電体基板の表面から裏面に貫通している前記分極反転領域の面積の割合が50%以下に抑制されるように、前記強誘電体基板に電界を印加する。それにより、微細な分極反転構造を均一に形成することが可能となる。結晶のZ軸が基板平面とほぼ垂直な強誘電体基板において、分極反転領域が部分的に形成され、その部分が基板を貫通して電極間を短絡すると、分極反転領域の広がりが貫通した反転領域に集中して、均一な分極反転の形成を妨げる。従って、この様な貫通する分極反転領域の面積を抑制することが、分極反転構造の均一性を確保するのに効果的である。
この構成において、前記強誘電体基板の厚みTが1mm以上であることが好ましい。
また、前記分極反転領域の深さDの平均値が、前記強誘電体基板の厚みの40%〜95%になるように前記強誘電体基板に電界を印加することにより、上記と同様な効果を得ることができる。
上記の方法は、前記強誘電体基板がMgドープのLiTa(1-x)NbxO3(0≦x≦1)である場合に特に適している。
前記第一電極が櫛形電極であり、前記電極指がストライプ状である構成とすることができる。あるいは、前記第一電極の電極指が三角形であり、電極指の先端が三角形の頂点により形成されている構成とすることができる。あるいは、前記電極指がその基部から先端に向かう方向の軸に対して対称な形状を有し、その対称軸が前記強誘電体基板の結晶のY軸方向に沿うように、前記電極指を配置してもよい。
好ましくは、前記電極指の先端の幅を、5μm以下とする。
また好ましくは、前記強誘電体基板に電界を印加する工程が、電界強度E1のパルス電圧を印加する工程と、電界強度E2の直流電圧を印加する工程とを含み、E1>E2を満足するように行われる。それにより、設計した電極の下に、電極に沿ってなるべく広い範囲で均一な反転領域が形成されるように、印加電圧のパルス波形を制御することができる。先端を有する電極を用いてZ板の基板に分極反転を起こさせると、電極先端に電圧が集中し、この部分の分極反転領域が効率良く形成される。この分極反転領域を電極全体に広がり易くするために、印加電界として、パルス電圧と、直流電圧を併用することが効果的である。すなわち、パルス電圧により分極反転核を形成し、直流電圧により分極反転核を中心に分極反転領域を拡大することが可能である。
好ましくは、前記電界E1を6kV/mmより大とし、前記電界E2を5kV/mmより小とする。また、前記パルス電圧が2つ以上の複数のパルス列からなることが好ましい。
また、本発明の分極反転構造の形成方法において好ましくは、前記分極反転領域を形成した後、前記強誘電体基板を200℃以上で熱処理を施し、前記熱処理中に、前記強誘電体基板の焦電電荷の発生を抑制する。それにより、電界印加により形成した分極反転領域の安定性が向上し、かつ分極反転による散乱が低減される。
好ましくは、前記熱処理中に、前記強誘電体基板の表面と裏面を電気的に短絡させる。また、前記熱処理における昇温速度が10℃/分以下であることが好ましい。
本発明の分極反転構造の形成方法は、前記強誘電体基板の分極反転電界が5kV/mm以下である場合に適している。また、前記強誘電体基板の結晶をほぼストイキオメトリック組成とすることができる。
また、本発明の分極反転構造の形成方法において好ましくは、前記主面に、前記第一電極の複数の電極指の先端と間隔をもって対向するように第二電極を設ける。第二電極は、第一電極の先端に電界が集中するのを補助する役目を果たす。第一電極の先端に電界が集中することで反転核が形成され、分極反転の成長が速やかに開始される。
好ましくは、前記電極指の先端と前記第二電極間の最短距離Lと、前記強誘電体基板の厚みTの関係が、L<T/2を満足するように設定する。それにより、第二電極の効果を十分に得ることができる。電極間距離Lと基板厚みTの関係は、電極指の先端の電界分布に影響を与え、電極間距離Lがこれ以上になると第二電極の影響が小さくなり過ぎる。
好ましくは、前記第一電極と前記対向電極の間に電圧を印加することにより、前記第一および第二電極下に分極反転領域を形成する。同一平面内における電極を別々に印加することで、それぞれの隣の電極下に分極反転領域が形成される。そのため、広範囲の分極反転領域の形成には非常に有効である。
また好ましくは、前記第一電極と前記対向電極の間に電圧を印加する第一の電界印加工程と、前記第二電極と前記対向電極の間に電圧を印加する第二の電界印加工程とを有する。また、前記第一の電界印加工程と前記第二の電界印加工程により、第一および第二電極下に分極反転領域を形成することが好ましい。また好ましくは、前記第一の電界印加工程と、前記第二の電界印加工程を、それぞれ別々に行う。
前記第二電極は、先端が前記第一電極の電極指の先端と対向する複数の電極指を有し、前記第二電極の電極指は、その基部から先端に向かう方向が前記強誘電体基板の結晶のY軸方向に沿うように配置されてもよい。
前記第一電極と前記第二電極の距離Lを、50μm≦L≦200μmとすることが好ましい。
また好ましくは、前記強誘電体基板の自発分極をPs、所望の分極反転領域面積をAで表したとき、前記第一の電界印加工程、または第二の電界印加工程のいずれか一方により、2PsAの100倍以上の電荷量を印加する。また好ましくは、前記第一の電界印加工程では、電界強度E1、パルス幅τ≦10msecのパルス電圧を印加し、前記第二の電界印加工程では、電界強度E2、パルス幅τ≧1secの直流電圧を印加し、E1>E2である。
また好ましくは、前記強誘電体基板に電界を印加する工程を、100℃以上の絶縁溶液中で行う。また好ましくは、前記主面と、前記Z軸で形成される角度θは、80°≦θ≦100°範囲内にある。また好ましくは、前記強誘電体基板の厚みTが1mm以上であり、周期Λが2μm以下の分極反転領域を作製する。また好ましくは、前記分極反転領域の深さDが、基板厚みTに対し、D<Tの関係を満たすように作製する。
また好ましくは、前記強誘電体基板の厚みTをT≧1mmとし、前記対向電極と前記強誘電体基板の間に絶縁膜を形成し、前記第一電極と前記対向電極の間にパルス幅が1msec〜50msecのパルス電圧を印加する。前記絶縁膜は、SiO2膜、TiO2膜、またはTa2O5膜とすることができる。あるいは、前記強誘電体基板の厚みTをT≧1mmとし、前記対向電極と前記強誘電体基板の間に半導体膜を形成し、前記第一電極と前記対向電極の間にパルス幅が1msec〜50msecのパルス電圧を印加してもよい。前記半導体膜は、Si膜、ZnSe膜、またはGaP膜とすることができる。
本発明の光学素子において好ましくは、前記強誘電体基板がMgドープLiTa(1-x)NbxO3(0≦x≦1)である。また好ましくは、前記分極反転領域の周期が4μm以下である。また好ましくは、前記強誘電体基板の厚みが1mm以上である。また好ましくは、前記強誘電体基板の基板厚みTが1mmであり、前記分極反転領域の周期Λが2μm以下である。また好ましくは、前記分極反転領域の深さDが、基板厚みTに対し、D<Tの関係を満たす。また好ましくは、前記主面と、前記Z軸で形成される角度θが、80°≦θ≦100°の範囲内にある。
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して具体的に説明する。
(実施の形態1)
図1Aは、本発明の実施の形態1における分極反転構造の形成方法を実施するための電極構造を示す平面図、図1Bは断面図である。
MgLN基板1の主面2に、櫛形のパターンを有する第一電極3が形成されている。第一電極3を構成する複数の電極指5は、細長いストライプ状を有し、周期的に配列されている。それにより、電極指5の微細な先端5aが周期的に配列されている。第一電極3の先端5aから所定の間隔を設けて主面2に、第二電極4が形成されている。第一電極3と第二電極4は、電気的に絶縁されている。MgLN基板1の裏面には、第一電極3と第二電極4に対向するように対向電極6が設けられている。対向電極6は、第一電極3と第二電極4に対応する領域を含むように、例えば矩形の平面形状を有し、特別なパターンを有する必要はない。
第一電極3を形成する複数の電極指5は各々、ストライプの対称軸を、MgLN基板1の結晶のY軸方向に沿わせて配置されている。言い換えれば、先端5aが、電極指5の基部からY軸方向方向に向かって延びている。
第一電極3と対向電極6の間に、パルスジェネレータ7により、制御された電圧をMgLN基板1に印加することにより、電極間の強誘電体に分極反転領域が形成される。制御された電圧とは、具体的には後述するが、所定の電圧レベルあるいは持続時間を有する、パルス電圧または直流電圧である。
電圧印加時の放電の発生を避けるために、基板1を絶縁液または真空中(10-6Torr以下)に配置して、直流電圧を印加する。分極反転が生じると、第一電極3と第二電極4との間に、強誘電体の自発分極の大きさと電極面積とに比例した電流(「反転電流」と称する)が流れる。
従来の電極構成で、パルスのみ、直流電圧のみ、また直流電圧にパルスを重畳した電圧を印加しても、Z板のMgLNに再現性よく分極反転領域を形成することは困難であった。これに対して、本実施の形態によれば、以下に述べる条件を適用することにより、短周期で均一な分極反転構造を形成できる。
ここで、分極反転の周期構造の均一性とは、周期またはデューティ比の安定性を意味する。均一性は、分極反転構造を波長変換に用いた場合に、変換効率に影響する。例えば、周期的な分極反転構造を10mm程度の長さに渡り形成した場合、部分的に周期構造が乱れた部分が形成される。不均一の主たる原因は、部分的に分極反転領域の横方向が拡大し、デューティ比が大きく乱れた部分が局所的に形成されることである。この様な不均一部分が、従来の方法では反転構造の10mm当たり数十カ所形成されており、周期3μm以下の場合では殆ど前面に亘り、不均一な部分で占められていた。このため、変換効率は理論値の数%〜50%程度しか得られなかった。これに対して、本実施の形態において均一性がよいとは、例えば不均一部分が10mm長に渡り数個以下であることを意味する。また、それにより、波長変換に用いた場合の変換効率が理論値の90%以上という、理論値に近い非常に高い効率が得られることを意味する。
本実施の形態における条件とは、主として、
(a)電極形状
(b)電極の方向と結晶軸の関係
(c)印加パルス波形
に関するものである。これらが特定の条件を充足した場合に、微細な分極反転構造が均一に形成される。
最初に、(a)電極形状について述べる。図2A、2Bを参照して、微細な先端を有する第一電極3により電圧を印加したときの、強誘電体に形成される分極反転領域の形状について説明する。電圧を印加すると、第一電極3の先端部分に分極反転領域8が形成される。その際には、電極の微細な先端5aに電界が集中するため、まずこの部分に分極反転核が形成され、分極反転領域が広がる。
理想的な分極反転構造とは、分極反転領域の幅Wが狭く、反転領域の長さLrが長いものである。幅Wが小さいほど、分極反転領域を微細に制御することが容易になる。例えば幅Wが小さければ、短周期の分極反転構造の形成が可能になる。また、長さLrが長いほど、広い分極反転領域の形成が可能になる。
先端が微細ではなく幅広なパターン電極では、分極反転領域は均一に形成できない。電極下に電界が一様に形成されるため、分極反転核が至るところに発生し、この核を中心に分極反転領域が広がってしまうためである。本実施の形態の電極構造によれば、分極反転核の形成領域を電極の先端に特定して形成できるため、分極反転領域形成の制御性が向上し、均一な分極反転構造の形成が可能となる。この方法は、MgドープLiNbO3、MgドープLiTaO3または、その混合物であるMgドープLiTa(1-x)NbxO3(0≦x≦1)基板に特に有効である。
特に、MgドープLiTa(1-x)NbxO3(0≦x≦1)結晶は、形成された分極反転領域が整流特性を有することが知られている。そのため、分極反転領域が形成されるとその部分に電流が流れる。したがって、分極反転領域が一度形成されてしまうと、反転部分を中心に分極反転領域が広がっていく。一方、分極反転が形成されない部分では、分極反転領域の整流作用により印加電圧が低下するので、逆に反転が形成され難くなる。このため、分極反転領域の不均一性が増大して、均一な分極反転構造の形成が困難になる。この傾向は特に、微細な形状において顕著である。
これに対して、微細な先端を有する電極の優位性について説明する。図3Aに示すように、MgLN基板10の+Z面に櫛形電極11を、−Z面に平面電極12を形成し、電極間に電圧を印加すると、電界13が櫛形電極11の先端部に集中するため、先端部の電界強度が他の部分より大きくなる。そのため分極反転核が発生し、それをトリガーとして、反転核を中心に分極反転領域14が広がる。ところが、先端が平坦な電極構造では、分極反転核は結晶の不均一性やマイクロドメインの存在によりランダムな位置に発生するため、制御が難しい。一方、本実施の形態のように、微細な先端部を有する電極構造を用いることで、電極先端部に電界を集中させることができる。この部分の電界強度が局所的に強くなることで、分極反転核の発生位置を制御することが可能となる。図3Bに示すように、櫛形電極11先端部に分極反転核を発生させると、この核を中心に分極反転領域は電極に沿って成長し、分極反転領域の長さLrが増大する。このようにして、微細な先端を有する電極を用いることで、分極反転核の発生領域を制御し、均一な分極反転構造の形成が可能になる。
微細な先端を持たない電極形状、例えば梯子状の電極や平面電極の場合、先端部への電界収集が起きないため、分極反転核が電極下のランダムな場所に発生する。したがって、分極反転の制御が不能であり、必要な均一形状の形成が困難である。したがって、電極指の先端が微細であるとは、電極により印加される電界を十分に集中させることができる程度に、先端における幅が小さい状態を意味する。電界を十分に集中させるとは、分極反転構造を均一に形成するために必要な程度を意味する。通常、先端の幅は、5μm以下が望ましく、2μm以下であれば、形成される分極反転構造の均一性が向上するため、より好ましかった。先端が1μm以下になると、微細な分極反転構造の形成が可能となるためさらに好ましい。
MgLNにおいては、前述したように、分極反転領域の電気抵抗が大きく低下する。このため、分極反転領域の拡大と共に抵抗が低下する。したがって、印加パルスの電流量を一定にしておくと、分極反転領域の拡大とともに、図3Cに示すように、印加電圧が低下してくる。印加電圧が低下して、分極反転電圧Vc以下になると、自動的に分極反転領域の成長が低下する。
分極反転領域の更なる拡大を実現するには、上記の分極反転領域の電気特性の変化を考慮する必要がある。図4A、4B、図5A、5Bを参照して、さらに分極反転領域を拡大するための分極反転方法について述べる。前述したように、分極反転領域14はそれが拡大するのに従って停止する。これを避けるため電流値を大きく設定すると、初期の抵抗が高い状態において、分極反転領域に大電流が流れ、温度上昇による絶縁破壊や、分極反転領域の急激な横方向拡大が生じる。これを防止するためには、次のようにする。まず、比較的低電流、例えば、0.1mA程度に最大電流量を流して、図4A、4Bに示すように分極反転領域を形成する。その後、分極反転の成長が停止したら、さらに電流の最大値を上げて、図5A、5Bに示すように、分極反転領域の成長を促進する。これを繰り返すことで、長さLrの拡大を図ることが可能となる。
分極反転領域の長さLrを長くする方法として、第二電極4を設けることが有効である。第二電極4は第一電極3の先端から距離Lだけ離間した位置に形成されている。第二電極4は、第一電極3の先端5aに電界が集中するのを補助する役目を果たす。前述したように分極反転領域の形成に際しては、第一電極3の先端に電界が集中することで反転核が形成され、分極反転の成長が開始される。第一電極3の先端における電界分布は、対向電極6と第二電極4により影響を受ける。第一電極3と第二電極4の電極間距離Lと基板厚みTは、電極指5の先端5aの電界分布に影響を与えるため、形成される分極反転領域の長さLrに大きく影響を与える。
実験の結果によれば、電極間距離Lが基板厚みTより短い場合に、均一な分極反転が形成され易い。これ以上離れると第二電極4の影響が小さくなり過ぎて、第二電極4による長さLrの増大効果が得られない。また電極間距離Lをあまり短くすると第一および第二の電極103、104間で放電が起こるため、電極間距離Lの大きさは5μm以上が望ましい。さらにL<T/2の場合には、分極反転領域の長さLrを長くするためにさらに好ましい。
次に、(b)電極と結晶軸の関係について述べる。電極指5の方向と分極反転領域の長さLrの関係を調べた。MgLNは1軸性の結晶であり、Z軸に垂直な面では結晶は対称構造と思われていた。特に分極反転の特性に関しては、X、Y軸方向には依存性がないと思われていた。しかしながら、Z板の基板における分極反転特性は、結晶のX、Y軸に大きく依存することが明らかになった。図6は、形成される分極反転領域の長さLrの、結晶軸依存性を示したものである。電極指5の方向をX、Y軸の方向に回転させて、各方向の場合に形成される分極反転の長さLrを、原点からの距離で示したものである。Y軸方向に電極指5の先端を向け、電極指5の軸方向をY軸方向に揃えると、分極反転領域の長さLrは非常に長くなる。これに対して、X軸方向に電極指5を沿わせると、長さLrは半分以下に低下した。
また、電極指5をX軸方向に形成した場合は、Y軸方向に形成した場合に比べて、分極反転の大きさの不均一性が大きくなる。Y軸方向に形成した場合は、形成される分極反転領域の大きさのバラツキは数%以下であり、実用的に均一な分極反転構造が得られる。電極指5の方向としては、Y軸に対して±10°以下の傾きであれば、長さLrが比較的長く、実用的に満足できる程度に均一な分極反転構造が得られる。±5°以下であれば、均一性はより良好である。Y軸に対して±10°を超えると、長さLrは大幅に低下してしまい、同時に不均一性が増大することが分かった。
以上のとおり、微細な先端を有する電極指を、その軸方向を結晶のY軸方向に揃えて形成することが、均一な分極反転構造を形成するための重要な条件である。分極反転領域形成の過程としては、電極指の先端に電界が集中して、この部分の表面電界が他の部分より高くなり、まず分極反転核が形成される。その後、核を中心に電極指下に分極反転領域が広がって分極反転が形成される。この際に、電極指の軸方向がY軸方向に向いていることにより、分極反転の広がりが結晶のY軸方向に広がりやすい特性が活かされ、均一な分極反転が形成される。微細な先端を有さない場合、分極反転核が不規則に形成されるため、分極反転領域が不規則に広がり、微細な分極反転形状、特に10μm以下の反転構造を均一に形成することが難しい。また、先端をX軸方向に向けて形成した場合は、十分な長さLrを確保して、微細な構造を均一に形成するのは難しい。
第一電極の周期的形状のパターンとして、櫛形電極のストライプ形状以外に、図7A、7Bに示すような三角形状を用いることができる。この第一電極3aにより、三角形の分極反転領域9を周期的に形成することができる。三角形の周期的分極反転領域はプリズム、偏向器等への応用が可能である。三角形の場合も、対称軸を基板結晶のY軸方向に沿わせることで、分極反転領域を大きくすることが可能となる。その場合、三角形の頂点が先端となり、その頂点を中心に分極反転が発生し、成長する。
次に、(c)電界印加波形が分極反転に与える影響について述べる。電極間に直流電圧を印加すると、形成しようとする分極反転領域が数μmの微細なものである場合、形成された分極反転領域は非常に不均一であった。つまり、電極の所々に分極反転核が形成され、かつ各々の分極反転核から分極が大きく広がってしまい、近接する電極指により形成された分極反転領域と接触してしまった。このため、分極反転領域を微細に制御することはできなかった。次に、パルス幅が0.1ms〜100msで、印加電圧が約8kV/mmのパルス状の電圧を印加したところ、微細な分極反転構造を均一に形成できた。印加電界は、パルス幅τ≦10msecのパルス電界が好ましかった。さらに、複数のパルス列を印加することで、均一な分極反転構造の形成が可能となる。印加電圧が6kV/mm以下では、分極反転領域が形成されなかった。
パルス列を印加することで分極反転構造の形成は可能になったが、形成される分極反転領域は電極指の先端近傍に限られ、電極指に沿って延びた長さLrの大きい分極反転領域を形成するには至らなかった。パルス波形、パルス回数を変えても、同様の結果であった。最適なパルス回数は、オシロスコープに示される電圧波形を観測しながら、決定することができる。まず、電圧印加開始時の電圧振幅をモニターし、パルス印加を追加していく。パルス回数の増加に伴い、電圧振幅が減少していき、ある回数に到達すると電圧振幅の低下が止まる。電圧振幅の飽和と最低印加パルス数とは相関があり、電圧振幅の低下量をモニターすることで印加パルス数を決定することが出来る。それ以上のパルス回数を与えても反転領域は拡大しなかった。最低印加パルス数は、設定電流に依存し、電流値が大きいほど、その回数は減少する。すなわち、同一周期の分極反転構造を形成する場合、電流値が高いほど、少ないパルス回数で分極反転の成長が止まり、それ以上のパルス印加をおこなっても分極反転領域は拡大しない。
そこで、パルス電圧の印加に直流電圧の印加を加えてみた。印加時間は1〜100sec程度である。直流印加のみでは均一な分極反転構造の形成は難しかったが、パルス列印加に続けて直流電圧を印加すると、分極反転領域が電極に沿って拡大し、長さLrがパルス印加のみの場合に比べて数倍に増大した。即ち、パルス列を印加した後、直流印加の電圧を加えることで、均一で広い領域に渡る微細な分極反転構造の形成が可能となった。印加電界パルスは、例えば、パルス幅0.5ms、パルス回数は200〜5000回程度、印加電圧は、基板厚さが2mmのときに5〜6kVとすれば、良好な結果が得られた。電流の最大値は0.2〜1mA程度とする。直流電圧の大きさは、パルス電圧に比べてかなり小さく、0.2〜4kV/mm以下とした場合に良好な結果が得られた。非常に低い電圧で分極反転が形成されるのは、パルス列印加で分極反転核が形成されており、直流電圧の印加は、分極反転核を中心に分極反転領域を拡大させる作用に寄与するためと考えられる。パルス印加後に5kV以上の直流電圧を印加すると、分極反転領域が広がり過ぎて、微細な反転領域を形成するのが難しくなった。
次に、実用上、電圧を印加する際の電流、電圧の最大値を制限する必要性について説明する。MgLN等を分極反転させる際、前述したように基板の電気抵抗が大幅に低下するため、分極反転した部分に大きな電流が流れる。通常の強誘電体では、流れる電荷量は分極反転領域の面積に規制されるわずかな量であるが、MgLNにおいては、連続的な電流が流れるため、印加する電圧回路に特別な配慮が必要となる。すなわち、電界を印加する回路に流れる最大電流を制御する機能が必要となる。MgLNの場合、電流値を制御しないと、大電流が流れることで結晶破壊を生じる。これを防ぐには、電流の値が設定した最大値を超えないように、自動的に印加電圧を下げるように制御する機構が必要である。実際のMgLNの場合、電極の面積にも依存するが、最大の電流量としては、10mA以下が望ましい。周期3μm以下の短周期構造の場合は、5mA以下に制御する必要がある。
また、連続パルスを印加する際に、それぞれのパルスの最大電流量が異なるパルス電圧を印加することは有効である。パルス電界を複数印加して分極反転を形成する際、初期は分極反転部の抵抗が高いため、少ない電流量で高電圧を印加できる。また初期に電流量を大きくすると分極反転部が不均一になるため、分極反転が形成される初期には1mA以下の低電流に最大電流を設定する必要がある。ところが、分極反転領域が拡大すると共に、分極反転部の抵抗が大幅に低下するため、電流量の最大値を限定していると、分極反転に必要な電圧に達しなくなる。このため、分極反転領域の拡大とともに、印加電流の最大値を増大させることが有効である。
本実施の形態の分極反転構造の形成方法において、MgLNの基板厚みは1mm以上のものが、好ましかった。基板厚み1mm以上の場合、分極反転構造の均一性、および分極反転領域の電極下の長さLrについて、良好な結果が得られた。この理由は、厚い基板を用いることで、分極反転領域が基板を貫通するのを防止できるからである。後述するように、分極反転領域が基板を貫通すると、分極反転領域の不均一性が増大して微細な分極反転構造の形成が難しくなる。基板の厚みを厚くすることで、分極反転領域の貫通を抑制して、均一な分極反転構造の形成が可能になった。従来は、基板厚みを0.5mm以下に薄くすることで分極反転領域の形成を容易にし、さらに微細な反転構造の形成を可能にしてきた。基板を厚くすることで反転領域の均一化および微細化が可能になる現象は、MgドープLiTa(1-x)NbxO3(0≦x≦1)基板において特に顕著である。またMgドープLiTa(1-x)NbxO3(0≦x≦1)基板は反転電圧が、通常のLNの1/4以下である。通常のLN等では基板を厚くした場合に反転電圧による絶縁破壊が生じるが、反転電圧が低い分絶縁破壊を起こすことなく分極反転電圧の印加が可能となる。
以上の本実施の形態の説明は、Z板のMgLNを用いた場合における分極反転構造の形成方法を例とした。Z板基板は結晶のC軸が基板に垂直な方向にあるため、電気光学効果を利用する電界印加を効率良く行える。また分極反転領域の深さが深くなる等の有利な点を持っているため、バルク型の光学素子としては理想的な基板である。しかしながら、同様な効果は、Z板に近いオフカット基板でも観測された。オフカット角として、基板平面の垂線と結晶のC軸のなす角度が0°以上の場合について検討したところ、オフカット角度が±10°以下の場合、Z板と同様に均一な分極反転構造が形成できることを確認できた。オフカット角度が±10°を超えると、同様の方法では均一で微細な分極反転構造の形成は困難であった。
なお、本実施の形態の分極反転構造の形成方法は、コングルエント組成のMgLN以外、MgドープLiTa(1-x)NbxO3(0≦x≦1)基板、ストイキオ組成のMgドープLiTa(1-x)NbxO3(0≦x≦1)基板に対しても適用可能である。
コングルエント組成のMgLNについて、Mgのドープ量と分極反転特性を評価した。基板の厚みは1mmとした。Mgのドープ量は分極反転特性に大きく影響した。分極反転に伴う電気抵抗の変化は、Mgのドープ量に依存して増大し、短周期の分極反転構造の形成もMgのドープ量に依存する。周期3μm以下の短周期構造は、Mgのドープ量が4〜5.5μmの範囲でしか形成されなかった。周期10μm以上の大きな周期構造は、Mgのドープ量2〜7mol%の材料でも形成可能であった。またドープ量が7mol%を越えると結晶性が悪くなるため分極反転は形成され難くなる。また2mol%未満では、分極反転の横方向の拡大が大きくなり、周期構造を形成し難くなる。従って、周期構造を形成するにはmol濃度2〜7mol%が好ましい。短周期構造を実現するには4〜5.5mol%がより好ましい。
なお、基板の組成に関しては、コングルエント組成とストイキオメトリック組成を比較したが、Mgのドープ量と分極反転特性の関係には大きな差はなかった。ストイキオメトリック組成のMgLN、MgLTおよびその混合物であるMgドープのLiTa(1-x)NbxO3(0≦x≦1)においても、Mgのドープ量と分極反転特性の関係は同様であった。
また、形成される分極反転領域の深さは、分極反転領域の均一性に大きく影響を与えることが判明した。従来のZ板のMgLN基板における分極反転構造の形成方法の場合、分極反転領域は表面から裏面にかけて貫通して形成される。しかしながら、同様の構成で分極反転領域を形成すると、短周期、特に4μm以下の周期構造をもつ分極反転構造を形成する場合に、不均一性が大幅に増大する。MgLNにおいて、形成された分極領域は整流特性を持ち、分極反転が発生する電圧以下の印加電圧で電流が流れる。このため、電極間に電圧を印加して分極反転を形成する場合、一部の分極が反転して基板間を貫通すると、分極反転領域を通して電流が電極間に流れてしまう。この結果、この部分の分極は大きく成長するのに対して、他の部分は先行して分極反転が貫通した部分に電流を食われて、分極反転の成長が止まってしまう。この結果、分極反転領域は非常に不均一に形成される。
直流印加による分極反転の場合に微細な分極反転領域の形成が難しいのも、同様の理由による。本実施の形態の分極反転構造の形成方法では、パルス印加によって分極反転を起こさせるため、分極反転深さDを、基板厚みTに達しないように制御することが可能である。すなわち、パルス印加回数を制御して、分極反転深さDが基板厚みTに達しないように制御することができ、それにより分極反転領域が裏面まで貫通する割合を制限して、分極反転の均一性を向上できる。実験では、形成された分極反転領域全体の面積のうち、裏面まで貫通している分極反転領域の面積の割合を1%以上50%以下に抑えることで、均一な分極反転構造の形成が可能であった。同割合を20%以下に抑えると、4μm以下の微細な構造の形成も容易となる。パルス印加後に印加する直流電圧は、非常に低電圧とすることにより、パルス印加で形成された分極反転核を中心に電極に沿って拡大するため、分極反転深さは増大せず、最終的に分極反転深さDを基板厚みTより小さく維持できる。以上のとおり、T>Dの関係を保って分極反転領域を形成することで、均一で微細な分極反転構造の形成が可能である。
貫通する分極反転領域の成長を抑制することで、微細な分極反転領域を均一に形成するための方法としては、分極反転深さDの平均値が、基板厚みTの40〜95%になるように制御することが効果的である。分極反転深さDの平均値が95%を越えると、分極反転領域の貫通する割合が50%を越え、反転の不均一性が大幅に増加した。一方40%を下回ると、分極反転領域が形成されない部分が多くなり、結果的に不均一な分極反転構造となる。分極反転深さDの平均値を基板厚みTの50〜80%に抑えると、より均一性が向上する。
また、MgLN基板の表面にイオン交換を施し、結晶性を変化させることが、分極反転を微細に制御するために有効である。MgLNにパターン電極により電界を印加する際に、基板の表面状態は反転特性に大きく影響を与える。電極により電圧を印加する場合、電極直下に分極反転領域を成長させるが、同時に横方向にも拡大する。横方向の分極反転領域の拡大は、分極反転領域を微細に形成するのを難しくする。例えば、周期的な分極反転構造を形成する場合、分極反転領域の横方向拡大は、短周期の反転構造の形成を難しくする。これを防止するには、分極反転核の発生を抑圧するのが有効である。分極反転核は結晶表面の電極直下およびその周辺に形成され、反転核を中心に分極反転部は成長する。この反転核の発生は、結晶表面のイオン交換を行い結晶の強誘電性を劣化させることにより、低減可能である。例えば、イオン交換の一種であるプロトン交換を施すことで、分極反転領域の横方向拡大が抑制され、短周期の分極反転構造の形成が可能となる。しかしながら、イオン交換深さが深くなり過ぎると分極反転領域の形成が困難になるため、イオン交換深さは0.5μm以下が望ましい。
さらに、図8A、8Bに示すように、第二電極4に櫛形の電極指15を形成すると、分極反転領域形成の歩留まりが向上した。第一電極3と対向電極6間に電圧を印加したとき、第一電極3と第二電極4間で放電が発生し、分極反転が起こらない場合が生じ、これが、分極反転領域形成の歩留まりを低下させる原因であった。一方、第二電極4に第一電極3と同様の櫛形電極を形成することで、電極間の放電を防止でき、歩留まりが向上した。
また、第二電極4と対向電極6間に電圧を印加することで、第一電極3下部に分極反転が起こることが分かった。第二電極4と第一電極3の間隔を小さくし、第二電極4にパルス電圧を印加することで、第一電極3の下部に分極反転領域が形成される。このようにして形成された分極反転領域は均一であり、分極反転領域が基板を貫通して不均一になることがないので、微細な分極反転構造が均一に形成された。また第一電極3と第二電極4にそれぞれ電圧を印加を繰り返すことで、より均一で長い分極反転構造の形成が可能になった。
さらに図9A、9Bに示すように、第一電極3および第二電極4の少なくとも一方を、金属16と誘電体17の多層構造にすることで、分極反転の均一性の増大、および電極下に形成される分極反転領域の拡大が可能となる。これは、電極間にパルス電圧を印加する際に、電極の容量の増大によりパルス波形の過渡特性が変化することに起因する。容量増大の方法として、電極を金属と誘電体の多層膜にすることが有効である。誘電体としては、誘電率の大きなSiO2、Ta2O5、Nb2O5、その他の高誘電率の材料が好ましい。
(実施の形態2)
実施の形態2における分極反転構造の形成方法は、分極反転を安定化させるための改善に関する。まず、MgLNの分極反転の不安定性を確認した実験結果について説明する。
実験は、Mg5molドープのZ板LiNbO3基板を用いた。1mm厚の基板の±Z面に電極を形成し、10kV程度のパルス電圧を印加して、電極下に分極反転領域を形成した。HF溶液で基板エッチングすることにより、±Z面のエッチングレートの違いにより、分極反転領域を観測できる状態にした。
次に、分極反転領域が形成された基板を100℃程度で30分間熱処理した後、再度HFエッチング処理して分極反転部分を観測すると、先に形成された分極反転領域の面積が半分近くに減少しているのが観測された。その他、観察された現象は、以下のとおりである。
(1)80℃程度の低温の熱処理によっても反転領域は減少する。
(2)熱処理の温度、時間に依存して反転領域は減少する。
(3)低電圧の電界印加によっても反転領域は減少する。
(4)反転領域の減少は不均一に発生する。
(5)基板表面の法線に対し、結晶のC軸がわずかに傾いたオフカット基板においても、同様の現象が観測される。
以上のように、MgLNのZ板においては、電界印加により形成された分極反転構造が非常に不安定であることが判る。このことは以下のような問題を生じる。
まず、非常に低温でも分極反転領域の減少が発生するため、分極反転を形成した基板に、加熱を伴うプロセスによる加工ができない。また、分極反転が経時変化で変化するため、素子特性が時間と共に変化する。
本実施の形態における分極反転構造の形成方法は、上記問題を解決するものである。この方法の特徴は、基板および電極の構造として例えば実施の形態1と同様のものを用い、電圧印加により分極反転領域を形成した後、アニール処理を施すことである。分極反転領域形成後のアニール処理の条件を適切に設定することにより、分極反転領域の減少を抑制することができる。
適切なアニール条件について検討を行った結果、分極反転領域の減少が、アニール処理の昇温速度に大きく依存することが判った。図10Aは、アニール処理の温度プロファイルを示す。昇温速度一定でアニール温度に達した後、アニールを100℃1時間行い、さらに降温速度一定で室温まで冷却する。図10Bは、アニール処理の昇温速度と反転領域の減少率の関係について測定した結果を示す。図10Bから分かるように、昇温速度が速くなる程、反転領域の減少が大きくなり、昇温速度が20℃/分を超えると、反転領域は50%以上減衰する。これに対して、昇温速度が10℃/分以下になると減衰率は10%以下になり、昇温速度が5℃/分以下になれば数%に低減する。従って、反転領域の減衰を抑制するためには、昇温速度を10℃/分以下に設定することが望ましい。さらに望ましくは5℃/分以下とする。降温速度に関しても同様の実験を行ったが、降温速度の影響は、あまりないことが判明した。これは、昇温時に発生する焦電電荷による電界が、分極反転の安定性に影響を与えているためと考えられる。
分極反転領域の不安定性の原因が焦電電荷による分極反転の再反転現象であることが判明したので、これを防止する他の方法について検討した。Z板基板の場合、焦電電荷は基板の表裏面に現れ、Z軸方向の電界を形成する。これを防止するには、基板の表裏面を電気的に短絡すればよい。そこで、分極反転領域を形成した基板の表面と裏面に金属ペーストを塗布し、さらに表面と裏面を電気的に短絡した。この状態でアニール処理を行った。アニール温度は、400、600、800℃であった。MgLNの場合は、800℃では分極反転領域の減少が発生したが、600℃以下では、いかなる高速熱処理に対しても分極反転の安定性が確認された。このように、基板の表面と裏面を短絡して焦電電荷による電界を解消することで、高速のアニール処理が可能となる。
また、200℃以上でアニール処理を行うことにより、分極反転構造の安定性が大幅に改善されることが判った。200℃以上でアニール処理を行った後は、100℃以上の高速な昇温、降温実験を繰り返しても、反転形状は全く変化しなかった。
また400℃以上で熱処理することで、基板内に存在した散乱損失が大幅に低下して、透明度の高い分極反転構造の形成が可能となった。このため、例えば、非線形光学効果を利用した光波長変換素子に適用した場合、変換効率が大幅に増大した。また偏光素子に適用した場合も結晶内の伝搬損失が1/2以下に低下するため、ロスの少ない偏光器を実現できた。
分極反転構造の不安定性の原因は、MgLNの分極反転電界が5kV/mm以下であり、通常のLiNbO3、LiTaO3等の1/4以下と非常に小さいことである。分極反転電圧が低いため、分極反転後の反転部分が不安定であり、わずかな焦電効果により再反転を起こす。ストイキオメトリック結晶の場合も反転電圧が低いため、同様の熱処理が必要となる。また、熱処理温度の上限は、基板のキュリー温度に左右される。MgLNの場合キュリー温度が1200℃程度であるため、熱処理温度は800℃以下に制限する必要がある。800℃を越えると、分極反転領域は小さくなった。また、LiTaO3の場合はキュリー温度が600℃程度であるため、熱処理の上限は500℃以下である。
本実施の形態の熱処理は、実施の形態1における方法により形成された分極反転構造に対して特に効果的であるが、他の方法により形成された分極反転構造を安定化させるために適用することも可能である。
(実施の形態3)
本実施の形態3における分極反転構造の形成方法は、図11Aおよび11Bに示すような電極構造を用いた場合の電圧印加の方法に特徴を有する。本実施の形態では、Z軸に垂直な主面2を有するMgLN基板1の+Z面に形成された、第一電極3および第二電極4を用いて電圧を印加する。すなわち、いずれか一方の電極に電圧を印加することで、他方の電極下にも分極反転領域が形成されることを利用し、広範囲の分極反転領域を形成可能とする。以下の説明では、1mm厚のZ板MgLN基板に分極反転領域を形成する場合を例として説明する。
図11Aおよび11Bにおいて、実施の形態1と同一の要素には同一の参照番号を付して説明の繰り返しを省略する。本実施の形態においても、櫛形の第一電極3を形成する複数の電極指5は、各々の細長い形状の対称軸を、MgLN基板1の結晶のY軸方向に沿わせて、所定の周期で配置され、したがって、先端5aが、電極指5の基部からY軸方向に向かって延びている。第二電極4も櫛形の電極指15を有し、その先端15aは、基部からY軸方向に向かって延びている。
第一電極3と他の面に形成された対向電極6の間に、パルスジェネレータ7で制御した電圧を印加することで、電極間に分極反転領域が形成される。所定の電圧レベルを有し、必要に応じてパルス電圧または直流電圧を、MgLN基板1に印加することができる。電圧印加時の放電発生を避けるために、MgLN基板1を絶縁液または真空中(10-6Torr以下)に配置して電圧を印加する。
本実施の形態に特有の電圧の印加方法について説明する。まず、第二電極4と対向電極6の間にパルス電圧を印加したあと、直流電圧を印加する。次に、第一電極3と対向電極6の間に同様に、パルス電圧を印加したあと、直流電圧を印加する。これにより、第一電極3、および第二電極4の先端5a、15aの下に分極反転核が生じ、分極反転が形成される。
ここで、第一電極3、または第二電極4の一方に電圧を印加することにより、他方の第二電極4、または第一電極3の電極下にも分極反転が形成されることについて説明する。
第二電極4に電圧を印加したときの第一電極3の下における影響を調べるために、第一電極3には電圧を印加せず、第二電極4と対向電極6の間にパルス電圧を印加した後の、強誘電体基板における分極反転の状況を調べた。第一電極3の先端5aと、第二電極4の先端15aの間隔は、400μmとした。電圧印加後、熱フッ硝酸溶液のエッチングを行い、第一電極3の下の分極反転の観測をおこなった。その結果、電圧を印加していない第一電極3の電極下に、分極反転領域が形成されていることを確認した。同様に、第一電極3に電圧を印加し、第二電極4に電圧を印加しない場合には、第二電極4の電極下にも分極反転領域が形成されることを確認した。
図12を参照して、さらに詳しく説明する。図12は分極反転領域形成の様子を示す断面図である。まず、第二電極4に電圧を印加した場合、第二電極4の電極下、および第一電極3の電極下に分極反転領域R2が形成される。次に、第一電極3に電圧を印加すると、両電極下に形成された分極反転領域がさらに成長し、分極反転領域R1が形成される。これにより、分極反転領域を拡大するには、同一平面上に形成された他方の電極により電圧を印加することが有効であることが判る。
次に、第一電極3の下に形成された分極反転領域を拡大することを目的として、以下の条件を変えて検討を行った結果について説明する。
(a)電圧印加方法
(b)電極間隔
(c)電極方向と結晶軸
(d)電圧波形、および電荷量
(e)第二電極4の形状
(f)絶縁溶液の温度
最初に、(a)電圧印加方法について説明する。電圧の印加方法として、第一電極3および第二電極4への同時印加と、それぞれの電極に別々に印加する個別印加について検討した。同時印加では、+Z面付近を流れる電流が多くなり、第一電極3および第二電極4の同一平面内に大きな電流が流れやすくなるため、放電の発生する率が非常に高くなった。したがって、電圧の印加方法としては個別印加の方が好ましい。これについて、以下に詳細に説明する。
第一、および第二電極3、4に同時に電界を印加すると、それぞれの電極先端に集中する電界が減少するため、分極反転領域の成長が阻害される。このため初期の電界印加においては、電界を別々に印加する方が効果的である。さらに、隣接する電極により印加される電界により、電圧が印加されていない電極下にも分極反転が生じる作用により、隣接する電極を交互に用いて電界を印加することで、互いの電極下に形成される分極反転領域がより大きく拡大する効果が得られる。また、交互に電界を印加することで、単一電極で電界を印加する場合よりも、反転領域を長くする効果が得られる。実験では、例えば電極間隔が200μmの場合、第一および第二電極3、4に同時に電圧を印加した場合に比べて、一方の電極だけに電界を印加した場合は、約2倍に反転領域の長さが成長し、さらに交互に電界を印加することで約1.5倍、同時印加の3倍の反転領域の長さLrが得られた。
この様に第一および第二電極に交互に電界を印加するのは、パルス電界を印加する場合により有効であった。また、最初に電界を印加した電極に対し、後で電界を印加した電極に形成される分極反転領域の長さLrが増大する傾向にある。従って、主たる電極には後で電界を印加することが効果的である。
一方、パルス電界を印加後、直流電界を印加する場合は、交互に電界を印加する効果は見られなかった。隣接する電極に同時に電界を印加することで、プロセスの短縮化が可能になる。また全体的に形成される分極反転構造が均一になるという効果もある。パルス電界印加後の直流電界印加においては、複数の電極に同時に印加する方法が効果的である。
したがって、好ましい一例としては、第一電極3と対向電極6の間に電圧を印加する第一の電界印加工程と、第二電極4と対向電極6の間に電圧を印加する第二の電界印加工程とにより電界を印加する。そして、第一の電界印加工程では、電界強度E1、パルス幅τ≦10msecのパルス電圧を印加し、第二の電界印加工程では、電界強度E2、パルス幅τ≧1secの直流電圧を印加し、E1>E2に設定する。
次に、(b)電極間隔について説明する。図13は、同一印加条件下における、第一電極3の先端5aと第二電極4の先端15aの間隔Lと、第一電極3の下に形成される分極反転領域の長さLrの関係を示した図である。同図から判るように、電極間隔Lが小さくなるに伴い長さLrは増大する。また、電極間隔Lが200μm付近から長さLrは飽和し始めるため、200μm以下が望ましい。一方、電極間隔Lが近づきすぎる(L≦50μm)と、放電の発生する率が高くなった。本実施の形態では、第一電極3と第二電極4の電極間隔Lを、L=200μmに設定して、良好な結果を得ることができた。
(c)電極方向と結晶軸については、実施の形態1において説明したとおりである。
次に、(d)電圧波形、および電荷量について説明する。電圧波形については、実施の形態1において説明した内容と同様である。電極に印加する電荷量についての検討結果は以下のとおりである。第一電極3下における分極反転領域を拡大するためには、第二電極4に過剰な電荷量を与えることが有効である。第二電極4において、自発分極をPs、分極反転面積をAとすると、適正電荷量Cは、C=2Ps×Aである。適正電荷量Cの100倍以上の電荷量を印加することで、第一電極3下の分極反転領域は拡大し、長さLrが大きく増大した。この時、第二電極4には過剰な電荷量が印加されているため、第二電極4の下では全面に渡り分極反転が形成されており、櫛形形状による周期的な分極反転は失われていた。
次に、(e)第二電極4の形状について説明する。第二電極4の形状としては、電極指15の基部から先端15aがY軸方向に延びる形状が有効である。但し、第二電極4は第一電極下の分極反転領域拡大のためのダミー電極として使用されるため、電界印加により第一電極3下の分極反転領域が拡大するものであれば、他の電極形状であってもよい。実際、第二電極4として、長方形の電極を使用した場合でも、第二電極4への電界印加により、第一電極3の反転領域は拡大した。
次に、(f)絶縁溶液の温度について説明する。電界印加時の絶縁破壊防止のため、絶縁溶液中での電界印加を行うことが望ましい。図14は、絶縁溶液の温度と分極反転領域の長さLrの関係を示した図である。80℃付近から分極反転領域の増大が確認され、100℃以上の温度で反転領域の長さLrが飽和していることがわかる。MgLN基板の温度が上昇することで、反転電界が減少し、分極反転が成長し易くなるためと考えられる。また、150℃以上では周期方向の分極反転成長が著しくなり、短周期(5μm以下)の均一な分極反転構造形成が困難となった。したがって、短周期分極反転の形成には、絶縁溶液の温度を150℃以下とすることが好ましい。この条件は、実施の形態1における方法についても同様に適用される。
以上に説明した条件を考慮した分極反転構造の形成方法により、1mm厚のZ板MgLN基板において、周期10μm以下の短周期分極反転構造が均一かつ、広い反転面積で得られた。本実施の形態の分極反転構造の形成方法においては、MgLNの基板厚みは1mm以上のものの場合に良好な結果が得られた。すなわち、分極反転領域の均一性、分極反転部の電極下の広がりLrが、基板厚み1mm以上の場合に良好であった。この理由は、厚い基板を用いることで、分極反転領域が基板を貫通することを防止できるからである。
図15は、基板厚みTと分極反転形成が可能となる分極反転周期Λの関係を示したものである。0.5mm厚基板では、7μm以下の周期状の分極反転は非常に困難である。厚板化することで、微細な分極反転形成が可能となる。これは後述するように、分極反転領域が基板を貫通すると、分極反転領域の不均一性が増大して、微細な分極反転構造の形成が難しくなることに起因する。基板の厚みを厚くすることで、分極反転領域の貫通を抑圧して、均一な分極反転領域の形成が可能になる。従来は、基板厚みを0.5mm以下に薄くすることで分極反転領域の形成を可能とし、さらに微細な反転構造の形成を可能にしてきた。基板を厚くすることで反転領域の均一化微細化を容易にするのは、MgドープLiTa(1-x)NbxO3(0≦x≦1)基板の場合に特に効果的である。
(実施の形態4)
実施の形態4における分極反転構造の形成方法について、図16Aおよび16Bを参照して説明する。本実施の形態における電極構造は、大略、実施の形態3の場合と同様である。相違点は、MgLN基板1の−Z面と対向電極6の間に絶縁膜18としてSiO2膜を挟むことである。また、電極間に低周波のパルス電圧を印加することで、+Z面に形成した電極下に広範囲の分極反転領域を形成する。
実施の形態3でも述べたように、MgLNは特有の整流特性を持っており、一部の分極が反転してMgLN基板1間を貫通すると、その部分に電流が流れ、この部分の分極は他の部分に比べて大きく成長する。その結果、MgLN基板1全体に所望の電圧が印加されずに反転領域の伸びが止まったり、反転が不均一になったりする。特に4μm以下の周期構造をもつ分極反転構造を形成する場合に不均一性が大幅に増大する。
MgLN基板1の上下面間の分極の貫通を防ぎ、短周期の分極反転領域の均一化、あるいは分極反転領域の拡大を得るために、本実施の形態では、−Z面と対向電極6の間に絶縁膜18としてSiO2膜を挟む。絶縁体を電極で挟み込む構造にすることで、電極の容量を増大させ、分極反転の均一性の増大および電極下に形成される分極反転領域の拡大が可能となる。絶縁体を電極で挟み込む構造については、特許文献5に記載されている。同文献には、厚さ0.3mmの基板に、周期5μmの分極反転領域を基板の表裏面において貫通させるために、印加時間を3秒と設定することが記載されている。
一方、1mm以上の厚さの基板に短周期の分極反転構造を形成するためには、基板間の分極の貫通を防ぐことが非常に重要になる。分極の貫通は、印加するパルス電圧のパルス幅依存性が大きい。したがって、印加するパルス波形について検討した。まず、パルス幅τが10〜100secのパルス波形を印加したが、電流値を低く設定しても周期状の分極反転は得られず、放電するか、あるいは全面で分極反転を生じる現象が見られた。これは、印加パルス幅が長いことによる影響であると考えられる。一方、従来と同様の1msecのパルス幅を持つパルス波形を印加したが、パルス回数、および電流を増大させても反転領域は拡大しなかった。
そこでパルス幅の最適化を行ったところ、図17に示すように、パルス幅τが1msec〜50msecの範囲で反転領域が拡大することがわかった。特に、10msec〜50msecでは反転領域の拡大が顕著に現れた。さらに分極反転幅Wがおよそ0.5Λ(Λは分極反転周期)でデューティ比が50%近くとなり、効率が最も高くなる。パルス幅が1sec以上では、分極反転が幅方向に過剰に成長し、W=Λとなって、分極反転領域の幅が周期より大きくなってしまい、周期構造が得られない。
また、2mm厚のMgLN基板を用いた場合の反転領域の拡大検討を行ったところ、同様にパルス幅による反転特性依存性を確認できた。すなわち、パルス幅が10msec〜2secの領域において、周期4μmの反転領域の拡大が確認された。
なお、本実施の形態では、絶縁膜として、SiO2膜以外にも、TiO2膜、Ta2O5膜、Nb2O5膜等を用いることができる。
(実施の形態5)
実施の形態5における分極反転構造の形成方法は、実施の形態4の電極構造において絶縁膜18として用いたSiO2膜に代えて、半導体膜としてSi膜を用いる。−Z面と対向電極6の間に半導体膜であるSi膜を挟み込んだ構造にすることで、電極の容量を増大させて、基板間の分極の貫通を防ぎ、分極反転の均一性の改善および電極下に形成される分極反転領域の拡大が可能となる。
本実施の形態に基づき半導体膜を用いた場合における、印加するパルス波形の検討を行った。まず、パルス幅τが10〜100secのパルス波形を印加したが、電流値を低く設定しても周期状の分極反転は得られず、放電するか、あるいは全面で分極反転する現象が見られた。これは、印加パルス幅が長いことによる影響である。一方、従来と同様の1msecのパルス幅を持つパルス波形を印加したが、パルス回数、および電流を増大させても反転領域は拡大しなかった。そこで、パルス幅の最適化を行ったところ、パルス幅が10msec〜1secの範囲で反転領域が拡大することがわかった。特に、20msec〜50msecでは反転領域の拡大が顕著に現れた。
また、2mm厚のMgLN基板を用いた場合の反転領域の拡大検討を行ったところ、同様にパルス幅による反転特性依存性が確認できた。すなわち、パルス幅が10msec〜2secの領域において、周期4μmの反転領域の拡大を確認した。
本実施の形態では、半導体膜として、Si膜以外に、ZnSe膜、GaP膜などを用いることができる。
(実施の形態6)
実施の形態6における光学素子は、上述の実施の形態における分極反転構造の形成方法を利用して作製することができる。本実施の形態の光学素子の一例である波長変換素子について、図18を参照して説明する。図18は、波長変換素子の斜視図である。Z板のMgLN基板20に、周期的な分極反転領域21が形成されている。波長λの基本波を、周期的な分極反転構造により波長変換して、波長λ/2の高調波に変換することができる。分極反転周期は、例えば4μmとすることができ、波長900nmの光を波長450nmの光に波長変換できる。基板20の厚みは例えば1mm、分極反転領域21の深さは0.8mm程度である。分極反転領域21は、基板結晶のY軸に沿って延びている。分極反転領域21はまた、基板20の+Z面から−Z面側に向かって形成されている。分極反転領域21の深さは、複数の分極反転領域21の大部分が基板20の厚みより浅くなるように形成されている。一部の分極反転領域21は、基板20を貫通して形成されているが、貫通している分極反転領域21の面積は、全体の分極反転領域面積の50%以下となっている。
分極反転領域21をX軸方向に10mmの長さに渡って形成し、レンズで900nmの光を入射したところ、変換効率5%/Wで波長変換され、450nmの高調波が得られた。均一な分極反転領域が形成され、高効率の波長変換が行われていることが判る。また、基板20厚みを1mm以上とすることで、基本波、高調波のビームウエストを大きくとれる。それにより、光のパワー密度を低減でき、高出力が得られる。0.5mm厚さの基板に分極反転領域を形成した場合に比べ、1mm厚の基板を利用した場合には出力を4倍に高めることが可能である。
また、分極反転領域21をY軸方向に形成することにより、均一で短周期の分極反転構造を形成することが可能である。周期2μm以下の分極反転構造の形成が可能であり、それにより波長400nm以下の紫外光発生が可能である。分極反転領域21をY軸方向に形成することで、短波長光の発生が可能となる。これに対して、分極反転領域21をX軸方向に形成した場合、短周期の分極反転構造の形成が困難であり、波長500nm以上の光しか得られなかった。
また、分極反転領域の深さを基板の厚みより浅く形成し、貫通する分極反転領域の面積を50%以下に抑えることで、均一な分極反転構造の形成が可能である。貫通した分極反転領域の割合が1%〜50%の範囲の場合に、均一な分極反転領域が得られた。分極反転領域が1%未満であると、分極反転構造の不安定性が増して、作製した反転領域が経時変化を起こす現象が観測された。分極反転領域が50%以上になると、短周期の分極反転構造の形成が困難になる。そのため、作製された波長変換素子により波長500nm以下の第二高調波を発生することが困難であった。以上のように貫通する分極反転領域の割合を制限することにより、分極反転周期3μm以下で均一な分極反転領域が得られ、波長400nm以下の紫外光発生が可能となる。
分極反転構造を利用した光学素子としては、上述の光波長変換素子以外に、例えば分極反転構造をプリズム形状やグレーティング形状に形成することで、偏光器を構成できる。その他、位相シフタ、光変調器、レンズ等に応用できる。また分極反転領域に電圧を印加することで、電気光学効果による屈折率変化を制御できるため、これを利用した光学素子として、スイッチ、偏光器、変調器、位相シフタ、ビーム整形等を構成できる。本実施の形態の方法は、微細な分極反転構造の形成を可能とするため、これらの光学素子の高性能化を可能にする。
図19A、19Bに、プリズム形状の分極反転を利用した光偏向器を示す。強誘電体基板22に、周期的なプリズム形状の分極反転領域23が形成されている。分極反転領域23の上下に電極24、25が形成されている。電極24、25に電界を印加することで、屈折率変化を生じさせ、ビーム26の方向を制御(例えば角度θ)する事が可能である。電界印加により屈折率が変化する電気光学効果は分極方向に依存するため、図のように電界を印加すると、分極反転領域23と非反転領域で屈折率変化の符号が逆転し、プリズム部での光の屈折方向を制御することが可能である。
なお、以上の実施の形態の説明では、強誘電体基板としてMgOドープLiNbO3基板を用いた場合を例としたが、その他に、MgOドープLiTaO3基板、NdドープLiNbO3基板、KTP基板、KNbO3基板、NdとMgOとをドープしたLiNbO3基板、あるいはNdとMgOとをドープしたLiTaO3基板、ストイキオ組成の同様の基板などの場合であっても同様に、本実施の形態を適用できる。このうち、Ndをドープした結晶からなる基板はレーザ発振が可能であるので、レーザ発振による基本波の発生とその波長変換による第2高調波の発生とを同時に行うことができる。そのため、高効率で安定した動作特性を有する短波長光源を構成できる。