JP3987398B2 - タイヤとホイールリムの組み付け方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、タイヤとホイールリムの組立体における重量アンバランスを修正するバランスウェイトの重量を軽減しうるタイヤとホイールリムの組み付け方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
タイヤとホイールリムの組立体に重量アンバランスがあると、車両振動の原因となる。そのため、従来、かかる重量アンバランスを低減するため、タイヤをホイールリムに組み付ける際、ホイールリムの重点と見なされるバルブ位置の位相と、タイヤの軽点の位相とを位置合わせして組み付けることが、一般に行われている。これによって、重量アンバランスの一部を打ち消すことができ、最終的に、タイヤとホイールリムの組立体の重量アンバランスを修正するバランスウェイトの重量を低減している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、このようなバランスウェイトは、通常リム先端等に取付けられるなど外観性を低下させるともに、コストの上昇を招くため、その重量のさらなる低減が望まれている。
【0004】
このような状況に鑑み、本発明者が研究した結果、ホイールリムの偏心であるRRO(ラジアルランナウト)を考慮して組み付けることにより、重量アンバランスの打ち消し効果を高めることができ、バランスウェイトの重量をより低減しうることを見出し得た。
【0005】
即ち、ホイールリム1には、一般に、平均0.4mm程度のRROがあり、図5(A)に概念的に示すように、その回転中心iとリムシート1a外周の中心jとの間に芯ズレδを生じている。これに対して、タイヤ10は、リムシート1aと略同心に装着されるため、前記回転中心i廻りには、タイヤ重量Ttとズレδとの積Tt×δに相当するモーメントが作用し、さらなる重量アンバランスを発生させている。
【0006】
従って、図5(B)に概念的に示すように、ホイールリム自体の重量アンバランスのベクトルWub→と、前記RROに基づく重量アンバランスのベクトルW1→とをベクトル和して、補正アンバランスのベクトルWc→を求めるとともに、その位相と前記タイヤの軽点の位相とを位置合わせして組み付けることにより、重量アンバランスの打ち消し効果をより高めることができ、前記バランスウェイトの重量をさらに低減しうることを究明し得た。
【0007】
本発明は、ホイールリムの重量アンバランスを、ホイールリムの実質的な偏心であるRRO一次成分で補正することにより新規な補正アンバランスを求め、この補正アンバランスの位相と、タイヤの軽点の位相とを位置合わせしてタイヤとホイールリムとを組み付けることを基本として、重量アンバランスの打ち消し効果を最大限に高めることができ、前記バランスウェイトの重量をさらに低減しうるタイヤとホイールリムの組み付け方法の提供を目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、本願請求項1の発明は、ホイールリムのRRO一次成分におけるRRO値Wr1(単位mm)とそのピーク位置の位相θr1(単位°)、前記ホイールリムの重量アンバランスにおける重点のアンバランス量Wub(単位g)とその位相θub(単位°)、重量アンバランス修正用のバランスウェイト取付け位置のホイールリム軸中心からの半径方向距離L(単位mm)、タイヤの重量Tt(単位g)、及びタイヤの重量アンバランスにおける軽点の位相αtを求めるとともに、
次式(1)で定まる補正アンバランスWcの位相θcと、タイヤの軽点の前記位相αtとを位置合わせしてタイヤとホイールリムとを組み付けることを特徴としている。
θc=Tan -1〔[ Wub×Sin θub+{(Wr1×Tt) /(2×L) }×Sin θr1] /[ Wub×Cos θub+{(Wr1×Tt) /(2×L) }×Cos θr1]〕−−−−−(1)
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の一形態を、図示例とともに説明する。図1は、本発明のタイヤとホイールリムの組み付け方法(以下組み付け方法という)を示すフローチャート、図2は前記組み付け方法を説明する線図である。
【0010】
図1、2において、組み付け方法は、
▲1▼ ホイールリム1のRRO一次成分におけるRRO値Wr1(単位mm)とそのピーク位置の位相θr1(単位°)、ホイールリム1の重量アンバランスにおける重点のアンバランス量Wub(単位g)とその位相θub(単位°)、重量アンバランス修正用のバランスウェイト取付け位置Jのホイールリム軸心iからの半径方向距離L(単位mm)、タイヤ10の重量Tt(単位g)、及びタイヤ10の重量アンバランスにおける軽点の位相αtを求めるステップS1と、
▲2▼ 前記ステップS1で求めた各値を用い、次式(1)から補正アンバランスWcの位相θcを求めるステップS2と、
▲3▼ 前記補正アンバランスWcの位相θcと、タイヤ10の軽点の前記位相αtとを位置合わせしてタイヤとホイールリムとを組み付けるステップS3と、を具える。
θc=Tan -1〔[ Wub×Sin θub+{(Wr1×Tt) /(2×L) }×Sin θr1] /[ Wub×Cos θub+{(Wr1×Tt) /(2×L) }×Cos θr1]〕−−−−−(1)
【0011】
前記ステップS1において、ホイールリム1のRRO一次成分は、図3、4に示すように、ホイールリム1の両側のリムシート1aのRROを測定し、そのRRO曲線Y1、Y2の平均曲線Yを次数解析することにより求まる。
【0012】
詳しくは、前記リムシート1aのRROは、例えば接触式変位計などの周知の測定器を用いて容易に測定することができる。又その測定結果からの各リムシート1aのRRO曲線Y1、Y2を互いに重ね合わせて平均化することにより平均曲線Yが得られるとともに、該平均曲線Yを次数解析して、図4の如く、RRO一次成分の波形(一次波形)を導く。そして、この一次波形におけるRRO値Wr1、及び一次波形の最大山部となるピーク位置Pの位相θr1を求めるのである。なお、前記RROの測定結果を数値解析して、前記RRO値Wr1及び位相θr1を直接的に算出してもよい。
【0013】
なお前記RRO値Wr1は、前記一次波形の振幅であって、ホイールリム1の芯ズレδ(偏心δ)は、実質的に、このRRO値Wr1の1/2に相当する。又前記位相θr1は、ホイールリム1の所定の基準位置O(0°)からの周方向の位相(角度)であり、基準位置Oとして例えばバルブ位置など適宜設定できる。
【0014】
また前記ホイールリム1の重量アンバランスは、例えばアンバランス計測器(所謂バランサ)等の周知の測定器を用いて測定でき、その重点のアンバランス量Wub、及びその位相θub(前記基準位置Oからの位相)を得ることができる。なお前記アンバランス量Wubは、ホイールリム軸心iから半径方向に距離Lを隔たる位置(バランスウェイト取付け位置)に取付けるバランスウェイトの重量に換算した値、言い換えると、軽点側かつ前記位置にバランスウェイトを取付けたときに前記アンバランス量Wubと釣り合いうるバランスウェイトの重量を意味する。通常は、リム先端を、前記バランスウェイト取付け位置としている。
【0015】
また前記タイヤ10の重量アンバランスも、ホイールリム1と同様、アンバランス計測器等で測定でき、その軽点の位相αt(前記基準位置Oからの位相)を得ることができる。
【0016】
次に、前記ホイールリム1の重量アンバランスを、ホイールリム1の実質的な偏心δであるRRO一次成分で補正してなる補正アンバランスWcについて説明する。
【0017】
タイヤ10は、前記図5(A)に示す如く、リムシート1aと略同心に装着される反面、該リムシート1aは、その中心jとホイールリム軸心i(回転中心)との間に、前記RRO値Wr1の1/2に相当する偏心δが生じている。従って、前記ホイールリム軸心i廻りには、タイヤ重量Ttとズレδとの積Tt×δに相当するモーメントが作用するなど、さらなる重量アンバランスを発生させる。
【0018】
そのため、前記図2、5(B)に示す如く、ホイールリム1自体の重量アンバランスのベクトルWub→と、前記RROに基づく重量アンバランスのベクトルW1→とをベクトル和して補正した、新たな補正アンバランスのベクトルWc→を使用することが必要となる。
(ベクトルWub→)+(ベクトルW1→)=(ベクトルWc→)
【0019】
ここで、ベクトルWc→をxy座標(x1、y1)で示すと、図2の如く、
x1=Wub×Cos θub + W1×Cos θr1、
y1=Wub×Sin θub + W1×Sin θr1、
となる。またW1を、バランスウェイトの重量に換算すると、Tt×δ/L、即ち( Wr1×Tt) /( 2×L)となる。
【0020】
従って、前記ベクトルWc→の位相θcは、次式(1)
θc=Tan -1(y1/x1)
=Tan -1〔[ Wub×Sin θub+{(Wr1×Tt) /(2×L) }×Sin θr1] /[ Wub×Cos θub+{(Wr1×Tt) /(2×L) }×Cos θr1]〕−−−−−(1)
で示されることとなる。
【0021】
そして、前記ステップS1で求めた各値を前記式(1)に代入して得た前記補正アンバランスWcの位相θcと、タイヤ10の軽点の前記位相αtとを位置合わせしてタイヤとホイールリムとを組み付けることにより、タイヤ10の重量アンバランスとの打ち消し効果を最大限に高めることができる。その結果、組み付け後に、タイヤとホイールリムの組立体のアンバランスを修正するために取付けるバランスウェイトの重量を低減させることができる。
【0022】
以上、本発明の特に好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述の実施形態に限定されることなく、種々の態様に変形して実施しうる。
【0023】
【実施例】
リムサイズが6JJ×15の2種類のホイールリム1A、1Bを用意し、各ホイールリム1A、1BのRRO一次成分におけるRRO値Wr1とそのピーク位置の位相θr1、ホイールリムの重量アンバランスにおける重点のアンバランス量Wubとその位相θub、重量アンバランス修正用のバランスウェイト貼付け位置のホイールリム軸心からの半径方向距離Lを測定した。測定結果を表1に示す。
【0024】
【表1】
Figure 0003987398
【0025】
又タイヤサイズが195/65R15、かつタイヤ重量Tt(9100g)の9本のタイヤを用意し、各タイヤの重量アンバランス量Wt及び軽点の位置を測定した。重量アンバランス量Wtは、(3g、10g、12g、19g、26g、30g、33g、40g、46g)であった。
【0026】
又前記式(1)を用いて、ホイールリム1A、1Bにおける、補正アンバランスWcの位相θcを求め、その結果を表1に示す。
【0027】
次に、ホイールリム1A、1Bと、9本のタイヤとを組み付けるとともに、組み付け後に、組立体のアンバランスを修正するために必要なバランスウェイトの重量を比較した。その結果を表2に示す。なお比較例においては、ホイールリムの重点の位相θubとタイヤの軽点の位相αtとを位置合わせして組み付け、又実施例においては、補正アンバランスの位相θcと、タイヤの軽点の位相αtとを位置合わせして組み付けている。
【0028】
【表2】
Figure 0003987398
【0029】
表2の如く、実施例は、重量アンバランスの打ち消し効果が高まり、バランスウェイト重量を低減しうることが確認できる。表2からタイヤの重量アンバランス量Wtとバランスウェイト重量の低減効果との関係を、図6(A)、(B)に示すように、本発明によるバランスウェイト重量の低減効果は、重量アンバランス量Wtが15〜45gの範囲でより有効に発揮されるのが確認できる。
【0030】
【発明の効果】
叙上の如く本発明は、ホイールリムの重量アンバランスを、ホイールリムの実質的な偏心であるRRO一次成分で補正することにより新規な補正アンバランスを求め、この補正アンバランスの位相と、タイヤの軽点の位相とを位置合わせしてタイヤとホイールリムとを組み付けているため、重量アンバランスの打ち消し効果を最大限に高めることができ、前記バランスウェイトの重量をさらに低減しうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のタイヤとホイールリムの組み付け方法を説明するフローチャ−トである。
【図2】前記組み付け方法を説明する線図である。
【図3】両側のリムシートのRRO曲線から求まる平均曲線を示す線図である。
【図4】前記平均曲線を次数解析して求めた一次成分の波形である。
【図5】(A)は、RROによる重量アンバランスへの影響を説明する線図、(B)は、ホイールリムの重量アンバランスの、RROによる補正を説明するベクトル図である。
【図6】表2におけるタイヤの重量アンバランス量とバランスウェイト重量の低減効果との関係を示す線図である。
【符号の説明】
1ホイールリム
10タイヤ

Claims (1)

  1. ホイールリムのRRO一次成分におけるRRO値Wr1(単位mm)とそのピーク位置の位相θr1(単位°)、前記ホイールリムの重量アンバランスにおける重点のアンバランス量Wub(単位g)とその位相θub(単位°)、重量アンバランス修正用のバランスウェイト取付け位置のホイールリム軸心からの半径方向距離L(単位mm)、タイヤの重量Tt(単位g)、及びタイヤの重量アンバランスにおける軽点の位相αtを求めるとともに、
    次式(1)で定まる補正アンバランスWcの位相θcと、タイヤの軽点の前記位相αtとを位置合わせしてタイヤとホイールリムとを組み付けることを特徴とするタイヤとホイールリムの組み付け方法。
    θc=Tan -1〔[ Wub×Sin θub+{(Wr1×Tt) /(2×L) }×Sin θr1] /[ Wub×Cos θub+{(Wr1×Tt) /(2×L) }×Cos θr1]〕−−−−−(1)
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