JP3987260B2 - 超電導高周波加速空胴およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、荷電粒子ビームの加速器に使用される超電導高周波加速空胴の製造方法と、それによって製造される空胴に関する。
【0002】
【従来の技術】
加速器は、電子、陽子、イオン等の荷電粒子を電磁力で数十億電子ボルト(数GeV)程度の高エネルギー状態に加速するための装置であり、もともとは原子核や素粒子の研究のために開発されてきた。
しかし、近年では、真空中をほぼ光速で伝搬する電子が偏向磁場によりその軌道が曲げられたときのその軌道の接線方向に発生する放射光(SOR光と呼ばれる)を利用して、超LSI微細加工(リソグラフィ)や物質研究等、生命科学等の広範な科学技術分野まで適用範囲を広げている。
【0003】
加速器には、荷電粒子の加速や、SOR光として失われたエネルギーを補給するため、そのビームラインに高周波加速空胴が設けられている。高周波加速空胴内に供給された高周波は、発振によって高電界を発生させ、荷電粒子ビームを加速する。この場合、高電界が発生すると高周波加速空胴の内表面に循環電流が流れるが、この電流は高周波電流であるため、高周波加速空胴の内面の材質に応じた表皮深さを流れ、ジュール損失を生じる。
【0004】
ところで、CuやAl等で作られた常電導高周波加速空胴で荷電粒子ビームの加速に必要な高電界を得るには、上述したジュール損失が極めて大きくなり、このジュール損失を補うために大きな高周波電力を供給できる大出力の高周波発振器が必要となる。しかし、そのような高周波電力を賄えるだけの高周波発振器は現存していない。さらに、高周波加速空胴の冷却上でも問題になり、常電導高周波加速空胴の適用には限界がある。
【0005】
そこで、高周波加速空胴の内面に電流が流れてもジュール損失が生じないように、電気抵抗がほぼ0Ωである超電導材によって高周波加速空胴を形成することが考えられる。超電導高周波加速空胴の使用分野は多方面に亘るが、特に、荷電粒子ビーム加速器に関しては、近年になって世界各地で計画、建設が進められている大型電子蓄積リング用として、限られた電力、限られた空間の範囲でできるだけ高いエネルギーを持った電子を得るために、超電導高周波加速空胴の実現が切望されている。
【0006】
従来、超電導高周波加速空胴は、例えば図4に示すような方法で製造されている。この方法においてはまず、図4(A)に示すように、下型21と上型22を用いて平板状の超電導材料23をプレス加工し、図4(B)に示すような大径開口部と小径底部を有する略半球形状にする。次いで、図4(C)に示すように、略半球形状となったその超電導材料23の大径部側と小径部側にそれぞれ開先加工を施して、図4(D)に示すようなハーフセル25を成形する。
【0007】
続いて、図4(E)に示すように2つのハーフセル25,25の開先加工された大径部同士を対向させ、図4(F)に示すように合わせた後、電子ビーム溶接により溶接し、図4(G)に示すようなシングルセル26を作る。なお、図中27は、ビード線を示している。さらに、図4(H)に示すように、数個のシングルセル26の開先加工された小径部同士を合わせて、電子ビーム溶接により連結し、図4(I)に示すようなマルチセル(多連空胴)28を作る。この後、マルチセル28の両端のセルにビームポートとなる直線状の小径円筒を接続することにより、超電導高周波加速空洞を完成する。
【0008】
以上の方法でマルチセルを作る場合には、空胴中に発生する電場分布を平坦とするために、ビームポートに接続する両端のセルのアイリス部(小径部)および赤道部(大径部)の直線部を短くする必要がある。プレス加工を行った場合、このような直線部の寸法調節は、図4(C)に示す開先加工の量で行うが、上記のようにプレス後に溶接によりセルを形成させる場合には、溶接縮みを適切に見積もって開先加工量を決定する必要がある。
【0009】
一方、超電導高周波加速空胴の別の製造方法としては、例えば、特開平5−266996号公報に示されるようなものがある。この公報の製造方法は、図5に示すような方法である。すなわち、図5(A)に示すように、下型31と上型32を用いて平板状の超電導材料33をプレス加工し、図4(B)に示すような半割マルチセル34を2つ一組で成形する。この後、図4(C)に示すように、2つの半割マルチセルを分割面で長手溶接により接合して、マルチセル35を製作する。
しかし、この方法でマルチセルを作ると、長尺な溶接部に溶接欠陥を生じやすいだけでなく、所望数のマルチセル総型の金型を作らねばならないため、金型費が莫大なものとなる。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、従来の超電導高周波加速空胴の製造方法においては、電子ビーム溶接が不可欠であるため、安定した品質および性能を確保することが難しく、また、製作に当たって多大な労力と時間を要するという問題点が存在している。この点について以下に説明する。
【0011】
まず、溶接部が長尺な場合だけでなく、溶接部が比較的短い場合であっても溶接欠陥を生じる可能性があり、そのような溶接欠陥により、超電導状態の破壊(クエンチ)が生じる可能性がある。さらに、溶接ビードの存在は、キャビティ性能を低下させる。
【0012】
また、溶接前には、ハーフセルやビームポートなどの部品を成形する必要があるが、溶接品質を向上するためには、それらの部品に高い成形精度が要求される。それらの部品に十分な成形精度が確保できない場合は、溶接時にその溶接部分が溶け落ちてしまう可能性もある。その上、溶接後には、キャビティ内面の研磨などが必要となる。このように、電子ビーム溶接には、多大な手間と時間が掛かり、キャビティ製作コストの面で好ましくない。
【0013】
このような電子ビーム溶接に伴う問題点を解消するために、バルジ加工によりシームレスキャビティを製作することが望まれている。しかしながら、シームレスキャビティをバルジ加工で成形する場合には、端部セルの直線部を含めて、全ての部品の金型を設計して製作する必要がある。また、マルチセルの場合には、所望数のマルチセル総型の金型を製作する必要がある。このような金型を製作するためには、多大な手間と時間が掛かり、キャビティ製作コストの面で好ましくない。
【0014】
本発明は、上述した従来技術の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、バルジ加工によりシームレスキャビティを製作するための金型を、安価かつ容易に製作可能とすることにより、製造コストの低減化に寄与できる、高品質・高性能で経済的な超電導高周波加速多連空胴の製造方法を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の目的を達成するため、バルジ加工によりシームレスキャビティを製作するための金型を、複数の金型要素に分割することにより、安価かつ容易に製作できるようにしたものである。
【0016】
請求項1に記載の発明は、荷電粒子ビームにエネルギーを与える超電導高周波加速空胴を、空胴の最大径部にて該ビーム軸に垂直なビーム軸垂直断面により分割された一対の分割金型を用いたバルジ加工により製造する方法において、前記一対の分割金型の各々が、該ビーム軸方向の異なる位置でビーム軸垂直断面によりさらに分割された複数の金型構成要素より構成され、前記複数の金型構成要素のうち、最小径部を有する金型構成要素および最大径部を有する金型構成要素の各成形面の形状が、いずれも、該ビーム軸方向に向かって等しい径を有する単純な円筒形状であることを特徴とするものである。この方法によれば、バルジ加工によってセルを形成するため、電子ビーム溶接を適用した場合に比べて、大幅に高品質・高性能の超電導高周波加速空洞が得られる。また、個々の分割金型を、さらに複数の金型構成要素に分割したことにより、各部に使用する金型構成要素をそれぞれ選択し、適宜組み合わせることにより、多様な分割金型を自由に形成可能である。したがって、比較的少ない種類の金型構成要素を用いて、多種類の分割金型を安価かつ容易に製作することができる。
【0017】
また、成形面のうち、曲率を持つ比較的複雑な形状部分と、最小径部および最大径部というビーム軸方向に向かって等しい径を有する単純な形状部分とを別の金型構成要素に分割することにより、複数種類の金型構成要素中における単純形状の金型構成要素の割合を高めながら、この単純形状の金型構成要素をできる限り単純な形状とすることができる。したがって、金型構成要素中のかなりの割合を占める単純形状の金型構成要素を安価かつ容易に製作することができるため、結果的に、分割金型の製作費を低減することができる。
【0018】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の超電導高周波加速空胴の製造方法において、該ビーム軸方向に複数個連なる多連空胴のバルジ加工を行う場合に、前記一対の分割金型の一方が、該ビーム軸方向の両側に成形面を有するとともに、該ビーム軸方向に分割面を有するように構成されることを特徴とするものである。この方法によれば、適宜選択した複数の金型構成要素を適宜組み合わせることにより、ビーム軸方向の両側に成形面を有する分割金型を容易に形成することができる。したがって、マルチセルを製作する場合でも、新たな金型を製作することなく、比較的少ない種類の金型構成要素を用いて、多種類の分割金型を安価かつ容易に製作することができる。
【0019】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の超電導高周波加速空胴の製造方法において、前記複数の金型構成要素のうち、最小径部を有する金型構成要素の成形面におけるその最小径部の表面粗さが、最大径部を有する金型構成要素の成形面におけるその最大径部の表面粗さよりも平滑であることを特徴とするものである。この方法によれば、分割金型の成形面における最小径部の表面粗さが平滑であるため、分割金型のこの最小径部に対して円筒材料を容易にスライドさせることができ、金型の加圧力および圧力媒体による内圧の低減を図ることができる。
【0020】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一つに記載の超電導高周波加速空胴の製造方法において、前記複数の金型構成要素が、前記分割金型の最小径から最大径に変化する曲率を持つ金型構成要素を含み、この金型構成要素の成形面における最小径側1/3以内の部分の表面粗さが、最大径を有する金属構成要素の金型内面の表面粗さよりも平滑であることを特徴とするものである。この方法によれば、分割金型の成形面における最小径側の部分の表面粗さが平滑であるため、分割金型のこの部分に対して円筒材料を容易にスライドさせることができ、金型の加圧力および圧力媒体による内圧の低減を図ることができる。
【0021】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一つに記載の超電導高周波加速空胴の製造方法において、前記複数の金型構成要素が、最小径部を有する金型構成要素および前記分割金型の最小径から最大径に変化する曲率を持つ金型構成要素を含み、最小径部を有する前記金型構成要素の成形面表面、および曲率を持つ前記金型構成要素の成形面における最小径側1/3以内の部分の表面が、該ビーム軸方向に向かって研磨されていることを特徴とするものである。この方法によれば、分割金型の成形面における最小径側の部分の表面が該ビーム軸方向に向かって研磨されているため、分割金型のこの研磨部分に対して円筒材料を容易にスライドさせることができ、金型の加圧力および圧力媒体による内圧の低減を図ることができる。
【0022】
請求項6に記載の発明は、荷電粒子ビームにエネルギーを与える超電導高周波加速空胴において、前記請求項1〜5の中から選択された方法によって製造されたことを特徴とするものである。この構成によれば、選択された製造方法に応じて、請求項1〜5について前述した作用効果と同様の作用効果を得ることができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下には、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0024】
(1)第1の実施の形態
図1は、本発明による超電導高周波加速空胴の製造方法を適用した第1の実施の形態を示しており、(A)〜(D)は、シングルセルを製作する場合の一連の工程を順次示している。
【0025】
ここで、図1(A)は、Nbなどの超電導材料またはCuなどの良熱伝導材料からなる所定形状の円筒1と、金型の構成要素である大径金型要素2、主要金型要素3、小径金型要素4を準備する工程を示している。そして、図1(B)は、上記金型要素2〜4を組み合わせてバルジ成形に用いる一対の金型(分割金型)5,5を組み立てる工程を示しており、図1(C)は、円筒1に、バルジ加工に用いる圧力媒体6とシール治具7を配置する工程を示している。また、図1(D)は、バルジ工程を示している。これらの工程の詳細は、次の通りである。
【0026】
まず、図1(A)の工程においては、Nbなどの超電導材料またはCuなどの良熱伝導材料からなる所定形状の円筒1を形成する。具体的には、引抜き加工、押出し加工などによって製造された単純な円筒形状の材料を用意し、この円筒材料の両端部に、スウェージング加工などにより、ビームポートとなる部位を形成する。ここでは、円筒1の両端の直線部をビームポート、セルの小径部をアイリス部、セルの大径部を赤道部と称する。
【0027】
一対の金型5,5を構成する金型要素のうち、主要金型要素3は、成形面となるその内面によりセルの曲面を形成するように、比較的複雑なビーム軸方向断面形状を有している。これに対して、大径金型要素2は、その内面によりセルの赤道部のみを形成するように、比較的単純なビーム軸方向断面形状を有しており、小径金型要素4は、その内面がビームポートのガイドとなるように、同じく比較的単純なビーム軸方向断面形状を有している。
【0028】
これらの金型要素2〜4を、図1(B)に示すように、成形面となるその内面の部位を除いた場所において、図示していないねじなどの締結要素により互いに組み立て、一対の半割金型5,5を形成する。この場合、一対の金型5,5が円筒1の大径中央部を挟むようにして、これらの金型5,5を円筒1の両端部に対向配置する。
【0029】
続いて、図1(C)に示すように、円筒1の内部に、水、油などの圧力媒体6を充填して、シール治具7により圧力媒体6が漏れないようにシールする。ここで、シール治具7としては、例えば、従来から用いられているOリングによるシール治具を用いることができるが、他にも、例えば、円筒内面とのメタルコンタクトによる方法などを適用することができる。
【0030】
この後、図1(D)に示すように、シールされた状態で、圧力媒体6による内圧を調節しながら対向配置された金型5,5を寄せることにより、バルジ加工を行い、アイリス部と赤道部を有するシングルセルを形成する。なお、図1(D)は、バルジ加工終了となった状態を示している。
【0031】
以上のような本実施の形態によれば、バルジ加工によってセルを形成しているため、電子ビーム溶接を適用した場合に比べて、大幅に高品質・高性能の超電導高周波加速空洞が得られる。また、個々の金型を、さらに複数の金型要素2〜4に分割したことにより、各部に使用する金型要素をそれぞれ選択し、適宜組み合わせることにより、多様な分割金型を自由に形成可能である。したがって、比較的少ない種類の金型要素を用いて、多種類の分割金型を安価かつ容易に製作することができるため、製造コストの低減化に大きく寄与できる。この点について以下に説明する。
【0032】
まず、通常の場合、キャビティの形状に関して言及すれば、セル部の曲率などの基本形状は周波数に応じて決定しており、アイリス部および赤道部の直線部の長さのみが異なるものである。そこで、上記のように、バルジ加工に用いる金型5,5を、複雑な断面形状の主要金型要素3と、単純な断面形状の大径金型要素2および小径金型要素4に分割することにより、アイリス部および赤道部の直線部のみが異なった形状のキャビティについては、アイリス部および赤道部の直線部寸法に応じた大径金型要素2および小径金型要素4を製作すればよい。これにより、金型費用の大幅な削減を図ることができる。
【0033】
(2)第2の実施の形態
図2は、本発明による超電導高周波加速空胴の製造方法を適用した第1の実施の形態を示しており、(A)〜(E)は、マルチセルを製作する場合の一連の工程を順次示している。なお、本実施の形態は、前述した第1の実施の形態を基本とし、それを変形した形態に相当するため、以下には、本実施の形態に固有の特徴部分のみを説明する。
【0034】
ここで、図2(A)は、Nbなどの超電導材料またはCuなどの良熱伝導材料からなる所定形状の円筒1と、ビームポート側の金型5の構成要素である大径金型要素2、主要金型要素3、小径金型要素4を準備する工程を示している。そして、図2(B)は、上記金型要素2〜4を組み合わせてバルジ成形に用いるビームポート側の金型8用の金型要素2〜4に加えて、アイリス部を形成するための金型9の構成要素である大径金型要素2、主要金型要素3、小径金型要素4を配置して、それらの金型8,9を組み立てる工程を示している。また、図2(C)は、円筒1に、バルジ加工に用いる圧力媒体6とシール治具7を配置する工程を示しており、図2(D)は、バルジ工程を示している。なお、図2(E)は、上記の(C)、(D)の工程を繰り返して成形された3セルのマルチセルを示している。これらの工程の詳細は、次の通りである。
【0035】
まず、図2(A)の工程においては、円筒材料の両端部に、スウェージング加工などにより、ビームポートとなる部位を形成するとともに、アイリス部となる部位を形成することにより、所定形状の円筒1を形成する。そして、ビームポート側の金型5の構成要素である大径金型要素2、主要金型要素3、小径金型要素4を準備する。この場合、本実施の形態においては、ビームポート側の金型8のうち、ビームポートと接触する小径金型要素4として、軸方向長さが長いものを用いている。
【0036】
次に、図2(B)に示すように、上記のビームポート側の金型8用の金型要素2〜4に加えて、アイリス部を形成する金型9の構成要素である大径金型要素2、主要金型要素3、小径金型要素4を配置し、それらの金型8,9を組み立てる工程を示したものである。この場合、アイリス部を形成する金型9は、ビーム軸方向の両側に成形面を有するものであり、一対の主要金型要素4を、その大径部同士を対向させるように配置することにより得られる。アイリス部に直線部を設ける場合には、図2(B)に示すように、対向配置された主要金型要素3の間に、所望の寸法の小径金型要素4を配置する。また、赤道部に直線部を設ける場合には、所望の寸法の大径金型要素2を配置する。
【0037】
続いて、図2(C)に示すように、円筒1の内部に、水、油などの圧力媒体6を充填して、シール治具7により圧力媒体6が漏れないようにシールする。
この後、図2(D)に示すように、シールされた状態で、圧力媒体6による内圧を調節しながらビームポート側の金型8とアイリス部を形成する金型9を寄せることにより、バルジ加工を行い、アイリス部と赤道部を有するセルを形成する。ここで、マルチセルの場合、アイリス部を形成する金型9は、ビーム軸方向に移動させて取り外すことができないので、径方向に移動させて取り外すために、ビーム軸方向にも分割面を有している。
【0038】
以上のような(C)、(D)の工程を繰り返すことにより、図2(E)に示すようなマルチセルを形成することができる。ここで、図(E)は、(C)、(D)の工程を繰り返し、所望の平行部長さを有する大径金型要素2、小径金型要素4を用いて成形した3セルのマルチセルを示している。
【0039】
以上のような本実施の形態によれば、前述した第1の実施の形態と同様の作用効果に加えて、さらに、次のような作用効果が得られる。まず、所望のマルチセル形状に応じて選択した複数の寸法形状の金型要素2〜4を適宜組み合わせ、特に、一対の主要金型要素3を対向配置することにより、ビーム軸方向の両側に成形面を有するアイリス部用の金型9を容易に形成することができる。そのため、マルチセルを製作する場合でも、新たな金型を製作することなく、比較的少ない種類の金型要素を用いて、多種類の金型を安価かつ容易に製作することができる。したがって、金型費の大幅な削減を図ることができ、製造コストの低減化に大きく寄与できる。
【0040】
また、ビームポート側の金型8に、軸方向長さが長い小型金型要素4を用いているため、スウェージングなどで形成されたビームポートの内径寸法精度を、圧力媒体の内圧によって向上することができる。したがって、より高品質・高性能の超電導高周波加速空洞を実現できる。
【0041】
(3)第3の実施の形態
図3は、本発明による超電導高周波加速空胴の製造方法を適用した第3の実施の形態を示している。ここで、図3(A)は、一対の金型10,10を組み立てた状態を示しており、図3(B)は、一対の金型10,10を各構成要素に分割した状態を示している。なお、本実施の形態は、前述した第1の実施の形態を基本とし、それを変形した形態に相当するため、以下には、本実施の形態に固有の特徴部分のみを説明する。
【0042】
本実施の形態においては、まず、金型10の最小径部を有する構成要素である小径金型要素4および最大径部を有する構成要素である大径金型要素2の内面形状が、ビーム軸方向に向かって等しい径を有する単純な円筒形状とされている。また、成形面における最小径部となる小径金型要素4の内面の表面粗さは、最大径部を有する大径金型要素2の内面の表面粗さよりも平滑に仕上げられている。そして、金型10の最小径から最大径に変化する曲率を持つ主要金型要素3の最小径側1/3以内の部分における内面の表面粗さについても、最大径部を有する大径金型要素2の内面の表面粗さよりも平滑に仕上げられている。さらに、小径金型要素4の内面および主要金型要素3の最小径側1/3以内の部分における内面は、ビーム軸方向に向かって研磨されている。
【0043】
以上のような本実施の形態によれば、前述した第1の実施の形態と同様の作用効果に加えて、さらに、次のような作用効果が得られる。まず、金型10の最小径部を有する構成要素である小径金型要素4および最大径部を有する構成要素である大径金型要素2の内面形状が、ビーム軸方向に向かって等しい径を有する単純な円筒形状であるため、金型の製作費を低くすることができる。これは、金型における内面断面形状の複雑な部分と単純な部分を分割し、各構成要素として独立させたことにより、達成される。この点について以下に説明する。
【0044】
すなわち、本実施の形態においては、金型10の成形面のうち、曲率を持つ比較的複雑な形状部分と、最小径部および最大径部というビーム軸方向に向かって等しい径を有する単純な形状部分とを、主要金属要素3と、大径および小径の金型要素2,4という別の金型要素に分割することにより、複数種類の金型要素2〜4中における単純形状の金型要素2,4の割合を高めながら、この単純形状の金型要素2,4をできる限り単純な形状とすることができる。したがって、金型要素中のかなりの割合を占める単純形状の金型要素を安価かつ容易に製作することができるため、結果的に、金型の製作費を低減することができる。
【0045】
また、小径金型要素4の内面、および、金型10の最小径から最大径に変化する曲率を持つ主要金型要素3の最小径側1/3以内の内面については、その表面粗さが、いずれも、大径金型要素2の内面の表面粗さより平滑である上、ビーム軸方向に向かって研磨されているため、バルジ加工を行う際に、金型10に対して円筒1を容易にスライドさせることができ、金型10の加圧力および圧力媒体6による内圧の低減を図ることができる。
【0046】
(4)他の実施の形態
なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、他にも、多種多様な変形例が実施可能であり、それらはいずれも本発明に包含される。
【0047】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、バルジ加工によりシームレスキャビティを製作するための金型を、安価かつ容易に製作可能であるため、製造コストの低減化に寄与できる、高品質・高性能で経済的な超電導高周波加速多連空胴の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による超電導高周波加速空胴を適用した第1の実施の形態を示す説明図であり、(A)〜(D)は、シングルセルを製作する場合の一連の工程を順次示している。
【図2】本発明による超電導高周波加速空胴を適用した第2の実施の形態を示す説明図であり、(A)〜(E)は、マルチセルを製作する場合の一連の工程を順次示している。
【図3】本発明による超電導高周波加速空胴を適用した第3の実施の形態を示す説明図であり、(A)は、一対の金型10,10を組み立てた状態を示しており、(B)は、一対の金型10,10を各構成要素に分割した状態を示している。
【図4】従来の超電導高周波加速空胴の製造方法の一例を示す説明図である。
【図5】従来の超電導高周波加速空胴の製造方法の別の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
1…円筒
2…大径金型要素
3…主要金型要素
4…小径金型要素
5,8〜10…金型
6…圧力媒体
7…シール治具
Claims (6)
- 荷電粒子ビームにエネルギーを与える超電導高周波加速空胴を、空胴の最大径部にて該ビーム軸に垂直なビーム軸垂直断面により分割された一対の分割金型を用いたバルジ加工により製造する方法において、
前記一対の分割金型の各々が、該ビーム軸方向の異なる位置でビーム軸垂直断面によりさらに分割された複数の金型構成要素より構成され、
前記複数の金型構成要素のうち、最小径部を有する金型構成要素および最大径部を有する金型構成要素の各成形面の形状が、いずれも、該ビーム軸方向に向かって等しい径を有する単純な円筒形状であることを特徴とする超電導高周波加速空胴の製造方法。 - 該ビーム軸方向に複数個連なる多連空胴のバルジ加工を行う場合に、
前記一対の分割金型の一方が、該ビーム軸方向の両側に成形面を有するとともに、該ビーム軸方向に分割面を有するように構成されることを特徴とする請求項1記載の超電導高周波加速空胴の製造方法。 - 前記複数の金型構成要素のうち、最小径部を有する金型構成要素の成形面におけるその最小径部の表面粗さが、最大径部を有する金型構成要素の成形面におけるその最大径部の表面粗さよりも平滑であることを特徴とする請求項1または2に記載の超電導高周波加速空胴の製造方法。
- 前記複数の金型構成要素が、前記分割金型の最小径から最大径に変化する曲率を持つ金型構成要素を含み、この金型構成要素の成形面における最小径側1/3以内の部分の表面粗さが、最大径を有する金属構成要素の金型内面の表面粗さよりも平滑であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の超電導高周波加速空胴の製造方法。
- 前記複数の金型構成要素が、最小径部を有する金型構成要素および前記分割金型の最小径から最大径に変化する曲率を持つ金型構成要素を含み、最小径部を有する前記金型構成要素の成形面表面、および曲率を持つ前記金型構成要素の成形面における最小径側1/3以内の部分の表面が、該ビーム軸方向に向かって研磨されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の超電導高周波加速空胴の製造方法。
- 荷電粒子ビームにエネルギーを与える超電導高周波加速空胴において、前記請求項1〜5の中から選択された方法によって製造されたことを特徴とする超電導高周波加速空胴。
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JP2000005811A JP3987260B2 (ja) | 2000-01-06 | 2000-01-06 | 超電導高周波加速空胴およびその製造方法 |
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