JP3987194B2 - X線管 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、X線焦点形状の歪みを少なくし、焦点画質を向上させたX線管に関する。
【0002】
【従来の技術】
X線管は、陰極のフィラメントが発生する熱電子を陽極のターゲット面に照射し、ターゲット面からX線を発生させる電子管で、被写体のX線撮影などに利用されている。
【0003】
X線を利用して被写体を撮影する場合、X線を照射しながら被写体像を観察する透視撮影、あるいは、被写体像をフィルムなどに印画する通常撮影がある。透視撮影は少ないX線量で行われ、通常撮影は多いX線量で行われる。
【0004】
このように被写体の撮影にあたって、X線量の切り替えが必要な場合、通常、複数の焦点をもつX線管が使用される。例えば、大焦点と小焦点などのように大きさの異なる複数種類の焦点を形成できるようにし、透視撮影には小焦点を利用し、通常撮影には大焦点を利用する方法である。
【0005】
ここで、従来のX線管について、大小の2つのX線焦点をもつ場合を例にとり図7を参照して説明する。符号70は熱電子を放出する陰極構体で、この陰極構体70に対向して円盤状の回転陽極72が配置されている。回転陽極72は図の上面および下面が平坦で、ターゲット側面が傾斜している。
【0006】
陰極構体70を構成する収束電極71部分に矩形状収束溝74a、74bが設けられ、その収束溝74a、74bの内側に熱電子を放出する2つのカソード、例えばコイル状直熱型フィラメント73a、73bが設けられている。一方のフィラメント73aは例えば大焦点用で、他方のフィラメント73bは小焦点用である。収束溝74a、74bは、フィラメント73a、73bから放出された電子を陽極ターゲット面上に収束し、規定された大きさの焦点に絞り込むための静電界を形成する。
【0007】
2つの焦点をもつX線管は、大焦点を使用する場合と、小焦点を使用する場合とで、被写体の撮影位置がずれがないようにする必要がある。このため、2つのフィラメント73a、73bから放出された電子の焦点が陽極72のターゲット面上で重なるようにしている。
【0008】
そのため、収束電極71の中央部分を凹ませて谷底部分Mを形成している。そして、谷底部分Mを挟んでその両側に位置するV字状の傾斜面71a、71bにそれぞれ収束溝74a、74bを形成し、収束溝74a、74bの開口端部がそれぞれ内側を向くようにしている。このとき、収束溝74aの開口端部は、谷底部分Mと焦点位置を結ぶ線、すなわち中心線Cに対する垂直面Hに対しαの角度で傾き、また同様に、収束溝74bの開口端部はβの角度で傾いている。なお、収束溝74aの傾斜面に沿った開口端部の幅をLw 、収束溝74bの傾斜面に沿った開口端部の幅をSw で示している。
【0009】
次に、フィラメント73a、73bや収束溝74a、74bを陽極72側から見た構造について図7の(c)で説明する。なお、この図は、図(a)の傾斜面をそれに垂直な方向7c−7cから見た展開図である。収束電極71全体の外形はほぼ円柱状をしている。2つのフィラメント73a、73bは互いに平行で、1つの方向に長く配置されている。このため、収束溝74a、74bはフィラメント73a、73bの配置に合わせて、1つの方向に長くほぼ矩形状になっている。
【0010】
上記した構成において、フィラメント73a、73bから熱電子が放出されると、熱電子は収束され、図7(a)に示すように軌道76a、76bを描いて陽極72のターゲット面に焦点77a、77bを形成する。この場合、熱電子の焦点は図7(b)のような形状になる。符号77aが大焦点、符号77bが小焦点で、フィラメント73a、73bが配置された長手方向に弓なりの歪みが発生している。このように焦点が歪むと、その実効寸法はA1、A2で示すように大きくなる。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従来のX線管は、陽極のターゲット面に形成される焦点の形状が歪み、これによって焦点寸法が大きくなり撮影画質を低下させる。焦点形状の歪みは、円盤状陽極と対向する収束電極の面がV字状の傾斜面になっていること、そして、収束電極の外形が円状であるのに対し、収束溝が矩形状でかつ収束溝の位置にずれがあることなどの理由で、電子ビームに対する収束電界が歪み、熱電子の走行軌跡の均一性が失われることなどが原因と考えられる。
【0012】
例えば、焦点寸法の大きさの違いから、それぞれの収束溝の長手方向の長さが相違することが影響していると考えられる。
【0013】
この発明は、上記した欠点を解決するもので、歪みの少ないX線焦点をもつX線管を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この発明は、電子ビームを放出する陰極構体と、前記電子ビームの衝突によってX線を発生するターゲット面を有する陽極とを具備し、前記陰極構体は、前記陽極と対向する面に形成され所定方向に延びる最も凹んだ谷底部分およびこの谷底部分から横方向に広がる少なくとも1つの傾斜面部分を有する収束電極、前記少なくとも1つの傾斜面部分および前記谷底部分のうちの少なくとも2つの部分に、前記谷底部分の延在方向に長く形成され、かつそれぞれの長い壁どうしが平行に隣り合うように形成され、長く形成された前記谷底部分の延在方向における長さが異なる複数の収束溝、および、この複数の収束溝内に互いに平行に配置された電子放出用フィラメントを有するX線管において、前記谷底部分の延在方向における長さが他よりも短い少なくとも1つの収束溝の前記他と端部がずれている側の外側に、前記谷底部分の延在方向に補助溝を隣接して設けたことを特徴としている。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の実施形態について図1の概略の構造図を参照して説明する。符号11はX線管装置を構成する筐体で、筐体11内にX線管12が配置されている。X線管12は、真空外囲器13およびこの真空外囲器13内に設けられた陰極構体14、回転陽極15などから構成されている。真空外囲器13の外側には、回転陽極15を回転させるためのステータ16が設けられている。また、筐体11の内部には絶縁油17が満たされている。なお、線分m−mはX線管12の管軸を示している。
【0016】
ここで、X線管12を構成する陰極構体14や回転陽極15の各部分の構造について、大小の2つの焦点ともつ場合を例にとり図2を参照して説明する。
【0017】
陰極構体14と回転陽極15が対向して配置されている。回転陽極15のターゲット面15aは傾斜している。
【0018】
陰極構体14の主要部である収束電極18はほぼ円柱状の金属で、回転陽極15に対向する面がV字状に削られ2つの傾斜面18a、18bが形成されている。その両側にわずかな平坦面18cが形成されている。そして、各傾斜面18a、18bには、大小2つの矩形状の収束溝22a、22bが形成され、これら収束溝22a、22b内に大小2つのコイル状直熱型フィラメント21a、21bが配置されている。一方のフィラメント21aは例えば大焦点用、他方のフィラメント21bは小焦点用となっている。なお、収束溝22a、22bは、フィラメント21a、21bから放出された電子を規定寸法の焦点に絞り込むための静電界を形成する。
【0019】
2つの焦点をもつX線管は、大焦点を使用する場合と、小焦点を使用する場合とで、被写体の撮影位置がずれないようにする必要がある。このため、フィラメント21a、21bから放出された電子の焦点が、回転陽極15のターゲット面15aの中心線C上で重なるようにしている。
【0020】
収束電極18の最も凹んだ部分を谷底部分Mとする。この谷底部分Mの両側が傾斜面18a、18bになっている。そして、それぞれの収束溝22a、22bの開口端部が互いに内側を向くようにしている。収束電極18の一方の傾斜面18aは、平坦な面18cすなわち中心線Cに垂直な面に対し角度αで傾斜している。他方の傾斜面18bは角度βで傾斜している。また、大焦点用の収束溝22aの開口部の傾斜面に沿った溝幅をLw 、また、小焦点用の収束溝22bの幅をSw で示す。
【0021】
次に、フィラメント21a、21bや収束溝22a、22bなどの部分を、各傾斜面に垂直な方向から見た構造について図3で説明する。図3は、図2における収束溝22a、22bやフィラメント21a、21bの各部分を傾斜面に対し垂直方向3−3から見た状態を示しており、収束溝22bの外側に矩形状の補助溝31が設けられている。また、回転陽極15のターゲット面15aとの相対的な位置関係を示すために、回転陽極15の対応位置を一点鎖線で示し、その回転中心軸、すなわちX線管12の管軸を符号mで示している。
【0022】
陰極構体14は全体の外形がほぼ円柱状をしている。収束溝22a、22b、およびフィラメント21a、21bは互いに平行で、一方向、すなわち谷底部分Mの延在方向に沿って長く形成され、配置されている。収束溝22a、22bはそれぞれの長い壁どうしが平行に、また、隣り合うように配置されている。
【0023】
ここで、図3の陰極構体14部分を拡大して示した図4を参照して、フィラメント21a、21b、収束溝22a、22b、補助溝31の構造について説明する。この場合、谷底部分Mの延在方向における長さは、大焦点用のフィラメント21aを配置した収束溝22aの方が、小焦点用のフィラメント21bを配置した収束溝22bよりも長くなっている。そして、収束溝22aと収束溝22bの端部が大きくずれている側で、長さが短い小焦点用の収束溝22bの外側、すなわち、谷底部分Mの延長方向に補助溝31が隣接して設けられている。
【0024】
補助溝31は矩形状で、その幅Wは小焦点用収束溝22bの幅Swとほぼ同じになっている。また、補助溝31の長さS1、すなわち、谷底部分Mの延在方向における長さは、小焦点用収束溝22bの長さSとの和が、大焦点用収束溝22aの長さLとほぼ等しくなっている。
【0025】
なお、収束溝22bと補助溝31との間の隔壁31aの厚さtは、1mm以下、好ましくは0.5mm以下に、変形しない機械的強度を保ち得る範囲でできるだけ薄くする。したがって、長さの和(S+S1)に対して、この厚さtは実質的に無視できる程度である。
【0026】
上記した構成において、フィラメント21a、21bから熱電子が放出されると、図2(a)で示すように熱電子は収束され、軌道23a、23bを描き陽極15のターゲット面15a上に焦点24a、24bを形成する。このとき、ターゲット面15a上に形成される焦点は、図2(b)に示すような形状となり、大焦点24aや、小焦点24bにほとんど歪みが発生しない。したがって、焦点の実効寸法はa1、a2となり、歪みがある場合に比べ小さくなる。
【0027】
これは、長さが短い小焦点用の収束溝22bの外側に補助溝31を設けたことにより、各収束溝22a、22bの近傍部分におけるその長手方向における電界が均一化したことによるものと考えられる。
【0028】
上記した実施形態では、補助溝31の幅Wを小焦点用収束溝22bの幅Swとほぼ同じにしている。しかし、収束電極18の構造や収束溝22a、22bの配置などの条件によって、小焦点用収束溝22bの幅Swよりも狭くすることもできる。しかし、収束溝22bの幅Swの2分の1以上は必要とされる。
【0029】
また、小焦点用収束溝22bの長さSと補助溝31の長さS1との和を大焦点用収束溝22aの長さLとほぼ等しくしている。しかし、この場合も、収束電極の構造や収束溝の配置などの条件によって、小焦点用収束溝22bの長さSと補助溝31の長さS1との和を大焦点用収束溝22aの長さLよりも長くし、あるいは短くしてもよい。
【0030】
次に、この発明の他の実施形態について図5を参照して説明する。図5は、図3および図4に対応する部分には同一の符号を付し、重複する説明は一部省略する。
【0031】
この実施形態の場合、長さが長い大焦点用収束溝22aおよび長さが短い小焦点用収束溝22bそれぞれの両方の外側に矩形状の補助溝51〜54を設けている。大焦点用収束溝22aの外側に設けた補助溝51、52の幅は大焦点用収束溝22aの幅Lwと等しくし、小焦点用収束溝22bの外側に設けた補助溝53、54の幅は小焦点用収束溝22bの幅Swと等しくしている。また、長さが短い小焦点用収束溝22bの外側で、収束溝22aと収束溝22bの端部が大きくずれている側に位置する補助溝53の長さを一番長くし、その他の補助溝51、52、54はほぼ同じ長さにしている。そして、一方の傾斜面18aに設けられた収束溝22aと補助溝51、52との長さの和を、他方の傾斜面18bに設けられた収束溝22bと補助溝53、54との長さの和とほぼ同じにしている。
【0032】
この場合も、収束電極18や収束溝22a、22bの構造などの条件によって、補助溝の長さや幅、配置などを適宜調整できる。
【0033】
次に、この発明のもう1つの他の実施形態について図6を参照して説明する。図6では、図3ないし図5に対応する部分には同一の符号を付し、重複する説明は一部省略する。
【0034】
この実施形態は、3個の電子銃を設け、3個のX線焦点を形成する場合である。収束電極18中央の谷底部分Mを所定幅の平坦面18dに形成し、その両側に傾斜面18a、18bが形成されている。そして、谷底部分Mの平坦面18dに最微小焦点用の収束溝22dおよびフィラメント21dが設けられ、2つの傾斜面18a、18bにそれぞれ、収束溝22a、22bおよびフィラメント21a、21bが設けられている。
【0035】
このとき、谷底部分Mの平坦面18dに設けられた最微小焦点用収束溝22dが一番短くなっており、その一番短い収束溝22dの外側に補助溝61が設けられている。補助溝61を設けることによって、傾斜面18a、18bや平坦面18dの各部分に設けられた溝部分の長さなどが近似する。この結果、収束溝22a、22b、22dの近傍部分におけるその長手方向の電界が均一化し焦点の歪みが小さくなる。この場合も、収束電極や収束溝の構造などの条件によって、補助溝61の長さや配置などを適宜調整できる。
【0036】
上記した構成によれば、陰極のフィラメントが配置された長手方向の全域にわたり、収束溝近傍の電界分布が均一になり、歪みの少ないX線焦点をもつX線管を実現できる。
【0037】
なお、上記した実施形態では回転陽極形X線管の例で説明している。しかし、この発明は固定陽極形のX線管にも適用できる。また、電子放出用カソードとしては、コイル状の直熱型フィラメントが陽極電流制御の迅速性などから好適であるが、傍熱型カソードを用いることもできる。
【0038】
【発明の効果】
この発明によれば、X線焦点形状の歪みが少ないX線管を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施形態を説明するための概略の構造図である。
【図2】この発明の実施形態を説明するための概略の構造図で、陰極部分と陽極部分の構造および機能を説明するための図である。
【図3】この発明の他の実施形態を説明するための概略の構造図で、陰極部分の構造を説明するための図である。
【図4】この発明の他の実施形態を説明するための概略の構造図で、陰極部分を拡大して示した図である。
【図5】この発明の他の実施形態を説明するための概略の構造図で、陰極部分の構造を説明するための図である。
【図6】この発明の他の実施形態を説明するための概略の構造図で、陰極部分の構造を説明するための図である。
【図7】従来例を説明するための図である。
【符号の説明】
11…X線管装置を構成する筐体
12…X線管
13…真空外囲器
14…陰極構体
15…回転陽極
16…ステータ
17…絶縁油
18…収束電極
21a、21b…フィラメント
22a、22b…収束溝
23a、23b…電子の軌道
24a、24b…X線焦点
31、61…補助溝
M…谷底部分
m…X線管の管軸
L、S…収束溝の長さ
S1…補助溝の長さ
Claims (4)
- 電子ビームを放出する陰極構体と、前記電子ビームの衝突によってX線を発生するターゲット面を有する陽極とを具備し、前記陰極構体は、前記陽極と対向する面に形成され所定方向に延びる最も凹んだ谷底部分およびこの谷底部分から横方向に広がる少なくとも1つの傾斜面部分を有する収束電極、前記少なくとも1つの傾斜面部分および前記谷底部分のうちの少なくとも2つの部分に、前記谷底部分の延在方向に長く形成され、かつそれぞれの長い壁どうしが平行に隣り合うように形成され、長く形成された前記谷底部分の延在方向における長さが異なる複数の収束溝、および、この複数の収束溝内に互いに平行に配置された電子放出用フィラメントを有するX線管において、前記谷底部分の延在方向における長さが他よりも短い少なくとも1つの収束溝の前記他と端部がずれている側の外側に、前記谷底部分の延在方向に補助溝を隣接して設けたことを特徴とするX線管。
- 上記補助溝の谷底部分の延在方向における長さは、前記補助溝が隣接して設けられた収束溝の谷底部分の延在方向における長さとの和が、前記補助溝が隣接して設けられた前記収束溝よりも谷底部分の延在方向における長さが長い他の収束溝の延在方向における長さよりも長い請求項1記載のX線管。
- 少なくとも1つの傾斜面部分および谷底部分のうちの少なくとも2つの部分に形成された全ての収束溝に、それぞれ補助溝を設けた請求項1記載のX線管。
- 谷底部分が、延在方向における長さと延在方向に対し垂直方向における幅とをもつ平坦面である請求項1乃至請求項3のいずれか1つに記載のX線管。
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JP07727398A JP3987194B2 (ja) | 1998-03-25 | 1998-03-25 | X線管 |
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