JP3986890B2 - デジタル通信受信機における受信信号のデジタル復調装置および方法 - Google Patents

デジタル通信受信機における受信信号のデジタル復調装置および方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、デジタル通信受信機における受信信号のデジタル復調装置であって、
シンボルごとにP個のサンプルのオーバーサンプリングファクタで受信信号をサンプリングする段と、
前記オーバーサンプリングされた信号を連続するブロックのサンプルに分割する段と、
ブロックごとにサンプリング時点を補正する手段とを備え、該サンプリング時点補正手段は、
N個からなる一組の別個の基本デジタルフィルタを含む多相フィルタと、
基本デジタルフィルタの各ブロックの選択手段とを備える装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
送信側と受信側の間で信号を送信する設備において、ベースバンド信号によって表される伝送対象のデジタル信号は、特に放送波での伝送に適する信号に変調される。
【0003】
受信側、すなわち受信機は、受信信号を変調することで伝送されるデータを表すベースバンド信号を再復元できるようにする装置を備える。この復調は、変調信号のサンプリングを実施してそのデジタル化を実現する。
【0004】
信号の変調および信号の復調は、それぞれ送信側のクロックと受信側のクロックによって組み付けられる時間軸を基準に実行される。
【0005】
この2つのクロックは、周波数および位相においてほとんど正確に同期されることはないため、この2つのクロックにより供給される時間軸には時間のずれが存在する。
【0006】
ここで、復調時に実行される受信信号のデジタル化の際、受信側の性能を最大限利用できるようにサンプリング時点を完璧に設置する必要がある。必要となる位置は、シンボル間干渉を最小限に抑えることに対応するアイダイアグラムの中心に一致する。しかしながら、受信側のアナログ/デジタル変換に関連する構成要素が完璧であったとしても、高性能のフィードバックシステムがなければ即座に信号をサンプリングすることは不可能である。かかるシステムにより、受信信号についてのサンプリング時点の補正を確実に行うことができる。
【0007】
周知のシステムは、構成要素および場所の観点から高価であるアナログ手順または計算時間の観点から高価であるデジタル手順のいずれかを実施する。
【0008】
デジタル手順は、二重の補間/間引きを慣例上実行するが、「間引き」という用語はアンダーサンプリングを表す。この二重のインターポレーション/間引きは、一方では2つの関数自体を実行するために、そして他方では補間関数がサンプリング数を増大させるため、これにともなって実行される計算数を増大させることにより相当量の計算能力を消耗する。
【0009】
さらに、多相フィルタを受信側で使用することが想定されている。かかる多相フィルタは、並行に設置された1組のいくつかのフィルタを備える。これらのフィルタの1つのみが1ブロック分のシンボルの処理に使用される。
【0010】
さらに、信号のデジタル変調装置は、上述した間引き手段を含む場合もある。しかしながら、間引きの実施は、間引き作業中に選択されるサンプルを決定する手段を用いる必要がある。
【0011】
したがって、かかる間引き手段の実施は、復調装置を大幅に複雑化している。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、データの高速処理を可能にしつつサンプリング時点の補正を確実に行うとともに、受信の良好な品位を確実に実現する受信信号のデジタル復調の単純な装置を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
したがって、本発明の主題は、上述のような、デジタル通信受信機における受信信号のデジタル復調装置であって、多相フィルタにより実施されるデジタルフィルタリングの完了時にブロックごとにサンプルを選択する間引き段と、各ブロックの処理中に前記間引き段において選択されるサンプルを決定する手段とを備え、この選択されるサンプルの決定手段は、フィルタリングされたブロックごとにエラー信号を計算する手段と、関連ブロックにおいて選択されるサンプルの決定に適するエラー信号を評価する手段とを備えることを特徴とし、かつ基本デジタルフィルタの選択手段はエラー信号を計算する手段を備え、このエラー信号計算手段は実施される基本デジタルフィルタの選択手段と選択されるサンプルの決定手段に共通であることを特徴とする装置である。
【0014】
特定の実施形態において、本装置は、以下の特徴の1つ、または複数を備える。
―各基本デジタルフィルタは、シンボル間の干渉の解消またはノイズのフィルタリング等、それ自体のフィルタリング機能を発揮するのに適する。
―基本デジタルフィルタの選択手段は、少なくとも2個の連続するブロックにおいて実施される基本デジタルフィルタの性能インジケータを比較する手段を備え、この性能インジケータは、エラー信号計算手段によって生成される前記エラー信号に起因し、後続のブロックにおいて実施される基本デジタルフィルタを比較の結果の関数として決定する手段をさらに備える。
―別個の基本デジタルフィルタは整列され、後続のブロックにおいて実施される基本デジタルフィルタを決定する手段は、間隔の数だけ、そして少なくとも1つの前のブロックにおいて実施される基本デジタルフィルタの性能インジケータについて実行される比較の結果の関数として決定される方向において、すでに選択されている基本フィルタに対するその順位が上記フィルタの順序に従ってシフトされた基本フィルタを後続のブロックにおいて実施される基本デジタルフィルタとして選択するのに好適である。
―シフト間隔の数は所定の一定数の間隔である。
―シフト間隔の数は経時的に可変であり、かつ装置の実施途上でシフト間隔の数を減少させる手段を備える。
―この一組の別個の基本デジタルフィルタは、各フィルタ自身の位相によって相互に区別される同一種類のフィルタである。
【0015】
さらに本発明の主題は、上述の装置を備えるワイヤレス遠隔通信ネットワークのデジタル通信受信機および基地局である。
【0016】
最後に、本発明の主題は、デジタル通信受信機における受信信号のデジタル復調方法であって、
シンボルごとに数サンプルのオーバーサンプリングファクタで受信信号をサンプリングするステップと、
前記オーバーサンプリングされた信号を連続するブロックのサンプルに分割するステップと、
一組の別個の基本デジタルフィルタを備える多相フィルタを与え、ブロックごとに1つの基本デジタルフィルタを選択することによって、ブロックごとにサンプリング時点を補正するステップとを含み、さらに
間引き段において、多相フィルタによって実施されるデジタルフィルタリングの完了時に各ブロックからサンプルを選択するステップと、
各フィルタリングされたブロックごとにエラー信号を計算し、該エラー信号を評価することによって、間引き段において各ブロックの処理中に選択されるサンプルを決定するステップとを含み、
基本デジタルフィルタの選択は、エラー信号を計算するステップを含み、
エラー信号を計算する1つおよび同一のステップは、実施される基本デジタルフィルタの選択において、そして選択されるサンプルの決定において実施されることを特徴とする方法である。
【0017】
【発明の実施の形態】
単なる例として付与された以下の説明を図面を参照しながら読み進めることにより、本発明はよりよく理解されよう。
【0018】
図1に示す装置10は、変調された通信信号のデジタル復調に適する。携帯電話またはワイヤレス遠隔通信ネットワークの基地局等デジタル通信受信機において実施されることが意図される。
【0019】
この装置10は、デジタル化モジュール12と、サンプリング時点を補正する手段13とを本質的に備える。この手段13は、多相フィルタの基本フィルタの選択手段16と関連づけられた多相フィルタ14と、間引きインデックスのずれを決定する手段20と関連づけられた間引き段18と、最後に位相補正器22とを本質的に備える。
【0020】
図1には、信号の処理において実施される各機能を説明する機能ブロックが示される。しかしながら、本発明によれば、1つまたは複数のデータプロセッサが適切な処理プログラムを実行することによって各種の機能が実施される。
【0021】
図1に示す装置10は、たとえば、PSKタイプの変調にしたがって変調された信号を入力側で受信するのに適する。この信号は、デジタル化段24によって受信される。この段24は、コヒーレントまたは非コヒーレントに復調されるデジタル信号を供給するのに適する。
【0022】
デジタル化段24は、オーバーサンプリングファクタPで、変調信号をデジタル化するのに適する。オーバーサンプリングファクタは、1シンボルにつきサンプル数Pに等しい。後者はできるだけ小さいことが望ましい。しかしながら、2以上である。本発明によれば、本装置において4以下であることが望ましい。
【0023】
デジタル化は、無線周波数、中間周波数またはベースバンドにおいて実行される。デジタル化された信号がベースバンド信号でない場合、周波数のずれは、信号を直接ベースバンドに持ってくるようにデジタルかつコヒーレントまたは非コヒーレントに実行される。
【0024】
得られたベースバンド信号は複雑な種類である。このため、Iで表される同相部と、Qで表される直角位相部とを備える。
【0025】
同相部および直角位相部は、同様のアルゴリズムによって互いに独立して、あるいは共通に処理される。
【0026】
図1において、機能ブロックは分化されていない。これらは、たとえば、一方で信号の同相部Iと、他方で直角位相部Qを処理するのに適する。
【0027】
復調されたデジタル信号をS個のサンプルのブロックに分割する段26が、デジタル化段24の出力側に設けられる。1ブロックあたりのサンプルの数Sは、オーバーサンプリングファクタPの倍数である。
【0028】
このブロックへの分割は、信号の同相部Iと直角位相部Qのそれぞれにおいて実行される。
【0029】
サンプリング時点を補正する手段13において実行される移行の処理は、ロード時間を短縮するとともに、呼び出し機能の処理により導入される機能をブートする時間を短縮するためにブロック単位で実行される。同様に、補正器22における位相補正もブロック単位で確立され、位相誤差はブロックを跨いで固定であるか無視できるものと仮定する。
【0030】
ブロックのサイズは、
・送信側と受信側の各コンバータのクロック間の周波数ずれの大きさ、
・ロード時間および機能の呼び出しにより導入される機能のブート時間
・送信側と受信側の各搬送波の周波数ずれの大きさ
・クロックのドリフトと比較される多相フィルタの基本フィルタの数
を見合う関数として定義される。
【0031】
そして分割段26の出力において得られるブロックは、複雑な多相フィルタによって処理される。
【0032】
この多相フィルタ14は、N個の基本複雑フィルタまたは分岐を備える。各基本フィルタは、Hで表され、ここでi∈[0,・・・,N−1]である。多相フィルタの数Nは、たとえば、8,16,32,64,128,256と等しいか、それ以上である。この数が2の累乗であることは不可欠ではない。フィルタの数は多いほど好ましく、256個より多いことが望ましい。
【0033】
特に、そして望ましくは、オーバーサンプリングファクタPは小さい数が選択され、基本フィルタの数Nは大きい数が選択される。P/Nの比は1より小さいことが好ましい。
【0034】
多相フィルタ14は、各基本フィルタHの機能的定義を記憶する手段と関連づけられたプロセッサにより実施される。
【0035】
特に、各フィルタの機能的定義は、ファクタの表によって構成される。したがって、ファクタの表N個が記憶される。
【0036】
各ファクタの表は、関連の基本フィルタHのインパルス応答のうち、すでに実行されたデジタル化を表し、それぞれ、後述するように所与の位相またはシフトを表す。
【0037】
各ブロックの同相部Iおよび直角位相部Qは、多相フィルタの1つおよび同一の基本フィルタHにより処理される。複雑な多相フィルタは、一方が同相部、他方が直角位相部の2つの同一多相フィルタから構築される。
【0038】
多相フィルタの各基本フィルタは、Teで表されるサンプリング周期において受信フィルタのデジタル化によって構成される。デジタル化は、それぞれ以下の数式で求められる特定の位相を有する。
【0039】
【数1】
Figure 0003986890
【0040】
N個の基本フィルタの位相変動は、サンプリング周期Teを完全にカバーするように−Te/2〜(Te/2−Te/N)に及ぶ。
【0041】
各基本フィルタHは、前回の基本フィルタHi−1に対してサンプリング期間Teの1/Nだけ位相シフトされる。
【0042】
Nが大きいほど、位相別の離散化間隔が小さくなるため、サンプリング時点を精度よく補正することが可能になる。
【0043】
多相フィルタの各基本フィルタHに対する個々の表のファクタの計算は、プログラム位相初期化の過程において実行される。
【0044】
各基本フィルタは、特定のバージョンの1つおよび同一の基準受信フィルタであり、ここでは、その周波数選択性にしたがっている。各基本フィルタは、シンボル内の干渉の抑制を確実に行うため望ましい。したがって、「Root Raised Cosine」タイプのフィルタは、別々の位相と関連づけられた基本フィルタのそれぞれの定義の基本として機能できることが望ましい。
【0045】
さらに、位相変動の範囲まで基本フィルタの基本として機能する基準受信フィルタは、ノイズを制限するのに(それ自体周知であるが)適している。
【0046】
上記は、信号対ノイズ(SN)比を最大化する適切なフィルタとすることができることが望ましい。
【0047】
所与のブロックにおいてコンピュータにより実施される基本フィルタHは、基本フィルタの選択手段16によって実施される追跡アルゴリズムの関数として決定される。
【0048】
この手段16は、関連のブロックにおいてエラー信号を計算する段28を備える。段28により生成されるエラー信号は、データの電送において使用される変調のモードに対して個別である。以下は、PSKタイプの変調に適した例である。
【0049】
この場合、エラー信号は、1つおよび同一のシンボルのサンプリング時点Pのそれぞれにおいて、ブロックに属するシンボルの母数のすべてを計算された標準偏差σの集合で形成される。
【0050】
各サンプリング時点kにおいて、標準偏差σは以下により求められる。
【0051】
【数2】
Figure 0003986890
【0052】
段28により供給されるエラー信号は、選択段30により使用され、追跡アルゴリズムを実施することによって多相フィルタの基本フィルタHを選択することが可能になる。さらに、同一のエラー信号は、さらに手段18を制御する間引きインデックスのシフトを決定する手段20のエラー信号を評価する段31によって使用される。
【0053】
特に、手段20の段31は、エラー信号において出現する最小標準偏差σを選択するのに適する。
【0054】
最小標準偏差σの選択により位相誤差が低減し、誤差基準を構築できるため、最小標準偏差に対応するインデックスkハットに基づいて間引き段18を制御することが可能になる。
【0055】
段31により選択されるインデックスkハットは、以下の関係式により得られる。
【0056】
【数3】
Figure 0003986890
【0057】
式中、
Pは1シンボルあたりのサンプル数、
kは間引きシフト(オフセット)に関連するインデックス、
zは受信フィルタ後のサンプルのファクタ、
Lは1ブロックあたりのシンボル数をそれぞれ表す。
【0058】
段31は、計算された標準偏差の最小値に対応するサンプリング時点のインデックスとしてシフトkハットを、誤差計算段28により供給されるエラー信号から決定する。
【0059】
したがって、段31は、アイダイアグラムの最大開口をもたらす間引きを制御するのに適する。
【0060】
間引き段18は、kハット番目のサンプルからP個のサンプルのうち1個のサンプルのみを保持しながら、多相フィルタ14の出力において受信されたサンプルから1ブロックあたりL個のサンプルを抽出するのに適する。このため、1シンボルにつき1個のみサンプルが残る。
【0061】
間引き動作は以下の数式により単純に定義可能である。
【0062】
【数4】
Figure 0003986890
【0063】
但し、n=0,1,・・・,L−1
式中、
kハットは標準偏差σの最小値に対応するサンプリング時点のインデックス、Pは、オーバーサンプリングファクタをそれぞれ表す。
【0064】
間引きされたデータは次に位相補正器22にアドレス指定される。
【0065】
位相補正は、2種類のアルゴリズム、すなわち、伝送されるデータの事前情報を使用するアルゴリズムとこれを使用しないアルゴリズムのいずれかを使用することで実行可能である。
【0066】
この位相補正は、
・時間変化の伝搬チャネルによる信号の伝搬、
・各ブロックの変化を伴う位相ジャンプをもたらす多相フィルタの基本フィルタの連続的変化、そして
・送信側と受信側間の搬送波の差
により導入される位相回転を補償するように間引きされたサンプルに適用される。
【0067】
したがって、ブロック単位での更新により搬送波同期が実現される。
【0068】
本発明によれば、複雑な多相フィルタ14、エラー信号の計算段28、選択段30、評価段31および間引き段18は、適切なプログラムを実行する1つまたは複数のコンピュータにより実施され、その主なアルゴリズムを図2に示す。
【0069】
選択段30の動作の態様は、特に本アルゴリズムにおいて図示される。
【0070】
入力において、本装置は変調信号を受信する。
【0071】
ステップ100において、デジタル化段24は、ファクタPによりオーバーサンプリングで信号の復調を確実に行い、デジタル信号をベースバンドに入れる。デジタルベースバンド信号は、次にループを実施することによってブロックずつ処理される。
【0072】
ステップ102において、デジタル信号はS個のサンプルのブロックに分割され、連続したブロックをBで表す。
【0073】
ステップ104において、関連のブロックBは、多相フィルタ14の基本デジタルフィルタHによって処理される。
【0074】
実施される基本フィルタHのインデックスiは、選択段30によって決定される。この選択アルゴリズムについては後述する。
【0075】
本方法を初期化する際、実施される基本フィルタは任意に選択される。後者は、たとえば、i=E((N−1)/2)(但し、Eは整数部関数を表し、Nは基本フィルタの数を表す)で得られるインデックスiを有するものである。
【0076】
選択された基本フィルタによるサンプルの処理において、コンピュータは、基本フィルタHに対する個別のファクタの表を実施し、この基本的な表は、選択手段30によって定義されるポインタによりメモリにおいて選択される。
【0077】
多相フィルタの各基本フィルタのファクタのテーブルの計算および格納は、プログラム初期化位相の途上でコンピュータによって実行される。
【0078】
メモリにおいて、基本フィルタHは、インデックスの順位にしたがって位相の昇順または降順で配列される。
【0079】
ステップ106において、段28はエラー信号の計算を実行する。したがって、ステップ108において、0とP−1の間にあるオーバーサンプリングインデックスのそれぞれについてブロックBと関連づけられた標準偏差の集合が計算されるループが実施される。このようなエラー信号を形成する標準偏差はσl,jで表される。
【0080】
このループの終了後、段31は、ステップ112において
【0081】
【数5】
Figure 0003986890
【0082】
の間引きインデックスkハットを決定する。
【0083】
ステップ114において、間引き段18は、受信したサンプルからL個のサンプルの抽出を確実に行い、ステップ112において決定されたkハット番目のサンプルからPのうち1個のサンプルのみを保持する。
【0084】
ステップ116において、位相補正器22はフィルタリングされ、間引きされたブロックBを処理する。
【0085】
次のブロックBl+1についても、ステップ102以下参照が実施される。
【0086】
さらに、ステップ112の終了後、選択段30は、図2のアルゴリズムのルーチン118に対応する追跡アルゴリズムを実施する。
【0087】
本アルゴリズムの目的は、次のブロックBl+1において受信プロセスに最も適する多相フィルタの基本フィルタHを決定することである。この適合される基本フィルタHは、間引きされたデータの母数の標準偏差σを最小限にすることができるものである。
【0088】
追跡アルゴリズムは、多相フィルタ14のすべての基本フィルタHの母数の標準偏差σの計算を回避するために使用される。
【0089】
本アルゴリズムは、
―整列された基本フィルタの中から追跡する方向のブロックから
―前回のブロックBl−1の間引きに使用される多相フィルタと関連づけられた標準偏差σl−1,kのブロックへと格納を行う必要がある。
【0090】
追跡の方向は、値+mおよび−m(但し、m∈Nおよびm<Nを取ることができる変数sにより得られる。たとえば、m=1である。値+mは、mランクの基本フィルタの中のインデックスのインクリメントに対応し、値−mは、基本フィルタの中のインデックスの降順方向のmランクのトラバーサルに対応する。
【0091】
より厳密には、ステップ120において、ブロックBに使用される基本フィルタHと関連づけられた現行の標準偏差σl,kを前回のブロックBl−1に使用された基本フィルタHと関連づけられた間引き標準偏差σl−1,kを比較するテストが実行される。現行の間引き標準偏差σl,kが前回の間引き標準偏差σl−1,kより小さい場合、追跡の方向はステップ122において変更されない。
【0092】
そうでなければ、追跡の方向は逆になる。
【0093】
ステップ124において、次のブロックBl+1に使用されるべき基本フィルタHのインデックスは、値sにすでに使用されたフィルタのインデックスのインクリメントモジュロNによって計算される。したがって、選択された基本フィルタはHi+sである。次のインデックスの計算モジュロNにより、インデックスiを区間[0,N−1]に保つことができる。
【0094】
現行ブロックBについて、最小標準偏差が前ブロックより小さいと、追跡の方向は維持され、大きいと逆になる。最後に、ブロック毎に、追跡の方向にしたがって、基本フィルタインデックスが値mだけインクリメントまたは値mだけデクリメントされる。このため、ノッチ毎に本アルゴリズムは基本フィルタの方に収束し、最低の標準偏差を表すことになる。基本フィルタのインデックスがそれぞれ追跡の降順または昇順方向に対する端点0またはN−1に達すると、次ブロック用に選択された基本フィルタのインデックスはm=1の場合それぞれN−1およびゼロに等しい。この場合、ブロックの間引きは、シンボルを表すサンプルが変化するためそれ自体、P−1ユニットだけ修正された間引きインデックスで終了する。
【0095】
追跡アルゴリズムは以下の3つの位相からなる。
・基本フィルタの1つを任意に選択するとともに、追跡の方向を定義する初期化位相(基本フィルタインデックスの増減)
・過渡的または追跡レジューム:送信デジタル化と受信デジタル化の間の位相誤差は一定であるが、ブロック毎の基本フィルタの低減修正する可能性により生じるアルゴリズムの収束時間については、最も適する基本フィルタは従来達成されていない(1ユニットずつのインクリメントまたはデクリメント)。送信デジタル化と受信デジタル化の間の位相誤差は変動し、この場合、この変動を本アルゴリズムは追跡する。
・安定状態レジューム。送信デジタル化と受信デジタル化の間の位相誤差は一定であり、この場合、m=1であれば、本アルゴリズムは2つの最も適する連続した基本フィルタの間を変動する。基本フィルタ間の一定の変動により与えられる劣化は、多相フィルタに大量の基本フィルタが使用される場合には無視できると考えられる。
【0096】
予め蓄積されたフィルタの基本定義を基本フィルタごとに使用するコンピュータによって実施される本発明に係る復調装置の多相フィルタにより、非常に大量の基本フィルタを有する多相フィルタの使用が可能になる。具体的には、基本フィルタの数に関係なく、回路上での専有面積は、プロセッサおよび関連メモリの専有面積に限定される。後者は、さらにプロセッサに集積されることが非常に多い。ここで、基本フィルタのインパルス応答を表すファクタの多数の表は、小さい専有面積を有するメモリに格納することが可能である。
【0097】
基本フィルタの数が非常に多いため、非常に高い受信品位を保ちつつ小さい初期オーバーサンプリングファクタPを選択することが可能である。
【0098】
具体的には、多相フィルタに頼ることによって、初期信号は実際にはN×Pファクタによりオーバーサンプリングされる。すなわち、Pファクタだけオーバーサンプリングされた信号の場合の計算だけプロセッサにさせながら、N×Pファクタだけオーバーサンプリングされる信号の品質を獲得することが可能である。
【0099】
オーバーサンプリングファクタPは小さく、基本フィルタを実施する計算時間が大幅に短縮されるため、リアルタイムの高処理量でデータを復調することが可能になる。
【0100】
さらに、ノイズ制限フィルタを入力に必要とする受信がある限り、本発明に係る復調装置において、多相フィルタの基本フィルタはそれぞれノイズ制限フィルタに対応する。このため、多相フィルタが装置を複雑化しても、後者は。通常復調装置を構成する多の要素と合成されないため、ノイズ制限フィルタに単に集積される。
【0101】
各ブロックにおいて多相フィルタの基本フィルタを選択するために使用される追跡方法は、良好なフィルタリング解決に向けて高速に収束している。この方法により、ブロック毎に1つのエラー信号だけを計算し、前ブロックのエラー信号に対応する標準偏差だけを比較することが可能になる。したがって、本アルゴリズムは少ない計算能力で済む。また、エラー信号を数ブロックに跨って平均することによって本手順をより強固にすることも考えられる。
【0102】
さらに、段28において生成されるエラー信号が後続ブロックの基本フィルタHの選択とブロックが受けている処理の間引きに使用されるずれkハットの測定の両方に使用される限り、コンピュータの計算量はごく僅かであるため、復調方法の実施速度が高速化する。
【0103】
変形例として、追跡アルゴリズムに使用される間隔mの値は、当該アルゴリズムの実施中に修正可能である。特に、間隔の値mは、追跡アルゴリズムが安定状態レジュームに達する前には大きいものを選択し、次に当該アルゴリズムの実施中に自動的に減少させ、当該アルゴリズムがその安定状態レジュームになったとき値1に等しくなるようにしてもよい。安定状態レジュームは、追跡方向の逆転の連続の存在により検出可能である。
【0104】
上記の例では、復調装置は適当なアルゴリズムにしたがって動作するコンピュータによって実施される。この解決方法はすでに上述した理由によって望ましい。しかしながら、変形例として、上記装置はソフトウェア手段ではなくハードウェアによって実施可能であり、その配線および構成が必要とされる各種機能を実行するのに適する回路に基づいて信号のデジタルおよび/またはアナログ処理を確実に行うことが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る受信信号のデジタル復調装置の模式図である。
【図2】 図1の装置の動作を説明するフローチャートである。

Claims (10)

  1. デジタル通信受信機における受信信号のデジタル復調装置であって、
    シンボルごとにP個のサンプルのオーバーサンプリングファクタで前記受信信号をサンプリングする段と、
    前記オーバーサンプリングされた信号を連続するブロックのサンプルに分割する段と、
    ブロックごとにサンプリング時点を補正する手段と
    を備え、
    このサンプリング時点を補正する手段は、N個からなる一組の別個の基本デジタルフィルタを含む多相フィルタと、基本デジタルフィルタの各ブロックに対する選択手段とから構成され、
    前記受信信号のデジタル復調装置は、
    前記多相フィルタにより実施されるデジタルフィルタリングの完了時にブロックごとにサンプルを選択する間引き段と、前記間引き段の各ブロックの処理中において選択されるサンプルを決定する手段とを備え、前記選択されるサンプルを決定する手段は、フィルタリングされたブロックごとにエラー信号を計算する手段と、関連ブロックにおいて選択されるサンプルの決定に適するエラー信号を評価する手段とから構成されることを特徴とし、
    前記基本デジタルフィルタの選択手段は、エラー信号を計算する手段を備え、前記エラー信号計算手段は、実施される前記基本デジタルフィルタの選択手段、前記選択されるサンプルの決定手段に共通であることを特徴とする装置。
  2. 請求項1に記載の装置において、
    各基本デジタルフィルタは、シンボル間の干渉の解消またはノイズのフィルタリング等、それ自体のフィルタリング機能を行うのに適することを特徴とする装置。
  3. 先行する請求項のいずれか一項に記載の装置において、
    前記基本デジタルフィルタの選択手段は、少なくとも2個の連続するブロックにおいて実施される基本デジタルフィルタの性能インジケータを比較する手段を備え、該性能インジケータは、前記エラー信号の計算手段によって生成される前記エラー信号に起因し、後続のブロックにおいて実施される前記基本デジタルフィルタを比較の結果の関数として決定する手段をさらに備えることを特徴とする装置。
  4. 請求項3に記載の装置において、
    前記別個の基本デジタルフィルタは整列され、後続のブロックにおいて実施される前記基本デジタルフィルタを決定する手段は、間隔の数だけ、少なくとも1つの前のブロックにおいて実施される前記基本デジタルフィルタの前記性能インジケータについて実行される前記比較の結果の関数として決定される方向において、すでに選択されている基本フィルタに対するその順位が前記フィルタの順序に従ってシフトされた基本フィルタを後続のブロックにおいて実施される基本デジタルフィルタとして選択するのに適することを特徴とする装置。
  5. 請求項4に記載の装置において、
    シフト間隔の数は所定の一定数の間隔であることを特徴とする装置。
  6. 請求項4に記載の装置において、
    シフト間隔の数は経時的に可変であり、かつ前記装置の実施途上でシフト間隔の数を減少させる手段を備えることを特徴とする装置。
  7. 先行する請求項のいずれか一項に記載の装置において、
    前記一組の別個の基本デジタルフィルタは、各フィルタ自身の位相によって相互に区別される同一種類のフィルタであることを特徴とする装置。
  8. ワイヤレス遠隔通信ネットワークのデジタル通信受信機であって、先行する請求項のいずれか一項に記載の受信信号のデジタル復調装置を備えることを特徴とする受信機。
  9. ワイヤレス遠隔通信ネットワークの基地局であって、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の受信信号のデジタル復調装置を備えることを特徴とする基地局。
  10. デジタル通信受信機における受信信号のデジタル復調方法であって、
    シンボルごとにP個のサンプルのオーバーサンプリングファクタで前記受信信号をサンプリングするステップと、
    前記オーバーサンプリングされた信号を連続するブロックのサンプルに分割するステップと、
    N個からなる一組の別個の基本デジタルフィルタを備える多相フィルタを与え、ブロックごとに1つの基本デジタルフィルタを選択することによって、ブロックごとにサンプリング時点を補正するステップと
    を備え、
    前記受信信号のデジタル復調方法は、さらに
    間引き段において、前記多相フィルタによって実施されるデジタルフィルタリングの完了時に各ブロックからサンプルを選択するステップと、
    各フィルタリングされたブロックごとにエラー信号を計算し、該エラー信号を評価することによって、前記間引き段において各ブロックの処理中に選択されるサンプルを決定するステップと
    を備え、
    前記基本デジタルフィルタの選択は、エラー信号を計算するステップを含み、前記エラー信号を計算するステップは、実施される前記基本デジタルフィルタの選択において、そして前記選択されるサンプルの決定において実施されることを特徴とする方法。
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