JP3986446B2 - 吸収性物品 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高い吸収性能と優れた着用感を両立させた吸収性物品に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、吸収性物品の吸収容量を高める技術として、吸収体を複数層重ねる技術が知られている。その代表的な技術として、例えば特許文献1には、吸収ポリマーとパルプ繊維からなる吸収層の一部に、綿状パルプを主体とする層を積層して後ろ身頃に配される部位の厚みを増大する技術、特許文献2には、上層に拡散性の高い吸収体、下層に保持力の高い吸収体を配する技術等が開示されている。
【0003】
しかし、これらの技術は、何れも吸収容量を高めるために吸収体の厚みが厚くなり、それに起因して吸収体の剛性が高くなるというきらいがある。このため、股下部でのフィット感が損なわれて着用者にごわごわした感触を与えたり、時には剛性が高すぎて、着用者肌との間に大きな間隔が生じ、これが漏れの原因となることもあった。
【0004】
一方、特許文献3には、吸収体の長手方向両端部をおむつのウエスト部において折り返して該ウエスト部からの排泄物漏れを防止する技術が記載されている。この技術においては、股下部の吸収体の厚みがウエスト部に比べて相対的に薄い。しかし、主たる吸収域、即ちウエスト部以外の殆どの部分では均一の厚みを有しているため、吸収容量を高めるためには、吸収体の厚みを厚くする必要がある。このため、着用感を犠牲にせざるを得ず、実際、この文献には着用感に対する考慮が記載されていない。
【0005】
従って、本発明の目的は、高い吸収性能と優れた着用感を両立させた吸収性物品を提供することにある。
【0006】
【特許文献1】
特開平9−117471号公報
【特許文献2】
特表2001−509717号公報
【特許文献3】
特開平8−66426号公報
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、液透過性の表面シート、裏面シート及び両シート間に介在された実質的に縦長の吸収性構造体を備え、股下部並びにその前後に位置する腹側部及び背側部を有する吸収性物品において、前記吸収性構造体は、前記表面シート側に位置する上部吸収層と前記裏面シート側に位置する下部吸収層とを有しており、前記股下部における前記下部吸収層は、該下部吸収層における他の部位によって実質的に周囲を囲まれた欠落部を有しており、前記上部吸収層の一部が、前記欠落部と重なっており、該上部吸収層は、前記吸収性構造体の長手方向における前記欠落部が存在する部分での最小幅が、該最小幅が存在する部位における該欠落部の幅以下である吸収性物品を提供することにより、前記目的を達成したものである(以下、第1発明という場合は、この発明をいう)。
【0008】
本発明は、液透過性の表面シート、裏面シート及び両シート間に介在された実質的に縦長の吸収性構造体を備え、股下部並びにその前後に位置する腹側部及び背側部を有する吸収性物品において、前記吸収性構造体は、前記表面シート側に位置する上部吸収層と前記裏面シート側に位置する下部吸収層とを有しており、該上部吸収層の上面に上側シートが配されており、該下部吸収層の下面に下側シートが配されており、前記股下部における前記下部吸収層は、該下部吸収層における他の部位に実質的に周囲を囲まれた欠落部を有しており、前記上部吸収層の一部が、前記欠落部と重なっており、該上部吸収層は、前記吸収性構造体の長手方向における前記欠落部が存在する部分での最小幅が、該最小幅が存在する部位における該欠落部の幅より広く、前記上部吸収層の前記欠落部と重なっている部分及び/又は該上部吸収層における前記下部吸収層の両側縁より幅方向外方に延出した部分の下面が、前記下側シートに接合されている吸収性を提供することにより、前記目的を達成したものである(以下、第2発明という場合は、この発明をいう)。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、その好ましい一実施形態に基づいて詳細に説明する。
第1発明の一実施形態としてのパンツ型の使い捨ておむつ1は、図1及び図2に示すように、液透過性の表面シート2、液不透過性の裏面シート3、及び両シート間に介在された液保持性の吸収性構造体4を備えており、着用時に着用者の股下に配される股下部A並びにその前後に位置し、着用時に着用者の腹側に配される腹側部Bと背側に配される背側部Cを有している。そして、腹側部B及び背側部Cの両側縁部同士が接合固定されて、ウエスト開口部5と一対のレッグ開口部6A、6Bを有するパンツ型の形態を有している。ウエスト開口部5の端51とレッグ開口部6A、6Bの上端(ウエスト開口部寄りの端)61とのおむつ高さ方向の距離を3分割したときのウエスト開口部5端51から3分の1の範囲にあるウエスト部7には、ウエスト開口部の周方向の全周に亘ってウエストギャザー9が形成されている。また、ウエスト部7の下方に位置し、上記1/3を除いた範囲の胴回り部8には、胴回りギャザー10が形成されている。胴回りギャザー10は、胴回りの全周には存在せず、腹側部B及び背側部Cにおける胴回り部8の左右両側部のみに形成されている。更に、一対のレッグ開口部6A、6Bには、開口の全周に亘ってレッグギャザー11A、11Bが形成されている。
【0010】
使い捨ておむつ1は、表面シート2、吸収性構造体4及び裏面シート3がこの順で配され所定の手段によってこれらが一体化されてなる略長方形状の吸収性本体20と、該吸収性本体20の裏面シート3側に配され、その一面がおむつの最外表面を形成する外層体21とを備えている。外層体21は2枚のシート、具体的には、裏面シート3側の内層不繊布22とおむつの最外表面を形成する外層不織布23とが積層されて形成されている。
表面シート2と裏面シート3はいずれも長方形状である。吸収性構造体4は、いわゆる砂時計状で、実質的に縦長の形状を有しており、より具体的には、長方形の長手方向中央部の両側縁を凹状(円弧状)にして該中央部をその前後の幅より細幅に括れさせた形状を有している。
吸収性本体20及び吸収性構造体4は、その長手方向を外層体21の長手方向(図2における上下方向)と一致させて外層体21の長手方向及び幅方向のほぼ中央部に配置されている。外層体21は、長手方向中央部においてその両側縁が両側にえぐられて砂時計状に形成されている。内層不織布22と外層不繊布23との間には、左右のレッグ開口部6A、6Bの周囲に沿って、それぞれ3本のレッグ弾性部材30A、30Bが伸長状態にて配されており、これにより、レッグ開口部6A、6Bの周囲全周にわたる連続したレッグ開口部ギャザー11A、11Bが形成されている。
【0011】
吸収性本体20の長手方向の左右両側には、立体ギャザー24が形成されている。各立体ギャザー24は、帯状シート材の幅方向の一端に弾性部材25が配されて自由端26が形成されており、該シート材の幅方向の他端が表面シート2に固定されて固定端27が形成されており、股下部Aにおける自由端26側が、着用者肌方向へ起立するようになされている。
【0012】
吸収性構造体4は、図3〜図5に示すように、表面シート2側に位置する上部吸収層41と裏面シート3側に位置する下部吸収層45とが積層された2層構造を有している。
下部吸収層45は、股下部Aに配される部位に、該下部吸収層45の他の部位に周囲を囲まれた欠落部46を有している。欠落部46は、下部吸収層45の構成材料(パルプ繊維、吸水性ポリマー等)が完全に存在しない部分であることが最も好ましいが、実質的に存在しないと言える程度、即ち本発明の効果を損なわない程度に少量の構成材料が周囲よりも薄厚に存在していても良い。また、本実施形態において欠落部は、下部吸収層の他の部位に完全に囲まれているが、周囲の下部吸収層の一部が不連続となっていても、実質的に囲まれていれば構わない。
そして、上部吸収層41の一部42が、欠落部46と重なっており、該上部吸収層41は、吸収性構造体4の長手方向における前記欠落部46が存在する部分部分43での最小幅W1が、該最小幅が存在する部位における該欠落部46の幅W2より狭くなっている。尚、本実施形態においては、前記最小幅W1が吸収性構造体4の長手方向の所定距離に亘って存在するが、このような場合において前記幅W2が長手方向に沿って変化するときには、その最大幅をW2とする。
【0013】
本実施形態の使い捨ておむつ1は、斯かる構成の吸収性構造体4を具備するため、股下部Aにおける所定部分の剛性を他の領域よりも局所的に小さくすることができ、しかも吸収性能を、欠落部を有さない従来の吸収性構造体を使用した場合と同等以上とすることができる。
【0014】
従来の吸収性構造体と同等以上の吸収性能が得られる理由は、(1)欠落部46の存在により低剛性とされた、上部吸収層41と下部吸収層45との間の部位が契機となって、吸収性構造体がその断面図上凹形状となり着用者の体型に沿ったポケット構造を形成するため、瞬時に吸収できない尿が収容され、その尿が、上部吸収層41と下部吸収層45の周囲部分を通して徐々に他の吸収領域に拡散し吸収性構造体全体に拡散することで、吸収性構造体の吸収性能が有効に活用されること、(2)排泄物を吸収した後の吸収性本体においては、特に股下部分において着用者の運動があった場合であっても上層シートと下層シートとの接着面積が広いために吸収体の壊れが起こりにくく、即ちポケット構造も壊れにくくなるために、繰返しの吸収においても安定した性能を発揮することができること、(3)欠落部46の形成により、着用者の狭い股下部分における吸収材料の量を大幅に削減でき、これによって、股下部分の吸収材料過多による吸収体壊れを抑えることができ、延いては安定した吸収性能を発揮することができること、が複合的に機能しているためと思われる。
【0015】
特に、上述した(2)の効果は、上部吸収層41の前記最小幅W1が欠落部46の前記幅W2と同一の場合に比べて、上部吸収層41の前記最小幅W1が前記幅W2より狭い場合において際立つ。後者の場合は、上部吸収層と下部吸収層以外に欠落部において上層シートと下層シートの接着が達成されることにより、一層ポケット構造を維持しやすくなるといえる。
【0016】
前記欠落部46は、子供用のおむつの場合には、吸収性構造体の長手方向(図2の上下方向)に2〜20cm、特に3〜10cmの長さL1(図5参照)を有し、幅方向に2〜15cm、特に3〜10cmの幅W2を有すること、また、上部吸収層は2〜15cm、特に3〜12cmの幅方向寸法を有する部分を形成していることが、欠落部46上の上部吸収層41が該欠落部46内に適度に陥入して着用者へのフィット性をより良好にするとともに、当該陥入した上部吸収層41によって排泄液の拡散・吸収が助長され、吸収性能が高まる点から好ましい。同様の観点から、大人用おむつの場合には、吸収性構造体の長手方向(図2の上下方向)に2〜35cm、特に3〜25cmの長さL1(図5参照)を有し、幅方向に2〜25cm、特に3〜20cmの幅W2を有すること、また、上部吸収層は2〜25cm、特に3〜20cmの幅方向寸法を有する部分を形成していることが好ましい。
【0017】
欠落部46の平面視形状は、本実施形態においては楕円状であるが、それに代えて、真円状、正方形状、長方形状など所望の形状にすることができる。欠落部46の平面視形状は、自然なフィット感を与える点と製造し易さの点からは真円状又は楕円状が好ましい。
【0018】
下部吸収層45における欠落部46の周囲を囲む部分のうち、吸収性構造体の長手方向の両側に位置する部分47,47の幅W3(図5参照)は、それぞれ、子供用のおむつの場合には0.5〜5cm、特に1〜4cm、大人用のおむつの場合には0.5〜10cm、特に1〜7cmであることが、おむつ横方向への漏れを防止する点から好ましい。
【0019】
欠落部46は、吸収性物品の着用時における着用者の股下直下に存在するように設計することが好ましい。本実施形態における欠落部46は、おむつの長手方向全長を2等分する中心線CL(図2参照)を跨いでそこから腹側部B側及び背側部C側にも存在している。
本実施形態においては、欠落部46はその長手方向の中心線が股下直下に存在しているが、欠落部46の位置は、子供用の場合、前記中心線CLに対して1〜7cm程度後側又は前側にオフセットして配置してもよい。この場合においても、欠落部46の一部は股下直下に存在することが前述した効果が得られる点で好ましい。前側にオフセットした場合には着用者の運動に追従し易いというメリットがあり、一方、後側にオフセットした場合には吸収性能がより高まるというメリットがある。
【0020】
上部吸収層41及び下部吸収層45は、それぞれ、パルプ繊維と吸水性ポリマーとを混合積繊したものを使用することが好ましい。欠落部46に隣接する上部吸収層41と下部吸収層45はポケット部に収容した排泄物を腹側と背側の吸収体に拡散する役目を担う。そのため、股下部分の吸収体が飽和状態になりにくいように、液拡散性に優れたゲル強度の比較的強い吸水性ポリマーを用いることが好ましい。液拡散性に優れるということは繰返し吸収性を損ない難いことを意味し、一方、ゲル強度が強いということは、加圧下の繰返し吸収に優れるということであり、その後の排泄に対する吸収性能の低下を遅延させることができる。
【0021】
また、別の好ましい例として、上部吸収層41に液拡散性に優れたゲル強度の比較的強い吸水性ポリマーを配置し、下部吸収層45に吸収速度の比較的早い吸水性ポリマーを配置することで、上部吸収層41と下部吸収層45のポリマーの種類を変えるとともに、それぞれに役割を担わせた積繊形状及び吸収材仕様とすることができる。このほか、特に拡散性を重視する場合には、合成繊維をパルプ繊維に混合し加熱して使用したり、不織布等からなるサブレイヤーを配置することが好ましい。
【0022】
ここで、液拡散性に優れたポリマーとは、次に述べる液透過性時間が20秒以下であるものをいう。液透過性時間は、吸水性ポリマー0.5gを、断面積4.91cm2(内径φ25mm)で底部に開閉自在のコック(内径φ4mm)が設けられた円筒に、該コックを閉鎖して生理食塩水とともに充填し、該生理食塩水により該吸水性ポリマーを飽和状態に達するまで膨潤させ、該膨潤した該吸水性ポリマーが沈降した後に該コックを開き、生理食塩水50mlを通過させ、該生理食塩水50mlが通過するのに要した時間をさす。
【0023】
上部吸収層41および下部吸収層45は、製品の特に腹側あるいは股下において高い吸収性能を持たせるように、吸収容量を偏在させたレイアウトとすることが好ましい。上部吸収層41は、下部吸収層45と同等若しくはそれより小さめの吸収容量を有するものであっても良く、吸収体の設計仕様に合わせて適切な仕様を選択することができる。
【0024】
吸収性構造体4は、上部吸収層41と下部吸収層(欠落部46を除く部分)45とが積層された部分の厚みが1〜20mm、特に好ましくは1〜10mmであることがフィット性の点で好ましい。また、上部吸収層41の厚みが0.5〜10、特に好ましくは0.5〜5mm、下部吸収層(欠落部46を除く部分)45の厚みが0.5〜7.5mm、特に好ましくは0.5〜5mmであることが、吸収性構造体の保形性と着用感を良好に保つと共に、高い吸収性能が得られるので好ましい。
【0025】
尚、厚みは次のような方法で測定される。弾性体の伸縮性の影響を受けない状態にしておき、適当な大きさに切断した吸収性構成体の上面に荷重面積25cm2(5cm×5cm正方形板)で1g/cm2の荷重をかけ、厚み計でその厚みを測定する。約10点の平均値をとって得られた厚み値に対し、単体で1mm以上の厚みを有する構成材を複数枚使用する場合については、その厚みを差し引くことで厚みが求められる。厚み計は非接触式の例えばレーザー変位計等を用いることで、同一条件下での測定が可能となる。
【0026】
本実施形態においては、図4及び図5に示すように、吸収性構造体4の上部吸収層41の上面が上側シート48に被覆されており、下部吸収層45の下面が下側シート49に被覆されており、上部吸収層41の前記欠落部46と重なっている部分42の下面42aが、該欠落部46を介して下側シート49に接合されている。
【0027】
また、上部吸収層41は、吸収性構造体4の長手方向における前記欠落部46が存在する部分43での最小幅W1が、該最小幅が存在する部位における該欠落部46の幅W2より狭くなっており、上部吸収層41の前記欠落部46と重なっている部分42の長手方向の両側それぞれにおいて、該欠落部46を介して上側シート48と下側シート49とが相互に接合されている。即ち、上側シート48及び/又は下側シート49が欠落部46内に陥入して相互に接合されている。
【0028】
このように、上部吸収層41又は上側シート48が、欠落部46を介して下側シート49に接合されていること、また欠落部46の両側において下部吸収層45が上側シート48及び下側シート49と接合されていることより、欠落部46と重なる部分における上部吸収層41に、着用中の着用者による運動によってズリ方向の外力が加わっても吸収性構造体が歪んだり、よれたりしない。従って、着用中の違和感がないとともに、吸収体のポケット構造を維持することができ、欠落部46と重なる部分での排泄液の移動・拡散がスムーズに行われることが保障されるので、股下部からの排泄液の漏れが効果的に抑止される。
また、上側シート48と下側シート49との接合により、吸収性構造体の保形性がより一層向上し、優れた吸収性能が安定して発現される。
上部吸収層41及び上側シート48を下側シート49に接合することにより、斯かる効果が一層確実に奏される。尚、本実施形態においては、下部吸収層45における、欠落部46の両側に位置する部分47の下面47aも同様に下側シート49に接着されている。
【0029】
上記のような吸収性構造体の特に好ましい配置形態として、股下部分の両側域における、下部吸収層45の身体側及びその反対側の両面が液透過性の表面シート2で被覆されている形態が挙げられる。このような構成により、立体的なバリアカフスの内側の、ポケットとして起立した下部吸収層45において、身体側及びその後側に回り込んだ排泄物を吸収する機能を持たせることができ、吸収性能を高めることができる。
【0030】
吸収層とシート、又はシート同士を接合する手段としては、ホットメルト型の接着剤等、各種公知の接着剤等を好ましく用いることができる。接着剤の塗布パターンとしては、べた塗りでも良いし、スパイラル、ストライプ(線状の粘着部を多列に形成するパターン)、波形ビード状等のパターン塗工でも良い。
上側シート48及び下側シート49としては、吸収性構造体4の上下面を被覆した場合に該吸収性構造体の吸収性能を損なわないものが用いられ、例えば、液透過性で且つ通気性を有する、紙(積繊時の台紙等)や不織布等が好ましく用いられる。不織布を用いる場合には不織布に親水化処理を施してあることが好ましい。また、その坪量としては5〜20g/m2、特に5〜12g/m2のものを用いることが好ましい。また、上側シート48及び下側シート49は、一枚のシートを折り曲げる等してその一部を上側シート48、他の一部を下側シート49としても良い。
【0031】
上側シート48と下側シート49との接合面積を十分に確保して吸収性構造体の保形性を向上させる観点等から、上部吸収層41の吸収性構造体の長手方向における前記欠落部46と重なる部分43の幅は、吸収性構造体4の2〜20cm以上の長さにわたって、欠落部46の対応する部位の幅よりも狭いことが好ましい。また、該部分43の長手方向の両側において、該部分43の両側縁と欠落部46の内周縁との間の最大離間幅W4(図4参照)が0〜6.5cmであることが好ましい。
【0032】
本発明における吸収性構造体4の前記欠落部46が存在する部分は、製品幅方向及び長手方向の内の少なくとも前記幅方向における剛性が1〜30gf/50mmであることが好ましく、特に好ましくは2〜15gf/50mmである。
また、股下部における欠落部46の両側に位置する部分47の製品長手方向における剛性は2〜40gf/50mmであることが好ましく、特に好ましくは4〜30gf/50mmである。
欠落部46の両側に位置する部分47の剛性を上記範囲とすることで、欠落部46が存在する部分の周辺が、吸収性構造体が幅方向につぶれない程度の適度な剛性を与えると共に、股下部の折れ曲がりによるポケットの形成しやすさを助長する。また、欠落部46の両側に位置する部分47の剛性が上記範囲である場合には、下部吸収層45の欠落部46に排泄液が到達したときに一時的に該排泄液を安定して溜めておけるポケットが容易に形成されるため、周囲の吸収性構造体へゆっくりと排泄液を吸収させることができ、吸収性能を有効に活用できる。
【0033】
ここで、上記剛性は、以下のようにして測定される。
測定にはテンシロン試験機〔(株)オリエンテック社製のRTC−1150A〕を用い、JIS規格K7171法(プラスチック−曲げ特性の試験方法)に準拠して測定を行う(R1=5.0±0.1mm、R2=5.0±0.2mm)。本発明では▲1▼製品幅方向での吸収性構造体の剛性測定と▲2▼製品長手方向での吸収性構造体の剛性測定の2つについて測定する。
【0034】
まず、試験片は、以下のようにして得る。
試験片はギャザーの伸縮性を取り除いた使い捨ておむつ等の吸収性物品から、測定に影響するような折り目、シワなどが含まれないように表面材から裏面材までの構成部材を含めたおむつの長手方向50mm、幅方向80mmの長方形の大きさに切り出す。曲げ剛性値の単位中の50mmは試験片の短辺の長さであり、試験時の圧子でたわませた試験片の幅である。長手方向についても同様に長手方向80mm、幅方向50mmの長方形の大きさに切り出す。欠落部46が存在する部分における剛性を測定する際の試験片は、欠落部の中心位置が、なるべく該試験片の中心に位置するように切り出す。
【0035】
そして、試験片を、エッジスパン間を50mmとした支持台の両エッジ間に渡すように置き、試験片に僅かに接するように圧子先端部を設置する。ロードセル5kg(レンジ200gf)、速度30mm/minの条件で、圧子を降下させ、荷重-たわみ曲線を得る。得られた曲げ応力の最大値を曲げ剛性値(gf/50mm)とする。
剛性を測定しようとする部位の幅が50mmより広い場合には、試験片は50mm幅に切り出し測定する。
剛性を測定しようとする部位の幅が50mm以下の場合には、その幅の試験片を切り出し、その剛性を測定後50mm幅の剛性に換算する。例えば、おむつ長手方向での剛性を測定する際、吸収体左右両端部での剛性を測定する際には、吸収体幅自体が狭いことが想定される。この場合には50mmに満たない幅サンプルで切り取り、50mm幅の剛性に換算する。
一般に剛性値は吸収体材料の坪量や圧縮率に依存すると考えられる。また、ホットメルトやヒートシール、超音波シールなど、一般におむつ材料を組み立てる手段ではその塗布形状や塗布坪量、シール面積、融着面積など様々な条件も吸収体構成体の剛性値を左右する因子である。
【0036】
本実施形態のおむつ1においては、吸収性本体20の左右両側に立体ギャザー24が設けられているので、欠落部46が存在する部位における吸収速度が排泄速度に追いつかずに吸収性構造体の外へ排泄液が放出された場合でも、立体ギャザー24及び吸収性構造体に形成されたポケット排泄液が一時的に貯えられて、吸収性構造体に時間をかけて吸収されるので、おむつ外部へ漏れ出すことが確実に防止される。また、胴周りギャザー10形成用の弾性部材がレッグ開口部位置まで存在しており、加えて、レッグ弾性部材30A、30Bがレッグ開口部6A、6Bに沿って存在し、かつ吸収性構造体の幅方向側部にのみ重なった構造となっているため、欠落部の両側に位置する側部が着用者上方へ引き上げられて、吸収性構造体における欠落部46が存在する部分が、排泄物がきた時に有効なポケット構造を形成し易くなっている。尚、本実施形態においては、下側シート49の両側縁部49aが上側シート48上に巻き上げられて接着されている。また、上部吸収層41は、吸収性構造体4の長手方向において前記欠落部46の前後にわたって存在している。
【0037】
使い捨ておむつ1における各部の形成材料について説明する。
表面シート2、裏面シート3、立体ギャザー24形成用の弾性部材25やシート材等の形成材料としては、従来、使い捨ておむつに用いられている各種公知の材料を特に制限なく用いることができる。
上部吸収層41及び下部吸収層45としては、パルプ繊維等の繊維の集合体及び吸水性ポリマーからなるものや、繊維の集合体からなるものが好ましく用いられる。繊維集合体の形態としては、各種製法による不織布や繊維ウエブが挙げられる。吸水性ポリマーを用いる場合、そのポリマーの存在形態は、混合積繊等により繊維集合体の繊維間隙に分散された状態であることが好ましいが、繊維材料からなる不織布や繊維ウエブ間にサンドイッチされて保持されていても良い。吸水性ポリマーとしては、ポリアクリル酸ソーダ,(アクリル酸−ビニルアルコール)共重合体,ポリアクリル酸ソーダ架橋体,(デンプン−アクリル酸)グラフト重合体,(イソブチレン−無水マレイン酸)共重合体およびその他のケン化物,ポリアクリル酸カリウム,並びにポリアクリル酸セシウム等が挙げられる。吸水性ポリマーの粒子表面に架橋密度勾配を設けたり、形状を非球形状の不定形粒子とすることで、ゲルブロッキングを抑えて液透過性を高めることができる。
【0038】
また、繊維の集合体の構成繊維としては、パルプ繊維に加えて、又はパルプ繊維に加えて、レーヨン、コットン、酢酸セルロース等の親水性繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維、ポリエステル、ポリアミド等の縮合系繊維、塩化ビニル、酢酸ビニル等のビニルモノマー重合体の繊維等を用いても良い。また、特に薄い吸収体を採用する場合には、これら繊維のほか吸収性能を阻害しない、例えば水溶性、弱疎水性のホットメルトを含浸させて、吸収体の保型性を高めるなどの手段が取られる。
【0039】
ウエストギャザー9及び胴回りギャザー10形成用の各弾性部材、レッグ弾性部材30A,30Bとしては、それぞれ公知の弾性部材を用いることができ、例えば、各弾性部材の形態としては、糸状のもの(糸ゴム等)、所定幅の帯状のもの(平ゴム等)、薄膜状のもの等を挙げることができ、弾性部材の形成素材としては、スチレン−ブタジエン、ブタジエン、イソプレン、ネオプレン等の合成ゴム、天然ゴム、EVA、伸縮性ポリオレフィン、ウレタン等を挙げることができる。
【0040】
第2発明の一実施形態としてのパンツ型の使い捨ておむつについて図6を参照して説明する。
本実施形態は、吸収性構造体の構造が上述したおむつ1と異なる以外は、上述した使い捨ておむつ1と同様であるため、吸収性構造体の構造についてのみ説明する。特に説明しない点は、上述した使い捨ておむつ1についての説明が適用される。
本実施形態における吸収性構造体4’は、上述した吸収性構造体4と同様に、股下部における下部吸収層45に、該下部吸収層45の他の部位に周囲を囲まれた欠落部46を有しており、上部吸収層41の一部42が、欠落部46と重なっている。
【0041】
しかし、上部吸収層41は、吸収性構造体4の長手方向における前記欠落部46が存在する部分の最小幅W1が、該最小幅が存在する部位における該欠落部の幅W2より広くなっている。また、上部吸収層41は、吸収性構造体4の長手方向における前記欠落部46が存在する部分に、下部吸収層45の両側縁より幅方向外方に延出した部分44を有しており、その両延出部分44の下面44aが、下側シート49に接合されている。
斯かる構成を有することにより、着用中に着用者が動いて吸収性構造体にずり方向の外力が加わっても吸収性構造体がよれたり歪んだりすることが防止できるとともに、装着時の違和感を低減させることで優れた装着感と優れた吸収性能が得られる。
本実施形態においても、上部吸収層41の前記欠落部46と重なっている部分42の下面42aが下側シート49に接合されていると、吸収性構造体のよれが一層防止されて、着用感が向上するので好ましい。
【0042】
以上、第1及び第2発明の好ましい実施形態について説明したが、各発明は、上述した各実施形態に制限されず、各発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。
例えば、第2発明における吸収性構造体は、股下部における下部吸収層に複数の欠落部が設けられ、各欠落部が、下部吸収層の他の部位によってそれぞれ周囲を囲まれており、この下部吸収層の上に、複数の欠落部を覆うように上部吸収層を積層してなるものであっても良い。例えば、吸収性構造体の幅方向に2つの楕円状の欠落部を設けることができる。この場合、上部吸収層は、複数の欠落部のうちの全て又は一部の欠落部と重なる部分を下側シートに接合することができる。斯かる構成により、着用時には股下部中央部が着用者の股間部幅方向中央部にしっかりと当たり、その周囲が着用者に柔らかく当たり、更にその外部がしっかりと当たる。従って、着用者が激しく動いても中央部がずれにくく、かつ締め付けられるような感覚は与えにくい。
また、上述した吸収性構造体4’は、前記延出部分44を有しない形態や、延出部分44の下面44a及び前記部分42の下面42aの何れか一方のみが下側シート49に接着された形態等にも変形可能である。
【0043】
また、第1発明における吸収性構造体は、図7に示すような形状の上部吸収層41と下部吸収層45を積層してなるものであっても良い。
本発明の吸収性物品は、子供(幼児)用や大人用のパンツ型の使い捨ておむつの他、展開型の使い捨ておむつ、生理用ショーツ、失禁用品等に適用することもできる。
【0044】
【発明の効果】
本発明(第1及び第2発明)の吸収性物品は、装着中のフィット性が非常に良好で、しかも吸収性能が高く、着用時の漏れがきわめて低いものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、第1発明の一実施形態としての使い捨ておむつを示す斜視図である。
【図2】図2は、図1の使い捨ておむつを展開し、各部の弾性部材を伸張させて平面状に拡げた状態(緊張状態)を示す平面図である。
【図3】図3は、図1の使い捨ておむつに用いた吸収性構造体を上側シート及び下側シートを一部破断して示す平面図である。
【図4】図4は、図3のX−X線断面図である。
【図5】図5は、図3に示す吸収性構造体の分解斜視図である。
【図6】図6は、第2発明の一実施形態における吸収性構造体の横断面を示す図(図4相当図)である。
【図7】図7は、第1発明の他の実施形態における吸収性構造体を示す平面図である。
【符号の説明】
1 使い捨ておむつ
2 表面シート
3 裏面シート
4 吸収性構造体
41 上部吸収層
42 欠落部と重なっている部分
43 長手方向における欠落部が存在する部分
45 下部吸収層
46 欠落部
48 上側シート
49 下側シート
A 股下部
B 腹側部
C 背側部
Claims (4)
- 液透過性の表面シート、裏面シート及び両シート間に介在された実質的に縦長の吸収性構造体を備え、股下部並びにその前後に位置する腹側部及び背側部を有する吸収性物品において、
前記吸収性構造体は、前記表面シート側に位置する上部吸収層と前記裏面シート側に位置する下部吸収層とを有し、該上部吸収層は、繊維集合体及び吸水性ポリマーからなり、
前記股下部における前記下部吸収層は、該下部吸収層における他の部位によって実質的に周囲を囲まれた欠落部を有しており、前記上部吸収層の一部が、前記欠落部と重なっており、該上部吸収層は、前記吸収性構造体の長手方向における前記欠落部が存在する部分での最小幅が、該最小幅が存在する部位における該欠落部の幅以下である吸収性物品。 - 前記上部吸収層の上面に上側シートが配されており、前記下部吸収層の下面に下側シートが配されており、前記上部吸収層の前記欠落部と重なっている部分が、該欠落部を介して前記下側シートに接合されている請求項1記載の吸収性物品。
- 前記上部吸収層は、前記吸収性構造体の長手方向における前記欠落部が存在する部分での最小幅が、該最小幅が存在する部位における該欠落部の幅より狭く、該欠落部を介して前記上側シートと前記下側シートとが接合されている請求項1又は2記載の吸収性物品。
- 液透過性の表面シート、裏面シート及び両シート間に介在された実質的に縦長の吸収性構造体を備え、股下部並びにその前後に位置する腹側部及び背側部を有する吸収性物品において、
前記吸収性構造体は、前記表面シート側に位置する上部吸収層と前記裏面シート側に位置する下部吸収層とを有し、該上部吸収層は、繊維集合体及び吸水性ポリマーからなり、該上部吸収層の上面に上側シートが配されており、該下部吸収層の下面に下側シートが配されており、
前記股下部における前記下部吸収層は、該下部吸収層における他の部位に実質的に周囲を囲まれた欠落部を有しており、前記上部吸収層の一部が、前記欠落部と重なっており、該上部吸収層は、前記吸収性構造体の長手方向における前記欠落部が存在する部分での最小幅が、該最小幅が存在する部位における該欠落部の幅より広く、前記上部吸収層の前記欠落部と重なっている部分及び/又は該上部吸収層における前記下部吸収層の両側縁より幅方向外方に延出した部分の下面が、前記下側シートに接合されている吸収性物品。
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