JP3986420B2 - 反応遅延性生石灰の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、反応遅延性生石灰を、使用する現場で製造する方法に関する。さらに詳しくは、反応遅延性生石灰を使用する工場、汚染土壌浄化処理現場、下水処理場の汚染物処理等の現場で、その現場での用途に適した被覆剤又は添加剤を使用して、安価に、必要量のみ生産できる反応遅延性生石灰の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
生石灰は、カーバイド製造原料のほか、その強反応性を利用した化学工業原料、高融点であることを利用して工業用炉壁内張り材料、農業用、建築用等従来からの用途のほか、近年では、環境保全対策として、汚染土壌浄化処理等に使用され始め急速に需要が増加している。その製造は、国内各地で産出する石灰石(主成分炭酸カルシウム)を、連続もしくはバッチで高温焼成し大量生産方式でなされている。
一方、生石灰は吸湿性が極めて大きく、保管にあたっては水分との接触を絶って完全密封が必要である。また、生石灰は、あまりにも反応性が強烈であるため、反応性を抑制して使用すべき用途も多い。例えば、有害物質の無害化処理等には特定の条件下で緩慢に反応する生石灰が必要である。反応遅延性生石灰によって、主として油類を対象にした有害廃棄物を固化させ無害化する方法は特公昭58−2000号公報において公知である。
従来の反応遅延性生石灰は、生石灰塊を、界面活性剤等の反応遅延剤の存在下で粉砕して、反応遅延剤による被覆がなされた生石灰を製造している。
改良技術として、石灰石焼成熱により熱い状態の、所定粒径に粗粉砕された生石灰に界面活性剤又は油脂等の反応遅延剤を、この反応遅延剤の液化温度以上蒸発温度以下の温度下で添加し、生石灰の表面に反応遅延剤を被覆し、これを微粉砕してその存在下に滞留させ均一な反応遅延機能を持つ反応遅延性生石灰を製造する方法も提案されている(特開平9−169551号公報)。
しかし、これら従来技術は、前者では均一な反応遅延機能を持つ製品が製造できず、また後者は連続大量生産に適し、少量生産には適しておらず、使用現場に持ち込んだ反応遅延性生石灰が余って無駄になる場合がある。
また、市販の生石灰を原料として均一な反応遅延機能を持つ反応遅延性生石灰を製造する場合には、石灰石焼成熱を利用できず、生石灰や該製品製造機を特に加熱する必要があった。
一方、近年汚染土壌等の対象範囲が拡大し、多様な対応が必要になってきており、その現場の有害物質ならびに土壌等の性質によって、適切な反応遅延剤や添加剤を適宜選択して適切に調整し使用する必要が出てきている。このような汚染土壌等の処理には、特定の反応遅延剤や添加剤が既に配合されている反応遅延性生石灰を使用するのは不適当である。また、配合方法においても適切な調整が必要であり、生石灰表面が部分的に露出されている状態で反応遅延剤が被覆されたものも不適当である。特開平10−60431号公報の図1に示されているように、30分という早い時期に反応遅延剤無添加品にほぼ接近してくる水和反応を起こす石灰表面が部分的に露出されている遅延性生石灰粒子では、生石灰が周辺の水とのみ選択的に反応を進めてしまうため、生石灰は有害物質とは反応せず、有害物質を極めて微細な粒子に分散しそれを表面拡大する石灰表面に吸着し、固化させ無害化する、という現象が起こらない。分散反応ならびに吸着反応を生起させるには、汚染土壌等と反応遅延性生石灰とが均一に混合され、有害物質が反応遅延剤に吸収されるまでは水和反応が起こらないようにする必要がある。その前提条件として、生石灰粒子の全表面が反応遅延剤によって被覆されている必要があり、汚染土壌中等の有害物質と十分に撹拌混合された後に、生石灰粒子の表面が傷ついた段階で初めて、あるいは土壌等に添加混合後に土中微生物や土中有害物質等により反応遅延剤が分解ないし剥離された段階で初めて、反応遅延剤に吸収された有害物質と生石灰が共存する状態下において生石灰粒子の表面が緩慢に水和反応を開始することが重要である。調製された反応遅延性生石灰の評価テストでは、24時間程度までは水和反応を起こさないものが好ましい。言いかえれば、特開平10−60431号公報に示される、生石灰表面が部分的に露出されている遅延性生石灰は、土壌に圧縮強度を発現させるという土質改良効果はあっても、汚染土壌中等の有害物質を無害化させるという効果はなく、本発明に属する技術分野とは用途が異なるものである。
これまで、使用する現場で、簡易な設備で、特に外部からの加熱の必要なく、必要量のみを、その現場での用途に適した反応遅延剤を被覆して、反応遅延性生石灰を製造することはできなかった。また、反応遅延性生石灰を使用する現場では、その現場の有害物質ならびに土壌等の性質によって、適切な添加剤を使用する必要がある。例えば、鉛の吸着においては、土壌中のpH値が高いアルカリ性であると、鉛の吸着効果が低く、この場合中性化を促進させる薬剤や、アルカリ性下でも吸着効果が高い薬剤を添加する必要がある。また、有害物質や土壌の条件によっては、リン酸カルシウム(アパタイト)の方が生石灰より吸着性能ならびに吸着後の微生物、添加剤等による分解効果が高い場合がある。また、土壌中のシリカ、アルミナ成分濃度が低いため、ボゾラン反応(固化反応)が効率的に進まないか、石灰と反応してエトリンガイトを生成する成分濃度が低いため固化反応が効率的に進まない場合がある。このような汚染土壌浄化処理の場合には、その現場の有害物質ならびに土壌等に適した添加剤を使用する必要がある。従来の技術では、その現場での用途に適した反応遅延剤を生石灰に被覆して、又はその現場の有害物質ならびに土壌等に適した添加剤を使用して、その現場にて必要量のみ製造することはできなかった。
【特許文献1】
特開平9−169551号公報
【特許文献2】
特開平10−60431号公報
【特許文献3】
特公昭58−2000号公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、使用する現場で、簡易な設備で、特に外部からの加熱の必要なく、必要量のみを、その現場での用途に適した反応遅延剤を被覆して、又はその現場での用途に適した添加剤等を加えて、汚染土壌浄化処理等に最適な反応遅延性生石灰の製造方法を提供することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究の結果、生石灰と水との反応熱を利用して、使用する反応遅延剤の液化温度以上蒸発温度以下にまで生石灰とその現場での用途に適した反応遅延剤との混合物の温度を上昇させ、生石灰粒子の全表面に反応遅延剤を被覆し、必要に応じて、その現場での用途に適した添加剤等を加えて、上記の課題を解決し得ることを見出し、この知見に基づき本発明を完成するにいたった。
すなわち本発明は、
(1)平均粒径0.005〜5mmの生石灰粒子100重量部に、反応遅延剤を0.3〜3.0重量部添加し撹拌混合後、水を1〜10重量部加えて撹拌混合し、該生石灰粒子の実質的全表面を該反応遅延剤によって被覆することにより、被覆された生石灰粒子を水に投入したとき、全てが水面に浮上し、投入直後から24時間経過後においても水和反応を起こさない生石灰粒子を形成することを特徴とする有害物質無害化処理用反応遅延性生石灰の製造方法、
(2)水を1〜10重量部加えて撹拌混合する際、生石灰粒子と反応遅延剤との混合物の温度が反応遅延剤の液化温度以上蒸発温度以下の温度になるように、水の添加量及び添加速度を調節することを特徴とする第1項記載の有害物質無害化処理用反応遅延性生石灰の製造方法、
(3)反応遅延剤として脂肪酸又は油脂又は鉱物油を使用することを特徴とする第1項又は第2項記載の有害物質無害化処理用反応遅延性生石灰の製造方法、
(4)平均粒径0.005〜5mmの生石灰粒子100重量部に、有害物質無害化促進剤を10〜200重量部添加して撹拌混合した後、反応遅延剤を0.3〜3.0重量部添加し撹拌混合後、水を1〜10重量部加えて撹拌混合し、該生石灰粒子の実質的全表面を該反応遅延剤によって被覆することを特徴とする第1項記載の有害物質無害化処理用反応遅延性生石灰の製造方法、及び
(5)平均粒径0.005〜5mmの生石灰粒子100重量部に、200重量部以下のセメント系固化材を添加することを特徴とする第1項、第2項、第3項又は第4項記載の有害物質無害化処理用反応遅延性生石灰の製造方法、
を提供するものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明は、所定の粒径の生石灰粒子と、又は、これに添加剤等を加えた混合物と、反応遅延剤とを、撹拌混合しながら、これに所定の量の水を加え、生石灰と反応させ、この反応熱を利用し、生石灰粒子と反応遅延剤との混合物の温度が反応遅延剤の液化温度以上蒸発温度以下の温度になるように、水の添加量及び添加速度を調節することにより、生石灰粒子の全表面に反応遅延剤を被覆することによって目的とする有効な反応遅延性生石灰を製造することができる。
生石灰粒子の全表面に反応遅延剤を被覆するためには、本発明反応遅延性生石灰の製造方法の要件、すなわち、平均粒径0.005〜5mmの生石灰粒子100重量部に、反応遅延剤を0.3〜3.0重量部添加し撹拌混合後、水を1〜10重量部加えて撹拌混合しなければならず、且つ、気温、添加剤の種類、量等によっては該生石灰粒子の全表面に該反応遅延剤を被覆し得るように、撹拌速度、時間、温度等を組合せ選択する必要がある。選択された撹拌速度、時間、温度等の組合せ条件が適切であることの判定は、製造された反応遅延性生石灰が反応遅延性効果の試験方法によって、30分後も水和反応を起こさないことによって判断することができる。
【0006】
本発明反応遅延性生石灰において、該生石灰粒子の全表面に該反応遅延剤を被覆することは、例えば、顕微鏡で該生石灰粒子の全表面を精査し該生石灰粒子のいずれの表面にも露出がないことを意味するものではない。実質的に該生石灰粒子の全表面が該反応遅延剤で被覆されておればよく、その判定は、後記実施例で示す反応遅延性効果の試験方法によって、テスト開始から30分経過後においても水和反応を起こしていないことによって該生石灰粒子の全表面が該反応遅延剤で被覆されているとすることができる。
所定の量の水を加え、生石灰と反応させ、この反応熱を利用し、生石灰粒子と反応遅延剤との混合物の温度が反応遅延剤の液化温度以上蒸発温度以下の温度になるように、水の添加量及び添加速度を調節する場合、生石灰と水とによる発生反応熱量と、反応遅延剤の液化温度以上蒸発温度以下にまで、生石灰、水及び反応遅延剤の温度を上昇させるのに必要な熱量とのバランスが重要である。これには、投入水量の内、実際に生石灰と反応する量と未反応のまま蒸発し、蒸発熱として損失熱量となる分及び系外への放熱損失熱量が複雑に関与してくる。特定の量比で生石灰に水を加えること及び適切な水の添加速度を選択することによって、本発明の反応遅延性生石灰を製造することができる。
本発明に用いる、水量は生石灰粒子100重量部に対して、1〜10重量部の範囲から選択して使用することができる。好ましくは、水量は生石灰粒子100重量部に対して、3〜6重量部使用することができる。1重量部未満では、反応熱発生量が不足であり、生石灰及び反応遅延剤の温度を反応遅延剤の液化温度にまで上昇させることができず、10重量部を超えると消石灰になるロスが過大になる。
本発明に用いる、水の添加速度は、添加速度が必要以上に遅い場合には、投入水量全量は十分であっても、熱量損失速度が熱量発生速度を低下させ、生石灰及び反応遅延剤の温度を反応遅延剤の液化温度にまで上昇させることができない。気温と反応遅延剤の液化温度との差にもよるが、一般には必要な水量を一度に全量添加することが好ましい。一方、反応遅延剤の液化温度が低い場合には、急激に水を添加すると、温度上昇が激しくなり過ぎることがある。生石灰の温度上昇状況に合わせた添加速度を選択することが望ましい。
【0007】
本発明に用いる、生石灰は、平均粒径0.005〜5mmの生石灰粒子を使用することができる。
本発明に用いる、生石灰は、公知の方法で石灰石を焼成することによって得られる直径30〜60mm程度の原料生石灰を、粉砕機例えば遠心式インぺラーブレーカー等によって、0.2〜5mm程度に粗粉砕し、篩分級機にかけて1次分級することができる。使用する現場の周辺環境によっては、粒径が比較的大きい方が粉塵が立ちにくく好ましい場合もあるので、このような用途に対しては1次分級粉を使用することができる。1次分級粉をそのまま反応遅延性生石灰製造原料として使用する場合には、平均粒径0.5〜5mmの生石灰粒子粉を使用することができる。1次分級粉をさらに平均粒径0.005〜1mm程度に微粉砕し、篩分級機にかけて2次分級したものを使用することができる。2次分級粉を反応遅延性生石灰製造原料として使用する場合には、平均粒径0.005〜0.5mmの生石灰微粒子粉を使用することができる。
本発明に用いる生石灰に、汚染土壌浄化処理等に際して有害物質無害化促進剤として、生石灰粒子100重量部に、重金属無害化促進剤又は油類を含む有害有機物無害化促進剤等を10〜200重量部添加することができる。10重量部より少なければ、無害化効果は不十分であり、200重量部を超えると、本発明に用いる生石灰の吸着効果を阻害する。
本発明に用いる重金属無害化促進剤又は油類を含む有害有機物無害化促進剤は、生石灰と共用して有害物質無害化促進剤の本発明の目的を達成できるものであれば、公知のものを特に制限なく使用することができる。例えば、重金属無害化促進剤としては、ゼオライト、リン酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、カルサイト、アラゴナイト、炭酸マグネシウム、ドロマイト、塩化カルシウム、活性炭、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ、硫化ナトリウム、次亜塩素酸ソーダ、硫酸第一鉄、塩化鉄、ポリ硫酸第二鉄、ゲータイト、ギブサイト、アロフィン、イモゴライト、モンモリロナイト、ハロイサイト等を使用することができる。ゼオライト、リン酸カルシウム等を、特に好適に使用することができる。
本発明に用いる油類を含む有害有機物無害化促進剤は、ゼオライト、リン酸カルシウム、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、カルサイト、アラゴナイト、炭酸マグネシウム、ドロマイト、塩化カルシウム、活性炭、グラファイト、フラーレン、カーボンナノチューブ等を使用することができる。ゼオライト、リン酸カルシウム等を、特に好適に使用することができる。
本発明に用いるセメント系固化材は、生石灰に、汚染土壌浄化処理等に際して固化反応促進剤として、生石灰粒子100重量部に、セメント系固化材を200重量部以下添加することができる。200重量部を超えると本発明に用いる生石灰の吸着効果を阻害する。好ましくは、10〜100重量部を使用することができる。
本発明に用いるセメント系固化材等は、生石灰と共用して固化反応促進剤の本発明の目的を達成できるものであれば、公知のものを特に制限なく使用することができる。例えば、普通ポルトランドセメント、高炉セメント、早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント等を使用することができる。普通ポルトランドセメント、高炉セメント等を、特に好適に使用することができる。
【0008】
本発明に用いる重金属無害化促進剤、油類を含む有害有機物無害化促進剤又はセメント系固化材等は、汚染土壌等の処理時に反応遅延性生石灰中で極めて微細な粒子となって分散し、石灰と共に該添加剤の表面積が増大、活性化して効率的に無害化効果を発現する。有害物質無害化促進剤の原料、例えば、リン酸、シリカ、アルミナ、硫酸カルシウム、酸化鉄、ケイ酸、エーライト、ビーライト、フェライト、アルミネート、ナトリウム又はこれらを含有する物質等を添加した場合も分散反応の作用によって効率よく無害化促進剤に転化し、作用することができる。
【0009】
本発明に用いる重金属無害化促進剤を用いた反応遅延性生石灰は、例えば、カドミウム、鉛、六価クロム、砒素、水銀、アルキル水銀、セレン、フッ素、ホウ素、シアンなどの法定の特定有害物質(重金属等)を全て対象にして使用することができる。これらの特定有害物質、有害重金属等による汚染土壌の無害化や汚染地下水、廃液等の浄化に使用することができる。
本発明に用いる油類を含む有害有機物無害化促進剤を用いた反応遅延性生石灰は、鉱物油、動物油、植物油等の油類のほか、飽和又は不飽和の脂肪族、芳香族、脂環族等のハロゲン化物、燐化合物などによる汚染土壌または汚染地下水の浄化に使用することができる。これらの有害有機物としては、例えば、ジクロロメタン、四塩化炭素、クロロフルオロカーボン類(CFC)、水素化クロロフルオロカーボン類(HCFC)、1,2−ジクロロエタン、1,1−ジクロロエチレン、1,2−ジクロロエチレン、シス1,2−ジクロロエチレン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2−トリクロロエタン、トリクロロエチレン、塩ビモノマー、ベンゼン、1,3−ジクロロプロペンなどの揮発性有機化合物類、ポリクロロベンゼン(PCB)、ポリクロロジベンゾダイオキシン(ダイオキシン)、ペンタクロロフェノール、チウラム、シマジン、チオペンカルプ、ジクロルジフェニルトリクロルエタン(DDT)、有機燐など有害な有機溶剤類、発泡剤、有機合成原料、焼却時発生有害物質、除草剤、殺虫剤、殺菌剤など土壌汚染対策法に関わるものを対象にすることができる。これらの有害有機物は、揮発性であっても不揮発性であっても、本発明に用いる油類を含む有害有機物無害化促進剤を用いた反応性遅延性生石灰によって処理し、無害化することができる。
本発明に用いる、反応遅延剤は、生石灰粒子の全表面に反応遅延剤を被覆できるものであれば、特に制限なく使用することができる。例えば、炭素数10以上の脂肪酸、油脂類、鉱物油等を使用することができる。
本発明に用いる脂肪酸は、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸のいずれも使用することができる。使用できる脂肪酸を例示すると、例えば、ウラリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベへン酸、ラウロレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、オレイン酸、バセニン酸、ゴンドイン酸、エルカ酸、大豆脂肪酸、やし脂肪酸などを挙げることができる。これらの脂肪酸は、1種単独で使用することができ、また、2種以上を組合せて使用することもできる。ステアリン酸、オレイン酸及び大豆脂肪酸を特に好適に使用することができる。
本発明に用いる油脂類は、天然界からの植物油、動物油等をいずれも使用することができる。使用できる油脂を例示すると、例えば、植物油としては、大豆油、やし油、オリーブ油、菜種油等を使用することができる。また、動物油としては、魚油、牛脂、羊油脂等を使用することができる。
本発明に用いる鉱物油は、石油、石炭等の鉱物の精製、分留、分離残渣油等から得られるものであって、高沸点油、パラフィン、瀝青、アスファルト等を使用することができる。
【0010】
本発明に用いる反応遅延剤は、生石灰粒子100重量部に、反応遅延剤を0.3〜3.0重量部、好ましくは、生石灰粒子100重量部に対して、0.5〜2.0重量部使用することができる。0.3重量部未満では、生石灰粒子の全表面を被覆することができず、3.0重量部を超えると、被覆量が過剰で正常な生石灰の反応性を阻害する。
本発明の方法に、補助的に外部からの加熱を併用することができる。例えば、冬季低温の外気中の使用現場で、本発明の方法によって反応遅延性生石灰を製造する場合には補助的に外部からの加熱を併用することができる。
本発明に用いる水は有害物質を含んでいなければ、特に制限なく使用することができる。例えば、市水道水、井水、河川水、湖沼水等を使用することができる。有害物質無害化促進剤の水溶液又は懸濁水を使用することもできる。
本発明に用いる撹拌混合機は強アルカリ性の生石灰に使用可能なものであれば、とくに制限なく使用することができる。連続式であってもよく、バッチ式であってもよい。ミキサー或いは混練機、混合機等の撹拌混合機を使用することができる。常設プラント用に、組み立て式設備を使用することができる。移動可能式設備についても必要に応じて組み立て式設備を使用することができる。本発明の目的及び用途の点で、バッチ式であって、容易に運搬できるものを特に好ましく使用することができる。例えば、現場で使用されるコンクリートミキサーのような撹拌混合機を使用することができる。
【0011】
【実施例】
以下に、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例によりなんら限定されるものではない。
反応遅延性効果の試験方法
反応遅延性生石灰の水和反応の試験は、以下に示す公知の分析方法(特開平9−169551号公報)を使用し、生石灰の水中における水酸基の溶出速度を、4N−塩酸で滴定し、その反応性を知ることができる。
1)試薬
a)フェノールフタレイン溶液(0.2W/1V%エチルアルコール溶液)
b)4N−塩酸(HCL)(f=1)
2)操作方法
2)−1;反応遅延性生石灰試料25gを上皿天秤にて秤量する。
2)−2;純水を500mLのビーカーに取り、30〜32℃にヒーターで加熱する。
2)−3;200mLビューレットに4N−塩酸を満たす。
2)−4;2)−2の純水をメスシリンダー(500mL)にて500mL採取し、2000mLポリジョッキに入れ、少量のフェノールフタレイン指示薬を加え、撹拌する。(水温30℃に調整)
撹拌条件は、3枚羽根プロペラ直径60mm、幅10mm、羽根の傾斜45度、プロペラ軸回転数350回/分である。
2)−5;反応遅延性生石灰試料25gを2000mLポリジョッキに入れると同時にストップウォッチをスタートさせる。
2)−6;2)−5の溶液の赤色が消えないように注意しながら、4N−塩酸を滴下する。この操作を維持し、所定経過時間ごとに消費した4N−塩酸の量(mL)を求め、積算する。
水和性=4N−塩酸の消費量(mL)×4N−塩酸のファクターである。
投入直後から所定経過時間ごとに、水面に浮上する状況及び水和反応状況を調べ、原料生石灰粒子粉に対する反応遅延剤の被覆効果を判定することができる。反応遅延性生石灰粒子粉がすべて水面に浮上し、テスト開始から30分経過後においても水和反応を起こしていないことによって該生石灰粒子の全表面が該反応遅延剤で被覆されていると判定することができる。
各実施例とも、撹拌混合機は全容量100L、実験容量60Lのプラネタリターボミキサー[大平洋機工(株)製]を使用し、回転速度は70回/分で行った。
【0012】
実施例1
室温25℃で、室温と同温度の撹拌混合機に、生石灰粒子粉(平均粒径0.3mm)30重量部とステアリン酸0.3重量部(生石灰粒子粉の1重量%)を投入し、3分間撹拌しながら混合した。その後、水1.4重量部(生石灰粒子粉の4.6重量%)を一度に添加し、撹拌しながら混合を継続した。3分後混合物の温度が80度Cレベルに上昇した時点で、ステアリン酸は急速に溶解して、最高温度は95℃に達し、ステアリン酸は生石灰粒子粉と完全に混和した。水添加後10分間撹拌を継続した。この間に、生石灰と反応した分以外の水は水蒸気になって蒸発した。得られた、ステアリン酸によって被覆された生石灰粒子粉を前述の反応遅延性効果の試験方法によって評価した。得られた反応遅延性生石灰粒子粉は、投入後すべて水面に浮上し、5、10、20、30分後、1時間後、5時間後、24時間後も水和反応によって水がアルカリ性になることはなく、生石灰粒子の全表面が反応遅延剤によって被覆された良好な反応遅延性生石灰となったことが確認された。
実施例2
室温10℃で、室温と同温度の撹拌混合機に、生石灰粒子粉(平均粒径0.1mm)30重量部とステアリン酸0.6重量部(生石灰粒子粉の2重量%)を投入し、3分間撹拌混合した。その後、水1.8重量部(生石灰粒子粉の6重量%)を一度に添加した。5分後混合物の温度が80度Cレベルに上昇した時点で、ステアリン酸は急速に溶解し生石灰粒子粉と完全に混和した。水添加後10分間撹拌混合を継続した。得られた、ステアリン酸によって被覆された生石灰粒子粉を前述の反応遅延性効果の試験方法によって評価した。生石灰粒子粉は全て水面に浮上し、5、10、20、30分後、1時間後、5時間後、24時間後も水和反応によって水がアルカリ性になることはなく、生石灰粒子の全表面が反応遅延剤によって被覆された良好な反応遅延性生石灰となったことが確認された。
【0013】
実施例3
室温25℃で、室温と同温度の撹拌混合機に、生石灰粒子粉(平均粒径1.0mm)30重量部とオレイン酸0.3重量部(生石灰粒子粉の1重量%)を投入し、3分間撹拌混合した。その後、水1.05重量部(生石灰粒子粉の3.5重量%)を一度に添加した。3分後混合物の温度が最高温度84℃に上昇した時点で、オレイン酸は生石灰粒子粉と完全に混和した。水添加後10分間撹拌混合を継続した。得られた、オレイン酸によって被覆された生石灰粒子粉を前述の反応遅延性効果の試験方法によって評価した。得られた反応遅延性生石灰粒子粉は、投入後すべて水面に浮上し、5、10、20、30分後、1時間後、5時間後、24時間後も水和反応によって水がアルカリ性になることはなく、生石灰粒子の全表面が反応遅延剤によって被覆された良好な反応遅延性生石灰となったことが確認された。
実施例4
室温10℃で、室温と同温度の撹拌混合機に、生石灰粒子粉(平均粒径0.5mm)30重量部とオレイン酸0.6重量部(生石灰粒子粉の2重量%)を投入し、3分間撹拌混合した。その後、水1.5重量部(生石灰粒子粉の5重量%)を一度に添加した。3分後混合物の温度が最高温度80℃に上昇した時点で、オレイン酸は生石灰粒子粉と完全に混和した。水添加後10分間撹拌混合を継続した。得られた、オレイン酸によって被覆された生石灰粒子粉を前述の反応遅延性効果の試験方法によって評価した。得られた反応遅延性生石灰粒子粉は、投入後すべて水面に浮上し、5、10、20、30分後、1時間後、5時間後、24時間後も水和反応によって水がアルカリ性になることはなく、生石灰粒子の全表面が反応遅延剤によって被覆された良好な反応遅延性生石灰となったことが確認された。
【0014】
実施例5
室温25℃で、室温と同温度の撹拌混合機に、生石灰粒子粉(平均粒径1.0mm)30重量部と大豆脂肪酸0.6重量部(生石灰粒子粉の2重量%)を投入し、3分間撹拌混合した。その後、水1.5重量部(生石灰粒子粉の5重量%)を一度に添加した。3分後混合物の温度が最高温度87℃に上昇した時点で、大豆脂肪酸は生石灰粒子粉と完全に混和した。水添加後10分間撹拌混合を継続した。得られた、大豆脂肪酸によって被覆された生石灰粒子粉を前述の反応遅延性効果の試験方法によって評価した。得られた反応遅延性生石灰粒子粉は、投入後すべて水面に浮上し、5、10、20、30分後、1時間後、5時間後、24時間後も水和反応によって水がアルカリ性になることはなく、生石灰粒子の全表面が反応遅延剤によって被覆された良好な反応遅延性生石灰となったことが確認された。
実施例6
室温10℃で、室温と同温度の撹拌混合機に、生石灰粒子粉(平均粒径0.3mm)30重量部と大豆脂肪酸0.6重量部(生石灰粒子粉の2重量%)を投入し、3分間撹拌混合した。その後、水1.8重量部(生石灰粒子粉の6重量%)を一度に添加した。3分後混合物の温度が最高温度85℃に上昇した時点で、大豆脂肪酸は生石灰粒子粉と完全に混和した。水添加後10分間撹拌混合を継続した。得られた、大豆脂肪酸によって被覆された生石灰粒子粉を前述の反応遅延性効果の試験方法によって評価した。得られた反応遅延性生石灰粒子粉は、投入後すべて水面に浮上し、5、10、20、30分後、1時間後、5時間後、24時間後も水和反応によって水がアルカリ性になることはなく、生石灰粒子の全表面が反応遅延剤によって被覆された良好な反応遅延性生石灰となったことが確認された。
実施例7
室温25℃で、室温と同温度の撹拌混合機に、生石灰粒子粉(平均粒径0.5mm)30重量部と融点60℃のパラフィン粉末0.3重量部(生石灰粒子粉の1重量%)を投入し、3分間撹拌しながら混合した。その後、水1.4重量部(生石灰粒子粉の4.6重量%)を一度に添加し、撹拌しながら混合を継続した。3分後混合物の温度が80度Cレベルに上昇した時点で、パラフィンは急速に溶解して、混合物の最高温度は95℃に達し、パラフィンは生石灰粒子粉と完全に混和した。水添加後10分間撹拌を継続した。得られた、パラフィンによって被覆された生石灰粒子粉を前述の反応遅延性効果の試験方法によって評価した。得られた反応遅延性生石灰粒子粉は、投入後すべて水面に浮上し、5、10、20、30分後、1時間後、5時間後、24時間後も水和反応によって水がアルカリ性になることはなく、生石灰粒子の全表面が反応遅延剤によって被覆された良好な反応遅延性生石灰となったことが確認された。
【0015】
実施例8
室温5℃で、撹拌混合機の外側にシーズヒーターを巻き電熱加熱によって、内部温度が25℃になるように保温した。同温度の生石灰粒子粉(平均粒径1.0mm)30重量部と融点100℃の鉱物油ピッチ0.6重量部(生石灰粒子粉の2重量%)を投入し、3分間撹拌しながら混合した。その後、水1.8重量部(生石灰粒子粉の6重量%)を一度に添加し、撹拌しながら混合を継続した。5分後混合物の温度が105℃レベルに上昇した時点で、鉱物油ピッチは急速に溶解して、生石灰粒子粉と完全に混和した。水添加後10分間撹拌を継続した。得られた、鉱物油ピッチによって被覆された生石灰粒子粉を前述の反応遅延性効果の試験方法によって評価した。得られた反応遅延性生石灰粒子粉は、投入後すべて水面に浮上し、5、10、20、30分後、1時間後、5時間後、24時間後も水和反応によって水がアルカリ性になることはなく、生石灰粒子の全表面が反応遅延剤によって被覆された良好な反応遅延性生石灰となったことが確認された。
実施例9
室温25℃で、室温と同温度の撹拌混合機に、生石灰粒子粉(平均粒径0.3mm)30重量部にリン酸カルシウム15重量部(生石灰粒子粉の50重量%)を加え、3分間撹拌しながら混合した。これに、ステアリン酸0.6重量部(生石灰粒子粉の2重量%)を投入し、30秒間撹拌しながら混合した。その後、水1.4重量部(生石灰粒子粉の4.6重量%)を一度に添加し、撹拌しながら混合を継続した。3分後混合物の温度が80℃レベルに上昇した時点で、ステアリン酸は急速に溶解して、最高温度は95℃に達し、ステアリン酸は生石灰粒子粉と完全に混和した。水添加後10分間撹拌を継続した。この間に、生石灰と反応した分以外の水は水蒸気になって蒸発した。得られた、ステアリン酸によって被覆された生石灰粒子粉を前述の反応遅延性効果の試験方法によって評価した。得られた反応遅延性生石灰粒子粉は、投入後すべて水面に浮上し、5、10、20、30分後、1時間後、5時間後、24時間後も水和反応によって水がアルカリ性になることはなく、生石灰粒子の全表面が反応遅延剤によって被覆された良好な反応遅延性生石灰となったことが確認された。
鉛150ppm含有する汚染土壌1000kgを生コンミキサー車ミキシングドラムに入れ、本実施例によって得られた反応遅延性生石灰150kgを添加し、30分間撹拌混合処理した後取り出し、防水シートをかけて48時間放置した。得られた土壌から、偏りのないように複数点分取したサンプルを集め1kgとし、これに市水2kgを加えて十分撹拌抽出して水相を分離した。これを2回繰り返して合一した水相を、鉛分析の定法ジチゾン4塩化炭素溶液比色法によって分析したところ鉛は検出されなかった。本発明によって製造された反応遅延性生石灰による撹拌混合処理と放置時間によって、原汚染土壌に含有されていた鉛の全量が、本発明反応遅延性生石灰に用いる有害物質無害化促進剤リン酸カルシウムを含む反応遅延性生石灰によって捕捉結合化され水相には溶出しない状態になったことを示している。すなわち、本実施例による原汚染土壌の処理を行えば、雨水や地下水等によって原汚染土壌中の鉛が流出することはない。
【0016】
実施例10
実施例9におけるリン酸カルシウム15重量部(生石灰粒子粉の50重量%)に換えて、ゼオライト15重量部(生石灰粒子粉の50重量%)とした他は、実施例9と同じ条件で実験し、評価した結果、実施例9と同様に良好な反応遅延性生石灰を得た。本実施例によって得られた反応遅延性生石灰を、実施例9と同様に、鉛150ppmを含有する汚染土壌に15重量%添加処理し、分析した結果、鉛は検出されなかった。
実施例11
実施例9におけるリン酸カルシウム15重量部(生石灰粒子粉の50重量%)に換えて、ポルトランドセメント30重量部(生石灰粒子粉の100重量%)及びステアリン酸を0.9重量部(生石灰粒子粉の3重量%)とした他は、実施例9と同じ条件で実験し、水銀は原子吸光分析法によって評価した結果、実施例9と同様に良好な反応遅延性生石灰を得た。本実施例によって得られた反応遅延性生石灰を、水銀150ppmを含有する汚染土壌に15重量%添加処理し、分析した結果、水銀は検出されなかった。
【0017】
比較例1
室温10℃で、室温と同温度の、実施例1で使用した撹拌混合機に、生石灰粒子粉(平均粒径0.3mm)30重量部とステアリン酸0.3重量部(生石灰粒子粉の1重量%)を投入し、3分間70回/分の回転速度で撹拌混合した。その後、水を最初0.9重量部添加し、1分後ごとに0.3重量部2回、0.5重量部を1回、合計水量2.0重量部(生石灰粒子粉の6.7重量%)添加した。混合物の温度はステアリン酸が液化するまでは上昇せず、水添加後10分間撹拌混合を継続したがステアリン酸は生石灰粒子粉と完全には混和しなかった。得られた、ステアリン酸によって被覆された生石灰粒子粉を前述の反応遅延性効果の試験方法によって評価した。生石灰粒子粉は水面に浮上せず、1分後には、水和反応により水相はpH試験紙によってアルカリ性になったことを示し、5分後には4N−塩酸での滴定値は160mLであり、反応遅延剤無添加の場合とほぼ同水準に達し、良好な反応遅延性生石灰は得られなかった。
比較例2
室温25℃で、室温と同温度の、実施例1で使用した撹拌混合機に、生石灰粒子粉(平均粒径1.0mm)30重量部とステアリン酸0.75重量部(生石灰粒子粉の2.5重量%)を投入し、2分間35回/分の回転速度で撹拌しながら混合した。その後、水0.27重量部(生石灰粒子粉の0.9重量%)を30秒間で添加し、35回/分の回転速度で撹拌しながら混合を継続した。5分後混合物の温度が65度Cレベルに上昇した時点で、ステアリン酸は溶解し始め、最高温度は75℃に達した。ステアリン酸は目視的には消失した。水添加後5分間撹拌を継続した。得られたステアリン酸によって被覆された生石灰粒子粉を前述の反応遅延性効果の試験方法によって評価した。水中に投じた反応遅延性生石灰粒子粉は約半量は水面に浮上せず、1分後には、水和反応により水相はフェノールフタレンpH試験紙によってアルカリ性になったことを示し、5分後には4N−塩酸での滴定値は80mLであり、反応遅延剤無添加の場合の約50%の水準に達し、生石灰粒子の表面は部分的に反応遅延剤によって被覆されているのみであり、良好な反応遅延性生石灰は得られなかった。本比較例によって得られた反応遅延性生石灰を、実施例9と同様に、鉛150ppmを含有する汚染土壌に15重量%添加処理し、分析した鉛の検出量から逆算して、原汚染土壌に含有されていた鉛の97重量%が水相に溶出したことを示した。
【0018】
比較例3
室温25℃で、室温と同温度の、実施例1で使用した撹拌混合機に、生石灰粒子粉(平均粒径1.0mm)30重量部にリン酸カルシウム3重量部(生石灰粒子粉の10重量%)を加え、2分間撹拌しながら混合した。これに、ステアリン酸0.075重量部(生石灰粒子粉の0.25重量%)を投入し、2分間35回/分の回転速度で撹拌しながら混合した。その後、水0.27重量部(生石灰粒子粉の0.9重量%)を30秒間で添加し、35回/分の回転速度で撹拌しながら混合を継続した。3分後混合物の温度が65℃レベルに上昇した時点で、ステアリン酸は溶解して消失し始め、最高温度は75℃に達し、ステアリン酸は生石灰粒子粉と混和した。水添加後5分間撹拌を継続した。この間に、生石灰と反応した分以外の水は水蒸気になって蒸発した。得られたステアリン酸によって被覆された生石灰粒子粉を前述の反応遅延性効果の試験方法によって評価した。水中に投じた反応遅延性生石灰粒子粉は約半量は水面に浮上せず、1分後には、水和反応により水相はpH試験紙によってアルカリ性になったことを示し、5分後には4N−塩酸での滴定値は100mLであり、反応遅延剤無添加の場合の約60%の水準に達し、生石灰粒子の表面は部分的に反応遅延剤によって被覆されているのみであり、良好な反応遅延性生石灰は得られなかった。本比較例によって得られた反応遅延性生石灰を、実施例9と同様に、鉛150ppmを含有する汚染土壌に15重量%添加処理し、分析した鉛の検出量から逆算して、原汚染土壌に含有されていた鉛の82重量%が水相に溶出したことを示した。
【0019】
【発明の効果】
汚染土壌等の処理に必要な反応遅延性生石灰を、使用する現場で、簡易な設備で、特に外部からの加熱の必要なく、その現場での用途に適した反応遅延剤を被覆して、又は、その現場での用途に適した添加剤等を加えて、その現場に必要量のみ安価に製造することができる。コスト問題が原因で放置されている、処理必要な有害物質や汚染土壌等の無害化ができる。
Claims (5)
- 平均粒径0.005〜5mmの生石灰粒子100重量部に、反応遅延剤を0.3〜3.0重量部添加し撹拌混合後、水を1〜10重量部加えて撹拌混合し、該生石灰粒子の実質的全表面を該反応遅延剤によって被覆することにより、被覆された生石灰粒子を水に投入したとき、全てが水面に浮上し、投入直後から24時間経過後においても水和反応を起こさない生石灰粒子を形成することを特徴とする有害物質無害化処理用反応遅延性生石灰の製造方法。
- 水を1〜10重量部加えて撹拌混合する際、生石灰粒子と反応遅延剤との混合物の温度が反応遅延剤の液化温度以上蒸発温度以下の温度になるように、水の添加量及び添加速度を調節することを特徴とする請求項1記載の有害物質無害化処理用反応遅延性生石灰の製造方法。
- 反応遅延剤として脂肪酸又は油脂又は鉱物油を使用することを特徴とする請求項1又は2記載の有害物質無害化処理用反応遅延性生石灰の製造方法。
- 平均粒径0.005〜5mmの生石灰粒子100重量部に、有害物質無害化促進剤を10〜200重量部添加して撹拌混合した後、反応遅延剤を0.3〜3.0重量部添加し撹拌混合後、水を1〜10重量部加えて撹拌混合し、該生石灰粒子の実質的全表面を該反応遅延剤によって被覆することを特徴とする請求項1記載の有害物質無害化処理用反応遅延性生石灰の製造方法。
- 平均粒径0.005〜5mmの生石灰粒子100重量部に、200重量部以下のセメント系固化材を添加することを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の有害物質無害化処理用反応遅延性生石灰の製造方法。
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