JP3985335B2 - スピーカ用エッジおよびこれを用いたスピーカ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は各種音響機器に使用されるスピーカに使用されるスピーカ用エッジおよびこれを用いたスピーカに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来の技術を図4のスピーカの断面図、図5(a)の布基材を説明する基材の拡大上面概念図、図5(b)のスピーカ用エッジとした時の拡大斜視概念図により説明する。同図によると、1は磁気回路であり、中心に円柱状のセンターポール1bを有したボトムプレート1aと、この上に配置されたリング状マグネット1cと、トッププレート1dとで構成し、上記トッププレート1dの内周とセンターポール1bで磁気空隙1eを形成している。
【0003】
2は上記磁気回路1の上記トッププレート1d上に接合されたフレームであり、このフレーム2にはボイスコイル6の巻線部が磁気空隙1eの中心にはめ込まれるように上記ボイスコイル6の筒状ボビンに内周が接合されたダンパー5の外周が接合固着されている。
【0004】
3は中央の透孔で上記ボイスコイル6の筒状ボビンと接着された振動板であり、この振動板3の外周のエッジ4は上記フレーム2に接着固定されている。
【0005】
なお、7はダストキャップ、8はガスケットである。以上のように構成されたスピーカについて、以下その動作を説明する。磁気空隙1eの中央に位置した平行磁界中のボイスコイル6は電気信号入力が印加されるとフレミングの左手の法則により上下方向に力を発生する。その力はボイスコイル6よりその筒状ボビンを経て振動板3へと伝わり、前面の空気を振動させ音を発生する。
【0006】
上記スピーカにおいては一般的に上記エッジ4、ダンパー5が布基材で構成され、エッジ4においては図5(a)に示す平織りの木綿基材4aに賦形材として熱硬化性樹脂であるフェノール樹脂を含浸またはコーティングし、更に通気性防止のために目止め材としてSBR,NBR等のゴム系樹脂をコーティング加工し、加熱加圧成形して所望の図5(b)の形状を得るものであり、原糸を綿に代えてアラミド繊維、フェノール繊維またはこれらの混紡糸を用いる場合もあった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の布基材を用いたものはいずれにおいても、柔軟性に欠けるものであり、振幅の飽和点(変曲点)が低く、飽和付近以上の入力を加えた場合はエッジ4からの異常音の発生や、歪みが増大し急激な音質劣化をきたすという課題があった。
【0008】
本発明は上記課題を解決した柔軟性を有したスピーカ用布基材からなるエッジを提供し、リニアリティに優れ、且つ高耐入力での最低共振周波数(F0)の低下率が少なく高信頼性のスピーカを実現するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明のスピーカ用エッジは、クリンプ加工した絹単糸からなる布地でスピーカ用布基材を構成するものであり、クリンプ加工した絹単糸から形成したことにより、スピーカ用布基材はそのたるみにより伸縮性を有することになり、スピーカ用エッジとしたときにはこの伸びにより急激な飽和を緩和すると共に従来よりリニアリティに優れ、スピーカ振動系の飽和付近以上での異常音も発生しにくいため耐入力性も向上し、且つ高耐入力での最低共振周波数(F0)の低下率が少なく高信頼性で且つ高音質なスピーカを実現するものである。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の請求項1に記載の発明は、少なくともクリンプ加工した絹単糸からなる布地で形成されたスピーカ用布基材に、熱硬化性樹脂と柔軟性を有したゴム質とを含浸又はコーティングし、トラック形、略矩形、長円形、楕円形のいずれかの形状に加熱加圧成形したスピーカ用エッジであり、クリンプ加工した単糸によるたるみのために布基材に伸縮性を付与し、柔軟性に優れ、布基材の伸びにより急激な飽和を緩和すると共に従来よりリニアリティに優れ、スピーカ振動糸の飽和付近以上での異常音も発生しにくいため耐入力性も向上し、且つ高耐入力での最低共振周波数(F0)の低下率が少なく高信頼性で且つ高音質なスピーカの実現を可能とするものである。
【0011】
本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のスピーカ用エッジのスピーカ用布基材を少なくとも略放射状方向の糸をクリンプ加工を施した糸で形成したものであり、布基材の伸縮方向を略放射状方向に特定でき、周方向には比較的伸縮しないので、ローリングし難く、トラック形状、矩形、長円、楕円形等のスピーカに適したものとなるものである。
【0012】
本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のスピーカ用布基材の単糸の素材を絹と合成繊維の混紡材あるいは混撚材としたものであり、伸縮性のあるスピーカ用エッジの提供を可能とするものである。
【0013】
本発明の請求項4に記載の発明は、磁気空隙を設けた磁気回路と、この磁気回路に接合されたフレームと、上記磁気空隙にはめ込まれたボイスコイルと、このボイスコイルに内周が接合され外周が上記フレームに接合されたスピーカ用ダンパーと、上記ボイスコイルに内周が接合され外周がスピーカ用エッジを介して上記フレームに接合された振動板とで構成されると共に、少なくとも上記スピーカ用エッジとして請求項1または請求項2または請求項3のいずれか1つに記載のスピーカ用エッジを用いてスピーカを形成するものであり、柔軟性を有するスピーカ用エッジを用いることによって耐久性または耐入力性または高耐入力での最低共振周波数(F0)の低下率が少ない高信頼性で且つ高品質なスピーカが提供できるものである。
【0014】
以下、本発明のスピーカ用エッジの一実施の形態について図1〜図3により説明する。なお、スピーカの構成は従来技術と同様であるので説明は省略して説明する。
【0015】
(実施の形態1)
図1(a)は、本発明のスピーカ用布基材の一実施の形態であるエッジ基材の概略拡大図であり、図1(b)は同スピーカ用エッジに加工したときの拡大斜視概略図であり、図2は直線性を示す特性図である。
【0016】
同図によると、4bはクリンプ加工した絹単糸4baを平織りした布基材であり、熱硬化性樹脂であるフェノール系樹脂と柔軟性を有したゴム質とを含浸又はコーティングして乾燥させ、所望の形状に加熱加圧成形し、図1(b)のごとくスピーカ用エッジ4を形成したものである。
【0017】
なお、クリンプ加工する絹単糸4baの素材は絹と合成繊維の混紡材であっても混撚材であってもよい。
【0018】
以上のように構成されたスピーカ用布基材からなるスピーカ用エッジ4と、従来のスピーカ用エッジを図4のスピーカに組み込んで入力と振幅を比較した結果を図2に示す。
【0019】
図2により明らかなように本実施の形態のスピーカ用エッジは従来のスピーカ用エッジよりスピーカ振動系の直線性に優れ、且つゆるやかな飽和カーブとなっているため急激な音質と性能劣化を防げることが判り、スピーカ振動系の飽和付近以上での異常音も発生しにくく、耐入力性が向上し、且つ高耐入力での最低共振周波数(F0)の低下率が少なく高信頼性で且つ高音質なスピーカを提供することができる。
【0020】
これは、クリンプ加工した絹単糸4baを用いた布基材4bのクリンプ加工によって糸自体が従来のものより伸縮性を有するため、布自体に伸縮性を与え、急激な振動系の直線性の飽和を緩和すると共に、従来より直線性に優れたものとすることができたためと考えられる。
【0021】
なお、上記実施の形態のように伸縮性のあるスピーカ用エッジ4の提供によってトラック形、略矩形、長円形、楕円形等の変形形状のスピーカに用いたときは、そのスピーカ用エッジ4のコーナー部に働く引っ張りと収縮等の不均一な力も吸収する優れたスピーカ用エッジ4となるものである。
【0022】
(表1)に本実施の形態の展開例としてクリンプ加工した絹単糸4baを用いた布基材としての特性を示す。
【0023】
【表1】
【0024】
(表1)からも明らかなように、スピーカ用エッジへの成形加工前の伸び率、破断強度、重量を測定したところ、従来のものに比較して3.7倍の伸び率と約15%の軽量化が得られ、耐入力と音圧の大幅な性能向上が図れるものと考えられる。
【0025】
(実施の形態2)
図3(a)は本発明の他の実施の形態であるスピーカ用エッジの断面図であり、図3(b)は同上面図である。
【0026】
同図によると、4は放射方向に配置したクリンプ加工した絹単糸4baと周方向に配置した従来の単糸4bbを平織りした布基材(図示せず)にフェノール系樹脂および柔軟性を有したゴム質とを含浸又はコーティングし乾燥し、所望の形状に加熱加圧成形したスピーカ用エッジである。
【0027】
なお、クリンプ加工する絹単糸4baの素材は天然繊維、又は天然繊維と合成繊維の混紡材であっても混撚材であってもよい。
【0028】
上記実施の形態のスピーカ用エッジ4は実施の形態1からも明らかなようにクリンプ加工した放射方向に伸縮性を有し、周方向には伸縮性を有さないスピーカ用エッジとしたものである。
【0029】
上記構成によって従来のスピーカ用エッジより直線性が良好であり、なおさらに、周方向に伸縮性を有さないためにローリングが規制されるトラック形、略矩形、長円形、楕円形等の変形形状のスピーカに用いたときに有用な優れたスピーカ用エッジ4の提供が可能となるものである。
【0030】
以上のように上記各実施の形態において述べてきたように、本発明のスピーカ用エッジは、伸縮性のあるクリンプ加工した絹単糸からなる布地を基材とし、加熱成形後にもクリンプ加工した絹単糸から形成された布基材には、クリンプ加工状態が残存しそのたるみにより伸縮性を有することになるので、仮に伸びの無い単糸を用いた基材であっても伸縮性を有することになり、スピーカ用エッジとして広範囲に応用されるものであり、耐入力性、直線性に優れ、また高入力時でも最低共振周波数(F0)の低下率の少ない高信頼性のスピーカの提供をも可能とするものである。
【0031】
【発明の効果】
以上のように本発明のスピーカ用エッジは、クリンプ加工した絹単糸を用いて形成したため、伸縮性に優れたスピーカ用エッジの提供を可能とし、優れた音響特性のスピーカの提供をも可能とするものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 (a)本発明のスピーカ用エッジの一実施の形態であるエッジ基材の概略拡大図
(b)同スピーカ用エッジに加工したときの拡大斜視概略図
【図2】 同直線性を示す特性図
【図3】 (a)同他の実施の形態であるスピーカ用エッジの断面図
(b)同上面図
【図4】 従来のスピーカの断面図
【図5】 (a)同布基材を説明する基材の拡大上面概念図
(b)同スピーカ用エッジとした時の拡大斜視概念図
【符号の説明】
1 磁気回路
2 フレーム
3 振動板
4 スピーカ用エッジ
4b スピーカ用布基材
4ba クリンプ加工した絹単糸
4bb 単糸
5 スピーカ用ダンパー
6 ボイスコイル
Claims (4)
- 少なくともクリンプ加工した絹単糸からなる布地で形成されたスピーカ用布基材に、熱硬化性樹脂と柔軟性を有したゴム質とを含浸又はコーティングし、トラック形、略矩形、長円形、楕円形のいずれかの形状に加熱加圧成形したスピーカ用エッジ。
- 請求項1に記載のスピーカ用エッジであって略放射状方向の糸にクリンプ加工を施した糸で形成したスピーカ用エッジ。
- 単糸の素材が絹と合成繊維の混紡材あるいは混撚材である請求項1または請求項2に記載のスピーカ用エッジ。
- 磁気空隙を設けた磁気回路と、この磁気回路に接合されたフレームと、上記磁気空隙にはめ込まれたボイスコイルと、このボイスコイルに内周が接合され外周が上記フレームに接合されたスピーカ用ダンパーと、上記ボイスコイルに内周が接合され、外周がスピーカ用エッジを介して上記フレームに接合された振動板とで構成されると共に、少なくとも上記スピーカ用エッジとして請求項1または請求項2または請求項3のいずれか1つに記載のスピーカ用エッジを用いたスピーカ。
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