JP3984616B2 - 新規ポリエステル系プラスチック分解酵素およびその酵素をコードするポリヌクレオチド - Google Patents

新規ポリエステル系プラスチック分解酵素およびその酵素をコードするポリヌクレオチド Download PDF

Info

Publication number
JP3984616B2
JP3984616B2 JP2005014761A JP2005014761A JP3984616B2 JP 3984616 B2 JP3984616 B2 JP 3984616B2 JP 2005014761 A JP2005014761 A JP 2005014761A JP 2005014761 A JP2005014761 A JP 2005014761A JP 3984616 B2 JP3984616 B2 JP 3984616B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
enzyme
plastic
amino acid
sequence
polynucleotide
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2005014761A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2006197883A (ja
Inventor
敏明 神戸
ゆき枝 茂野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Japan Science and Technology Agency
National Institute of Japan Science and Technology Agency
Original Assignee
Japan Science and Technology Agency
National Institute of Japan Science and Technology Agency
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Japan Science and Technology Agency, National Institute of Japan Science and Technology Agency filed Critical Japan Science and Technology Agency
Priority to JP2005014761A priority Critical patent/JP3984616B2/ja
Priority to PCT/JP2006/300942 priority patent/WO2006078011A1/ja
Priority to EP20060712158 priority patent/EP1849859B1/en
Priority to US11/795,578 priority patent/US7960154B1/en
Priority to CA 2595803 priority patent/CA2595803A1/en
Publication of JP2006197883A publication Critical patent/JP2006197883A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3984616B2 publication Critical patent/JP3984616B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)

Description

発明の詳細な説明
発明の属する技術分野
本発明は、新規ポリエステル系プラスチック分解酵素およびその酵素をコードするポリヌクレオチド、該酵素もしくは該酵素を発現している微生物を利用したプラスチックの分解方法またはモノマーの回収方法に関する。
従来の技術
近年地球環境保護の観点から、持続可能な循環型社会システムの構築が最重要課題とされている。このような社会情勢の中、プラスチック廃棄物の再資源化技術の開発にも大きな力が注がれている。プラスチック廃棄物の再資源化技術は、物理的方法(サーマルリサイクル、マテリアルリサイクル)と化学的方法(ケミカルリサイクル)の2つに大別される。
ケミカルリサイクルは近年急速に普及しつつある生分解性プラスチックの処理方法としても有効である。しかし、生分解性プラスチックは今後全プラスチック生産量の半分近くを占めるともいわれているが、生分解性プラスチックのケミカルリサイクルを考えた場合、酸やアルカリなどの一般的な化学分解ではモノマーも混合物で得られてしまい、これを精製するには多くのプロセスを必要とし、コストの面できわめて不利である。
この問題点を解決するため、プラスチックのケミカルリサイクルに酵素を用いた新プロセスが提案されている。酵素を用いることによるメリットとしては、反応が常温常圧で行えるため、エネルギーコストがかからず、環境汚染の原因となる有機溶媒も必要としない点も重要ではあるが、酵素の持つ基質特異性が最も優れた点であると考えている。
酵素を用いたリサイクルを確立するためには、高い基質特異性を持った、強力なプラスチック分解酵素の存在が大前提となる。特にプラスチック廃棄物は実際にはチップやブロックのような固体で排出されるため、特に固体を分解する酵素が重要である。
生分解性プラスチックは市販のリパーゼ等によっても分解されるが、その分解性は極めて低く、常識外の大量の酵素が必要となる。一方、これまで報告されている生分解性プラスチック分解菌のほとんどは、エマルジョンは分解可能であるが、フィルムやペレット状の固体を直接分解できない(非特許文献1)。
Kim, D. Y., and Rhee, Y. H.: Biodegradation of microbial and synthetic polyesters by fungi. Appl. Microbiol. Biotechnol., 61,300-308 (2003).
これまでに知られているポリエステル系の固体プラスチック分解酵素としては、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)を分解する酵素、PHAデポリメラーゼが挙げられる。PHAは微生物の生産する天然ポリエステルであり、これを分解してエネルギー生産を行う代謝系が存在するのは当然である。しかし、その反面本酵素はPHA以外の他のポリエステル系プラスチックに対する反応性はほとんど無い。
非天然型のプラスチック分解菌由来のものとしては、エステル系ポリウレタンの分解酵素が知られている。本酵素はComamonas acidovorans由来で、エステル系固体ポリウレタンのエステル結合を切断し、水溶性モノマーを生成する(非特許文献2、特許文献1)。
Akutsu, Y., Nakajima-Kambe, T., Nomura, N., and Nakahara, T.: Purification and properties of a polyester polyurethane-degrading enzyme from Comamonas acidovorans TB-35. Appl. Environ. Microbiol., 64, 62-67 (1998) 特開平09-224664 ポリウレタンエステラーゼの精製方法及びエステル系ポリウレタンの分解方法 (出願人:スズキ自動車、発明者:中島敏明他)
ポリ乳酸では放線菌Amycolatopsis sp. K104-1株由来の分解酵素が報告されているが、フィルムの分解には48時間以上かかる上、PBSAの分解は検討されていない(非特許文献3)。また、Peanibacillus amylolyticus TB-13株由来のポリ乳酸分解酵素(非特許文献4、特許文献2)はポリブチレンサクシネート−co−アジペート(PBSA)を分解可能であるが、その分解もあまり高くなく、エマルジョンの分解にとどまっている。
Nakamura K, Tomita T, Abe N, and Kamio Y.: Purification and characterization of an extracellular poly(L-lactic acid) depolymerase from a soil isolate, Amycolatopsis sp. strain K104-1.Appl. Environ. Microbiol.. 67, 345-353 (2001) Akutsu-Shigeno, Y., Teeraphatpornchai, T., Teamtisong, T., Nomura, N., Uchiyama, H., Nakahara, T., and Nakajima-Kambe, T.:Cloning and sequencing of a poly(DL-lactic acid) depolymerase gene from Peanibacillus amylolyticus strain TB-13 and its functional expression in Escherichia coliAppl. Environ.Microbiol., 69, 2498-2504 (2003) 特開2004-166540 新規なプラスチック分解酵素および該酵素をコードする遺伝子(出願人:科学技術振興機構、発明者:中島敏明他)
一方、ポリブチレンサクシネート−co−アジペート(PBSA)については、分解菌は数多く報告されており、カビについては一部酵素が精製されているが、細菌では酵素の精製例はない。PBSA分解酵素、および遺伝子のクローニングに関しては、Acidovolax delafieldii BS-3株で報告されているが(特許文献3、非特許文献5)、その分解性は弱く、エマルジョンのみでフィルムの分解はできない。
特開平11-225755 生分解性ポリマー分解酵素及びその製造方法(出願人:三菱化学、発明者:中島敏明他) Uchida, H., Y. Shigeno-Akutsu, N. Nomura, T. Nakahara, and Nakajima-Kambe, T.: Cloning and Sequence Analysis of Poly(tetramethylene succinate) Depolymerase from Acidovorax delafieldii Strain BS-3. J. Biosci. Bioeng., 93, 245-247 (2002)
以上のように、フィルム状またはペレット状のプラスチックを分解できる微生物に関する報告は限られており、さらにその酵素についてはあまり知られていない。酵素を用いたリサイクルを確立するためには、固体状プラスチックを迅速に分解できる酵素の提供が強く望まれている。
発明が解決しようとする課題
本発明は、固体状プラスチックを分解することができる新規ポリエステル系プラスチック分解酵素およびその酵素をコードするポリヌクレオチド、該酵素もしくは該酵素を発現している微生物を利用したプラスチックの分解方法またはモノマーの回収方法を提供することを目的とする。
課題を解決するための手段
本発明はプラスチック、特に固体状で分子構造中にエステル結合を有するプラスチックを分解する能力を有する、平成17年1月20日付けで、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受領されたレプトスリックス(Leptothrix)属菌TB−71株(受領番号FERM ABP−10204)が生産する、プラスチック分解能を有する酵素、該酵素をコードするポリヌクレオチド、および該ポリヌクレオチドを組み込んだ宿主にプラスチック分解能を有する酵素を発現させ、該酵素を精製取得する方法である。尚、レプトスリックス属に属する微生物がプラスチックの分解能を有することはこれまで知られていなかった。一方、プラスチック分解活性を有するレプトスリックス属菌について、同一出願人による「発明の名称:新規ポリエステル系プラスチック分解菌」の同日特許出願に記載されている。
更に本発明は、該酵素もしくは該酵素を発現する宿主を用いるプラスチックの分解方法またはモノマーの回収方法である。
本発明の酵素は、プラスチック、特に固体状で分子構造中にエステル結合を有するプラスチックを分解する能力を有する。より具体的には、本発明の酵素は、例えばレプトスリックス属菌に由来する、新規なプラスチック分解酵素である。
発明の実施の形態
酵素
本発明の酵素は283のアミノ酸から構成され、分子量29812.58のポリペプチドであり、配列番号2のアミノ酸番号1−283で示されるアミノ酸配列により特定される。このアミノ酸配列は、配列番号3に記載されている塩基配列の、オープンリーディングフレーム(読み枠)部分によりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列である。
尚、配列番号3のオープンリーディングフレームはシグナルペプチド部分を有しており、その切断点は配列番号2のN末端24番目のアミノ酸と25番目のアミノ酸の間である。
本発明のアミノ酸配列には、配列番号2に示したアミノ酸配列、ならびにその類似体および誘導体が含まれる。さらに、他の微生物に由来する対応するアミノ酸相同配列も本発明に包含される。また、配列番号3のヌクレオチド配列がコードするいかなるポリペプチドも本発明の範囲に含まれる。
配列番号2に示すポリペプチドのアミノ酸の一部が欠失、置換、挿入若しくは付加されたポリペプチド、例えば配列番号2に示すアミノ酸配列において、20個以下、好ましくは10個以下、更に好ましくは5個以下のアミノ酸が置換されたポリペプチドも、同じ酵素活性を示すことがありうる。従って、同じ酵素活性を有する限り、それらのペプチドも、本発明の酵素に含まれる。また、その様なポリペプチドと配列番号2に示すアミノ酸配列とは、70%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上の相同性を有する(相同性の計算は、例えばBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)検索を用いることにより行うことができる。)。その様なポリペプチドも、固体状プラスチック分解反応を触媒するという特徴を有する限り、本発明の範囲に含まれる。
本酵素が分解できる固体状プラスチックは、プラスチックの分子構造中にエステル結合を有するものである。制限的でない例としては、ポリブチレンサクシネート−co−アジペート、ポリエチレンサクシネート、およびポリカプロラクトンが挙げられる。尚、本酵素は固体状プラスチックを分解できるが、プラスチックが液状やゲル状などであっても分解することができる。ここで、「固体状」とは、フィルムおよびペレット状などの固体形状のことをいう。
ポリブチレンサクシネート−co−アジペートとは、ポリブチレンサクシネート合成において原料にアジピン酸を加えることにより調製される高分子をいう。融点は90℃ぐらいにまで下がるが、柔軟性が向上する。包装材や苗のポット、ゴミ袋などに利用されている。本発明の酵素により分解されるポリブチレンサクシネート−co−アジペートの数平均分子量は、特に制限はない。
ポリエチレンサクシネートとは、ポリブチレンサクシネートのブタンジオールをエチレングリコールに代えたものをいう。機械物性はポリエチレンやポリプロピレンと同等、融点は100℃と低めであるが、酸素を通しにくいため食品フィルムへの応用が期待されている。本発明の分解方法において適用し得るポリエチレンサクシネートの数平均分子量は、特に制限はない。
ポリカプロラクトンとは、ε-カプロラクトンの開環重合により合成され、かなり低い温度でも軟らかい熱可塑性ポリエステルである。本発明の分解方法において適用し得るポリカプロラクトンの数平均分子量は、特に制限はない。
遺伝子
次に本発明の酵素をコードする遺伝子は、配列番号3のオープンリーディングフレームがコードするアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするポリヌクレオチドである。例えば配列表の配列番号3に示す、塩基番号1−849で示される塩基配列を含むポリヌクレオチドである。
本発明のポリヌクレオチドは、その縮重を含むことができる。縮重とは、異なるヌクレオチドコドンによって1つのアミノ酸がコードされ得る現象をいう。かくして、本発明のプラスチック分解酵素をコードする核酸分子のヌクレオチド配列は縮重により変化することができる。
本発明には、配列番号3に示したヌクレオチド配列、配列番号3に示したヌクレオチド配列の相補配列に高度にストリンジェントな条件下で[たとえば0.5M NaHPO4、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、1mM EDTA中、65℃でフィルター結合DNAにハイブリダイゼーション、そして0.1×SSC/0.1% SDS中、68℃で洗浄(Ausubel,F.M. et al.編,1989,Current Protocols in Molecular Biology,Vol.I,Green Publishing Associates社,およびJohn Wily & Sons社,ニューヨーク,p.2.10.3)]ハイブリダイズするヌクレオチド配列により、コードされるタンパク質も同じ酵素活性を示すことがありうる。従って、同じ酵素活性を有する限り、それらのヌクレオチド配列も、本発明の範囲に含まれる。さらに、配列番号3に示したヌクレオチド配列の相補配列に中程度にストリンジェントな条件下で[たとえば0.2×SSC/0.1% SDS中、42℃で洗浄(Ausubel,et al.,1989,前掲)]ハイブリダイズするヌクレオチド配列により、コードされるタンパク質も同じ酵素活性を示すことがありうる。従って、同じ酵素活性を有する限り、それらのヌクレオチド配列も、本発明の範囲に含まれる。
遺伝子組み換え技術によれば、基本となるDNAの特定の部位に、当該DNAの基本的な特性を変化させることなく、あるいはその特性を改善する様に、人為的に変異を起こすことができる。本発明により提供される天然の塩基配列を有するポリヌクレオチド、あるいは天然のものとは異なる塩基配列を有するポリヌクレオチドに関しても、同様に人為的に挿入、欠失、置換、付加を行うことにより、天然のポリヌクレオチドと同等のあるいは改善された特性を有するものとすることが可能であり、本発明はそのような変異ポリヌクレオチドを含むものである。即ち、配列表の配列番号3に示すポリヌクレオチドの一部が挿入、欠失、置換若しくは付加されたポリヌクレオチドとは、配列番号3に示す塩基配列において、20個以下、好ましくは10個以下、更に好ましくは5個以下の塩基が置換されたポリヌクレオチドである。また、その様なポリヌクレオチドと配列番号2に示す塩基配列とは、70%以上、好ましくは80%以上、更に好ましくは90%以上の相同性を有する(相同性の計算は、例えばBLAST(Basic Local Alignment Search Tool)検索を用いることにより行うことができる。)。その様なポリヌクレオチドも、固体状プラスチックを分解する能力を有するという特徴を有するポリペプチドをコードしている限り、本発明の範囲に含まれる。
酵素の生産方法
本発明の酵素は、レプトスリックス属に属し、固体状プラスチック分解能を有する微生物を培養し、該微生物中の酵素を分離・精製することにより、あるいは、本発明のポリヌクレオチド配列を組み込んだ宿主を培養し、該宿主から酵素を分離・精製することにより、生産することができる。
レプトスリックス属に属し、プラスチック分解能を有する微生物は、公知の微生物であってもよく、新たにスクリーニングされた微生物であってもよい。具体的には、代表例として、平成17年1月20日付けで、独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに受領されたレプトスリックス属菌TB−71株(受領番号FERM ABP−10204)が挙げられる。微生物のスクリーニングの一例を示せば、各地より採取した土壌を生理食塩水で適宜希釈し、乳化したPBSAを重層したNB平板培地に塗布し、30℃にて培養を行い、コロニー周辺にクリアゾーンを形成する菌を取得することにより行うことができる。必要であれば二次スクリーニングとして、NB液体培地入り試験管にPBSAペレットを添加し、上記スクリーニングで得られた候補菌株を植菌し、培養前と培養後のPBSAの重量差の生じたサンプルから得られた菌株を候補菌株とする。
レプトスリックス属に属する微生物の培養に用いる培地としては、レプトスリックス属に属する微生物が生育できる培地であれば特に制限なく用いることができ、例えば、LB培地(1%トリプトン、0.5%酵母エキス、1%NaCl)、NB培地が挙げられるがこれらに限定されない。本発明の微生物の生育に使用する培地は、具体的には、本発明の微生物が資化し得る炭素源、例えばグルコース等、及び本発明の微生物が資化し得る窒素源を含有し、窒素源としては有機窒素源、例えばペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーン・スチープ・リカー等、無機窒素源、例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム等を含有することができる。さらに所望により、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等の陽イオンと硫酸イオン、塩素イオン、リン酸イオン等の陰イオンとからなる塩類を含んでもよい。さらに、ビタミン類、核酸類等の微量要素を含有することもできる。炭素源の濃度は、例えば0.1〜10%程度であり、窒素源の濃度は、種類により異るが、例えば0.01〜5%程度である。また、無機塩類の濃度は、例えば0.001〜1%程度である。
本発明の酵素を、遺伝子組換え細胞により生産する方法は以下の通りである。まず、ポリヌクレオチド分子を宿主細胞に導入して組換え体を形成することができる何れかのベクターに挿入する。ベクターはRNAまたはDNA何れか、原核生物または真核生物何れかであり得るが、典型的にはウイルスまたはプラスミドである。ベクターは染色体外エレメント(例えば、プラスミド)として発現させることができるか、あるいはそれを染色体に組込むことができる。組込まれたポリヌクレオチド分子は、染色体プロモーター制御した、天然もしくはプラスミドプロモーター制御下、または幾つかのプロモーター制御の組合せ下とすることができる。ポリヌクレオチド分子の単一または複数コピーを染色体に組み込むことができる。次に、該ベクターを宿主細胞にトランスフェクトして組換え細胞を形成させる。トランスフェクトするための適当な宿主細胞はトランスフェクトできる何れかの細菌、菌類(例えば酵母)、昆虫、植物または動物細胞を含む。本発明で使用される好ましい宿主細胞は、限定されるものではないが、例えば大腸菌、レプトスリックス属菌、枯草菌、酵母等を含めた、本発明の酵素の発現に適した何れの微生物細胞も含む。更に、該宿主を、該宿主に適した培養条件にて培養することにより、本発明の酵素を含有した遺伝子組換え細胞を得ることができる。該宿主に適した培養条件は、当業者に周知である。
レプトスリックス属に属し固体状プラスチック分解能を有する微生物、あるいは本発明のポリヌクレオチド配列を組み込んだ宿主細胞からの本発明の酵素の分離・精製は、通常細胞からの蛋白質の分離・精製に用いられる方法を用いることにより行うことができる。具体的には、細胞を破壊後、通常用いられる分離精製手段を用いることにより行うことができる。細胞の破壊には、制限的でない例として、超音波処理、高圧ホモジナイザー処理、浸透圧ショック法が挙げられる。分離精製手段は、例えば塩析、ゲルろ過法、イオン交換クロマトグラフィーなどの方法を適宜組み合わせて用いればよい。更に、遺伝子組換えによる酵素の生産では、組み換え型酵素のC末端にHis−tagを有するように生産させ、培養菌体を遠心集菌し、ペリプラズム画分を浸透圧ショック法にて抽出し、組み換え型酵素はC末端にHis−tagを有しているため、ニッケルをキレートしたカラムによって容易に精製できる。
プラスチック分解方法およびモノマーの回収方法
更に、本発明は、本酵素により、もしくは該酵素を発現する微生物を利用したプラスチック、特に固体状であり分子構造中にエステル結合を有するプラスチックを分解する方法およびモノマーの回収方法を提供する。つまり、本発明のプラスチックを分解する方法は、酵素のプラスチックを分解する作用を利用するもの、該酵素を発現する微生物の増殖過程でプラスチックが分解され栄養源として消費されることを利用する、あるいは該酵素を発現する微生物菌体、例えば休止菌体を利用するものである。
プラスチック由来のモノマーの回収は、上記分解プロセスの後に分解により生じたモノマーを回収することにより実施することができる。
あるいは、本発明の酵素を発現する微生物菌体を常法により凍結乾燥した粉末状、その粉末と各種ビタミンやミネラル、必要な栄養源、例えば酵母エキス、カザミノ酸、ペプトン等を配合した後に打錠した錠剤等固形状の形態の調製物としてプラスチックの処理に提供しても良い。また、該酵素を発現する微生物菌株を活性汚泥およびコンポストの成分として利用することもできる。
本発明の酵素を、該酵素を含有する錠剤等として利用に供することもできる。酵素の粗酵素液、粗酵素粉末、または精製酵素の他に、通常酵素錠剤等に用いられる他の成分、例えば安定化剤、賦形剤、pH調整剤、増量剤、結合剤等を適宜配合してもよい。また、剤型も特に限定されず、用途に応じて散財、顆粒剤、錠剤等の剤型を選択すればよい。
本発明の方法に用いる酵素は、レプトスリックス属菌TB−71株(受領番号FERM ABP−10204)から調製される酵素に限定されるわけではなく、組換えDNA技術によって創製された微生物、例えば発現ベクターに接続された該酵素をコードするポリヌクレオチドが導入された宿主、例えば大腸菌、レプトスリックス属菌、枯草菌、酵母等により生産された酵素を使用することも可能である。
組換えDNA技術による微生物の創製は、当該分野において通常用いられている方法により行うことができる。例えば、プラスチック分解酵素遺伝子の高効率発現系の構築は、現在最も効率的なポリペプチド発現用宿主−ベクター系の一つであるpET systemを用いて構築することができる。
本発明の方法で使用する酵素は、必ずしも十分に精製する必要はないが、酵素の精製が望まれるときは、通常蛋白質の精製に用いられる方法、例えば塩析、ゲルろ過法、イオン交換クロマトグラフィーなどの方法を適宜組み合わせて用いればよい。一例を示せば、組み換え型酵素のC末端にHis−tagを有するように生産させ、培養菌体を遠心集菌し、ペリプラズム画分を浸透圧ショック法にて抽出する。組み換え型酵素はC末端にHis−tagを有しているため、ニッケルをキレートしたカラムによって容易に精製できる。
本発明のプラスチックを分解する方法により分解できるプラスチックは、前記した通り、プラスチックの分子構造中にエステル結合を有するものである。制限的でない例としては、ポリブチレンサクシネート−co−アジペート、ポリエチレンサクシネート、およびポリカプロラクトンが挙げられる。
分解に共されるプラスチックは、例えば液体の培地中にエマルジョンとして、あるいは粉体の形で加えても良いし、フィルム、ペレット等の塊として加えても良い。なお、培地に対するプラスチックの投入量は、0.01〜10重量%が望ましい。添加する酵素あるいは微生物量は極少量であってもよいが、分解効率を考慮してプラスチックに対して湿重量として、酵素の場合は0.001重量%以上、微生物の場合は0.1重量%以上が好ましい。また、分解に供するプラスチックは、1種類であっても複数種類であっても良い。
精製酵素あるいは粗精製酵素のプラスチックを分解する作用を利用する態様では、プラスチックの分解に際し、緩衝液にプラスチックを添加した培地などであっても良いが、その他に窒素源、無機塩、ビタミンなどを添加しても良い。緩衝液としては、例えばリン酸緩衝液が挙げられる。
本発明の酵素を発現する組換え微生物の増殖過程でプラスチックが分解され栄養源として消費されることを利用する態様における培養は、用いる宿主に適した培養条件で行うことができ、それらの条件は当業者に周知である。プラスチックを単一の炭素源として与えることも、他の炭素源とともに与えることもできる。使用し得る培地としては、用いる微生物に適した培地であれば特に制限はないが、炭素源としては、グルコース等、及び該微生物が資化し得る窒素源を含有し、窒素源としては有機窒素源、例えばペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーン・スチープ・リカー等、無機窒素源、例えば硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム等を含有することができる。さらに所望により、ナトリウムイオン、カリウムイオン、カルシウムイオン、マグネシウムイオン等の陽イオンと硫酸イオン、塩素イオン、リン酸イオン等の陰イオンとからなる無機塩を含んでもよい。さらに、ビタミン類、核酸類等の微量要素を含有することもできる。炭素源の濃度は、例えば0.1〜10%程度であり、窒素源の濃度は、種類により異るが、例えば0.01〜5%程度である。また、無機塩類の濃度は、例えば0.001〜1%程度である。
組換え微生物の有する酵素のプラスチックを分解する作用を利用する態様、すなわち増殖した後の微生物菌体、例えば休止菌体を利用する態様では、プラスチックの分解に際し、該微生物の増殖を伴わないため、緩衝液にプラスチックを添加した培地などであっても良いが、その他に窒素源、無機塩、ビタミンなどを添加しても良い。緩衝液としては、例えばリン酸緩衝液が挙げられる。
本発明において、酵素を発現する増殖中の組換え微生物をプラスチックの分解に利用する場合は、好気条件で、静置培養、振盪培養あるいは通気培養を行えばプラスチックの分解がみられる。好ましくは回転振盪培養が良く、回転数は30〜250回転/分の範囲であるのが良い。培養条件としては、培養温度は10〜50℃、特に30℃付近が好ましい。また、培地のpHは4〜10の範囲、好ましくは7付近であるのが良い。
プラスチックの分解に要する時間は、分解に供するプラスチックの種類、組成、形状及び量、使用した微生物の種類及び樹脂に対する相対量、その他種々の培養条件等に応じて変化しうる。
培地中のプラスチックの分解の確認は、例えば、分解に供したプラスチックの重量減少の測定、エマルジョンとして供する場合はプラスチックの分解によるクリアーゾーンの形成により測定することができる。
本発明を実施例によってさらに詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらのみに限定されるものではない。
実施例1 PBSA分解酵素の精製
予備検討の結果、本菌株のPBSA分解酵素は培養液中に遊離するのではなく菌体表面に付着していることが明らかになったので、酵素精製にあたっては菌体表面のタンパク質を界面活性剤で抽出することとした。
実施例1−1 菌体からの粗酵素液の抽出
TB−71株をNBプレートにて30℃、2日間培養した。300m容の三角フラスコに50mlのNB培地を加え、TB−71株を1白金耳植菌した。ここに25mm径、厚さ0.5mmのPBSAディスク300mgを添加し、30℃、200rpmで一日振盪培養を行い前培養とした。その後NB培地500ml(3リットル容三角フラスコ) に50mlの前培養液を植菌し、PBSAディスク3gを添加し30℃、200rpmで2日間振盪培養した。
本培養終了後、培養液を8,000rpmで5分間遠心し、菌体を得た。0.1Mリン酸緩衝液で菌体を洗い再度遠心した後、0.1Mリン酸緩衝液10mlで菌体を懸濁した。そこに等量の0.4%deoxy−BIGCHAP(非イオン性界面活性剤)溶液を加え、氷上で30分間激しく撹拌して菌体表面に付着したタンパク質を抽出した。その後懸濁液を15,000rpmで10分間遠心し、上清を得た。等量の0.1Mリン酸緩衝液を上清に加えた後、40%飽和となるよう硫安を加え氷上で30分間撹拌した。遠心して沈殿を除いた後、60%飽和となるよう硫安を加え同じく撹拌した後、遠心して得られた沈殿を0.1Mリン酸緩衝液2mlに溶解し、粗酵素液とした。フローチャートを図1に示す。
実施例1−2 酵素精製
Pharmacia製FPLC systemを用いて粗酵素液の精製を行った。粗酵素液を脱塩カラム(Pharmacia社製 HiTrap Desalting)にて脱塩した後、陰イオン交換カラム(Pharmacia社製RESOURCE Q:カラム体積1ml)に供し、素通り画分を回収した。なお、移動相には20mMリン酸緩衝液(pH7.0)を用い、流速2ml/minにて行った。ここに80%飽和となるよう硫安を加え、氷上で30分間撹拌し、22,000rpm、30分間遠心した。得られた沈殿を2mlの0.1Mリン酸緩衝液に溶解し、ゲル濾過カラム(Pharmacia社製Superose12 HR16/50)に供した。移動相として20mMリン酸緩衝液(pH7.0)を用い、流速0.6ml/minにて行った。エステラーゼ活性を有する画分を回収し、80%飽和濃度となるよう硫安を加え、遠心して得られた沈殿を1mlの0.1Mリン酸緩衝液に溶解し、精製酵素標品を得た。
実施例1−3 酵素活性の測定
PBSA分解活性測定はPBSAエマルジョン寒天プレートに10mm径のペーパーディスクを置き、各溶液を50μl滴下してエマルジョンの分解を観察した。また、これとは別に、エステラーゼ活性の測定には基質として−ニトロフェニルアセテートをもちいて、エステル結合の切断によって生じる−ニトロフェノールを405nmの吸光度の増加量で測定する方法を用いた。1分間に1マイクロモルの−ニトロフェノールを生じさせるのに必要な酵素量を1unitとした。
精製ステップ表を以下に示した。精製によって本酵素の比活性は約4倍となり、収率は56.2%であった。精製標品はSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動上で単一バンドを示した。分子量マーカーを用いて、SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動およびゲルろ過にて分子量の検定を行った結果、本酵素は分子量約2万8千の単量体であると考えられた。
Figure 0003984616
実施例2 PBSA分解酵素の諸性質
実施例2−1 至適反応条件の検討
至適pH条件の検討には、0.1Mクエン酸緩衝液(pH4.0−6.0)、0.1Mリン酸緩衝液(pH6.0−8.0)、0.1M Tris−HCl緩衝液(pH8.0−10.0)を用いた。反応は30℃にて行い、各種pH下でのエステラーゼ活性を測定した。ただし、−ニトロフェノールの原子吸光係数がpHによって変化するため、測定波長として405nmに代えて、変動の最も少ない348nmを用いた。至適温度の検討はpH7で行った。温度安定性の検討はpH7で行い、各温度にて30分酵素をインキュベートした後に、30℃にて活性を測定した。
各pHにおける活性の変化を図2に示した。本酵素の至適pHは5.5から9.0付近までの広い範囲において、高い活性を保っていた。また、本酵素の至適反応温度の検討結果を図3に示した。本酵素は25℃から55℃までの広い範囲で高い活性を有していた。
さらに、本酵素の安定温度に関する検討を行った結果を図4に示した。本酵素は45℃、30分間の加熱に対して安定であったが、これ以上の温度では失活が見られた。なお本酵素は40℃以下であれば、最低でも数日間は活性の低下はほとんど認められなかった。
実施例2−2 各種ポリエステル系生分解性プラスチックに対する分解活性
PBSAとPBSにはそれぞれビオノーレ3020, 1020を用いた。また、PESはルナーレSE、PLAはラクティをそれぞれ用いた。ポリヒドロキシブチレート−co−バレエート(PHBV)およびポリカプロラクトン(PCL)は和光純薬製の特級品を用いた。各プラスチック0.2gをジクロロメタン5mlに溶解し、ペトリ皿に展開し、フィルムを作成した。各フィルム0.3mgを1.7Unit/mlの酵素液1mlに加え30℃にて1時間インキュベートした後、溶液中の全炭素量(TOC)を測定した。
本酵素による各種ポリエステル系生分解性プラスチック分解活性を下表に示した。PBSA, PEC, PCLに対して分解が認められ、このうちPCLに対する分解活性が最も高かった。いずれの場合にも、分解は10分以内にはほとんど終了しており、高い分解活性が確認された。一方、PBS, PHBV, PLAに対しての分解活性は認められなかった。この基質特異性はTB−71株の培養菌体を用いた場合と一致した。
Figure 0003984616
また、本酵素によるPBSA分解産物についての検討を行った。分解終了後の緩衝液をHPLCに供し、分解産物を分析した。カラムにはBIO−RAD社製HPX−87Hを用い、移動相には0.01N硫酸を0.5ml/minの流速で用いた。検出器には示唆屈折率計(島村計器製YRD−880)を使用した。
分析の結果、コハク酸と1,4−ブタンジオールが検出され、その濃度はPBSAがすべて分解、モノマー化した場合の理論値と一致した。このことから、本酵素はPBSAをモノマーにまで完全分解することが明らかになった。
実施例2−3 N末端アミノ酸配列の決定
精製したTB−71株由来PBSA分解酵素をPVDF膜にブロッティングし、東レリサーチセンターにN末端アミノ酸配列の解析を依頼した。
本酵素のN末端より10残基までのアミノ酸配列を以下のように決定した。
Figure 0003984616
実施例3 ショットガンクローニング法による分解酵素遺伝子のクローニング
(DNAの抽出)
酵素精製の場合と同様の方法で大量培養したTB−71株より、総DNAを図5に示すフローチャートに従って抽出した。
(ショットガンクローニング)
得られたTB−71株染色体全DNAを、Sau3AIにより限定分解し、アガロースゲル電気泳動にて約2〜5kbのDNA断片画分を切り出し、BIO101社製のGENECLEANゲル抽出キットを用いてDNAを抽出した。得られた断片とBamHIで切断し脱リン酸化処理したpUC118とを14℃、一晩ライゲーションし、エレクトロポレーションにて大腸菌DH10B株を形質転換した。これをエマルジョン化したPBSAを重層したアンピシリン含有LB寒天培地に塗布して37℃にて一晩培養した。培地中のPBSAエマルジョンが分解されると、コロニーの周辺が透明になるため、それを指標として分解遺伝子を有するクローンを選択した。
約35,000株の形質転換体よりエマルジョンのPBSAが分解されコロニーの周囲にクリアゾーンができている株を1株取得したこの形質転換体からプラスミドを抽出し、pBSL1と名付けた。pBSL1にはTB−71株由来の2.4kbの遺伝子断片が挿入されていた。各種制限酵素を用いて解析を行った結果、図6のような制限酵素地図が作成された。
次に、pBSL1をSacI、SphI、PstIでそれぞれ切断してサブクローニングし、大腸菌DH10Bを形質転換した。これを、上記と同様にPBSAを重層した検定培地に塗布し、PBSA分解活性を有する最小領域を決定した。サブクローニングした各断片のPBS分解活性は図7のような結果となり、PBSA分解酵素遺伝子のORF領域が推定された。
実施例4 pBSL1中のTB−71株由来PBSA分解酵素遺伝子の全塩基配列決定
上図のpBSL−Sphから、常法によってDNAシークエンサーによる塩基配列を行った。
相同性検索の結果、推定ORF領域に1つのORFが確認された。これをpbs LAとした。本遺伝子は849塩基からなり、283のアミノ酸からなる分子量29812.58のタンパク質をコードしていた。また、ORFのN末端の24アミノ酸はシグナルペプチドに特有の配列がみとめられ、シグナル切断位置から下流の10アミノ酸の配列は上記のTB−71株由来のPBSA分解酵素の精製標品由来の配列と完全に一致した。成熟型のタンパク質の分子量は27190.61であり、これはSDS−ポリアクリルアミド電気泳動から求めた精製酵素標品の推定分子量とほぼ一致した。このことから本ORFがTB−71株のPBSA分解酵素をコードしている遺伝子であると考えられた。また等電点は 8.42であった。アミノ酸配列およびDNA配列をぞれぞれ図8および図9に示した。
得られたアミノ酸配列を元に国立遺伝学研究所のDDBJ遺伝子データベースに対して BLASTにて相同性検索を行った。その結果、本酵素(遺伝子)は既知のいかなる遺伝子ともアミノ酸レベルで相同性を示さない、新規な酵素遺伝子であることがわかった。
実施例5 大腸菌発現ベクターへのPBSA分解酵素遺伝子の組込みと酵素の大量発現
グナル配列部分を含むPBSA分解酵素遺伝子(pbsLA)配列の前後150bpほどの箇所を相補するプライマーを設計した。その際フォワードの末端部分にはNdeI、リバ
ースの末端部分にはXhoIサイトを付加した。これを用いてPCRによりpbsLA
増幅し、NdeI、XhoIで切断した大腸菌発現ベクター、pET 21a(+) に
連結した。なお、連結した本遺伝子の下流にはその後の精製を簡便にするために、6×His−Tagが付加されている。これを用いて、大腸菌BL21(DE3)を形質転換し、30℃にて一晩培養した。得られた形質転換体を大量培養し、酵素精製に用いた。
本実験に使用した大腸菌発現ベクター(pET 21a (+) )はIPTGを添加することによって発現量が増大する。しかし本酵素の場合はIPTGを添加することによって逆に酵素活性が低下した。これはIPTGの添加により発現量が増大したタンパクが封入体を形成し、失活したものと考えられた。また、本酵素活性は菌体外、ペリプラズムいずれにもほとんど分泌されず、菌体内に蓄積していた。
次に、菌体を大量調製して超音波で破砕後遺伝子産物(組み換え型PBSA分解酵素)の精製を試みた。菌体破砕液を遠心して細胞片を除いた後、硫安を30%飽和となるように添加した。これを遠心して上清を回収し、ここにさらに硫安を50%飽和となるように加えて遠心、沈殿を20mM リン酸バッファーに溶かした後に、ファルマシア社製Hi Trap Chelating column(Ni)を用いて精製した。
精製した組み換え型酵素を用いてPBSAフィルムの分解実験を行った。試験方法は前述の方法と同様に行った。その結果本酵素はPBSAフィルムを10分以内に完全分解し、その活性はTB−71株から精製したPBSA分解酵素とほぼ等しかった。
発明の効果
本酵素は広pH範囲において高い活性を維持する上、40℃以下では数日間に渡って失活はほとんど無いことから、モノマーリサイクルの酵素としての利用に向いている。また、基質特異性が厳密であり、反応するプラスチックと反応しないプラスチックがはっきりしている点もプラスチック混合物からの選択的モノマー化に適している。さらに、本酵素をコードする遺伝子はこれまで知られているいかなる遺伝子も優位な相同性を持たない全く新規な遺伝子であり、その構造と機能の解明を行うことにより、有機合成等の更なる応用分野への利用が期待される。
図1は、粗酵素液調製フローチャートを示す。 図2は、TB−71株由来PBSA分解酵素の至適pHを調べた結果を示す。 図3は、TB−71株由来PBSA分解酵素の至適温度を調べた結果を示す。 図4は、TB−71株由来PBSA分解酵素の温度安定性(30分間)を調べた結果を示す。 図5は、TB−71株染色体全DNAの抽出方法を示す。 図6は、pBSL1の制限酵素地図を示す。 図7は、サブクローニング断片のPBS分解活性と推定ORF領域を示す。 図8は、PBSA分解酵素遺伝子産物(PbsLA)の全アミノ酸配列を示す。 図は、PBSA分解酵素遺伝子(pbsLA)の全塩基配列を示す。

Claims (8)

  1. (a)酵素が配列番号2に示すアミノ酸配列、または
    (b)前記アミノ酸配列に1ないし数個のアミノ酸の、欠失、置換、挿入または付加を有する配列を含む、
    固体状ポリブチレンサクシネート−co−アジペート、ポリエチレンサクシネート、またはポリカプロラクトンの分解活性を有する酵素。
  2. 配列番号2に示すアミノ酸配列のN末端の24アミノ酸残基が欠失した配列、または該配列に1ないし数個のアミノ酸の、欠失、置換、挿入または付加を有する配列を含む、固体状ポリブチレンサクシネート−co−アジペート、ポリエチレンサクシネート、またはポリカプロラクトンの分解活性を有する酵素。
  3. (c)、(d)、または(e)に示す塩基配列を含むポリヌクレオチド:
    (c)配列番号2に示すアミノ酸配列、または該アミノ酸配列のN末端の24アミノ酸残基が欠失したアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチド、またはそれらの相補配列からなるポリヌクレオチド;
    (d)固体状ポリブチレンサクシネート−co−アジペート、ポリエチレンサクシネート、またはポリカプロラクトンの分解活性を有する酵素をコードし(c)の塩基配列と相同性が90%以上の塩基配列からなるポリヌクレオチド;
    (e)ストリンジェントな条件下で(c)または(d)の塩基配列にハイブリダイズし、かつ固体状ポリブチレンサクシネート−co−アジペート、ポリエチレンサクシネート、またはポリカプロラクトンの分解活性を有する酵素をコードするポリヌクレオチド。
  4. 請求項1または2に記載の酵素を生産する方法であって、
    レプトスリックス属の微生物を培養する工程:
    前記微生物からプラスチック分解酵素を分離・精製する工程:
    を含む、前記酵素の生産方法。
  5. 請求項1または2に記載の酵素を固体状ポリブチレンサクシネート−co−アジペート、ポリエチレンサクシネート、またはポリカプロラクトンから選択されるプラスチックと接触させる工程を含む、前記プラスチックの分解方法
  6. 請求項1または2に記載の酵素を発現する遺伝子組換え宿主を固体状ポリブチレンサクシネート−co−アジペート、ポリエチレンサクシネート、またはポリカプロラクトンから選択されるプラスチックと接触させる工程を含む、前記プラスチックの分解方法
  7. 前記宿主が大腸菌である、請求項6記載のプラスチックの分解方法。
  8. 遺伝子組換え酵素の生産方法であって、
    (i)請求項1または2に記載の酵素をコードしているポリヌクレオチド配列を含むベクターを含有する宿主を、該宿主の生育に適した条件下で培養する工程;
    (j)該酵素を該宿主から分離・精製する工程;
    を含む、遺伝子組換え酵素の生産方法。
JP2005014761A 2005-01-21 2005-01-21 新規ポリエステル系プラスチック分解酵素およびその酵素をコードするポリヌクレオチド Expired - Fee Related JP3984616B2 (ja)

Priority Applications (5)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005014761A JP3984616B2 (ja) 2005-01-21 2005-01-21 新規ポリエステル系プラスチック分解酵素およびその酵素をコードするポリヌクレオチド
PCT/JP2006/300942 WO2006078011A1 (ja) 2005-01-21 2006-01-23 新規ポリエステル系プラスチック分解菌、ポリエステル系プラスチック分解酵素およびその酵素をコードするポリヌクレオチド。
EP20060712158 EP1849859B1 (en) 2005-01-21 2006-01-23 Polyester plastic-degrading microorganism, polyester plastic-degrading enzyme and polynucleotide encoding the enzyme
US11/795,578 US7960154B1 (en) 2005-01-21 2006-01-23 Polyester-based-plastic-degrading bacteria, polyester-based-plastic-degrading enzymes and polynucleotides encoding the enzymes
CA 2595803 CA2595803A1 (en) 2005-01-21 2006-01-23 Novel polyester-based-plastic-degrading bacteria, polyester-based-plastic-degrading enzymes and polynucleotides encoding the enzymes

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005014761A JP3984616B2 (ja) 2005-01-21 2005-01-21 新規ポリエステル系プラスチック分解酵素およびその酵素をコードするポリヌクレオチド

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2006197883A JP2006197883A (ja) 2006-08-03
JP3984616B2 true JP3984616B2 (ja) 2007-10-03

Family

ID=36956412

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005014761A Expired - Fee Related JP3984616B2 (ja) 2005-01-21 2005-01-21 新規ポリエステル系プラスチック分解酵素およびその酵素をコードするポリヌクレオチド

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3984616B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008264889A (ja) * 2007-04-16 2008-11-06 National Institute Of Advanced Industrial & Technology 生体適合性膜加工方法及びセンサ分子搭載型生体適合性インターフェイス素子

Also Published As

Publication number Publication date
JP2006197883A (ja) 2006-08-03

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US7960154B1 (en) Polyester-based-plastic-degrading bacteria, polyester-based-plastic-degrading enzymes and polynucleotides encoding the enzymes
JP7179002B2 (ja) 改良されたプラスチック分解プロテアーゼ
JP6804440B2 (ja) ポリエステル分解活性を有するポリペプチド及びその使用
US10508269B2 (en) Polypeptide having a polyester degrading activity and uses thereof
BR112020012212A2 (pt) proteases inovadoras e usos das mesmas
JP6161190B2 (ja) 耐熱性ケラチナーゼ酵素、その製造方法、およびそれをコードするdna
WO2014167562A1 (en) Compositions and methods for biodegrading plastic
Kosiorowska et al. Metabolic engineering of Yarrowia lipolytica for poly (ethylene terephthalate) degradation
EP1849859B1 (en) Polyester plastic-degrading microorganism, polyester plastic-degrading enzyme and polynucleotide encoding the enzyme
JP3984616B2 (ja) 新規ポリエステル系プラスチック分解酵素およびその酵素をコードするポリヌクレオチド
Devi et al. Talaromyces verruculosus, a novel marine fungi as a potent polyhydroxybutyrate degrader
JP4117646B2 (ja) エステル結合含有プラスチック分解微生物、プラスチック分解酵素および該酵素をコードするポリヌクレオチド。
Nakajima-Kambe et al. Rapid monomerization of poly (butylene succinate)-co-(butylene adipate) by Leptothrix sp.
JP4117644B2 (ja) 新規なプラスチック分解酵素および該酵素をコードする遺伝子。
JP4670048B2 (ja) 生分解性プラスチック分解酵素をコードする遺伝子の取得方法、それにより得られる新規遺伝子および酵素
JP2006238801A (ja) 新規ポリヒドロキシアルカン酸分解微生物及び分解酵素の製造方法
JP2009207424A (ja) ポリヒドロキシアルカン酸の分解方法、並びに微生物製剤及び酵素製剤
JP3984615B2 (ja) 新規ポリエステル系プラスチック分解菌
JPH09191887A (ja) 生分解性ポリマーのデポリメラーゼ及びその製造方法
WO2024031065A2 (en) Modified subtilisin proteins & uses thereof
JPH10191980A (ja) ポリヒドロキシアルカノエイト分解酵素及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20070105

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070221

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20070315

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070510

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20070607

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20070706

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100713

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent (=grant) or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110713

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120713

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120713

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (prs date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130713

Year of fee payment: 6

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees