JP2009207424A - ポリヒドロキシアルカン酸の分解方法、並びに微生物製剤及び酵素製剤 - Google Patents

ポリヒドロキシアルカン酸の分解方法、並びに微生物製剤及び酵素製剤 Download PDF

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Abstract

【課題】3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシヘキサン酸のハイブリッド型共重合ポリエステル(PHBH)を含むポリヒドロキシアルカン酸(PHA)を、高温下で効率よく分解する方法、コンポストに投入して使用可能な微生物製剤、及び酵素製剤を提供する。
【解決手段】Thermobifida属の微生物や、これから単離した特定のアミノ酸配列からなる酵素やその変異体、又は、これらを産生する形質転換体の存在下、55〜80℃の範囲でポリヒドロキシアルカン酸を分解する方法。PHA分解用微生物製剤又は酵素製剤は、前記微生物、又は前記酵素又はその変異体を含む。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリヒドロキシアルカン酸(以下PHAと略す)の分解方法、並びに、その分解に使用される微生物製剤及び酵素製剤に関する。より詳しくは、3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシヘキサン酸から成るPHAを効率よく分解するサーモビフィダ属(Thermobifida)細菌や、当該細菌より単離されたPHAを分解する耐熱性酵素等を用いたPHA分解方法、微生物製剤、酵素製剤に関する。
近年、学校給食、レストランなどから出される廃棄物を、農業に有効な製品として再利用する方法として堆肥化が推進されている。土壌改良材として用いられた堆肥は、土壌の有機物の含有量、水分と栄養分を保持する力が増すため、化学肥料の投入量を減らし、植物の病気を抑えるという望ましい効果を持つ。このように堆肥を農業に用いることにより、廃棄物処理の問題を低投入型の持続可能な農業に転換することが可能となる。
しかしながら、廃棄物を堆肥化し農業用途に利用するためには、その中に含まれるプラスチック廃棄物を分別除去する必要があり、このような分別除去には多大な労力を要することから、堆肥化処理の大きな課題となっている。
現在までに数多くの微生物において、エネルギー貯蔵物質としてポリエステルを菌体内に蓄積することが知られている。3−ヒドロキシアルカン酸のホモポリマーあるいはコポリマーであるこれらのポリエステル(PHA)は熱可塑性高分子であり、堆肥化や自然環境中で微生物によって分解されることから、環境にやさしいプラスチックとして注目されている。このためこのような生分解性プラスチックは環境中で利用される農業用資材、使用後の回収・再利用が困難な食品容器、包装材料、衛生用品、ゴミ袋などへの幅広い応用を目指して開発が進められている。特に食品容器や包装材料などは、堆肥化処理のための分別除去の必要がないため、大きな期待が寄せられている。
しかし、現在のプラスチック使用量を考慮すると、自然界や堆肥化施設に存在する微生物による分解を待っているだけでは処理しきれなくなることが予想される。そこでPHAを分解する微生物を探索して、これを利用して積極的にPHAを分解する方法が検討されている。
PHAはshort−chain−length PHA(以下PHASCLと略す;3 to 5C−atoms)とmedium−chain−length PHA(以下PHAMCLと略す;6 to 14C−atoms)に分類されている。PHAを分解する菌株は細菌やカビに広く分布し、PHASCLやPHAMCLを分解する微生物が多数分離されている(非特許文献1)。ほとんどの細菌はPHASCLまたはPHAMCLを特異的に分解する。また、両タイプのPHAを分解できる微生物としてStreptomyces exfoliatusが見いだされているが、それぞれのタイプのPHAに対応する2種類以上の分解酵素を持つために分解可能であることが分かっている(非特許文献2、非特許文献3)。
環境中でのPHAの分解は主として菌株が生産するデポリメラーゼによって行われるが、デポリメラーゼには菌体外に分泌されるタイプ(Extracellular Depolymerase)と菌体内に蓄積するタイプ(Intracellular Depolymerase)に分類される。このうち前者が環境中でのPHA分解に主に寄与している。これらの菌株より種々のデポリメラーゼが精製され、これらのデポリメラーゼの基質特異性はPHASCLまたはPHAMCLのいずれかに特異的であることが明らかになった(非特許文献1、非特許文献2)。
PHASCLの一種である3−ヒドロキシ酪酸(以下3HBと略す)のホモポリマーであるポリヒドロキシ酪酸(以下PHBと略す)を分解する微生物として、土壌より分離したシュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物が分離され、本菌株がPHBを分解する酵素であるデポリメラーゼ(Depolymerase)を産生することが見出された(特許文献1)。この微生物並びに同酵素を利用することでPHBの効率の良い分解が可能となった。また、デポリメラーゼ遺伝子のクローニングと遺伝子組換え技術を応用した高効率なデポリメラーゼの生産も行なわれている(特許文献2)。また、耐熱性のPHB分解微生物として、Schlegelella属やCaenibacterium属に属する微生物が報告されており、これらの酵素の至適温度は75〜80℃と報告されている(非特許文献5、非特許文献6)。
近年、3HBと3−ヒドロキシヘキサン酸(以下3HHと略す)の共重合ポリエステル(以下PHBHと略す)およびその製造方法について研究がなされている。
しかしながら、PHASCLとPHAMCLのハイブリッド型であるPHBHの分解酵素に関する研究はほとんど行なわれていない。Alcaligenes faecalisの生産するPHB分解酵素が3HBと3HHの結合を加水分解できないことが知られている(非特許文献1)一方、Bacillus megaterium N18−25−9株の生産するPHB分解酵素、同株より単離されたPHB酵素遺伝子並びにPHB酵素遺伝子発現ベクターにより形質転換された当該形質転換体を培養することによりPHBHを分解する酵素があることが知られている(特許文献3、非特許文献4)。前記株は生育条件温度が20〜45℃の範囲にある。
したがって、広範な用途に対して応用が期待されているPHBHを分解する微生物並びに酵素が望まれていたが、工業用に使用される微生物並びに酵素は、物理的、化学的に高い安定性が要求されるので、特に好熱性微生物並びに耐熱性酵素が望まれる。これは好熱性微生物の持つ耐熱性酵素が、高い安定性により低コストで長時間使用可能なこと、高温下で反応を行うので雑菌汚染がなく、安定した反応を行うことができること、酵素の保存が容易で、特別な施設が必要ないことなどの性質を持つこと等の理由による。さらに、好熱性微生物や耐熱性酵素は、70℃付近まで温度が上昇する堆肥(コンポスト)中での使用も可能になる。ところが、現在までPHBHを分解する好熱性微生物並びに耐熱性酵素の報告例は皆無であった。
特開平7−155180号公報 特開平9−191887号公報 特開2006−238801号公報 Jendrossek等,Ann.Rev.Microbiol.2002,vol56,403. Schirmer等,Appl.Environ.Microbiol.,vol59,1220(1993) Klingbeil等,FEMS Microbiol.Lett.,vol142,215(1996) Takaku等,FEMS Microbiol Lett.,vol264,152(2006) Romen等,Arch Microbiol.,182(2−3),157−64(2004) Elbanna等,Arch Microbiol.,182(2−3),212−25(2004)
本発明は、上記現状に鑑み、ハイブリッド型PHBHを含むPHAを高温下で効率よく分解する好熱性微生物や、これに由来する耐熱性のデポリメラーゼを使用したPHA分解方法、並びに、コンポストに投入して使用可能な微生物製剤、及び酵素製剤を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、寒冷稲作地帯である新潟県新潟市秋葉区において1次、2次発酵が行われ、作製された堆肥の抽出液よりPHBHを分解するサーモビフィダ・フスカ(Thermobifida fusca)を単離した。また、サーモビフィダ・フスカよりデポリメラーゼ遺伝子をクローニングし、当該遺伝子を宿主細胞で発現させることにより耐熱性デポリメラーゼを製造し、その活性を確認したところ、至適温度が65〜75℃と高く、そのPHBH分解活性も非常に優れていることを見出して、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の(1)〜(7)を提供するものである。
(1)ポリヒドロキシアルカン酸を生物学的に分解する方法であって、以下の(a)〜(f)のいずれかの存在下、55〜80℃の範囲でポリヒドロキシアルカン酸を処理することからなる分解方法。
(a)Thermobifida属の微生物
(b)配列番号3または配列番号4に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド
(c)配列番号3または配列番号4に示すアミノ酸配列に対して70%以上の配列同一性を持つアミノ酸配列からなり、かつポリヒドロキシアルカン酸を分解する酵素活性を有するポリペプチド
(d)配列番号3または配列番号4に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつポリヒドロキシアルカン酸を分解する酵素活性を有するポリペプチド
(e)次の理化学的性質を有するポリペプチド:(1)ポリヒドロキシアルカン酸を分解する酵素活性を有する。(2)至適温度が65〜75℃のあいだにある。(3)前記酵素活性が1価の金属イオン存在下で向上する。
(f)前記ポリペプチド(b)〜(e)を産生するポリヌクレオチドが導入された形質転換体
(2)ポリヒドロキシアルカン酸が3−ヒドロキシ酪酸及び3−ヒドロキシヘキサン酸のうち少なくとも1種類から構成される、(1)記載の分解方法。
(3)ポリヒドロキシアルカン酸が3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシヘキサン酸の共重合ポリエステルである、(1)記載の分解方法。
(4)Thermobifida属の微生物を含有する、ポリヒドロキシアルカン酸分解用微生物製剤。
(5)コンポストに投入して用いられる、請求項(4)記載の微生物製剤。
(6)以下の(b)〜(e)のいずれかのポリペプチドを含有する、ポリヒドロキシアルカン酸分解用酵素製剤。
(b)配列番号3または配列番号4に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド
(c)配列番号3または配列番号4に示すアミノ酸配列に対して70%以上の配列同一性を持つアミノ酸配列からなり、かつポリヒドロキシアルカン酸を分解する酵素活性を有するポリペプチド
(d)配列番号3または配列番号4に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつポリヒドロキシアルカン酸を分解する酵素活性を有するポリペプチド
(e)次の理化学的性質を有するポリペプチド:(1)ポリヒドロキシアルカン酸を分解する酵素活性を有する。(2)至適温度が65〜75℃のあいだにある。(3)前記酵素活性が1価の金属イオン存在下で向上する。
(7)コンポストに投入して用いられる、(6)記載の酵素製剤。
本発明により、PHBH等のPHAを高温下で効率良く、安価に分解することが可能となり、コンポストにおいてPHBH等のPHAを分解することが可能になる。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明は、ポリヒドロキシアルカン酸を生物学的に分解するために、Thermobifida属の微生物、当該微生物に由来する配列番号3又は配列番号4で示されるアミノ酸配列からなる酵素、その変異体、あるいは前記酵素又は変異体を産生する形質転換体の存在下、55〜80℃の範囲でポリヒドロキシアルカン酸(PHA)を処理する。
本発明におけるPHAは以下の一般式で表される。

(式中のRは炭素数1〜13のアルキル基を表し、mは2以上の整数を表す。m個のRは同一であってもよいし、異なっていてもよい。)
本発明において、PHAは、3HB及び3HHのうち少なくとも1種類から構成されるPHAが好ましく、より好ましくは、下記一般式:

(式中のm、nは1以上の整数を表す)
で表される、3HBと3HHから構成される共重合ポリエステルである。
Thermobifida属の微生物は好熱菌の1種である。好熱菌とは至適生育温度が45℃以上であり、生育限界温度が55℃以上の菌をいう。Thermobifida属の微生物は、配列番号3のアミノ酸配列からなるポリペプチドを菌体内に産生した後、シグナルペプチドが切断されて配列番号4のアミノ酸配列からなるポリペプチドを菌体外に放出する。
配列番号3または配列番号4で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドに代表される本発明によるポリペプチドは、PHB、PHBH等を含むPHAを分解する活性を有しており、その至適温度は65〜70℃にある。したがって、例えば工業的にPHAを分解する際や、コンポスト中でPHAを分解する際など、例えば55〜80℃という高温でPHA分解を行うにあたって、きわめて有利である。また、本発明で使用するポリペプチドは1価の金属イオンが存在する系においてその分解活性が向上する特性を有する。
本発明で使用可能な変異体の一形態は、配列番号3または配列番号4に示すアミノ酸配列に対して70%以上の配列同一性を持つアミノ酸配列からなるものであるが、配列同一性の数値として好ましくは85%以上、より好ましくは95%以上、更に好ましくは98%以上、更により好ましくは99%以上である。
また、本発明で使用可能な変異体の別形態は、配列番号3または配列番号4に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなるものであるが、前記数個とは、好ましくは5個、より好ましくは3個、特に好ましくは2個である。
これら変異体がPHA分解酵素活性を有するか否かは、後述の実施例11の手順と同様に確認できる。本発明で使用する酵素又は変異体は、シグナルペプチドや、その生産時の精製を容易にする観点で導入されるHis−Tag等のアミノ酸配列等を挿入又は付加されたものであってもよい。
以上の酵素又は変異体を産生する形質転換体の製造方法については後述する。
Thermobifida属の微生物は好熱性であり、高温でPHAを効率よく分解できるので、PHAの分解を目的とした微生物製剤を構成することができる。この微生物製剤はコンポストに投入して使用可能である。本発明のように耐熱性デポリメラーゼを生産する高温菌、好熱菌、超好熱菌を用いると、コンポストへの投入に適した微生物製剤を製造することが可能になる。
また、前述した酵素又は変異体は至適温度が高く、高温でPHAを効率よく分解できるので、PHAの分解を目的とした酵素製剤を構成することができる。この酵素製剤はコンポストに投入して使用可能である。
これら微生物製剤又は酵素製剤をコンポストに投入することによって、PHAを原料にして有機肥料を得ることが可能になる。
(PHA分解微生物の分離)
本発明の微生物は土壌、堆肥、活性汚泥、河川、海水などの環境中より分離することができる。微生物の分離には種々の方法が知られているが(農芸化学実験書、第2巻)、3HB、3HHの少なくとも1種類から構成されるPHAやPHBHを分解する微生物を分離できればどのような分離方法を用いてもよい。一例として、環境から得られた種々のサンプルを滅菌した水や生理的食塩水に懸濁し、菌体懸濁液を作製する。この懸濁液を適当な菌濃度に希釈後、3HB、3HHの少なくとも1種類から構成されるPHAやPHBHを唯一または主な炭素源として含有する固体培地上に塗布し、菌株の生育できる温度で培養する。培養温度は微生物が生育できる温度であれば特に制限されない。また、培地中に加えるPHAやPHBHはどのような形状のものであっても利用できるが、微細な粉末が好適である。加える濃度は特に制限されないが、固体培地が加えたPHAやPHBHによって白濁する0.05%〜5%が好適であり、0.1%〜0.5%がより好適である。3HB、3HHの少なくとも1種類から構成されるPHAやPHBHを分解する微生物は、生育してきた菌体コロニーの周囲に同ポリマーを分解したことを示すハローを形成することにより、検出・分離することができる。
また、種々のサンプルより調製した菌体懸濁液を、3HB、3HHの少なくとも1種類から構成されるPHAやPHBHを唯一または主な炭素源とする培地中に添加し、培養することにより、当該微生物を濃縮することもできる。その後、前記方法によって当該微生物を分離することができる。
本発明に係る3HB、3HHの少なくとも1種類から構成されるPHAやPHBHを分解する微生物の好適な分離例は次のとおりである。
乳化されたPHBHを0.3%含有する一般細菌用培地(NB培地)に堆肥抽出液を塗布し、55℃で培養した。培養後、菌体コロニーの周りにPHBHの溶解ゾーンを形成した微生物を分離した。この菌株の同定は菌学的な性質や16SリボゾーマルDNAの配列比較により行なうことができる。本菌株を後者によって同定した結果、Thermobifida fuscaであることが明らかになり、Thermobifida fusca N55−1と命名した。
生理学的な試験は一般的な方法に従って行った(長谷川武治、微生物の分類と同定、東京大学出版会、155−245(1975)、Sneath等、Bergey‘s Manual of Systematic Bacteriology, Vol2, Williams&Wilkins,Baltimore(1986)。Thermobifida fusca N55−1は、グラム陽性菌、好気性の桿菌、胞子を形成し、生育条件温度は37〜65℃であった。
Thermobifida fusca N55−1は、グルコース、フルクトース、スクロース同化することができたが、アラビノース、マンニトール、ソルビトール、ラフィノースを同化することはできなかった。スターチを加水分解することができた。
(デポリメラーゼ遺伝子のクローニング)
1.デポリメラーゼ遺伝子の探索
Thermobifida fusca N55−1に近縁な微生物であるThermobifida fusca YXのゲノムDNA配列(登録番号CP000088)の中から、申請者らが以前クローニングしたBacillus megaterium N18−25−9のPHBデポリメラーゼ遺伝子配列(登録番号AB258388)にコードされるアミノ酸配列と配列同一性の高い領域をコードする遺伝子配列情報をNCBIのProtein blast(blastp)(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/Blast.cgi)のプログラムを利用して取り出す。
2.デポリメラーゼ遺伝子の部分断片増幅
前記項目1.で検索された配列の遺伝子情報から、デポリメラーゼ遺伝子情報部分のDNA配列に相補的なプライマーを2種類以上作製し、調製されたゲノムDNAをもとにPCR(Polymerase Chain Reaction)法によりデポリメラーゼ遺伝子を増幅する。
3.サブゲノムライブラリーの構築
3HB、3HHの少なくとも1種類から構成されるPHAやPHBHを分解する微生物のDNAの調製は種々の既知の方法が利用できる。一例として、当該微生物の培養液より遠心処理等によって菌体を集め、リゾチームなどの溶菌酵素処理を行なう。次に凍結融解処理を行なったあと、SDS溶液を重層し界面を混合することにより溶菌させる。同溶菌液にフェノール・クロロホルム溶液を添加し、蛋白質等の変性処理を行ったあと水層にエタノールを加える。析出するDNAをガラス棒などで巻き取ることによりゲノムDNAを調製することができる。
調製されたゲノムDNAは物理的な切断や種々の制限酵素を用いて切断することができる。切断方法は特に制限されないが、例えば制限酵素BamHI、PstIで切断し、アガロース電気泳動によりDNA断片を分離する。ニトロセルロースメンブレンにDNA断片を転写し、前記項目2.で増幅されたデポリメラーゼ遺伝子と相補的なDNA断片の長さをサザン解析により知ることができる。
調製されたゲノムDNAは物理的な切断や種々の制限酵素を用いて切断することができる。切断方法は特に制限されないが、例えば制限酵素BamHI、PstIで切断し、目的長さのDNA断片を精製することができる。ベクターにはプラスミドやファージなどが利用できるが、特に制限されない。挿入するDNA断片にあわせて制限酵素で処理することによりサブゲノムライブラリーの構築に用いることができる。例えば制限酵素BamHI、PstIで切断された3KbのDNA断片は、制限酵素BamHI、PstIで切断したpUC19などのベクターに挿入することができ、大腸菌に形質転換することによりサブゲノムライブラリーを構築することができる。
4.デポリメラーゼ遺伝子のクローニング
前記項目2.で増幅されたデポリメラーゼ遺伝子と相補的なDNA断片を持つ大腸菌をサブゲノムライブラリーが導入された大腸菌からコロニーハイブリダイゼーション法により選択することができ、この大腸菌が該当デポリメラーゼ遺伝子を含有するクローンである。或いは、サブゲノムライブラリーを3HB、3HHの少なくとも1種類から構成されるPHAやPHBHを唯一または主な炭素源とした含有する固体培地上に塗布し、菌株の生育できる温度で培養する。宿主がデポリメラーゼを分泌する場合は、宿主よりも大きな同ポリマー溶解ゾーンを形成するコロニーが当該デポリメラーゼ遺伝子を含有するクローンであり、宿主が大腸菌のようにデポリメラーゼを生産しない場合は、同ポリマー溶解ゾーンを形成するコロニーが当該デポリメラーゼ遺伝子を含有するクローンである。
本発明に係るデポリメラーゼ遺伝子の好適な例として、配列番号1または配列番号2で示されるThermobifida fusca N55−1由来のデポリメラーゼ遺伝子を挙げることができる。但し、配列番号1および配列番号2で示されるDNAと相補的な塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAも、本遺伝子から翻訳されたポリペプチドが3HB、3HHの少なくとも1種類から構成されるPHAやPHBHを分解する活性を有する限り、当該デポリメラーゼ遺伝子に含まれるものとする。ここでストリンジェントな条件とは、例えば塩濃度は2xSSC、温度が68℃、の条件をいう(Molecular Cloning (Sambrook等、CSH Laboratory Press))。
(デポリメラーゼの製造方法)
1.3HB、3HHの少なくとも1種類から構成されるPHAやPHBHを分解する微生物からデポリメラーゼの製造
本菌株の培養には、種々の炭素源、窒素源、無機塩類および有機栄養源を任意に用いることができる。炭素源としては、例えばグルコース、ショ糖、油脂などが利用できる。窒素源としては、例えばアンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩の他、ペプトン、肉エキス、酵母エキス等が挙げられる。無機塩類としては、例えばリン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。その他の有機栄養源としては、例えばグリシン、アラニン、セリン、スレオニン、プロリン等のアミノ酸、ビタミンB1、ビタミンB12、ビタミンC等のビタミン等が挙げられる。また、精米時に大量に得られる米糠や砂糖の生産時に副生する糖蜜等も培地として用いることもできる。
培養温度は、その菌が生育可能な温度であればよい。培養時間は菌体を効率よく生産できる時間であれば特に制限はない。このような培養で得られた培養液はデポリメラーゼ溶液または菌体製剤として利用することができる。また、菌体培養液を遠心分離などによって培養液と菌体とにそれぞれ分離して利用することもできる。前者はデポリメラーゼ溶液、後者は菌体製剤として利用できる。また、培養液より種々の方法によって精製されたデポリメラーゼを利用することもできる。
2.デポリメラーゼ遺伝子を用いたデポリメラーゼの製造
クローニングされたデポリメラーゼ遺伝子を宿主で発現させることにより、当該でポリメラーゼを製造することができる。前記デポリメラーゼ遺伝子クローニングで得られた形質転換株は、当該デポリメラーゼを発現している。本形質転換株を、3HB、3HHの少なくとも1種類から構成されるPHAやPHBHを分解する菌体製剤として利用することができる。また培養液はデポリメラーゼ溶液として利用することができる。
また、当該遺伝子のより効率的な発現を行なうため、種々の宿主・ベクター系を利用することができる。宿主・ベクター系として細菌、酵母、動物細胞等の系を利用することができるが、効率よく当該遺伝子を発現、製造できれば特に制限されない。クローニングされたデポリメラーゼ遺伝子が当該遺伝の発現に必要なプロモーター、ターミネーターを有し、かつ宿主内で発現できる場合はそのまま利用することができる。また、デポリメラーゼ遺伝子をコードするDNAに種々のプロモーターおよびターミネーターを接続した発現カセットを作製し、本発現カセットをベクターに組込むことにより当該発現ベクターを構築することができる。
一例として大腸菌を利用する場合、効率よく遺伝子発現を行なうために種々の発現ベクターが構築されている。ラクトースオペロンのプロモーター、トリプトファンオペロンのプロモーター、前2種類の融合プロモーターおよびλファージのプロモーター等の下流に当該遺伝子を接続し、当該遺伝子の下流にターミネーターを接続したデポリメラーゼ発現カセットを構築することができる。ターミネーターにはrrnターミネーターなどが利用されうるが、特に制限されるものではない。これらの発現カセット作製において、当該宿主で機能する分泌シグナルとして機能するDNA配列を接続することで、デポリメラーゼを菌体外に分泌させることができる。一例として、Thermobifida fusca N55−1のデポリメラーゼ(配列番号3)は、同配列の1番目のメチオニンから38番目のアラニンまでが分泌配列として機能することが予測されており、本配列をコードするDNAは種々のデポリメラーゼの分泌に利用することができる。配列番号4は、配列番号3から前記の分泌配列を除去したアミノ酸配列である。
このようにして作製された発現カセットを宿主内で複製、維持されるベクターに導入することによりデポリメラーゼ発現ベクターを構築することができる。作製された発現ベクターを宿主に形質転換し、デポリメラーゼ形質転換株を作製することができる。本形質転換株は、発現カセットに分泌シグナルDNAを含む場合にはデポリメラーゼを菌体外に分泌することができ、同配列を有しない場合には当該デポリメラーゼを菌体内に蓄積することができる。
本形質転換株の培養には、種々の炭素源、窒素源、無機塩類および有機栄養源を任意に用いることができる。炭素源としては、例えばグルコース、ショ糖、糖蜜、油脂などが利用できる。窒素源としては、例えばアンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等のアンモニウム塩の他、ペプトン、肉エキス、酵母エキス等が挙げられる。無機塩類としては、例えばリン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム等が挙げられる。その他の有機栄養源としては、例えばグリシン、アラニン、セリン、スレオニン、プロリン等のアミノ酸、ビタミンB1、ビタミンB12、ビタミンC等のビタミン等が挙げられる。
培養温度は、その形質転換株が生育可能な温度であればよい。培養時間はデポリメラーゼを効率よく生産できる時間であれば特に制限はない。このようにしてデポリメラーゼを効率よく製造することができる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によりその技術範囲を限定されるものではない。
(実施例1)生分解性プラスチック分解菌の単離
3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシヘキサン酸の共重合ポリエステルPHBH(粉末、フィルム)は株式会社カネカより提供された。
寒冷稲作地帯である新潟県新津市において1次、2次発酵した堆肥から得られた抽出液からNB培地(Nutrient Broth(Difco)8g、蒸留水1,000ml、寒天(固体培地の場合)1.5%)上でコロニーを形成した微生物をNB培地に0.3%PHBHを混合した寒天培地上で55℃の条件下で培養し、溶解ゾーンを形成する微生物を探索した。その結果、N55−1株が得られた。N55−1株は炭素源としてPHBを加えた寒天培地においてもポリマー溶解ゾーンを形成した。
(実施例2)分解菌の同定
16SrDNA配列を用いた微生物の同定法により、N55−1株の同定を行った。
前記株から染色体DNAを抽出し(実施例3)、ユニバーサルプライマー配列番号5、配列番号6を用いてPCR法により菌株の16SrDNAを増幅した。増幅DNAをT−vector(プロメガ社製)にクローニング後、同16SrDNAの約1400塩基の配列を決定した。その塩基配列はDDBJにN55−1(登録番号AB379661)として登録されている。
その16SrDNA塩基配列をもとに、NCBIのNucleotide blast(blastn)(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/Blast.cgi),RDPIIのSequence match(http://rdp.cme.msu.edu/seqmatch/seqmatch_intro.jsp)のプログラムを利用して配列の比較を行った。その結果、N55−1株は両プログラムを利用した解析結果からThermobifida fusca YX株(CP000088)と99.8%の配列同一性を示したことから、Thermobifida fusca N55−1株と命名した。
(実施例3)染色体DNAの調製
50mlの前記NB培地で一晩培養したN55−1株を集菌し、7.5mlのsaline−EDTA(0.15M NaCl,0.1M エチレンジアミン四酢酸 (pH8.0))に懸濁した。50ml容遠心管中で、菌体懸濁液にリゾチームが最終濃度1mg/mlになるように加え、よく溶解し、時々撹拌しながら37℃で15分間インキュベートした。粘度が増加し始めたら直ちに−80℃のフリーザーで凍結した。粘度の増加が30分たっても見られない場合は、リゾチームをさらに添加した。次に凍結した菌体を60℃の湯浴にいれたあと、Tris−SDS(0.1M Tris−HCL(pH9.0),1%ドデシル硫酸ナトリウム)を7.5ml加え、滅菌済みのガラス棒で凍結菌体とSDS溶液の界面を混合させながら溶菌させていった。粘度の増加を確認しながら、試料がほぼ60℃に達したら10分間インキュベートし、その後氷冷した。15mlのフェノール・クロロホルム溶液を加えた後、氷令しながら15分間強く、振とうした。7500rpm、20分、4℃の条件で遠心した後、上層の水層を新しい50ml容の遠心管に移し、再度フェノール・クロロホルム抽出を行った。−20℃で冷却しておいたエタノールを30ml加え、ガラス棒でかき混ぜながら、沈殿してくるDNAをガラス棒に巻き取った。得られたDNAを10mlの70%エタノールで洗浄し、適当量のTE(10mM Tris−HCL(pH8.0)、1mM EDTA)に溶解して、染色体DNA溶液とした。
(実施例4)デポリメラーゼ遺伝子の検索
Thermobifida fusca N55−1に近縁な微生物であるThermobifida fusca YXのゲノムDNA配列(登録番号CP000088)の中から、発明者らが以前クローニングしたBacillus megaterium N18−25−9のPHBデポリメラーゼ遺伝子配列(登録番号AB258388)にコードされるアミノ酸配列と配列同一性の高い領域をコードする遺伝子配列情報をNCBIのProtein blast(blastp)(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/Blast.cgi)のプログラムを利用して取り出した。
(実施例5)デポリメラーゼ遺伝子の部分断片増幅
実施例4で検索された配列の遺伝子情報からデポリメラーゼ遺伝子情報部分のDNA配列に相補的なプライマー(配列番号7と配列番号8に示す塩基配列からなるポリヌクレオチド2種類)を作製し、調製されたゲノムDNAをもとにPCR(Polymerase Chain Reaction)法によりデポリメラーゼ遺伝子の部分断片約600塩基を増幅した。
(実施例6)サザン解析によるデポリメラーゼ遺伝子を含むDNA断片の同定
Thermobifida fusca N55−1の染色体DNAをBamHI,PstIで処理した後、0.8%アガロースゲルで電気泳動を行い、DNA断片を分離した。ニトロセルロースメンブレンにDNA断片を転写後、実施例5で取得されたデポリメラーゼ遺伝子の部分断片を化学蛍光ラベルし、12時間ハイブリダイズさせた。ニトロセルロースメンブレンを2xSSCで洗浄後、ルミノ・イメージアナライザーで解析した結果、約3kbpの位置にバンドを確認することができた。
(実施例7)サブゲノムライブラリーの作製
Thermobifida fusca N55−1の染色体DNAを制限酵素BamHI,PstIで処理した後、0.8%アガロースゲルで電気泳動をしてDNA断片を分画し、約3kbpに相当する部分を切り出し、DNA抽出キットQIAQUICK(QIAGEN)を用いてDNAを精製した。その後、抽出・精製したDNA断片を制限酵素BamHI、PstIで処理したpUC19と連結した。それを大腸菌DH5αに形質転換し、一部を寒天培地にプレーティングしてライブラリーの大きさ、挿入効率を調べた。残りはアンピシリン入りのLB培地で一晩培養し、プラスミドを抽出すると共に菌体を15%グリセロール溶液として−80℃で保存した。
(実施例8)デポリメラーゼ遺伝子のクローニング
前記サブゲノムライブラリーの構築により、Thermobifida fusca N55−1より約1,000クローンより成るサブゲノムライブラリーを作製した。本ライブラリーをLB培地にプレーティングし、一晩培養後、コロニーの一部をニトロセルロースメンブレンに転写した。ニトロセルロースメンブレンに転写されたコロニーをアルカリで処理した後、実施例5で取得されたデポリメラーゼ遺伝子の部分断片を化学蛍光ラベルし、12時間ハイブリダイズさせた。ニトロセルロースメンブレンを2xSSCで洗浄後、ルミノ・イメージアナライザーで解析した結果からデポリメラーゼ遺伝子を含有するクローンを取得した。本クローンからプラスミドを回収し、デポリメラーゼ遺伝子全領域の塩基配列を決定した。デポリメラーゼ遺伝子のORF部分を2種類のプライマー(配列番号9と配列番号10に示す塩基配列からなるポリヌクレオチド)を作製し、PCR法により増幅した全ORF部分を、大腸菌組換え蛋白質発現ベクターpQE−80L(QIAGEN)に連結し、大腸菌DH5αに形質転換した。この形質転換体を培養し、菌体抽出液を調製後、PHBHを含有するNB培地またはPHBHを含有するLB培地に添加したところポリマー溶解ゾーンを形成した。以上の結果から、本ORF部分をデポリメラーゼ遺伝子と決定し、この遺伝子をPhaZTfと命名した。
(実施例9)デポリメラーゼ遺伝子の解析
Thermobifida fusca N55−1のデポリメラーゼ遺伝子のORF部分は、1242塩基(GC含量は69.0%)、414アミノ酸からなり、予想分子量は43.9KDaであった。ATG開始コドンの10塩基上流にShine−Dalgarno配列(GGAGG)が存在していた。また、予想プロモーター配列−35( ATGTTA),−10(TAGGGT)が見られた(図1、配列番号11)。現在まで知られているデポリメラーゼのN末端にはシグナルペプチドが付加されているケースが多い。そこでSignalP 3.0 server(http://www.cbs.dtu.dk/services/SignalP/)を利用してPhaZTfにおけるシグナルペプチドの存在の有無を解析した。SignalP−NN(neural networks)を利用した解析を行ない、切断部位を予想するC score、Y score、 シグナルペプチドを予想するS scoreを統合した結果、配列番号3で示したポリペプチドの38番目のアラニンと39番目のアラニンの間(EA−AT)で切断されることが予想された。また、SignalP−HMN(hidden Markov models)を用いた解析結果によっても、同様の結果が得られた。
(実施例10)組換えThermobidida fusca N55−1デポリメラーゼの生産及び精製
配列番号2で示したputative mature depolymeraseをプライマー(配列番号10と配列番号12に示す塩基配列からなるポリヌクレオチド2種類)を作製し、調製されたゲノムDNAをもとにPCR法により増幅し、大腸菌組換え蛋白質高発現ベクターpQE−80L(QIAGEN)に連結し、大腸菌DH5αに形質転換した。このベクターに連結することにより6xHis配列とデポリメラーゼが融合した組換えデポリメラーゼを生産することができる。組換え蛋白質としてデポリメラーゼを高発現させた大腸菌を遠心により回収後、Lysis buffer(50mM Tris−HCL(pH8.0)、500mM NaCl、1mM DTT、10%グリセロール)に懸濁した。懸濁液を超音波破砕機にかけ、大腸菌を破砕後、遠心をすることにより組換えデポリメラーゼを上清に回収した。上清液と6xHis配列と特異的に結合するニッケルアガロースを混合して、ニッケルアガロースに組換えデポリメラーゼを結合させた後、Lysis bufferで洗浄した。組換えデポリメラーゼが結合したニッケルアガロースにElution buffer(50mM Tris−HCL(pH8.0)、200mM Imidazole、10%グリセロール)を加えて、組換えデポリメラーゼを溶出させた。精製度を12%SDS−PAGEにより検討した結果、単一なバンドが確認できたことから、高純度の組換えデポリメラーゼを精製することができた(図2)。
(実施例11)組換えThermobifida fusca N55−1デポリメラーゼの特性解析
実施例10で精製した組換えThermobidida fusca N55−1デポリメラーゼの酵素活性を乳化したPHBH又はPHBを用いてアッセイを行った。アッセイの反応溶液は、緩衝液として100mM Tris−HCL又は100mM PIPESを適応pH範囲で用い、乳化PHBH或いは乳化PHB溶液を混合し、目的の温度に恒温した後に組換えThermobidida fusca N55−1デポリメラーゼを加え、650nmの吸光度の減少を測定した。また、1分間で650nmの吸光度を1.0減少させることができる酵素量を1ユニットと定義して活性を求めた。緩衝液のpH、反応温度の条件を変え、組換えThermobidida fusca N55−1デポリメラーゼアッセイを行い、PHBHまたはPHB分解の至適条件を調べたところ、PHBH分解における至適温度は70℃、至適pHは9.0で(図3)、PHB分解における至適温度は65℃、至適pHは8.5であった(図4)。これによりThermobidida fusca N55−1デポリメラーゼが耐熱性酵素であることが明らかとなった。次にThermobidida fusca N55−1デポリメラーゼに対する金属イオンの影響を調べた結果、1価の金属イオンが存在するときに高活性を示した(図5、図6)。これは、現在まで知られているPHB分解酵素のほとんどが1価の金属イオンではなく、2価の金属イオン存在下において高活性を示したことと異なる。また200mM KCl存在下で測定されたPHBH分解活性は4,000U(図5)、200mM NaCl存在下で測定されたPHB分解活性は3,388Uを示した(図6)。
Thermobifida fusca N55−1のデポリメラーゼ遺伝子を含有するDNA断片の塩基配列及びアミノ酸配列である。 組換えThermobifida fusca N55−1デポリメラーゼの12%SDS−PAGE図である。 組換えThermobifida fusca N55−1デポリメラーゼのPHBH分解における温度・pHの影響に関する図である。 組換えThermobifida fusca N55−1デポリメラーゼのPHB分解における温度・pHの影響に関する図である。 組換えThermobifida fusca N55−1デポリメラーゼのPHBH分解における金属イオンの影響に関する図である。 組換えThermobifida fusca N55−1デポリメラーゼのPHB分解における金属イオンの影響に関する図である。

Claims (7)

  1. ポリヒドロキシアルカン酸を生物学的に分解する方法であって、
    以下の(a)〜(f)のいずれかの存在下、55〜80℃の範囲でポリヒドロキシアルカン酸を処理することからなる分解方法。
    (a)Thermobifida属の微生物
    (b)配列番号3または配列番号4に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (c)配列番号3または配列番号4に示すアミノ酸配列に対して70%以上の配列同一性を持つアミノ酸配列からなり、かつポリヒドロキシアルカン酸を分解する酵素活性を有するポリペプチド
    (d)配列番号3または配列番号4に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつポリヒドロキシアルカン酸を分解する酵素活性を有するポリペプチド
    (e)次の理化学的性質を有するポリペプチド:(1)ポリヒドロキシアルカン酸を分解する酵素活性を有する。(2)至適温度が65〜75℃のあいだにある。(3)前記酵素活性が1価の金属イオン存在下で向上する。
    (f)前記ポリペプチド(b)〜(e)を産生する形質転換体
  2. ポリヒドロキシアルカン酸が3−ヒドロキシ酪酸及び3−ヒドロキシヘキサン酸のうち少なくとも1種類から構成される、請求項1記載の分解方法。
  3. ポリヒドロキシアルカン酸が3−ヒドロキシ酪酸と3−ヒドロキシヘキサン酸の共重合ポリエステルである、請求項1記載の分解方法。
  4. Thermobifida属の微生物を含有する、ポリヒドロキシアルカン酸分解用微生物製剤。
  5. コンポストに投入して用いられる、請求項4記載の微生物製剤。
  6. 以下の(b)〜(e)のいずれかのポリペプチドを含有する、ポリヒドロキシアルカン酸分解用酵素製剤。
    (b)配列番号3または配列番号4に示すアミノ酸配列からなるポリペプチド
    (c)配列番号3または配列番号4に示すアミノ酸配列に対して70%以上の配列同一性を持つアミノ酸配列からなり、かつポリヒドロキシアルカン酸を分解する酵素活性を有するポリペプチド
    (d)配列番号3または配列番号4に示すアミノ酸配列において1若しくは数個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつポリヒドロキシアルカン酸を分解する酵素活性を有するポリペプチド
    (e)次の理化学的性質を有するポリペプチド:(1)ポリヒドロキシアルカン酸を分解する酵素活性を有する。(2)至適温度が65〜75℃のあいだにある。(3)前記酵素活性が1価の金属イオン存在下で向上する。
  7. コンポストに投入して用いられる、請求項6記載の酵素製剤。
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