JP3984436B2 - アルカリ洗浄水の製造方法及びその装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、機械・金属・エレクトロニクスをはじめとする洗浄分野全般、特に工業部品洗浄及び食品加工工業に用いるアルカリ洗浄水を製造する方法と装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
機械・金属・エレクトロニクス分野では、それぞれの生産過程で様々な洗浄工程があるが、例えば、フロンやエタンなどの有機塩素化合物(揮発性有機化合物)は法規制により使用が禁止あるいは制限されており、短時間に高い清浄度が得られ、しかも生物や環境に安全である代替洗浄剤の開発が求められてきた。
【0003】
上記の有機塩素化合物に代って登場した炭化水素洗浄剤も代替洗浄剤のひとつだが、引火性や作業環境の面で問題をかかえている。また、近年、界面活性剤を用いた水系洗浄も注目を集め、用途に合せた工業用洗剤が市販され実用化が進んでいる。しかし、水系洗浄は洗浄効果を上げる為に界面活性剤等の薬品を使用するため、この界面活性剤を洗い流すリンス工程が必要となり、大量のリンス水が必要となる。又、界面活性剤は有機物であるため排水基準であるBOD.CODに該当し、排水基準を満たす為には大規模な排水処理設備を必要とする問題がある。
【0004】
そこで、水を電気分解することによって生成した生成水を洗浄水として用いることが考えられ、既に、特開平7−73409号公報、特開平7−166197号公報、特開平9−137287号、及び、特開平10−192860号公報等に見られるように幾つかの出願も成されているが、しかし、これ等の出願に記載の発明では、洗浄力の基準をpHやRP、表面張力といった数値のみで洗浄力を判断しており、洗浄力と電気分解における相関もあいまいであった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
例えば、上記の特開平10−192860号公報には、水のpHが8.0〜13.0以下、酸化還元電位が−100〜−1000mv、残留塩素濃度が5ppm以下、表面張力が30〜70dyn/cmを範囲とし、塩類を0〜400ppm添加して直流40〜80vで電気分解するという記述がある。
【0006】
ところが、JIS K3362洗浄試験に基づき本出願人独自の方法にて洗浄試験を各条件での電解水に対して行ったところ、pHが11を超える強アルカリであり、且つ、酸化還元電位が−800mvを超えている電解水においても、電解条件の違いによっては洗浄力に大きな違いがあることが判った。(下記表1のデータ参照)
このことは、pHや酸化還元電位だけでは洗浄力を判断する材料にならないことを意味している。
【表1】
【0007】
また、pHがアルカリということは、水素イオン濃度が低い=水酸化物イオン濃度が高いということであるが、水酸化物イオンを有する水酸化カルシウムの様に洗浄剤として通常使用しない化合物も有り、全てが洗浄に寄与している訳ではない。従ってpHがアルカリであるということによって洗浄力がある可能性を示すことは出来るが、断定することは出来ない。
【0008】
また、酸化還元電位が低いということは還元性があるということである。しかし還元性物質の中には洗浄力を持たないチオ硫酸Na等も含まれるため、還元性があるからといって、必ずしも洗浄力があるとはいえない。隔膜電解における陰極水は還元電位が極めて低くなり、薬品等で処理した水との相違点としての判断は可能であるが、洗浄力との相関については、2次3次的な要素であり直接的な判断材料ではないと考えられる。(上記表1のデータ参照)
【0009】
また、残留塩素濃度5ppm以下という基準については、塩素発生自体が陽極側のみの反応であることが周知の事実であることから、記述にあるように塩類の添加量によるものではなく、陰極側での塩素反応は、陽極側からの流出することが原因であると考えることが出来る。(下記表2のデータ参照)
要するに、塩素イオンは洗浄力を左右するものではなく、錆の要因であって、少い方がよいだけである。
【表2】
【0010】
更に上記の公報には、表面張力について(30〜70dyn/cm)の記述があるが、低い表面張力が洗浄効果を上げることは事実である。しかし幾つかの試験条件において、70dyn/cm以下の電解水を生成することが出来なかった(神奈川県産業技術研究所協力による)。一般的に無機物は表面張力が高く、有機物は低いことが知られている。界面活性剤や溶剤は全て有機物であり、電気分解において添加する塩類は全て無機物である。無機物を電気分解して有機物を生成することは常識では不可能であり、このことからも電気分解において表面張力を大きく下げることは難しいものと考えられる。(下記表3のデータ参照)
【表3】
【0011】
以上述べたように、洗浄力には絶対数値がなく、物理的な洗浄作用を加えれば純水、市水のみでも洗浄効果を得ることができる。しかし実際は市販の洗浄剤等と比較し運用を行う必要がある以上、一定以上の洗浄効果を有する洗浄水と、その製造方法及び製造装置が不可欠であるという結論に至った。
【0012】
従って本発明の技術的課題は、市販の洗浄剤に対抗できる洗浄性能を備えたアルカリ洗浄水の製造方法及び製造装置を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記の技術的課題を解決するために、本発明で講じた手段は以下の如くである。
【0014】
(1) 請求項1に記載のアルカリ洗浄水の製造方法は、ナトリウム化合物またはカリウム化合物を主成分とする電解質を水道水或は純水に添加し、且つ、20〜500ms/mの電気伝導度になるように調整した原水を、陽陰両極間に隔膜が存在する有隔膜電解槽に入れて電気分解することによって、陰極側に水酸化ナトリウム濃度または水酸化カリウム濃度であるところのアルカリ濃度が0.003mol/l〜0.02mol/lであり、且つ、当該電解アルカリ性水に含まれているアルカリ物質中の遊離アルカリと全アルカリとの比であるところのアルカリ比が0.3〜0.05の範囲内であるアルカリ洗浄水を生成する洗浄水製造方法であって、上記電気分解に必要な電気量を1ml当り0.2〜1.2クーロンの範囲とする一方、上記有隔膜電解槽の隔膜として、電気抵抗が0.01〜0.0001Ωcm2、平均孔径が0.2〜3.5μmの範囲内のものを用いて電気分解することを特徴としている。
【0015】
(2) 請求項2に記載のアルカリ洗浄水の製造装置は、ナトリウム化合物またはカリウム化合物を主成分とする電解質を水道水或は純水に添加し、且つ、20〜500ms/mの電気伝導度になるように調整した原水を、陽陰両極間に隔膜が存在する有隔膜電解槽に入れて電気分解することによって、陰極側に水酸化ナトリウム濃度または水酸化カリウム濃度であるところのアルカリ濃度が0.003mol/l〜0.02mol/lであり、且つ、当該電解アルカリ性水に含まれているアルカリ物質中の遊離アルカリと全アルカリとの比であるところのアルカリ比が0.3〜0.05の範囲内であるアルカリ洗浄水を生成する洗浄水の製造装置であって、上記有隔膜電解槽の隔膜として、電気抵抗が0.01〜0.0001Ωcm2、平均孔径が0.2〜3.5μmの範囲内のものを使用すると共に、上記の有隔膜電解槽には、陽極室と陰極室の間に生じる水圧差をなくすことができる水圧調整手段を具備せしめることを特徴としている。
【0016】
(3) 請求項3に記載のアルカリ洗浄水の製造装置は、前記請求項2に記載のアルカリ洗浄水の製造装置において、陽極室と陰極室の間に生じる水圧差をなくすための水圧調整手段が、両極室に通じる各入水口と各出水口の断面積を全て同一と成し、且つ、両極室の容積を同一に造ることによって構成されていることを特徴としている。
【0017】
(4) 前記請求項4に記載のアルカリ洗浄水の製造装置は、前記請求項2に記載のアルカリ洗浄水の製造装置において、陽極室と陰極室の間に生じる水圧差をなくすための水圧調整手段が、両極室に通じる各入水口の断面積と、各出水口の断面積を各々同一に構成し、且つ、これ等各入水口の断面積よりも各出水口の断面積を少く構成すると共に、両極室の容積を同一に造ることによって構成されていることを特徴としている。
【0018】
(5) 前記請求項5に記載のアルカリ洗浄水の製造装置は、前記請求項2、3、4に記載のアルカリ洗浄水の製造装置において、断面積を同一に造った出水口の夫々に、水量調整バルブまたは固定オリフィス、或は、電動水量調整バルブから成る水量調節手段を設けることを特徴としている。
【0019】
(6) 前記請求項6に記載のアルカリ洗浄水の製造装置は、前記請求項2、3、4、5に記載のアルカリ洗浄水の製造装置において、断面積を同一に造った各入水口と各出水口の夫々に流量センサを取付ける一方、各出水口には流量センサによる流量検出に基づき作動して水量を均一に調整する電動水量調節バルブを設けることを特徴としている。
【0020】
上記(1)で述べた請求項1に係る製造方法によれば、水道水、或は、純水にナトリウム化合物又はカリウム化合物を添加した原水を、有隔膜電解槽で電気分解すると陰極室側に電解アルカリ性水が生成されるが、この電解アルカリ性水が、水酸化ナトリウム濃度または水酸化カリウム濃度であるところのアルカリ濃度が高く、当該電解アルカリ性水に含まれているアルカリ物質中の遊離アルカリと全アルカリとの比であるところのアルカリ比が低い場合、即ち、アルカリ濃度が0.003mol/l〜0.02mol/lの範囲で、アルカリ比(全アルカリ度と遊離アルカリ度の比)が0.3〜0.05の範囲内である場合に、電気伝導度が20〜500ms/mの範囲で、塩化ナトリウム水溶液を0.2〜1.2クーロンの範囲で電気分解すると、水道水よりも腐食性が少くて人体に対する影響が少く、使用上安全で、且つ、優れた洗浄力を発揮することができる洗浄水を生成できると共に、隔膜として電気抵抗が0.1〜0.0001Ωcm2であり、平均孔径が0.2〜3.5μmの範囲内のものを用いて生成するため、陽極水が陰極室側に混入することがなく、また、電気抵抗もあまり大きくすることなく、洗浄水を安定した状態で生成することを可能にする。
【0021】
上記(2)で述べた請求項2に係る製造装置によれば、上記(1)で述べた製造方法と同様に、使用上安全で優れた洗浄力を発揮することができる洗浄水を、安定的に製造することができると共に、水圧調整手段によって陰極室と陽極室の水圧差を無くすことができるため、陰極室と陽極室の混合を防止して、陰極室より優れた洗浄力を備えた洗浄水(電解アルカリ性水)を生成することを可能にする。
【0022】
上記(3)で述べた請求項3に係る製造装置によれば、水道水に直結される流水式電解槽において、両極室の入水口断面積及び出水口断面積を同一とし且つ電解槽内の容積を両極同一にすることにより、水道圧力を有効に利用し両極に均等に圧力がかかるようにしたため、水圧差を無くすことができ、両極からの水量を均一にすることを可能にする。
【0023】
上記(3)で述べた手段を前提として水道圧力が低下した場合に、片極室のみに流入水量が偏る場合が想定されるが、上記(4)で述べた請求項4に係る製造装置によれば、両極室の入水口断面積より出水口断面積を少く設計しているため、電解槽内圧が上昇して、片極室のみへの偏った流入を防止することを可能にする。
【0024】
上記(3)と(4)で述べた製造装置に於いて、電解槽出口の出水部の高さが違う場合は、水頭圧により電解槽内部の圧力が偏って出水水量に変化が生じることになるが、この点、前記(5)で述べた請求項5に係る製造装置によれば、電解槽の両極出水部にそれぞれ水量調節バルブ若しくは固定オリフィス、或は、電動水量調節バルブから成る水量調節手段を設けることにより、圧力の偏りを手動または自動で補正して、両極の水量を均一に調整することを可能にする。
【0025】
前記(5)で述べた請求項5に係る製造装置に加えて、前記(6)で述べた請求項6に係る製造装置によれば、両極室に水量センサを設けて、圧力の偏りを検知した後、両極出水部に設けた電動水量調節バルブによって、両極の水量を自動的に均一に調整することを可能にする。また、流入する水量を水量センサ等で計測し水量を均一にする為、上記電動水量調節バルブを運用するという装置も同時に考えられる。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下に、上述した本発明に係るアルカリ洗浄水の製造方法及びその装置の実施の形態を説明することにするが、先ず、洗浄力の基準設定上必要な「アルカリ濃度」と、「アルカリ比」と、「アルカリ濃度とアルカリ比の組合せ」に付いて説明する。
【0027】
アルカリ濃度に付いて
隔膜電解においてナトリウム化合物やカリウム化合物の水溶液を電気分解した場合、陰極側には水酸化ナトリウムや水酸化カリウムが生成されると言われている。アルカリ濃度とは、陰極側に生成されていると仮定した場合の水酸化ナトリウム濃度または水酸化カリウム濃度を言う。アルカリ濃度は酸を用いて算出することができ、数値はmol濃度で表す。
【0028】
また、ナトリウム化合物またはカリウム化合物を有隔膜で電気分解した場合、陰極側には水酸化ナトリウムまたは水酸化カリウムが生成されることが仮定される。水酸化ナトリウムや水酸化カリウムに洗浄力があることは一般に良く知られており、発生すると仮定される濃度が高い程、洗浄力が大きいと言える。従って、電解アルカリ性水において、水酸化ナトリウム濃度又は水酸化カリウム濃度であるアルカリ濃度を測定することは有意義であり、この濃度を達成する為の電解条件を規定することで、安定した洗浄力を保持することが出来る。一方、pHがアルカリであることとアルカリ濃度が高いということにある程度の相関はあるが、電気分解の条件によっては、pHをアルカリにし、アルカリ濃度を低くすることも可能である。従って、電解洗浄水においてはpHではなくアルカリ濃度を基準にすることが重要である。
【0029】
アルカリ比に付いて
アルカリ比とは水溶液に含まれるアルカリ物質の中に、洗浄力に寄与するアルカリがどの位含まれているかを判断する指標として用いるものである。アルカリの中で特に洗浄力に寄与するものを遊離アルカリ、洗浄に寄与しないものを全アルカリとした場合、当然遊離アルカリの割合が多い水溶液の方が高い洗浄力を有すると言える。アルカリ比はアルカリ濃度と違い、生成されていると仮定する物質の特定を行っていない。従って、アルカリ濃度のようにmol濃度として表すことが出来ない為、全アルカリ度と遊離アルカリ度の比で表す。
【0030】
更に、アルカリ比を測定する為には2段階滴定を行う。遊離アルカリは第一中和点までに要した酸の量とし、また全アルカリは第二中和点までに要した酸の量とする。これ等全アルカリ度と遊離アルカリ度の比をもってアルカリ比とする。
【0031】
アルカリ濃度とアルカリ比の組合せに付いて
上述した通り、pHが強アルカリであってもアルカリ濃度が低い場合がある為、アルカリ濃度が基準内の濃度であることが先ず重要である。しかし、酸性物質の混入等によって見かけ上アルカリ濃度が高くても実際の洗浄力が低い例がある。これは、酸性物質の混入によって洗浄力に寄与するアルカリ成分が失われている可能性が示唆される。そこで洗浄力のあるアルカリ成分が全てのアルカリ中にどの位含まれているかを判断する必要があり、アルカリ比を測定することが重要である。
【0032】
これ等2つの指標を満足するアルカリ水と、どちらか一方が欠けているアルカリ水、双方共欠けているアルカリ水を、JIS K3362洗浄試験に基づいた本出願人独自の方法で判断したところ、アルカリ濃度、アルカリ比共に、ある数値を満たすアルカリ水のみが洗浄力を有するという結果となった。(下記表4に記載のデータ参照)
従って、電解したアルカリ水においては、pHや酸化還元電位で洗浄力を規定するのではなくアルカリ濃度とアルカリ比が共に満足のいく数値であることが重要であると言える。
【表4】
【0033】
尚、洗浄力の判断は、JIS K3362(1998)に記載されているリーナッツ形洗浄器と同等の物を用い、牛脂・クロロホルム・オイルレッドによって作成したモデル汚れをガラス片に付着させ、前記洗浄器にて試験を行った。本願出願人独自の方法として、洗浄前のモデル汚れガラス片に付着している汚こうの量αと、洗浄後のモデル汚れガラス片に付着しているβとの差から、各洗浄力判定用水溶液の洗浄率Xを求める方法を使用した。
【0034】
次に、本発明に於ける電解条件と洗浄力に付いて説明するが、その電気量と電気伝導度は以下の如くである。
【0035】
上述した洗浄力の基準設定で規定したアルカリ濃度とアルカリ比を達成する為には、実験の結果、有隔膜電解槽にて最低0.2クーロンの電気量を必要とすることが判った。電解には直流を用いるが、水に触れる電極板に印加することを考慮した場合人体に対する安全上、電圧を高く設定することは危険であり一般には40Vを上限としている。又、同じ電気量を与える場合、電圧が高いとW=VAの関係から消費電力が大きくなり、消費電力によって価格の決まる電源がコスト上昇する弊害が考えられる。従って電圧は可能な限り下げることが重要であると言える。(上記表4のデータと、図7に示した電気量とアルカリ濃度の関係を示した表図と、図8に示した電気量とアルカリ比の関係を示した表図のデータ参照)
【0036】
また、電圧をある数値に決定した場合、必要な電気量を安定して得る為に関係する項目は、陽陰両極間にある水溶液の電気伝導度と、陽陰両極の面積である。電気伝導度が高くなる程、同じ電気量において電圧を低く設定することが可能となり、電極面積が大きくなる程、同じ電気量において電圧を低く設定することが可能となる。しかし実際には電極板を無限に大きくすることは不可能である。
【0037】
電気伝導度を高くする為には、塩化ナトリウムの添加量を多くする必要がある。塩化ナトリウムは、電気分解において洗浄要素のアルカリ物質生成に必要であるが同時に塩化物でもある為、腐食性を増す結果となり洗浄水として好ましくない。結果、アルカリ物質を安定して生成する為には、電気伝導度は最低20ms/m必要であり、それ以下の場合で洗浄力を維持するに必要な電気量を保つ為には、電圧を不必要に高く設定するか、電極面積を無駄に大きくする必要がある。
【0038】
電気伝導度を高くすることは電圧を低く設定でき、且つ、電極面積を少くすることが可能であるが、同時に残留する塩化物によって洗浄水の腐食が増加する可能性がある。実験の結果20〜500ms/mの範囲で、塩化ナトリウム水溶液を0.2クーロン以上で電気分解した場合において、水道水より腐食性が少いことが確認出来た。従って電気伝導度の上限は500ms/mとすることが良いと考えられる。(以下の表5に記載のデータ参照)
【表5】
【0039】
尚、電気量の上限については、陽陰両極水のpH及び陽極の塩素濃度から決定することが出来る。前記の条件にて1.2クーロンの電気量を与えた場合、陰極水のpHは12.5を超えて陽極水のpHは2以下となる。又、陽極に発生する塩素濃度が100ppmを超えることとなり人体に対する影響も大きい。従って電気量の上限は1.2クーロンとすることが望ましいと考える。
【0040】
前記アルカリ比の部分で酸性物質が洗浄力を下げる要因であると記載したが、有隔膜電解において酸性物質とは通常、陽極水のことである。陽極水を陰極に混入させない為には、隔膜孔径を可能な限り小さくする必要がある。しかし実際は隔膜孔径が小さいということは、電気抵抗が大きくなるという結果となり、前記の電気伝導度が小さくなることと同じ結果となる。結果として、隔膜の電気抵抗が0.1〜0.0001Ωcm2であり、平均孔径0.2〜3.5μmの範囲を使用することが重要であるという結論に至った。
【0041】
又、同じ要素として、陰極/陽極室に水圧差があった場合、陰極と陽極室が混合することが考えられる。従って、両極に水圧差を持たせないことが重要であると考えることが出来る。水圧差を持たせない方法としては、両極から生成される水量を同一にするという方法が一般的である。
【0042】
次に、本発明に係る洗浄水の製造装置を図面と共に説明すると、図1は本発明の装置の全体を説明した構成図であって、図中、1は有隔膜電解槽(以下単に電解槽と言う)で、1Tはその電解槽1の内部を陰極室2と陽極室3の左右2室に仕切る隔膜で、この隔膜1Tは電気抵抗が0.01〜0.0001Ωcm2、平均孔径が0.2〜3.5μmに構成されている。
【0043】
4は水道水又は純水に対して、ナトリウム化合物やカリウム化合物等から成る電解質を添加した原水を、上記の電解槽1に供給する給水パイプで、4Aと4Bはこの給水パイプ4に通じる各陰極室2と陽極室3の入水口(入水パイプ)を示す。
【0044】
5は上記の電解質を収容した電解質タンク、5Aはこのタンク5とポンプ6の間を結ぶ連結パイプで、ポンプ6は制御プログラムを格納した制御基板15からの指令に従って、必要量の電解質を逆止弁7Aを備えた添加パイプ7を通して上記の水道水、又は、純水に添加することにより、電気伝導度が20〜500ms/mになるように調整した原水を作って、上記電解槽1に給水する仕組成っている。
【0045】
また、8と9は上述した各陰極室2と陽極室3の取出し側に接続した出水口 (出水パイプ)で、これ等各出水口8,9の経路途中には、前記の制御基板15によって制御可能に構成した流量センサ10,11と、電動水量調節バルブ12,13が夫々設けられている。
【0046】
14は上記陰極室2と陽極室3の内部に設けた各電極2′,3′用の電源基板で、この電源基板14は前述した制御基板15に制御されて、各電極2′,3′に供給する電気量を1ml当り0.2〜1.2クーロンの範囲に調節する仕組に成っており、その結果、上記電解槽1の陰極室2側からは、アルカリ濃度が0.0003mol/l〜0.02mol/lで、アルカリ比が0.3〜0.05の範囲内の電解アルカリ性水が生成される仕組に成っている。
【0047】
次に、図2乃至図6は上記陰極室2と陽極室3の間に生じる水圧差をなくすために設けた水圧調整手段の構成を示したものであって、図2は前記請求項4に記載されているように、両極室2に通じる各入水口4A,4Bと、各出水口8,9の断面積を全て同じに構成すると共に、両極室2,3の容積を同一に構成した水圧調整手段を示したものである。
【0048】
また、図3は前記請求項4に記載されている水圧調整手段の構成、即ち、両極室2,3に通じる各入水口4A,4Bの断面積と、出水口8,9の断面積を夫々同一と成し、且つ、各入水口4A,4Bの断面積よりも各出水口8,9の断面積を少く構成し、更に、両極室の容積を同一に造った水圧調整手段の構成を示したものである。
【0049】
更に、図4には、前記請求項5に記載されている水圧調整手段の構成、即ち、上記図2と図3に示した構成に於いて、各出水口8,9に水量調節バルブ16,17や、固定オリフィス(図示省略)のような手動式の水量調節手段を設けた構成が示されており、また、図5には上記手動式の水量調節バルブ16,17に代えて、電動水量調節バルブ12,13を設けて、これ等各バルブ12,13の作動を、上記両極室2,3の圧力を検出する圧力センサ18,19からの圧力信号に従って自動的に制御する仕組の水圧調整手段が示されている。
【0050】
また、図6には、前記請求項6に記載されている水圧調整手段の構成、即ち、前記図4と図5に示した構成の追加手段として、各入水口4A,4Bと、各出水口8,9の夫々に流量センサ20,21及び10,11を設けて、これ等各流量センサ20,21及び10,11による流量検出に基づいて、各出水口8,9に設けた電動水量調節バルブ12,13を自動的に開閉制御する仕組の水圧調整手段が示されている。
【0051】
【発明の効果】
以上述べた次第で、本発明に係るアルカリ洗浄水の製造方法及びその装置によれば、電解質のいずれを問わず、アルカリ濃度とアルカリ比を所定の範囲に設定すれば、市販の洗浄剤に対抗できる洗浄能力を備え、且つ、比較的低コストで生成できるアルカリ洗浄水を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係るアルカリ洗浄水の製造装置の全体を説明した構成図である。
【図2】 請求項3に示した両極室間に生じる水圧差をなくす水圧調整手段の構成を説明した構成図である。
【図3】 請求項4に示した水圧調整手段の構成図である。
【図4】 請求項5に示した水圧調整手段の構成図である。
【図5】 請求項5に示した水圧調整手段の他の例を示した構成図である。
【図6】 請求項6に示した水圧調整手段の構成図である。
【図7】 電気量とアルカリ濃度の関係を説明した表図である。
【図8】 電気量とアルカリ比の関係を説明した表図である。
【符号の説明】
1 電解槽
1T 隔膜
2 陰極室
2′ 電極
3 陽極室
3′ 電極
4A,4B 入水口
5 電解質タンク
6 ポンプ
8,9 出水口
10,11,20,21 流量センサ
12,13 電動水量調節バルブ
14 電源基板
15 制御基板
16,17 水量調節バルブ(手動式)
18,19 圧力センサ
Claims (6)
- ナトリウム化合物またはカリウム化合物を主成分とする電解質を水道水或は純水に添加し、且つ、20〜500ms/mの電気伝導度になるように調整した原水を、陽陰両極間に隔膜が存在する有隔膜電解槽に入れて電気分解することによって、陰極側に水酸化ナトリウム濃度または水酸化カリウム濃度であるところのアルカリ濃度が0.003mol/l〜0.02mol/lであり、且つ、当該電解アルカリ性水に含まれているアルカリ物質中の遊離アルカリと全アルカリとの比であるところのアルカリ比が0.3〜0.05の範囲内であるアルカリ洗浄水を生成する製造方法であって、
上記電気分解に必要な電気量を1ml当り0.2〜1.2クーロンの範囲とする一方、上記有隔膜電解槽の隔膜として、電気抵抗が0.01〜0.0001Ωcm2、平均孔径が0.2〜3.5μmの範囲内のものを用いて電気分解することを特徴とするアルカリ洗浄水の製造方法。 - ナトリウム化合物またはカリウム化合物を主成分とする電解質を水道水或は純水に添加し、且つ、20〜500ms/mの電気伝導度になるように調整した原水を、陽陰両極間に隔膜が存在する有隔膜電解槽に入れて電気分解することによって、陰極側に水酸化ナトリウム濃度または水酸化カリウム濃度であるところのアルカリ濃度が0.003mol/l〜0.02mol/lであり、且つ、当該電解アルカリ性水に含まれているアルカリ物質中の遊離アルカリと全アルカリとの比であるところのアルカリ比が0.3〜0.05の範囲内であるアルカリ洗浄水を生成する製造装置であって、
上記有隔膜電解槽の隔膜として、電気抵抗が0.01〜0.0001Ωcm2、平均孔径が0.2〜3.5μmの範囲内のものを使用すると共に、上記の有隔膜電解槽には、陽極室と陰極室の間に生じる水圧差をなくすことができる水圧調整手段を具備せしめたことを特徴とするアルカリ洗浄水の製造装置。 - 前記請求項2に記載のアルカリ洗浄水の製造装置において、前記陽極室と陰極室の間に生じる水圧差をなくすための前記の水圧調整手段が、両極室に通じる各入水口と各出水口の断面積を全て同一と成し、且つ、両極室の容積を同一に造ることによって構成されていることを特徴とするアルカリ洗浄水の製造装置。
- 前記請求項2に記載のアルカリ洗浄水の製造装置において、前記陽極室と陰極室の間に生じる水圧差をなくすための前記の水圧調整手段が、両極室に通じる各入水口の断面積と、各出水口の断面積を各々同一に構成し、且つ、これ等各入水口の断面積よりも各出水口の断面積を少く構成すると共に、両極室の容積を同一に造ることによって構成されていることを特徴とするアルカリ洗浄水の製造装置。
- 断面積を同一に造った出水口の夫々に、水量調整バルブまたは固定オリフィス、或は、電動水量調節バルブから成る水量調節手段を設けたことを特徴とする請求項2、3または4記載のアルカリ洗浄水の製造装置。
- 断面積を同一に造った各入水口と各出水口の夫々に流量センサを取付ける一方、各出水口には流量センサによる流量検出に基づき作動して水量を均一に調整する電動水量調節バルブを設けたことを特徴とする請求項2、3、4または5記載のアルカリ洗浄水の製造装置。
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