JP3983809B2 - 回線網反響消去装置用の無効化トーン検出器 - Google Patents

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Description

本発明は、主として電話システムにおいて使用される回線網反響消去装置に係り、さらに詳細には、いつ反響消去装置を無効化すべきかを決定するための無効化トーン検出器に関する。
背景技術
反響は、電話回線網のアナログ部におけるインピーダンスの不整合によって、音声信号エネルギーの一部が反射するときに、電話システム内に起きる現象である。代表的な例は、公衆交換電話回線網(PSTN)加入者インタフェースにおける四線式から二線式への変換である。
あらゆる現在の陸上電話は、両方向の伝送を支える二線式線路によって中央局に接続されている。しかし、約35マイルよりも長距離の呼びに対しては、2方向の伝送は、物理的に分離した線に分離される必要があり、その結果、四線式線路となる。二線式部分と四線式部分を適合させる装置は、ハイブリッドと呼ばれている。代表的な長距離電話回路は、ローカルハイブリッドに対する加入者ループにおいては二線式であり、遠隔ハイブリッドに対する長距離伝送回線網上では四線式であって、その後遠隔電話に対して二線式になっていると言える。
ハイブリッドの使用によって長距離音声伝送が容易に行われるが、ハイブリッドでのインピーダンス不整合が反響を引き起こす。話者Aの音声は、電話回線網の遠隔ハイブリッド(話者Bに最も近いハイブリッド)から話者Aの方向に反射される。その結果、話者Aに彼/彼女自身の声の耳障りな反響を聞かせることになる。従って、回線網反響消去装置が陸上電話回線網において使用され、ハイブリッドにおけるインピーダンス不整合によって引き起こされる反響を取り除いている。また、その装置は、代表的には、ハイブリッドと一緒に中央局に設けられる。従って、話者AまたはBに最も近い位置に反響消去装置が使用され、呼びの他端にあるハイブリッドによって引き起こされる反響を消去している。しかし、反響消去装置は、一般に、それ自身反響消去装置を有するVシリーズモデムで、高ビット速度のデータトラフィックを行う接続に対しては遮断されることが望ましい。反響回路網消去装置を無効にするために、モデムは、2100ヘルツのトーンを送信する。そこでは、周期的な位相反転が、データ通信セッションの初めに、450ミリ秒毎にトーン中に挿入されている。そのようなトーンが送信される場合、反響消去装置は無効にされるべきである。また、位相反転なしの2100ヘルツのトーンが送信される場合には、反響消去装置は無効にされない。無効化トーンの特徴は、ITU−T推奨G165において定義される。その幾つかは、次の通りである。トーン検出器は、155−205°の範囲の周期的な位相変化を持つ2079−2121ヘルツの周波数範囲内のトーンを検出する必要がある。そのトーン検出器は、1900−2350ヘルツの周波数範囲外にあるトーンを検出してはならない。さらに、トーン無効化装置は、110°よりも小さいトーンの位相変化を検出してはならない。検出を禁止するために必要とされる白色ノイズエネルギーが、トーンのエネルギーよりも大きいものであってはならない。トーン検出器は、−35dbよりも小さいレベルを持つトーンを検出してはならない。
ノイズ内の純正弦波の検出は、多くの既知の解法を持つ古典的な信号処理問題である。他方、周期的な位相反転を持つ正弦波の検出法に関する既知の業績は皆無である。その問題に対する最適な解法は、無効化信号に対して適切なフィルタを与えることである。しかし、これは、受け入れがたいほどの大きな計算上の複雑さや、長い処理遅れを伴うアルゴリズムを必要とする。
実際に使用されている既知のトーン検出器は、入力信号に作用するある形態の位相ロックループを有する。位相ロックループの出力は、起こり得る時間変移した入力信号と比較される。位相反転が存在していない場合には、位相ロックループの出力は、入力信号に近いものである。もし、位相反転が生じている場合には、位相ロックループの出力は、その位相ロックループに含まれる時定数によって決定される時間だけ、その入力信号から離れる。この差分が、位相反転を検出するために使用される。この解法の問題点は、位相反転検出が、正確な検出の確率を低下させる帯域外ノイズ信号を含む信号について実行されることにある。もし、その構成内に帯域通過フィルタ手段を含ませた場合には、帯域外ノイズのほかに、位相反転の明確さをも取り除いてしまい、位相ロックループは、なだらかな位相変化を捉えることになる。これにより、入出力信号の差が小さくなり、検出を悪化させる。
従って、上述された従来技術の欠点を克服するトーン検出器が、技術的に求められている。
発明の要約
本発明の目的は、位相ロックループや位相反転検出装置ではなく、同相及び直交チャンネルを持つフィードフォワード受信機構造を用いることによって、上記従来技術の欠点を克服したトーン無効化装置を提供することにある。
本発明の一実施例によれば、電話システムにおいていつ反響消去装置が無効にされるべきかを決定するための方法及び装置が開示されている。初めに、第1の電力推定量が入力信号から決定される。さらに、その入力信号は、同相及び直交の成分に分割される。その後、同相及び直交成分は、サブサンプルされ、第二の電力推定量を決定するために使用される。所定のトーンが存在するか否かを決定するために、第1及び第2の電力推定量が比較される。所定のトーンが検出されたとき、本発明は、同相及び直交成分を用いて、その所定のトーン内に位相反転が存在するかどうかを決定する。位相反転が検出されたとき、反響消去装置が無効化される。
【図面の簡単な説明】
本発明のこれらの及び他の特徴及び利点は、図面と関連して行われる以下の記述から、当業者にとって容易に明らかになるであろう。
図1は、本発明の一実施例に係るトーン存在検出器の説明図である。
図2は、トーン存在検出器の周波数弁別の説明図である。
図3は、本発明の一実施例に係る反相検出器の説明図である。
図4は、本発明の一実施例に係るトーン検出器の構成のブロック図である。
図5は、本発明の一実施例に係るトーン検出器の動作を説明しているフローチャートである。
図6は、ローパスフィルタの振幅特性の説明図である。さらに
図7(a)−図7(d)は、位相変化を持つ入力信号の説明図である。
詳細な説明
従来技術と異なり、本発明では、反相検出器内に位相ロックループを使用していない。その代わりに、トーン検出のために、同相及び直交位相チャンネルを持つフィードフォワード受信機構造が使用される。さらに、同一のローパスフィルタリングされかつサブサンプルされた同相及び直交位相成分が、受信されたトーンの位相推定量を計算するために使用される。
そのトーン検出器は、3つの主要部に分割され得る。すなわち、トーンが現れているかどうかを検出する部分、サイレンスを検出する第2の部分、及び位相の反転を検出する第3の部分である。トーンを検出する部分が、図1に表わされている。検出器10は、2100Hzの電力を含む音声信号に反応しない特定のトーンを検出する。入力信号Sは、2つの通路を介して送られる。第1の通路は、計算機12において広帯域電力計算を受け、低域ろ過されて広帯域電力Psをもたらす。第2の通路は、計算機14において狭帯域電力計算を受け、低域ろ過されて狭帯域電力Ptをもたらす。狭帯域電力Ptは、広帯域電力Psと、比較器16において比較される。Pt>Psであると決定された場合には、2100Hzのトーンが現れているものと考えられる。もし入力信号が、周波数掃引されるピュアトーンである場合には、Pt及びPsのレベルが、図2に示されているように、周波数とともに変化する。検出器の帯域幅は、狭帯域フィルタ及び2つの通路の相対利得によって決められる。もし、信号レベルが増大される場合には、Pt及びPs曲線が図2の上方に移動するが、検出器の帯域幅は同じ状態にある。低レベルに対しては、Ps値が、Pt=−33dBmOに対応するしきい値で飽和される。
その信号がトーンとノイズを含む場合には、狭帯域Pt曲線が僅かに影響を受けるだけであるが、Ps曲線は大きく上方に移動する。或るノイズレベルにおいて、その検出器はトーン検出を停止する。この効果によって、2100Hzを含むが、他の周波数の大きな電力も含む、音声すなわちデータ信号によって引き起こされる偽検出から保護される。
サイレンス検出器に対しては、保持帯域内のエネルギーを検出するために、広帯域電力Psが使用される。広帯域電力Psがしきい値よりも小さく、例えば−34dBmO、なったとき、トーン検出器は解除される。
反相検出器の動作が、図3に示されている。入力信号周波数は、2100Hzの公称周波数から外れるので、位相角は、時間とともに線形的に変化する。容易に検出される信号を得るために、以下にさらに説明されるように、位相角の二次導関数が使用される。入力信号は、その入力信号の正弦および余弦成分を生成するために、2100Hzの参照信号で直交復調される。また、位相角は、位相角計算機18において計算される。
本発明の一実施例に係るトーン検出器が、図4に示されている。また、そのトーン検出器の動作について図5を参照して説明する。入力信号が検出器に入ると、それらは幾つかのブランチに分離される。1つのブランチにおいて、入力信号は、帰納的数式を用いて、入ってくる信号sの電力推定量を計算する電力推定器22に与えられる。
s(n+1)=(1−α)Ps(n)+αS2(n+1)
ここで、0<α<1である。
検出器20の主要部において、その入力信号に、それぞれ掛算器24、30によって、正弦波sin(2π2100t)及び余弦波cos(2π2100t)が掛け算される。その後、掛算器24及び30によって出力される積が、ローパスフィルタ26及び32によってローパスフィルタリングされる。最後に、そのローパスフィルタリングされた信号は、二次サンプラー28−34において要素mで二次サンプリングされる。同相及び直交成分の二次サンプリングは、計算上効率的なアルゴリズムを得る目的で行われる。mの適切な値は16であるが、他の値も、ローパスフィルタリング後のナイキスト標本抽出法則を満足する。従って、それらの値も取り得る。
ローパスフィルタリングは、48個の連続サンプルについて加算することによって容易に実施され得る。そのようなフィルタのインパルス応答は、次の通りである。
Figure 0003983809
そのフィルタの周波数応答は、インパルス応答のフーリエ変換を計算することによって得られる。
Figure 0003983809
従って、そのフィルタは図6に示されている線形位相特性及びローパス振幅特性を有する。図6に示されているように、振幅特性のゼロ点は、fs/48Hzの倍数の位置にある。ここで、fsは、サンプル周波数である。これは、比較的大きなサイドローブレベルを持つ狭いメインローブを与える角窓FIRフィルタ設計に対応する。しかし、そのサイドローブレベルは、本発明とは主たる関係を持たないことに留意すべきである。ローパスフィルタリングされた出力信号のちょうど16番目の出力サンプルがすべて必要とされるので合計は、それぞれ16個の連続サンプルをカバーする3個の副加算を用いて得られる。参照トーンは、次式を用いて容易に発生される。
cosf(n+1)=cosfn cosf-sinfn sinf
sinf(n+1)=sinfn cosf+cosfn sinf
その後、検出器は、次式を用いて2100Hz周辺の小さな周波数帯域内部の電力を推定する。
Figure 0003983809
ここで、SiおよびSqは、それぞれ、サブサンプリングされた同相及び直交成分であり、0>β>1である。トーンが存在するか否かを決めるために、推定トーン電力Ptは、推定入力信号電力Psと比較される必要がある。2100Hzトーンは、例えば260msの所定の期間に以下の2つの条件が同時に適合する場合に存在しているものと決定される。
2)トーン電力Ptが、−33dBmOよりも大きく、かつ
3)Pt>0.5Ps
第1の条件は、トーンが、ITU−T G.165仕様に従った意義を持つ充分高い電力を有するか否かを決めるために使用される。第2の条件は、そのトーンが純音として検出されるべき全信号電力と比較して、充分大きな電力を有することを確認するものである。
トーンが存在することが決定された場合、検出器は180°の位相反転が生じているかどうかを決定する必要がある。このため、検出器は、ダウンサンプリングされた信号の位相角を計算する。固定小数点法において、アークタンジェントは、次式によって与えられるベイド近似法を用いて容易に計算され得る。
Figure 0003983809
従って、位相角は、次式によって得られる。
Figure 0003983809
ここで、a及びbは、それぞれ現在の直交及び同相成分である。上式によって得られた結果は、a及びbの符号に従って180°を加算または減算することによって、さらに間隔−180、180°移動させられる。
純音に対して、位相推定量は、次式によって与えられる時間の線形関数である。
Figure 0003983809
ここで、
Figure 0003983809
は、入力トーンの周波数である。位相反転が存在する場合には、位相関数は、位相推定量を微分し、その結果をしきい値と比較することによって検出される不連続性を有する。その不連続性は、導関数内にインパルスとして現れ。しかし、位相の一次導関数は、しきい値において考慮されるべき未知の定数成分2π
Figure 0003983809
を含む。この成分は、二次以上の導関数には存在しない。従って、二次導関数は、検出目的で選ばれているが、それに限定されるものではない。二次導関数は、位相反転が起こったとき、さもなければ0に近いとき、逆極性を持つ2つの連続したインパルスを含む。一方が対応する差分による微分値に近い場合、それらのインパルスの高さは、存在する位相変化に直接関係する。二次差分は、次式のようにして計算される。
d(t)=φ(t)−2φ(t−τ)+φ(t−2τ)
ここで、τは、差分演算子の整数基線値である。
位相反転を検出するために、検出器は、位相の二次差分を計算し、その結果を間隔(−180,180)度に変換し、その結果の絶対値を比較器46内のしきい値と比較する。一実施例では、そのしきい値が132.5、すなわち、110と155°の平均値、に設定される。出力が、差分演算子の基線値によって時間的に分離された、2個の連続したピークを有する場合には、位相反転が存在しているものと決定される。
図7(a)−(b)に表わされているように、トーンの位相が180度だけ変化する場合には、一次差分φ(t)φ(t−τ)は、トーンの周波数によって決定される定数および180度の高さを持つピークからなる。二次差分は、2つの180度ピークからなる。その定数成分は取り除かれる。その後、二次差分が、しきい値と比較される。比較を簡単に行うために、必要ならば360度を加算または減算することによって、二次導関数が、最初にアーク関数の主要値の間隔、すなわち(−180、180)度に変換される。二次導関数の絶対値を取ることによって、さらに簡単にすることができる。従って、ただ一つの正のしきい値が必要とされるだけである。しかし、これは単に実施を簡単化するためだけであることに留意されるべきである。二次導関数の値がτによって分離された2つの時刻にしきい値を越える場合には、位相反転が存在するということが決定される。
ローパスフィルタリングは、サブサンプルされた信号においても、復調器の出力における位相ジャンプが、数個の連続したサンプルにわたって平滑化されるようなやり方で、その信号に影響をあたえる。拡張の負の影響を低減させるために、二次差分は、充分大きな基線τと比較されるべきである。本発明の一実施例によれば、8個のサンプルに等しい基線値が使用される。当業者は、本発明がその精神すなわち必然的な特性から逸脱することなく、他の形態においても実施され得ることを理解されるであろう。従って、現に開示された実施例は、すべての点において実例であり、それに制限されるものではない。本発明の範囲は、前述の説明よりもむしろここに添付した請求の範囲によって示され、均等の範囲に入るあらゆる変更が、本発明の範囲に包含される。

Claims (10)

  1. 電話システムにおける反響消去装置の動作を制御するためのトーン検出器であって、上記トーン検出器が、
    入力信号の第1の電力推定量を決定するための手段と、
    上記入力信号を同相成分と直交成分に分割するための手段と、
    上記同相及び直交成分をサブサンプルするための手段と、
    上記サブサンプルされた同相及び直交成分を用いて、第2の電力推定量を決定するための手段と、
    上記第1及び第2の電力推定量を比較し、所定のトーンが存在するかどうかを決定するための手段と、
    上記サブサンプルされた同相及び直交成分を用いて、上記所定のトーン内の位相反転を検出するための手段と、を有し
    上記位相反転を検出するための手段は、
    位相推定量の二次導関数を決定するための手段と、
    上記二次導関数を、−180、180度間の間隔内にある第1の値に変換するための手段と、
    上記第1の値の絶対値をしきい値と比較し、位相反転の存在を決定するための手段と、
    を有することを特徴とするトーン検出器。
  2. 請求の範囲第1項に記載のトーン検出器において、約155から205度の位相反転が、約420から480ミリ秒の間隔で、無効化トーン信号内に発生することを特徴とするトーン検出器。
  3. 請求の範囲第1項に記載のトーン検出器において、上記所定のトーンが、約2100Hzであることを特徴とするトーン検出器。
  4. 請求の範囲第1項に記載のトーン検出器において、上記所定のトーンが、2079から2121Hzの範囲内にあることを特徴とするトーン検出器。
  5. 請求の範囲第項に記載のトーン検出器において、上記しきい値が132.5度であることを特徴とするトーン検出器。
  6. 電話システムにおける反響消去装置において無効化トーンを検出する方法であって、上記方法が、
    入力信号の第1の電力推定量を決定するステップと、
    上記入力信号を同相成分と直交成分に分割するステップと、
    上記同相及び直交成分をサブサンプルするステップと、
    上記サブサンプルされた同相及び直交成分を用いて、第2の電力推定量を決定するステップと、
    上記第1及び第2の電力推定量を比較し、所定のトーンが存在するかどうかを決定するステップと、
    上記サブサンプルされた同相及び直交成分を用いて、上記所定のトーン内の位相反転を検出するステップと、を有し、
    上記位相反転を検出するステップは、
    位相推定量の二次導関数を決定するステップと、
    上記二次導関数を、−180、180度間の間隔内にある第1の値に変換するステップと、
    上記第1の値の絶対値をしきい値と比較し、位相反転の存在を決定するステップと、
    を有することを特徴とする無効化トーンの検出方法。
  7. 請求の範囲第項に記載の無効化トーンの検出方法において、約155から205度の位相反転が、約420から480ミリ秒の間隔で、無効化トーン信号内に発生することを特徴とする無効化トーンの検出方法。
  8. 請求の範囲第項に記載の無効化トーンの検出方法において、上記所定のトーンが、約2100Hzであることを特徴とする無効化トーンの検出方法。
  9. 請求の範囲第項に記載の無効化トーンの検出方法において、上記所定のトーンが、2079から2121Hzの範囲内にあることを特徴とする無効化トーンの検出方法。
  10. 請求の範囲第項に記載の無効化トーンの検出方法において、上記しきい値が132.5度であることを特徴とする無効化トーンの検出方法。
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