JP3983557B2 - 誘導結合型プラズマ処理装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は誘導結合型プラズマ処理装置に関するものである。
半導体デバイスの製造では、まず半導体ウェハ上に機能性薄膜が堆積される。
次に、ドライエッチング装置のようなエッチング装置を用いて、その薄膜から不要部分を除去することにより、所望のパターンが形成される。この製膜装置、エッチング装置において、処理室内壁には処理中に発生する反応生成物が付着する。この反応生成物は、各処理装置又は各装置において処理する半導体デバイスに悪影響を及ぼし、その除去は各装置の稼働時間の低下を招く。このため、安定して処理を行いえる誘導結合型のプラズマ処理装置が要求されている。
【0002】
【従来の技術】
従来、複数の機能性薄膜が堆積された半導体ウェハは、各層毎に別々の処理室にてエッチング処理が行われる。この処理には、誘導結合型のプラズマ装置として誘導結合型のエッチング装置が用いられる。エッチング装置は真空容器外周に設けた電極から高周波電力を供給し、真空容器内部に発生したプラズマを用いて薄膜をエッチングするものである。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、このエッチング装置において、製品処理時に発生する反応生成物は、誘電体からなる真空容器の内壁に付着する。反応生成物はエッチング工程毎に壁に堆積する。真空容器内部の温度はエッチング処理中と待機中とで大きく異なる。堆積した反応生成物は頻繁な温度差(熱ストレス)を受けることで壁から剥がれる。剥がれた反応生成物の片は半導体ウェハ上に落下する。比較的大きな落下片は、所望のパターンの半導体デバイスの形成を妨げる。また、真空容器に付着した反応生成物は、プラズマの点火不良やマッチングポイントの変動によるエッチングレートの低下を招く。
【0004】
反応生成物の除去は、日常的な製品処理前の真空容器の洗浄、処理後に組み込まれたドライクリーニングによるクリーニングシーケンス、などにより行われる。このような洗浄は製造装置の稼動コスト、ひいては半導体装置の製造コストを上昇させ、また、エッチング装置の稼働時間を低下させる。
【0005】
本発明は上記問題点を解決するためになされたものであって、その目的は連続処理を安定して行いえる誘導結合型のプラズマ処理装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明は、誘電体よりなり円筒部分を有する形状に形成された反応管と、前記反応管の周囲に配置され、前記反応管の内部にプラズマを発生させる高周波アンテナと、前記反応管内部に該反応管の周方向に沿って少なくとも1つ設けられ、該反応管内面に付着する反応生成物を分断するシールド板と、前記高周波アンテナと前記反応管の少なくとも一方を他方に対して反応管の外周に沿って相対移動させる駆動手段と、を備え、前記高周波アンテナは前記反応管の外周に沿って設けられた巻線と、該巻線よりも前記反応管外周に近接させるとともに該反応管との距離を上端から下端まで等しく形成された斜線部と、を有し、前記反応管内の試料台に載置された試料を前記プラズマにより処理するものである。反応生成物を分断することで高周波窓を形成し、高周波アンテナから反応管内部に高周波電源を供給する。更に、反応管外周に近接された斜線部における結合容量成分は、巻線における結合容量成分よりも大きくなる。さらに、反応管外周との距離が上端から下端まで等しくなるように形成することで、結合容量成分量が斜線部の上端から下端まで均一となる。斜線部の近傍には容量性結合によりイオンシースが形成され、プラズマ中のイオンの極一部が斜線部に向い反応管内壁に付着しようとしている反応生成物と衝突し、反応生成物が拡散される。そして、駆動手段により高周波アンテナと反応管とを相対移動させることで、斜線部が反応管の外周に沿って移動するため、反応管の内面全周に渡って上下方向に幅広く反応生成物の付着が少なくなる。
【0007】
請求項2に記載の発明のように、前記シールド板は、前記反応生成物を前記高周波アンテナに対し垂直に分断する。
請求項3に記載の発明のように、前記シールド板は、前記高周波アンテナの給電部付近の前記反応生成物を分断するように設けられている。
【0008】
請求項4に記載の発明のように、前記高周波アンテナは互いに平行に配置された複数の巻線と、前記複数の巻線間を接続する傾斜線とを含み、前記シールド板は少なくとも給電側の前記巻線付近の前記反応生成物を分断するように設けられている。
【0009】
請求項5に記載の発明のように、前記シールド板は、前記反応管の内面周方向に沿って延びるように形成されている。
請求項6に記載の発明のように、前記シールド板は、前記反応管の半径方向と垂直な面に沿って延びる平板状に形成されている。
【0010】
請求項7に記載の発明は、誘電体よりなり円筒部分を有する形状に形成された反応管と、前記反応管の周囲に配置され、均一の板厚を持つアンテナ用板材を給電側端子から接地側端子に向かって幅を徐々に太くし、それを前記反応管の外周に沿ってその外周から等距離に2ターン巻くように形成され、前記反応管の内部にプラズマを発生させる高周波アンテナと、前記反応管内部に該反応管の周方向に沿って少なくとも1つ設けられ、該反応管内面に付着する反応生成物を分断するシールド板と、前記高周波アンテナと前記反応管の少なくとも一方を他方に対して相対移動させる駆動手段と、を備え、前記反応管内の試料台に載置された試料を前記プラズマにより処理するものである。アンテナ用板材の幅を給電側端子から接地側端子に向かって徐々に太くすると結合容量成分量の分布が均一となり、反応管内壁の反応生成物の堆積分布も均一となり、堆積物が剥がれにくくなる。
【0011】
【発明の実施の形態】
(第一実施形態)
以下、本発明を具体化した第一実施形態を図1〜図3に従って説明する。
【0012】
図1は、ICP方式のプラズマエッチング装置(inductively coupled plasma etching system )の概略図である。
エッチング装置10はエッチング室11を備え、そのエッチング室11は、上部処理室12と下部処理室13とから構成される。
【0013】
上部処理室12は、反応管14と、それの上端を覆う蓋15とから構成される。反応管14は、石英ガラスの誘電体よりなり、円筒形に形成されている。
下部処理室13は、反応管14より幅広く形成された処理容器16と、それの上端を覆う環状蓋17とから構成されている。環状蓋17は反応管14の内径と略同一の内径を持つ環状に形成され、その環状蓋17の上面に反応管14が固定されている。
【0014】
環状蓋17にはエッチングガスをエッチング室11内に導入するガス導入ポート18が形成されている。処理容器16には真空ポンプ19に連なる排気ポート20が形成されている。真空ポンプ19により、プラズマ中の分子、エッチング生成物等が排気される。
【0015】
下部処理室13には試料台21が設けられている。試料台21は静電チャックよりなり、その上面には例えばウェハ等の被エッチング対象である試料22が載置固定される。
【0016】
反応管14の外側には、該反応管14を囲むようにコイルアンテナ23が設けられている。反応管14の内側にはシールド板24が設けられている。尚、本実施形態では、反応管14の内周面に沿って4枚のシールド板24が設けられている。
【0017】
コイルアンテナ23は、プラズマ生成と維持のためにエッチング室11に電力を供給するために設けられている。コイルアンテナ23は、反応管14の外周に沿って略2周するように形成されている。コイルアンテナ23の第1端子(入力側端子)23aは高周波インピーダンス整合器(マッチングユニット)25を介して高周波電源26に接続され、第2端子23bは接地されている。
【0018】
各シールド板24は、石英ガラスよりなる。尚、シールド板24を導電性を有する材料にて形成しても良い。
各シールド板24は、反応管14の軸線方向(図1の上下方向)に沿って延びるように形成されている。各シールド板24は、下端に反応管14の半径方向外側に向かって固定部24aが延出形成され、該固定部24aにより反応管14の内周面から所定距離離間して環状蓋17に固定されている。そして、各シールド板24は、少なくとも給電側の第1巻線31の内側に介在するように、その上端が第1巻線31よりも上方へ突出するように形成されている。
【0019】
エッチング装置10には、プラズマ中のエッチャントであるイオンを試料に向かって加速させるために電力供給源であるバイアス用高周波電源27が備えられ、その高周波電源27は高周波インピーダンス整合器28を介して試料台21に接続されている。
【0020】
更に、エッチング装置10には、コイルアンテナ23を移動させるための駆動器29と、それを制御するためのコントローラ30が備えられている。駆動器29は、コイルアンテナ23と反応管14とを相対移動させるように構成され、本実施形態では、コイルアンテナ23を反応管14の外周に沿って水平回動させえるように構成されている。
【0021】
駆動器29は、コントローラ30からの指令に基づいて動作し、コイルアンテナ23を水平回動させる。コントローラ30は、試料22のエッチングが開始されると駆動器29に指令を出力し、駆動器29はその指令に応答してコイルアンテナ23を水平回動させる。
【0022】
図2はコイルアンテナ23及びシールド板24の説明図であり、図2(a)は平面図、図2(b)は側面図である。
先ず、コイルアンテナ23について詳述する。
【0023】
コイルアンテナ23は、上下方向に所定の間隔にて配置された第1及び第2巻線31,32と、それらを接続する傾斜線33とを備える。第1巻線31は給電側端子23aと接続され、第2巻線32は接地側端子23bと接続されている。
【0024】
第1及び第2巻線31,32は、反応管14外周との間隔が第1の距離にてその外周に沿って水平に略3/4周するように形成されている。傾斜線33は、反応管14外周との間隔が第2の距離にてその外周に沿って略1/4周するように形成されている。そして、第2の距離は、第1の距離に比べて極めて小さく設定されている。
【0025】
これは、コイルアンテナ23において、傾斜線33における容量結合成分を大きくする。誘導結合型と言えどもコイルアンテナ23が有限であるために若干の結合容量成分が存在する。そして、この結合容量成分は、コイルアンテナ23と反応管14との間隔が等しい場合、給電側端子23aから接地側端子23bに向かって減少する。このため、傾斜線33を反応管14外周に近接させることで、この部分における結合容量成分を、第1及び第2巻線31,32のそれよりも大きくする。更に、第2の距離を第1の距離に比べて遙かに小さくし、傾斜線33と反応管14との距離をその上端(第1巻線31の終端)から下端(第2巻線32の先端)までほぼ等しくすることで、その傾斜線33における結合容量成分を上端から下端までほぼ均一にしている。
【0026】
次に、シールド板24について詳述する。
図2(a)に示すように、各シールド板24は、平面形状が反応管14内面に沿って湾曲している。
【0027】
各シールド板24の配置位置は、反応管14内面及び各シールド板24に付着する反応生成物を周方向に途切れさせるように形状・配置位置が設定されている。詳しくは、シールド板24の周方向両端と反応管14内面との距離L1は、シールド板24に付着する反応生成物と反応管14に付着する反応生成物が堆積量増加に伴い互いに接触しないように設定される。シールド板24の周方向の幅L2は、シールド板24の両側から該シールド板24と反応管14の間に回り込む反応生成物が接触しない(繋がらない)ように設定される。そして、シールド板24と反応管14とが離間する距離L3は、エッチング処理に寄与するプラズマのパワーを減少させないように設定される。
【0028】
次に、上記のように構成されたエッチング装置10の作用を説明する。
まず、コイルアンテナ23の作用を説明する。
ガス導入ポート18より導入されたガスと真空ポンプ19と排気ポート20のコンダクタンスにより、エッチング室11は、所望の雰囲気を形成する。エッチング室11内のガス雰囲気が安定したところでソース用の第1高周波電源26よりコイルアンテナ23に電力が供給され、コイルアンテナ23より発振された電磁波は反応管14を透過してガス分子、原子を電離しエッチング室11内はプラズマ状態となる。
【0029】
コントローラ30は第1高周波電源26の発振とともに駆動器29を起動し、コイルアンテナ23を水平回動させる。
プラズマが安定して十分なイオンが生成されたところで、試料台21にバイアス用の第2高周波電源27より電力を供給し、試料22はイオンアシスト反応やイオン衝撃によりエッチングされる。なお、エッチングが開始されるのは、バイアス電力が供給されてからであるため、コントローラ30は駆動器29を第2高周波電源27の発振時に起動するようにしてもよい。
【0030】
FeRAM等のデバイスに代表されるPt,Ir,PZT,SBT等の材料をエッチングした場合、それらの材料はあらゆるエッチャントと反応性が非常に低い。このため、ほとんどがイオン衝撃によるスパッタエッチでの加工となり、揮発性の分子を作らない。従って、エッチング生成物の多くはそれぞれの原子のままで試料22より削り取られたものであり、エッチング室11内壁つまり反応管14の内壁に付着する。
【0031】
このとき、コイルアンテナ23の傾斜線33近傍の反応管14内壁には、容量結合によりイオンシース(ion sheath)が形成され、プラズマ中のイオンの極一部はエッチング室11からコイルアンテナ23の方向に向かい反応管14内壁に衝突する。アンテナ近傍でのイオンシースの形成は、反応管14に限らず、使用する電波を透過する誘電体で起こる。
【0032】
コイルアンテナ23の容量結合によるイオンシースで加速されたイオンと反応管14内壁に付着しようとしているエッチング生成物は衝突し、エッチング生成物は拡散される。その結果、コイルアンテナ23近傍には、エッチング生成物の付着量が少ない。
【0033】
更に、傾斜線33において、その上端から下端までの結合容量成分がほぼ均一である。従って、エッチング生成物の拡散は、コイルアンテナ23の上端から下端までほぼ均一におこり、それに対応する反応管14へのエッチング生成物の付着量はほぼ均一になる。
【0034】
イオンシースを大きくすることによりコイルアンテナ23により生成されたエッチャントであるイオンの反応管14方向へ向かう量が多くなるのであるが、ICP方式により生成されたイオン密度は非常に高く、エッチングレートに影響するほどウェハに向かうイオンは減少しない。
【0035】
次に、シールド板24の作用を説明する。
基板上に積層した金属膜をエッチング処理した場合、導電性の反応生成物が反応管14内面及び各シールド板24内側面に付着する。その付着した反応生成物は、連続した処理によって反応室内部全体に均一化する。シールド板24は、このように付着する反応生成物をその設定位置によりコイルアンテナ23に対して垂直に分断する。
【0036】
詳述すると、シールド板24の周方向両端と反応管14内面との距離L1が小さいと、シールド板24に付着する反応生成物と反応管14に付着する反応生成物22a(図3(a)参照)が堆積量増加に伴い互いに接触してしまうため、反応生成物の分断ができない。距離L1が大きいと反応生成物22aがシールド板24と反応管14の間に回り込み、反応管14に付着する。そして、シールド板24の周方向の幅L2が小さいと、回り込み反応管14に付着した反応生成物22aが繋がってしまい、同様に分断ができない。これらの場合、図3(b)に示す従来例と同様に反応生成物22aが連続する。
【0037】
また、シールド板24と反応管14の間の間隔も重要である。即ち、シールド板24と反応管14とが離間する距離L3が大きすぎると、反応管14とシールド板24の間でプラズマが発生し、エッチング処理に寄与するプラズマのパワーが減少するからである。
【0038】
反応生成物22aは、シールド板24によりコイルアンテナ23の垂直方向に分断され、スリットが形成される。このスリットはコイルアンテナ23から反応管14内部にプラズマを発生させる高周波電力を供給する高周波窓として機能する。即ち、本実施形態のエッチング装置10は、シールド板24によって反応管14内面に付着する反応生成物22aに高周波窓を形成することで、エッチング処理に寄与するプラズマのパワー減少を抑えることができる。
【0039】
また、上記のように付着し分断された反応生成物22aは、導電性を有しているため、ファラデーシールドと同等に機能する。プラズマ処理装置に備えられるファラデーシールドは、処理室内に発生するプラズマの電位を変化させる容量結合成分をカットする効果がある。従って、本実施形態のエッチング装置10は、反応管14に付着する反応生成物22aをシールド板24によってコイルアンテナ23と垂直方向に分断させることで、ファラデーシールドを処理室内に備えた構成と等価となる。このため、本実施形態のエッチング装置10は、エッチング処理により発生する反応生成物22aをファラデーシールドとして利用してプラズマの電位を安定させ、処理を安定に行う。
【0040】
以上記述したように、本実施の形態によれば、以下の効果を奏する。
(1)反応管14の内側にシールド板24を設け、反応管14内面に付着する導電性を有した反応生成物22aを、コイルアンテナ23の垂直方向に沿って分断するようにした。反応生成物22aを分断して高周波窓が形成され、該高周波窓を介してコイルアンテナ23から反応管14内に効率よく高周波電力を供給することができる。また、分断された反応生成物22aは、ファラデーシールド効果を奏し、プラズマ電位を安定化する。その結果、安定したプラズマを発生させ、プラズマの点火不良やエッチングレートの低下を防ぐことができる。
【0041】
(2)コイルアンテナ23の傾斜線33を反応管14外周に近づけて容量性結合を持たせ、該コイルアンテナ23を反応管14外周に沿って回動させるようにした。反応管14内壁には、容量結合によりイオンシース(ion sheath)が形成され、プラズマ中のイオンのほとんどは試料22に向かい、それをエッチングする。そして、イオンの極一部はコイルアンテナ23の方向に向かい反応管14内壁に衝突する。コイルアンテナ23の容量結合によるイオンシースで加速されたイオンと反応管14内壁に付着しようとしているエッチング生成物は衝突し、エッチング生成物は拡散される。その結果、エッチング処理を行うと同時に、反応管14の全周においてエッチング生成物の付着量を少なくし、反応管14の洗浄周期を長くすることができる。
【0042】
(3)コイルアンテナ23の傾斜線33を第1及び第2巻線31,32よりも反応管14外周に近づけたため、結合容量の強い部分を容易に形成することができる。そして、コイルアンテナ23を反応管14外周に沿って回動させるようにしたため、その反応管14全周に渡り上下方向に幅広くエッチング生成物の付着量を略均一に少なくすることができる。
【0043】
(第二実施形態)
以下、本発明を具体化した第二実施形態を図4に従って説明する。
尚、説明の便宜上、図1と同様の構成については同一の符号を付してその説明を一部省略する。
【0044】
図4は、ICP方式のプラズマエッチング装置の概略図である。
エッチング装置40は、駆動器41がエッチング室11の蓋15に固定されている。駆動器41はモータ42及びそれにより回動駆動されるロータリコネクタ43を備える。
【0045】
ロータリコネクタ43は、中空の軸44と、それに対してベアリング45により回動可能に支持されたリング状の出力部46とから構成され、中空軸44が蓋15上面に固定されている。
【0046】
ロータリコネクタ43は、中空軸44と出力部46との間が高周波電源の導通可能に構成され、中空軸44が整合器25を介して第1高周波電源26に接続され、出力部46がコイルアンテナ23の給電側端子23aに接続されている。これにより、第1高周波電源26から整合器25及びロータリコネクタ43を介してコイルアンテナ23に電力供給がなされる。
【0047】
蓋15には、エッチング室11内部と中空軸44内部とを連通する連通孔15aが設けられ、その連通孔15aにはガス導入ポート47が連なるように設けられ、そのガス導入ポート47及び連通孔15aを介してエッチング室11内にエッチングガスが導入される。また、ガス導入ポート47は、蓋15の温度調整を行うための温調ケーブルが挿入可能に形成されている。
【0048】
ロータリコネクタ43の出力部46にはプーリー48が同軸状に固定され、そのプーリー48にはモータ42の出力軸に固定されたプーリー49との間にタイミングベルト50が掛け渡されている。
【0049】
下部処理室13内には、試料としてのウェハ22を固定する試料台としての静電チャック51が設けられ、その静電チャック51は整合器28を介してバイアス用電源を供給する第2高周波電源27に接続されている。
【0050】
静電チャック51は、略円盤状に形成され、中央にウェハ22の径より小さな径の載置部が形成されており、段差となる外周部にはそれを覆う略円環状の石英プレート52が固定されている。
【0051】
次に、上記のように構成されたエッチング装置40の作用を説明する。
ガス導入ポート18,47より導入されたガスは、エッチング室11中で所望の圧力雰囲気にコントロールされる。エッチング室11内のガス雰囲気が安定したところで第1高周波電源26よりコイルアンテナ23に電力が供給され、コイルアンテナ23より発振された電磁波は反応管14を透過してガス分子、原子を電離しエッチング室11内はプラズマ状態となる。
【0052】
図示しないコントローラは、第1高周波電源26の発振とともにモータ42を起動し、タイミングベルト50を経由してプーリー48に回転動作が伝達される。プーリー48にはロータリコネクタ43が固定されており、その先に固定されているコイルアンテナ23が同時に回転する。
【0053】
プラズマが安定して十分なイオンが生成されたところで、第2高周波電源27より電力を供給し、ウェハ22はイオンアシスト反応やイオン衝撃によりエッチングされる。
【0054】
FeRAM等のデバイスに代表されるPt,Ir,PZT,SBT等の材料をエッチングした場合、それらの材料はあらゆるエッチャントと反応性が非常に低い。このため、ほとんどがイオン衝撃によるスパッタエッチでの加工となり、揮発性の分子を作らない。従って、エッチング生成物の多くはそれぞれの原子のままで試料22より削り取られたものであり、エッチング室11内壁つまり反応管14の内壁に付着する。
【0055】
このとき、コイルアンテナ23の傾斜線33近傍の反応管14内壁には、容量結合によりイオンシース(ion sheath)が形成され、プラズマ中のイオンの極一部はエッチング室11からコイルアンテナ23の方向に向かい反応管14内壁に衝突する。アンテナ近傍でのイオンシースの形成は、石英反応管14に限らず、使用する電波を透過する誘電体で起こる。
【0056】
コイルアンテナ23の容量結合によるイオンシースで加速されたイオンと反応管14内壁に付着しようとしているエッチング生成物は衝突し、エッチング生成物は拡散される。その結果、コイルアンテナ23近傍には、エッチング生成物の付着量が少ない。
【0057】
以上記述したように、本実施形態によれば、第一実施形態の効果に加えて、以下の効果を奏する。
(1)蓋15上面に固定したロータリコネクタ43にコイルアンテナ23を接続し、モータ42にてロータリコネクタ43に同軸状に固定したプーリー48を回動させ、コイルアンテナ23を反応管14外周に沿って回動させるようにした。その結果、コイルアンテナ23を反応管14外周に沿って精度良く回動させ、反応管14内壁に付着するエッチング生成物の堆積レートのバラツキを抑えることができる。
【0058】
(2)中空軸44を有するロータリコネクタ43を用いることで、蓋15の温度調節と、エッチング室11の上部からのガス導入とを行うことが可能となる。
尚、前記各実施形態は、以下の態様に変更してもよい。
【0059】
・上記各実施形態のコイルアンテナ23の形状を、適宜変更して実施しても良い。
例えば、図5(a),(b)に示すように、コイルアンテナ61を形成する。該コイルアンテナ61は、反応管14外周面に近接する傾斜線62と、その傾斜線62に連続する第1及び第2巻線63,64を有する。傾斜線62は反応管14外周と第2の距離を離してその反応管14に沿って略1/4周するように形成されている。第1及び第2巻線63,64は、反応管14外周面から第1の距離だけ離間し、傾斜線62との接続点において反応管14から第2の距離だけ離間する。このようにしても、上記各実施形態と同様に、傾斜線62の接合容量成分を、第1及び第2巻線63,64のそれよりも大きくし、反応管14内壁へのエッチング生成物の付着量を低減することができる。
【0060】
また、図6(a),(b)に示すように、コイルアンテナ71は、電力供給側から徐々に太くした傾斜線72と、それに接続された第1及び第2巻線63,64を備える。このようにすれば反応管14に対して容量性結合量の分布が均一となる。これにより、エッチング生成物の堆積レートを低くし、反応管14内壁の堆積分布も均一となり、堆積物は剥がれ難くなる。
【0061】
更に、コイルアンテナを、それが反応管14外周に投影される面積を給電側端子から接地側端子に向かって徐々に大きくするように形成しても良い。
例えば、図7(a),(b)に示すように、均一の板厚を持つアンテナ用板材81を給電側端子81aから接地側端子81bに向かって幅を徐々に太くし、それを反応管14の外周に沿ってその外周から等距離に略2ターン巻くように形成する。また、図8(a),(b)に示すように、均一の板厚及び幅を持つアンテナ用板材82を90°ひねり、それを反応管14の外周に沿ってその外周から等距離に略2ターン巻くように形成する。
【0062】
板材81,82を反応管14外周と等距離に略2ターン巻くと、それの容量性結合量は、反応管14の投影面積を給電側端子81a,82aから接地側端子81b,82bに向かって徐々に大きくすることで、容量性結合量の分布が均一となる。これにより、エッチング生成物の堆積レートを低くし、反応管14内壁の堆積分布も均一となり、堆積物は剥がれ難くなる。
【0063】
このように、コイルアンテナ23を反応管14に近づけたり、アンテナ23の反応管14に投影される面積を大きくすることにより、イオンシースの大きさが変更される。このため、エッチング材料やエッチャントの違いによる生成物の付着量の違いに対応して生成物の付着をコントロール可能となり、付着レートを減少させ反応管14の洗浄周期を長期化することが可能となる。
【0064】
・上記各実施形態のシールド板24の形状を、適宜変更して実施してもよい。例えば、図9(a),(b)に示すように、シールド板91を、反応管14の半径方向に対して垂直な面に沿って延びる平板状に形成する。また、シールド板は少なくとも給電側の第1巻線31に対応して設ければよく、図10(a),(b)に示すように、給電側の第1巻線31の内側にのみを覆う形状に形成したシールド板92に具体化する。尚、このシールド板92を図9(a)(b)のシールド板91と同様に、反応管14の半径方向に対して垂直な面に沿って延びる平板状に形成してもよい。
【0065】
・上記各実施形態のコイルアンテナ23,61,71,81,82を、誘導結合型プラズマCVD装置(inductively coupled plasma enhanced CVD system)等の生成したプラズマにより試料に所定の処理を施す装置に応用して実施してもよい。もちろん、試料としてウェハ以外に、液晶表示装置(LCD)や薄膜磁気ヘッド(TFH)などの製造工程に用いられるエッチング装置および化学的気相堆積(CVD)装置に具体化してもよい。
【0066】
・上記各実施形態では、エッチング室11を固定し、反応管14の外周に沿ってコイルアンテナ23を回動させるようにしたが、コイルアンテナ23を固定し反応管14を回動させるようにしてもよい。また、コイルアンテナ23及び反応管14を、ともに水平回動させるようにしても良い。このようにしても、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0067】
・上記各実施形態におけるコイルアンテナ23と反応管14との相対移動は水平回動のみならず、上下移動、水平回動及び上下移動を行うようにしてもよい。
・上記実施形態において、コントローラ30でコイルアンテナ23の移動速度を可変するようにしてもよく、これにより、性質の異なるエッチング生成物の堆積速度を減少させることが可能となる。
【0068】
・上記各実施形態では、コイルアンテナ23を略2ターン状に形成したが、略1ターン状又は略3ターン以上の形状に形成しても良い。
・上記各実施形態において、コイルアンテナ23の第1及び第2巻線31,32と反応管14外周との間隔を相違させても良い。例えば、第1巻線31の間隔を第2巻線32の間隔より長くする。これにより、第1巻線31の容量性結合量と第2巻線32のそれとを略同一にすることができ、エッチング生成物の堆積レートをほぼ均一にすることができる。
【0069】
・上記第一実施形態において、上部処理室12を釣り鐘形状の石英ベルジャにより構成したプラズマ装置に具体化してもよい。
・上記各実施形態において、容量性結合を調整していないコイルアンテナを用いて実施してもよい。
【0070】
・上記各実施形態のシールド板24,91,92を、CVD装置(Chemical Vapor Deposition System)やPVD装置(Physical Vapor Deposition System)等の薄膜形成装置に適用しても良い。また、上記各実施形態のコイルアンテナ23を各種薄膜形成装置に適用しても良い。
【0071】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、安定して連続処理を行うことが可能な誘導結合型プラズマ装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第一実施形態のプラズマエッチング装置の概要図である。
【図2】 高周波アンテナ及びシールドの説明図である。
【図3】 シールド及び反応生成物の説明図である。
【図4】 第二実施形態のプラズマエッチング装置の概要図である。
【図5】 別の高周波アンテナの説明図である。
【図6】 別の高周波アンテナの説明図である。
【図7】 別の高周波アンテナの説明図である。
【図8】 別の高周波アンテナの説明図である。
【図9】 別のシールドの説明図である。
【図10】 別のシールドの説明図である。
【符号の説明】
14 反応管
23 コイルアンテナ
24 シールド板
29 駆動手段
31 巻線としての第1巻線
32 巻線としての第2巻線
33 傾斜線

Claims (7)

  1. 誘電体よりなり円筒部分を有する形状に形成された反応管と、
    前記反応管の周囲に配置され、前記反応管の内部にプラズマを発生させる高周波アンテナと、
    前記反応管内部に該反応管の周方向に沿って少なくとも1つ設けられ、該反応管内面に付着する反応生成物を分断するシールド板と、
    前記高周波アンテナと前記反応管の少なくとも一方を他方に対して該反応管の外周に沿って相対移動させる駆動手段と、
    を備え、
    前記高周波アンテナは前記反応管の外周に沿って設けられた巻線と、該巻線よりも前記反応管外周に近接させるとともに該反応管との距離を上端から下端まで等しく形成された斜線部と、を有し、
    前記反応管内の試料台に載置された試料を前記プラズマにより処理することを特徴とする誘導結合型プラズマ処理装置。
  2. 前記シールド板は、前記反応生成物を前記高周波アンテナに対し垂直に分断することを特徴とする請求項1記載の誘導結合型プラズマ処理装置。
  3. 前記シールド板は、前記高周波アンテナの給電部付近の前記反応生成物を分断するように設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の誘導結合型プラズマ処理装置。
  4. 前記高周波アンテナは互いに平行に配置された複数の巻線と、前記複数の巻線間を接続する傾斜線とを含み、
    前記シールド板は少なくとも給電側の前記巻線付近の前記反応生成物を分断するように設けられていることを特徴とする請求項1〜3のうちの何れか一項記載の誘導結合型プラズマ処理装置。
  5. 前記シールド板は、前記反応管の内面周方向に沿って延びるように形成されていることを特徴とする請求項1〜4のうちの何れか一項記載の誘導結合型プラズマ処理装置。
  6. 前記シールド板は、前記反応管の半径方向と垂直な面に沿って延びる平板状に形成されていることを特徴とする請求項1〜5のうちの何れか一項記載の誘導結合型プラズマ処理装置。
  7. 誘電体よりなり円筒部分を有する形状に形成された反応管と、
    前記反応管の周囲に配置され、均一の板厚を持つアンテナ用板材を給電側端子から接地側端子に向かって幅を徐々に太くし、それを前記反応管の外周に沿ってその外周から等距離に2ターン巻くように形成され、前記反応管の内部にプラズマを発生させる高周波アンテナと、
    前記反応管内部に該反応管の周方向に沿って少なくとも1つ設けられ、該反応管内面に付着する反応生成物を分断するシールド板と、
    前記高周波アンテナと前記反応管の少なくとも一方を他方に対して該反応管の外周に沿って相対移動させる駆動手段と、を備え
    前記反応管内の試料台に載置された試料を前記プラズマにより処理することを特徴とする誘導結合型プラズマ処理装置。
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