JP3982694B2 - アンテナ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、アレー構成を有するアンテナ装置に関し、特に、アレー構成に無給電素子を用いるアンテナ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
複数の放射素子を配列したアレーアンテナでは、放射素子のそれぞれに給電するために、給電線路をトーナメント状に分岐した給電回路が用いられている。しかし、給電線路により構成される給電回路では給電線路で損失が発生するため、アンテナの実効利得(動作利得)が低下するという問題があった。
この問題を解決するものとして、無給電素子アレーを用いたアンテナ装置が提案されている。図9は、この従来のアンテナ装置の構成を示す図である。この図において、(a)はアンテナ装置を上側から見た透視図、(b)はアンテナ装置の縦断面構成を示す概念図である。
【0003】
図9に示すアンテナ装置は、誘電体基板151上面に形成された給電素子111と、誘電体基板151の上に配置された誘電体基板152の上面に形成された4個の無給電素子121と、誘電体基板151の下面に形成された地板141とから構成されている。ここで、無給電素子とは、少なくとも電磁界的な結合により励振される素子をいう。
給電素子111および4個の無給電素子121は方形パッチであり、給電素子111の四隅が4個の無給電素子121の一隅とそれぞれ対向するように配置されている。また、給電素子111は給電線路112を介して高周波信号源113に接続されている。
【0004】
給電素子111に給電し給電素子111を励振すると、給電素子111と4個の無給電素子121とが電磁界的に結合することにより4個の無給電素子121を励振し、アレー動作させることができる。よって、この4個の無給電素子121がアレーアンテナの素子アンテナとして作用する。
このアンテナ装置では、給電素子111と4個の無給電素子121との間で給電線路が不要となり、高周波信号源113と給電素子111との間に給電線路112を設ければよいだけなので、給電回路を構成する給電線路の総延長を短くし、線路損失に基づく実効利得の低下を抑制することができる(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
【非特許文献1】
H.Legay and L.Shafai,“New stacked microstrip antenna with large bandwidth and high gain,"IEE Proc.-Microw.Antennas Propag.,Vol,141,No.3,pp.199-204,June 1994.
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
複数の無給電素子を用いる場合、これらの無給電素子が形成される領域の面積が広いほど、指向性利得を高めることができる。しかし、図9に示した従来のアンテナ装置では、指向性利得に影響を与える素子形成領域121Sの面積を広くするために、無給電素子121同士の間隔を広げすぎると、給電素子111と無給電素子121との電磁界的な結合が不十分となり、無給電素子121を励振できなくなる。よって、従来のアンテナ装置には、高利得化に限界があるという問題があった。
【0007】
また、従来のアンテナ装置では、1個の給電素子111で励振可能な無給電素子121の数には限りがある。このため、4素子より多素子のアレーアンテナを構成するには、4個の無給電素子121を励振する給電素子111を複数設け、それぞれの給電素子111に給電回路を用いて分配給電する必要がある。この場合、給電線路をトーナメント状に分岐した給電回路が用いられるので、線路損失により実効利得が低下するという問題があった。
【0008】
また、準ミリ波帯以上の周波数帯で使用されるアンテナ装置では、GaAsなど電子移動度が大きい半導体基板上に、給電素子111のほか増幅回路や変復調回路などを作り込むことにより、高速な通信処理が可能となる。しかし、電子移動度が大きい半導体は高価であり、無給電素子121が形成される基板151,152と同程度の大面積の基板を電子移動度が大きい半導体で形成するとなると、基板の製造コストが増大してしまう。したがって、準ミリ波帯以上の周波数帯で使用されるアンテナ装置において、通信処理の高速化には多大なコストが必要となるという問題があった。
さらに、従来のアンテナ装置は、固定の指向特性を実現するものである。すなわち、放射ビームは固定されており、それを走査することができないという問題があった。
【0009】
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、アレー構成に無給電素子を用いるアンテナ装置の利得を、従来より更に向上させることにある。
また、他の目的は、準ミリ波帯以上の周波数帯で使用されるアンテナ装置において、通信処理の高速化に要するコストを低減することにある。
また、他の目的は、上記アンテナ装置のビーム走査を可能にすることにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明のアンテナ装置は、給電素子を有する給電素子層と、この給電素子層上に配置され無給電素子を有する無給電素子層とを備え、無給電素子層が、方形の無給電素子を少なくとも2素子有する層を少なくとも2層有し、無給電素子を方形の素子形成領域の端に配置し、無給電素子層の最下層の無給電素子が、給電素子と電磁界的に結合することにより励振され、無給電素子層の最下層を除く層の無給電素子が、その層の下層の無給電素子と電磁界的に結合することにより励振され、無給電素子層のうちの一の層で最も外側に配置された無給電素子の中心から給電素子層に降ろした足と給電素子の中心との距離と、無給電素子層のうちの一の層よりも上の層で最も外側に配置された無給電素子の中心から給電素子層に降ろした足と給電素子の中心との距離とが、略1:2であることを特徴とする。
【0011】
給電素子および無給電素子には指向特性に広がりがあるので、給電素子と無給電素子層最下層の無給電素子との間、および、無給電素子層の上層と下層の無給電素子同士の間の電磁界的な結合を十分とりつつ、無給電素子が形成される領域の面積を下層から上層へ行くにしたがって徐々に広げることが可能となる。
また、無給電素子が形成される領域の面積を下層から上層へ行くにしたがって徐々に広げることにより、無給電素子の数を下層から上層へ行くにしたがって徐々に増やし、素子間隔を短くすることが可能となる。
【0013】
また、給電素子層が形成された半導体基板と、無給電素子層が形成された複数の誘電体基板とを備え、これらの半導体基板と誘電体基板とが積層されたものであってもよい。
上述したアンテナ装置では、1個の給電素子で複数の無給電素子をアレー動作させることができるので、給電素子層が形成される半導体基板の面積は無給電素子層が形成される誘電体基板の面積よりも小さくてよい。よって、給電素子層が形成される半導体基板を電子移動度が大きい材料で形成しても、半導体基板の製造コスト上昇が抑制される。
【0014】
また、無給電素子の少なくとも1つに接続されインピーダンスが変化するインピーダンス可変デバイスと、このインピーダンス可変デバイスに接続されインピーダンス可変デバイスのインピーダンス変化を制御する制御装置とを備えるものであってもよい。
インピーダンス可変デバイスのインピーダンスにより、無給電素子の共振周波数が変化し、励振位相が変化する。無給電素子は励振位相に応じた位相の放射をするので、それぞれの無給電素子による放射が等位相面を形成するようにインピーダンス可変デバイスのインピーダンスを制御することにより、この等位相面と直交する方向に放射ビームを形成することができる。また、インピーダンス可変デバイスのインピーダンスを変化させることにより、放射ビームを走査することができる。
【0015】
なお、無給電素子の配置を、無給電素子の形状および数、並びに、無給電素子層の各層の間に配置される基板の厚みおよび材料の少なくとも1つに基づき決定するようにしてもよい。
【0016】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るアンテナ装置の構成を示す斜視透視図である。
この図に示すアンテナ装置は、給電素子11を有する給電素子層10と、この給電素子層10の上に配置され、無給電素子21,31を有する無給電素子層とから構成されている。ここで、無給電素子層は二層構成を有し、下層である第1の無給電素子層20は4個の無給電素子21を有し、上層である第2の無給電素子層30は4個の無給電素子31を有している。
【0017】
より具体的には、給電素子11は誘電体基板51の上面に形成され、第1の無給電素子層20の4個の素子21は、誘電体基板51の上に配置された誘電体基板52の上面に形成され、第2の無給電素子層30の4個の素子31は、誘電体基板52の上に配置された誘電体基板53の上面に形成されている。誘電体基板51の下面には、地板41が形成されている。
【0018】
給電素子11はマイクロストリップアンテナからなり、誘電体基板51の上面に形成されたマイクロストリップ線路からなる給電線路12を介して高周波信号源(図示せず)に接続されている。第1の無給電素子層20の4個の素子21は、誘電体基板52を挟んで、給電素子11と電磁界的な結合が十分得られる位置に配置される。また、第2の無給電素子の4個の素子31のそれぞれは、誘電体基板53を挟んで、第1の無給電素子層20の4個の素子21のいずれかと電磁界的な結合が十分得られる位置に配置される。
【0019】
給電線路12を介して給電素子11に給電し、給電素子11を励振すると、給電素子11と第1の無給電素子層20の4個の素子21とが電磁界的に結合することにより素子21が励振される。そして、第1の無給電素子層20の4個の素子21と第2の無給電素子層30の4個の素子31とが電磁界的に結合することにより素子31が励振される。よって、第2の無給電素子層30の4個の素子31をアレー動作させることができる。
【0020】
本実施の形態では、給電素子11の指向特性には広がりがあるので、給電素子11と第1の無給電素子層20の素子21との電磁界的な結合を十分とりつつ、給電素子11との対向領域よりも広い領域21Sに4個の素子21を配置することができる。同様に、第1の無給電素子層20の素子21の指向特性には広がりがあるので、第1の無給電素子層20の素子21と第2の無給電素子層30の素子31との電磁界的な結合を十分とりつつ、素子21の形成領域21Sよりも更に広い領域31Sに4個の素子31を配置することができる。
【0021】
よって、直接的には給電素子11との電磁界的結合が不十分となる広範囲の領域31Sに配置された無給電素子31であっても、その素子31の層30と給電素子11の層10との間に新たに無給電素子21の層20を介在させることにより、上記の領域31Sに配置された無給電素子31を間接的に給電素子11と電磁界的に結合させることが可能となる。
無給電素子の形成領域が広いほど、最も外側の無給電素子同士の間隔が広くなるので、アレーアンテナの指向特性が鋭くなり、指向性利得が高まる。よって、第2の無給電素子層30の素子形成領域31Sを第1の無給電素子層20の素子形成領域21Sよりも広くすることにより、従来よりも指向性利得を高めることができる。
【0022】
なお、第2の無給電素子層30の素子31には、無給電素子層20と30との間の電磁界を引き寄せる作用があるので、第2の無給電素子層30の素子31の配置を調整することにより、実効利得の低下を抑制することも可能である。
【0023】
次に、本実施の形態に係るアンテナ装置の指向特性の一例を示す。図2は、指向特性の解析に用いたアンテナ装置の各部の寸法を示す図である。この図において、(a)はアンテナ装置を上側から見た透視図、(b)はアンテナ装置を側方から見た透視図である。
【0024】
給電素子層10と地板41との間の誘電体基板51の厚さは0.1mm、給電素子層10と第1の無給電素子層20との間の誘電体基板52の厚さは0.3mm、第1の無給電素子層20と第2の無給電素子層30との間の誘電体基板53の厚さは0.2mmである。誘電体基板53の上には、第2の無給電素子層30を保護する厚さ0.1mmの誘電体基板54が装荷されている。なお、誘電体基板51〜54には、比誘電率εr=7.7の低温焼成セラミック基板が用いられているものとする。
また、給電素子11は1.7mmの方形パッチ、第1の無給電素子層20の素子21は1.84mmの方形パッチ、第2の無給電素子層30の素子31は1.8mmの方形パッチである.第2の無給電素子層30の素子間隔(図2(a)において横方向または縦方向に隣り合う2素子の中心間距離)は、0.37λ0(λ0は自由空間における波長)である。
【0025】
このようなアンテナ装置の指向特性をモーメント法により解析した。図3は、その解析結果を示すグラフである。横軸は放射角度(Angle)[deg]、縦軸は相対電力(Relative power)[dB]である。このグラフでは、第2の無給電素子層30(2-layer)の放射を実線で示している。これに加えて、誘電体基板53より上の層がなかった場合の第1の無給電素子層20(1-layer)の放射を一点鎖線で、また誘電体基板52より上の層がなかった場合の給電素子層10(Normal)の放射を点線で示している。このグラフから、第2の無給電素子層30を設けることにより指向特性が鋭くなると同時に、指向性利得が約3dB向上することがわかる。
なお、誘電体基板51〜54の厚さおよび材料(εr)、給電素子11の形状および寸法、無給電素子21,31の形状、寸法、数および配置によりアンテナ装置の特性が変化するので、アンテナ装置はこれらをパラメータにして設計される。
【0026】
本実施の形態では、無給電素子層を2層有する例を示したが、3層以上有するものであってもよい。無給電素子層を3層以上有する場合には、最下層の無給電素子が、給電素子11と電磁界的な結合が十分得られる位置に配置され、それ以外の層の無給電素子が、それぞれの層の下層の無給電素子と電磁界的な結合が十分得られる位置に配置される。この場合も、各層の素子形成領域を、下層から上層へ行くにしたがって徐々に広げ、最も外側の無給電素子同士の間隔を広げることができる。
また、無給電素子層を構成する各層がそれぞれ無給電素子を4個有する例を示したが、各層はそれぞれ無給電素子を2個以上有していればよい。なお、各層で素子数が異なっていてもよい。
【0027】
また、図2には、放射素子11および無給電素子21,31が方形パッチである例を示したが、パッチの形状は五角形などの多角形または円形であってもよい。さらに、給電素子11と無給電素子21、または無給電素子21と無給電素子31とがそれぞれの隅で対向する例を示したが、必ずしもそれぞれの隅で対向していなくてもよい。
以上のことは、これから説明する他の実施の形態でも同様に言えることである。
【0028】
(第2の実施の形態)
本発明の第2の実施の形態では、第1の実施の形態で挙げたパラメータのうち無給電素子21,31の配置を調整することにより最大利得を得るアンテナ装置の構成法について説明する。図4は、このアンテナ装置の構成法に用いるパラメータを示す図である。この図において、(a)はアンテナ装置を上側から見た透視図、(b)はアンテナ装置を側方から見た透視図である。説明の都合上、(a)には給電素子11の中心を原点Oとするxy座標を記載している。なお、図4では、図2に示した部材と同一部材に対しては、図2と同一符号で示している。
【0029】
図4(a)に示すように、給電素子11の中心Oから放射方向に、第1の無給電素子層20の4個の素子21および第2の無給電素子層30の4個の素子31が配置されているものとする。ここで、1つの無給電素子21の中心の座標を(w1,w1)、1つの無給電素子31の中心の座標を(w2,w2)とする。ただし、0<w1<w2である。
このw1およびw2をパラメータとして、アンテナ装置の指向特性をモーメント法により解析した。ここで、その他の条件は第1の実施の形態で説明した解析と同じとした。
【0030】
図5は、その解析結果を示す図である。横軸はw2[×λ0]であり、縦軸はw1[×λ0]または最大利得(Absolute gain)[dBi]である。最大利得の値とそのときのw2の値との関係を点線で示し、最大利得が得られるw2の値とそのときのw1の値との関係を実線で示している。
このグラフから、w2がw1の略2倍のときに最大利得が得られると言える。よって、この関係を満たすように無給電素子21,31を配置することにより、アンテナ装置の指向性利得を高めることができる。
また、アンテナ装置の設計にかかるパラメータから無給電素子21,31の配置を削除することができる。これにより、パラメータの数が少なくなるので、目的の特性に応じたアンテナ装置を短時間で設計することができ、アンテナ装置の新規開発に要する設計コストを削減することができる。
【0031】
本実施の形態では、無給電素子21,31の配置のパラメータとしてw1,w2を用いた例を示したが、第1の無給電素子層20の素子21の中心から給電素子層10に降ろした足と給電素子11の中心との距離d1と、第2の無給電素子層30の素子31の中心から給電素子層10に降ろした足と給電素子の中心との距離d2とを用いてもよい。この場合も同様に、d2をd1の略2倍としてときにアンテナ装置の指向性利得を最大にすることができる。
【0032】
(第3の実施の形態)
本発明の第3の実施の形態に係るアンテナ装置は、第1の実施の形態に係るアンテナ装置において、無給電素子層の上層の素子数を下層の素子数より増やしたものである。図6は、このアンテナ装置の構成を示す斜視透視図である。この図では、図1に示した部材と同一部材に対しては、図1と同一符号で示している。図6に示すアンテナ装置では、下層である第1の無給電素子層20は4個の無給電素子21を有し、上層である第2の無給電素子層30は16個の無給電素子31を有している。第1の実施の形態で説明したように、第2の無給電素子層30では第1の無給電素子層20よりも素子形成領域を広くとれるので、第2の無給電素子層30の素子数を第1の無給電素子層20の素子数より増やしても、第2の無給電素子層30の素子31を重ならないように配置することができる。そして、第2の無給電素子層30の素子数を増やして素子間隔を短くすることにより、グレーティングローブの発生を抑えることができる。
【0033】
本実施の形態では、給電素子11へは給電線路12を用いて給電しているものの、アレーアンテナの素子アンテナとして作用する第2の無給電素子層30の素子31へは、第1の無給電素子層20の素子21を介する電磁界的な結合により給電を行っている。電磁界的な結合による給電は給電線路を用いた給電よりも低損失であるので、多素子のアレーアンテナを構成する場合の実効利得の低下を抑制することができる。
【0034】
本実施の形態でも、無給電素子層を3層以上にしてもよい。この場合も、各層の無給電素子の数を下層から上層へ行くにしたがって徐々に増やすことができる。
また、本実施の形態でも、第2の実施の形態と同様にしてアンテナ装置の指向性利得を最大にすることができる。ただし、指向特性に影響を与えるのは各層の最も外側の無給電素子であるから、一の層で最も外側の無給電素子の中心から給電素子層10に降ろした足と給電素子11の中心との距離をd1とし、その上層で最も外側の無給電素子の中心から給電素子層10に降ろした足と給電素子11の中心との距離をd2とする。そして、d2をd1の略2倍としたときに、アンテナ装置の指向性利得を最大にすることができる。
【0035】
(第4の実施の形態)
本発明の第4の実施の形態に係るアンテナ装置は、給電素子11をチップモジュールで構成したものである。図7は、このアンテナ装置の構成を示す図である。この図において、(a)は斜視透視図、(b)は部分縦断面図である。なお、図7では、図1,図6に示した部材と同一部材に対しては、図1,図6と同一符号で示している。
【0036】
このアンテナ装置では、チップモジュール14が用いられている。このチップモジュール14は、GaAsなど電子移動度が大きい材料からなる半導体基板上に、増幅回路や変復調回路などとともに、給電素子11となるアンテナを一体形成したMMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)である。
誘電体基板51およびその下面に形成された地板41は一部が刳り抜かれ、キャビティ51Aが形成されている。このキャビティ51Aにチップモジュール14の給電素子11側を上にして配置することにより、無給電素子21,31が形成された誘電体基板52,53にチップモジュール14が実装される。その結果、チップモジュール14の半導体基板と誘電体基板52,53とが積層された構成となる。なお、チップモジュール14が配置されたキャビティ51Aは、蓋42により塞がれる。
【0037】
このように、電子移動度が大きい半導体基板に形成されたMMICを用いることにより、準ミリ波帯以上の周波数帯であっても高速な通信処理が可能となる。また、このアンテナ装置では、1個の給電素子11で多数の無給電素子31をアレー動作させることができるので、給電素子11が形成される半導体基板の面積は無給電素子31が形成される誘電体基板53の面積よりも遙かに小さくてよい。よって、半導体基板の材料が高価であっても、半導体基板の製造コスト上昇を抑制することができる。よって、準ミリ波帯以上の周波数帯で使用されるアンテナ装置において、通信処理の高速化に要するコストを削減することができる。
【0038】
なお、チップモジュール14は、上記半導体基板上に増幅回路や変復調回路などを形成したMMICのモジュールと、給電素子11となるアンテナのモジュールとを組み合わせたものであってもよい。
また、図7では、第3の実施の形態に係るアンテナ装置の給電素子11としてチップモジュール14を用いる例を示したが、第1または第2の実施の形態に係るアンテナ装置にチップモジュール14を用いてもよいことは言うまでもない。
【0039】
(第5の実施の形態)
本発明の第5の実施の形態に係るアンテナ装置は、放射ビームの走査を可能にするものである。図8は、このアンテナ装置の第2の無給電素子層の構成を示す図である。なお、図8では、図6,図7に示した部材と同一部材に対しては、図6,図7と同一符号で示している。
【0040】
誘電体基板53の上面には、第2の無給電素子層30を構成する無給電素子31が格子配列されている。すべての無給電素子31は接地されるとともに、それぞれインピーダンス可変デバイス32の一端に接続されている。インピーダンス可変デバイス32の他端には制御線33を介して制御装置61が接続されている。なお、制御装置61は誘電体基板53上に実装される必要はない。
インピーダンス可変デバイス32は、制御装置61より印加される制御信号によりインピーダンスが変化するデバイスである。インピーダンス可変デバイス32としては、例えばpinダイオード、バラクタダイオード、バリキャップダイオード、トランジスタ回路またはFET回路などを使用することができる。
【0041】
インピーダンス可変デバイス32のインピーダンスにより、無給電素子31の共振周波数が変化し、励振位相が変化する。無給電素子31は励振位相に応じた位相の放射をするので、それぞれの無給電素子31による放射が等位相面を形成するようにインピーダンス可変デバイス32のインピーダンスを制御することにより、この等位相面と直交する方向に放射ビームを形成することができる。また、インピーダンス可変デバイス32のインピーダンスを変化させることにより、放射ビームを走査することができる。よって、アレー構成に無給電素子を用いるアンテナ装置で、フェーズドアレーアンテナを実現することができる。
【0042】
なお、第2の無給電素子層30の素子31のすべてにインピーダンス可変デバイス32を接続する例を説明したが、素子31の少なくとも1個にインピーダンス可変デバイス32を接続することによりフェーズドアレーアンテナを実現できる場合もある。
また、本実施の形態は、上述したいずれの実施の形態にも適用することができる。
【0043】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のアンテナ装置では、無給電素子層に、方形の無給電素子を少なくとも2素子有する層を少なくとも2層設け、無給電素子を方形の素子形成領域の端に配置し、無給電素子層のうちの一の層で最も外側に配置された無給電素子の中心から給電素子層に降ろした足と給電素子の中心との距離と、無給電素子層のうちの一の層よりも上の層で最も外側に配置された無給電素子の中心から給電素子層に降ろした足と給電素子の中心との距離とを、略1:2とする。よって、給電素子と無給電素子層最下層の無給電素子との間、および、無給電素子層の上層と下層の無給電素子同士の間の電磁界的な結合を十分とりつつ、無給電素子が形成される領域の面積を、下層から上層へ行くにしたがって徐々に広げることが可能となるとともに、最大利得を得ることができる。よって、従来より更に利得を向上させることができる。
【0044】
また、無給電素子が形成される領域の面積を下層から上層へ行くにしたがって徐々に広げることにより、無給電素子の数を下層から上層へ行くにしたがって徐々に増やすことが可能になる。これにより、素子間隔が短くなるので、グレーティングローブの発生を抑制することができる。この際、最上層の無給電素子へは電磁界的な結合により給電が行われる。電磁界的な結合による給電は給電線路を用いた給電よりも低損失である。よって、給電線路をトーナメント状に分岐した給電回路を必要とした従来の多素子アレーアンテナよりも、線路損失による利得の低下を抑制することができる。
【0046】
また、給電素子層が形成された半導体基板と、無給電素子層が形成された誘電体基板を積層して、アンテナ装置を構成する。このアンテナ装置では、1個の給電素子で複数の無給電素子をアレー動作させることができるので、給電素子層が形成される半導体基板の面積は無給電素子層が形成される誘電体基板の面積よりも小さくてよい。よって、準ミリ波帯以上の周波数帯での通信処理の高速化を図るため、給電素子層が形成される半導体基板を電子移動度が大きく高価な材料で形成しても、半導体基板の製造コスト上昇を抑制することができる。よって、準ミリ波帯以上の周波数帯で使用されるアンテナ装置において、通信処理の高速化に要するコストを削減することができる。
【0047】
また、無給電素子に接続されたインピーダンス可変デバイスと、このインピーダンス可変デバイスのインピーダンス変化を制御する制御装置とを設ける。インピーダンス可変デバイスのインピーダンス変化を制御することにより、放射ビームを走査することができる。よって、アレー構成に無給電素子を用いるアンテナ装置で、フェーズドアレーアンテナを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施の形態に係るアンテナ装置の構成を示す斜視透視図である。
【図2】 指向特性の解析に用いたアンテナ装置の各部の寸法を示す図である。
【図3】 指向特性の解析結果を示すグラフである。
【図4】 本発明の第2の実施の形態に係るアンテナ装置の構成法に用いるパラメータを示す図である。
【図5】 最大利得の値とそのときのパラメータw1,w2の値との関係を示す図である。
【図6】 本発明の第3の実施の形態に係るアンテナ装置の構成を示す斜視透視図である。
【図7】 本発明の第4の実施の形態に係るアンテナ装置の構成を示す図である。
【図8】 本発明の第5の実施の形態に係るアンテナ装置の第2の無給電素子層の構成を示す図である。
【図9】 無給電素子アレーを用いた従来のアンテナ装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
10…給電素子層、11…給電素子、12…給電線路、14…チップモジュール、20…第1の無給電素子層、21,31…無給電素子、32…インピーダンス可変デバイス、33…制御線、21S,31S…素子形成領域、30…第2の無給電素子層、41…地板、42…蓋、51〜54…誘電体基板、51A…キャビティ、61…制御装置。

Claims (5)

  1. 給電素子を有する給電素子層と、この給電素子層上に配置され、無給電素子を有する無給電素子層とを備えたアンテナ装置において、
    前記無給電素子層は、方形の無給電素子を少なくとも2素子有する層を少なくとも2層有し、
    前記無給電素子を方形の素子形成領域の端に配置し、
    前記無給電素子層の最下層の無給電素子は、前記給電素子と電磁界的に結合することにより励振され、
    前記無給電素子層の前記最下層を除く層の無給電素子は、その層の下層の無給電素子と電磁界的に結合することにより励振され、
    前記無給電素子層のうちの一の層で最も外側に配置された無給電素子の中心から前記給電素子層に降ろした足と前記給電素子の中心との距離と、前記無給電素子層のうちの前記一の層よりも上の層で最も外側に配置された無給電素子の中心から前記給電素子層に降ろした足と前記給電素子の中心との距離とは、略1:2である
    ことを特徴とするアンテナ装置。
  2. 請求項1に記載されたアンテナ装置において、
    前記無給電素子層を構成するそれぞれの層では、前記無給電素子が形成される領域の面積が下層から上層へ行くにしたがって広がっていることを特徴とするアンテナ装置。
  3. 請求項2に記載されたアンテナ装置において、
    前記無給電素子層を構成するそれぞれの層では、前記無給電素子の数が下層から上層へ行くにしたがって増加することを特徴とするアンテナ装置。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載されたアンテナ装置において、
    前記給電素子層が形成された半導体基板と、前記無給電素子層が形成された複数の誘電体基板とを備え、 前記半導体基板と前記誘電体基板とが積層されていることを特徴とするアンテナ装置。
  5. 請求項1〜のいずれか1項に記載されたアンテナ装置において、
    前記無給電素子の少なくとも1つに接続され、インピーダンスが変化するインピーダンス可変デバイスと、
    このインピーダンス可変デバイスに接続され、前記インピーダンス可変デバイスのインピーダンス変化を制御する制御装置と
    を備えたことを特徴とするアンテナ装置。
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