JP3982209B2 - 光半導体装置用樹脂組成物及び光半導体装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内部にCCD(電荷結合素子)等の光半導体素子が収納された光半導体装置を作製する際に用いられる光半導体装置用樹脂組成物、及びこれを用いて作製される光半導体装置、より詳しくは中空パッケージに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、半導体素子や電子部品を封止する方法として、ハーメチックシール法や樹脂封止法が知られている。前者は、半導体素子等を金属やセラミック製の中空容器の内部に配設しボンディングした後、溶接、ろう付け、ガラスシール等で密封して行う方法であり、例えば、CCD(電荷結合素子)等の集積回路部品の封止に利用されている。一方、後者は、粉末樹脂材料をタブレットにし、半導体素子等をセットした金型で封止成形して行う方法である。これらの封止法においては、生産性、信頼性、コストの諸点に大幅な相違があるが、近年では気密性に優れるハーメチックシール法よりも、むしろ大量生産向きであって、コストメリットの高い樹脂封止法が主流を占めてきている。
【0003】
従って、上述したようなCCD等の光半導体素子を封止する際にも樹脂封止が行われ、集積回路用パッケージが作製されている。このものは、図1に示すように、凹部2を有する基材1が樹脂組成物で形成され、この基材1の凹部2に光半導体素子3が配設されると共に、基材1の凹部2の開口が透光性を有するレンズやガラスカバー等のカバー4によって密閉され、中空パッケージとして形成されている。5はシール材であって、基材1とカバー4を接着すると共に凹部2を密閉するものである。そして、この中空パッケージ外部の光はカバー4を通して凹部2に配設された光半導体素子3に送られ、逆に光半導体素子3により発せられた光はカバー4を通して中空パッケージ外部に放射されるようになっているものである。
【0004】
一般にこのような樹脂封止において樹脂組成物としては、優れた接着性や低吸湿性を有するエポキシ樹脂としてo−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、硬化剤としてフェノールノボラック樹脂、硬化促進剤として有機リン化合物、無機充填材として溶融シリカを主成分とするものが使用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような樹脂組成物は、ハーメチックシール法で用いられる金属やセラミックに比べて透湿性が高いため、中空パッケージ外部の湿気が基材1を通過して内部に取り込まれ易くなり、カバー4の内側の面に結露や曇りが発生し、中空パッケージ外部の光が内部の光半導体素子3に十分到達しなくなったり、逆に中空パッケージ内部の光半導体素子3により発せられた光が外部に十分放射されなくなったりするという問題があった。
【0006】
そこで、結露や曇りの原因となる湿気を中空パッケージ内部に生じさせないようにするために、基材1を形成する樹脂組成物の透湿性を低下させることが行われている。すなわち樹脂組成物の透湿性を低下させると、中空パッケージ外部の湿気が基材1を通過し難くなるものであるが、特にこのとき樹脂組成物の吸湿性を高めておくと、中空パッケージ内部に湿気が取り込まれたとしても、この湿気を基材1に吸収させて除去することができるものである。
【0007】
しかしこの場合は、湿気を吸収することにより樹脂組成物自体が伸長などの寸法変化を起こし、パッケージの平坦性が損なわれ、反り等を起こし、実装する上で問題があった。
【0008】
現在、上述したような問題を解消するための検討がなされているが、未だ満足するような結果は得られていない。
【0009】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、カバーに結露や曇りが発生しなくなると共に高い寸法安定性を有する光半導体装置用樹脂組成物、及びこれを用いて作製される光半導体装置を提供することを目的とするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明の請求項1に係る光半導体装置用樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材及び硬化促進剤を必須成分とする光半導体装置用樹脂組成物において、エポキシ樹脂として下記式(1)で示される骨格を有するものを用い、硬化剤として下記式(2)で示される骨格を有するものを用い、硬化促進剤として、イミダゾール類を用い、かつ硬化物のガラス転移温度が190℃以上であることを特徴とするものである。
【0011】
【化2】
【0012】
また請求項2の発明は、請求項1において、無機充填材を樹脂組成物全量に対して65〜93質量%含有して成ることを特徴とするものである。
【0014】
また請求項3に係る光半導体装置は、基材1に凹部2を形成すると共に凹部2に光半導体素子3を収納し、凹部2の開口を覆うようにカバー4を設けた光半導体装置において、請求項1又は2に記載の光半導体装置用樹脂組成物を用いて基材1を形成して成ることを特徴とするものである。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0016】
本発明に係る光半導体装置用樹脂組成物は、CCD(電荷結合素子)等の集積回路部品を収納する基材を形成する際に用いられるものであり、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材及び硬化促進剤を必須成分とするものである。以下では、まずこれらの必須成分のそれぞれについて説明する。
【0017】
すなわちエポキシ樹脂としては、上記式(1)で示される骨格を有するエポキシ樹脂(以下、式(1)のエポキシ樹脂ともいう)を用いるものであり、これによって光半導体装置用樹脂組成物の硬化物の寸法安定性を高く得ることができると共に吸湿率を増加させることができるものである。またエポキシ樹脂としては、式(1)のエポキシ樹脂以外のものも併用することができる。このようなエポキシ樹脂としては、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ブロム含有エポキシ樹脂、ナフタレン環を有するエポキシ樹脂等を挙げることができる。なお、式(1)のエポキシ樹脂の配合量は、エポキシ樹脂全量に対して、50質量%以上であるのが好ましい。
【0018】
また硬化剤としては、上記式(2)で示される骨格を有する硬化剤(以下、式(2)の硬化剤ともいう)を用いるものであり、これによって光半導体装置用樹脂組成物の硬化物の寸法安定性を高く得ることができると共に吸湿率を増加させることができるものである。また硬化剤としては、式(2)の硬化剤以外のものも併用することができる。このような硬化剤としては、1分子中に2個以上のフェノール性水酸基を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、フェノールアラルキル樹脂、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、テルペル系骨格を有する硬化剤、ジシクロ骨格を有する硬化剤、ナフトールアラルキル樹脂等、各種多価フェノール化合物やナフトール化合物を挙げることができる。なお、硬化剤の配合量は、エポキシ樹脂に対する硬化剤の当量比が0.8〜1.2になるように設定するのが好ましい。
【0019】
また無機充填材としては、特に限定されるものではないが、溶融シリカや結晶シリカを用いるのが好ましい。これら以外の無機充填材としては、例えば、アルミナや窒化珪素等を挙げることができ、これらのうちの1種を単独で使用したり、あるいは2種以上を併用したりすることができる。なお、無機充填材の配合量は65〜93質量%であるのが好ましく、より好ましくは70〜88質量%である。ここで、無機充填材の配合量が65質量%未満であると、硬化物の吸湿率が大幅に増加して吸湿による寸法変化率が大きくなるおそれがあり、逆に93質量%を超えると、光半導体装置用樹脂組成物の流動性が低下し、成形トラブルが発生するおそれがある。
【0020】
また硬化促進剤としては、2−フェニルイミダゾールや2−メチルイミダゾール等のイミダゾール類を用いる。これによって光半導体装置用樹脂組成物の硬化物の吸湿率をさらに増加させることができるため、信頼性の高い樹脂組成物を得ることができる。イミダゾール類以外の硬化促進剤としては、例えば、トリフェニルホスフィン等の有機ホスフィン類、1,8−ジアザビシクロ〔5.4.0〕ウンデセン−7(DBU)等の三級アミン類を挙げることができ、これらのうちの1種を単独で使用したり、あるいは2種以上を併用したりすることができる。なお、硬化促進剤の配合量は、光半導体装置用樹脂組成物全量に対して、0.01〜1質量%であるのが好ましい。
【0021】
以上が光半導体装置用樹脂組成物の必須成分であるが、これら以外に必要に応じて、天然カルナバ等のワックス、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランやγ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等のカップリング剤、ブロム化エポキシ樹脂等の難燃剤、三酸化アンチモン等の難燃助剤、カーボンブラック等の顔料を添加することができる。
【0022】
そして、上記のエポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材及び硬化促進剤その他の成分を配合し、ミキサー、ブレンダー等で均一に混合した後、ニーダーやロール等で加熱混練することにより、光半導体装置用樹脂組成物を調製することができる。なお、加熱混練した後で必要に応じて冷却固化し、粉砕して粉状等にして使用することもできる。
【0023】
上記のようにして調製した光半導体装置用樹脂組成物を用いることによって、光半導体装置を作製することができる。例えば、光半導体装置として図1に示すような中空パッケージを作製するにあたっては、以下のようにして行うことができる。すなわち、上記の光半導体装置用樹脂組成物を成形材料として用いてトランスファー成形等の公知の成形法によって、凹部2を有する基材1を形成する。この際、図1に示すようにインナーリード10aが凹部2に配置されると共にアウターリード10bが基材1の外部に配置されるように、リードフレーム10を同時にインサート成形することができる。このようにして形成した基材1の凹部2にCCD等の光半導体素子3を取り付けて収納し、この光半導体素子3とリードフレーム10のインナーリード10aとをワイヤー11で電気的に接続した後、凹部2の開口縁部に公知の接着剤等のシール材5を塗布すると共に凹部2の開口を覆うようにしてレンズやガラスカバー等で形成されるカバー4により密閉することによって、光半導体装置を作製することができる。
【0024】
上記の光半導体装置にあって、基材を形成している光半導体装置用樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度は、190℃以上である。このようにガラス転移温度が高いと、成形温度から室温までの膨張係数が小さくなるため寸法精度が向上する。しかも、硬化物の耐熱性が高くなり、光半導体装置を高温度環境下において問題なく連続使用することができるものである。しかし、硬化物のガラス転移温度が190℃未満であると、寸法精度が悪化する。なお、硬化物のガラス転移温度の実質上の上限は、250℃である。
【0025】
上記のように光半導体装置用樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度を190℃以上に設定するにあたっては、光半導体装置用樹脂組成物を調製する際に、必須成分であるエポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材及び硬化促進剤、さらにはその他の成分の配合量をそれぞれ好ましい範囲で適宜調整することによって行うことができる。
【0026】
【実施例】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明する。
【0027】
(実施例1、2及び比較例1〜11)
エポキシ樹脂として、式(1)のエポキシ樹脂である日本化薬(株)製「EPPN501HY」、o−クレゾールノボラックエポキシ樹脂である住友化学工業(株)製「ESCN−XL」を用いた。
【0028】
また硬化剤として、式(2)の硬化剤である明和化成(株)製「MEH7500」、フェノールノボラック樹脂である群栄化学工業(株)製「PSM6200」を用いた。
【0029】
また無機充填材として、溶融シリカ(30質量%)と結晶シリカ(70質量%)とからなる混合品を用いた。
【0030】
また硬化促進剤として、トリフェニルホスフィン、2−フェニルイミダゾール、2−メチルイミダゾールを用いた。
【0031】
またカップリング剤として、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用いた。
【0032】
また難燃剤としてブロム化エポキシ樹脂である住友化学工業(株)製「ESB400」を、難燃助剤として三酸化アンチモンを、顔料としてカーボンブラックを、ワックスとして天然カルナバを用いた。
【0033】
そして、上記の各成分を表1の配合量で配合し、これをミキサーで粉砕混合した後、50〜120℃のロールで1〜10分間加熱混練することにより、実施例1、2及び比較例1〜11のそれぞれについて光半導体装置用樹脂組成物を調製した。
【0034】
1.ガラス転移温度
硬化物のガラス転移温度を横型ディラトメータにて測定した。
【0035】
2.吸湿率
上記のようにして得た光半導体装置用樹脂組成物を用いて、直径50mm×厚さ3mmの円板状の試験片を成形した。この試験片の質量を予め測定しておき、次いで温度85℃、湿度85%RHの雰囲気に120時間放置して吸湿させた後、この試験片の質量を測定した。そして、試験片の吸湿前の質量と吸湿前後の質量増加分の比から吸湿率を求めた。
【0036】
3.成形収縮率
JIS K 6915、JIS K 6911に準拠して、試験片を成形すると共にマイクロメータを用いて寸法を測定し、成形圧縮率を求めた。
【0037】
4.耐湿信頼性
リードフレーム10を金型にセットし、上記のようにして得た光半導体装置用樹脂組成物を用いてこの金型に175℃、90秒の成形条件でトランスファー成形することによって、凹部2を有する基材1を形成した。そして、シール材5を用いて基材1の凹部2の開口をガラスカバーで形成されたカバー4で覆うことによって、性能評価用のパッケージを作製した。このパッケージを温度85℃、湿度85%RHの雰囲気に500時間放置して吸湿させた後、カバー4に結露や曇りが発生しているか否かを観察し、結露や曇りが発生しているものを不良としてカウントした。表1において分母に観察したパッケージの個数(10個)を、分子に結露や曇りが発生したパッケージの個数を示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1にみられるように、実施例1、2、比較例5〜11のものは比較例1〜4のものよりも、成形収縮率が低くて寸法安定性が高いと共に、耐湿信頼性に優れていることが確認される。特に、実施例1、2及び比較例5〜8、10のものは、基材が高い吸湿率を有しているため、この基材によって凹部内の湿気が除去されることにより、耐湿信頼性が向上していると考えられる。一方、比較例9及び11のものは、比較例1〜4のものよりも吸湿率は低いが、耐湿信頼性に優れており、また成形収縮率が他のものよりも著しく低いため、パッケージに反りはほとんど認められなかった。
【0040】
また、比較例1〜4のものは、実施例1、2及び比較例5〜8、10のものよりも吸湿率が低いため、パッケージ内部の湿気が除去されず、その結果、カバーの内面に結露や曇りが生じ、耐湿信頼性が低下したと考えられる。
【0041】
なお、上述したように比較例1〜4のものは、比較例9及び11のものよりも吸湿率は高いが、成形収縮率が高く、すなわち寸法安定性が著しく低く、パッケージに著しい反りを生じた。
【0042】
【発明の効果】
上記のように本発明の請求項1に係る光半導体装置用樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材及び硬化促進剤を必須成分とする光半導体装置用樹脂組成物において、エポキシ樹脂として上記式(1)で示される骨格を有するものを用いると共に、硬化剤として上記式(2)で示される骨格を有するものを用い、かつ硬化物のガラス転移温度が190℃以上であるので、式(1)のエポキシ樹脂と式(2)の硬化剤とを配合することによって、硬化物の寸法安定性を高く得ることができると共に吸湿率を増加させることができるものであり、また硬化物のガラス転移温度が使用温度範囲よりも高くなることにより、寸法安定性を一層高く得ることができるものである。
また請求項1の発明は、硬化促進剤として、イミダゾール類を用いているので、硬化物の吸湿率をさらに増加させることができるものである。
【0043】
また請求項2の発明は、無機充填材を樹脂組成物全量に対して65〜93質量%含有しているので、硬化物の寸法安定性を一層高く得ることができるものである。
【0045】
また請求項3に係る光半導体装置は、基材に凹部を形成すると共に凹部に光半導体素子を収納し、凹部の開口を覆うようにカバーを設けた光半導体装置において、請求項1又は2に記載の光半導体装置用樹脂組成物を用いて基材を形成しているので、高い吸湿性により凹部内の湿気が除去され、カバーの内面に結露や曇りが発生することを防止することができると共に、基材とカバーとの寸法変化率の差が小さくなり、パッケージの反りを小さくすることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】中空パッケージの一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 基材
2 凹部
3 光半導体素子
4 カバー
Claims (3)
- 無機充填材を樹脂組成物全量に対して65〜93質量%含有して成ることを特徴とする請求項1に記載の光半導体装置用樹脂組成物。
- 基材に凹部を形成すると共に凹部に光半導体素子を収納し、凹部の開口を覆うようにカバーを設けた光半導体装置において、請求項1又は2に記載の光半導体装置用樹脂組成物を用いて基材を形成して成ることを特徴とする光半導体装置。
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