JP3982085B2 - インク組成物およびインクジェット記録方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、インク組成物およびインクジェット記録方法に関し、特に光沢度の高い記録媒体への記録や高速記録においても画像の濃度ムラやブリーディングの少ない良好な画像形成を可能とするインク組成物およびインクジェット記録方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
インクジェットプリンタは他のカラーハードコピーに比較して安価できれいな画像が得られることから広く用いられているが、一方で印字速度の遅さが欠点として上げられてきた。しかし近年、ヘッド駆動周波数の増加、単色当たりのノズル数の増加また一部ではラインヘッド化等の高速記録化技術が進歩し、記録速度は向上の一途をたどっている。
【0003】
この記録速度の増加に伴い、記録媒体上に付着した液滴が記録層中に吸収される前に次の液滴が付着する状況が起きやすく、異色の画像の境界で色が混ざり合うブリーディングや本来均一濃度である画像に濃度ムラが生じるビーディングによる画質の低下が生じやすくなる。特に、高画質が要求される光沢度の高い記録媒体においては、インクの浸透速度が普通紙やコート紙に較べて遅い傾向にあるため、画質の低下が起こり易い。
【0004】
このような状況でインクジェット用インクとしてはブリーディングやビーディングを改善する目的で、今まで以上に高浸透性の界面活性剤の添加や有機溶剤などの添加が試みられているが、ブリーディングやビーディングを完全に防止することは難しかった。
【0005】
また、光沢度の高い記録媒体としても水溶性バインダーを主たるインク吸収層に用いたいわゆる膨潤型と呼ばれる光沢紙や光沢フィルムから、インク吸収層中に空隙を設け、この空隙にインクを吸収させる空隙型光沢紙や光沢フィルムを使用することで、インクの吸収速度が飛躍的に向上し、これに伴ってビーディングやブリーディングが軽減し高品位な画像が得られるようになった。しかし、空隙型記録媒体を用いても、駆動周波数の大きなプリンタで記録する場合にはビーディングやブリーディングが全くない高品位の画像を得ることは困難であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
よって本発明の目的は高光沢の記録媒体に対する記録または高速記録においても良好な画像形成を可能にするインク組成物および記録方法の提供であり、さらには高光沢の記録媒体に対する高速記録においても良好な画像形成を可能にするインク組成物およびインクジェット記録方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的は以下(1)から(6)に示した本発明によって達成された。
(1) 少なくとも、水に溶解または分散してなる色材、水溶性高沸点溶剤、下記一般式( II )で表される化合物を含有するインク組成物。
一般式( II )
R 5 SO 2 N(R 6 )R 7
式中、R 5 は炭素数1〜20の飽和炭化水素基を表す。R 6 、R 7 は各々水素原子、−(EO) n −R 8 、−(PO) n −R 8 、−(EO) m −(PO) n −R 8 又は−(PO) m −(EO) n −R 8 を表す。ただしR 6 とR 7 が同時に水素原子であることはない。R 8 は水素原子又は炭素数1〜4の飽和炭化水素基を表す。1≦n≦50かつ2≦m+n≦50である。但し、EOはエチレンオキシ基を、POはプロピレンオキシ基を表す。
(2) 前記(1)に記載のインク組成物を光沢度40以上のインクジェット用記録媒体に記録することを特徴とするインクジェット記録方法。
(3) 前記(1)に記載のインク組成物を光沢度40以上の空隙型インクジェット用記録媒体に記録することを特徴とするインクジェット記録方法。
(4) 前記(1)に記載のインク組成物を吐出するインクジェット記録方法であり、かつ少なくとも下記(a)、(b)いずれかの条件を満たすことを特徴とするインクジェット記録方法。
(a)記録に際して、あるインク液滴の記録媒体上に着弾し、先に着弾したインクと同一であるインクの液滴が、先に着弾した液滴と少なくとも一部が重なる位置に着弾するまでの時間間隔が0.08ミリ秒以下になる場合がある。
(b)記録に際して、あるインク液滴が記録媒体上に着弾し、先に着弾したインクと異なるインクの液滴が、先に着弾した液滴と少なくとも一部が重なる位置に着弾するまでの時間間隔が5ミリ秒以下になる場合がある。
(5) 光沢度40以上のインクジェット用記録媒体に記録することを特徴とする(4)記載のインクジェット記録方法。
(6) 光沢度40以上の空隙型インクジェット用記録媒体に記録することを特徴とする(4)記載のインクジェット記録方法。
【0008】
以下に、本発明に用いてもよいインク組成物を示す。
(イ) 少なくとも、水に溶解または分散してなる色材、水溶性高沸点溶剤、下記一般式(I)で表される化合物を含有するインク組成物。
【0009】
一般式(I)
R1SO2N(R2)R3
式中、R1は置換、無置換のフェニル基、ナフチル基又はピリジル基を表す。R2、R3は各々水素原子、−(EO)n−R4、−(PO)n−R4、−(EO)m−(PO)n−R4又は−(PO)m−(EO)n−R4を表す。ただしR2とR3が同時に水素原子となることはない。R4は水素原子又は炭素数1〜4の飽和炭化水素基を表す。1≦n≦50かつ2≦m+n≦50である。但し、EOはエチレンオキシ基を、POはプロピレンオキシ基を表す。
【0012】
(ロ) 少なくとも、水に溶解または分散してなる色材、水溶性高沸点溶剤、下記一般式(III)で表される化合物を含有するインク組成物。
【0013】
一般式(III)
R9N(R10)R11
式中、R9は置換、無置換のフェニル基、ナフチル基又はピリジル基を表す。R10、R11は各々水素原子、−(EO)n−R12、−(PO)n−R12、−(EO)m−(PO)n−R12又は−(PO)m−(EO)n−R12を表す。ただしR10とR11が同時に水素原子となることはない。R12は水素原子又は炭素数1〜4の飽和炭化水素基を表す。1≦n≦50かつ2≦m+n≦50である。但し、EOはエチレンオキシ基を、POはプロピレンオキシ基を表す。
【0014】
(ハ) 少なくとも、水に溶解または分散してなる色材、水溶性高沸点溶剤、下記一般式(IV)で表される化合物を含有するインク組成物。
【0015】
一般式(IV)
R13N(R14)R15
式中、R13は各々炭素数6〜8の飽和または不飽和炭化水素基を表す。R14、R15は各々水素原子、−(EO)n−R16、−(PO)n−R16、−(EO)m−(PO)n−R16又は−(PO)m−(EO)n−R16を表す。ただしR14とR15が同時に水素原子となることはない。R16は水素原子又は炭素数1〜4の飽和炭化水素基を表す。1≦n≦50かつ2≦m+n≦50である。但し、EOはエチレンオキシ基を、POはプロピレンオキシ基を表す。
【0022】
本発明に用いてもよい前記一般式(I)および一般式(III)の化合物においてR1、R9に示される基としては例えばフェニル基、ナフチル基、ピリジル基があげられる。これらの基は置換基を有していても無置換でも良い。なかでも置換もしくは無置換のフェニル基が好ましい。
【0023】
本発明における前記一般式(II)の化合物においてR5に示される基としては炭素数1〜20の飽和または不飽和炭化水素基であり、直鎖であっても途中に分岐があっても良い。
【0024】
本発明に用いてもよい前記一般式(IV)の化合物において、R12に示される基としては炭素数6〜8の飽和または不飽和炭化水素基であり、直鎖であっても途中に分岐があっても良い。
【0025】
本発明に用いてもよい前記一般式(I)の化合物においてR2およびR3はエチレンオキシ基および/またはプロピレンオキシ基を有する基を示す。エチレンオキシ基およびプロピレンオキシ基の付加モル数は1以上50モル以下である。また、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の合計が2以上50モル以下である。
【0026】
本発明における前記一般式(II)及び本発明に用いてもよい前記一般式( III )、(IV)の化合物においてはR6、R7、R10、R11、R14およびR15は水素原子またはエチレンオキシ基および/またはプロピレンオキシ基を有する基を示す。エチレンオキシ基およびプロピレンオキシ基の付加モル数は1以上50モル以下である。または、エチレンオキシ基とプロピレンオキシ基が連結している場合にはエチレンオキシ基とプロピレンオキシ基の合計が2以上50モル以下である。
【0027】
本発明に用いてもよい前記一般式(I)の化合物の具体例を以下に示す。
【0028】
【化1】
【0029】
【化2】
【0030】
本発明における前記一般式(II)の化合物の具体例を以下に示す。
【0031】
【化3】
【0032】
【化4】
【0033】
本発明に用いてもよい前記一般式(III)の化合物の具体例を以下に示す。
【0034】
【化5】
【0035】
【化6】
【0036】
本発明に用いてもよい前記一般式(IV)の化合物の具体例を以下に示す。
【0037】
【化7】
【0038】
本発明の一般式(II)の化合物の添加量はインクに対して0.001重量%〜10重量%が好ましく、0.01重量%〜3重量%がより好ましい。
【0039】
本発明の一般式(II)の化合物は単独で用いても二種以上を併用して用いても良い。
【0040】
複数の種類(例えば色材が異なる、色材の含有量が異なる)のインクを使用する場合、一般式(I)〜(IV)の化合物は少なくとも1種類のインクに添加していれば良いが、好ましくは黒を除く全てのインクに添加することが好ましい。さらに、一般式(I)〜(IV)の化合物を黒も含めた全てのインクに添加することがより好ましい。
【0041】
本発明の一般式(II)の化合物はインク組成物中で、完全に溶解している形で存在しても固体の分散状態で存在しても構わないが、完全に溶解した形で存在することがより好ましい。
【0042】
本発明の一般式(II)の化合物を複数のインクに添加する場合、添加する化合物は全てのインクで同一であっても異なっても構わない。また、添加量も全てのインクで同一であっても異なっても構わない。
【0043】
本発明者は一般式(II)の化合物をインクに添加することにより、驚くべきことに、ブリーディングやビーディングが大きく低減し、極めて良好な画像を得ることを見いだした。また、この効果は、光沢度40以上である記録媒体に記録する時や高速記録する時に著しい効果が見られた。
【0044】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0045】
本発明における水に溶解または分散してなる色材としては、顔料、水溶性染料、分散染料のいずれを用いても良い。
【0046】
顔料としては、従来公知の有機及び無機顔料が使用できる。例えばアゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料等のアゾ顔料や、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリレン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサンジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロニ顔料等の多環式顔料や、塩基性染料型レーキ、酸性染料型レーキ等の染料レーキや、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料、カーボンブラック等の無機顔料が挙げられる。
【0047】
顔料の分散方法としては、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー等各種を用いることができる。また、顔料の分散を行う際に分散剤を添加することも可能である。分散剤として、アニオン系、ノニオン系界面活性剤、または高分子分散剤等が挙げられる。
【0048】
水溶性染料としては、例えば酸性染料、塩基性染料、反応性染料が挙げられる。
特に好ましいものはC.I.ダイレクトレッド2、26、31、62、63、72、75、76、79、80、81、83、84、89、92、95、111、173、184、207、211、212、214、218、221、223、224、225、226、227、232、233、240、241、242、243、247、C.I.ダイレクトバイオレット7、9、47、48、51、66、90、93、94、95、98、100、101、C.I.ダイレクトイエロー8、9、11、12、27、28、29、33、35、39、41、44、50、53、58、59、68、86、87、93、95、96、98、100、106、108、109、110、130、132、142、144、161、163、C.I.ダイレクトブルー1、10、15、22、25、55、67、68、71、76、77、78、80、84、86、87、90、98、106、108、109、151、156、158、159、160、168、189、192、193、194、199、200、201、202、203、207、211、213、214、218、225、229、236、237、244、248、249、251、252、264、270、280、288、289、291、C.I.ダイレクトブラック9、17、19、22、32、51、56、62、69、77、80、91、94、97、108、112、113、114、117、118、121、122、125、132、146、154、166、168、173、199、C.I.アシッドレッド35、42、52、57、62、80、82、111、114、118、119、127、128、131、143、151、154、158、249、254、257、261、263、266、289、299、301、305、336、337、361、396、397、C.I.アシッドバイオレット5、34、43、47、48、90、103、126、C.I.アシッドイエロー17、19、23、25、39、40、42、44、49、50、61、64、76、79、110、127、135、143、151、159、169、174、190、195、196、197、199、218、219、222、227、C.I.アシッドブルー9、25、40、41、62、72、76、78、80、82、92、106、112、113、120、127:1、129、138、143、175、181、205、207、220、221、230、232、247、258、260、264、271、277、278、279、280、288、290、326、C.I.アシッドブラック7、24、29、48、52:1、172、C.I.リアクティブレッド3、13、17、19、21、22、23、24、29、35、37、40、41、43、45、49、55、C.I.リアクティブバイオレット1、3、4、5、6、7、8、9、16、17、22、23、24、26、27、33、34、C.I.リアクティブイエロー2、3、13、14、15、17、18、23、24、25、26、27、29、35、37、41、42、C.I.リアクティブブルー2、3、5、8、10、13、14、15、17、18、19、21、25、26、27、28、29、38、C.I.リアクティブブラック4、5、8、14、21、23、26、31、32、34、C.I.ベーシックレッド12、13、14、15、18、22、23、24、25、27、29、35、36、38、39、45、46、C.I.ベーシックバイオレット1、2、3、7、10、15、16、20、21、25、27、28、35、37、39、40、48、C.I.ベーシックイエロー1、2、4、11、13、14、15、19、21、23、24、25、28、29、32、36、39、40、C.I.ベーシックブルー1、3、5、7、9、22、26、41、45、46、47、54、57、60、62、65、66、69、71、C.I.ベーシックブラック8である。
【0049】
分散染料としては、例えばディスパーズイエロー3、4、42、71、79、114、180、199、227、ディスパーズオレンジ29、32、73、ディスパーズレッド11、58、73、180、184、283、ディスパーズバイオレット1、26、48、ディスパーズブルー73、102、167、184を好ましく用いることができる。
【0050】
本発明における水溶性有機溶媒の例としては、アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、セカンダリーブタノール、ターシャリーブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール等)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール等)、多価アルコールエーテル類(例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン等)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド等)、スルホン類(例えば、スルホラン等)、尿素、アセトニトリル、アセトン等が挙げられる。
【0051】
本発明におけるインクは必要に応じて界面活性剤を添加することも可能である。
【0052】
本発明のインクに好ましく使用される界面活性剤としては、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、脂肪酸塩類等のアニオン性界面活性剤、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル類、アセチレングリコール類、ポリオキシエチレン・ポリオキシプロピレンブロックコポリマー類等のノニオン性界面活性剤、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等のカチオン性界面活性剤が挙げられる。
【0053】
本発明におけるインクにはこの他に防腐剤、防黴剤、pH調整剤、粘度調整剤等を必要に応じて添加することも可能である。
【0054】
本発明におけるインクジェット記録方式としてはオンデマンド方式でもコンティニュアス方式でも構わないが、オンデマンド方式のインクジェット記録方法においてより好ましく用いることができる。
【0055】
本発明におけるインクジェットの吐出方式としては、電気−機械変換方式(例えば、シングルキャビティー型、ダブルキャビティー型、ベンダー型、ピストン型、シェアーモード型、シェアードウォール型等)、電気−熱変換方式(例えば、サーマルインクジェット型、バブルジェット型等)、静電吸引方式(例えば、電界制御型、スリットジェット型等)及び放電方式(例えば、スパークジェット型等)などを具体的な例として挙げることができる。
本発明では記録速度を次の二つの時間により定義する。一つは、同じ種類のインク液滴の記録に際して、あるインク液滴の記録媒体上に着弾し、先に着弾したインクと同一であるインクの液滴が、先に着弾した液滴と少なくとも一部が重なる位置に着弾するまでの時間間隔(これを同じ種類のインク間の着弾間隔と呼ぶ)で定義する。もう一つは、異なる種類のインク液滴の記録に際して、あるインク液滴が記録媒体上に着弾し、先に着弾したインクと異なるインクの液滴が、先に着弾した液滴と少なくとも一部が重なる位置に着弾するまでの時間間隔(これを異なるインク間の着弾間隔と呼ぶ)で定義する。ここで、同じ種類のインクとは実質的に同一のインクを指し、例えば使用している素材やその含有量が同じであることを言う。
【0056】
本発明のインクジェット記録方法は記録速度に関係なくその効果を発揮することが可能であるが、特に記録速度が速いインクジェット記録を行うときに効果が大きい。具体的には少なくとも同じ種類のインク間の着弾間隔が0.08ミリ秒以下になる場合があるか、異なるインク間の着弾間隔が5ミリ秒以下である場合があるインクジェット記録方法の場合に好ましく用いることができる。
【0057】
本発明の記録方法における記録媒体は特に問わず、普通紙、コート紙、キャストコート紙、光沢紙、光沢フィルム、OHPフィルムのいずれでも構わない。中でも、光沢度40以上の光沢紙、光沢フィルムに記録する記録方法で従来のインクに対してブリーディングやビーディングなどの画像劣化の低減効果が大きく、特に光沢度40以上の空隙型光沢紙または空隙型光沢フィルムに記録する記録方法で著しい。
【0058】
本発明における光沢度の測定はJIS P 8142記載の75度鏡面光沢度測定によっ測定を行った。また、本発明における空隙型光沢紙および空隙型光沢フィルムとは空隙構造を有するインク吸収層を支持体上に塗設した光沢紙および光沢フィルムのことを指す。ここで、支持体がレンジコート紙、板紙、キャストコート紙など基体が紙のものを光沢紙、白色のポリエステルベースのものを光沢フィルムという。
【0059】
【実施例】
以下、本発明の実施例を記すが、いうまでもなく本発明はこれに限定されるものではない。
【0060】
(インク組成物1)
C.I.アシッドイエロー23 32g
ジエチレングリコール 250g
エマルゲン911(花王(株)製) 2g
以上の素材にイオン交換水を加えて撹拌混合し、1000gに仕上げた。この溶液を平均孔径0.45ミクロンのメンブランフィルターにより濾過して調製しインク組成物1を得た。
【0061】
(インク組成物2)
C.I.ダイレクトレッド227 30g
ジエチレングリコール 245g
エマルゲン911(花王(株)製) 2g
以上の素材にイオン交換水を加えて撹拌混合し、1000gに仕上げた。この溶液を平均孔径0.45ミクロンのメンブランフィルターにより濾過して調製しインク組成物2を得た。
【0062】
(インク組成物3)
C.I.ダイレクトブルー199 27g
グリセリン 232g
エマルゲン911(花王(株)製) 2g
以上の素材にイオン交換水を加えて撹拌混合し、1000gに仕上げた。この溶液を平均孔径0.45ミクロンのメンブランフィルターにより濾過して調製しインク組成物3を得た。
【0063】
(インク組成物4)
C.I.フードブラック2 33g
グリセリン 220g
エマルゲン911(花王(株)製) 2g
以上の素材にイオン交換水を加えて撹拌混合し、1000gに仕上げた。この溶液を平均孔径0.45ミクロンのメンブランフィルターにより濾過して調製しインク組成物4を得た。
【0064】
(インク組成物5)
C.I.ピグメントイエロー73 100g
デモールC(花王(株)製) 65g
グリセリン 100g
イオン交換水 120g
を混合し、1mmのジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、イエロー顔料分散液を得た。このイエロー顔料分散液と以下の素材を添加して、イオン交換水で1000gに仕上げた。
【0065】
イエロー顔料分散液 110g
エチレングリコール 100g
グリセリン 150g
サーフィノール465 4g
この液を平均孔径1ミクロンのミリポアフィルター濾過機を2度通過させ、インク組成物5を得た。
【0066】
(インク組成物6)
C.I.ピグメントレッド122 100g
デモールC(花王(株)製) 60g
グリセリン 100g
イオン交換水 130g
を混合し、1mmのジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、マゼンタ顔料分散液を得た。このマゼンタ顔料分散液と以下の素材を添加して、イオン交換水で1000gに仕上げた。
【0067】
マゼンタ顔料分散液 140g
エチレングリコール 100g
グリセリン 120g
サーフィノール465 4g
この液を平均孔径1ミクロンのミリポアフィルター濾過機を2度通過させ、インク組成物6を得た。
【0068】
(インク組成物7)
C.I.ピグメントブルー15:3 100g
デモールC(花王(株)製) 63g
グリセリン 100g
イオン交換水 125g
を混合し、1mmのジルコニアビーズを体積率で50%充填したサンドグラインダーを用いて分散し、シアン顔料分散液を得た。このシアン顔料分散液と以下の素材を添加して、イオン交換水で1000gに仕上げた。
【0069】
シアン顔料分散液 110g
エチレングリコール 100g
グリセリン 140g
サーフィノール465 4g
この液を平均孔径1ミクロンのミリポアフィルター濾過機を2度通過させ、インク組成物7を得た。
【0070】
(インク組成物8)
カーボンブラック顔料分散液(CAB−O−300、キャボット・スペシャリティ・ケミカルズ・インク製) 180g
エチレングリコール 100g
グリセリン 150g
サーフィノール465 4g
以上の素材にイオン交換水を加え、撹拌混合し1000gに仕上げた。この液を平均孔径1ミクロンのミリポアフィルター濾過機を2度通過させ、インク組成物8を得た。
【0071】
(インク組成物9〜29)
表1に記載のように各々基となるインク組成物1〜4の素材に本発明の化合物(II)及び化合物(I)、( III )、(IV)を所定量加え、イオン交換水を添加して攪拌混合し1000gに仕上げた。この液を0.45ミクロンメンブランフィルターを用いて濾過し、インク組成物9〜29を得た。
【0072】
(インク組成物30〜33)
表1に記載のように各々基となるインク組成物5〜8の素材に化合物(I)を所定量加え、イオン交換水を添加して攪拌混合し1000gに仕上げた。この液を平均孔径1ミクロンのミリポアフィルターろ過機を2度通過させ、インク組成物30〜33を得た。
【0073】
【表1】
【0074】
(実施例1〜12)
表2に記載の通り、イエローとシアンのインク組成物をノズル孔径25ミクロン、駆動周波数12kHz、ノズル数各色64ノズル、同色間のノズル密度180dpiであるピエゾ型ヘッドを搭載し、最大記録密度400×400dpiのオンデマンド型のインクジェットプリンタを使用して、反射濃度1.0を与えるイエロー画像とシアン画像を隣接させたパターンを各種記録媒体に記録した。このときに同じインク間の最小着弾間隔は0.083ミリ秒、異なるインク間の最小着弾間隔は8ミリ秒であった。この記録画像に対して、イエロー画像とシアン画像の濃度ムラ、イエロー画像とシアン画像の境界部のブリーディングを評価した。
【0075】
(比較例1〜3)
表2に記載の通りにインク組成物を実施例1〜12と同様に各種記録媒体に記録後、イエロー画像とシアン画像の濃度ムラ、イエロー画像とシアン画像の境界部のブリーディングを評価した。
【0076】
画像の評価は以下の方法で行った。
【0077】
(濃度ムラ)
◎;濃度ムラは全く見られない
○;僅かに濃度ムラが見られる。
【0078】
△;明らかに濃度ムラが見られ、大部分の人が確認できる。
【0079】
×;顕著な濃度ムラが見られる。
【0080】
(色間のブリーディング)
◎;ブリーディングは全く見られず、境界はくっきりとしている。
【0081】
○;僅かにブリーディングが見られる。
【0082】
△;明らかにブリーディングが見られ、大部分の人が確認できる。
【0083】
×;顕著なブリーディングが見られる。
【0084】
【表2】
【0085】
(実施例13〜20)
表3に記載の通り、本発明及び参考のインク組成物をノズル孔径25ミクロン、駆動周波数18kHz、ノズル数各色64ノズル、同色間のノズル密度180dpiであるピエゾ型ヘッドを搭載し、最大記録密度400×400dpiのオンデマンド型のインクジェットプリンタを使用して、空隙型光沢紙;コニカフォトジェットペーパーQP(光沢度:66度、コニカ(株)製)上に図1のような画像パターンを印字した。図中、1、2、3、4は各々イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック画像部を表す。このときに同じインク間の最小着弾間隔は0.056ミリ秒、異なるインク間の最小着弾間隔は4.5ミリ秒であった。この記録画像に対して各色間の境界部のブリーディングと各色の濃度ムラの評価を行った。
【0086】
(比較例4,5)
表3に記載の通りにインク組成物を実施例13〜20と同様に記録、評価を行った。
【0087】
【表3】
【0088】
【発明の効果】
本発明のインク組成物および記録方法を用いることにより、画像濃度のムラや色間のブリーディングの殆どない、高品位な画像が得られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】評価用インクジェット画像パターンを示す図。
【符号の説明】
1 イエロー画像部
2 マゼンタ画像部
3 シアン画像部
4 ブラック画像部
Claims (6)
- 少なくとも、水に溶解または分散してなる色材、水溶性高沸点溶剤、下記一般式(II)で表される化合物を含有するインク組成物。
一般式(II)
R 5 SO2N(R 6 )R 7
〔式中、R 5 は炭素数1〜20の飽和炭化水素基を表す。R 6 、R 7 は各々水素原子、−(EO)n−R 8 、−(PO)n−R 8 、−(EO)m−(PO)n−R 8 又は−(PO)m−(EO)n−R 8 を表す。ただしR 6 とR 7 が同時に水素原子であることはない。R 8 は水素原子又は炭素数1〜4の飽和炭化水素基を表す。1≦n≦50かつ2≦m+n≦50である。但し、EOはエチレンオキシ基を、POはプロピレンオキシ基を表す。〕 - 請求項1に記載のインク組成物を光沢度40以上のインクジェット用記録媒体に記録することを特徴とするインクジェット記録方法。
- 請求項1に記載のインク組成物を光沢度40以上の空隙型インクジェット用記録媒体に記録することを特徴とするインクジェット記録方法。
- 請求項1に記載のインク組成物を吐出するインクジェット記録方法であり、かつ少なくとも下記(a)、(b)いずれかの条件を満たすことを特徴とするインクジェット記録方法。
(a)記録に際して、あるインク液滴の記録媒体上に着弾し、先に着弾したインクと同一であるインクの液滴が、先に着弾した液滴と少なくとも一部が重なる位置に着弾するまでの時間間隔が0.08ミリ秒以下になる場合がある。
(b)記録に際して、あるインク液滴が記録媒体上に着弾し、先に着弾したインクと異なるインクの液滴が、先に着弾した液滴と少なくとも一部が重なる位置に着弾するまでの時間間隔が5ミリ秒以下になる場合がある。 - 光沢度40以上のインクジェット用記録媒体に記録することを特徴とする請求項4記載のインクジェット記録方法。
- 光沢度40以上の空隙型インクジェット用記録媒体に記録することを特徴とする請求項4記載のインクジェット記録方法。
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