JP3981935B2 - 躯体補強構造 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、既設建物を耐震補強するときに用いて好適な躯体補強構造に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来より、既設のビル等の建物の耐震性を高めるため、柱梁間に鉄骨製の補強ユニットを配設したり、柱梁に沿って鉄骨製の補強フレームを配する等、種々の補強構造が用いられている。
【0003】
このような補強構造の一種として、建物の躯体を構成する柱と梁とで囲まれた部分に新たに壁体を設けたり、またコンクリート壁が既にある場合にはその一面側あるいは両面側にコンクリートを増打ちするものがあり、これらはコスト的に有利な工法となっている。
【0004】
新設あるいは増打ち等によって壁体を増設するに際しては、既設の躯体側と、増設する壁体とを一体化するとともに、これらの間でせん断力を確実に伝達する必要があるため、従来より、躯体と壁体との接合部にはアンカーやスタッド等を設けていた。
【0005】
しかし、アンカーやスタッド等を既設の躯体側に後施工で設けるに際しては、騒音や振動、粉塵等が発生するため作業環境が悪く、しかも、このために施工中も建物を供用し続ける(いわゆる居抜き工事を行う)ことが困難となることもある。また、既設躯体内の鉄骨や鉄筋、配管などのために、アンカーやスタッド等の打込箇所が限定されて施工性が悪く、また場合によっては埋設配管等に損傷を与えてしまうことも考えられる。
【0006】
本出願人は、このような問題を解決するため、図4に示すように、既設の躯体1にプレキャストコンクリートまたはモルタルからなる凸型のコッター2を既設の躯体に「接着」することによって取り付け、このコッター2により既設の躯体1と増設する壁体3との間でせん断力を伝達させる技術を開発し、既に出願した(特願平8−72918号、特願平8−72919号)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上述したような従来の躯体補強構造には、以下のような問題が残されている。
すなわち、前記アンカーやスタッド等を設けていた従来通常の躯体補強構造においては、これらアンカーやスタッドによって、増設する壁体の面外方向への転倒防止が図られていた。
これに対し、本出願人が開発した躯体補強構造においては、コッター2では増設する壁体3の面外方向への有効な転倒防止効果を得ることができないという問題があった。
【0008】
この問題は、壁体3に代えて、プレキャストコンクリート製のパネル状のユニットや、ロ字状あるいはこれにブレースを追加したような構成の補強フレームを設ける場合にも共通している。
【0009】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、施工時には騒音や振動の発生を抑え、施工後には、増設した壁体あるいは鉄骨ブレースの面外方向への転倒防止を図ることのできる躯体補強構造を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、既設建物の柱と梁とで囲まれた部分に壁体を増設することで躯体を補強する構造であって、前記躯体と前記増設される壁体との接合部には、せん断力を伝達するためのコッターが前記躯体側に接着されて介装され、前記コッターは、板状の基部と、この基部の一面側に突出形成された略台形状の複数の凸部とからなり、前記基部には、面外転倒防止手段として、前記壁体の面外への転倒を防止する水平面に対して前記壁体の一面側に傾斜した傾斜面及び他面側に傾斜した傾斜面が、前記凸部の両側に交互に形成されていることを特徴としている。
【0013】
これにより、コッターに設けた傾斜面の面外転倒防止手段によって、壁体の面外方向への転倒が防止される。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る躯体補強構造の実施の形態および参考例について、図1ないし図3を参照して説明する。
【0015】
[実施の形態]
まず、ここでは、面外転倒防止手段として、コッターに例えば傾斜面を形成する場合の例を用いて説明する。
図1および図2において、符号10は例えば鉄筋コンクリート造のラーメン構造からなる既設建物の躯体、11は柱、12は梁、13は増設した壁体である。
【0016】
これらの図に示すように、増設した壁体13は、例えば鉄筋コンクリート造で、躯体10を構成する柱11と梁12とによって囲まれた空間に、これら柱11や梁12と同一構面内に位置するよう形成されている。
【0017】
この壁体13と、既設の躯体10との間には、躯体10を構成する柱11の側面や梁12の下面あるいは上面に、多数のコッター15が所定ピッチで連設されており、これらコッター15によってせん断力の伝達効率が高められるようになっている。
【0018】
図2に示すように、各コッター15は、従来と同様、プレキャストコンクリート製で、板状の基部16と、この基部16の一面側に突出形成された略台形状の凸部17とから構成されている。基部16には、凸部17の両側に、傾斜面18A,18B(面外転倒防止手段)が交互に形成されている。これら傾斜面18Aは水平面に対して壁体13の一面13a側に、また傾斜面18Bは、水平面に対して壁体13の他面13b側に、それぞれ所定角度傾斜して形成されている。言い換えれば、この傾斜面18A,18Bにおいては、基部16の厚さが、壁体13の一面13a側から他面13b側、あるいは他面13b側から一面13a側に向けて漸次厚くなる構成となっている。
【0019】
そして、基部16の取付面16a側は平面状で、この取付面16aを柱11や梁12にエポキシ樹脂等の接着剤で接着することによって各コッター15が既設の躯体10に取り付けられている。
【0020】
このようなコッター15では、壁体13の一面13a側に傾斜した傾斜面18Aと、他面13b側に傾斜した傾斜面18Bとによって、壁体13の外周部が挟み込まれた状態となっており、これによって壁体13の面外方向への転倒が防止されるようになっている。
【0021】
上述した躯体10の補強構造では、既設建物の躯体10と、この躯体10を構成する柱11と梁12とで囲まれた部分に増設される壁体13との接合部に、多数のコッター15が配設されてなり、各コッター15には傾斜面18A,18Bが形成された構成となっている。
このようにして、コッター15を設けることによって、地震発生時に、増設した壁体13と躯体10との間でせん断力を確実に伝達することができ、壁体13による耐震補強効果を有効に発揮することができる。しかも、コッター15に形成された傾斜面18A,18Bによって壁体13の面外への転倒を防止することができ、これによって壁体13による耐震補強効果をより一層高めることが可能となる。
【0022】
しかも、アンカーやスタッド等を用いず、単にコッター15を接着するのみでよいので、振動や騒音、粉塵の発生を抑えることができ、建物を供用したままで居抜き工事を行うことが可能となり、また既設の配筋や埋設配管等を傷めることもないので、施工を確実かつ低コストで行うことができる。
【0023】
[参考例]
次に、本発明に係る躯体補強構造の参考例について説明する。ここでは、面外転倒防止手段として、コッターに例えばアンカーボルトを設ける場合の例を用いて説明する。以下に説明する参考例において、前記実施の形態と共通する構成については同符号を付し、その説明を省略する。
【0024】
図3に示すように、増設する壁体13と既設の躯体10との間には、せん断力の伝達効率を高めるため、多数のコッター25が多数連設されている。
【0025】
各コッター25は、従来と同様、プレキャストコンクリート製で、平板状の基部26と、この基部26の一面側に突出形成された略台形状の凸部17とから構成されている。各コッター25は、基部26を柱11や梁12にエポキシ樹脂等の接着剤で接着することによって、既設の躯体10に取り付けられている。
【0026】
このようなコッター25は、その取付施工時に、仮止め用ボルト28を用いる。この仮止め用ボルト28は、その先端部が躯体10側に形成されたボルト穴29に固定され、他端部にナット30をねじ込むことによってコッター25を仮り止めするようになっている。なお、このボルト穴29は、これを形成するに際しては、アンカーやスタッドを設けるときのような大きな騒音や振動、粉塵が生じないのはいうまでもない。
【0027】
ここでは、施工時に用いた仮止め用ボルト28に、壁体13の面外転倒防止のため、長ナット31が取り付けられ、この長ナット31に壁体13内に向けて延出するアンカーボルト32が設けられている。これにより、コッター25に壁体13内に延出するアンカーボルト32が備えられ、このアンカーボルト32を介して壁体13と躯体10とが直接結びつけられた構成となっている。
【0028】
上述した躯体10の補強構造では、既設建物の躯体10と、増設される壁体13との接合部に、多数のコッター25が配設され、各コッター25には壁体13内に延出するアンカーボルト32が備えられた構成となっている。
このようにしてコッター25を設けることによって、前記実施の形態と同様、地震発生時に、増設した壁体13と躯体10との間でせん断力を確実に伝達することができ、壁体13による耐震補強効果を有効に発揮することができ、また、コッター25に備えたアンカーボルト32によって壁体13の面外への転倒を防止することができ、これによって壁体13による耐震補強効果をより一層高めることが可能となる。
【0029】
なお、上記実施の形態および参考例において、壁体13の面外転倒防止手段として、傾斜面18A,18B、アンカーボルト32を用いる構成としたが、施工時に大きな騒音、振動、粉塵等を発生しないのであれば、適宜他の手段を用いても良い。
【0030】
また、増設する壁体13として例えば鉄筋コンクリート造のものを例に挙げたが、本発明に係る躯体補強構造における「壁体」とは、プレキャストコンクリート製のパネル状のユニットや、ロ字状あるいはこれにブレースを追加したような鋼製の補強フレームをも含むものである。このようなユニットやフレームを用いる場合には、ユニットやフレームの外周面と躯体10側との間に、前記実施の形態と同様にしてコッター15を設け、さらにここにモルタル等の自硬性充填材を充填するようにすればよい。さらにこの場合、ユニットやフレーム側にスタッド等を設けておいても良い。
【0031】
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない範囲内であれば、いかなる構成を採用しても良く、また上記したような構成を適宜選択的に組み合わせたものとしても良いのは言うまでもない。
【0032】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1に係る躯体補強構造によれば、既設建物の躯体と増設される壁体との接合部に、せん断力を伝達するためのコッターが躯体側に接着されて介装され、コッターは板状の基部とこの基部の一面側に突出形成された略台形状の複数の凸部とからなり、基部には、面外転倒防止手段として、壁体の面外への転倒を防止する水平面に対して壁体の一面側に傾斜した傾斜面及び他面側に傾斜した傾斜面が凸部の両側に交互に形成された構成となっている。
このようにして、コッターに設けた傾斜面による面外転倒防止手段によって、壁体の面外方向への転倒を防止することができ、増設する壁体と躯体との間でせん断力を確実に伝達し、壁体による耐震補強効果を発揮することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る躯体補強構造を適用した躯体の例を示す立面図である。
【図2】 前記躯体補強構造の実施の形態の要部を示す図であって、(a)は立断面図、(b)は(a)のA−A断面図、(c)は(a)のB−B断面図である。
【図3】 同躯体補強構造の参考例の要部を示す立面図である。
【図4】 従来の躯体補強構造の一例を示す立断面図である。
【符号の説明】
10 躯体
11 柱
12 梁
13 壁体
15,25 コッター
18A,18B 傾斜面(面外転倒防止手段)
32 アンカーボルト(面外転倒防止手段)
Claims (1)
- 既設建物の柱と梁とで囲まれた部分に壁体を増設することで躯体を補強する構造であって、
前記躯体と前記増設される壁体との接合部には、せん断力を伝達するためのコッターが前記躯体側に接着されて介装され、
前記コッターは、板状の基部と、この基部の一面側に突出形成された略台形状の複数の凸部とからなり、
前記基部には、面外転倒防止手段として、前記壁体の面外への転倒を防止する水平面に対して前記壁体の一面側に傾斜した傾斜面及び他面側に傾斜した傾斜面が、前記凸部の両側に交互に形成されていることを特徴とする躯体補強構造。
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- 1998-05-12 JP JP12927698A patent/JP3981935B2/ja not_active Expired - Fee Related
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