JP3981365B2 - 診療用いす - Google Patents

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Description

本発明は、個々の脊椎の生理的湾曲を実現して、人体の筋肉の緊張を可及的に緩和するために用いられる診療用いすに関し、例えば人体のバランスを総合的に追求する治療法等に用いるのに適した診療用いすに関する。
人体は本来、重力に対して垂直およひ水平方向にバランスがとれた状態で存在することを理想としている。人体が重力に対してバランスがとれた状態となるためには、206ないしは208個の骨の相互の関係が基礎となる。現在、それらの骨の役割、状態を理解し、人体のバランスを総合的に追求する治療機器並びに治療法は世に出ていない。
例えば歯科用の各種診断機器を用いた各種計測等を行うに当たっては、従来、傾動自在の背板を有する診療台(例えば特許文献1参照)を用い、その診療台の背板を水平にして被験者を寝かせた状態で計測するのが一般的である。
そのため、例えば人体の上顎と下顎の歯列の形状計測や咬合計測を行うべく、紙などの基材の両面にカーボンなどの着色剤を付与した咬合シートを被験者に噛ませ、歯が咬合シートに接触した部位の色の変化から被験者の歯列の状態や咬合状態を検査しても、得られる歯列や咬合状態は、あくまでも被験者が寝た状態ないしは後傾した状態でのそれにすぎず、正しい歯列ないしは咬合状態を把握することができなかった。
このようなことを解決することを目的として、従来、咬合シートに金属製芯線等の仮止め手段を一体化し、咬合シートを被験者の歯ないしは歯列に仮止めした状態で咬合計測を行うようにすることで、被験者の自然状態での咬合状態を計測することを可能とした咬合検出方法並びに咬合シートが提案されている(例えば特許文献2参照)。
特開平9−51924号公報 特開2003−38524号公報
しかしながら、以上のような特許文献2に開示されている咬合シートを用いた咬合検査方法を用いても、被験者の正確な咬合状態を把握することができないことが、本発明者らの研究により明らかになった。これは、被験者が自然状態、例えば自然にいすに座ったり立位の状態で咬合シートを噛んだとき、被験者が無意識のうちに最も早く当たる点(早期接触)を感じとり、脳が前後左右の咬合平面のバランスを合わせようと、頭蓋と頸椎の位置を偏位させてしまうためである。このような頭蓋と頸椎の偏位状態で咬合シートを噛んでその当たりを見ても、正しい咬合状態を把握することはできない。
このような歯列や咬合状態は、頭蓋と頸椎の水平・垂直のバランスをとった状態で被験者の各部の動きを規制して計測すれば、正確に把握できることが、本発明者らの長年の研究により確かめられている。
そこで、本発明の課題は、以上のような歯列や咬合状態を正確に計測する場合や、更には人体のバランスを総合的に追求する各種治療法等に用いるべく、個々の脊椎の生理的湾曲を保障して、人体が重力の方向に沿った状態においてその筋肉の緊張を可及的に緩和させることのできる診療用いすを実現することにある。
上記の課題を解決するため、本発明の診療用いすは、個々の脊椎の生理的湾曲を実現し人体が重力の方向に沿った状態において筋肉の緊張を緩和する状態を維持するために用いられる診療用いすであって、コラムに対して突出支持される座席10を備えるとともに、コラム2に支持され、かつ、当該コラム2の鉛直方向に沿った中心線を挟んで左右両側において等量ずつ移動する規制部材7b,7bを、上記座席10に座った状態の被験者の頭蓋の左右両側に当接させることによってその頭蓋位置を固定する頭蓋位置規制機構と、上記コラム2に支持され、かつ、当該コラム2の鉛直方向に沿った中心線を挟んで左右両側において等量ずつ移動する規制部材4b,4bを、上記座席10に座った状態の被験者の骨盤の左右両側に当接させることによってその骨盤位置を固定する骨盤位置規制機構を備え、上記各規制部材7b,7b,4b,4bがそれぞれ被験者の頭蓋および骨盤左右両側に当接することにより、被験者の頭蓋および骨盤のそれぞれ左右方向への中心となる各平面が、ともに重力の方向に沿った共通の中心平面内に入るように構成されていることによって特徴づけられる(請求項1)。
ここで、本発明においては、座席10に座った状態の被験者の足の裏が水平面に密着するよう、当該座席10の上記コラム2に対する鉛直方向への支持位置を変化させることによりその座面の床面に対する高さを調節するか、もしくは当該座席10に座った被験者の足裏が載る位置に別途設けられている足裏搭載板12の表面と座面との鉛直方向距離を調整する高さ調整機構を備えている構成(請求項2)を好適に採用することができる。
また、本発明においては、上記コラム2に支持され、かつ、当該コラム2の鉛直方向に沿った中心線を挟んで左右両側において等量ずつ移動する規制部材4c,4cを有してなる膝位置規制機構を備え、その各規制部材4c.4cが座席に座った状態の被験者の両膝に外側から当接することにより、被験者の両膝の開き角度が上記中心平面に対して左右対称となるように構成すること(請求項3)、および、上記コラムに支持され、かつ、当該コラムに対して座席に座った状態の被験者に向けて前後動することにより、被験者の腰椎を、座席から所定の高さの位置で後方から押圧する腰椎押圧機構を備えた構成を採用すること(請求項4)、更には上記コラムの鉛直方向に沿った中心線を挟んで左右両側において等量ずつ移動する規制部材6a,6aを有してなる脇位置調節機構を備え、その各規制部材6a,6aが座席に座った状態の被験者の両脇に当接することにより、被験者の両脇の左右方向への中心となる平面が、上記中心平面内に入るように構成すること(請求項5)が好ましい。
更に、本発明においては、上記コラムに支持され、かつ、当該コラムに対して座席に座った被験者に向けて前後動することにより、座席に座った状態の被験者の後頭部に当接して、頭蓋の前後方向への位置を規制する頭蓋前後位置規制機構を備えた構成(請求項6)を好適に採用することができる。
また、本発明においては、上記コラムに対する上記座席10の角度を変化させることにより座面の水平面に対する角度を変更する座面角度調節機構を備えた構成(請求項7)、および、座席10の座面の略中央部分に、孔もしくは凹部を形成した構成(請求項8)を採用することができる。
また、上記頭蓋位置規制機構、脇位置規制機構および腰椎押圧機構において被験者に対して当接する部材が、被験者の体型に基づいてそれぞれ上下動機構により上下動可能に設けること(請求項)が好ましい。
更に、本発明においては、上記した上記頭蓋位置規制機構、骨盤位置規制機構、脇位置規制機構における一対の規制部材の位置、腰椎押圧機構における押圧部材の位置、および/または座面角度調節機構における座面の角度を、被験者ごとに記憶するコンピュータを備えるとともに、指令の付与によりそのコンピュータ記憶内容に基づいて上記各一対の規制部材、押圧部材および/または座面をアクチュエータにより自動的に被験者に応じた位置もしくは角度に再現するように構成すること(請求項10)ができる。
本発明は、被験者の体を重力に対して垂直および水平方向にバランスがとれた理想状態を維持させることができれば、正確な咬合状態をはじめ、その被験者の生理的状態を誤ることなく把握することができることに着目し、そのバランスがとれた理想状態を容易に実現して維持することのできる機器を鋭意研究した結果としてなされたものである。
すなわち、重力に対して垂直および水平にバランスがとれた状態は、頸椎の1番(環椎)と頭蓋骨との関係から説明することができる。頭蓋骨は頸椎の1番と互いの中心線上に位置していなければならない。そのためには、顔面の前後と左右のバランスが重要である。そして、重力に対して歩行運動するときの、頭と頸椎の1番と足の裏の原則的なバランスを見る必要がある。この間には頸椎、胸椎、腰椎、骨盤、足の骨などが相互に関与している。前後のバランスは、骨盤と膝の位置、足の裏との関係で決まる。いすに座って膝を合わせた状態から左右の足を座席のセンターに対してそれぞれ45度ずつ開脚した位置が最も理想(20〜80度でも効果あり)である。更にこの状態で腰椎を固定することで、下半身から骨盤、腰椎、胸椎、頸椎に及ぶS字形の生理的湾曲(理想の形状)が回復される。このときに生理的湾曲の狂い、頭の前後左右の狂いが存在すれば、その歪は頭と頸椎の1番に集中する。この状態を、本発明に係る診療用いすを用いることで把握することができる。
最も基本的には、請求項1に係る発明のように、コラムの鉛直方向に沿った中心線を挟んでそれぞれに等量ずつ移動するようにした頭蓋位置規制機構および骨盤位置規制機構の各左右の規制部材を、座席に座った被験者の頭蓋並びに骨盤の左右に当接させて、その被験者の頭蓋と骨盤の位置を左右方向に規制することで、頭蓋および骨盤の各左右方向への中心となる各平面(正中矢状面)が、ともに重力の方向に沿った同一平面(中心平面)に入るように、被験者の頭蓋と骨盤を固定することにより、上記した垂直および水平のバランスがとれた状態とすることができる。
このとき、足の裏は床面に密着させてもよいし、座席に座った被験者の足裏が乗る位置に足裏搭載板を設けて、その表面に密着させてもよいが、請求項2に係る発明のように、座面の床面に対する高さ、もしくは足裏搭載板表面と座面との鉛直方向距離を調整する高さ調整機構を設けることにより、被験者の人体サイズに応じた調整を容易化することができる。
また、請求項3に係る発明のように、座席に座った被験者の両膝間の開き角度が、中心平面に対して左右対称となるように両膝に当接して固定する膝位置規制機構を設けること、および、請求項5に係る発明のように、脇位置規制機構を設けて、被験者の両脇間の左右方向への中心となる平面についても、上記した中心平面に入るようにすれば、被験者の姿勢を更に確実に垂直および水平のバランスがとれたより理想的な状態に近づけることが可能となる。
更に、請求項4に係る発明のように、座席に座った状態の被験者の腰椎を座席から所定の位置で後方から押圧する腰椎押圧機構上記コラムに前後動可能に設けることにより、請求項6に係る発明において備える頭蓋前後位置規制機構と共働して、被験者の下半身から骨盤、腰椎、胸椎、頸椎にS字形の生理的湾曲の形成を助長する。また、頭蓋前後位置規制機構は、被験者の頭蓋の位置決めをより確実なものとすることにも寄与する。
ここで、被験者の状態によっては、座面が水平の場合に脊椎の生理的湾曲が実現しない場合、すなわち腰椎が前に出ない場合がある。このとき、必要に応じて、請求項7に係る発明のように、座席の座面の水平面に対する角度を調節する機構を用いて、例えば膝の高さを座面、つまり臀部よりも高くするように調節することで、脊椎の生理的湾曲を実現することができることが、これまでの研究により判明している。
また、請求項8に係る発明のように、座席の座面の略中央部分に孔もしくは凹部を形成することにより、尾底骨が座面に当接して被験者の姿勢を損なうことを防止することが可能となり、尾底骨が突出した被験者でもその診療を容易化することができる。この構成を採用するに当たっては、座面の幅もしくは孔、凹部の大きさを被験者の体型に合わせて可変とすることが望ましい。
また、頭蓋位置規制機構、脇位置規制機構および腰椎押圧機構の被験者に対して当接する部材については、請求項に係る発明のように、被験者の体型に応じて上下動させ得るように構成することで、どのような体型の被験者でもその診療を可能とすることができる。
そして、請求項10に係る発明のように、頭蓋位置規制機構、骨盤位置規制機構、脇位置規制機構、腰椎押圧機構の被験者に対して当接する部材の位置(水平、垂直位置)と、座面角度当接機構における座面角度を、被験者ごとに記憶するコンピュータを設けて、指令の付与によりコンピュータ記憶内容に基づいて上記各部材ないしは座面角度をアクチュエータにより自動的に駆動して、被験者に応じた位置もしくは角度に再現するように構成すれば、同じ被験者に対しては最初に上記各部材の位置ないしは座面角度を調節するだけで、2度目以降はその調節作業を不要とすることができる。
本発明によれば、被験者を着座させて各調整機構を調整することにより、被験者の個々の脊椎の生理的湾曲を保障して、筋肉の緊張を可及的に緩和させことができ、被験者に存在する生理的湾曲の狂い、頭の前後左右の狂いを確実に把握することができ、人体のバランスを総合的に追求するための治療方針を見いだすことができる。また、この状態で例えば咬合状態を計測することにより、咬合に関する治療方針を誤ることなく見いだすことができる。
以下、図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
図1は本発明の実施の形態を側方から見た図であり、図2は背面から見た図である。また、図3には図1におけるA−A断面図を、図4には図1におけるB−B断面図を、また、図5には図1におけるC−C断面図をそれぞれ示す。
床面Fに据え付けられる基板1に対して鉛直のコラム2が固定されており、そのコラム2には、座席支持体3の基端が固定されているとともに、下から順に骨盤・膝位置規制機構4、腰椎押圧機構5、脇位置規制機構6、および頭蓋位置規制機構7が取り付けられ、更には頭蓋前後位置規制部材8が装着されている。
座席支持部材3にはピニオン9aがピローブロックなどによって回転自在に支持されているとともに、このピニオン9aはハンドル9bの操作により回転する。また、ピニオン9aには鉛直方向に伸びるラック9cが噛み合っており、このラック9cの上端に部に座席10の後端部がピン接合されている。座席10は図3に示すように先端部が分かれた略U字形をしており、その先端部は2つのヒンジ9dを介して座席支持部材3に支持されている。従って、ハンドル9bを操作してピニオン9aを回転させることによってラック9cが上下動し、これにより座席10の表面(座面)の水平面に対する角度が変化する。これらのピニオン9a,ラック9c、ヒンジ9d等が座面角度調節機構9を構成している。
基板1には、2本の鉛直ガイド11aが固定されているとともに、ハンドル11bを備えた鉛直のねじ11cが回動自在に支持されており、これらによって足裏搭載板12が3点支持されている。すなわち、各鉛直ガイド11aにはブッシュ12aを介して摺動自在に、ねじ11cに対しては、当該足裏搭載板12に固着されたナット(図示せず)がねじ込まれている。従って、ハンドル11bを操作してねじ11cを回転させることによって、足裏搭載板12は水平を保った状態で上下動し、これよにり座席10の座面と足裏搭載板12の表面との鉛直方向距離を変化させ得るようになっている。この足裏当接板12は、被験者が座席10に座った状態で、両足の裏がこの足裏当接板12に密着するように、その高さを調節する。
さて、前記した骨盤・膝位置規制機構4、腰椎押圧機構5、脇位置規制機構6、および頭蓋位置規制機構7は、それぞれコラム2に沿って上下動させるための上下動機構を含んでおり、その上下動機構の詳細については後述する。また、骨盤・膝位置規制機構4、脇位置規制機構6および頭蓋位置規制機構7は、それぞれ、被験者の該当部位に左右から当接して位置決めするための一対の当接部材と、その一対の当接部材をいすの左右方向中心線(以下、単にいすの中心線と称する)を挟んでその両側で互いに接近/離隔するようにそれぞれ等量に移動させる機構を含んでおり、その接近/離隔機構の詳細についても後述する。
骨盤・膝位置規制機構4は、図3に示すように、後述する接近/離隔機構によりいすの中心線は挟んでその両側で等量ずつ互いに接近/離隔する一対のアーム4aと、その各アーム4aの内側に固定されて被験者の骨盤に左右両側から当接する一対の骨盤当接部材4bを有しているとともに、各アーム4aの先端側には、いすの中心線に対してそれぞれ45度だけ開くように屈曲した屈曲部4cが設けられている。この膝位置規制機構4は、座席10に座った被験者の骨盤に対し、一対のアーム4aを接近/離隔させて骨盤当接部材4bを左右両側から当接させる。その状態で被験者の両足を開き、各足の外側をアーム4aの屈曲部4cに当接させる。これにより、被験者は骨盤が左右両側から規制された状態で、両足が左右に45度開いた状態となる。
脇位置規制機構6は、座席10に座った被験者の両脇にそれぞれ挟み込まれる一対のアーム6aと、その一対のアーム6aをいすの中心線を挟んでその両側で等量ずつ互いに接近/離隔させるための接近/離隔機構を有しており、被験者の両脇の直下部分においてアーム6aが左右両側から胴体に当接するように調節することにより、脇の部分の胴体の左右方向への位置が規制される。
頭蓋位置規制機構7は、図4に示すように、後述する接近/離隔機構によりいすの中心線を挟んでその両側で等量ずつ互いに接近/離隔する一対のアーム7aと、その各アーム7aの内側に固着されて座席10に座った被験者の耳を迂回して頬骨弓近傍に左右両側から当接する一対の頭蓋当接部材7bを有している。各アーム7aに対する頭蓋当接部材7bの前後位置は調節可能となっている。この頭蓋位置規制機構7により、座席に座った被験者の頭蓋の左右方向の位置が規制される。また、頭蓋前後位置規制部材8は、頭蓋位置規制機構7と共通の上下動機構に取り付けられており、被験者の後頭部に当接して、被験者の視線がほぼ水平になるように頭蓋の位置を規制する。この頭蓋前後位置規制部材8は前後方向に位置を調節できるようになっている。
腰椎押圧機構5は、図5に示すように、コラム2に対して上下動する筐体5aと、その筐体5aに固着されたナット5b、そのナット5bにねじ込まれたねじ5c、筐体5aに対してブッシュ5dを介して軸方向に摺動自在に支持されたガイドバー5e、およびそのガイドバー5eに対してねじ止めされ、かつ、ねじ5cを軸受5fを介して回動自在に支持する押圧部材5gを主体として構成され、ねじ5cはハンドル5hにより回転させることができるようになっている。この構成により、ハンドル5hを回転させることによって押圧部材5gが前後動し、座席10に座った被験者の腰椎の適宜箇所を押圧し、その前後方向への位置を規制する。
以上の各機構が有している上下動機構について、頭蓋位置規制機構7のそれを代表させて以下に説明すると、図6に図1のD−D断面図を示すように、上下動機構70は、コラム2に対して上下動する筐体71と、その筐体71に両端部が軸支され、ハンドル72に一体化された回転軸73と、筐体71の内側において回転軸73に固定されてコラム2の側面に当接するゴムリング74を備えるとともに、コラム2に対してゴムリング74の反対側の側面に当接する与圧付与部材75と、その与圧付与部材75のコラム2に対する押し付け力を調整する調整ねじ76、およびコラム2の背面に対して押圧部材77を押し付けることによって筐体71のコラム2に対する移動を阻止する固定ねじ78によって構成されている。この構成において、固定ねじ78を緩めた状態で、ハンドル72を回転させると、与圧付与部材75によりコラム2との間に適当な与圧が付与されているゴムリング74が回転し、筐体71がコラム2に対して上下動する。筐体71の上下方向の位置を定めた後、固定ねじ78を締めつけることにより、筐体71はその位置でコラム2に対して固定された状態となり、上下方向への位置調節を完了する。
次に、骨盤・膝位置規制機構4、脇位置規制機構6および頭蓋位置規制機構7が有している接近/離隔機構について、頭蓋位置規制機構7のそれを代表させて以下に説明する。前記した図4と、その図4におけるE−E断面図を表す図7(A)、およびその図7(A)のF−F断面図を表す図7(B)を参照する。
接近/離隔機構700は、コラム2に取り付けられた上記した上下動機構70の筐体71に搭載されており、筐体71に対して固定される支持部材701と、筐体71に回転自在に軸支され、ハンドル702の回転により回転が与えられる回転軸703と、その回転軸703に固着されたピニオン704と、そのピニオン704に対して上下で噛み合う2本のラック705a,705b、支持部材701に固定され、各ラック705a,705bを左右方向に移動自在に支持する上下のガイド706、および回転軸703の回転を阻止するための固定ねじ707を主体として構成されている。そして、頭蓋位置規制機構7の左右のアーム4aは、それぞれラック705a,705bに固定されている。
この構成において、固定ねじ707を緩めた状態で、ハンドル702を操作して回転軸703を介してピニオン704に回転を与えると、上下のラック705a,705bが互いに逆向きに、従って接近/離隔する向きに互いに等量ずつ左右方向に移動し、これによって左右一対のアーム4aがいすの中心線を挟んで両側で等量ずつ互いに接近/離隔するように移動する。
以上の本発明の実施の形態の使用方法の例について述べると、被験者を座席10に座らせた後、まず、足裏搭載板12を上下動させ、座席10に座った被験者の足裏が足裏搭載板12の表面に密着するように調節する。なお、必要に応じて座面角度を調節する。
次に、骨盤・膝位置規制機構4を調節し、被験者の骨盤の左右方向への位置を規制するとともに、いすの中心に対して膝を45度開いた状態とする。その後、腰椎の高さに腰椎押圧部材5の押圧部材5gの高さを合わせ、被験者の腰部(臍の近傍)を前方に出させた姿勢をとらせる。その姿勢が緩まないように(元の位置に戻らないように)、その状態での腰椎の位置に押圧部材5gが当たるように調節する。
次に、脇位置規制機構6の各アーム6bの幅を被験者の体に適した幅に調節した後、この脇位置規制機構6を下から上へ移動させて脇の位置で止める。これによって、被験者が左右に振れないようにする。その後、頭蓋位置規制機構7の頭蓋押圧部材7bの位置が被験者の左右の頬骨弓の高さになるように調節し、かつ、頭蓋押圧部材7bの前後の位置を調整して、当該頭蓋押圧部材7bの先端が頬骨弓に当たるようにする。このとき、頭蓋前後位置規制部材8を調節して、被験者の視線がほぼ水平になるようにする。
以上の各部の調節を完了した時点では、被験者はその頭蓋と骨盤の左右方向の各中心となる平面が、いずれもいすの中心、つまり鉛直のコラム2に沿った共通の鉛直面(重力の方向に沿った平面)上に位置した状態となり、加えてその共通の鉛直面を中心として両膝が45度ずつ開いた状態で、足裏が足裏搭載板12に密着した状態となる。更に、この状態で頭蓋前後位置規制機構5と頭蓋前後位置規制部材8による規制により、被験者の下半身から骨盤、腰椎、胸椎、頸椎に及ぶS字形の生理的湾曲が回復される。
この状態を維持することにより、被験者に存在する生理的湾曲の狂い、頭の前後左右の狂いの把握が容易となり、そのバランスを総合的に追求するための治療方針を見いだすことができ、また、この状態で咬合状態を計測することにより、咬合に関する治療方針を正確に見いだすことができる。
ここで、以上の実施の形態においては、各規制機構等の上下動および左右動並びに前後動を、それぞれハンドルの操作により行うようにしたが、例えばパルスモータ等のアクチュエータを駆動して各機構の各方向への移動を行うように構成することができる。また、この場合、これらの各パルスモータ等をパーソナルコンピュータの制御下に置き、各パルスモータ等による各機構や押圧部材の位置を被験者ごとにメモリに記憶するように構成して、その記憶内用を呼び出して指令を与えることにより、各機構、部材が被験者に応じた位置に自動的に移動するように構成することができ、このような構成の採用により、各被験者に対する調節を一度だけ行っておくことで、2度目以降の調節は実質的に不要となる。
なお、コラム2は鉛直方向にほぼ正確に立設する必要があるが、基板1の下方に水平調整用の脚を設けるとともに、コラム2の内部に重錘を垂らし、その周囲にリングを配して、そのリングの中央に重錘が位置するように水平調整用の脚を調整するように構成すれば、その設置作業を容易化することができる。
本発明の実施の形態を側方から見た図である。 同じく本発明の実施の形態を背面から見た図である。 図1におけるA−A断面図である。 図1におけるB−B断面図である。 図1におけるC−C断面図である。 図1におけるD−D断面図である。 (A)図4におけるE−E断面図で、(B)は当該図7(A)におけるF−F断面図である。
符号の説明
1 基板
2 コラム
3 座席支持体
4 骨盤・膝位置規制機構
5 腰椎押圧機構
6 脇位置規制機構
7 頭蓋位置規制機構
8 頭蓋前後位置規制部材
9 座面角度調節機構
10 座席
12 足裏搭載板

Claims (10)

  1. 個々の脊椎の生理的湾曲を実現し人体が重力の方向に沿った状態において筋肉の緊張を緩和する状態を維持するために用いられる診療用いすであって、
    コラムに対して突出支持される座席10を備えるとともに、コラム2に支持され、かつ、当該コラム2の鉛直方向に沿った中心線を挟んで左右両側において等量ずつ移動する規制部材7b,7bを、上記座席10に座った状態の被験者の頭蓋の左右両側に当接させることによってその頭蓋位置を固定する頭蓋位置規制機構と、上記コラム2に支持され、かつ、当該コラム2の鉛直方向に沿った中心線を挟んで左右両側において等量ずつ移動する規制部材4b,4bを、上記座席10に座った状態の被験者の骨盤の左右両側に当接させることによってその骨盤位置を固定する骨盤位置規制機構を備え、上記各規制部材7b,7b,4b,4bがそれぞれ被験者の頭蓋および骨盤左右両側に当接することにより、被験者の頭蓋および骨盤のそれぞれ左右方向への中心となる各平面が、ともに重力の方向に沿った共通の中心平面内に入るように構成されていることを特徴とする診療用いす。
  2. 座席10に座った状態の被験者の足の裏が水平面に密着するよう、当該座席10の上記コラムに対する鉛直方向への支持位置を変化させることによりその座面の床面に対する高さを調節するか、もしくは当該座席10に座った被験者の足裏が載る位置に別途設けられている足裏搭載板12の表面と座面との鉛直方向距離を調整する高さ調整機構を備えていることを特徴とする請求項1に記載の診療用いす。
  3. 上記コラム2に支持され、かつ、当該コラム2の鉛直方向に沿った中心線を挟んで左右両側において等量ずつ移動する規制部材4c,4cを有してなる膝位置規制機構を備え、その各規制部材4c.4cが座席に座った状態の被験者の両膝に外側から当接することにより、被験者の両膝の開き角度が上記中心平面に対して左右対称となるように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の診療用いす。
  4. 上記コラムに支持され、かつ、当該コラムに対して座席に座った状態の被験者に向けて前後動することにより、被験者の腰椎を、座席から所定の高さの位置で後方から押圧する腰椎押圧機構を備えていることを特徴とする請求項1、2または3に記載の診療用いす。
  5. 上記コラム2に支持され、かつ、当該コラム2の鉛直方向に沿った中心線を挟んで左右両側において等量ずつ移動する規制部材6a,6aを有してなる脇位置調節機構を備え、その各規制部材6a,6aが座席に座った状態の被験者の両脇に当接することにより、被験者の両脇の左右方向への中心となる平面が、上記中心平面内に入るように構成されていることを特徴とする請求項1、2、3または4に記載の診療用いす。
  6. 上記コラムに支持され、かつ、当該コラムに対して座席に座った被験者に向けて前後動することにより、座席に座った状態の被験者の後頭部に当接して、頭蓋の前後方向への位置を規制する頭蓋前後位置規制機構を備えていることを特徴とする請求項1、2、3、4または5に記載の診療用いす。
  7. 上記コラムに対する上記座席10の角度を変化させることにより座面の水平面に対する角度を変更する座面角度調節機構を備えていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6に記載の診療用いす。
  8. 上記座席10の座面の略中央部分に、孔もしくは凹部が形成されていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6または7に記載の診療用いす。
  9. 上記頭蓋位置規制機構、脇位置規制機構および腰椎押圧機構において被験者に対して当接する部材が、被験者の体型に基づいてそれぞれ上下動機構により上下動可能に設けられていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7または8に記載の診療用いす。
  10. 上記頭蓋位置規制機構、骨盤位置規制機構、脇位置規制機構における一対の規制部材の位置、腰椎押圧機構における押圧部材の位置、および/または座面角度調節機構における座面の角度を、被験者ごとに記憶するコンピュータを備えるとともに、指令の付与によりそのコンピュータの記憶内容に基づいて上記各一対の規制部材、押圧部材および/または座面をアクチュエータにより自動的に被験者に応じた位置もしくは角度に再現するように構成されていることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6、7、8または9に記載の診療用いす。
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