JP3980907B2 - 発電所の建設方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、降雪または氷結のある積雪、寒冷地域に建設する建築構造物に対して積雪、氷結対策を施した発電所の建設方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、降雪または氷結のある地域に建築構造物を建設する例えば原子力発電所(以下、発電所と記す)の建設工事においては、降雪またはつらら等の氷結により建設工事の妨げや作業効率が低下する。この対策として、除雪や屋根の雪下ろし等の作業を人力や除雪資材、機材により実施している。
【0003】
特に、建設途上の発電所においては、冬期間は仮設屋根や、養生用シート等により降雪または氷結の影響を受けないようにしており、積雪の状態や積雪荷重の状態により、除雪や屋根の雪下ろし等の作業を人力や除雪資材・機材により行っている。
【0004】
一方、傾斜を持たせた本設屋根が建設された発電所においては、積雪荷重を建物設計の設計条件に取り入れた設計をしているので、積雪の状態や積雪荷重の状態によって、除雪や屋根の雪下ろし等の作業を人力や除雪資材、機材により行っている。
【0005】
図4および図5により従来の原子力発電所における、冬期間の建設途上にある建築構造物の仮設屋根に積雪した除雪作業方法を説明する。
図4において、符号1は建設途上の原子炉建屋で、要部を概略的に示している。原子炉建屋内1のベースマットコンクリート2上に仮支持台3が構築され、この仮支持台3にコンクリート製原子炉格納容器(以下、PCVと記す)4が順次積み上げられて構築されている。
【0006】
なお、図4中PCV4は建設途上の状態で示しており、また、符号5はペデスタル、6はしゃへいコンクリート、7は仮設架台、8は圧力抑制室、9はベントパイプ、10はモノレールで、それらは概略的に示している。
【0007】
建設途上のPCV4には、降雪から作業環境を確保するために、ある程度傾斜を有する仮設養生屋根11によりPCV4の上端開口部全体を覆うようにして設置している。仮設養生屋根11は図5に上方から見た平面図で示したように仮設養生屋根11の中心部から放射状に延在した八角形傘状骨組12を有し、骨組12に覆材13が取り付けられたもので、仮設屋根または仮設養生用シートとも呼ばれている。
【0008】
また、図4に示したようにPCV4の分割部分、つまり、積み上げ部分を溶接接続し、仕上げ作業等の作業環境を確保するために、仮設養生屋根11から養生シート14が下方に配置されている。
【0009】
図5において、仮設養生屋根11は、骨組12を主体としているが、取付け、取外しを容易にするためと、重量軽減のために骨組12を軽量化している。骨組12の覆材13としては、重量軽減のため、デッキプレートやトタン板や木材板、シート等を使用して養生屋根11としているが、採光性を考慮し、シートを使用することが多い。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述の従来の原子力発電所の建設方法においては、降雪から作業環境を確保するためにある程度の傾斜を有する仮設養生屋根11を建設途上の建築構造物に設けているが、降雪の度毎に雪は滑り落ちることがなく、結果として仮設養生屋根11に積る。雪は日中の寒暖の差で、ある程度解けたり凍結したりし、また、新たな降雪より圧縮され、比重が大きくなり、仮設養生屋根11には大きな荷重が加わることになる。
【0011】
この積雪荷重が仮設養生屋根11の許容耐力を超えると破壊につながり、仮設養生屋根11の下方で作業している作業員の安全が確保できなくなったり、機器類が損傷を受けたりするという課題がある。
【0012】
また、積雪荷重が仮設養生屋根11の許容耐力を超えないようにするために、仮設養生屋根11の除雪作業を行う方法もあるが、そのためには、除雪作業のために資材・機材や、作業者が必要となる。その結果、作業者を新たに確保するとか、予定していた作業を中断し、工程を遅延させて、除雪作業を行わなければならない等の課題がある。
【0013】
本発明は上記課題を解決するためになされたもので、積雪やつららの荷重が仮設養生屋根の許容耐力を超えないようにして、除雪、つららの除去作業を容易に行うことができる原子力発電所の建設方法を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、発電所における建設途上の建築構造物の中央部から放射状に設けられた骨組みと、この骨組みに沿って区分して設けられた複数の小袋状仮設養生屋根と、これらの小袋状仮設養生屋根のそれぞれに加圧空気を送り込む空気供給口と、この空気供給口に接続される加圧源とを有し、任意の小袋状仮設養生屋根を膨らませることによって除雪可能としたことを特徴とする
【0017】
請求項に係る発明によれば、袋状仮設養生屋根を複数に区分した小袋状養生屋根それぞれに空気供給口を設け、任意に選択して加圧空気を供給して膨らませる。これにより風向きまたは周囲の状態によって袋状仮設屋根の積雪状態が異なる場合、部分的に、積雪と小袋状仮設養生屋根との間の摩擦係数を非常に小さなものとする。
【0018】
そして、重力に従い積雪は落下する事になり、容易に積雪荷重が仮設養生屋根の許容耐力を超えないようにすることができる。さらに、自然にまた徐々に大きくなるつららに対しても積雪と同時に落下させることができる。
【0019】
請求項に係る発明は、前記加圧源の下流側に加温装置を設け、加温空気を前記空気供給口に送り込むことを特徴とする
【0023】
請求項に係る発明によれば、小袋状仮設養生屋根に加圧された加温空気を流入することにより、積雪と前記各々の屋根間の凍結密着を阻害させることができる。
【0024】
すなわち、寒冷地においても、容易に積雪と前記各々の屋根との間の摩擦係数が非常に小さなものになり、前述したように、重力に従い、積雪は落下する事になり、容易に積雪荷重が前記各々の屋根の許容耐力を超えないようにすることができる。さらに、自然にまた徐々に大きくなるつららに対しても積雪と同時に落下させることができる。
【0026】
【発明の実施の形態】
図1により本発明に係る原子力発電所の建設方法の第1の実施の形態を説明する。図1中、図4と同一部分には同一符号を付して重複する部分は省略する。
本実施の形態は、建設途上のPCV4には、降雪から作業環境を確保するために、ある程度の傾斜のついた袋状仮設養生屋根15が建設途上のPCV4の上端開口部全体を覆うように設けられている。また、建設途上のPCV4を積み上げる分割部分を溶接して接続し、仕上げ作業等の作業環境を確保するために、袋状仮設養生屋根15の下端からPCV4の側面を包囲するように養生シート14が下方に配置されている。
【0027】
袋状仮設養生屋根15は、加圧された空気を挿入すると膨らむように袋状に構成されており、袋状仮設養生屋根15には、加圧源17から加圧された空気を挿入する管16が接続されている。上記の状態において、降雪があり、仮設養生屋根15上に積雪がある場合で、袋状仮設養生屋根15に加圧源17から管16を通して加圧空気を流入する。
【0028】
すると、袋状仮設養生屋根15は、袋状になっているので空気が流入されると膨らんでくる。その結果、積雪には亀裂とともに積雪の下面と袋状仮設養生屋根15の間に、僅かな隙間や空間が生じ、摩擦係数が小さくなり非常に滑りやすくなる。袋状仮設養生屋根15には、適度な傾斜が設けられているので、積雪は容易に落下することになる。また、加圧源17から加圧された空気を流入する管16に、仮設でフレキシブルなホースを使用することにより、干渉を避け、容易に引き回しができるので、他工事に影響を与えることはない。
【0029】
つぎに図2により本発明に係る第2の実施の形態を説明する。図2中、図1と同一部分には同一符号を付して重複する部分の説明は省略する。
本実施の形態は第1の実施の形態において、袋状仮設養生屋根15に加圧源17から加圧された空気を流入する管16の途中に加温装置18を設けたことにある。なお、加温装置18を加圧源17の下流側に設置して管16を通して袋状仮設養生屋根15に加温空気を流入することもできる。
【0030】
本実施の形態によれば、袋状仮設養生屋根15は、袋状になっているので、加温空気が流入されると膨らんでくる。その結果、積雪には亀裂とともに積雪の下面と袋状仮設養生屋根15の間に、僅かな隙間や空間が生じ、更に、空気が加温されていることで、積雪の下面が溶け出し、摩擦係数が小さくなり非常に滑りやすくなる。袋状仮設養生屋根15には、適度な傾斜がついているので、容易に落下することになる。
【0031】
つぎに図3により、本発明に係る第3の実施の形態を説明する。
本実施の形態は第1の実施の形態または第2の実施の形態における袋状仮設養生屋根15を複数の骨組12に沿って複数に区分し、それぞれの区分部に空気供給口19を設け、この空気供給口19にカップリング20を介して管16と接続したことにある。
【0032】
各空気供給口19には図3に示したように管16の一端がカップリング20を介して接続し、管16の他端は図2に示した加温装置18に接続し、加温装置18は加圧源17に接続している。仮設養生屋根15は、中心部から8本の骨組12に沿って放射状に8個に区分された三角形の小袋状仮設養生屋根15a〜15hとなっている。
【0033】
これらの小袋仮設養生屋根15a〜15hには加圧源17から加温装置18で加温された加温空気が管16および空気供給口19を通して供給される。各管16にバルブ(図示せず)を取り付けることによって任意区分の小袋状仮設養生屋根15a〜15hに加温空気を送り込むことができる。
【0034】
本実施の形態によれば、任意の個所の小袋状仮設養生屋根15a〜15hの除雪が容易にできることから、積雪荷重による養生屋根の許容耐力を超えないようにすることができる。また、つららに対しても小さい時期に除去できるので、つららの落下による人身事故も回避できる。
【0035】
また、本実施の形態は風向き、または周囲の状態によって小袋状仮設養生屋根15a〜15hの積雪状態が異なる場合、部分的に積雪と小袋状仮設養生屋根15a〜15hとの間の摩擦係数を小さくすることができる。
【0036】
したがって、重力に従い積雪は落下することになり、容易に積雪荷重が小袋状仮設養生屋根15a〜15hの許容耐力を超えないようにすることができる。さらに、自然に、また徐々に大きくなるつららに対しても小さい時期に除去でき、積雪と同じに落下させることができるので、つらら落下による人身事故も回避できる。
【0037】
なお、本発明では袋状仮設養生屋根15および小袋状仮設養生屋根15a〜15hの例について説明したが、これらに限ることなく、本設屋根を袋状に形成して適用することもできる。また、小袋状仮設養生屋根の区分数についても任意に選択できる。さらに、原子力発電所の例で説明したが、火力発電所、水力発電所、風力発電所等についても適用することができる。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、仮設養生屋根または本設屋根に加圧空気を流入すると膨らむように袋状に構成したので、積雪やつららを容易に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る原子力発電所の建設方法の第1の実施の形態を説明するための概略的な縦断面図。
【図2】本発明に係る原子力発電所の建設方法の第2の実施の形態を説明するための概略的な縦断面図。
【図3】本発明に係る原子力発電所の建設方法の第3の実施の形態を説明するための仮説養生屋根を示す平面図。
【図4】従来の原子力発電所の建設方法を説明するための概略的な縦断面図。
【図5】図4における仮設養生屋根を示す平面図。
【符号の説明】
1…建設途上の原子炉建屋、2…ベースマットコンクリート、3…仮支持台、4…建設途上のコンクリート、5…ペデスタル、6…しゃへいコンクリート、7…仮設架台、8…圧力抑制室、9…ベントパイプ、10…モノレール、11…仮設養生屋根、12…骨組、13…覆材、14…養生シート、15…袋状仮設養生屋根、16…管、17…加圧源、18…加装置、19…空気供給口、20…カップリング。

Claims (2)

  1. 発電所における建設途上の建築構造物の中央部から放射状に設けられた骨組みと、この骨組みに沿って区分して設けられた複数の小袋状仮設養生屋根と、これらの小袋状仮設養生屋根のそれぞれに加圧空気を送り込む空気供給口と、この空気供給口に接続される加圧源とを有し、任意の小袋状仮設養生屋根を膨らませることによって除雪可能としたことを特徴とする発電所の建設方法。
  2. 前記加圧源の下流側に加温装置を設け、加温空気を前記空気供給口に送り込むことを特徴とする請求項1記載の発電所の建設方法。
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