JP3979159B2 - プリント回路用基板およびそれを用いたプリント回路基板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はプリント回路用基板に関する。特に、高性能の電子機器、とりわけ小型軽量化に好適な高い接着力を有するプリント回路用基板に関する。さらに詳しくは、半導体パッケージにおけるFPC(Flexyble Print Curcuit)、CSP(Chip Size Package)、BGA(Ball Grid Array)、COF(Chip On Film)などに利用されるプリント回路用基板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、フレキシブルプリント回路用基板としては、ポリイミド樹脂フィルムに接着剤を介して銅箔を貼り合わせた「3層型ラミネート」品が、カメラ、プリンター、パソコン、など各種電気機器で広く一般に使用されている。3層型プリント回路用基板に使用されている接着剤は、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系などが単独あるいは混合されて用いられている。これらの樹脂中には不純物イオンが含まれるため絶縁信頼性が低下する問題がある。またその耐熱性も、接着剤の耐熱性がポリイミドに対して劣るため、ポリイミド樹脂フィルムの優れた特性が十分に活かされていないのが実状である。さらに貼り合わせる銅箔の厚みが薄い場合には取り扱いが困難なため、一般には18μm以上の厚みのものが使用されており、80μmピッチ(配線幅40μm、ギャップ40μm)以下のパターニングを行うには銅が厚すぎてエッチング率が低下し、銅箔表面側の回路幅と接着剤面側の回路幅が大きく異なり、あるいはエッチング全体が細り、ファインピッチ配線が得られないという欠点がある。このような問題を有しているため、接着剤で銅箔を貼り合わせた「3層型ラミネート」品は高密度実装配線には限界があり、小型、軽量化する高性能な電子機器用途には不都合なのである。
【0003】
また、接着剤を用いないで、銅箔に樹脂をコーティングして耐熱性絶縁層を形成する「2層型キャスト」品は、耐熱性、絶縁信頼性の面では良い特性を得ることができるが、これも銅箔の厚みが薄くなると取り扱いが困難になるため、一般に銅箔の厚みは18μm以上のものが使用されている。したがって、「3層型ラミネート」品と同様にファインピッチ配線が得られないという欠点がある。
【0004】
ファインピッチ配線を得る手段としては、ポリイミドフィルム上に真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、銅メッキなどの方法で導電性金属層を形成させた、いわゆる接着剤のない2層型プリント回路用基板が提案されている。現在上市されている「2層型メッキ」品は、銅層とポリイミドとの密着力(90度剥離強度)が6N/cm程度あり、100μm以上の配線パターン幅では、エッチング、レジスト剥離などの配線パターン形成工程によるパターン脱落は少なく良好である。しかしながら、配線パターン形成後、150℃で10日間の熱負荷試験後の密着力は2N/cm程度以下まで低下するという問題がある。
【0005】
「2層型メッキ」品の特性を改善をするために、種々の提案がされている。例えば、特開平4−329690号公報には、フィルム上にクロム系セラミック蒸着層/銅または銅合金蒸着層/銅メッキ層からなる構成のフレキシブルな電気回路用キャリアーが提案されている。しかし、この方法では、例えば150℃で10日間の熱負荷試験をした後の接着力低下の防止効果は不十分であり、また、配線加工し、無電解スズメッキを施した後の接着力が低下するなどの問題がある。特開平1−321687号公報には、フィルム表面に樹脂層を介して金属蒸着層を設け、その上に厚膜の金属層をメッキ法で積層した「3層型メッキ」品が提案されている。フィルムと金属層の間に樹脂層を設けることにより接着力は向上するが、一般的に樹脂層を積層すると、フィルムと樹脂層の線膨張係数などの違いにより、プリント回路用基板の反りが発生しやすくなるという問題が生じる。特にフレキシブル基板用には折り曲げ性などの点から25μm厚などの薄いフィルムが用いられるため、この反りの問題は無視できないレベルとなる。また、半導体実装時にワイヤーボンディング、フリップチップで接合する際、樹脂層の弾性率が低いと接合不良が多発し問題となることがある。 また、特開平5−29398号公報には、ポリアミド樹脂を主成分とする熱硬化型の接着剤層に無機粒子を添加したTAB用テープが提案されている。しかしながら、ここで紹介されているTABテープは、プリント回路用基板の反り低減には効果が小さいものである。また、接着剤層の弾性率も大きく向上しないため、半導体実装時のワイヤーボンディング、フリップチップでの接合において、接合不良は改善されていない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、従来の「2層型メッキ」品は、メッキ銅層とポリイミド界面の初期接着力が不十分で、かつ配線形成し無電解スズメッキした後の熱負荷試験を施した後の接着力低下が大きく、また、「3層型メッキ」品は接着力は向上するが、フィルムと金属層の間に設けた樹脂層の影響で反りが大きくなり、さらに、半導体実装時に接合不良が多発するなどの問題があった。
【0007】
かかる状況を鑑み、本発明の目的は、高接着力を有しかつ熱負荷後の接着力が高く、プリント回路用基板の反りが極めて小さく、半導体実装時に接合不良が発生しにくいメッキ型のフレキシブルプリント回路用基板を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明は、耐熱性絶縁フイルムの少なくとも片面に耐熱性樹脂層と導電性金属層を順次積層したプリント回路用基板であって、耐熱性樹脂層が少なくとも比表面積40m2/g以上の微粒子と樹脂成分から構成されており、導電性金属層がメッキ層であることを特徴とするプリント回路用基板をその骨子とする。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明のプリント回路用基板とは、耐熱性絶縁フィルムの少なくとも片面に耐熱性樹脂層、及び、導電性金属層を有し、3つの層がこの順に積層されてなるプリント回路用基板である。従って発明の効果を妨げない限り、耐熱性絶縁フィルムと耐熱性樹脂層の間や、耐熱性樹脂層と導電性金属層の間に前記3つの層以外のその他の層が挿入されていても良く、それが1層または複数層のいずれかであってもよい。また、耐熱性絶縁フィルム、耐熱性樹脂層または導電性金属層の少なくともいずれかの層が複数の層よりなるものであっても良い。
【0010】
なお、プリント回路とは、例えば、光学的方法等を用いたエッチングなどにより金属層が形成された電気回路であり、好ましくは15〜150μmのピッチ、より好ましくは20〜100μmのピッチを有する回路である。
【0011】
本発明の耐熱性樹脂層に含まれる微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、石英粉、炭酸マグネシウム、炭酸カリウム、硫酸バリウム、無機顔料などが挙げられる。これらの微粒子は疎水性または親水性の表面処理が必要に応じて施されていても良い。
【0012】
本発明において、微粒子の比表面積が40m2/g以上、好ましくは60m2/g以上、さらに好ましくは80m2/g以上である。耐熱性樹脂層の弾性率の向上、プリント回路用基板の反り低減にはできるだけ小さな粒子径の微粒子を使う方が有利だからである。
【0013】
比表面積とは、一般に単位質量粉体の全粒子表面積で定義されるものである。測定法には透過法、吸着法、浸漬熱法などがあるが、吸着法が用いられることが多い。吸着法は試料表面に大きさのわかった分子やイオンを吸着させて、その量から試料の比表面積を測定する方法である。気相中ならびに液相中での吸着が可能であるが、液相吸着の装置は市販されていないので、気相吸着法が主に用いられる。
【0014】
気体分子の運動エネルギーが粒子表面のポテンシャルエネルギーの谷より小さければ、気体分子は粒子表面に吸着することができる。温度を上げると分子の運動エネルギーは谷の深さより大きくなり、脱着する。吸着力は圧力が高いほど多く、温度一定で圧力を上げながら平衡吸着量を測定すると、吸着等温線と呼ばれる吸着パターンが得られる。粒子の表面が比較的平滑で吸着気体と化学反応をおこさない(物理吸着)場合には、吸着等温線はBETの式でよく近似される。
【0015】
かかる状況を考慮し、本発明の比表面積は、N2の吸着等温線を測定し、該等温線にBET多分子層吸着理論を適用する公知の方法で求めたものである。
【0016】
比表面積と微粒子の一次粒子の平均粒子径は、微粒子の粒度分布があるので一義的に相関するものではなく、計算値と実測値では異なるものであるが、例えばシリカの場合、比表面積が40m2/g、90m2/g、200m2/gであると一次粒子の平均粒子径は各々、約50nm、約20nm、約12nmである。
【0017】
一般的に微粒子は一次粒子が集まって二次凝集構造をとっているため、これを機械的に分散させる必用がある。分散は微粒子のみで機械的衝撃を与えて分散する乾式法、溶剤または樹脂溶液に混練させてから機械的衝撃を与えて分散する湿式法があり、具体的な分散方法としては、ボールミル、サンドグラインダー、3本ロールミル、高速度衝撃ミルなど、種々の方法がとりうる。微粒子の微分散安定化の目的で分散剤、界面活性剤などを必要に応じて添加しても良い。
【0018】
微粒子を混練した樹脂溶液を用いた場合、微粒子の微分散安定性は、樹脂溶液の粘度および/または降伏値から判断することができる。粘度はずり応力s(単位:Pa)とずり速度D(s-1)の比から、また、降伏値Sc(Pa)は、Cassonプロット(下記式)より求めた。なお、ここでηcは、Casson粘度(Pa・s)を表す。
(s)1/2 = (Sc)1/2 + (ηc・D)1/2
降伏値が小さいほど樹脂溶液は微分散安定化されており、降伏値が大きいほど樹脂溶液は凝集していると言える。
【0019】
微粒子の比表面積は大きければ大きいほど耐熱性樹脂層の弾性率の向上、プリント回路用基板の反り低減には効果は大きいが、凝集しやすくなる傾向が大きくなる。微粒子が凝集した樹脂溶液を塗工して耐熱性樹脂層を形成すると、塗布欠点が多く出るので好ましくない。したがって微粒子の比表面積は420m2/g以下が好ましく、より好ましくは380m2/g以下、さらに好ましくは240m2/g以下である。
【0020】
本発明において鋭意検討した結果、耐熱性樹脂層に、ある特定範囲にある粒子径の微粒子を含有させることにより、耐熱性絶縁フィルムと導電性金属層の接着力が向上するだけでなく、プリント回路用基板の反りが低減し、耐熱性樹脂層の弾性率が高くなり、その結果、半導体実装時の接合不良が軽減されることがわかった。
【0021】
プリント回路用基板の反りが大きいと、導電性金属層をエッチングして電気回路を形成する際に操作性が悪くなり、プリント回路基板の寸法安定性が低下するため好ましくない。したがってプリント回路用基板の反りはできるだけ小さくするのが好ましい。
【0022】
半導体実装時のワイヤーボンディング、フリップチップの工程で負荷される温度領域における耐熱性樹脂層の弾性率が接合信頼性に大きく影響する。特にワイヤーボンディングの場合は150〜200℃の温度領域で高速で接合を行うため、弾性率の高い耐熱性樹脂層が望まれる。本発明においては、150〜200℃における耐熱性樹脂層の弾性率は30MPa以上が好ましく、より好ましくは60MPa以上、さらに好ましくは80MPa以上である。
【0023】
本発明の耐熱性樹脂層に含まれる樹脂成分としては、例えば、エポキシ系樹脂、フェノール系樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ブタジエン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系接着剤、ポリアミド系樹脂、ポリエーテルイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリイミド系樹脂などの耐熱性樹脂からなる樹脂を単独あるいは混合して用いることができる。上記樹脂の中でも特に耐熱性、絶縁信頼性、接着性の点から、ポリイミド系樹脂が好ましく用いられる。
【0024】
本発明におけるポリイミド系樹脂とは、その前駆体であるポリアミド酸またはそのエステル化合物を加熱あるいは触媒等により、イミド環や、その他の環状構造を形成したポリマーである。ここで、ポリアミド酸またはそのエステル化合物は、テトラカルボン酸成分とジアミン成分を選択的に組み合わせて得られる。
【0025】
上記テトラカルボン酸成分はテトラカルボン酸二無水物が挙げられ、例えば、環状炭化水素を持つ脂環式テトラカルボン酸二無水物、芳香族環又は芳香族複素環を含む芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。好ましくは芳香族テトラカルボン酸である。
【0026】
具体例としては、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,5−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−ビシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−C]フラン−1,3−ジオン、3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2´,3,3´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2´,3,3´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3´,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ピロメリット酸二無水物、、3,3´,4,4´−ビフェニルトリフルオロプロパンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3″,4,4″−パラターフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3″,4,4″−メタターフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8−フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、4,4´−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、3,3´,4,4´−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2´,3,3´−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ジフェニルスルホキシドテトラカルボン酸二無水物、2,2´,3,3´−ジフェニルスルホキシドテトラカルボン酸二無水物、3,3´,4,4´−ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸二無水物、2,2´,3,3´−ジフェニルスルフィドテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらのテトラカルボン酸二無水物は単独または混合して用いることができる。
【0027】
芳香族テトラカルボン酸は、ポリイミドの耐熱性の点からテトラカルボン酸成分中の20重量%以上が好ましく、より好ましくは40重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上である。
【0028】
また、ジアミン成分としては、ジアミン成分中にシロキサン系ジアミンを含むことにより、導電性金属層との接着性が向上するので、好ましく用いることができる。ジアミン成分中のシロキサン系ジアミンの量は30モル%以上、好ましくは30〜95モル%、さらに好ましくは40〜90モル%である。
【0029】
上記シロキサン系ジアミンとしては、次の一般式(1)で表されるものが挙げられる。
【0030】
【化2】
【0031】
ただし、式中nは1以上の整数を示す。また、R1およびR2は、それぞれ同一または異なっていてよく、低級アルキレン基またはフェニレン基を示す。R3〜R6は、それぞれ同一または異なっていてよく、低級アルキル基、フェニル基またはフェノキシ基を示す。
【0032】
一般式(1)で表されるシロキサン系ジアミンの具体例としては、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノフェニル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェノキシ−1,3−ビス(4−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(4−アミノフェニル)トリシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラフェニル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラフェニル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(2−アミノエチル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(3−アミノプロピル)ジシロキサン、1,1,3,3−テトラメチル−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサン、1,3−ジメチル−1,3−ジメトキシ−1,3−ビス(4−アミノブチル)ジシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(2−アミノエチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(4−アミノブチル)トリシロキサン、1,1,5,5−テトラメチル−3,3−ジメトキシ−1,5−ビス(5−アミノペンチル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサメチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサエチル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサン、1,1,3,3,5,5−ヘキサプロピル−1,5−ビス(3−アミノプロピル)トリシロキサンなどが挙げられる。上記シロキサン系ジアミンは単独でも良く、2種以上を混合しても良い。
【0033】
本発明においては、導電性金属層との接着性を低下させない範囲でその他のジアミンを添加することができる。その具体例としては、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、3,3´−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、4,4´−ジアミノ−3,3´−ジメチルジシクロヘキシルメタン、4,4´−ジアミノ−3,3´−ジメチルジシクロヘキシル、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4´−ジアミノジフェニルエーテル、3,3´−ジアミノジフェニルエーテル、3,4´−ジアミノジフェニルエーテル、3,3´−ジアミノジフェニルメタン、4,4´−ジアミノジフェニルメタン、2,5−ジアミノトルエン、o−トリジン、3,3´−ジメチル−4,4´−ジアミノジフェニルメタン、、ジアミノベンズアニリド、4,4´−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]エーテル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4´−ジアミノジフェニルスルホン、3,3´−ジアミノジフェニルスルホン、3,4´−ジアミノジフェニルスルホン、4,4´−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3´−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3´−ジアミノジフェニルスルホキシド、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルホンなどが挙げられる。中でも耐熱性の点から、芳香族ジアミンを用いるのが好ましい。
【0034】
本発明において、ポリアミド酸は公知の方法によって合成される。例えば、テトラカルボン酸成分とジアミン成分を選択的に組み合わせ、所定のモル比で、溶媒中で0〜80℃で反応させることにより合成することができる。
【0035】
ポリアミド酸合成の溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド系極性溶媒、また、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトンなどのラクトン系極性溶媒、他には、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルカルビトール、エチルカルビトールなどを挙げることができる。これらは単独で用いても良いし、2種以上を混合して用いても良い。
【0036】
ポリアミド酸の濃度としては、通常5〜60重量%が好ましく、さらに好ましくは10〜40重量%である。ポリアミド酸の分子量の調節は、テトラカルボン酸成分またはジアミン成分を当モルにする、または、いずれかを過剰にすることにより行われる。テトラカルボン酸成分またはジアミン成分のどちらかを過剰とした場合、ポリマー鎖末端を酸成分またはアミン成分などの末端封止剤で封止することがある。一般的に、酸成分の末端封止剤としてはジカルボン酸またはその無水物が用いられ、アミン成分の末端封止剤としてはモノアミンが用いられる。このとき、酸成分またはアミン成分の末端封止剤を含めたテトラカルボン酸成分の酸当量とジアミン成分のアミン当量を等モルにすることが好ましい。末端封止剤の具体例としては、安息香酸、無水フタル酸、テトラクロロ無水フタル酸、無水マレイン酸、アニリンなどが用いられる。
【0037】
本発明において、耐熱性樹脂層中の微粒子の含有量は2〜60重量%が好ましく、より好ましくは3〜50重量%、さらに好ましくは5〜40重量%である。微粒子の含有量が2重量%未満だと耐熱性樹脂層の弾性率の向上、プリント回路用基板の反り低減への効果が小さくなり、60重量%を越えると樹脂溶液の微分散安定化が困難になり、耐熱性絶縁フィルムに塗工した際の欠点が発生しやすくなる。また、導電性金属層との接着力も低下傾向となる。
【0038】
本発明において、耐熱性樹脂層は微粒子と樹脂成分のみから構成されていても良いし、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分を含んでいても良い。例えば、顔料や充填剤などを含むことができる。
【0039】
本発明において使用される耐熱性絶縁フィルムは、融点が280℃以上、好ましくは300℃以上、より好ましくは350℃以上のもの、あるいはJIS C4003で規定される長時間連続使用の最高許容温度が121℃以上、好ましくは150℃以上、より好ましくは200℃以上のもののいずれかでの条件を満足する高分子樹脂フィルムであればよい。前記数値範囲の下限値を下回ると長期耐熱信頼性が劣るため好ましくない。
【0040】
耐熱性絶縁フィルムの厚みは、好ましくは3〜150μm、より好ましくは5μm〜75μm、さらに好ましくは5μm〜50μmである。3μm未満では、支持体としての強度が不足することがある。また、150μmを越えると柔軟性不足となり、折り曲げが困難で好ましくない場合があるからである。
【0041】
本発明における耐熱性絶縁フィルムとしては、芳香族ポリイミド系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、芳香族ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、芳香族ポリエステル系樹脂などがあり、具体的な製品としては、東レ・デュポン(株)製「カプトン」、宇部興産(株)製「ユーピレックス」、鐘淵化学工業(株)製「アピカル」、東レ(株)製「ミクトロン」、(株)クラレ製「ベキトラ」などが挙げられる。これらの中でも芳香族ポリイミド系樹脂が特に好ましく用いられる。
【0042】
また、耐熱性絶縁フィルム表面の片面あるいは両面は、コロナ放電処理や低温プラズマ処理などの放電処理、あるいは公知のウエットプロセス処理など、目的に応じ接着性改良の処理が施されているのが好ましい。特に、適当な放電処理を施すことが好ましい。
【0043】
放電処理には、常圧プラズマ処理、低温プラズマ処理、コロナ放電処理などがあり、これらの処理を施すことによって、ポリイミドフィルム等で構成された耐熱性絶縁フィルムと耐熱性樹脂層との接着性を大幅に向上させることができる。
【0044】
常圧プラズマ処理とは、Ar、N2 、He、CO2 、CO、空気、水蒸気などの雰囲気中で放電処理する方法をいう。処理の条件は、処理装置、処理ガスの種類、流量、電源の周波数などによって異なるが、適宜最適条件を選択することができる。
【0045】
低温プラズマ処理は、減圧下で行なうことができ、その方法としては、特に限定されないが、例えばドラム状電極と複数の棒状電極からなる対極電極を有する内部電極型の放電処理装置内に被処理基材をセットし、処理ガスを1〜1,000Pa,好ましくは、5〜100Paに調整した状態で電極間に直流あるいは交流の高電圧を印加して放電を行い、前記処理ガスのプラズマを発生させ、該プラズマに基材表面をさらして処理する方法が挙げられる。低温プラズマ処理の条件としては、処理装置、処理ガスの種類、圧力、電源の周波数などによって異なるが、適宜最適条件を選択することができる。上記処理ガスとしては、特に限定されるものではないが、Ar、N2 、He、CO2 、CO、空気、水蒸気、O2、CF4 などを単独であるいは混合して用いることができる。
【0046】
一方、コロナ放電処理は、低温プラズマ処理と比較して接着性向上の効果が小さいので、積層する耐熱性樹脂層を適切なものに選択することが肝要である。
【0047】
次に、本発明のプリント回路基板を得る好ましい態様を挙げて、耐熱性絶縁フィルムと耐熱性樹脂層の積層方法について詳細に説明する。
【0048】
耐熱性絶縁フィルムとして、低温プラズマ処理あるいはコロナ放電処理などしたポリイミドフィルム上に、耐熱性樹脂層を設けるために上記した微粒子、樹脂成分を含む溶媒溶液を均一に塗工する。この塗工方法としてはロールコータ、ナイフコータ、密封コータ、コンマコータ、ドクターブレードフロートコータなどを使用することができる。次に、耐熱性絶縁フィルムに塗工した溶液の溶媒を、通常、60℃以上200℃以下の範囲の温度で連続的または断続的に1〜60分間、加熱除去する。
【0049】
耐熱性絶縁フィルムであるポリイミドフィルム上に形成される耐熱性樹脂層の厚みは、好ましくは0.05〜10μm、より好ましくは0.1〜8μm、さらに好ましくは0.3〜6μmであるが、目的に応じ適宜選定することができる。耐熱性樹脂層の厚みが0.05μm未満では塗工時にピンホールなどの欠点が出ることがある。また、厚みが10μmを越えると、プリント回路用基板またはプリント回路基板の反りが大きくなる傾向がある。
【0050】
また、接着性向上のためには、さらに加熱キュアを施した方が好ましい。加熱キュアの条件としては、通常、温度200℃〜350℃で約5分〜30分であるが、樹脂の組成、膜厚などによって適宜選択することができる。
【0051】
本発明における導電性金属層は、導電性を有する金属より構成されているならば、特に限定されるものではなく、例えば、アルミニウム、銅、パラジウム、ニッケル、クロム、SUS、コバルト、金等の金属を単独または合金として使用することができるが、電気特性に優れる点から、銅単独または銅を含み銅を主成分とする金属が好ましく使用される。導電性金属層は多層になっていてもかまわない。たとえば、耐熱性樹脂層の表面に前記金属を蒸着またはスパッタリングなどによって薄く形成し、その上に同種または異種の金属層を形成するなどである。
【0052】
導電性金属層はメッキ層である必要がある。メッキ層とすることにより、膜の特性制御および厚みの制御が容易となる。メッキ層においては、一般に電子顕微鏡による断面結晶像において、厚さ方向に発達した結晶が観察される。典型的には、前記結晶の厚さ方向の長さは銅層の厚みの、好適には90%以上より好適には95%以上である。一般に前記銅層の基部には銅層とは成分の異なる異種成分や銅のスパッタ層などが形成される。
【0053】
メッキ層を形成するための電気メッキ法は特に限定されるものではなく、通常の硫酸銅メッキ法が使用できる。導電性金属層が銅層の場合、厚みは1〜18μmの範囲が好ましい。1μmより薄いとピンポールが発生しやすくなり、18μmより厚いとメッキ銅の厚みコントロールが難しくなる。より好ましくは3μm以上12μm以下である。
【0054】
耐熱性樹脂層、導電性金属層の膜厚の測定は種々の方法で測定することができる。本発明においては、得られたプリント回路用基板の断面をSEM(走査型電子顕微鏡)で観察することによって耐熱性樹脂層、導電性樹脂層の膜厚を測定することができる。また、導電性金属層の場合、配線パターンをエッチングして導電性金属層が残っている部分とエッチングした部分の膜厚の差から算出することができる。耐熱性樹脂層の場合、プリント回路用基板の導電性金属層をエッチングした部分の膜厚を測定し、既知の耐熱性絶縁フィルムの膜厚を差し引くことにより算出することができる。
【0055】
また本発明における導電性金属層は、耐熱性樹脂層と接する側に通常はニッケル、クロム等よりなる異種成分層を有していることが好ましく、その厚みは好ましくは2nm〜30nmである。なお、前記異種成分層には主成分(銅等)が含まれていても良いし、厚さ方向に成分濃度勾配を有して分布していても良い。
【0056】
前記異種成分層を形成した後にさらに銅層を50nm以上スパッタまたは蒸着で積層するのも好ましい態様である。この場合、導電性金属層の総厚みは400nm以内とすることが好ましい。
【0057】
前記の異種成分層にスパッタまたは蒸着で積層した主成分(銅等)層(以下、単にスパッタ主成分層という)がある場合も含めて、一般的に、金属基礎層と呼ばれる。即ち、金属基礎層とは、異種成分層、または、異種成分層/スパッタ主成分層よりなるものである。なお、特にメッキにより主成分層を設ける場合には、前記金属基礎層が2nmより薄いとピンホールが発生することがある。また、金属基礎層が400nmより厚いと導電性金属層の形成に長時間を要する。この金属基礎層の上に電気メッキ法によって厚み1〜18μmの銅層を形成することが好適である。
【0058】
本発明において接着力とは、導体幅2mmのパターンを使用し、金属箔を90度の方向に50mm/分の速度で引き剥がした時の値を意味する。耐熱性絶縁フィルムに銅層をメッキ法で積層した「2層型メッキ」品は銅層の接着界面が平坦であり、上記の測定方法では通常約5N/cmの接着強度が得られる。
【0059】
本発明のプリント回路用基板もメッキ法で金属層を形成しているため、金属層の接着界面は平坦であるが、従来のものに比べ8N/cm以上の接着力を得ることが可能である。また、耐熱性接着層が非常に薄いので、耐熱性絶縁フイルムが本来有している特性を損なわない利点も有している。
【0060】
本発明のプリント回路基板は、例えば、導電性金属層上にレジスト層を形成し、レジスト層を露光・現像することにより配線パターンに合った形状にレジストをパターニングし、パターニングしたレジストをエッチングマスクとして導電性金属層をエッチングして配線パターンを形成し、配線パターン形成後にレジストを除去することにより得ることができる。
【0061】
得られたプリント回路基板の配線パターンの断面は、導電性金属層をエッチングする際、厚み方向にエッチングされながら、幅方向にもエッチングされていく(サイドエッチング)ため、トップ(金属層表面)の線幅がボトム(耐熱性樹脂層に接している面)の線幅よりも狭くなるテーパー形状になる傾向がある。導電性金属層の厚みが厚くなると、トップの線幅がボトムの線幅よりも狭くなる傾向が大きくなる。例えば、80μmピッチ(配線幅40μm、ギャップ40μm)の配線パターンの場合、ボトム線幅40μmに対し、トップ線幅が20μm以上であれば、良好なパターン形状で、半導体を実装する際に接合不良が出ない。これに対し、トップ線幅が20μmより小さくなると半導体を実装する際接合不良が出やすくなる傾向になる。サイドエッチングを減らすため、導電性金属層の厚みを上気した値に制御することが好ましい。
【0062】
本発明のプリント回路用基板は耐熱性絶縁フィルムの片面あるいは両面に金属層を有しているので、セミアディティブ方式あるいはサブトラクティブ方式を用いて配線を形成することにより片面あるいは両面配線板を形成することができる。
【0063】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下の説明で、接着性、熱負荷試験、スズメッキ後の熱負荷試験、プリント配線用基板の反り、耐熱性樹脂層の弾性率、ワイヤーボンディング性は次の方法で評価および測定を行った。
【0064】
(1)接着強度
金属層を積層後、金属層を塩化第2鉄溶液で2mm幅にエッチングし、該2mm幅の金属層を TOYO BOLDWIN社製”テンシロン”UTM-4-100にて引っ張り速度50mm/分、90゜剥離で測定した。
【0065】
(2)熱負荷試験
金属層を積層後、金属層を塩化第2鉄溶液で2mm幅にエッチングし、150℃に設定された熱風オーブン中に240時間おいた後取り出し、(1)に記載した方法で接着強度を評価した。
【0066】
(3)スズメッキ後の熱負荷試験
金属層を積層後、金属層を塩化第2鉄溶液で2mm幅にエッチングした後、東京応化(株)製のスズメッキ液LT-34を用い、液温度70℃、メッキ時間5分で無電解スズメッキし、水洗・乾燥した。150℃に設定された熱風オーブン中に240時間おいた後取り出し、(1)に記載した方法で接着強度を評価した。
【0067】
(4)プリント配線用基板の反り
得られたプリント配線用基板を50mm×50mmにカットして平らな板の上に静置し、4角の反り高さを測定し、その平均値を反りの値とした。
【0068】
(5)耐熱性樹脂層の弾性率
樹脂溶液を厚さ18μmの電解銅箔の光沢面に所定の厚さになるようにバーコーターで塗布後、80℃で10分、150℃で10分乾燥し、さらに窒素雰囲気下260℃で30分加熱処理を行い熱硬化させた。次に電解銅箔を塩化第2鉄溶液で全面エッチングし、耐熱性樹脂層の単膜を得た。これを所定の形状に切り出し、弾性率を測定した。測定は、セイコーインスルメンツ(株)製 DMS6100を用い、室温から250℃の範囲を振動周波数1Hz、昇温速度5℃/分で測定した。
【0069】
(6)ワイヤーボンディング性
得られたプリント配線用基板をボンダーにてワイヤーボンディングを100ヶ所行い、位置ずれ、リードパターンの剥がれ、変形ばどに起因する接合不良の有無をSEMを用いて観察した。
【0070】
製造例1(ポリアミド酸の重合)
温度計、乾燥窒素導入口、温水・冷却水による加熱・冷却装置、および攪拌装置を付した反応釜にN,N−ジメチルアセトアミド 4405gを入れ、窒素気流下でビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン 397.6g(1.6mol)、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル 80.1g(0.4mol)を溶解させた後、3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物 580.0g(1.8mol)、ピロメリット酸二無水物 43.6g(0.2mol)を加え、30℃で1時間攪拌後、60℃で5時間攪拌して反応させたことにより、20重量%ポリアミド酸溶液(PA1)を得た。
【0071】
製造例2(ポリアミド酸の重合)
温度計、乾燥窒素導入口、温水・冷却水による加熱・冷却装置、および攪拌装置を付した反応釜にN,N−ジメチルアセトアミド 4240gを入れ、窒素気流下でビス(3−アミノプロピル)テトラメチルジシロキサン 372.8g(1.5mol)、パラフェニレンジアミン 54.1g(0.5mol)を溶解させた後、3,3´,4,4´−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物 515.5g(1.6mol)、3,3´,4,4´−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物 117.7g(0.4mol)を加え、30℃で1時間攪拌後、60℃で5時間攪拌して反応させたことにより、20重量%ポリアミド酸溶液(PA2)を得た。
【0072】
製造例3(ポリアミド酸の重合)
温度計、乾燥窒素導入口、温水・冷却水による加熱・冷却装置、および攪拌装置を付した反応釜にN,N−ジメチルアセトアミド 5653gを入れ、窒素気流下でビス(3−アミノフェノキシフェニル)エーテル 768.8g(2.0mol)を溶解させた後、3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物 644.4g(2.0mol)を加え、30℃で1時間攪拌後、60℃で5時間攪拌して反応させたことにより、20重量%ポリアミド酸溶液(PA3)を得た。
【0073】
製造例4(ポリアミド/エポキシ/フェノール系樹脂溶液の調整)
ヘンケルジャパン(株)製のポリアミド樹脂 ”マクロメルト”6030 250g(50重量)、油化シェルエポキシ(株)製のエポキシ樹脂 ”エピコート”828 105g(21重量%)、昭和高分子(株)製のフェノール樹脂 CKM−1636 145g(29重量%)をイソプロピルアルコール 680gとクロロベンゼン 1760gに溶かし、17重量%のポリアミド/エポキシ/フェノール系樹脂溶液(PA4)を得た
製造例5(微粒子分散樹脂溶液の作製)
ビーカーに日本アエロジル(株)製シリカ微粒子“AEROSIL”90G(比表面積:90m2/g) 135g、ポリアミド酸溶液(PA1) 75g、N,N−ジメチルアセトアミド 290gを入れてよく撹拌した後、3本ロールを用いて混練し、固形分濃度30重量%、微粒子/樹脂比が90/10(重量%)のスラリーを作成した。得られたスラリー 118.5gにポリアミド酸溶液(PA1) 622.3g、N,N−ジメチルアセトアミド 59.2gを添加してよく撹拌し、固形分濃度20重量%の微粒子分散樹脂溶液(DP1)を得た。
【0074】
製造例6〜14(微粒子分散樹脂溶液の作製)
微粒子分散樹脂溶液が表1に示したような組成になるように、微粒子、ポリアミド酸溶液の種類、混合比を変えた以外は製造例5と同様の操作を行い、固形分濃度20重量%の微粒子分散樹脂溶液(DP2〜10)を得た。
【0075】
【表1】
【0076】
ここで用いた微粒子は、日本アエロジル(株)製シリカ微粒子“AEROSIL”130(比表面積:130m2/g)、日本アエロジル(株)製シリカ微粒子“AEROSIL”200(比表面積:200m2/g)、デグサ・ヒュルス社製シリカ微粒子“AEROSIL”OX50(比表面積:50m2/g)、デグサ・ヒュルス社製二酸化チタン微粒子(比表面積:45m2/g)、(株)アドマテックス製“アドマファイン”SO−E2(比表面積:8m2/g)である。
【0077】
製造例15(微粒子分散樹脂溶液の作製)
ビーカーに日本アエロジル(株)製シリカ微粒子“AEROSIL”OX50(比表面積:50m2/g) 135gにヘンケルジャパン(株)製のポリアミド樹脂 ”マクロメルト”6030 15gをクロロベンゼン 350gに溶かしたポリアミド溶液を添加してよく撹拌した後、3本ロールを用いて混練し、固形分濃度30重量%、微粒子/樹脂比が9/1のスラリーを作製した。
得られたスラリー 118.5gに、ヘンケルジャパン(株)製のポリアミド樹脂 ”マクロメルト”6030 60.5g、油化シェルエポキシ(株)製のエポキシ樹脂 ”エピコート”828 26.9g、昭和高分子(株)製のフェノール樹脂 CKM−1636 37.1gをイソプロピルアルコール 128gとクロロベンゼン 429gに溶かしたポリアミド/エポキシ/フェノール系樹脂溶液を添加してよく撹拌し、固形分濃度20重量%、微粒子/樹脂比が20/80(重量%)の微粒子分散樹脂溶液(DP11)を得た。
【0078】
製造例16(微粒子分散樹脂溶液の作製)
微粒子を(株)アドマテックス製“アドマファイン”SO−E2(比表面積:8m2/g)に代えた以外は製造例13と同様の操作を行い、固形分濃度20重量%、微粒子/樹脂比が20/80(重量%)の微粒子分散樹脂溶液(DP12)を得た。
【0079】
実施例1
製造例5で作成した微粒子分散樹脂溶液DP1を、あらかじめAr雰囲気中で低温プラズマ処理した25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製“カプトン”100EN)に、乾燥後の膜厚が1μmになるようにバーコーターで塗工し、100℃で5分、さらに130℃で10分乾燥した。該塗工品を290℃で30分加熱処理を行い、イミド化および残存溶媒の除去を行った。
上記作製フィルムの接着剤塗工面にスパッタ装置(日電アネルバ(株)製 SPL−500)を用いて、Cr層を厚み10nm設け、次いでその上に銅層を0.2μmの厚さでスパッタにより積層した。スパッタ後直ちに硫酸銅浴を用い、電流密度2A/dm2の条件で銅厚みが8μmとなるようにメッキをし、プリント回路用基板を得た。
【0080】
実施例2
微粒子分散樹脂溶液の乾燥後の膜厚を2μmに変えた以外は実施例1と同様の操作を行い、プリント回路用基板を得た。
【0081】
実施例3
微粒子分散樹脂溶液の乾燥後の膜厚を2μmに変え、ポリイミドフィルムを宇部興産(株)製“ユーピレックス”25Sに代えた以外は実施例1と同様の操作を行い、プリント回路用基板を得た。
【0082】
実施例4〜15
微粒子分散樹脂溶液、乾燥後の膜厚、ポリイミドフィルムを表2のごとく代えた以外は実施例1と同様の操作を行い、プリント回路用基板を得た。
【0083】
実施例16
製造例15で作成した微粒子分散樹脂溶液DP11を、あらかじめAr雰囲気中で低温プラズマ処理した25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製“カプトン”100EN)に、乾燥後の膜厚が2μmになるようにバーコーターで塗工し、80℃で10分、さらに130℃で30分乾燥した。該塗工品を160℃で30分加熱処理を行い、樹脂の硬化および残存溶媒の除去を行った。以降は、実施例1と同様の操作を行って銅層を形成し、プリント回路用基板を得た。
【0084】
実施例17
微粒子分散樹脂溶液の乾燥後の膜厚を8μmに変えた以外は実施例16と同様の操作を行い、プリント回路用基板を得た。
【0085】
比較例1〜6
樹脂溶液または微粒子分散樹脂溶液、乾燥後の膜厚、ポリイミドフィルムを表2のごとく代えた以外は実施例1と同様の操作を行い、プリント回路用基板を得た。
【0086】
比較例7〜9
樹脂溶液または微粒子分散樹脂溶液、乾燥後の膜厚、ポリイミドフィルムを表2のごとく代えた以外は実施例16と同様の操作を行い、プリント回路用基板を得た。
【0087】
比較例10
Ar雰囲気中で低温プラズマ処理した25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製“カプトン”100EN)の表面に、実施例1で用いたスパッタ装置でCrを厚み10nm設け、次いでその上に銅を0.2μmスパッタした。スパッタ後、直ちに硫酸銅浴を用い、電流密度2A/dm2の条件で銅厚みが8μmとなるようにメッキをし、プリント回路用基板を得た。
【0088】
比較例11
ポリイミドフィルムを宇部興産(株)製“ユーピレックス”25Sに代えた以外は比較例10と同様の操作を行い、プリント回路用基板を得た。
【0089】
実施例1〜17、比較例1〜10の耐熱性樹脂層の150℃、200℃での弾性率を測定した。また、得られたプリント配線基板のワイヤーボンディングによる接合性、反り、接着力を測定した。結果をまとめて表2に示す。
【0090】
【表2】
【0091】
表2から、本発明の実施例は、いずれも基材フィルムとメッキ銅の接着力が強く、かつ150℃、240時間の熱負荷後の接着力低下が少なく、さらにスズメッキ後にも接着力低下がなかった。また、プリント回路用基板の反りは小さく、十分に実用範囲であり、さらに、耐熱性樹脂層の弾性率が高いため、ワイヤーボンディングによる接合において接合不良は見られなかった。一方、比較例は、ワイヤーボンディング性、反り、接着力の少なくとも1つが劣っていた。
【0092】
実施例18
実施例1で得たプリント回路基板の銅箔上にフォトレジスト膜をリバースコーターで乾燥後の膜厚が4μmになるように塗布、乾燥後、配線パターンが80μmピッチ(配線幅40μm、ギャップ幅40μm)になるようにマスク露光し、アルカリ現像液で配線パターンを形成後、銅箔を第二塩化鉄水溶液でウエットエッチング処理した。残ったフォトレジスト膜を除去して銅配線パターンを形成し、プリント回路基板を得た。
上記方法で得られたプリント回路基板の配線パターンを顕微鏡で観察し、銅配線のボトムとトップの線幅を測定したところ、ボトムの線幅が39μm、トップの線幅が32μmで、良好な配線パターンを得ることができた。
【0093】
比較例12(3層型ラミネート品)
製造例4で得られたポリアミド/エポキシ/フェノール系樹脂溶液(PA4)を、あらかじめアルゴン雰囲気中で低温プラズマ処理しておいた厚さ25μmのポリイミドフィルム(東レ・デュポン(株)製“カプトン”100EN)に、乾燥後の膜厚が6μmになるようにリバースコーターで塗工し、80℃で10分、さらに130℃で30分乾燥した。
上記作製フィルムの接着剤塗工面に、80℃で5分予備乾燥後、厚さ18μmの電解銅箔を表面温度140℃に加熱したロールラミネーターで線圧2kg/cm、速度1m/分で張り合わせ、さらに窒素雰囲気下で加熱ステップキュア[(60℃、30分)+(100℃、1時間)+(160℃、2時間)]を行った後、室温まで除冷し、プリント回路用基板を得た。
上記プリント回路用基板を実施例18と同じ操作を行い、プリント回路基板を得た。上記方法で得られたプリント回路基板の配線パターンを顕微鏡で観察し、銅配線のボトムとトップの線幅を測定したところ、ボトムの線幅が38μm、トップの線幅が12μmであり、配線パターンの形状は不良であった。
【0094】
比較例13(2層型キャスト品)
温度計、乾燥窒素導入口、温水・冷却水による加熱・冷却装置、および攪拌装置を付した反応釜にN,N−ジメチルアセトアミド 2090gを入れ、窒素気流下で4,4’−ジアミノジフェニルエーテル 200.2g(1.0mol)を溶解させた後、3,3´,4,4´−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物 322.2g(1.0mol)を加え、30℃で1時間攪拌後、60℃で5時間攪拌して反応させたことにより、20重量%のポリアミド酸溶液を得た。
得られたポリアミド酸溶液を厚さ18μmの電解銅箔の凹凸面に、硬化後の膜厚が25μmになるようにリバースコーターで塗工し、80℃で10分、140℃で30分乾燥した。その後290℃で30分熱硬化させ、プリント回路用基板を得た。
上記プリント回路用基板を実施例18と同じ操作を行い、プリント回路基板を得た。上記方法で得られたプリント回路基板の配線パターンを顕微鏡で観察し、銅配線のボトムとトップの線幅を測定したところ、ボトムの線幅が41μm、トップの線幅が16μmであり、配線パターンの形状は不良であった。
【0095】
【発明の効果】
本発明により、耐熱フィルム上に形成したメッキ層との初期接着力が高く、高温度熱負荷後にも接着力低下が極めて少なく、加えて、プリント回路用基板の反りが小さく、半導体実装時に接合不良が発生しないメッキタイプのプリント回路用基板を提供できる。
Claims (7)
- 耐熱性絶縁フイルムの少なくとも片面に耐熱性樹脂層と導電性金属層を順次積層したプリント回路用基板であって、耐熱性樹脂層が少なくとも比表面積40m2/g以上の微粒子と樹脂成分から構成されており、導電性金属層がメッキ層であることを特徴とするプリント回路用基板。
- 耐熱性樹脂層に含まれる微粒子の量が2〜60重量%であることを特徴とする請求項1記載のプリント回路用基板。
- 耐熱性樹脂層の樹脂成分がポリイミド系樹脂であることを特徴とする請求項1または2記載のプリント回路用基板。
- 耐熱性樹脂層の厚みが0.05〜10μmの範囲にあることを特徴とする請求項1記載のプリント回路用基板。
- 導電性金属層が銅を含み、かつ、その厚みが1〜18μmの範囲であることを特徴とする請求項1記載のプリント回路用基板。
- 請求項1〜6のいずれか記載のプリント回路用基板を用いたプリント回路基板。
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