JP3978705B2 - エアシリンダ - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、種々の生産・加工設備等において、物体を一方又は他方へ移動させるためのエアシリンダに関する。
【0002】
【従来の技術】
シリンダ孔内にピストンを往復動自在に嵌挿し、ピストンの外周部に左右2個の静圧軸受部を形成し、またロッドカバーのピストンロッド挿通孔部に静圧軸受部を形成し、ロッド側室のエアはロッドカバーの静圧軸受部及びピストン外周部の一方の静圧軸受部に導入され、ヘッド側室のエアはピストン外周部の他方の静圧軸受部に導入されるエアシリンダ(従来技術)が特開平7−224807号公報に記載されている。この従来技術では、ピストン及びピストンロッドがともに静圧軸受けにより支持されるので、摺動摩擦が減少し、ピストンが低い推力で移動すると説明されている。
【0003】
しかし、前記の従来技術には次の▲1▼〜▲4▼の欠点がある。すなわち、▲1▼ピストンの前側と後側とでは受圧面積が異なるので、前進時と後退時とでは力の大きさが異なり、往動時及び復動時に所定の大負荷が作用する場合には利用することができない。▲2▼ピストンの静圧軸受はピストン外周部とシリンダ孔(シリンダチューブ内面)から構成されているので、シリンダ孔全面を精密加工する必要がある。▲3▼ロッド側室のエアがロッドカバーの静圧軸受部に導入されるので、ロッド側室には常に圧力空気が存在し、前進時の力が減少する。▲4▼シリンダ孔の断面を円形とするとき、ピストンロッドの回転を防止するには専用の回り止め機構を必要とする。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、エアシリンダにおいて、プランジャ(ロッド)を用いて前進の推力と後退の推力とを同等にできるようにすることを第1課題とし、シリンダ孔を精密加工することなくプランジャを気体軸受(静圧軸受)によって高精度の支持をすることを第2課題とし、気体軸受に導入されたエアがシリンダ室に流入して推力制御に影響を与えることのないようにすることを第3課題とし、プランジャに専用の回り止め機構を設けなくても断面円形のプランジャが回転しないようにすることを第4課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、エアシリンダにおいて、シリンダボディに挿通孔、第1シリンダ孔及び第2シリンダ孔が互いに平行に形成され、第1シリンダ孔がシリンダボディの一端に開口され、第2シリンダ孔がシリンダボディの他端に開口され、挿通孔、第1シリンダ孔及び第2シリンダ孔のそれぞれの内面に気体軸受が配設され、直動ロッドが挿通孔の気体軸受のみによって非接触状態に支持され、第1プランジャ及び第2プランジャが第1シリンダ孔及び第2シリンダ孔の気体軸受のみによってそれぞれ非接触状態に支持され、直動ロッドの一端が第1プランジャの一端に連結されるとともに直動ロッドの他端が第2プランジャの他端に連結されたことを第1構成とする。
本発明は、第1構成において、直動ロッドの一端と第1プランジャの一端との間、又は直動ロッドの他端と第2プランジャの他端との間にフローティング・ジョイントを介在させたことを第2構成とする。
本発明は、第1又は第2構成において、第1シリンダ孔の他端側に第1シリンダ室が形成され、第2シリンダ孔の一端側に第2シリンダ室が形成され、第1シリンダ室に連通する第1給排ポートが形成されるとともに第2シリンダ室に連通する第2給排ポートが形成されたことを第3構成とする。
本発明は、第3構成において、第1シリンダの気体軸受の内面でその他端の近傍位置に第1排出溝が形成され、第2シリンダの気体軸受の内面でその一端の近傍位置に第2排出溝が形成され、第1排出溝及び第2排出溝がそれぞれ真空掃引流路を介して掃引され、第1シリンダの気体軸受及び第2シリンダの気体軸受の内面に噴出されたエアが第1シリンダ室及び第2シリンダ室に流れないようにされたことを第4構成とする。
本発明は、第1〜第4構成において、挿通孔、第1シリンダ孔及び第2シリンダ孔の断面が円形にされるとともに、直動ロッド、第1プランジャ及び第2プランジャの断面が円形にされ、気体軸受が円筒状とされたことを第5構成とする。なお、直動ロッドの一端をエンドプレート及びフローティング・ジョイントを介在させて第1プランジャの一端に連結させるときは、直動ロッドの他端をエンドプレートを介して第2プランジャの他端に連結させ、直動ロッドの他端をエンドプレート及びフローティング・ジョイントを介在させて第2プランジャの他端に連結させるときは、直動ロッドの一端をエンドプレートを介して第1プランジャの一端に連結させることができる。
【0006】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明のエアシリンダの実施の形態を示す。エアシリンダ11のシリンダボディ12の幅方向(図1では前後方向)の中央部には、軸線方向(図1では左右方向)に貫通した段付の挿通孔13が形成されている。挿通孔13の大径孔の内面には直動ロッド用の気体軸受14が挿入(配設)され、挿通孔13の大径孔と小径孔との段差部に気体軸受14が当接するように位置されている。気体軸受14の内面に直動ロッド15が相対移動可能状態に挿通され、直動ロッド15の一端部(図1では右端部)には(第1)エンドプレート16Bが固定(連結)され、かつ直動ロッド15の他端部(図1では左端部)には(第2)エンドプレート16Aが固定(連結)されている。
【0007】
シリンダボディ12の挿通孔13の幅方向の両側に、平行した2本の段付の第1,第2シリンダ孔18A,18Bが形成され、第1シリンダ孔18Aは一端側に開口され、第2シリンダ孔18Bは他端側に開口されている。第1シリンダ孔18Aの大径孔の内面には第1プランジャ20A用の第1気体軸受19Aが挿入(配設)され、第1シリンダ孔18Aの大径孔と小径孔との段差部に第1気体軸受19Aが当接するように位置されている。同様に、第2シリンダ孔18Bの大径孔の内面には第2プランジャ20B用の第2気体軸受19Bが挿入(配設)され、第2シリンダ孔18Bの大径孔と小径孔との段差部に第2気体軸受19Bが当接するように位置されている。
【0008】
第1気体軸受19Aの内面に第1プランジャ20Aが相対移動可能状態に挿通され、第1プランジャ20Aの一端部の雌ねじ部にはフローティング・ジョイント21の他端側の雄ねじ部(スタッド)が螺合されている。フローティング・ジョイント21の一端側のソケットの雌ねじ部はボルト30によりエンドプレート16Bに連結されている。こうして第1プランジャ20Aの一端部がフローティング・ジョイント21、エンドプレート16Bを介して直動ロッド15に連結されている。また、第2気体軸受19Bの内面に第2プランジャ20Bが相対移動可能状態に挿通され、第2プランジャ20Bの他端部はエンドプレート16Aの嵌合孔28に嵌合されボルト29により直接固定(連結)されている。なお、フローティング・ジョイント21のスタッドはソケットに対して偏心スライド及び球面揺動が可能である。
【0009】
図1では、直動ロッド15の一端がエンドプレート16B及びフローティング・ジョイントを介して第1プランジャ20Aの一端に連結され、直動ロッド15の他端がエンドプレート16Aを介して第2プランジャ20Bの他端に連結されている。しかし、直動ロッド15の他端がエンドプレート16A及びフローティング・ジョイントを介して第2プランジャ20Bの他端に連結され、直動ロッド15の一端がエンドプレート16Bを介して第1プランジャ20Aの一端に連結されるようにしてもよい。
【0010】
本発明の実施の形態において、部材の高精度の加工を容易にするため、挿通孔13、第1シリンダ孔18A及び第2シリンダ孔18Bの断面を円形にするとともに、直動ロッド15、第1プランジャ20A及び第2プランジャ20Bの断面を円形にし、気体軸受14、19A、19Bを円筒状にすることができる。そうしたとき、直動ロッド15に第1エンドプレート16Aを介して第2プランジャ20Bが固定されているので、直動ロッド15及び第2プランジャ20Bは回転しない。フローティング・ジョイント21により、プランジャ20Aと直動ロッド15との間のμmオーダーの軸ズレを緩和することができ、プランジャ20Aも殆ど回転しない。
【0011】
第1シリンダ孔18Aの他端側に第1シリンダ室22Aが形成され、第1シリンダ室22Aに連通する第1給排ポート23Aがシリンダボディ12に形成され、第1シリンダ室22Aに導入される圧力空気により、第1プランジャ20Aが一方(図1では右方)に移動しようとする推力が発生する。同様に、第2シリンダ孔18Bの一端側に第2シリンダ室22Bが形成され、第2シリンダ室22Bに連通する第2給排ポート23Bがシリンダボディ12に形成され、第2シリンダ室22Bに導入される圧力空気により、第2プランジャ20Bが他方(図1では左方)に移動しようとする推力が発生する。
【0012】
シリンダボディ12に供給ポート24Aが形成され、供給ポート24Aを通して第1気体軸受19Aに供給されたエアが、第1気体軸受19Aの内面から噴出され、第1プランジャ20Aが第1気体軸受19Aのみによって非接触状態に支持されるように構成されている。また、シリンダボディ12に供給ポート24Bが形成され、供給ポート24Bを通して第2気体軸受19Bに供給されたエアが、第2気体軸受19Bの内面から噴出され、第2プランジャ20Bが第2気体軸受19Bのみによって非接触状態に支持されるように構成されている。同様に、シリンダボディ12に供給ポート24Cが形成され、供給ポート24Cを通して気体軸受14に供給されたエアは、気体軸受14の内面から噴出され、直動ロッド15が気体軸受14のみによって非接触状態に支持されるように構成されている。
【0013】
第1気体軸受19Aの内面でその他端(第1シリンダ室22A側端)の近傍位置に環状の第1排出溝25Aが形成され、シリンダボディ12内で第1排出溝25Aの直径方向位置に真空掃引流路26Aが形成されている。第1気体軸受19Aの噴出エアは、第1排出溝25A及び真空掃引流路26Aを通って掃引(真空ポンプにより吸込)され、第1シリンダ室22Aにはリークしない(流れない)。同様に、第2気体軸受19Bの内面で一端(第2シリンダ室22B側端)の近傍位置に環状の第2排出溝25Bが形成され、シリンダボディ12内で第2排出溝25Bの直径方向位置に真空掃引流路26Bが形成されている。第2気体軸受19Bの噴出エアは、第2排出溝25B及び真空掃引流路26Bを通って掃引され、第2シリンダ室22Bにはリークしない。なお、第1気体軸受19Aの噴出エアの一部分は第1シリンダ孔18Aと第1プランジャ20Aとの間を通って大気に流れ、同様に第2気体軸受19Bの噴出エアの一部分は第2シリンダ孔18Bと第2プランジャ20Bとの間を通って大気に流れることは当然である。
【0014】
気体軸受14の内面で略中央位置に環状の排出溝25Cが形成され、シリンダボディ12内で排出溝25Cの直径方向位置に連通孔31が形成され、排出溝25Cは連通孔31を介して大気に連通されている。直動ロッド15の内部に真空掃引流路27が形成され、真空掃引流路27の他端を直動ロッド15の他端(出力端)のワークに連通可能とした。真空掃引流路27の一端部は直径方向に曲げられ、直動ロッド15の表面の開口27Aに連通されている。シリンダボディ12内に真空掃引流路26Cが形成され、真空掃引流路26Cの内方端部は気体軸受14の内面に形成された縦溝32の一端に連通され、縦溝32は開口27Aと常に連通するように形成されている。ワークは、真空掃引流路27、開口27A、縦溝32、真空掃引流路26Cに連通され、掃引可能とされている。
【0015】
第1気体軸受19A、第2気体軸受19B、直動ロッド用の気体軸受14のそれぞれの内面からエアを噴出させ、第1給排ポート23Aを通して第1シリンダ室22Aに圧力空気を供給すると、第1プランジャ20A・直動ロッド15等は一方(図1では右方)へ移動(前進)され、第2給排ポート23Bを通して第2シリンダ室22Bに圧力空気を供給すると、第2プランジャ20B・直動ロッド15等は他方(図1では左方)へ移動(後退)される。第1プランジャ20A、第2プランジャ20Bは、第1気体軸受19A、第2気体軸受19Bの全面内に常に位置している。
【0016】
【発明の効果】
請求項1〜3のエアシリンダでは、第1シリンダ孔の他端側(第1シリンダ室)に供給された圧力空気により第1プランジャ・直動ロッドが一方に移動(前進)し、第2シリンダ孔の一端側(第2シリンダ室)に供給された圧力空気により第2プランジャ・直動ロッドが他方に移動(後退)する。第1プランジャ及び第2プランジャの受圧面積を同等にし、前進の推力と後退の推力とを同等にすることができる。そして、第1シリンダ室と第2シリンダ室に供給する圧力空気の圧力を制御することができ、前進及び後退の推力を制御して、所望の大きさの推力を得ることができる。
【0017】
請求項1のエアシリンダでは、第1プランジャ及び第2プランジャが第1シリンダ孔及び第2シリンダ孔の気体軸受のみによってそれぞれ非接触状態に支持され、直動ロッドが挿通孔の気体軸受のみによって非接触状態に支持されているので、第1プランジャ及び第2プランジャが第1シリンダ孔及び第2シリンダ孔の内面に接触することがなく、また直動ロッドが挿通孔の内面に接触することもない。従って、第1シリンダ孔、第2シリンダ孔及び挿通孔を精密加工することなく、第1プランジャ、第2プランジャ及び直動ロッドの精密加工した気体軸受によって高精度の支持をすることができる。このように、面積の大きい第1シリンダ孔、第2シリンダ孔及び挿通孔の内面を精密加工する必要がないので、エアシリンダのコストを低減させることができる。
【0018】
請求項4のエアシリンダでは、第1シリンダの気体軸受の内面でその他端の近傍位置に第1排出溝が形成され、第2シリンダの気体軸受の内面でその一端の近傍位置に第2排出溝が形成され、第1排出溝及び第2排出溝がそれぞれ真空掃引流路を介して掃引されているので、第1シリンダの気体軸受及び第2シリンダの気体軸受の内面に噴出されたエアが第1シリンダ室及び第2シリンダ室に流れない。従って、気体軸受からリークするエアによって推力制御が影響をうけることはない。
【0019】
請求項2,5のエアシリンダでは、直動ロッドの一端又は他端が第1プランジャの一端又は第2プランジャの他端に連結(フローティング・ジョイントを介在させないで連結)されているので、専用の回り止め機構を設けなくても、第1プランジャ、第2プランジャ及び直動ロッドは回転しない。また、第1プランジャ、第2プランジャ及び直動ロッドの3軸のうち、直動ロッドの他端又は一端が第2プランジャの他端又は第1プランジャの一端にフローティング・ジョイントを介して連結されているので、2軸間の加工精度を高めて軸ズレを防止させ、残りの軸との間のμmオーダーの軸ズレを緩和することができる。従って、3軸間の加工精度を高めて軸ズレを防止させる場合に比べ、コストが低減する。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の実施の形態を示し、図1(a) は部分断面平面図、図1(b) は平面図である。
【符号の説明】
11:エアシリンダ
12:シリンダボディ
13:挿通孔
14:気体軸受
15:直動ロッド
18A:第1シリンダ孔
18B:第2シリンダ孔
19A:第1気体軸受
19B:第2気体軸受
20A:第1プランジャ
20B:第2プランジャ
21:フローティング・ジョイント

Claims (5)

  1. シリンダボディに挿通孔、第1シリンダ孔及び第2シリンダ孔が互いに平行に形成され、第1シリンダ孔がシリンダボディの一端に開口され、第2シリンダ孔がシリンダボディの他端に開口され、挿通孔、第1シリンダ孔及び第2シリンダ孔のそれぞれの内面に気体軸受が配設され、直動ロッドが挿通孔の気体軸受のみによって非接触状態に支持され、第1プランジャ及び第2プランジャが第1シリンダ孔及び第2シリンダ孔の気体軸受のみによってそれぞれ非接触状態に支持され、直動ロッドの一端が第1プランジャの一端に連結されるとともに直動ロッドの他端が第2プランジャの他端に連結されたエアシリンダ。
  2. 直動ロッドの一端と第1プランジャの一端との間、又は直動ロッドの他端と第2プランジャの他端との間にフローティング・ジョイントを介在させた請求項1のエアシリンダ。
  3. 第1シリンダ孔の他端側に第1シリンダ室が形成され、第2シリンダ孔の一端側に第2シリンダ室が形成され、第1シリンダ室に連通する第1給排ポートが形成されるとともに第2シリンダ室に連通する第2給排ポートが形成された請求項1又は2のエアシリンダ。
  4. 第1シリンダの気体軸受の内面でその他端の近傍位置に第1排出溝が形成され、第2シリンダの気体軸受の内面でその一端の近傍位置に第2排出溝が形成され、第1排出溝及び第2排出溝がそれぞれ真空掃引流路を介して掃引され、第1シリンダの気体軸受及び第2シリンダの気体軸受の内面に噴出されたエアが第1シリンダ室及び第2シリンダ室に流れないようにされた請求項3のエアシリンダ。
  5. 挿通孔、第1シリンダ孔及び第2シリンダ孔の断面が円形にされるとともに、直動ロッド、第1プランジャ及び第2プランジャの断面が円形にされ、気体軸受が円筒状とされた請求項1ないし4のいずれかひとつのエアシリンダ。
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