JP3977456B2 - 輪転印刷機の版胴における版の後端部の引張り固定装置 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、版胴の縦方向に延びた溝内に設けられた伸長シャフトを有する、輪転印刷機の版胴における版の後端の引張り固定装置であって、保持部材と協働して版の引張り固定を可能にする引張り固定部材が伸長シャフトに固定されており、胴側部の外側に支持された２つの調節部材が伸長シャフトの両側部にそれぞれ取り付けられており、各調節部材はそれぞれ独立して調節可能であり、調節部材の調節によって、それに取り付けられている伸長シャフトを引っ張って側方に伸長させることができ、調節部材が調節されて伸長シャ フトが伸長すると、伸長シャフトに固定されている引張り固定部材の少なくとも一部が軸方向に移動することによって、引っ張り固定部材と保持部材によって引っ張り固定されている版を軸方向に伸長させることができ、伸長シャフトは、版胴の中間部で軸受支持部材に回転可能に支持され、軸受支持部材の両側でスラスト軸受によって軸方向に支持されている、版の後端部の引張り固定装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
この種類の公知の装置は、ドイツ特許出願公開明細書ＤＥ４２４４２７９Ａ１号に開示されている。この公報によると、クランプされた状態の版を、処理されるべき被印刷体の伸びによる印刷画像の変化に適合させるという課題は解決されている。この公知の解決方法により、版の後端部は、軸方向に見て中央に配置されている軸受支持部材から両側に向かって伸長することができる。さらに、この公知の構成によると、一方または他方の側だけ伸ばすことができるので、被印刷体の一方の側のみにインキを付ける場合には版の後端部の適切な伸長を行うことができる。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、この公知の技術から出発して、被印刷体の後部領域が伸びるだけでなく横方向に少しずれる場合にも、その被印刷体に版の後端部の伸びを適合させることができる、版の後端部のための引張り固定装置を提供することである。このことは、例えば、印刷枚葉紙の一方の側のみに印刷画像を形成した時に、枚葉紙全体が伸びた上、その後端部が横方向にずれた場合に生じる。
【０００４】
【課題を解決するための手段】
本発明によると上記の課題は、スラスト軸受は軸方向に位置調節可能に配置され、スラスト軸受は、軸受支持部材と引張り固定部材によって軸方向に保持されていることによって解決される。この解決手段により、印刷枚葉紙の後端部が横方向にずれると、すぐに印刷工は、伸長シャフトの一方の側のしかるべき調節部材によってより大きな引張力を加え、それによって、伸長シャフトの全長を軸受支持部材に対し軸方向に少しずらすことができる。そうすることによって版は軸方向に少しずれて、枚葉紙上に存在する印刷画像に適合させることができる。しかし、これとは独立して、版の後端部も必要に応じて伸ばすことができるので、版の後端部を最適に適合させることができる。
【０００５】
本発明の好適な構成においては、スラスト軸受に接して支持されているねじ付きブシュが、軸受支持部材内に設けられ、ねじ付きブシュの外周に形成されている雄ねじ部分が、軸受支持部材の孔部に設けられた雌ねじ部分内にねじ込まれており、ねじ付きブシュは、締め付けねじを軸受支持部材にねじ込んで軸受支持部材とねじ付きブシュとを相対的に移動させることによって、軸受支持部材に対して回転しながら軸受支持部材内で遊びなしに位置調節可能である。この方法を用いて、印刷工はねじ付きブシュによって版の後端部の横方向のずれを正確に調整することができ、次に版の後端部の伸長を通常の仕方で行うことができる。本発明のもう１つの構成は、軸受支持部材の両側で軸受支持部材とスラスト軸受との間に、皿ばねがそれぞれ１つずつ設けられており、各調節部材をそれぞれ独立して調節することによって、伸長シャフトと引っ張り固定部材とスラスト軸受とを介して、両皿ばねに互いに異なる荷重をかけることができることを特徴とする。したがって、印刷工は調節部材によって皿ばねの力に抗して伸長シャフトを軸方向に動かすことができるので、伸長シャフトはばねのストロークの範囲内で軸方向に移動する。ここで移動は、１０分の数ミリメートルである。印刷工が調節部材を解放すると、皿ばねは伸長シャフトを再び初期位置に戻す。
【０００６】
同じ効果は、軸受支持部材は弾性変形可能な構成であり、調節部材の調節によって初期状態から変位することができることによっても達成できる。弾性変形可能な構成は、軸受 支持部材自体の薄くなった部分によって設けることができる。この場合、調節部材を解放すると軸受支持部材の弾性により、伸長シャフトは再び初期状態に復帰する。さらに、弾性変形可能な構成は、軸受支持部材を、たとえば皿ばね上に支えることによってもたらすこともできる。
【０００７】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明する。版胴１の両端面には、それぞれ１つのラジアル軸受９’を収容する胴側部２および３が設けられている。ラジアル軸受９’内には、溝４を通って版胴１の縦方向に伸びる伸長シャフト５が設けられている。伸長シャフト５は中央で軸受支持部材６によって支えられ、該軸受支持部材６は固定ねじ７で版胴１に固定されている。軸受支持部材６内にはラジアル軸受９が設けられ、ラジアル軸受９は伸長シャフト５を半径方向に案内している。さらに、伸長シャフト５はスラスト軸受８により軸受支持部材６の両側で支えられている。
【０００８】
伸長シャフト５には、軸受支持部材６の両側に個別の引張り固定部材１５が設けられている。これらの引張り固定部材１５は固定ボルト１７により伸長シャフト５上の所定位置に保持されている。伸長シャフト５の両端部には、胴側部２および３の区域で胴側部の内側に、伸び制限リング１３が伸長シャフト５に固定されている。胴側部２および３の外側には、伸長シャフト５の両端部にそれぞれねじ部が設けられており、これらのねじ部上で、例えば調節ナットとして形成された調節部材１１が動くことができる。２つの調節部材１１にはそれぞれ１つの目盛り１２が付属している。目盛り１２によって、調節ストロークを読み取ることができる。胴側部２および３の外側面（軸方向外側面）と調節部材１１の内側面（軸方向内側面）との面摩擦（軸方向摩擦）を低下させるために、胴側部２および３と調節部材１１との間にスラスト軸受１０が設けられている。伸び制限リング１３と胴側部２および３の内側との間には、１０分の数ミリメートルの隙間１４が設けられている。
【０００９】
版胴１上でクランプされた状態にある版端部１６を被印刷体の軸方向の伸びに適合させなければならないときには、印刷工は調節部材１１をそれぞれ胴側部２および３に向かう方向に動かす。それによって、スラスト軸受１０は胴側部２および３の外側に当たり、その結果、伸長シャフト５には両側に引張荷重が加わる。軸受支持部材６に設けられたスラスト軸受９は遊びなしで接しているので、調節部材１１を回転させることによって荷重を増加させるにしたがって、引張り固定部材１５は胴側部２および３に向かって外側へ移動する。伸長シャフト５に荷重が加えられると、個々の引張り固定部材１５が移動する移動距離は内側の引張り固定部材から外側の引張り固定部材に向かって順次に加算されるので、それぞれ最も外側にある引張り固定部材１５が最大の距離を移動する。このようにして、伸長シャフト５は内側から外側へ向かって線形的に（軸方向位置の１次関数として）伸び、それと共に、（個別の引張り固定部材１５はこの伸長シャフト５上に固定されているので）これらの引張り固定部材１５の、内側から外側へ線形的に増加する移動が生じる。個別の引張り固定部材１５が移動することによって、クランプした状態の版端部１６の修正を行うことができる。したがって、印刷工は版を被印刷体の軸方向の伸びに適合させることが可能である。その際、伸び制限リング１３は、伸長シャフト５に過度な荷重が加わるのを防止する。
【００１０】
図２は、溝４を備えた版胴１の部分断面図を示し、該溝４中には更に伸長シャフト５が設けられている。引張り固定部材１５は、固定ボルト１７によって伸長シャフト５に固定されている。各々の引張り固定部材１５には引張りレバー２０が付属し、該引張りレバー２０は版端部を引張り固定部材１５にしっかりクランプする。引張り固定部材１５を時計方向に回転することによって、版１８は引張り固定部材１５によって胴外套面上に強く引張り固定される。この場合、引張りレバー２０はボルト１９によって支持されており、更に、ボルト１９はレバー延長部２２に固定されている。この場合、版端部１６の引張り固定は、ばね２４および２５によって行われ、その際、ばね力は例えば調節ねじ２３により必要な大きさに適応させることができる。
【００１１】
図３には、伸長シャフト５をラジアル軸受９を介してねじ付きブシュ２１内に支持している様子を示す。ねじ付きブシュ２１はスラスト軸受８を介して引張り固定部材１５に遊びなしに接している。引張り固定部材１５は固定ボルト１７を介して伸長シャフト５と連結されている。軸受支持部材６の雌ねじ部分内でねじ付きブシュ２１を回転することによって、伸長シャフト５は軸方向に移動することができる。ねじ付きブシュ２１は、例えば締め付けねじ２６によって軸受支持部材６内で遊びなしに位置調整することができるので、伸長シャフト５の横方向の移動を非常に正確に行うことができる。
【００１２】
図４に示されている本発明の構成では、伸長シャフト５は軸方向に引張り固定部材１５によって支えられ、スラスト軸受８は軸受支持部材６の両側で皿ばね２７を介して支えられている。そうすることによって、印刷工は版胴１の一方の側で調節部材１１を強く引くことによって皿ばねにより大きな荷重を加えることができ、その結果として伸長シャフトは当該側にわずかな量だけ移動する。こうすることにより、または軸受支持部材６を弾性変形可能に構成することにより、調節部材１１を介して伸長シャフト５はその初期状態から変位することができるので、被印刷体の修正は簡単な仕方で可能である。
【図面の簡単な説明】
【図１】伸長シャフトを有する版胴の溝を通る縦断面図である。
【図２】溝と版用の引張り固定部材を通る横断面図である。
【図３】ねじ付きブシュと伸長シャフトを通る部分縦断面図である。
【図４】皿ばねと伸長シャフトとを通る部分縦断面図である。
【符号の説明】
１ 版胴
２、３ 胴側部
４ 溝
５ 伸長シャフト
６ 軸受支持部材
７ 固定ねじ
８、１０ スラスト軸受
９、９’ ラジアル軸受
１１ 調節部材
１２ 目盛り
１３ 伸び制限リング
１４ 隙間
１５ 引張り固定部材
１６ 版端部
１７ 固定ボルト
１８ 版
１９ ボルト
２０ 引張りレバー
２１ ねじ付きブシュ
２２ レバー延長部
２３ 調節ねじ
２４ ばね
２５ 固定ばね
２６ 締め付けねじ
２７ 皿ばね

Claims (4)

1. 版胴の縦方向に延びた溝内に設けられた伸長シャフト（５）を有する、輪転印刷機の版胴における版の後端の引張り固定装置であって、
   保持部材（２０）と協働して前記版の引張り固定を可能にする引張り固定部材（１５）が前記伸長シャフト（５）に固定されており、
   胴側部（２，３）の外側に支持された２つの調節部材（１１）が前記伸長シャフト（５）の両側部にそれぞれ取り付けられており、
   前記各調節部材（１１）はそれぞれ独立して調節可能であり、前記調節部材（１１）の調節によって、それに取り付けられている前記伸長シャフト（５）を引っ張って側方に伸長させることができ、
   前記調節部材（１１）が調節されて前記伸長シャフト（５）が伸長すると、前記伸長シャフト（５）に固定されている前記引張り固定部材（１５）の少なくとも一部が軸方向に移動することによって、前記引っ張り固定部材（１５）と前記保持部材（２０）によって引っ張り固定されている前記版を軸方向に伸長させることができ、
   前記伸長シャフト（５）は、前記版胴の中間部で軸受支持部材（６）に回転可能に支持され、前記軸受支持部材（６）の両側でスラスト軸受（８）によって軸方向に支持されており、
   前記伸長シャフト（５）は、前記軸受支持部材（６）とその内部に配置されているラジアル軸受（９）に半径方向に支持され、
   前記スラスト軸受（８）は軸方向に位置調節可能に配置され、
   前記スラスト軸受（８）は、前記軸受支持部材（６）と前記引張り固定部材（１５）によって軸方向に保持されている
   ことを特徴とする、版の後端部の引張り固定装置。
2. 前記スラスト軸受（８）に接して支持されているねじ付きブシュ（２１）が、前記軸受支持部材（６）内に設けられ、
   前記ねじ付きブシュ（２１）の外周に形成されている雄ねじ部分が、前記軸受支持部材（６）の孔部に設けられた雌ねじ部分内にねじ込まれており、
   前記ねじ付きブシュ（２１）は、締め付けねじ（２６）を前記軸受支持部材（６）にねじ込んで前記軸受支持部材（６）と前記ねじ付きブシュ（２１）とを相対的に移動させることによって、前記軸受支持部材（６）に対して回転しながら前記軸受支持部材（６）内で遊びなしに位置調節可能である、請求項１に記載の装置。
3. 前記軸受支持部材（６）の両側で前記軸受支持部材（６）と前記スラスト軸受（８）の間に、皿ばね（２７）がそれぞれ１つずつ設けられており、
   前記各調節部材（１１）をそれぞれ独立して調節することによって、前記伸長シャフト（５）と前記引っ張り固定部材（１５）と前記スラスト軸受（８）とを介して、前記両皿ばね（２７）に互いに異なる荷重をかけることができる、請求項１に記載の装置。
4. 前記軸受支持部材（６）は弾性変形可能な構成であり、前記調節部材（１１）の調節によって初期状態から変位することができる、請求項１に記載の装置。

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