JP3977448B2 - 腎糸球体疾患治療剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は腎糸球体疾患の治療及び予防に有用な薬剤に関する。より詳細には、HGF(Hepatocyte Growth Factor)を有効成分として含有する腎糸球体疾患治療剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
腎臓は多数のネフロンとよばれる機能単位と原尿を集める集合管から形成された臓器である。ネフロンの盲端部は丸く膨らんだ嚢状の構造、ボーマン嚢とこれに毛細血管が入り込んだ糸球体が存在し、腎小体を形成している。扁平な上皮細胞と基底膜からなるボーマン嚢に包まれた糸球体には、輸入細動脈および輸出細動脈とよばれる小血管が出入りし、糸球体で濾過された原尿が近位尿細管へと流れる。糸球体は、大別すると、糸球体表面を覆う糸球体上皮細胞、糸球体毛細血管の基底膜、内皮細胞、メサンギウム細胞とメサンギウム基質から構成される。腎疾患は尿細管に病変を起こしたものと糸球体に病変を起こしたものに大別される。糸球体に病変を起こした糸球体腎炎は、臨床的に急性糸球体腎炎、急速進行性糸球体腎炎、慢性糸球体腎炎に分類できる。慢性疾患である糸球体疾患・糸球体腎炎としては、IgA腎症、全身性エリテマトーデスに伴うループス腎炎、グッドパスチャー症候群、ハイマン腎炎、悪性腫瘍、糖尿病性腎症などが知られている。これらの疾患の発生機序に関しては不明の点が多いが、免疫機序が関与していることが解明されつつあり、流血中の抗原と抗体の免疫複合体、腎組織内での抗原・抗体反応などにより、腎炎が惹起されると考えられている。 近年、剖検、腎生検による検査により、臨床病理学的には慢性糸球体腎炎の進行に伴い、メサンギウム細胞の増殖並びにメサンギウム基質の増加により糸球体硬化の進展が起こることが知られている。糸球体硬化の病変において、メサンギウム細胞等から産生されるTGF-β、PDGFなどが悪性因子、メディエーターとして関与することが推定されている(例えば、腎と透析37、1994年増刊号、「専門医のための糸球体障害のすべて」P167−172をなど参照)。PDGFはメサンギウム細胞の増殖を促進し、TGF-βがメサンギウム細胞からの細胞外マトリックスの合成、分泌を促進し、細胞外マトリックス分解酵素の活性を抑制することが想定されている。これらの悪性因子に対する抗体や、悪性因子と結合する高分子を用いて、糸球体腎炎の動物モデルに対する作用の検討が行われているが、治療薬としての開発には至っていない。 一方、糖尿病性腎症の発症機序に関しても不明の点が多いが、高血糖の直接の効果とは別に、糖化最終産物のメサンギウム細胞に対するメサンギウム基質の産生増加作用などが報告されている。実際、糖尿病患者に対する腎生検や糖尿病モデル動物の解析から、糖尿病性腎症の病変の特徴として糸球体基底膜の肥厚やメサンギウム領域の拡大などが知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
糸球体腎症を治療する為に、生活規制や食事制限に加えて、副腎皮質ステロイド、血圧降下剤、免疫抑制剤、抗凝固剤などの種々の治療法が試みられているが、糸球体硬化の進行そのものを抑制したり、回復させるような根本的な治療には至っていない。そして、腎糸球体疾患の進行を防ぐことができないまま、透析に至る場合が多い。糖尿病患者に関しても、一度糖尿病性腎症が発症してしまえば、その治療の現状は慢性糸球体腎炎と同様である。特に近年、食生活の向上や社会的ストレスの増加などにより糖尿病患者の増加が著しく、糖尿病を治療できずに糖尿病性合併症を併発し、糖尿病性腎症により透析に至る患者は年間約1万人と推定されている。従って、腎糸球体疾患に対する新たな予防・治療薬の開発が切望されている。 一方、近年、糸球体腎症における糸球体内皮細胞の重要性が注目されており、糸球体内皮細胞の障害はメサンギウム細胞との相互作用等を通して糸球体障害の進展と関わっていることが指摘されている(例えば、腎と透析37、1994年増刊号、「専門医のための糸球体障害のすべて」P67−74を参照)。また、ネフローゼ症候群は、高度な蛋白尿及び低蛋白血症、浮腫、高脂血症等を伴う症候群であるが、その原因は糸球体基底膜による濾過機能の異常に求められている。 本発明者等は、前述の発症機序に基づき、糸球体内皮細胞を迅速に修復でき、メサンギウム細胞の増殖を抑制し、メサンギウム細胞と糸球体内皮細胞との相互作用を正常化して、メサンギウム細胞の増殖を主体とする病変を予防・治療することが可能であることを想定したが、現在までそのような作用を持つ因子はほとんど報告されていない。 本発明者等は、かかる観点から、メサンギウム細胞の増殖を促進することなく、内皮細胞のみを増殖させる因子について鋭意研究した結果、HGFがかかる作用を有することを見出し、HGFが内皮細胞の修復・増殖を促進させ、サンギウム細胞と糸球体内皮細胞との相互作用を正常化させることによって、メサンギウム細胞の増殖、メサンギウム基質の増加による糸球体硬化を病変とする腎糸球体疾患の予防・治療に有用であることが判明した。
【0004】
上記のHGFは肝実質細胞を in vitro で増殖させる因子として見出されたタンパク質である(Biochem Biophys Res Commun, 122, 1450, 1984 、Proc. Natl. Acad. Sci, USA, 83, 6489, 1986、FEBS Letter, 22, 311, 1987 、Nature, 342, 440, 1989、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87, 3200, 1990) 。 HGFは、腎尿細管上皮細胞の増殖を促進し、腎尿細管の損傷を軽減できることが知られている(例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 91, 4357, 1994、特開平4−49246号公報など参照)。また、ラットの培養糸球体上皮細胞株に対し、HGFが増殖促進効果を示すことが報告されている(第37回日本腎臓学会学術大会、P−91、平成6年12月16日)。 上述のようにHGFに関しては多くの知見が集積されつつあり、HGFが腎臓を構成する上皮細胞にも作用することが知られているが、糸球体腎炎などの腎硬化の進展にとって重要なメサンギウム細胞の増殖、メサンギウム基質の増加についての知見や、糸球体疾患の治療に必要と考えられる内皮細胞に対する効果、メサンギウム細胞と他の細胞との相互調節機構に関する知見は全く得られていない。 本発明者等は、HGFが腎糸球体を構成するメサンギウム細胞の増殖に作用を示さず、内皮細胞の増殖を促進することを明らかにした。さらに、メサンギウム細胞がHGFを産生・分泌して、内皮細胞の増殖を促進すること、糸球体硬化の病変に関与する悪性因子と考えられるアンジオテンシンII、TGF-βがメサンギウム細胞からのHGFの産生・分泌を抑制することを見出した。また、本発明者等は、内皮細胞がメサンギウム細胞の増殖を抑制すること、内皮細胞からHGFが産生・分泌されており、オートクライン的に増殖を促進していることを明らかにした。そして、内皮細胞からのHGFの産生・分泌も、TGF-βにより抑制されることを示した。これらの知見から、HGFが糸球体を構成する内皮細胞、メサンギウム細胞間の相互調節において生理的に重要な役割を示していること、糸球体硬化の病態においてHGFの産生が低下していること、メサンギウム細胞の増殖を促進せずに内皮細胞の増殖を促進するHGFにより有効な治療ができることが明確となった。これらの知見は従来知られていない新規の知見である。本発明はかかる知見に基づいてなされたもので、本発明は新規な腎糸球体疾患治療剤を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するためになされた本発明は、
(1)HGFを有効成分として含有することを特徴とする腎糸球体疾患治療剤、(2)腎糸球体疾患が、メサンギウム細胞の増殖、メサンギウム基質の増加を主体とする腎糸球体疾患である(1)記載の腎糸球体疾患治療剤、
(3)腎糸球体疾患が、内皮細胞とメサンギウム細胞との相互作用の障害によって惹起される糸球体の濾過機能の異常を呈する腎糸球体疾患である(1)記載の腎糸球体疾患治療剤、および
(4)腎糸球体疾患が、糸球体腎症、糖尿病性腎症である(1)記載の腎糸球体疾患治療剤に関する。
【0006】
本発明で使用されるHGFとしては、医薬として使用できる程度に精製された物であれば、種々の方法で調製されたものを用いることができる。HGFを産生する初代培養細胞や株化細胞を培養し、培養物(培養上清、培養細胞等)から分離精製してHGFを得ることもできる。あるいは遺伝子工学的手法によりHGFをコードする遺伝子を適切なベクターに組み込み、これを適当な宿主に挿入して形質転換し、この形質転換体の培養上清から目的とする組み換えHGFを得ることができる(例えば、Nature, 342, 440, 1989、特開平5-111383号公報、Biochem. Biophys. Res. Commun., 163, 967, 1989など参照)。上記の宿主細胞は特に限定されず、従来から遺伝子工学的手法で用いられている各種の宿主細胞、例えば大腸菌、古草菌、酵母、糸状菌、植物又は動物細胞などを用いることができる。かくして得られたHGFは、HGFと実質的に同効である限り、そのアミノ酸配列の一部が欠失又は他のアミノ酸により置換されていたり、他のアミノ酸配列が一部挿入されていたり、N末端及び/又はC末端に1又は2以上のアミノ酸が結合していたり、あるいは糖鎖が同様に欠失又は置換されていてもよい。
【0007】
本発明の治療剤は上記のHGFを有効成分とし、HGFは後記試験例に示されるように、糸球体内皮細胞を増殖させ、メサンギウム細胞を増殖させる作用を示さない。糸球体内皮細胞は、増殖抑制作用を示す因子や血管拡張作用を示す因子を種々産生・分泌していることが知られており、内皮細胞の機能不全や内皮細胞の減少がメサンギウム細胞の増殖を伴う糸球体疾患の引き金となることが考えられている。従って、本発明の治療剤は、腎糸球体疾患、特にメサンギウム細胞の増殖、メサンギウム基質の増加を主体とする病変の治療・予防に有効であり、これらには例えば糸球体腎症、糖尿病性腎症が包含される。
慢性糸球体疾患・糸球体腎炎としては、IgA腎症、全身性エリテマトーデスに伴うループス腎炎、グッドパスチャー症候群、ハイマン腎炎、悪性腫瘍などが含まれる。本発明の治療剤は、急性糸球体腎炎、急速進行性糸球体腎炎、ネフローゼを伴う腎糸球体疾患に対しても有効である。
【0008】
本発明の治療剤は、ヒトの他、哺乳動物(例えば、ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、イヌ、ネコ等)における腎糸球体疾患の治療・予防に適用される。
【0009】
【発明の効果】
本発明において、有効成分であるHGFは、メサンギウム細胞の増殖を促進せず、さらに内皮細胞の増殖を促進し、修復された内皮細胞を介してメサンギウム細胞の異常な増殖を抑える作用をも有している。従って、本発明剤は、前述した腎糸球体疾患、特にメサンギウム細胞の増殖とメサンギウム基質の増加を主体とする障害に起因する各種疾患、内皮細胞とメサンギウム細胞との相互作用の障害によって惹起される糸球体の濾過機能の異常を呈する腎糸球体疾患などの治療・予防に有用である。
【0010】
【実施例】
以下、実験例及び実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。なお、以下の実験で使用した材料及び方法は以下のとおりである。
【0011】
実験材料及び方法
細胞培養
ラットのメサンギウム細胞(以下、メサンギウム細胞をMCという)の単離・培養は、基本的には既報(J. Clin. Invest. 78, 1443, 1986)に従って行った。ウシの糸球体内皮細胞およびラット内皮細胞(以下、内皮細胞をECという)の単離・培養は、ボーラーマンらの方法(Am. J. Physiol., 256, C182, 1989)に従って行った。メサンギウム細胞の培養は、10%ウシ血清、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100mg/ml)を含むDMEM培地を使用した。糸球体内皮細胞の培養は、10%ウシ血清、ペニシリン(100U/ml)、ストレプトマイシン(100mg/ml)を含むDMEM培地を使用した。因子を添加する試験では、無血清培地または0.5%ウシ血清を加えた培地を用いた。細胞は、摂氏37度Cにて水蒸気に満たされた95%空気−5%二酸化炭素の条件下に培養し、2日に1度培地の交換を行った。
【0012】
生存細胞数の測定法
生存細胞数の測定は、WST−細胞数測定キット(ワコー社製)を用いて行った。
【0013】
DNA合成の測定法
糸球体内皮細胞は、96穴組織培養用プレート上にまいた。細胞が隙間なく付着した状態において、MCは0.5%ウシ血清を含むDMEM培地にて48時間培養しても増殖しなかった。細胞の相対的なDNA合成速度は、24時間のトリチウムラベル化チミジン(〔 3H〕TdR)の細胞中トリクロロ酢酸(TCA)沈殿物質中への取り込みを測定することで評価した。
【0014】
共細胞培養
メサンギウム細胞の増殖に対する内皮細胞の効果を検討する試験では、内皮細胞を細胞培養用インサート(コースター社、孔径0.45μm)にまき、10%ウシ血清を加えたDMEM培地にて増殖させた。メサンギウム細胞は、6穴プレートにまき、10%ウシ血清を加えたDMEM培地にて増殖させた。細胞が60%から80%コンフルエントに増殖した状態で、内皮細胞を含有したインサートを、同様に60%から80%コンフルエントに増殖したメサンギウム細胞を入れたウェル中に入れた。内皮細胞とメサンギウム細胞は、0.5%のウシ血清を加えたDMEM培地中にて24時間培養し、6穴プレートのメサンギウム細胞の生存数をWST法にて測定した。内皮細胞の増殖に対するメサンギウム細胞の効果を検討する試験では、メサンギウム細胞を細胞培養用インサートにまき、内皮細胞を6穴プレートにまいて、同様に実験した。
【0015】
材料
HGFは組換えヒトHGFを用いた。アンジオテンシンIIはシグマ社より、TGF-βはジェンザイム社より入手した。
【0016】
HGFの測定法
培養上清中のHGF濃度は、抗HGFモノクローナル抗体を使用したELISAのキット(特殊免疫研究所)により測定した。
【0017】
逆転写(RT)−PCR
ラット・メサンギウム細胞、糸球体内皮細胞よりRNAをRNAゾル(Tel-Test Inc, Texas)を用いて抽出した。HGF及びc−met(HGFレセプター)メッセンジャー(m)RNAのレベルは、RT−PCR法(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 8474, 1993)にて測定した。なお、プライマーとしては下記の配列のものを使用した。
HGF:
5’側プライマー:5’ーATGCTCATGGACCCTGGTー3’
3’側プライマー:5’ーGCCTGGCAAGCTTCATTAー3’
c−met:
5’側プライマー:5’ーCAGTGATGATCTCAATGGGCAATー3’
3’側プライマー:5’ーAATGCCCTCTTCCTATGACTTCー3’
増幅したDNAは2%アガロース電気泳動にかけ、エチジウムプロマイドにて染色した。
【0018】
統計解析
すべての値は、平均値±標準誤差にて現した。すべての実験は最低3回繰り返した。測定値の統計的解析、有意差検定には、ダンカン法を用いた。
【0019】
試験例1
糸球体内皮細胞の増殖に対するメサンギウム細胞の効果
ウシ糸球体内皮細胞の増殖に対するメサンギウム細胞の効果を、MCを糸球体内皮細胞に添加する共培養法におけるWSTを用いた糸球体内皮細胞の生存細胞数の測定で試験した。その結果を図1に示す。図中、(−)はMC細胞なしを、(+)はMC細胞有りを示す。1群8ウェルで実験を行った。図1に示されるように、糸球体内皮細胞の細胞数が有意に増加しており、MCは糸球体内皮細胞の増殖を促進していることが認められた。MCは増殖因子を分泌してMCの機能を維持していることが示唆された。
【0020】
試験例2
ECの増殖に対するMCの効果と抗HGF抗体の作用
試験例1に記載のようにMCにECの増殖を促進する効果が認められたことから、この効果におけるHGFの関与を検討するため、抗HGF抗体(2ng/ml)の存在下にMCをECに添加する共培養において、WSTを用いてECの生存細胞数の測定を行った。その結果を図2に示す。左図中、(−)はMC細胞なしを、(+)はMC細胞有りを示す。1群8ウェルで実験を行った。図2に示されるように、ECの細胞数が有意に増加が再現された。さらに、このEC細胞増加の割合は、抗HGF抗体の添加により80±5%まで有意に減少した。
【0021】
試験例3
MCからのHGFの分泌及びそれに対するアンジオテンシン II TGF- βの影響
試験例2に記載のように、抗HGF抗体はMCによるEC細胞の増殖促進効果を抑制したことから、MCの培養上清中のHGF量をELISA法により測定した。さらに、アンジオテンシンII(10−6M)、TGF-β(10ng/ml)存在下におけるMCの培養上清中のHGF量を測定し、無添加の時と比較した。その結果を図3に示す。図中、DSFは対照群を示す。1群8ウェルで実験を行った。図3に示されるように、MCの培養上清中にはHGFが検出された。MCにより確かにHGFが分泌されていることが分かった。以上の結果及び試験例2の結果からして、MCはHGFを分泌してECの増殖を促進し、ECの機能を維持していることが示された。さらに、アンジオテンシンII、TGF-βの添加したMCの培養上清中のHGF量は、無添加の時のよりも有意に減少した。アンジオテンシンII、TGF-βにより、MCからのHGFの分泌が抑制されることが明らかになった。
【0022】
試験例4
MCの増殖に対するECの効果
MCの増殖に対するECの効果をECをMCに添加する共培養法におけるWST法を用いたMCの生存細胞数の測定で試験した。その結果を図4に示す。図中、(−)はEC細胞なしを、(+)はMC細胞有りを示す。1群8ウェルで実験を行った。 図4に示されるように、MCの細胞数が有意に減少しており、ECはMCの増殖を抑制していることが認められた。
【0023】
試験例5
ECの増殖における抗HGF抗体の作用
ECの増殖速度に対する抗HGF抗体(2ng/ml)の影響をIgG(10ng/ml)をコントロールとして、WST法により検討した。その結果を図5に示す。図中、DSFは対照群を示す。1群8ウェルで実験を行った。図5に示されるように、EC細胞の増殖速度はIgGにより影響を受けないが、抗HGF抗体により有意に減少した。
【0024】
試験例6
ECからのHGFの分泌及びそれに対する TGF- βの影響
ECの培養上清中のHGF量をELISA法により測定したところ、1.16±0.01ng/mlであった。ECにより確かにHGFが分泌されていることが明らかになった。また、RT−PCR法により、培養したECからHGFの受容体であるc−metのmRNAが検出された。以上の結果及び試験例5の結果からして、ECは自らHGFを分泌してオートクライン的にECの増殖を促進し、ECの機能を維持していることが示された。 さらに、TGF-β(10ng/ml)存在下におけるECの培養上清中のHGF量を測定し、無添加の時と比較した。その結果、TGF-β存在下のECの培養上清中には0.77±0.03ng/mlのHGFが検出され、無添加のときと比べて有意に(P<0.05)減少した。TGF-βにより、MCからのHGFの分泌が抑制されることが明らかになった。
【0025】
試験例7
RT−PCR法によるHGF
mRNAレベルの測定 ラットMC、ECよりmRNAを抽出し、HGF特異的プライマーを用いてRT−PCRを行った。MC、ECでHGFのmRNAの発現が確認された。
【0026】
試験例8
糸球体内皮細胞の細胞増殖に対するHGFの効果
ウシ糸球体内皮細胞の増殖に対するHGFの効果を、〔 3H〕TdR取り込み量で試験した。その結果を図7に示す。1群8ウェルで実験を行った。図7に示されるように、HGFの添加により、糸球体内皮細胞の細胞数が有意に増加していることが認められた。
【0027】
試験例9
MCの細胞増殖に対するHGFの効果
MCの増殖に対するHGFの効果を、WSTを用いたMCの生存細胞数の測定で試験した。その結果を図8に示す。1群8ウェルで実験を行った。図8に示されるように、HGFの添加(100ng/ml)によっては、MCの細胞数は影響を受けないことが認められた。
【0028】
実施例1
生理食塩水100ml中にHGF1mg、マンニトール1g及びポリソルベート80 10mgを含む溶液を無菌的に調製し、1mlずつバイアルに分注した後、凍結乾燥して密封することにより凍結乾燥製剤を得た。
【0029】
実施例2
0.02Mリン酸緩衝液(0.15M NaCl及び0.01%ポリソルベート80含有、pH7.4)100ml中にHGF1mgとヒト血清アルブミン100mgを含む水溶液を無菌的に調製し、1mlずつバイアルに分注した後、凍結乾燥して密封することにより凍結乾燥製剤を得た。
【0030】
実施例3
注射用蒸留水100ml中にHGF1mg、ソルベート2g、グリシン2g及びポリソルベート80 10mgを含む溶液を無菌的に調製し、1mlずつバイアルに分注した後、凍結乾燥して密封することにより凍結乾燥製剤を得た。
【図面の簡単な説明】
【図1】糸球体内皮細胞の細胞増殖に対するMCの効果を示す図である。
【図2】MCのEC細胞増殖促進作用に対する抗HGF抗体の効果を示す図である。
【図3】MCからのHGFの分泌量およびそれに対するアンジオテンシンII、TGF-βの効果を示す図である。
【図4】MCの細胞増殖に対するECの効果を示す図である。
【図5】ECの細胞増殖に対する抗HGF抗体の効果を示す図である。
【図6】ECからのHGFの分泌量およびそれに対するTGF-βの効果を示す図である。
【図7】糸球体内皮細胞の細胞増殖に対するHGFの効果を示す図である。
【図8】MCの細胞増殖に対するHGFの効果を示す図である。

Claims (2)

  1. HGFを有効成分として含有することを特徴とするメサンギウム細胞の増殖を促進することなく、糸球体内皮細胞を増殖させる腎糸球体疾患治療剤。
  2. 腎糸球体疾患が、メサンギウム細胞の増殖を主体とする腎糸球体疾患である請求項1記載の腎糸球体疾患治療剤。
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