JP3977280B2 - 帯電装置及びこれを備えた画像形成装置 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、プリンター、ビデオプリンター、ファクシミリ、複写機、ディスプレー等の画像形成装置に関し、特にこの装置に使用する帯電装置に関する。更に詳しくは、外部から電圧を印加した帯電用部材を被帯電体に接触させて被帯電体面の帯電処理もしくは除電処理を行なう帯電装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
以降、被帯電体として感光体を用い電子写真方式により画像形成を行う画像形成装置に使用される帯電装置を例にして説明する。
外部から電圧を印加した帯電用部材を被帯電体に接触させて被帯電体面の帯電処理を行なう帯電装置は、帯電用部材を被帯電体である感光体表面に接触させることで、帯電用部材と感光体との接触箇所近傍に空隙(つまり、放電ギャップ)を作り、この空隙で生じる放電現象により、感光体を帯電させるものである。この帯電装置は、コロナ帯電装置に比べ、電源の低圧化が図れる、オゾン発生量が極めて少ない等の利点があるため、注目され、実用化されている。
【0003】
ここで、帯電用部材としては、特開昭55−29837号公報に開示されるような導電性繊維ブラシ、特開昭56−132356号公報に開示されるような導電性弾性ローラ、特公平2−14701号公報に開示されるような導電性ブレードがあった。
【0004】
さらに、近年、可撓性を有するフィルムを帯電用部材として用いた帯電装置が提案されていた。
特開平4−86681号公報には、可撓性を有するフィルム(明細書中にはシートと記載されている)の両端を支持し、弛み部の中央を感光体に接触させる構成の帯電装置が開示されていた。また、USP5192974号には、可撓性を有するフィルムの一端を支持し、自由端部を感光体に接触させる構成の帯電装置が開示されていた。また、USP5243387号には、回転可能なローラの回りに、ローラ径より内径の大きいチューブをかぶせ、チューブの感光体から遠い側をローラに押し当て、弛み部を感光体に接触させる構成の帯電装置が開示されていた。
【0005】
また、均一帯電性を確保するために、帯電用部材の表面粗さを規定した特許が出願されていた。例えば、特開昭56−132356号公報に、導電性弾性ローラの表面粗さと帯電ムラとの関係が開示されていた。USP5008706号においては、帯電用部材と感光体との表面粗さの関係を規定していた。特開平2−198468号公報においては、帯電用部材の最大粗さの範囲を規定していた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、特開平4−86681号公報に開示される帯電装置は、帯電用部材と感光体との接触状態がフィルムの弛み方によって決定されるため、不確実である。接触状態が不確実であるため、接触箇所近傍に形成される放電ギャップも不確実でありかつ安定しない。従って帯電の均一性が得られないといった課題があった。さらに、フィルムの接触状態が不確実であるため、フィルムが感光体を叩いて、帯電音が発生するといった課題があった。
【0007】
また、USP5243387号に開示される帯電装置も、帯電用部材と感光体との接触状態がチューブの弛み方によって決定されるため、不確実である。従って帯電の均一性が得られないといった課題があった。さらに、構成が複雑であるといった課題もあった。
【0008】
さらに、USP5192974号に開示される帯電装置は、フィルムの自由端の稜線がわずかに変形したり、また、稜線の精度がでていないと、フィルムと感光体との接触が不均一になる。その結果、接触箇所近傍に形成される放電ギャップも不均一になりかつ安定性に乏しい。従って帯電の均一性が得られないといった課題があった。
【0009】
なお、特開平4−86681号公報には、帯電用部材と被帯電体の背面側の導電体層間には電界が発生して電気的な力が生じることは述べられている。ところが、この公報では、交流電圧重畳時の振動あるいは騒音の発生原因としてその電気的な力を捉えているのみで、積極的に圧接力として使用する発想はなかった。
【0010】
そこで、本発明は、これら課題を解決するものであって、その目的は、帯電用部材と感光体との接触箇所近傍に形成される放電ギャップを確実にかつ均一に維持することが可能な帯電装置を提供することにある。
また、他の目的は、感光体あるいは帯電用部材を摩擦劣化させ難く、安定的にかつ信頼性の高い帯電処理を行うことが可能な帯電装置を提供することにある。
【0011】
さらに、他の目的は、クリーニングブレードをすり抜けたトナーやトナー外添剤や紙粉等の異物が、帯電用部材と感光体との接触箇所近傍に滞留し難い帯電装置を提供することにある。
さらに、他の目的は、安定性・信頼性に優れた帯電装置を備え、高品質の画像を得ることが出来る画像形成装置を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
前述の課題を解決するために、請求項1の発明の帯電装置は、外部より電圧が印加された帯電用部材を、回転する被帯電体に機械的当接力と静電吸着力とで接触させて帯電処理を行う帯電装置において、前記帯電用部材が可撓性を有するフィルムで構成されているとともに、前記フィルムの両端が支持部材で固定支持され、かつ前記フィルムの支持されていない側を前記被帯電体の回転方向の下流側に向く形で接触させ、前記帯電用部材の前記被帯電体への当接力が、電圧が供給された状態で、主として、前記静電吸着力によって与えられ、その静電吸着力による当接力が前記機械的当接力よりも大きく設定されており、前記帯電用部材が、電圧が供給された状態で前記フィルムと前記被帯電体との接触領域より前記被帯電体の回転方向の下流側の前記フィルムの曲率半径が、前記接触領域より前記被帯電体の回転方向の上流側の曲率半径よりも小さいフィルム形状を取ることを特徴とする。
【0013】
また、請求項2の発明の帯電装置は、前記フィルムの両端の固定端間の距離をL1、前記フィルムの曲線上で前記フィルムの最大距離を与える長さをL4とした場合、L1<L4であることを特徴とする。
【0014】
更に、請求項3の発明の帯電装置は、被帯電体の移動開始後に帯電用部材に電圧を供給する、もしくは、帯電用部材への電圧供給停止後に被帯電体の移動を停止することを特徴とする。
【0015】
更に、請求項4の発明の画像形成装置は、請求項1ないし3のいずれか一つに記載の帯電装置を備えたことを特徴とする。
【0016】
【作用】
本発明の帯電装置及びこれを備えた画像形成装置による作用は以下の通りである。
まず、請求項1ないし3記載の発明の帯電装置においては、帯電部材の被帯電体への機械的な当接力が小さいので被帯電体や帯電用部材を摩擦劣化させることがない。さらに、トナーやトナー外添剤や紙粉等の異物を、接触領域の下流側に流すことができる。そして、接触領域の上流側に異物を過剰に滞留させることがない。
【0017】
また、被帯電体との接触部の下流側の曲率を上流側よりも小さくすることにより、被帯電体の回転や電圧印加によっても帯電用部材の形状が変形しにくいので、この結果、帯電用部材と被帯電体との接触箇所近傍に形成される放電ギャップを確実にかつ均一に維持することが可能となる。従って、被帯電体あるいは帯電用部材を摩擦劣化させ難く、安定的にかつ信頼性の高い帯電処理を行うことが可能な帯電装置を提供することが可能になった。
【0018】
特に、請求項3記載の発明においては、帯電装置を動作させないときの当接力が弱いので、この期間を利用することにより、トナーやトナー外添剤や紙粉等の異物を、接触領域の下流側により効率的に流すことができる。
【0019】
また、請求項4記載の発明の画像形成装置においては、安定性・信頼性に優れた帯電装置を備えることにより、過帯電や帯電不足や帯電むらなどがないため、高品質の画像を得ることができる。
【0020】
【実施例】
以下図面に基づいて、本発明について詳細に説明する。
【0021】
(実施例1)
図1は、本発明に係わる帯電装置の実施形態を示す概略断面図である。
図1(a)は帯電用部材の概略断面図である。帯電用部材101は、可撓性を有するフィルム102の両端を支持部材103〜105で支持、固定し、フィルム102の支持されていない側を鉛直下向きに向けた状態で示されている。フィルム102は、固定端S1、S2から下向きに撓み部を形成する。この撓み部は、図に示すように、固定端間の距離(固定端S1とS2の直線距離)を短くすると、曲げに対する反発力によって涙滴に似た形状を描く。
【0022】
図1(a)に示す帯電用部材101を、被帯電体110に、フィルム102の支持されていない側を被帯電体110の回転方向(図中矢印)の下流側に向く形で接触させた状態が同図(b)である。図に示すように、フィルム102は涙滴に似た形状を示す。そして、フィルム102は接触領域Nで被帯電体110に接触し、その領域Nの被帯電体110の回転方向に対し上流側の領域P1のフィルム102の曲率半径よりも、下流側の領域P2のフィルム102の曲率半径の方が小さくなる。このようにフィルム102を被帯電体110に接触させる構成が本発明の典型的な形態例である。
【0023】
次に、このような帯電用部材を被帯電体である感光体の接触させ帯電処理を行った例について説明する。
図1(b)において、被帯電体110は、導電性基体111上に下引き層112、感光層113がこの順に形成された構成である。図示しない駆動手段によって矢印方向に回転可能に構成されている。一方、帯電装置100は、帯電用部材101の支持部材104が電源106と接続される。そして、被帯電体110を矢印方向に移動させ、と同時に、電源106から電圧を帯電用部材101に供給すると、被帯電体110は帯電処理される。
【0024】
ここで、被帯電体110を線速度30(mm/s)で回転駆動しつつ、電源106により帯電用部材101に直流電圧Vaを供給して、帯電処理直後の被帯電体110の表面電位Vsを測定した。但し、表面電位測定と帯電処理の間には図示しない除電手段によって表面電位Vsの初期化を行っている。なお、使用した被帯電体110の感光層113は、負帯電用機能分離型有機感光層であり、比誘電率3.3、厚み20(μm)である。
【0025】
フィルム102の形状は、帯電処理を行っても、図1(b)に示す形状を維持していた。つまり、被帯電体110の回転、電圧印加を行っても、フィルム102の形状は変化しなかった。
【0026】
供給した電圧Vaと得られた表面電位Vsとの関係を図2 に示す。同図において、横軸は帯電用部材101に印加した電圧Vaを、縦軸は表面電位Vsを示す。図中、○印は、測定点を示し、実線は、測定点を結んだ線である。結果から、0(V)>Va>−565(V)の範囲では、被帯電体110は帯電処理されない。つまり、帯電開始電圧Vthは、−565(V)である。Vaの絶対値が565(V)以上の領域では、グラフは傾き1の直線となる。つまり、被帯電体110の表面電位Vs(V)は、
Vs=0
0>Va>−565
Vs=Va+565
−565≧Va
となる。これは図3を用いて以下のように説明できる。
【0027】
図3は、Paschen曲線と、空隙距離gに対する空隙電圧Vgとの関係曲線とを示す図である。同図において、横軸は被帯電体と帯電用部材との空隙距離gを、縦軸は空隙電圧Vgもしくは破壊電圧Vbを示す。曲線131(実線で示す)は、空隙距離gによって決まる破壊電圧Vbを示す、Paschenの曲線である。曲線132(一点鎖線で示す)は、被帯電体と帯電用部材の電位差が比較的大きい場合における、空隙距離gと空隙電圧Vgとの関係曲線であり、曲線133(破線で示す)は放電が起こる限界の電位差が空隙に存在する場合の空隙距離gと空隙電圧Vgとの関係曲線である。
【0028】
帯電用部材と被帯電体表面との間に存在する空隙(放電ギャップ)に分圧される空隙電圧Vgが、空隙距離gによって決まる破壊電圧Vbを超えると、帯電用部材から被帯電体へと放電現象が生じる。具体的に説明すると、帯電用部材と被帯電体表面とが徐々に接近してくると、空隙距離gは減少する。そして電圧Vgは、ポイントA1からポイントA2へと向かい、空隙の静電容量が増大するに伴って空隙電圧Vgは小さくなる。そして、空隙電圧Vgが破壊電圧Vbに至ると(ポイントA2)、帯電用部材から被帯電体へと電荷が放出(放電現象)される。その結果、被帯電体の表面電位がVcとなる。そして、放電現象は、空隙距離gが減少するに伴って、Paschenの曲線131に沿って継続し、ポイントA3に至る。ポイントA3はそれ以上空隙距離gが小さくなっても空隙電圧Vgが破壊電圧Vbを超えることがなくなる点であり、ここで放電現象は終了する。その結果、帯電処理も終了し、被帯電体は、表面電位Vsに帯電処理される。
【0029】
ここで、破壊電圧Vb(つまり、曲線131)は、空隙距離gが8(μm)より大きい領域では式、
Vb=−312−6.2g ・・・・(1)
で表される。また、被帯電体の感光層の膜厚をdpc、感光層の比誘電率をεpcとすると、空隙電圧Vg(つまり、曲線132)は、
Vg=(Va−Vc)・g/{(dpc/εpc)+g} ・・・・(2)
で表される。なお、Vaは帯電用部材に印加した電圧、Vcは帯電処理前もしくは帯電処理中の被帯電体の表面電位である。
【0030】
ここで、実験に用いた感光層の厚さdpc=20(μm)、感光層の比誘電率εpc=3.3を式(2)に代入し、放電現象が終了する、ポイントA3における(Va−Vs)およびgを求める(放電現象終了時点における被帯電体の表面電位はVsであるので、式(2)において、VcをVsに書き直した)。Vb=Vg、Va−Vs=Vthとして、曲線132に曲線131が接する条件(つまり、gに関する2次方程式が重解を持つ条件)を求めると、
Vth=−565(V)
g= 17.4(μm)
となる。このVthの値は図2に示した閾値と一致する。
以上の結果から、本発明の帯電装置の帯電処理は、帯電用部材と被帯電体との間の空隙(放電ギャップ)における放電現象によることが確認できた。
【0031】
次に、放電ギャップの領域がどの程度になるのかを見積もってみる。
例えば被帯電体の表面電位Vsを−700(V)に帯電する例とし、Va=Vs+Vth=−1265(V)として、式(1)、(2)からポイントA2の放電が開始する空隙距離を求めると、g=146(μm) となる。
【0032】
以上の結果から、本発明の帯電装置の帯電処理は、帯電用部材と被帯電体との間の空隙距離が略150(μm)〜略17(μm)の間の領域において、放電現象を利用して行われることが解る。したがって、帯電用部材と感光体表面との距離が徐々に近接して、その空隙距離が概ね150(μm)以下となる領域を全帯電領域にわたって均一に形成することが必要になる。本発明の帯電装置は、かかる帯電用部材と感光体との間の放電ギャップを安定的に形成することができる構成である。
【0033】
その理由を図1を用い以下に説明する。
前述のごとく、本発明の帯電装置は、フィルム102を接触領域Nで被帯電体110に接触させ、その領域Nの被帯電体110の回転方向に対し上流側の領域P1のフィルム102の曲率半径よりも、下流側の領域P2のフィルム102の曲率半径の方が小さくなるような形状を取る。
【0034】
ここで、接触領域Nを形成する理由は、領域Nの前後に、フィルム102と被帯電体110との間に安定した放電ギャップを形成するためである。この領域Nは被帯電体の軸方向に沿って(つまり、有効帯電幅領域に)安定的に形成される必要がある。
【0035】
本発明の帯電装置の場合、フィルム102は比較的弱い機械的当接力で、被帯電体110に接触し、領域Nを形成する。そして、電源106から電圧が供給されると、領域Nのフィルム102と被帯電体110の導電性基体111との間には静電的な吸着力が働く。この静電吸着力によって、領域Nのフィルム102は被帯電体110に倣うように当接する。
【0036】
ここで、領域Nを形成するための力が機械的な力だけであると、その力を被帯電体の軸方向に分散させ、フィルムを被帯電体に良く倣わせることは難しい。例えば、被帯電体に凹凸が存在した場合、機械的な力は、凸部に集中する。したがって、フィルムは被帯電体の凸部近傍で接触するものの、他の領域では被帯電体に接触しない領域が発生する。結果として、フィルムを被帯電体の軸方向に倣わせることができない。
【0037】
ところが、静電吸着力によってフィルムを被帯電体に当接させる場合、例え、被帯電体に凹凸があっても、フィルムに働く力は、凹部、凸部共に略等しいため、フィルムを被帯電体の軸方向に良く倣わせることができる。その結果、安定した放電ギャップが形成できる。なお、静電吸着力でフィルムを被帯電体の軸方向に良く倣わせるためには、フィルムに可撓性が要求される。
【0038】
次に、領域Nよりも下流側の領域P2に、領域P1より曲率半径の小さな領域を形成する理由を説明する。
まず、フィルム102の領域Nの上流側の領域P1が曲率半径の大きな領域であるため、被帯電体との間に形成される放電ギャップは、領域Nに近づくに連れ徐々に狭くなる。このような放電ギャップにおいては、安定に放電が開始、また、継続し、その結果、被帯電体110の表面電位を常に安定した値にできる。
【0039】
また、前述のごとく、領域Nのフィルム102には、被帯電体110の回転、あるいは、電圧の印加によって、下流側に向く力が働く。この力によって、フィルムは下流側に変形しようとする。ところが、領域Nよりも下流側の領域P2に曲率半径の小さな領域を形成すると、フィルム102の変形を阻止する力が領域P2の近傍で働く。さらに、下流側に向く力は、領域Nの面積に比例して大きくなるが、領域Nよりも下流側の領域P2に曲率半径の小さな領域を形成することで、領域Nを必要最小限の面積にでき、従って、下流側に向く力自体も小さくできる。その結果、フィルム形状が変化しない。
【0040】
図1に示すフィルム形状の他に、フィルムの両端を支持した構成を取り、フィルムの変形を阻止する力を発生させるような形状の例を図4〜6に示す。
図4は、本発明に係わる帯電装置の他の実施形態例を示す概略断面図である。
【0041】
図4は、帯電用部材を構成するフィルムをチューブ状のフィルムに換えたものである。チューブ状のフィルム202の内側に支持部材203を入れ、フィルム202を支持部材203と共に、他の支持部材204に挿入して、帯電用部材201が形成される。この時、フィルムは固定端S3、S4を持つ。そして、被帯電体110に、フィルム202の支持されていない側が被帯電体110の回転方向(図中矢印)の下流側に向く形で接触させる。図に示すように、フィルム202は、涙滴に似た形状を示す。そして、フィルム202は接触領域Nで被帯電体110に接触し、その領域Nの被帯電体110の回転方向に対し上流側の領域P1のフィルム202の曲率半径よりも、下流側の領域P2のフィルム202の曲率半径の方が小さい。
ここで、チューブ状のフィルムを用いると、フィルムを支持部材に支持する方法を簡略化できる。
【0042】
図5は、本発明に係わる帯電装置の他の実施形態例を示す概略断面図である。
図5は、帯電用部材を構成するフィルムを多層構成のフィルムに換えたものである。さらに、フィルムの固定端間の距離を0(mm)とした。
【0043】
同図(a)は、非動作時の状態を示す図である。導電層253上に抵抗層254が形成されたフィルム252の両端を重ね合わせ、支持部材255に接着して、帯電用部材251が構成される。そして、被帯電体110の回転方向(図中破線矢印)の下流側にフィルム252の支持されていない側が向くように設置され、帯電装置が構成される。なお、フィルム252の被帯電体110に接する側の面に抵抗層254が形成される。
【0044】
そして、非動作時の状態では、フィルム252は被帯電体110に非接触の状態、もしくは、接触しているが強固には接触していない状態である。ここで、強固に接触していない状態とは、フィルムの機械的な当接力が10(g/cm)以下である状態を指す。
【0045】
同図(b)は、動作時の状態を示す図である。被帯電体を矢印方向に回転させ、図示していない電源から電圧を供給した状態である。
電圧を印加することによって、電源→支持部材255→導電層253(面内方向移動)→抵抗層254(厚み方向移動)という経路で電荷(電流)が移動する。そして、フィルム252と被帯電体110との間に静電吸着力が発生し、フィルム252は接触領域Nで被帯電体110に接触する。この力により、フィルム252は、形状を維持した状態で、被帯電体110側に極わずか変位する。そして、フィルム252は、被帯電体110の軸方向に倣い、圧接される。その時、フィルム252は涙滴に似た形状を示す。そして、領域Nの被帯電体110の回転方向に対し上流側の領域P1のフィルム252の曲率半径よりも、下流側の領域P2のフィルム252の曲率半径の方が小さい形状を取る。
【0046】
なお、この場合、動作開始時もしくは動作終了時(電圧のオン時、オフ時)に、フィルム252は極わずかに変位するが、動作中は変位することはなく、領域Nは極めて安定している。これは、フィルム形状が、領域P1のフィルム252の曲率半径よりも、領域P2のフィルム252の曲率半径の方が小さい形状であるからである。
【0047】
図6は、本発明に係わる帯電装置の他の実施形態例を示す概略断面図である。
図6は、フィルムの支持方法を換えたものである。同図(a)の帯電用部材301は、フィルム302の両端を、支持部材303、304に固定端S5、S6となるように支持した構成である。そして、図示していない電源から電圧が供給されると、フィルム302と被帯電体110との間には静電吸着力が発生し、この力によって、フィルム302は被帯電体110に領域Nで接触する。そして、被帯電体110の回転方向(図中矢印)の上流側の固定端S5から領域Nまでのフィルム302は、略直線形状の領域P1を有し、領域Nから下流側の固定端S6までのフィルム302は、曲率半径の小さい領域P2を有している。この場合も領域P1の曲率半径よりも領域P2の曲率半径の方が小さい構成である。
【0048】
同図(b)は、同図(a)の支持部材304を矢印310方向に移動し、領域Nに対し被帯電体110の回転方向(図中矢印)の下流側の領域P2の曲率半径を同図(a)より小さくしたものである。
図6(a)に対し、図6(b)で示す帯電装置の方が、領域P2の曲率半径が小さい。したがって、フィルムの変形を阻止する力が大きくなるのでより望ましい。
【0049】
本発明に係わる帯電装置の帯電用部材を構成するフィルムの他の構成としては、単層のフィルム(つまり、抵抗層のみで構成されたフィルム)、抵抗層と表面層との2層フィルム、絶縁性の基材に導電層と抵抗層とがこの順に形成された多層フィルム等、各種のバリエーションがある。
【0050】
抵抗層は、導電性物質分散層や、導電性樹脂、半導電性樹脂から形成した層である。導電性物質分散層としては、下記物質群a)、b)を下記物質群c)〜f)から選ばれる樹脂中、もしくは、下記物質群g)〜j)から選ばれるゴム弾性を有する物質中に分散もしくは相溶し、層状に形成したものである。導電性樹脂としては、下記物質群b)から選ばれる物質が挙げられる。半導電性樹脂としては、下記物質群c)から選ばれる物質が挙げられる。
【0051】
導電層は、帯電用部材の支持部材から被帯電体と接触する箇所の抵抗層へと電荷(電流)を供給する役割をする。したがって、抵抗層よりも低抵抗であればよい。導電層の例としては、金属蒸着層、導電性粒子分散層、導電性樹脂から形成した層等がある。金属蒸着層としては、アルミニウム、インジウム、ニッケル、スズ、銅等の金属、合金を層状に蒸着したものが挙げられる。導電性物質分散層としては、下記物質群a)、b)を下記物質群c)〜f)から選ばれる樹脂中に分散もしくは相溶し、層状に形成したものが挙げられる。導電性樹脂としては、下記物質群b)から選ばれる物質が挙げられる。
【0052】
表面層は、フィルムの被帯電体に接触する面に形成される層である。フィルムを摩耗等から守る、保護層より下層の層からの低分子量成分の滲み出しを防止する、トナー等の離型性を高める等の役割をし、下記物質群c)〜f)から選ばれる物質からなる。さらに、下記物質群a)、b)を下記物質群c)〜f)から選ばれる樹脂中に分散もしくは相溶したものも挙げられる。
絶縁性の基材としては、下記物質群d)〜f)から選ばれる樹脂が挙げられる。
【0053】
なお、抵抗層、表面層の抵抗値については、後述のように、その体積抵抗率を規定しても、実使用時の抵抗値と一対一には対応しないことが解っている。それは、一般に、抵抗層、保護層の抵抗は、電流依存性を持つからである。フィルムの抵抗値については、後述のような方法で測定される。
【0054】
フィルムの作成方法であるが、まず、基材を形成する。ここで、基材としては、絶縁性の基材、導電層、抵抗層がある。基材の作成方法は、基材を構成する物質を、熱溶融→分散、相溶→押し出し成形し、フィルム形状に成形する、あるいは、溶剤に溶解→分散、相溶→(重合)→押し出し成形し、フィルム形状に成形する等の方法がある。基材上に導電層、抵抗層、保護層を形成する方法としては、各々の物質を溶剤に溶解→分散もしくは相溶→(重合)→ディップコートもしくはスプレーコートする方法がある。
【0055】
(物質群)
a)カーボンブラック(例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、カーボンフィラー)、金属酸化粉(例えば、ITO粉、SnO2 粉)、金属、合金粉(例えば、Ag粉、Al粉)、塩(例えば、四級アンモニウム塩、過塩素酸塩)。
b)ポリビニルアニリン、ポリビニルピロール、ポリジアセチレン、ポリエチレンイミン等の導電性を有する樹脂。
c)エチルセルロース、ニトロセルロース、メトキシメチル化ナイロン、エトキシメチル化ナイロン、共重合ナイロン、ポリビニルピロリドン、ガゼイン等の樹脂、あるいは、これらの樹脂の混合物。
d)ポリアクリレート、ポリメタクリレート等のアクリル樹脂、ポリスチレン、ポリ−1−メチルスチレン等のスチレン樹脂、ブチラール樹脂、ポリビニルクロライド、ポリビニリデンクロライド、ポリビニルフルオライド、ポリビニリデンフルオライド、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、セルロース樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエチレン樹脂、ナイロン樹脂、ポリプロピレン樹脂等の熱可塑性樹脂、またはこれらの共重合体、混合体。
【0056】
e)ポリビニルアルコール、ポリアリルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアミン、ポリアリルアミン、ポリビニルアクリル酸、ポリビニルメタクリル酸、ポリビニル硫酸、ポリ乳酸、ガゼイン、ヒドロキシプロピルセルロース、デンプン、アラビアゴム、ポリグルタミン酸、ポリアスバラギン酸、ナイロン樹脂等の水溶性樹脂、またはこれらの共重合体、混合体。
【0057】
f)エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、フッ素樹脂等の熱硬化性樹脂。
g)天然ゴム。
【0058】
h)シリコーンゴム、フッ素ゴム、フロロシリコンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、ヒドリンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、イソブチレンイソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、チオコール、等の合成ゴム、またはこれらのブレンド。
【0059】
i)スチロール樹脂、塩化ビニル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエチレン樹脂、メタクリル樹脂等を含むエラストマー材料。
j)ポリウレタンフォーム、ポリスチレンフォーム、ポリエチレンフォーム、エラストマーフォーム、ゴムフォーム等の軟質フォーム材料。
【0060】
また、本発明に係わる帯電装置の帯電用部材に供給する電圧は、直流電圧に限られず、直流電圧に交流流電圧を重畳した電圧であっても良い。さらに、電圧を供給するのではなく、電流を供給しても良い。
また、支持部材は、フィルムを支持する役目と、さらに、フィルムに電圧(電流)を供給する役目を持つ。といって、支持部材全てを導電性部材で構成する必要ない。例えば、図1の場合、支持部材104のみを導電性部材で構成し、支持部材103、同105を絶縁性部材で構成しても良い。
【0061】
本発明の上記構成を得るために必要な帯電用部材の特性について、以下、具体例に基づいて詳細に説明する。
(具体例1)
具体例1として、フィルムの断面形状と帯電性能との関係を調査した結果について説明する。なお、帯電性能については、帯電装置を画像形成装置に搭載し、解像度600(DPI=Dot Per Inch)で2×2パターンをA4サイズの記録紙上に形成し、その記録紙の画像の様子から、帯電ムラの状態を調べた。さらに、画像形成装置の動作時、非動作時における帯電装置の様子を観察した。
【0062】
初めに、実験に用いた画像形成装置について説明する。
図7は、実験に用いた画像形成装置の概略断面図であって、帯電装置として、図1で示す帯電装置を搭載した例で示す。
【0063】
接地された、円筒状の導電性基体(アルミニウム素管)上に、下引き層(アルマイト層)、感光層(負帯電用機能分離型有機感光層、感光層厚み20(μm)、感光層比誘電率3.3)がこの順に形成された、外径30(mmφ)の被帯電体110が、画像形成開始信号を受けて、図示していない搬送手段によって矢印方向に30(mm/s)で回転を始める(動作開始)。帯電用部材102の支持部材104に電源106から電圧Va=−1.17(kV)が供給(通電)される。すると、領域Nより上流側の放電ギャップにおいて、フィルム102から被帯電体110へと電荷が移動(放電現象)し、被帯電体110表面が電位Vs≒−600(V)に帯電処理される。なお、有効帯電幅は220(mm)とした。
【0064】
しかる後、図示していない潜像形成装置より出射される光141により、600(DPI)の潜像を被帯電体110上に形成する。ここで、形成する潜像は、2×2パターンである。なお、2×2パターンとは、600(DPI)の4ドット×4ドット四方のうち、2ドット×2ドット四方が露光されるようなパターンを言う。この潜像を現像装置142より反転現像する。なお、現像装置142は、主として、現像ローラと、その外周に摺接する供給ローラと、金属や樹脂で構成される薄板バネ状の弾性ブレードと、トナーとからなる。供給ローラによって現像ローラに供給されたトナーは、弾性ブレードによって薄層形成され、被帯電体110と現像ローラが圧接されている現像領域まで搬送される。その過程でトナーは負帯電される。そして、被帯電体110の電位コントラスト(潜像)及び現像電源(図示せず)により形成される現像電界によって、トナーが被帯電体110の露光箇所に選択的に現像される。被帯電体110上に現像されたトナーは、矢印方向に移動するA4サイズの記録紙143へと転写装置144によって転写される。なお、転写装置144は、主として、被帯電体110に圧接し、被帯電体110と略等速で回転駆動される転写ローラで構成される。転写ローラにトナーの帯電極性と逆極性の電圧を供給することで、被帯電体110上のトナーを記録紙143上に静電転写する。そして、図示していない定着手段によって記録紙143上にトナーが定着される。
【0065】
転写後に被帯電体110に残留したトナーは、クリーニング装置145によって除去される。なお、クリーニング装置は、主として、被帯電体110に当接するクリーニングブレードからなり、その機械的な当接力によって、被帯電体110上に残留したトナーを除去する。そして、被帯電体110は、再び帯電装置によって帯電処理される。
このようにして、記録紙143上に画像が形成される。
【0066】
では、実験に使用した帯電装置を図8を基に説明する。なお、図8、帯電用部材の取付パラメータを説明するための図であり、基本的には図1(b)と同等な図である。
【0067】
表1に示す帯電装置1〜3を準備した。なお、フィルムは、 ナイロン樹脂 90(wt%) ファーネスブラック 10(wt%) を溶融混練し、しかる後、フィルム成形機で厚み50(μm)となるように押し出して形成した。形成後のフィルムのヤング率を、JIS K7127に則って測定したところ、50(kg/mm2)であった。
【0068】
ここで、固定端S1と固定端S2間の距離をL1(mm)(図示せず)、固定端S1から固定端S2に至るフィルム102の長さをL2(mm)(図示せず)、固定端S1と固定端S2の中点を点Q1、被帯電体の中心を点O、被帯電体110の頂点を点Q2、線分OQ1の距離をL3(mm)(図示せず)、線分OQ2を基準として、被帯電体の回転方向を正方向として、∠Q1OQ2をα(°)、さらに、∠S2Q1Oをβ(°)とする。さらに、フィルム102の曲線上で点Q1から最も遠い点を点Q3、線分Q1Q3に垂直な方向で、フィルム102の最大距離を与える長さをL4(mm)とした。
帯電装置1〜3における詳細な設定条件を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
先ず、帯電装置1〜3の動作時、非動作時の様子を観察した。
帯電装置1〜3の動作時の様子を各々図9(a)〜(c)に示す。同図(a)〜(c)において、各々、帯電用部材は番号、401、411、421に、フィルムは、402、412、422に対応する。
【0071】
動作時のフィルムと被帯電体との接触領域(ニップ)Nは、帯電装置1〜3共に、0.4(mm)であった。そして、被帯電体の軸方向に均一な領域Nを形成していた。さらに、動作時のフィルムの領域P2の曲率半径は、帯電装置1〜3共に、0.5(mm)程度、また、領域P1の曲率半径は、各々概ね、4(mm)、3(mm)、3(mm)であった。そして、帯電装置1〜3の非動作時のフィルム形状と動作時の形状とは等しく、涙滴に似た形状を維持した。また、領域Nも等しかった(したがって非動作時の様子は図には示さない)。さらに、動作時のフィルム形状、ならびに、領域Nは常に安定していた。この理由は、上述のごとく、領域P2に曲率半径の小さな領域(概ね0.5(mm)の曲率半径)を形成したこと、ならびに、領域Nが0.4(mm)と小さいこと、による。
なお、涙滴に似たフィルム形状は、L1<L4となるようにフィルムを支持部材に支持することで得られる。
【0072】
次に、2×2画像を形成した。
帯電装置1〜3は、良好で均一な画像を形成できた。この理由は以下の通りである。フィルムの領域P1が曲率半径の大きな領域であるため、被帯電体との間に形成される放電ギャップが、領域Nに近づくに連れ徐々に狭くなる。そして、この放電ギャップは上述のごとく、フィルムの形状が変化しないので、安定に存在する。したがって、安定に放電が開始、また、継続し、その結果、均一な帯電ができたのである。したがって、2×2画像も均一な画像になる。
【0073】
次に、帯電装置1〜3のフィルムと被帯電体との間に働く力を測定した。
測定は、被帯電体の周に、他端にバネばかりを取り付けた糸を巻き付け、その糸を30(mm/s)で引っ張った時にバネばかりに発生する力を測定した。その測定値を、動摩擦係数で除した値をフィルムと被帯電体との間に働く力とした。なお、測定は、帯電用部材に電圧を印加しない(非動作時、フィルムの被帯電体への機械的当接力)時と電圧を印加した時とで行った。動摩擦係数は、JISK7125に則って測定した。その結果、動摩擦係数は0.3であった。
結果を表2に示す。
【0074】
【表2】
【0075】
表2に示すように、帯電装置1〜3共に、機械的当接力は弱く、さらに、動作時の当接力も、比較的弱い。ただし、動作時には、前述のごとく、静電吸着力が働く。この静電吸着力によって、フィルムは被帯電体の軸方向に倣う。
【0076】
本発明のように、静電吸着力によってフィルムを被帯電体に当接させる場合、例え、被帯電体に凹凸があっても、フィルムに働く力は、凹部、凸部共に略等しい。さらに、その力は部分に集中することがない。したがって、比較的弱い力でフィルムを被帯電体の軸方向に倣わせることができる。その結果、安定した放電ギャップが形成できる。
【0077】
さらに、本発明の帯電装置は、帯電用部材の被帯電体への当接力が弱い。そのため、被帯電体あるいは帯電用部材を摩擦劣化させることがない。さらに、クリーニングブレードをすり抜けたトナーやトナー外添剤や紙粉等の異物を、領域Nの下流側に流すことができる。そして、領域Nの上流側に異物を過剰に滞留させることがない。したがって、長期にわたり、安定で均一な帯電処理を行うことが可能となる。
【0078】
さらに、帯電用部材の被帯電体への当接力は非動作時の方がより弱い。したがって、被帯電体の回転開始後に電圧を印加する、もしくは、電圧の供給をやめた後に被帯電体の回転を停止すると、領域N近傍に滞留している異物をより効果的に領域Nの下流側に流すことができるので望ましい。あるいは、画像領域外において、一時的に帯電用部材に供給する電圧を遮断しても同様な効果が得られる。
【0079】
(具体例2)
具体例2として、フィルムの変形を阻止する力を発生できる条件を、フィルムの曲げモーメントに着目して調べた。上述のごとく、領域Nの下流側に曲率半径の小さな領域P2を形成した場合、その領域P2の曲げモーメントとフィルムの変形の阻止力とに関係があるかを調べた。
【0080】
具体例1に示した帯電装置2をベースに、帯電用部材の取付方等は変更せず、フィルム材質を表3に示す材質に変更して実験を行った。評価は、具体例1と同様にして行った。なお、表3には、帯電装置2の値も併せて記した。
【0081】
ここで、フィルムの曲げモーメントについて説明する。
フィルムのヤング率をE(kg/mm2)、厚みをt(mm)、有効帯電幅をw(mm)、曲率半径をρ(mm)とすると、フィルムの断面2次モーメントI(mm4)および曲げモーメントM(kg・mm)は、
I=w・t3/12
M=E・I/ρ=w・t3・E/(12・ρ)
となる。表3に示す計算において、具体例1の結果からρ=0.5(mm)、w=220(mm)とした。
【0082】
【表3】
【0083】
帯電装置4〜11の動作時及び非動作時の様子を観察した。
帯電装置4〜10は、非動作時のフィルム形状と動作時のフィルム形状とは等しかった。さらに、動作時のフィルム形状ならびに領域Nは常に安定していた。
帯電装置11は、動作開始時にフィルムが被帯電体の回転方向下流側に引っ張られるように極わずか変形した。そして、動作時に、領域Nは極わずか振動した。しかし、動作時のフィルム形状は安定していた。
【0084】
次に、2×2画像を形成した。
帯電装置4〜10は、良好で均一な2×2画像を形成できた。帯電装置11は、細く縦に延びる断続的な低濃度部が極希に発生したが、これは、実用上問題にならない程度であった。
【0085】
結果から、望ましいフィルムの曲げモーメントの範囲は、0.002(kg・mm)以上であることが解った。それによって、フィルムの変形を阻止する力を発生させることができ、したがって、領域Nの上流側の領域P1を安定的に維持することができる。
【0086】
(具体例3)
具体例3として、被帯電体の軸方向にわたって領域Nを適正に形成できる条件を、フィルムの曲げこわさに着目して調べた。つまり、フィルムに要求される可撓性について調査した。
【0087】
実験は、図5に示す帯電装置をベースに行った。帯電用部材の取付方は変更せず、フィルム材質を変えて、以下に示す帯電装置12〜21を準備した。帯電用部材の取付方を具体例1に則って標記すると表4のごとくなる。評価は、具体例1と同様にして行った。
【0088】
【表4】
【0089】
<帯電装置12>
過塩素酸リチウムを相溶させた厚み0.04(mm)のポリウレタンからなる抵抗層を形成し、その裏面ににカーボンブラックを分散させた厚み0.005(mm)のポリエチレン樹脂からなる導電層を形成したフィルムを用いた。なお、抵抗層に対し、導電層を充分に低抵抗とした。帯電用部材の抵抗値は、R=4×106(Ω)であった。
【0090】
<帯電装置13>
カーボンブラックを分散させた厚み0.07(mm)のポリウレタンからなる抵抗層を形成し、その裏面にカーボンブラックを分散させた厚み0.005(mm)のポリエチレン樹脂からなる導電層を形成し、さらに、抵抗層表面(導電層がない側)に、架橋剤としてクエン酸を配合したN−メチルメトキシ化ナイロンからなる厚み0.01(mm)の表面層を形成したフィルムを用いた。なお、抵抗層に対し、導電層を充分に低抵抗とした。帯電用部材の抵抗値は、R=1×107(Ω)であった。
【0091】
<帯電装置14>
カーボンブラックを分散させた厚み0.04(mm)の導電性ポリウレタン樹脂からなる抵抗層を形成し、その裏面にカーボンブラックを分散させた厚み0.005(mm)のポリエチレン樹脂からなる導電層を形成したフィルムを用いた。なお、抵抗層に対し、導電層を充分に低抵抗とした。帯電用部材の抵抗値は、R=8×106(Ω)であった。
【0092】
<帯電装置15>
カーボンブラックを分散させた厚み0.040(mm)の導電性ポリウレタン樹脂からなる抵抗層を形成したフィルムを用いた。帯電用部材の抵抗値は、R=1×107(Ω)であった。
【0093】
<帯電装置16>
架橋剤としてメラミンを配合した、N−メチルメトキシ化ナイロン層からなる厚み0.010(mm)の抵抗層を、0.025(mm)厚みのポリエステル基材の上に形成したフィルムを用いた。帯電用部材の抵抗値は、R=2×107(Ω)であった。
【0094】
<帯電装置17>
カーボンブラックを分散させた厚み0.1(mm)のエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合ゴムからなる抵抗層(弾性を有する抵抗層)上に、厚み0.01(mm)のポリピロールを配合したN−メチルメトキシ化ナイロンからなる表面層を形成したフィルムを用いた。なお、表面層に対し、抵抗層を低抵抗とした。帯電用部材の抵抗値は、R=2×107(Ω)であった。
【0095】
<帯電装置18>
カーボンブラックを分散させた厚み0.44(mm)のエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合ゴムからなる抵抗層(弾性を有する抵抗層)上に、厚み0.01(mm)のポリピロールを配合したN−メチルメトキシ化ナイロンからなる表面層を形成したフィルムを用いた。なお、表面層に対し、抵抗層を低抵抗とした。帯電用部材の抵抗値は、R=2×107(Ω)であった。
【0096】
<帯電装置19>
ファーネスブラックを分散させ、厚み0.09(mm)に形成したポリエステル樹脂を抵抗層として形成したフィルムを用いた。帯電用部材の抵抗値は、R=1×107(Ω)であった。
【0097】
<帯電装置20(比較例)>
厚み0.075(mm)のポリエステル基材の上に、カーボンブラックを分散させた厚み0.005(mm)のポリエチレン樹脂からなる導電層を形成し、さらに、架橋剤としてクエン酸を配合したN−メチルメトキシ化ナイロンからなる厚み0.02(mm)の抵抗層を形成したフィルムを用いた。なお、抵抗層に対し、導電層を充分に低抵抗とした。帯電用部材の抵抗値は、R=1×107(Ω)であった。
【0098】
<帯電装置21(比較例)>
カーボンブラックを分散させた厚み0.6(mm)のエピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合ゴムからなる抵抗層(弾性を有する抵抗層)上に、厚み0.1(mm)のポリピロールを配合したN−メチルメトキシ化ナイロンからなる表面層を形成したフィルムを用いた。なお、表面層に対し、抵抗層を低抵抗とした。帯電用部材の抵抗値は、R=2×107(Ω)であった。
【0099】
ここで、フィルムの曲げこわさについて説明する。
フィルムのヤング率をE(kg/mm2)、厚みをt(mm)、有効帯電幅をw(mm)とすると、フィルムの断面2次モーメントI(mm4)および曲げこわさB(kg・mm2)は、 I=w・t3/12 B=E・I=w・t3・E/12 となる。表5に示す計算において、w=225(mm)とした。なお、表5に示すヤング率Eは、JIS K7127に則って測定した。
【0100】
【表5】
【0101】
帯電装置12〜21の動作時及び非動作時の様子を観察した。いずれも、非動作時のフィルム形状と動作時のフィルム形状とは等しかった。さらに、動作時のフィルム形状、ならびに、領域Nは常に安定していた。
【0102】
次に、2×2画像を形成した。帯電装置12〜19は、良好で均一な2×2画像を形成できた。ところが、帯電装置20、21は、細く縦に延びる低濃度部と、縦に延びる高濃度部が発生し、均一な画像(すなわち帯電)は得られなかった。これは、実用上問題になる程度である。
【0103】
これは、帯電装置12〜19の場合、動作時、フィルムと被帯電体の導電性基体との間に働く静電吸着力によって、領域Nのフィルムは被帯電体に倣うように当接する。ところが、帯電装置20、21の場合、フィルムが硬いため(曲げこわさが大きいため)、静電吸着力によってフィルムを被帯電体に当接させることができず、フィルムを被帯電体の軸方向に良く倣わせることができないのだと考えられる。その結果、安定した放電ギャップが形成できず、帯電ムラが発生したのだと考える。
以上の結果から、フィルムの曲げこわさは3.8(kg・mm2)以下が必要であることが解った。
【0104】
さらに、
M:フィルムの曲げモーメント
B:フィルムの曲げこわさ
w:有効帯電幅(mm)
t:フィルム厚み(mm)
E:フィルムのヤング率(kg/mm2)
ρ:フィルムと被帯電体の接触領域の下流側のフィルムの曲率半径
とすると、具体例2、3の結果は、
【0105】
【数1】
【0106】
である。不等式(3)、(4)から、
0.024・ρ≦w・t3・E≦45.6 ・・・・(5)
なる関係式が導出される。ここで、
w=220(mm)、ρ=0.5(mm)
であるとすれば、不等式(5)は、
0.00005≦t3・E≦0.21 ・・・・(6)
とできる。したがって、本発明の帯電装置の帯電用部材のフィルムは、不等式(6)を満足するフィルムが好ましい。フィルムの材質としては、ナイロン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合系ゴム等が好ましい。特に、ナイロン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂が好ましい。
【0107】
(具体例4)
具体例4では、フィルムの被帯電体への機械的当接力を0(g/cm)とした例を示す。
【0108】
図10は、本発明に係わる帯電装置の他の実施形態例を示す概略断面図である。
同図(a)は、非動作時の状態を示す図である。導電層503上に抵抗層504が形成されたフィルム502の両端を重ね合わせ、支持部材505に接着して、帯電用部材501が構成される。そして、帯電用部材501は、αが略70(°)、βが略160(°)となるように設置される。このように設置すると、非動作時の状態では、フィルム502と被帯電体110との間に極わずかな隙間を形成する。
【0109】
図10(b)は、動作時の状態を示す図である。被帯電体を矢印方向に回転させ、図示していない電源から電圧を供給した状態である。
同図(a)において、図示していない電源より電圧を印加することによって、電源→支持部材505→導電層503(面内方向移動)→抵抗層504(厚み方向移動)という経路で電荷(電流)が移動する。そして、フィルム502と被帯電体110との間に静電吸着力が発生し、フィルム502は接触領域Nで被帯電体110に接触する。この力により、フィルム502は、形状を維持した状態で、被帯電体110側に極わずか変位する。そして、被帯電体110の軸方向に倣い、圧接する。フィルム502は、領域Nの被帯電体110の回転方向に対し上流側の領域P1のフィルム502の曲率半径よりも、下流側の領域P2のフィルム252の曲率半径の方が小さい形状を取る。
【0110】
このような取付方の帯電装置においては、フィルム252は、動作、非動作で、被帯電体110に対し接、離をする。フィルム252の被帯電体への当接力を測定したところ、非動作時0(g/cm)、動作時2.4(g/cm)であった(なお、フィルム252と被帯電体110との動摩擦係数は0.73であった)。
【0111】
なお、この場合、動作開始時もしくは動作終了時(電圧のオン時、オフ時)に、フィルム252は極わずかに変位するが、動作中は変位をすることはなく、また、動作中の領域Nも極めて安定している。
【0112】
本具体例のように、静電吸着力のみによってフィルムを被帯電体に当接させる場合、例え、被帯電体に凹凸があっても、フィルムに働く力は、凹部、凸部共に略等しい。さらに、その力は部分に集中することがない。したがって、比較的弱い力でフィルムを被帯電体の軸方向に倣わせることができる。その結果、安定した放電ギャップが形成できる。
また、帯電用部材の被帯電体への当接力が弱い。そのため、被帯電体あるいは帯電用部材を摩擦劣化させることがない。
【0113】
さらに、帯電用部材の被帯電体への当接力は電圧印加時のみしか働かない。したがって、被帯電体の回転開始後に電圧を印加する、もしくは、電圧の供給をやめた後に被帯電体の回転を停止することによって、領域N近傍に滞留している異物を領域Nの下流側に流すことができる。その結果、領域Nの上流側に異物を滞留させることがない。したがって、長期にわたり、安定で均一な帯電処理を行うことが可能となる。
【0114】
(具体例5)
具体例5では、帯電用部材の抵抗値Rについて検討した。
具体例1に示す帯電装置1をベースに、帯電用部材の取付方等は変更せず、フィルム組成比と、フィルム膜厚と、有効帯電幅を変化させた。ここで、帯電用部材の抵抗値Rは、フィルム組成比(ナイロン樹脂と導電剤との組成比)を変えることで変化させた。フィルム膜厚は45(μm)、有効帯電幅は225(mm)とした。
【0115】
そして、抵抗値Rの異なる帯電用部材により被帯電体の帯電を行い、帯電特性を調べた。ただし、本発明において抵抗値Rとは帯電用部材に帯電に必要な電流を流した時の抵抗を言う。さらに、実際に、具体例1で示す画像形成装置にて、2×2、べた白、べた黒画像を形成し、画像品質も調べた。
【0116】
帯電用部材の抵抗値Rと帯電特性との関係を図11に示す。図11において、横軸は帯電用部材の抵抗値Rの対数値log(R)(Ω)、縦軸は被帯電体の表面電位Vsの絶対値である。図中の記号は測定環境を表し、□印はNN環境(20℃、50%RH)、○印はHH環境(35℃、65%RH)、△印はLL環境(10℃、15%RH)である。
【0117】
図11に示されるように、環境により帯電性能は異なるが、いずれの環境においても、表面電位Vsが抵抗値Rに依存せず、一定になる領域があることが解る。この領域が、前述のPaschenの放電による帯電が行われる領域である。この領域は、帯電用部材の抵抗値Rが106〜3×107(Ω)の範囲内である。
【0118】
抵抗値Rが106(Ω)以下では、Paschenの放電による帯電と、いわゆる電荷注入による帯電とが行われる。これは、帯電用部材と被帯電体との間に形成される放電ギャップにおいて、Paschenの放電による帯電が行われ、さらに、領域N(ニップ)内において、電荷注入による帯電が行われる。そのため、被帯電体の表面電位Vsは、帯電用部材の抵抗値Rが106〜3×107(Ω)の場合の表面電位Vsに比べ、絶対値が大きな値になる。そして、帯電用部材の抵抗値が減少するにつれ、電荷注入による帯電の寄与が大きくなり、したがって、表面電位Vsの絶対値はより大きくなる。例えば、帯電用部材の抵抗値Rが1桁低下すると、表面電位Vsの絶対値は200(V)程度上昇する。
【0119】
抵抗値Rが108(Ω)以上でも、Paschenの放電による帯電が行われる。しかし、帯電に必要な電流の供給が間に合わない、いわゆる、時定数遅れと呼ばれる現象が発生し、帯電効率が低下する。そのため、被帯電体の表面電位Vsは、帯電用部材の抵抗値Rが106〜3×107(Ω)の場合の表面電位Vsに比べ、絶対値が小さな値になる。そして、帯電用部材の抵抗値Rが大きくなるにつれ、帯電効率の低下が著しくなり、したがって、表面電位Vsの絶対値はより小さくなる。例えば帯電用部材の抵抗値が1桁上昇すると、表面電位Vsの絶対値は400(V)以上低下する。
【0120】
次に、図12に表面電位Vsと画像品質との関係を示す。図12において、縦軸は表面電位Vsの絶対値、横軸は、画像品質の項目である。なお画像品質は、べた黒画像の画像濃度、2×2画像の画像ムラ、べた白画像の白地汚れの程度を評価した。図中にプロットされている○、△、×印は、各々、良好もしくはムラ、汚れが認められない(○)、実用上問題のないレベル(△)、濃度不足もしくはムラ、汚れが目立ち、実用上問題になる(×)である。また、各項目とも環境をパラメータとした。
【0121】
図12より、表面電位Vsの絶対値が大きくなると、画像濃度の低下、画像ムラならびに白地汚れの程度が悪化し、その程度が実用上問題のない表面電位の絶対値は740(V)以下であることが解る。また、表面電位Vsの絶対値が小さくなると、画像ムラ、白地汚れの程度が悪化し、その程度が実用上問題のない表面電位の絶対値は450(V)以上であることが解る。つまり、画像品質を確保するのに必要な表面電位Vsは−740〜−450(V)の範囲であることが解る。さらに望ましい表面電位は、環境によって異なり、NN環境では−600(V)、HH環境では−620(V)、LL環境では−580(V)であることが解る。
【0122】
図11を用い、好ましい帯電用部材の抵抗値の範囲を求めると、3×105〜1×108(Ω)となる。さらに望ましくは、Paschenの放電による帯電が行われる領域内1×106〜3×107(Ω)である。帯電用部材の抵抗値Rが上記範囲であれば、画像品質を保証可能な表面電位を確保できる。
【0123】
ここで帯電用部材の抵抗値Rの測定方法を説明する。
図1(b)に示す帯電装置において、被帯電体を同一形状の導電性の円筒電極に変えた以外は、円筒電極の表面移動速度、帯電用部材の円筒電極への押圧力等は全て実際の帯電条件と同様にする。そして、被帯電体を所定表面電位Vsに帯電するために必要な電流と同一の電流を帯電用部材に流す。その時の帯電用部材と円筒電極との間の電圧を測定することにより、帯電用部材の抵抗値Rを求める。この測定方法の最も重要な点は、帯電に必要な電流を帯電用部材に流して帯電用部材の抵抗値を求めることにある。
【0124】
なお、帯電に必要な電流は、実際の帯電処理時の電流値を測定するか、もしくは、下式により求められる。
【0125】
I=εpc・εo・w・vp・Vs/dpc
ここで、I(μA)は所定表面電位Vs(V)に帯電するために必要な電流、w(mm)は帯電用部材の有効帯電幅、dpc(mm)は被帯電体の感光層の厚み、εpcは被帯電体の感光層の比誘電率、vp(mm/sec)は被帯電体の表面移動速度、εo(F/mm)は真空の誘電率である。ちなみに、本実施例においては、感光体ドラムを表面電位Vs=−600(V)に帯電するのに必要な電流はI=−5.9(μA)である。
【0126】
上記より、明かなように、本発明における帯電用部材の抵抗は、実際の帯電時の状態を反映するものであり、単なる帯電用部材の体積抵抗率とは異なるものである。
詳細に説明すると、帯電用部材の抵抗値は電流(もしくは電圧)に依存する。一般に、電流が変化すると、抵抗も変化する。さらにまた、帯電用部材は被帯電体と接触しているため、実際の帯電時の帯電用部材の抵抗は、電気的な接触抵抗を含み、かつ、帯電用部材と被帯電体との接触状態に依存する。例えば、被帯電体の移動速度を変化させると、抵抗も変化する。よって、帯電用部材に帯電に必要な電流を流し、かつ、帯電用部材と電極との接触状態を被帯電体とのものと同一にして測定した抵抗が、実際の帯電時の状態を反映する。
【0127】
なお、具体例5で述べた内容については、本発明に限定される内容でなく、帯電用部材が固定され被帯電体を帯電処理する帯電装置一般に適用される内容である。例えば、帯電用部材をデッキ型ブラシで構成した帯電装置や、帯電用部材をブレードで構成した帯電装置等に適応可能である。
【0128】
(実施例2)
フィルムを種類を変えて帯電用部材を構成し、画像形成を行ったところ、紙の進行方向に平行に、スジ状の高濃度部(白スジ)が画像に発生する場合があった。これは、何らかの原因で過帯電箇所が発生したためである。
【0129】
そこで、過帯電箇所に対応するフィルムを観察したところ、領域N近傍のフィルム表面に突起が存在していた。この突起を含む領域を走査型レーザー顕微鏡(レーザーテック社製、1LM21)にて観察した。
【0130】
図13に、フィルムの断面プロファイルを示す。図中の実線が断面プロファイル、破線は中心線である。図から、突起高さと突起大きさを計測する(図中、高さ、大きさと記載)と、突起高さは6.2(μm)、また、突起の大きさは83(μmφ)であった。なお、突起高さは、中心線からの高さとした。
【0131】
このように、突発的な突起が領域N近傍に存在すると、突起先端から被帯電体に向けて異常な火花放電が生じる。もしくは、領域N内に存在すると、その箇所に過剰な圧力が印加され、その結果、電荷が被帯電体に直接注入される。このようなことにより、被帯電体に過帯電箇所が生じるものと考えられる。
【0132】
ここで、フィルムの表面粗さをJIS B0601に則って測定したところ、Rz=1.2(μm)、Rmax=1.8(μm)であった。ここで、JISB0601で定義される表面粗さは、母平均の推定のためのランダムな抜き取り試験で求められる値である。したがって、傷と見なされるような並外れた高い山や深い谷がない領域から基準長さ(測定領域)を抜き取る必要がある。そのため、突発的に存在する突起の領域は排除して基準長さを選定する。したがって、JIS B0601で定義される表面粗さには、突発的な突起は全く反映されない。
【0133】
つまり、JISで定義される表面粗さには反映されない、突発的な突起についても考慮しないと均一帯電ができないことが解った。以降、突発的な突起とJISで定義される表面粗さを区別するため、JISで定義される表面粗さをベースの粗さとする。
【0134】
上述のフィルムの領域Nならびにその上、下流0.5(mm)の領域の表面を、くまなく走査型レーザー顕微鏡で検査した。結果、上述の突発的な突起の他に、高さ3.4(μm)、大きさ42(μmφ)の突発的な突起が1つ確認できた。ただし、この突起に対応する箇所の画像に、過帯電に起因する白スジは確認できなかった。
【0135】
そこで、突発的な突起と帯電均一性との関係を調べた。故意に突発的な突起を領域N近傍に数ヶ形成して、突発的な突起と画像との関係を調べた。
結果の一覧を表6に示す。なお表6には、故意に作製した突起の高さと、その突起に対応する箇所の画像に白スジが発生したかを記す。画像の欄において、○:白スジが観察できず、×:白スジが観察された、を示す。
【0136】
【表6】
【0137】
次に、ベースの粗さをRz=2.5(μm)、Rmax=3.6(μm)としたフィルムを用意した。このフィルムに故意に突発的な突起をニップ近傍に数ヶ形成した。そしてこのフィルムを同様に評価した。
結果の一覧を表7に示す。
【0138】
【表7】
【0139】
ここで、突起の高さは、中心線からの高さとしてきたが、中心線にRz/2の値を加えた線を基準線として、その基準線からの高さとする。なお、新たに定義した突起高さのことを実効的突起高さと呼称する。
【0140】
図14は、定義した実効的突起高さを説明するための図である。同図は、図13で示される断面プロファイルにおいて、定義した実効的突起高さを示す図である。図中の実線は断面プロファイル、破線は中心線、一点鎖線は基準線である。また、基準線からの高さが実効的突起高さである。
実効的突起高さに注目して、表6、7を書き直して見る。結果を表8に示す。
【0141】
【表8】
【0142】
表8の結果から、実効的突起高さと画像とに関係があり、実効的突起高さが、4.4(μm)以上であると、その突起により、被帯電体が過剰帯電され、したがって、白スジ状の画像欠陥が発生することが解る。つまり、高さが、 (Rz/2+4.4)(μm) 以上である、突発的な突起が領域N近傍に存在してはいけない、ことが解る。
【0143】
この結果から、帯電用部材の領域N近傍に存在する突発的な突起の高さを、 (Rz/2+4.4)(μm) 未満とすると、異常帯電が防止でき、均一帯電が可能となる。
なお、この議論は、接触型帯電装置全般に適応できる。例えば、ローラ帯電装置、ブレード帯電装置である。
【0144】
【発明の効果】
本発明の帯電装置および画像形成装置によれば以下のような効果を有する。
請求項1ないし3記載の発明の帯電装置によれば、帯電部材の被帯電体への機械的な当接力が小さいので被帯電体や帯電用部材を摩擦劣化させることがない。さらに、トナーやトナー外添剤や紙粉等の異物を、接触領域の下流側に流すことができる。そして、接触領域の上流側に異物を過剰に滞留させることがない。
【0145】
また、帯電用部材と被帯電体との接触箇所近傍に形成される放電ギャップを確実にかつ均一に維持することが可能となる。
また、被帯電体あるいは帯電用部材を摩擦劣化させ難く、安定的にかつ信頼性の高い帯電処理を行うことが可能な帯電装置を提供することが可能となる。さらに、クリーニングブレードをすり抜けたトナーやトナー外添剤や紙粉等の異物が、帯電用部材と感光体との接触箇所近傍に滞留し難い帯電装置を提供することが可能になる。
特に、請求項3記載の発明によれば、帯電装置を動作させないときの当接力が弱いので、この期間を利用することにより、トナーやトナー外添剤や紙粉等の異物を、接触領域の下流側により効率的に流すことができる。
【0146】
請求項4記載の発明の画像形成装置によれば、安定性・信頼性に優れた帯電装置を備えることにより、過帯電や帯電不足や帯電むらなどがないため、高品質の画像を得ることができる。さらに、クリーニングブレードをすり抜けたトナーやトナー外添剤や紙粉等の異物が帯電装置に滞留することがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係わる帯電装置の実施形態を示す概略断面図である。同図(a)は帯電用部材の概略断面図であり、同図(b)は、同図(a)の帯電用部材を搭載した帯電装置の概略断面図である。
【図2】 本発明に係わる帯電装置において、帯電用部材に供給した電圧Vaと得られた被帯電体の表面電位Vsとの関係を示す図である。
【図3】 Paschen曲線と、空隙距離gに対する空隙電圧Vgとの関係曲線とを示す図である。
【図4】 本発明に係わる帯電装置の他の実施形態例を示す概略断面図である。
【図5】 本発明に係わる帯電装置の他の実施形態例を示す概略断面図である。同図(a)は非動作の状態を、同図(b)は動作時の状態を示す。
【図6】 同図(a)、(b)は、本発明に係わる帯電装置の他の実施形態例を示す概略断面図である。
【図7】 本発明に係わる帯電装置を搭載した画像形成装置の概略断面図である。
【図8】 本発明に係わる帯電装置の帯電用部材の取付パラメータを説明するための図である。
【図9】 同図(a)〜(c)は、本発明に係わる帯電装置の動作時の様子を示す概略断面図である。
【図10】本発明に係わる帯電装置の他の実施形態例を示す概略断面図である。同図(a)は非動作の状態を、同図(b)は動作時の状態を示す。
【図11】本発明に係わる帯電装置の帯電用部材の抵抗値と帯電特性との関係を示す図である。
【図12】本発明に係わる帯電装置を搭載した画像形成装置において、被帯電体の表面電位と画像品質との関係を示す図である。
【図13】帯電不良を起こしたフィルム表面の断面プロファイルを示す図である。
【図14】定義した実効的突起高さを説明するための図である。
【符号の説明】
1…潜像担持体、7…現像装置、8…現像剤、9…現像剤担持体、10…シャフト、11…弾性層、12…塗工層、50…ローラーコーター、54…磁性塗料、61…均平化部材、72…潤滑剤
Claims (4)
- 外部より電圧が印加された帯電用部材を、回転する被帯電体に機械的当接力と静電吸着力とで接触させて帯電処理を行う帯電装置において、
前記帯電用部材は可撓性を有するフィルムで構成されているとともに、前記フィルムの両端が支持部材で固定支持され、かつ前記フィルムの支持されていない側を前記被帯電体の回転方向の下流側に向く形で接触させ、
前記帯電用部材の前記被帯電体への当接力が、電圧が供給された状態で、主として、前記静電吸着力によって与えられ、その静電吸着力による当接力は前記機械的当接力よりも大きく設定されており、
前記帯電用部材は、電圧が供給された状態で前記フィルムと前記被帯電体との接触領域より前記被帯電体の回転方向の下流側の前記フィルムの曲率半径が、前記接触領域より前記被帯電体の回転方向の上流側の曲率半径よりも小さいフィルム形状を取ることを特徴とする帯電装置。 - 前記フィルムの両端の固定端間の距離をL1、前記フィルムの曲線上で前記フィルムの最大距離を与える長さをL4とした場合、L1<L4であることを特徴とする請求項1記載の帯電装置。
- 被帯電体の移動開始後に帯電用部材に電圧を供給する、もしくは、帯電用部材への電圧供給停止後に被帯電体の移動を停止することを特徴とする請求項1または2記載の帯電装置。
- 請求項1ないし3のいずれか一つに記載の帯電装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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